説明

排気センサのヒータ制御装置

【課題】本発明は、排気センサのヒータ制御装置に係り、内燃機関の停止後における排気センサのセンサ素子の加熱を効率的に実施することで、無駄に消費するエネルギを低減することにある。
【解決手段】内燃機関の排気管に取り付けられ、排気ガスの状態に応じた出力を行うセンサ素子と、センサ素子を加熱するヒータと、を有する排気センサのヒータ制御装置において、センサ素子が十分に活性化しかつ内燃機関が燃料カットされているときに、該センサ素子の出力が基準値を超えているか否かを判別する出力判別手段と、出力判別手段によりセンサ素子の出力が基準値を超えていると判別される場合に、内燃機関の停止後に所定時間だけヒータを用いてセンサ素子を加熱し、一方、出力判別手段によりセンサ素子の出力が基準値以下であると判別される場合に、内燃機関の停止後におけるヒータを用いたセンサ素子の加熱を行わない加熱制御手段と、を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気センサのヒータ制御装置に係り、特に、内燃機関から排出される排気ガスの特に酸素濃度(空燃比)を検出するための排気センサのヒータを制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関から排出される排気ガスの酸素濃度(空燃比)を検出する排気センサが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。排気センサは、排気ガスの空燃比に応じた電圧信号を電子制御ユニット(ECU)に向けて出力する。ECUは、排気センサの出力に基づいて排気ガスの空燃比を検出し、排気ガスの空燃比が目標空燃比に一致するように燃料噴射量や吸気量などをフィードバック制御する。
【0003】
上記した特許文献1記載の装置においては、内燃機関の燃料カット時に、排気センサが活性状態(所定温度以上)にあることを含み所定条件が成立したとき、排気センサの出力と空燃比との関係が校正される。また、上記した特許文献2記載の装置において、排気センサは、排気ガスの状態に応じた出力を行うセンサ素子と、センサ素子を加熱するヒータと、を有する。この装置においては、内燃機関が停止した後、所定期間だけヒータが通電されてセンサ素子が加熱されることにより、センサ素子に吸着した水などの吸着物が除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−255555号公報
【特許文献2】特開2005−207924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献2記載の装置では、内燃機関停止後におけるセンサ素子の加熱が、排気センサの周辺温度が所定温度(80℃)を下回るまで常に行われる。このため、内燃機関の停止後、排気センサのセンサ素子に吸着物が吸着していない場合や、そのセンサ素子の出力が素子の特性ズレや劣化などに起因してゼロ点ズレを起こしていない場合であっても、ヒータによるセンサ素子の加熱処理が行われるので、センサ素子の効率的な加熱処理が行われていなかった。
【0006】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、内燃機関の停止後における排気センサのセンサ素子の加熱を効率的に実施することで、無駄に消費するエネルギを低減することが可能な排気センサのヒータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、内燃機関の排気管に取り付けられた、排気ガスの状態に応じた出力を行うセンサ素子と、前記センサ素子を加熱するヒータと、を有する排気センサのヒータ制御装置であって、前記センサ素子が十分に活性化しかつ前記内燃機関が燃料カットされているときに、該センサ素子の出力が基準値を超えているか否かを判別する出力判別手段と、前記出力判別手段により前記センサ素子の出力が前記基準値を超えていると判別される場合に、前記内燃機関の停止後に所定時間だけ前記ヒータを用いて前記センサ素子を加熱し、一方、前記出力判別手段により前記センサ素子の出力が前記基準値以下であると判別される場合に、前記内燃機関の停止後における前記ヒータを用いた前記センサ素子の加熱を行わない加熱制御手段と、を備える排気センサのヒータ制御装置により達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内燃機関の停止後における排気センサのセンサ素子の加熱を効率的に実施することで、無駄に消費するエネルギを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例である排気センサのヒータ制御装置を含むシステムの構成図である。
【図2】本実施例の排気センサの断面図である。
【図3】本実施例の排気センサのヒータ制御装置において実行される制御ルーチンの一例のフローチャート(その1)である。
【図4】本実施例の排気センサのヒータ制御装置において実行される制御ルーチンの一例のフローチャート(その2)である。
【図5】本発明の変形例の排気センサのヒータ制御装置において用いられる、燃料カット中の電圧値OXSfcと所定電圧値Vkとの差と所定時間T2との関係を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて、本発明に係る排気センサのヒータ制御装置の具体的な実施の形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施例である排気センサ10のヒータ制御装置12を含むシステムの構成図を示す。また、図2は、本実施例の排気センサ10の断面図を示す。
【0012】
本実施例の排気センサ10は、自動車などに搭載される内燃機関の下流側に設けられた排気管14に取り付けられており、その排気管14を流通する排気ガスの酸素濃度(空燃比)を検出するためのセンサである。排気センサ10は、排気管14を流通した排気ガスの状態(具体的には、その排気ガス中に酸素が存在するか否か、すなわち、空燃比がリーンであるかリッチであるか)に応じた信号を出力するセンサ素子20と、そのセンサ素子20を加熱するヒータ22と、を有している。尚、排気センサ10は、上記の如く排気ガス中に酸素が存在するか否かに応じた信号を出力するOセンサに限らず、排気ガス中の酸素濃度に比例した出力特性を有するものであってもよい。
【0013】
センサ素子20は、一端(図2における下端)が閉じられた管状構造を有している。センサ素子20は、その外周面が排気管14中の排気ガスに晒されるようにかつその内周面が大気に晒されるように排気管14に組み付けられている。センサ素子20は、断面U字形の固体電解質層24と、その固体電解質層24の外周面に設置された排気電極26と、その固体電解質層24の内周面に設置された大気電極28と、を有している。固体電解質層24は、ジルコニア素子(ZrO)などの固体電解質により構成されている。また、排気電極26及び大気電極28はそれぞれ、触媒作用の高い白金などの金属により構成されている。
【0014】
センサ素子20は、上記の如く排気ガスに晒されるので、センサ素子20には、排気ガス中の水や二酸化炭素,酸素などの成分が吸着し得る。センサ素子20は、例えば550℃〜650℃の活性温度に加熱されることにより活性化して、安定した出力を生じ得る活性状態になる。センサ素子20が活性状態になると、そのセンサ素子20に排気ガス中の水や二酸化炭素,酸素などの成分が吸着することは防止される。センサ素子20の内周側には、大気に開放された大気室30が形成されている。上記したヒータ22は、大気室30内に配置されている。ヒータ22は、アルミナなどにより構成されている。ヒータ22は、通電されることにより発熱し、センサ素子20を上記の活性温度に加熱する。
【0015】
上記した排気センサ10のセンサ素子20(具体的には、排気電極26及び大気電極28)並びにそのヒータ22には、マイクロコンピュータを主体に構成されたセンサ用電子制御ユニット(以下、センサECUと称す)32が接続されている。センサECU32は、ヒータ制御装置12を構成する。センサECU32は、車載バッテリから電力供給されている。センサECU32は、車両のイグニションがオンからオフへ切り替わった後すなわち内燃機関が停止した後、少なくとも所定の時間は作動することが可能である。
【0016】
排気電極26と大気電極28とは、排気ガス中に酸素が存在するか否かに応じて、互いに異なる起電力を発生する。センサECU32は、排気電極26側の起電力及び大気電極28側の起電力をセンサ素子20のセンサ出力として取り込み、それらの起電力に基づいて排気ガス中に酸素が存在するか否かすなわち空燃比がリーンであるかリッチであるかを判別する。
【0017】
センサECU32には、内燃機関の制御(具体的には、燃料噴射量や吸気量の制御)を行うエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUと称す)34が接続されている。センサECU32とエンジンECU34との間においては、センサ情報(例えば、排気センサ10の出力など)、及び、エンジン状態情報(例えば、エンジン始動や停止など)が授受される。エンジンECU34は、受信したセンサ情報に基づいて、燃料噴射量や吸気量の空燃比フィードバック制御などを実行する。また、センサECU32は、受信したエンジン状態情報に基づいて、ヒータ22の通電制御などを実行する。
【0018】
次に、図3及び図4を参照して、本実施例の排気センサ10のヒータ制御装置12における制御動作について説明する。図3は、本実施例の排気センサ10のヒータ制御装置12においてセンサECU32が実行する制御ルーチンの一例のフローチャート(その1)を示す。また、図4は、本実施例の排気センサ10のヒータ制御装置12においてセンサECU32が実行する制御ルーチンの一例のフローチャート(その2)を示す。
【0019】
本実施例のヒータ制御装置12において、センサECU32は、内燃機関が始動されたことを検知すると(ステップ100)、ヒータ22への通電を開始する(ステップ102)。尚、ヒータ22への通電は、内燃機関が駆動されている際は継続して行われるものとすればよいが、条件などによって停止するものとしてもよい。ヒータ22が通電されると、センサ素子20が加熱される。そして、センサ素子20の温度が活性温度まで上昇すると、センサ素子20の表面から吸着物が脱離するので、センサ素子20が十分に活性化する。従って、本実施例においては、内燃機関の始動直後にも、センサ素子20を安定した出力を生じ得る活性状態にすることが可能である。
【0020】
センサECU32は、また、内燃機関が始動されたことを検知しかつセンサ素子20が十分に活性化したと判断すると、以後、所定時間毎に、排気センサ10のセンサ素子20のセンサ出力を取り込み、その取り込んだセンサ出力に基づいて排気ガス中に酸素が存在するか否かすなわち空燃比がリーンであるかリッチであるかを判別する。センサECU32は、排気ガス中の酸素の存在有無すなわち空燃比のリーン/リッチを判別するのに必要な、センサ素子20のセンサ出力を補正するための学習値OXSkを記憶するメモリ40を有している。尚、このメモリ40に記憶する学習値OXSkの初期値は、ゼロであるとする。
【0021】
センサECU32は、排気ガス中の酸素の存在有無すなわち空燃比のリーン/リッチを判別するうえで、まず、センサ素子20の排気電極26側と大気電極28側との間に実際に生じている起電力差を実電圧値OXSa(尚、この実電圧値OXSaは、排気電極26側の酸素濃度が大気電極28側の酸素濃度に比べて低くなるほどゼロ電圧を基準にして大きくなる値とする。)として算出したうえで、その実電圧値OXSaから学習値OXSkを減算することで、その実電圧値OXSaを排気ガス中の酸素有無に応じた想定電圧値OXSに変換(補正)する(ステップ104)。そして、その想定電圧値OXSを実際に用いるべきセンサ出力として扱って、排気ガス中に酸素が存在するか否かすなわち空燃比がリーンであるかリッチであるかを判別し、その判別結果を示すセンサ情報をエンジンECU34へ供給する。エンジンECU34は、センサECU32からのセンサ情報に基づいて空燃比フィードバック制御などを行う。
【0022】
また、センサECU32は、内燃機関の始動後、センサ素子20が十分に活性化したと判断すると、運転者のアクセルペダル操作やブレーキペダル操作などに基づいて内燃機関が燃料カットされているか否かを判別すると共に、また、内燃機関が燃料カットされていると判別したときは更にその燃料カットがその開始から所定時間T1継続しているか否かを判別する(ステップ106)。尚、この所定時間T1は、燃料カットが開始されてからその燃料カットの影響が排気センサ10のセンサ素子20の出力に及ぶまでに要する遅れ時間であって、予め定められた時間(例えば3秒など)である。
【0023】
センサECU32は、内燃機関が燃料カットされていないと判別した場合或いは内燃機関の燃料カットが未だ所定時間T1継続して行われていないと判別した場合は、排気センサ10のセンサ素子20の外周面側が大気に相当する酸素濃度に至っていないと判断できるので、今回のルーチンを終了する。一方、内燃機関の燃料カットが所定時間T1継続していると判別した場合は、排気センサ10のセンサ素子20の外周面側が大気に相当する酸素濃度に至っていると判断できるので、その時点で取り込まれるセンサ素子20のセンサ出力に基づいて、排気電極26側と大気電極28側との間の実電圧値OXSaを算出し、その実電圧値OXSaを燃料カット中の電圧値OXSfcとして設定する処理を実行する(ステップ108)。
【0024】
内燃機関の燃料カットが所定時間T1継続すると、センサ素子20の外周面側が大気に相当する酸素濃度に至るので、そのセンサ素子20の排気電極26側の酸素濃度と大気電極28側の酸素濃度との差はほとんど無くなる。このため、センサ素子20に不要な成分が吸着していなければ、上記した燃料カット中の電圧値OXSfcは、ほぼゼロである筈であり、その燃料カット中の電圧値OXSfcがゼロ近傍の値でないときは、その後、排気ガス中の酸素有無を判別するうえでセンサ出力として用いるべき想定電圧値OXSを、排気電極26側と大気電極28側との間の実電圧値OXSaから適切に補正して得ることが必要であり、メモリ40に記憶する学習値OXSkを適切に更新することが必要である。また、燃料カット中の電圧値OXSfcがゼロ近傍の値でないときは、センサ素子20に不要な成分が吸着している可能性があるので、ヒータ22を用いたセンサ素子20の加熱によりその吸着成分を除去することが適切である。
【0025】
センサECU32は、燃料カット中の電圧値OXSfcを設定すると、その電圧値OXSfcが所定電圧値Vkを超えているか否かを判別する(ステップ110)。尚、この所定電圧値Vkは、センサ素子20に不要な成分が吸着していないときに燃料カット中の電圧値OXSfcとして実現されるべき電圧値の基準上限値であって、例えばほぼゼロに設定されている。
【0026】
センサECU32は、燃料カット中の電圧値OXSfcが所定電圧値Vkを超えていないと判別した場合は、センサ素子20に不要な成分が吸着していないと判断できるので、焼成フラグをオフにセットする(ステップ112)と共に、上記のメモリ40に記憶する学習値OXSkをゼロにリセットしかつ後述の焼成回数nをゼロにリセットする処理を実行する(ステップ114)。尚、上記の焼成フラグは、センサ素子20の吸着成分を除去すべくヒータ22を用いたセンサ素子20の加熱処理を実行すべきか否かを示すフラグであって、その加熱処理を実行すべき場合にオンされ、一方、その加熱処理を実行すべきでない場合にオフされる。
【0027】
一方、燃料カット中の電圧値OXSfcが所定電圧値Vkを超えていると判別した場合は、センサ素子20に不要な成分が吸着している可能性があると判断できるので、焼成フラグをオンにセットする(ステップ116)と共に、その燃料カット中の電圧値OXSfcを、メモリ40に記憶する学習値OXSkとして設定する処理を実行する(ステップ118)。
【0028】
このように、本実施例において、センサECU32は、センサ素子20が十分に活性化した後、内燃機関の燃料カットが行われているとき、燃料カット中の電圧値OXSfcが所定電圧値Vkを超えない場合には焼成フラグをオフし、一方、燃料カット中の電圧値OXSfcが所定電圧値Vkを超える場合には焼成フラグをオンする。
【0029】
また、センサECU32は、上記したステップ114の処理を実行すると、以後、内燃機関の駆動中、排気センサ10のセンサ素子20のセンサ出力に基づいて排気ガス中に酸素が存在するか否かを判別するうえで、学習値OXSkとしてゼロを用いることとなる。一方、上記したステップ118処理を実行すると、以後、内燃機関の駆動中、排気センサ10のセンサ素子20のセンサ出力に基づいて排気ガス中に酸素が存在するか否かを判別するうえで、学習値OXSkとして、燃料カット中に排気電極26側と大気電極28側との間の実際に生じた電圧値OXSfcを用いることとなる。
【0030】
このため、本実施例によれば、内燃機関の駆動中に排気ガス中の酸素有無を判別するうえでセンサ出力として用いるべき想定電圧値OXSを排気電極26側と大気電極28側との間の実電圧値OXSaに基づいて算出するうえで、補正値として適切な学習値OXSfcを設定してメモリ40に記憶することができ、その結果として、その記憶後、燃料カットが解除されて内燃機関が通常駆動されるときにも、排気センサ10を用いた排気ガスの酸素濃度検出を適切に実行することが可能となる。従って、本実施例によれば、排気センサ10からのセンサ出力が適切に補正されないことに伴う燃費悪化を抑制することができ、空燃比フィードバック制御などを適切に実行することができる。
【0031】
また、本実施例において、センサECU32は、内燃機関が駆動された後、前回処理時から今回処理時にかけて内燃機関が駆動された状態から停止された状態へ移行したか否かを判別する(ステップ150)。その結果、否定判定した場合は、以後何ら処理を進めることなく今回のルーチンを終了する。一方、肯定判定した場合は、次に、メモリ40に記憶している焼成フラグがオン状態にあるか否かを判別する(ステップ152)。
【0032】
センサECU32は、ステップ152において否定判定した場合は、ヒータ22への通電を停止する処理を行う(ステップ154)。このため、内燃機関が停止した際に焼成フラグがオフ状態にあるときは、その停止後直ちに、ヒータ22への通電が停止され、センサ素子20の加熱処理が中止される。
【0033】
一方、ステップ152において肯定判定した場合は、ヒータ22への通電を停止せず、その通電を実行する処理を行う(ステップ156)。具体的には、内燃機関の停止後、センサ素子20の温度が活性温度以上で所定時間T2保持されるようにヒータ22の通電をその所定時間T2だけ継続して行う。尚、この所定時間T2は、センサ素子20の温度が活性温度以上に保持された場合にそのセンサ素子20に吸着した吸着物を燃焼により除去できるだけの時間であって、例えば1分程度に設定されている。このため、内燃機関が停止した際に焼成フラグがオン状態にあるときは、その停止後、所定時間T2が経過するまで、ヒータ22への通電が実行され、センサ素子20の加熱処理が行われる。
【0034】
センサECU32は、ステップ156においてセンサ素子20の加熱処理を行った場合、焼成回数nを“1”だけインクリメントする処理を実行する(ステップ158)。尚、焼成回数nは、燃料カット中の電圧値OXSfc(すなわち、その燃料カット中の排気電極26側と大気電極28側との間の実電圧値OXSa)が所定電圧値Vkを超えてから次に所定電圧値Vk以下となるまでに、ヒータ22への通電によりセンサ素子20の加熱処理が行われた回数である。
【0035】
センサECU32は、ステップ158の処理後、焼成回数nが所定回数に達しているか否かを判別する(ステップ160)。尚、この所定回数は、燃料カット中の電圧値OXSfcが所定電圧値Vkを超えてから次に所定電圧値Vk以下となるまでに、ヒータ22への通電によりセンサ素子20の加熱処理が行われた回数として、排気センサ10の異常が生じていると判断できる最小回数であり、例えば10回である。
【0036】
その結果、焼成回数nが所定回数に達していないと判別した場合は、排気センサ10が正常状態にあると判定する(ステップ162)。一方、焼成回数nが所定回数に達していると判別した場合は、排気センサ10に異常が生じていると判定し、異常コードを記憶して、運転者が視認可能な故障警告灯(MIL)を点灯する処理を行う(ステップ164)。
【0037】
このように、本実施例において、センサECU32は、焼成フラグがオフされている場合すなわちセンサ素子20のセンサ出力に基づく燃料カット中の電圧値OXSfcが所定電圧値Vkを超えていなかった場合は、内燃機関が停止した後、直ちにヒータ22への通電を停止してセンサ素子20の加熱処理を終了する一方、焼成フラグがオンされている場合すなわちセンサ素子20のセンサ出力に基づく燃料カット中の電圧値OXSfcが所定電圧値Vkを超えていた場合は、内燃機関が停止した後、所定時間T2だけヒータ22への通電を保持してセンサ素子20の加熱処理を継続する。
【0038】
センサ素子20のセンサ出力に基づく燃料カット中の電圧値OXSfcが所定電圧値Vkを超えているときは、そのセンサ素子20に不要な成分が吸着している可能性があるが、上記の如く内燃機関の停止後の所定時間T2だけそのセンサ素子20の加熱処理が継続されれば、センサ素子20に付着する成分が燃焼除去されるので、その結果として、その燃焼除去後においてセンサ素子20のセンサ出力に基づく燃料カット中の電圧値OXSfcを所定電圧値Vk以下まで低下させることが可能となる。一方、センサ素子20のセンサ出力に基づく燃料カット中の電圧値OXSfcが所定電圧値Vkを超えていないときは、そのセンサ素子20に不要な成分が吸着している可能性は低く、上記した内燃機関の停止後におけるセンサ素子20の加熱処理は不要である。
【0039】
従って、本実施例のヒータ制御装置12によれば、内燃機関の停止後に一律に一定時間センサ素子20の加熱処理が行われる構成などに比べて、内燃機関の停止後における排気センサ10のセンサ素子20の加熱を効率的に実施することができ、無駄に消費する電力エネルギを低減することができる。
【0040】
また、本実施例において、センサECU32は、燃料カット中の電圧値OXSfc(すなわち、その燃料カット中の排気電極26側と大気電極28側との間の実電圧値OXSa)が所定電圧値Vkを超えてから次に所定電圧値Vk以下となるまでに、ヒータ22への通電によりセンサ素子20の加熱処理が行われた焼成回数nが所定回数に達しているときは、排気センサ10の異常として運転者が視認可能な故障警告灯を点灯する。
【0041】
このため、本実施例によれば、運転者に排気センサ10の異常を通知することができ、排気ガスの酸素濃度検出や空燃比フィードバック制御などが適切に行われていないことを知らせ、その排気センサ10の点検や交換を促すことができる。
【0042】
尚、上記の実施例においては、所定電圧値Vkが特許請求の範囲に記載した「基準値」に、センサECU32が図3に示すルーチン中ステップ110の処理を実行することが特許請求の範囲に記載した「出力判別手段」に、センサECU32がステップ152〜156の処理を実行することが特許請求の範囲に記載した「加熱制御手段」に、それぞれ相当している。
【0043】
ところで、上記の実施例においては、内燃機関の停止後、センサ素子20の温度を活性温度以上に保持すべきとき、ヒータ22への通電を所定時間T2だけ継続して行うこととしているが、この所定時間T2は、予め定められた一定の時間に限定されるものではなく、燃料カット中の電圧値OXSfcに応じて変更されるものであってもよい。具体的には、燃料カット中の電圧値OXSfcと所定電圧値Vkとの差が大きいほどすなわち燃料カット中の電圧値OXSfcが所定電圧値Vkから乖離している度合いが大きいほど、所定時間T2を長くし、その差が小さいほどすなわちその度合いが小さいほど、所定時間T2を短くすることとしてもよい(図5参照)。尚、この際、所定時間T2は、図5に示す如く、(OXSfc−Vk)に応じて比例的に変化することに限らず、(OXSfc−Vk)に応じて曲線的に変化することとしてもよい。
【0044】
燃料カット中の電圧値OXSfcが所定電圧値Vkから乖離している度合いが大きいほど、センサ素子20に吸着している不要な成分が多いと判断できる。上記の変形例の構成によれば、センサ素子20に吸着している不要な成分の量に応じて、内燃機関の停止後におけるセンサ素子20の加熱時間を変えることができるので、内燃機関の停止後、センサ素子20の吸着成分を燃焼除去するうえで必要なヒータ加熱時間を必要最小限に抑えつつ、確実にセンサ素子20に吸着している不要な成分をすべて燃焼除去することが可能である。尚、この場合、センサECU32が燃料カット中の電圧値OXSfc(詳細には、そのOXSfcと所定電圧値Vkとの差)に応じて所定時間T2を変更することが特許請求の範囲に記載した「時間変更手段」に相当する。
【符号の説明】
【0045】
10 排気センサ
12 ヒータ制御装置
20 センサ素子
22 ヒータ
32 センサ用電子制御ユニット(センサECU)
34 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)
40 メモリ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気管に取り付けられた、排気ガスの状態に応じた出力を行うセンサ素子と、前記センサ素子を加熱するヒータと、を有する排気センサのヒータ制御装置であって、
前記センサ素子が十分に活性化しかつ前記内燃機関が燃料カットされているときに、該センサ素子の出力が基準値を超えているか否かを判別する出力判別手段と、
前記出力判別手段により前記センサ素子の出力が前記基準値を超えていると判別される場合に、前記内燃機関の停止後に所定時間だけ前記ヒータを用いて前記センサ素子を加熱し、一方、前記出力判別手段により前記センサ素子の出力が前記基準値以下であると判別される場合に、前記内燃機関の停止後における前記ヒータを用いた前記センサ素子の加熱を行わない加熱制御手段と、
を備えることを特徴とする排気センサのヒータ制御装置。
【請求項2】
前記センサ素子が十分に活性化しかつ前記内燃機関が燃料カットされているときにおける前記センサ素子の出力に応じて、前記所定時間を変更する時間変更手段を備えることを特徴とする請求項1記載の排気センサのヒータ制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−2343(P2013−2343A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133552(P2011−133552)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】