説明

排気ターボ過給機におけるウエストゲート弁用制御装置

【課題】排気ターボ過給機1におけるウエストゲート弁4を,圧力作動式のアクチェータ5にて開閉作動する場合に,その開閉作動が不良・不能になることを低減する。
【解決手段】前記アクチェータ5に,その圧力室に対する圧力作動体10が前記ウエストゲート弁の開に作動したときにおいて開く構成にした弁機構18を設けて,この弁機構が開いたとき前記圧力室における過給空気を,前記アクチェータの前記ウエストゲート弁への連結部分14,15に向けて噴出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,内燃機関の排気ターボ過給機において,これに設けられているウエストゲート弁を開閉作動するための制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に,内燃機関に適用される排気ターボ過給機においては,その排気タービンをバイパスするウエストゲート弁を設け,このウエストゲート弁を前記内燃機関に対する過給圧に応じて開閉作動することにより,前記過給圧を制御するという構成にしており,この場合,従来は,先行技術としての特許文献1及び2等に記載されているように,前記ウエストゲート弁に,前記内燃機関に対する過給圧によって作動する圧力作動式のアクチェータを連結し,このアクチェータにて前記作動ウエストゲート弁を過給圧に応じて開閉作動するという構成にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−231165号公報
【特許文献2】特開平07−145735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来の構成においては,前記アクチェータの前記ウエストゲート弁への連結部分には,車両の走行の際に地面等からはね上げた融雪材や泥水等が付着することを繰り返して,錆び等の腐食や凝固が発生し,遂には,この連結部分が固まってしまうことになるから,前記アクチェータによる前記ウエストゲート弁の開閉作動が不良になったり,不能になったりするおそれが大きいという問題があった。
【0005】
本発明は,この問題を解消することを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を達成するため請求項1は,
「内燃機関の排気ターボ過給機におけるウエストゲート弁に,これを前記内燃機関に対する過給圧に応じて開閉作動する圧力作動式のアクチェータを連結して成るウエストゲート弁用制御装置において,
前記アクチェータに,その圧力室に対する圧力作動体が前記ウエストゲート弁の開に作動したときにおいて開く構成にした弁機構を設けて,この弁機構が開いたとき前記圧力室における過給空気を,前記アクチェータの前記ウエストゲート弁への連結部分に向けて噴出する構成にした。」
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
この構成において,アクチェータのウエストゲート弁への連結部分には,前記ウエストゲート弁が開き作動する度毎に,内燃機関に対する過給空気の一部が吹き付けられることになるから,前記連結部分に付着している融雪材や泥水等は,この吹き付けにて吹き飛ばされることになる。
【0008】
これにより,前記連結部分に錆び等の腐食や凝固が発生する頻度を確実に低減でき,ひいては,前記アクチェータによる前記ウエストゲート弁の開閉作動が不良になったり,不能になったりするおそれを大幅に低減できる。
【0009】
また,前記連結部分は,過給空気の吹き付けにて冷却されているために,この連結部分の部品としては,従来よりも耐熱性の低い材料を使用することが可能になり,コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態を示す図である。
【図2】前記実施の形態におけるアクチェータの縦断正面図である。
【図3】前記アクチェータが作動した状態を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下,本発明の実施の形態を,図1〜図3の図面について説明する。
【0012】
これらの図において,符号1は,図示しない内燃機関に対する排気ターボ過給機を示している。
【0013】
この排気ターボ過給機1は,従来から良く知られているように,排気タービン2にブロワー圧縮機3を直結して成る構成であり,その排気タービン2には,当該排気タービン2のバイパス通路を開閉するウエストゲート弁4が内蔵されている。
【0014】
符号5は,前記ウエストゲート弁4を,前記ブロワー圧縮機3から内燃機関に送られる過給空気の圧力,つまり,過給圧に応じて開閉作動する圧力作動式のアクチェータを示している。
【0015】
このアクチェータ5は,従来から良く知られ,且つ,図2に示すように,前記ブロワー圧縮機3にブラケット6にて取付けられるケーシング7と,このケーシング7内を圧力室8と大気室9とに区成するダイヤフラム又はピストン等の圧力作動体10と,この圧力作動体10に連結したロッド11とを備えて成り,前記ロッド11を,前記ケーシング7に設けた貫通孔12から前記大気室9の外に突出して,その先端を,前記ウエストゲート弁4における弁軸13に固着したアーム14に対してピン15にて連結することにより,前記ウエストゲート弁4を,前記圧力作動体10に対して設けた支持ばね16にて常閉に保持しているが,前記圧力室8に圧力伝達通路17を介して作用する過給圧が所定値を越えると,前記ウエストゲート弁4を,前記支持ばね16に抗して開き作動するという構成になっている。
【0016】
前記アクチェータ5には,その圧力作動体10が前記ウエストゲート弁4の開に作動したときにおいて開く構成にした弁機構18が設けられている。
【0017】
この弁機構18は,例えば図示したように,前記圧力作動体10に前記大気室9から前記圧力室8への方向に開くように設けた弁体19と,この弁体19を常時閉に保持するばね20とで構成され,前記圧力作動体10が前記ウエストゲート弁4の開に作動したときに,前記弁体19が,前記ケーシング7の内面に接当するか,前記ケーシング7に設けた調節ねじ21に接当することによって,図3のように前記ばね20に抗して開くように構成している。
【0018】
そして,前記弁体19が開くことにより,前記圧力室8内における過給空気が,大気室9に入り,この大気室9から前記ロッド11の貫通孔12を通って,図3に矢印Aで示すように,前記アクチェータ5の前記ウエストゲート弁4への連結部分であるところのアーム14及びピン15に向かって噴出する。
【0019】
この構成により,前記アクチェータ5の前記ウエストゲート弁4への連結部分であることろのアーム14及びピン15には,前記ウエストゲート弁4が開き作動する度毎に,内燃機関に対する過給空気の一部が吹き付けられることになるから,前記連結部分に付着している融雪材や泥水等は,この過給空気の吹き付けにて吹き飛ばされる。
【0020】
前記アクチェータ5における圧力作動体10に連動して,前記弁機構18における弁体19が開く時期及び開度は,前記調節ねじ21によって任意に変更することができる。
【0021】
なお,前記した実施の形態においては,前記大気室9内に入った過給空気を,前記ロッド11の貫通孔12から連結部分に向かって噴出する構成にした場合であったが,本発明は,これに限らず,前記大気室9内に入った過給空気を,図3に二点鎖線で示すように,前記ケーシング7に,前記貫通孔12に加え又はこれに代えて噴出口22を設け,この噴出口22から過給空気を二点鎖線の矢印A′で示すように,前記アクチェータ5の前記ウエストゲート弁4への連結部分に向けて噴出するという構成にすることができる。
【符号の説明】
【0022】
1 排気ターボ過給機
2 排気タービン
3 ブロワー圧縮機
4 ウエストゲート弁
5 アクチェータ
7 ケーシング
8 圧力室
10 圧力作動体(ダイヤフラム)
11 ロッド
13 ウエストゲート弁の弁軸
14 アーム
15 ピン
18 弁機構
19 弁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ターボ過給機におけるウエストゲート弁に,これを前記内燃機関に対する過給圧に応じて開閉作動する圧力作動式のアクチェータを連結して成るウエストゲート弁用制御装置において,
前記アクチェータに,その圧力室に対する圧力作動体が前記ウエストゲート弁の開に作動したときにおいて開く構成にした弁機構を設けて,この弁機構が開いたとき前記圧力室における過給空気を,前記アクチェータの前記ウエストゲート弁への連結部分に向けて噴出する構成にしたことを特徴とする排気ターボ過給機におけるウエストゲート弁用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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