説明

排気ガスの脱臭装置

【課題】 乾燥機や焼却炉から排気された排気ガス等の脱臭処理に要する燃料の消費を著しく低減することができるとともに、イニシャルコストを抑えることができ、更には高湿度の排気ガスを効果的に脱臭処理し、ダストによる機能低下の無い新規な排気ガスの脱臭装置の開発を技術課題とした。
【解決手段】 酸化セリウムを有する脱臭素子55を具えた触媒ユニット5を用い、排気ガスG0に含まれる揮発性有機物を酸化および/または分解脱臭排ガスG1とするものであり、前記排気ガスG0を触媒55bの最適作用温度に温度調整した状態で、前記触媒ユニット5に供給するための温度調整機構を具えたことを特徴として成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は汚泥等の有機性廃棄物を処理する乾燥機や焼却炉から排出された排気ガス等の脱臭処理に関するものであって、特に脱臭処理に要する燃料を低減することができるとともに、イニシャルコストを抑えることができ、更には高湿度であり、揮発性有機物が含まれるとともに、ダストが同伴される排気ガスを効果的に脱臭処理することのできる排気ガスの脱臭装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近時、地球温暖化防止の推進等、環境保全の取り組みが盛んになってきており、汚泥等の有機性廃棄物の乾燥、廃棄物焼却等の際に発生する排気ガスに含まれる有害物質や臭気を除去したうえで大気に放出することが求められ、その要求度合いも更に高まっている。
そして前記排気ガスの脱臭の手法としては、従来より直接燃焼によるものが一般的であった。具体的には図6に示すように、排気ガスG0を脱臭炉100に送り込み、更にバーナ101における燃料の燃焼によって脱臭炉100内を650℃以上に維持し、排気ガスG0を燃焼させて脱臭処理を行うものである。
この際、熱交換器2′によって、脱臭処理後の脱臭排ガスG1(一例として650℃)から排熱を回収し、脱臭処理前の排気ガスG0を昇温し(一例として200℃〜450℃)バーナ101での燃料消費を抑えることが行われている。
このような直接燃焼による排気ガスG0の脱臭処理は、脱臭性能としては比較的優れている反面、脱臭処理に多くの燃料が必要となるものであって、主目的である、乾燥・焼却に要する燃料よりも、多くの燃料が脱臭処理に必要とされるケースもあった。
また、汚泥の乾燥、廃棄物の焼却等からの排気ガスG0にはダストが含まれているため、サイクロンやバグフィルタなどで捕集されるが、全てが捕集されるわけではなく、すり抜けたダストは、排気ガスG0の経路中の機器に堆積して、機器の機能を低下させる問題も多く発生していた。
【0003】
ところで本発明者らは、排気ガス中の揮発性有機化合物(以下VOCと称す)の分解除去を行うにあたって、触媒として酸化セリウム(CeO2 )を用いることにより、工場排気のようにVOCに水蒸気が混入している排気ガスを、高効率で分解処理することができることを見出し、酸化セリウム(CeO2 )が既存の貴金属担持触媒の代替となる、低コストなVOC分解触媒として有望であることを明らかにし、既に特許出願に及んでいる(特許文献1参照)。
また前記酸化セリウム(CeO2 )を、自動車エンジンの排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を低減するための、排気ガス浄化用触媒及びその製造方法に応用した発明もなされており、既に特許出願がなされている(特許文献2参照)。
【0004】
ここで前記酸化セリウム(CeO2 )は、触媒燃焼(接触酸化)により、VОCを二酸化炭素と水にまで分解するものである。
また前記酸化セリウム(CeO2 )は、一般的に用いられている貴金属触媒(パラジウム(Pd)、白金(Pt)等)よりも低価格であり、脱臭システムを構築するにあたって酸化セリウム(CeO2 )を用いることにより、イニシャルコストを抑えることができると期待されている。
そこで本出願人は、触媒として酸化セリウム(CeO2 )を用いた脱臭装置の開発を試み、実用化のための研究・開発を行ってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−15338
【特許文献2】特開平8−290057号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような背景からなされたものであって、乾燥機や焼却炉から排気された排気ガス等の脱臭処理に要する燃料の消費を著しく低減することができるとともに、イニシャルコストを抑えることができ、更には高湿度であり、揮発性有機物が含まれるとともに、ダストが同伴される排気ガスを効果的に脱臭処理し、ダストによる機能低下の無い新規な排気ガスの脱臭装置の開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち請求項1記載の排気ガスの脱臭装置は、乾燥機や焼却炉の排気ガスの脱臭処理を行う装置であって、この装置は、酸化セリウムを有する脱臭素子を具えた触媒ユニットを用い、ダストを含む排気ガス中の有機物を酸化および/または分解した脱臭排ガスとするものであり、前記排気ガスを触媒の最適作用温度に温度調節した状態で、前記触媒ユニットに供給するための温度調整機構を具えたことを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項2記載の排気ガスの脱臭装置は、前記要件に加え、前記温度調整機構は、触媒ユニットから排出された脱臭排ガスから熱を回収する熱交換器であることを特徴として成るものである。
【0009】
更にまた請求項3記載の排気ガスの脱臭装置は、前記請求項2記載の要件に加え、前記温度調整機構は、熱交換器において昇温された排気ガスを、更に昇温するための予熱炉を具えたものであることを特徴として成るものである。
【0010】
更にまた請求項4記載の排気ガスの脱臭装置は、前記請求項2記載の要件に加え、前記触媒ユニットと熱交換器との間には、脱臭排ガスを昇温するための加熱炉が具えられていることを特徴として成るものである。
【0011】
更にまた請求項5記載の排気ガスの脱臭装置は、前記要件に加え、前記脱臭素子に対して、一定量以上のダストが付着したことを検出するためのダストセンサと、脱臭素子に付着したダストを除去して触媒機能を再生するための再生機構とを具えたことを特徴として成るものである。
【0012】
更にまた請求項6記載の排気ガスの脱臭装置は、前記請求項5記載の要件に加え、前記ダストセンサは、臭気センサ、圧力センサ、温度センサ、接触センサまたは光学センサのいずれか一つまたは複数が適用されたものであることを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0013】
まず請求項1記載の発明によれば、酸化セリウムの触媒としての能力を最大限に発揮して、排気ガスの脱臭処理を効率的に行うことができる。特に汚泥の乾燥の際に発生する排ガスのように、水蒸気が多量に含まれた状態で有機物を含む排気ガスを、高効率で分解処理することができる。
【0014】
また請求項2記載の発明によれば、脱臭排ガスの熱を、脱臭処理前の排気ガスの昇温に供するため、排気ガスを触媒の最適作用温度にまで昇温させる際に必要とされる燃料(エネルギー)が、一般的な燃焼脱臭よりも少なくて済み、ランニングコストを低減することができる。
【0015】
更にまた請求項3記載の発明によれば、排気ガスを確実に触媒の最適作用温度にまで昇温させることができる。
【0016】
更にまた請求項4記載の発明によれば、脱臭排ガスの温度を上昇させることにより、この脱臭排ガスを熱源とした、熱交換器における排気ガスの温度上昇を所望のものとすることができる。
【0017】
更にまた請求項5記載の発明によれば、脱臭素子の機能低下を回避して脱臭装置の稼働率を良好なものとすることができる。
特にダストが発生し易い、汚泥等を乾燥した際に発生する排気ガスの脱臭処理を効率的に行うことができる。
【0018】
更にまた請求項6記載の発明によれば、脱臭素子に対して、一定量以上のダストが付着したことを確実に検知することができ、これに基づいて再生機構を稼働させることにより、脱臭装置の稼働率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】脱臭装置を示す骨格図である。
【図2】再生機構を具えた脱臭装置を示すブロック図である。
【図3】構成機器のレイアウトを異ならせた脱臭装置を示すブロック図である。
【図4】形態を異ならせた二種の脱臭素子を示す斜視図である。
【図5】触媒ユニットに供給する排気ガスの触媒入口温度−脱臭効率特性を示すグラフである。
【図6】従来より行われている燃焼による脱臭処理を行う脱臭装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の排気ガスの脱臭装置の最良の形態は以下の実施例に示すとおりであるが、この実施例に対して本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の排気ガスの脱臭装置1(以下、脱臭装置1と称す)について、基本となる実施例の構成を説明した後、その作動態様について説明する。
まず前記脱臭装置1は図1に示すように、乾燥機や焼却炉等から排出された排気ガスG0の脱臭処理を行うための装置であって、触媒55bが有する触媒作用によって、排気ガスG0に含まれる有機物を低温で酸化および/または分解し、予熱炉3等によりダストの付着した触媒55bを再生して、脱臭排ガスG1とする装置である。
なお本発明において前記触媒55bは、酸化セリウム(CeO2 )が採用されるものであり、このものは、詳しくは後述するが、し尿汚泥等の乾燥の際に発生する、多量の水蒸気が混入している排気ガスG0を、高効率で脱臭処理することができる物質である。
【0022】
具体的には前記脱臭装置1は一例として図1に示すように、熱交換器2、予熱炉3及び触媒ユニット5を具えて成るものである。
まず前記熱交換器2は、筐体20内に管路21が配され、筐体20の外周部に流入口22、流出口23、流入口24、流出口25が形成され、流入口22から供給された排気ガスG0が管路21を通過して流出口23から排出される際に、管路21の外側に位置する熱媒との間で熱交換を行うことにより、管路21内を流れる流体(排気ガスG0)の昇温等を行う温度調整機構である。なお前記筐体20には流入口24から熱媒が供給され、この熱媒は流出口25から排出される。
【0023】
次に前記予熱炉3は、一例として燃焼炉30にバーナ31を具えて成るものであり、バーナ31によって燃料を燃焼させて発生した熱によって、燃焼炉30内に供給される排気ガスG0の昇温を行う温度調整機構である。なお前記燃焼炉30には流入口32及び流出口33が形成される。
因みに前記予熱炉3以外にも、脱臭装置1の構成要素ではない燃焼炉、焼却炉、脱臭炉あるいは電気ヒータ等を温度調整機構として適用することもできる。
【0024】
次に前記触媒ユニット5は、筐体50の外周部に供給口51、排出口52が形成されるとともに、筐体50内に、支持基材55aに触媒55bが担持されて成る脱臭素子55が具えられて成るものである。
すなわち供給口51から筐体50内に供給された排気ガスG0に含まれる臭気成分(有機物)は、触媒55bと接触することにより、触媒55bが有する触媒作用によって低温酸化され、CО2 、H2 О等に変化することとなる。
【0025】
なお前記触媒55bとしては酸化セリウム(CeO2 )のみが採用される。
また前記支持基材55aとしては、一例として図4(a)に示すように、ハニカム状のセラミックスが採用されるものであり、酸化セリウム粉末(淡黄色粉末)と水とバインダーとを混合して調製されたスラリーに対し、前記支持基材55aを浸漬させ、その後、乾燥、焼成することにより、支持基材55aの表面に触媒55bが担持された脱臭素子55が形成される。
また前記酸化セリウム粉末(淡黄色粉末)を、バインダーとともに水で混練し、乾燥、焼成して得られたペレット状の脱臭素子55Pを用いることもできる。この場合、脱臭素子55Pは図4(b)に示すように、金網53aとフレーム53bとを具えて成るケージ53に収容された状態で筐体50内に配されることとなる。
【0026】
なお前記酸化セリウム(CeO2 )には、最適作用温度域が存在するものであり、排気ガスG0の温度をこの最適作用温度域として脱臭素子55に接触させることにより、酸化反応を促すようにする。
図5に示すグラフは、し尿汚泥を乾燥させた際に発生する排気ガスG0(含有水蒸気量:0.5kg−H2 О/kg−ドライガス)を本発明の脱臭装置1を用いて脱臭処理を行い、触媒温度(排気ガスG0の温度)を異ならせたときの脱臭効率の変化を示したものである。
このグラフより、300℃以上で脱臭効率が上がっていることが確認されるものであり、酸化セリウム(CeO2 )をし尿汚泥を乾燥させた際に発生する排気ガスG0の脱臭処理に適用する場合、反応温度(排気ガスG0の温度)を300℃以上とすることが好ましい。
更に350℃を超える反応温度においても良好な脱臭効率が得られることを確認しているが、予熱炉3による昇温に消費される燃料は反応温度にほぼ比例して増加し、また、連続的な高温に耐える装置の必要性から装置のイニシャルコストが高くなる。そのため、反応温度としては350℃以下であることが望ましい。
なお脱臭効率は、排気ガスG0の含有水蒸気量が0.2〜0.5kg−H2 О/kg−ドライガスの範囲のガスの場合において、同じ結果であることが確認されている。
ここで前記脱臭効率とは、触媒ユニット5に流入する排気ガスG0の臭気濃度をAとし、触媒ユニット5から流出する脱臭排ガスG1の臭気濃度をBとすると、(A−B)/A×100[%]で算出した値である。
【0027】
そして前記熱交換器2における流出口23と、予熱炉3における流入口32との間は管路によって接続されるものであり、更に予熱炉3における流出口33と、触媒ユニット5における供給口51との間は管路によって接続されるものであり、この管路には温度センサTが設けられる。
更に前記触媒ユニット5における排出口52が、熱交換器2における流入口24と管路によって接続されることにより、脱臭装置1が構成されることとなる。
【0028】
本発明の脱臭装置1は、一例として上述したように構成されるものであり、以下その作動態様について図1を参照しながら説明する。
〔熱交換〕
まずブロワ8によって脱臭装置1に供給された排気ガスG0(一例として200℃)は、熱交換器2に供給され管路21を通過する際に脱臭排ガスG1(一例として300℃)との間で熱交換が行われ、250℃となって予熱炉3に送られる。
【0029】
〔予熱〕
予熱炉3においては、温度センサTの検出値に基づいて、制御装置10によってバーナ31の燃焼度が調節され、排気ガスG0の昇温が行われるものであり、この実施例では一例として250℃の排気ガスG0を300℃にまで昇温する。
【0030】
〔脱臭処理〕
次いで排気ガスG0は触媒ユニット5に送られ、ここで脱臭素子55と接触し、その表面に担持されている触媒55bの作用によって脱臭処理が施され、臭気成分が所定値以下(一例として臭気指数30以下)に除去された脱臭排ガスG1となる。
【0031】
〔熱回収〕
次いで脱臭排ガスG1は熱交換器2に送られ、ここで管路21内に位置する排気ガスG0との間で熱交換が行われ、一例として250℃に温度が低下した状態で流出口25から外部に放出される。
【0032】
以上のように本発明の脱臭装置1においては、排気ガスG0を触媒ユニット5に供給するにあたって、触媒55b(酸化セリウム)の能力を最大限に発揮できる温度に温度調整することができるため、排気ガスG0の脱臭処理を効率的に行うことができる。更に排気ガスG0の温度調整を行うにあたっては、熱交換器2によって脱臭排ガスG1の熱を回収し、この熱により排気ガスG0の昇温が行われるため、予熱炉3における排気ガスG0の昇温が少なくて済むようになり、このためバーナ31の燃焼を抑えて燃料を節約することができるものである。
また触媒55b(酸化セリウム)の特性により、し尿汚泥等を乾燥処理した際に発生する排気ガスG0のように水分が多く含まれている排気ガスG0を、高効率で分解処理することができる。
【0033】
〔触媒機能を再生するための再生機構を具えた実施例〕
次に、触媒ユニット5における脱臭素子55に対して付着したダストを除去することにより、脱臭素子55の再生を行うための再生機構を具えた実施例を説明する。
前記排気ガスG0には、乾燥機や焼却炉からのダストが含まれており、このダストは脱臭素子55に付着する。特に汚泥乾燥時の排気ガスG0のダスト中には有機物が多量に含まれるので、ダストも臭気を発生している。この臭気は触媒55bにより脱臭されるが、ダスト濃度としてはおよそ0.2g/m3 Nであるため、長時間の乾燥や焼却の運転を続行すれば脱臭素子55へのダストの付着が増加し、脱臭素子55と臭気成分の効率的な接触が阻害されたり、排気ガスの通過が妨げられて脱臭が不十分になるのみならず、脱臭運転が困難になることもある。これを防ぐために、ダストの付着をセンサにより監視し、適宜なタイミングで脱臭素子55を加熱してダストを燃焼し、脱臭素子55を再生する。
具体的には図2に示すように、触媒ユニット5の周辺にダストセンサ7が設けられるものであり、前記ダストセンサ7は、臭気センサ71、圧力センサ72、温度センサ73、接触センサ74または光学センサ75、76のいずれか一つまたは複数が採用される。
まず前記臭気センサ71は、金属酸化物半導体等を素子とするものであって、臭気濃度を測定するためのセンサである。この実施例では排出口52付近に臭気センサ71を設置するとともに、臭気濃度の測定値に基づいて、制御装置10によって臭気指数を算出するようにした。そしてこの臭気指数が基準値(一例として27)以上になった時点で、制御装置10によって一定量以上のダストが脱臭素子55に付着したものと判断される。
【0034】
また前記圧力センサ72は、受圧ダイヤフラム等の感圧素子によって二点間の圧力差(圧力損失)を測定するためのセンサである。この実施例では排出口52と供給口51との間に圧力センサ72を設けるようにした。そしてこの圧力損失が基準値以上になった時点で、制御装置10によって一定量以上のダストが脱臭素子55に付着したものと判断される。
【0035】
また前記温度センサ73は、熱電対等によって温度を測定するためのセンサであり、この実施例では脱臭素子55に感温素子が接触するようにして設けられるようにした。そしてこの温度が基準値以下になった時点で、制御装置10によって一定量以上のダストが脱臭素子55に付着したものと判断される。
【0036】
また前記接触センサ74は、機械的接触によってダストの付着量を感知するためのセンサであり、この実施例では脱臭素子55に接触素子が当接するようにして設けられるようにした。そしてダストの付着量が基準値以上になった時点で、制御装置10によって一定量以上のダストが脱臭素子55に付着したものと判断される。
【0037】
また前記光学センサ75は、脱臭素子55における排気ガスG0の流入する面を光学的に臨むセンサであり、この実施例では検出部が脱臭素子55に非接触で臨むようにして設けられるようにした。そして脱臭素子55における排気ガスG0の流入する面から放射される特定波長の光の強度が規準値以下になった時点で、制御装置10によって一定量以上のダストが脱臭素子55に付着したものと判断される。
また、前記光学センサ76は、脱臭素子55の排気ガスG0の流入する経路に具えられた光学センサ76a及び、脱臭素子55により脱臭された脱臭排ガスG0の流入する経路に具えられた光学センサ76bであり、それぞれの経路のガス中のダスト濃度を測定するためのセンサである。光学センサ76aで測定されるダスト濃度と、光学センサ76bで測定されるダスト濃度の差が規準値以上になった時点で、脱臭素子55にダストの付着量が増大したものとして制御装置10により判断される。
【0038】
そして上述した各ダストセンサ7によって一定量以上のダストが脱臭素子55に付着したことが検知されると、制御装置10によって脱臭素子55の再生が行われる。
具体的にはバルブBが切り替えられて外気Aが脱臭装置1に取り込まれ、この外気Aは予熱炉3において400℃以上、600℃以下に昇温された後、触媒ユニット5に供給される。
触媒ユニット5においては、脱臭素子55に対して高温となった外気Aが触れた際に、ダストが燃焼して高温酸化され、CО2 、H2 О等に変化することとなる。この結果、脱臭素子55に付着していたダストが除去され、脱臭素子55の触媒機能が再生する。なおダストには灰分等も含まれるが、この再生により脱臭素子55に残留付着していることはない。
【0039】
尚、上述した脱臭素子55の再生は、汚泥等を乾燥する運転や焼却する運転を停止した状態で行われるが、バルブBを切り替えずに汚泥を乾燥する運転や、焼却する運転を続行したままの状態で行うこともできる。
すなわち、図2においては、予熱炉3で排気ガスG0を一般的な燃焼脱臭温度である650℃まで昇温することにより、燃焼脱臭を行いながら脱臭素子55の再生を行うことができる。
このような方法によれば、汚泥等を乾燥する運転や焼却する運転を停止するために必要な時間や再起動のために必要な時間と重油などの燃料が不要になるため、より効率的な乾燥運転、あるいは焼却運転が行える。
【0040】
上述したように、この実施例で示した脱臭装置1は、触媒ユニット5の機能低下を回避して稼働率を良好なものとすることができるものである。
特にダストが発生し易い、し尿汚泥や下水汚泥を乾燥した際に発生する排気ガスG0の脱臭処理を効率的に行うことができる。
なお図2では触媒素子55の再生機構の説明を主たるものとしたため、図1で示した温度センサTを記載していないが、実際の運転にあっては、これらを設けるとともに上述した基本となる実施例と同様に、温度センサTの検出値に基づいて、制御装置10によってバーナ31の燃焼度が調節されるものである。
なお触媒ユニット5に付着したダストを除去し触媒機能を再生するための再生機構としては、ダストを吹き飛ばすエアパージ機構を採用することもできる。
【0041】
〔レイアウトを変更した実施例〕
次いで脱臭装置1を構成する機器のレイアウトを異ならせた実施例を説明する。図3に示す実施例は、排気ガスG0(脱臭排ガスG1)の流れ順に、熱交換器2、触媒ユニット5、加熱炉6、熱交換器2を配置して脱臭装置1を構成したものである。
ここで加熱炉6とは、前記予熱炉3と同様の機器であり、一例として燃焼炉60にバーナ61を具えて成るものであり、バーナ61によって燃料を燃焼させて発生した熱によって、脱臭排ガスG1の昇温を行うための加熱機構である。なお前記燃焼炉60には流入口62及び流出口63が形成される。
因みに前記加熱炉6以外にも、燃焼炉、焼却炉、脱臭炉あるいは電気ヒータ等を加熱機構として適用することもできる。
【0042】
そして熱交換器2の流出口23と触媒ユニット5の供給口51との間が管路によって接続される。また触媒ユニット5の排出口52と加熱炉6の流入口62との間が管路によって接続される。更に加熱炉6の流出口63と熱交換器2の流入口24との間が管路によって接続されるとともに、この管路に温度センサTが具えられる。
【0043】
この実施例で示す脱臭装置1は、一例として上述したように構成されるものであり、以下その作動態様について説明する。
〔熱交換〕
まずブロワ8によって脱臭装置1に供給された排気ガスG0(一例として200℃)は熱交換器2に供給され、ここで流入口24から供給される脱臭排ガスG1(一例として400℃)との間で熱交換が行われ、一例として300℃に温度が上昇した状態で流出口23から触媒ユニット5に送られる。
【0044】
〔脱臭処理〕
次いで排気ガスG0は触媒ユニット5において脱臭素子55と接触し、その表面に担持されている触媒55bの作用によって脱臭処理が施され、臭気成分が所定値以下(一例として30以下)に除去された脱臭排ガスG1となって加熱炉6に送られる。
【0045】
〔加熱〕
次いで加熱炉6においては、温度センサTの検出値に基づいて、制御装置10によってバーナ61の燃焼度が調節され、脱臭排ガスG1の昇温が行われるものであり、この実施例では一例として300℃の脱臭排ガスG1を400℃にまで昇温するようにした。そしてこの脱臭排ガスG1は上述したように熱交換器2において排気ガスG0を昇温(温度調整)するための熱源として供された後、300℃に温度が低下した状態で外部に排出される。
【0046】
因みにこの実施例で示した脱臭装置1において脱臭素子55の再生を行うためには、図示しない外気がブロワ78により脱臭装置1に取り込まれ、この外気が熱交換器2に供給され、ここで流入口24から供給される高温ガスとの間で熱交換が行われて、400℃以上、600℃以下に昇温し、この外気を触媒ユニット5の供給口51に供給するようにすればよい。また、外気を取り込まずに、且つ、乾燥運転や焼却運転を続行したままで再生を行う手段として、熱交換器2の流出口23から流出する排気ガスG0の温度が400℃以上、600℃以下になるようにし、且つ、加熱炉6に流入するガスを650℃以上に昇温するように運転を行うことにより、燃焼脱臭を行いながら触媒ユニット5の再生を行うことができる。
【0047】
なお上述した複数の実施例は、本発明の好適な実施例の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更することが可能である。
例えば、触媒ユニット5を二基以上具え、脱臭処理を行いながら、再生処理を行うことができるように構成した場合には、脱臭装置1を停止させることなく運転することが可能となる。
また、以上の説明で述べた排気ガスG0は、乾燥排気ガスなどの比較的低温のガスであるため温度調整として昇温が行われたが、焼却炉排気ガス等、触媒55bの最適作用温度よりも高温の排気ガスG0である場合には、温度調整として降温が行われる。
具体的には、熱交換器2によって高温の排気ガスG0と外気空気との間で熱交換を行うことにより、排気ガスG0の温度を触媒55bの最適作用温度まで降温させてから触媒ユニット5に供給される。また、排気ガスG0に外気空気を混合してガスの温度を触媒55bの最適作用温度に降温してから触媒ユニット5に供給してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 脱臭装置
2 熱交換器
20 筐体
21 管路
22 流入口
23 流出口
24 流入口
25 流出口
3 予熱炉
30 燃焼炉
31 バーナ
32 流入口
33 流出口
5 触媒ユニット
50 筐体
51 供給口
52 排出口
53 ケージ
53a 金網
53b フレーム
55 脱臭素子
55P 脱臭素子
55a 支持基材
55b 触媒
6 加熱炉
60 燃焼炉
61 バーナ
62 流入口
63 流出口
7 ダストセンサ
71 臭気センサ
72 圧力センサ
73 温度センサ
74 接触センサ
75 光学センサ
76 光学センサ
76a 光学センサ
76b 光学センサ
8 ブロワ
10 制御装置
A 外気
B バルブ
G0 排気ガス
G1 脱臭排ガス
T 温度センサ
100 脱臭炉
101 バーナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥機や焼却炉の排気ガスの脱臭処理を行う装置であって、この装置は、酸化セリウムを有する脱臭素子を具えた触媒ユニットを用い、ダストを含む排気ガス中の有機物を酸化および/または分解した脱臭排ガスとするものであり、前記排気ガスを触媒の最適作用温度に温度調節した状態で、前記触媒ユニットに供給するための温度調整機構を具えたことを特徴とする排気ガスの脱臭装置。
【請求項2】
前記温度調整機構は、触媒ユニットから排出された脱臭排ガスから熱を回収する熱交換器であることを特徴とする請求項1記載の排気ガスの脱臭装置。
【請求項3】
前記温度調整機構は、熱交換器において昇温された排気ガスを、更に昇温するための予熱炉を具えたものであることを特徴とする請求項2記載の排気ガスの脱臭装置。
【請求項4】
前記触媒ユニットと熱交換器との間には、脱臭排ガスを昇温するための加熱炉が具えられていることを特徴とする請求項2記載の排気ガスの脱臭装置。
【請求項5】
前記脱臭素子に対して、一定量以上のダストが付着したことを検出するためのダストセンサと、脱臭素子に付着したダストを除去して触媒機能を再生するための再生機構とを具えたことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の排気ガスの脱臭装置。
【請求項6】
前記ダストセンサは、臭気センサ、圧力センサ、温度センサ、接触センサまたは光学センサのいずれか一つまたは複数が適用されたものであることを特徴とする請求項5記載の排気ガスの脱臭装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−92910(P2011−92910A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251854(P2009−251854)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000149310)株式会社大川原製作所 (64)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】