説明

排気熱回収装置及び車両用空調装置

【課題】排気熱によってエンジン冷却液を加熱するときに、専用の温度センサを設けることなく、エンジン冷却液の温度を適正に把握する。
【解決手段】エンジン64の駆動を制御するエンジンECU66では、エンジン回転数Ne、エンジントルクT、吸気空気量Viaから、排気ガスエネルギーを算出し、排気ガスエネルギー及び冷却水の流量Vwから得られる排気熱回収器78での排気熱回収熱量と流量Vwから冷却水の温度上昇分となる水温ΔTwを算出する。エアコンECU50では、エンジンECUが算出した水温ΔTと水温センサ68によって検出する水温Twから、ヒータコア26へ供給される冷却水の水温Twinを算出し、この水温Twinに基づいてエアミックスダンパの開度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンによって走行する車両に設けられて、エンジンの排気熱を回収する排気熱回収装置及び、排気熱を用いて車室内の暖房を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両では、排気熱回収装置によってエンジンの排気熱を回収し、車室内の暖房や、エンジン始動時の暖機に用いるようにしたものがある。このような排気熱回収装置では、例えば、エンジン冷却液を伝熱媒体として、このエンジン冷却液と排気熱との間で熱交換を行うことにより、エンジンの排気熱によってエンジン冷却液を加熱することにより、エンジン始動時の温度上昇の促進や、暖房能力の向上を図るようにしている。
【0003】
一方、車両に設けられて車室内を暖房する空調装置(以下、エアコンとする)では、ヒータコアとエンジンとの間で循環される冷却液によって、ヒータコアを通過する空気を加熱して空調風を生成し、生成した空調風を車室内へ吹き出すことにより車室内を暖房するようにしている。
【0004】
また、このエアコンでは、エアミックスダンパによってヒータコアを通過する空気量とヒータコアをバイパスする空気量を制御することにより、所望の温度の空調風を生成するようにしている。
【0005】
ところで、エンジンの排気熱は、エンジン負荷が大きいと増加するが、エンジンがアイドル状態などで負荷が小さいと低下する。このために、排気熱を車室内の暖房に用いるときに、外気温度が低く暖房負荷が大きい時に、エンジンがアイドル状態となると十分な暖房能力が得られなくなってしまう。
【0006】
ここから、例えば、特許文献1では、排気熱回収器とエアコンのヒータコアとの間で、エンジン冷却液(エンジン冷却水)の水温を検出する水温センサを設け、水温センサによって検出したエンジン冷却水の水温に基づいて暖房条件を設定する提案がなされている。
【特許文献1】特開2004−169594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般にエンジンには、エンジン冷却水の温度を検出する温度センサを備えており、前記提案では、排気熱回収機とヒータコアの間に、既存の温度センサとは別に温度センサを設ける必要があり、これにより、部品数の増加と、これに伴う装置重量の増加などが生じてしまう。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、新たに水温センサなどの部品を追加すること無く、排気熱の回収量を把握可能とする排気熱回収装置及びは域熱を用いて車室内を効率的に暖房可能とする車両用空調装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明の排気熱回収装置は、エンジンの排気とエンジンから送り出されたエンジン冷却液との間で熱交換を行う排気熱回収器と、前記エンジンと前記排気熱回収器との間で前記エンジン冷却液が循環されると共に排気熱回収器で熱交換が行われたエンジン冷却液によって被加熱媒体を加熱する冷却液回路と、前記排気熱回収器から送り出されて前記被加熱媒体の加熱に用いられる前記エンジン冷却液の液温を、前記エンジンと排気熱回収器との間に設けた温度検出手段による検出温度及び排気熱回収器によって前記排気から回収する回収熱量から算出する算出手段と、を含むことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、排気熱回収器でエンジンの排気(排気ガス)とエンジン冷却液との間で熱交換を行うことにより、エンジン冷却液をエンジンの排気熱によって加熱し、加熱したエンジン冷却液によって被加熱媒体を加熱する。
【0011】
ここで、算出手段は、排気熱回収器での回収熱量を算出すると共に、被加熱媒体の加熱に用いるエンジン冷却液の液温を、液温検出手段によって検出される加熱前の液温と回収熱量から算出する。
【0012】
すなわち、一般に、エンジンには、エンジンから送り出すエンジン冷却液の液温を検出する液温センサが設けられており、この液温センサを液温検出手段として用い、排気熱回収器での回収熱量から被加熱媒体を加熱するときのエンジン冷却液の温度を算出する。
【0013】
これにより、排気熱回収器で加熱された後のエンジン冷却液の液温を得るときに、新たに設ける液温センサなどの検出手段を設ける必要がなく、部品数の増加及び部品数の増加に伴う重量、コストの増加を抑えることができる。
【0014】
なお、被加熱媒体としては、暖機運転時のエンジンであっても良く、また、ヒータコアなどを加熱手段として空調風を被加熱媒体とするなど、任意の被加熱媒体を適用することができ、被加熱媒体に応じてエンジン冷却液を用いて被加熱媒体を加熱するための加熱手段を設けるようにしても良い。
【0015】
このような本発明の排気熱回収装置では、前記回収熱量を、前記排気熱回収器を通過する前記エンジン冷却液の流量及び、前記エンジンの排気から回収される回収熱量に基づいて算出することを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、排気熱回収器でのエンジン冷却液の温度上昇分は、排気熱回収器で排気から回収される回収熱量と、エンジン冷却液の流量によって定まる。これと、液温検出手段によって検出する排気熱回収前のエンジン冷却液の液温から容易に、被加熱媒体へ送られるエンジン冷却液の液温が得られる。
【0017】
また、本発明の車両用空調装置は、エンジン冷却液によって空調風を加熱するヒータコアを備えた車両用空調装置であって、エンジンの排気とエンジンから送り出されたエンジン冷却液との間で熱交換を行う排気熱回収器と、前記エンジンから送り出されたエンジン冷却液が前記排気熱回収器及び前記ヒータコアを順に経てエンジンに戻されるように循環される冷却液回路と、前記冷却液回路を前記排気熱回収器から前記ヒータコアへ送られる前記エンジン冷却液の液温を、前記エンジンと排気熱回収器との間に設けた温度検出手段による検出温度及び排気熱回収器によって前記排気から回収する回収熱量から算出する算出手段と、前記算出手段によって算出された前記冷却液の液温に基づいて暖房能力を制御する空調制御手段と、を含むことを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、排気熱回収器によって加熱したエンジン冷却液を用いて、ヒータコアで空調風を加熱する。このときの暖房能力の制御を、排気熱回収器での加熱前の液温と排気熱回収器での回収熱量から算出する。
【0019】
これにより、排気熱回収器で加熱されたエンジン冷却液の液温を検出するための専用の液温センサを新たに設けること無く、高精度の暖房能力制御が可能となる。
【0020】
このような発明の車両用空調装置は、前記空調制御手段が、前記ヒータコアを通過する空調風の空気量を増減するエアミックスダンパの開度を制御する構成を適用することができる。
【0021】
また、本発明の車両用空調装置は、前記回収熱量を、前記排気熱回収器を通過する前記エンジン冷却液の流量及び、前記エンジンの排気から回収される回収熱量に基づいて算出する構成を適用することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、排気熱回収器によって加熱されたエンジンン冷却液の液温を検出するための液温センサなどを新たに設けることなく、排気熱によって加熱したエンジン冷却液の温度を適切に把握することができるという優れた効果が得られる。
【0023】
また、本発明の車両用空調装置では、排気熱回収器を用いて暖房能力の向上を図るときに、排気熱回収器によって加熱されたエンジン冷却液の温度を検出するための専用の温度センサを設けることなく、適正な空調風の温度制御が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。図2には、本実施の形態に係る車両用空調装置(以下、エアコン10とする)の概略構成を示している。
【0025】
エアコン10には、コンプレッサ12、コンデンサ14、エキスパンションバルブ16及びエバポレータ18によって冷媒を循環する冷凍サイクルが形成されている。
【0026】
コンプレッサ12は、回転駆動されることにより冷媒を圧縮して、高温、高圧の冷媒を送り出す。コンデンサ14は、この冷媒を冷却することにより液化し、エバポレータ18では、液化された冷媒が気化され、エバポレータ18を通過する空気を冷却すると共に、空気中の水分がエバポレータ18に結露することにより除湿が行なわれる。なお、エキスパンションバルブ16は、液化された冷媒を急激に減圧することにより霧状にしてエバポレータ18へ供給するようにして、エバポレータ18での冷媒の気化を促進する。
【0027】
また、エアコン10は、ブロワユニット20及びエアコンユニット22を備えている。ブロワユニット20には、ブロワファン24が設けられ、エアコンユニット22には、エバポレータ18及びヒータコア26が配設されている。
【0028】
ブロワユニット20には、車室内へ開口された内気導入口28と、車外に開口された外気導入口30が形成され、内気導入口28又は外気導入口30を選択的に開放する内外気切換ダンパ32が設けられている。
【0029】
エアコン10は、空調風の生成に用いる空気の導入モードとして内気循環モードと外気導入モードの選択が可能となっており、内気循環モードが選択されると、内外気切換ダンパ32によって内気導入口28が開かれると共に外気導入口30が閉じられ、外気導入モードが選択されると、内外気切換ダンパ32によって内気導入口28が閉じられる共に外気導入口30が開かれる。
【0030】
これにより、エアコン10では、ブロワモータ34が作動してブロワファン24が回転駆動されることにより、導入モードに応じて内気又は外気が導入されて、エアコンユニット22へ送り込まれる。
【0031】
エアコンユニット22には、エバポレータ18及びヒータコア26を通過する空気の流路が形成されている。このヒータコア26には、エンジン冷却水が循環されるようになっており、エアコン10では、ヒータコア26を通過する空気とエンジン冷却水との間で熱交換を行うことにより、空気を加熱する。なお、ヒータコア26へのエンジン冷却水の循環は後述する。
【0032】
エアコンユニット22内には、エバポレータ18とヒータコア26の間に、エアミックスダンパ36が設けられ、エアミックスダンパ36の開度Sによってヒータコア26を通過する空気量とヒータコア26をバイパスする空気量が制御される。
【0033】
エアコン10では、ヒータコア26によって加熱された空気と、ヒータコア26をバイパスした空気(エバポレータ18を通過したときのままの温度の空気)を混合して空調風を生成する。このときに、エアコン10では、エアミックスダンパ36の開度Sが制御されることにより、所定温度の空調風が生成されるようにしている。なお、エアミックスダンパ32の全閉状態(開度S=0°)では、エバポレータ18を通過した空気がヒータコア26をバイパスされ(MAX COOL)、エアミックスダンパ32が全開状態では、殆どの空気がヒータコア26を通過される(MAX HOOT)。
【0034】
エアコンユニット22には、この空調風の吹出し口として、ウインドガラスへ向けて開口されたセンタデフロスタ吹出し口、サイドデフロスタ吹出し口などのデフロスタ吹出し口38、車室内の乗員へ向けて開口されたセンタレジスタ吹出し口、サイドデフロスタ吹出し口などのレジスタ吹出し口40及び、前席と後席の乗員の足元に向けて開口された足元吹出し口42が形成され、デフロスタ吹出し口38、レジスタ吹出し口40及び足元吹出し口42のそれぞれを開閉するモード切換ダンパ44が設けられている。
【0035】
エアコン10では、吹出しモードに応じてデフロスタ吹出し口38、レジスタ吹出し口40ないし足元吹出し口42を開いて、空調風を吹き出すことにより車室内を空調する。
【0036】
一方、図3に示されるように、エアコン10は、空調運転を制御するエアコンECU50を備えている。エアコンECU50は、図示しないCPU、ROM、RAMなどがバスによって接続されたマイクロコンピュータと、入出力用のインターフェイス及び各種のドライバ回路を含む一般的構成となっている。
【0037】
エアコンECU50には、例えば、コンプレッサモータ52が接続され、このコンプレッサモータ52のオン/オフ及び回転数を制御することにより、エバポレータ18を通過する空気の温度、すなわち、冷房能力を制御している。なお、コンプレッサ12はエンジンによって駆動されるものであっても良く、このときには、エンジン駆動力を断続する電磁クラッチを設け、また、コンプレッサ12の圧縮能力が制御される構成であれば良い。
【0038】
また、エアコンECU50には、ブロワモータ34及び、内外気切換ダンパ32、エアミックスダンパ36、モード切換ダンパ44を駆動するアクチュエータ54A、54B、54Cが接続されている。
【0039】
エアコンECU50は、ブロワモータ34のオン/オフ及び回転数を制御することにより、吹出し口から吹き出される空調風の風量(ブロワ風量)を制御し、アクチュエータ54A〜54Cによって導入モードの切り換え、エアミックスダンパ36の開度Sの制御及び、吹き出しモードの切り換えを行う。
【0040】
また、エアコンECU50には、室内温度を検出する室温センサ56、外気温度を検出する外気温センサ58、日射量を検出する日射センサ60、エバポレータ18を通過した空気の温度(エバポレータ後温度)を検出するエバポレータ後温度センサ62などの各種のセンサが接続されている。
【0041】
エアコンECU50では、図示しない操作パネルのスイッチ操作によって設定される設定温度などの運転条件と、各種のセンサによって検出する環境条件に基づいて、室内を設定温度とするための目標吹出し温度を演算する。
【0042】
この目標吹出し温度の演算は、設定温度、室温センサ56によって検出する室温、外気温センサ58によって検出する外気温、日射センサ60によって検出する日射量から一般的演算式に基づいて得られる。
【0043】
また、エアコンECU50は、オートモードに設定されていると、目標吹出し温度に基づいて、エアミックスダンパ36の開度S、吹出しモードの設定及びブロワ風量の設定などを行い、これらの設定ないし操作パネル上の設定に基づいて空調運転を行う。
【0044】
これにより、エアコン10は、車室内が設定温度となるように空調運転が行われる。なお、このようなエアコン10の基本的動作は、公知の構成を適用でき、ここでは詳細な説明を省略する。
【0045】
ところで、図1に示されるように、エアコン10が設けられる車両には、内燃機関であるエンジン64及びエンジンECU66が設けられており、エンジンECU66によって制御されて駆動されるエンジン64の駆動力によって走行する。
【0046】
エンジンECU66には、イグニッションスイッチ、点火プラグ、燃料噴射弁、デリバリパイプ内の燃料圧力を検出する燃圧センサ、スロットルバルブを開閉駆動するスロットルモータ、スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサ、ブレーキペダルの踏み込みの有無及びパーキングブレーキの操作を検出するブレーキスイッチ、アクセルペダルの踏み込みの有無及び踏み込み量を検出するアクセルポジションセンサ、クランクシャフトの回転数などからエンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ、車速を検出する車速センサ、吸入空気量を検出するエアフローメータ、排気の空燃比を検出する空燃比センサ等が接続されている(何れも図示省略)。
【0047】
エアコンECU66では、接続されている各種のセンサ等の検出結果に基づいて、スロットルモータを駆動してスロットルバルブの開度を調整する。また、エンジンECU66では、燃料噴射弁からの燃料噴射量を調整して、給気工程時に燃料室に燃料を噴射することにより均質燃焼を実行し、圧縮工程末期に燃焼室内に燃料を噴射することにより成層燃焼を実行するなどしてエンジン66を駆動する。
【0048】
また、エンジン64には、図示しないラジエータとの間でエンジン冷却液(以下、冷却水とする)が循環されるようになっており、これにより、エンジン64が駆動されるときの温度上昇が抑えられている。
【0049】
また、エンジン64には、冷却水の温度(水温)を検出する水温センサ68が設けられており、この水温センサ68が、エンジンECU66に接続されている。これにより、エンジンECU66では、エンジン64を冷却した冷却水の水温の検出が可能となっている。
【0050】
なお、エンジン64及びエンジンECU66によるエンジン64の駆動制御は、公知の一般的構成を適用することができ、ここでは詳細な説明を省略する。また、本実施の形態では、エンジン64によって駆動される車両を例に説明するが、これに限らず、走行用の駆動源としてエンジン46に加えて電気モータが設けられた所謂ハイブリッド車であっても良い。
【0051】
一方、エンジン64には、排気ガスを導出する排気管70が接続されており、エンジン64から排出される排気ガスが、排気管70を介して大気中に放出される。なお、排気ガスの排気経路には、触媒及びマフラ(何れも図示省略)が設けられて、排気ガスが浄化され、大気中に放出されるときに消音される一般的構成となっている。
【0052】
また、この車両には、エンジン64の排気ガスから排気熱を回収する排気熱回収装置72が形成されており、この排気熱回収装置72によって回収した排気熱を車室内の暖房及び、エンジン64を始動するときの暖機促進を図るようにしている。
【0053】
エンジン64には、エアコン10のヒータコア26との間で冷却水を循環する冷却水回路74が形成されている。この冷却水回路74には、エンジン64の駆動力によって回転駆動されるウォータポンプ76が設けられており、エンジン64が駆動することにより、エンジン64の回転数に応じた回転数でウォータポンプ76が駆動される。
【0054】
冷却水回路74では、ウォータポンプ76が駆動されることにより回転数に応じた流量の冷却水がエンジン64からヒータコア26へ送られ、ヒータコア26を通過した冷却水がエンジン64に戻される。
【0055】
排気熱回収装置72は、排気ガスから排気熱を回収するときの熱交換器となる排気熱回収器78を備えており、この排気熱回収器78が排気管70に設けられている。これにより、エンジン64の排気ガスが排気熱回収器78を通過するようになっている。
【0056】
この排気熱回収器78内には、冷却水が通過する流路(図示省略)が形成されており、冷却水の導入口80Aが冷却水回路74のエンジン64側に接続され、冷却水の導出口80Bが冷却水回路74のヒータコア26側に接続されている。すなわち、冷却水回路74には、エンジン64、排気熱回収器78、ヒータコア26が直列接続されている。
【0057】
排気熱回収器78は、導入口80Aから導入された冷却水と排気ガスとの間で熱交換を行うことにより、排気ガス中の排気熱によって冷却水を加熱し、加熱された冷却水が、導出口80Bからヒータコア26へ送り出されるようにしている。これにより、ヒータコア26には、エンジン64の排気熱によって加熱された冷却水が供給されるようになっている。
【0058】
一方、図2に示されるように、エアコン10では、エアミックスダンパ36が設けされ、このエアミックスダンパ36によってヒータコア26へ案内される空気とヒータコア26をバイパスする空気に分割される。また、エアコン10では、ヒータコア26を通過した空気と、ヒータコア26をバイパスした空気を混合して、目標吹出し温度となる空調風が生成されるようになっており、エアコンECU50は、ヒータコア26を通過する空気の風量(流量)及びヒータコア26をバイパスする空気の風量(流量)を、エアミックスダンパ36の開度Sによって制御する。
【0059】
エアミックスダンパ36の開度Sは、ヒータコア26を通過する空気とヒータコア26をバイパスする空気の混合比から得られ、このときの混合比rは、一般に、目標吹出し温度TAO、エバポレータ18を通過した空気の温度(エバポレータ後温度Te)、ヒータコア36を通過した空気の温度(ヒータコア後温度Th)から得られる。
【0060】
r=(TAO−Te)/(Th−Te)
このときに、エアミックスダンパ36の開度Sは、混合比rが増えれば増加する増加関数として求められる。
【0061】
ここで、エバポレータ後温度Teは、エバポレータ後温度センサ62によって検出することができる。また、ヒータコア後温度Thは、ヒータコア26を流れる冷却水の水温TW、冷却水の流量及びヒータコア26の熱効率ηから得ることができ、このときの熱効率ηは、ヒータコア26によって定まり、予め設定した定数とすることができる。
【0062】
すなわち、ヒータコア後温度Thは、ヒータコア26に供給される冷却水の水温Twinと冷却水の流量から算出することができ、エアコンECU50は、このヒータコア後温度Thと、目標吹出し温度TAO及びエバポレータ後温度Teを用いて、エアミックスダンパ36の開度Sを設定し、設定した開度Sが得られるようにアクチュエータ54Bを駆動する。
【0063】
図1に示されるように、エアコンECU50は、エンジンECU66に接続されており、エアコンECU50は、エンジンECU66から、冷却水の水温Tw及び冷却水の流量を取得するようにしている。
【0064】
冷却水回路74を循環される冷却水の流量は、ウォータポンプ76の回転数によって定まり、ウォータポンプ76がエンジン64によって駆動されることから、エンジン回転数によってヒータコア26を流れる冷却水の流量が得られる。
【0065】
エンジンECU50は、エンジンECU66から冷却水の水温、冷却水の流量を取得すると、目標吹出し温度の空調風が得られるようにエアミックスダンパ36の開度Sを制御する。
【0066】
一方、ヒータコア26に供給される冷却水は、エンジン64から送り出された後、排気熱回収器78を通過することにより加熱されるために、水温センサ68で検出する冷却水の水温Twより高くなっている。
【0067】
ここから、エンジンECU66では、排気熱回収器78で回収される熱量からヒータコア26へ送り込まれる冷却水の水温Twinを算出し、エアコンECU50へ出力し、エアコンECU50では、この水温Twinに基づいてエアミックスダンパ36の開度Sを制御するようにしている。
【0068】
ここで、ヒータコア26へ送り込まれる冷却水の水温Twinの算出を説明する。
【0069】
ヒータコア26へ送り込まれる冷却水の水温Twinは、水温センサ68によって検出される冷却水の水温Twに、排気熱回収器78での温度上昇分となり、この温度を水温ΔTwとすると、
Twin=Tw+ΔTw
となる。
【0070】
一般に、エンジン64から排出される排気熱である排気ガスエネルギーQex(kw)は、エンジン回転数Ne(rpm)、エンジントルクT(Nm)及びエンジン64の吸入空気量Via(g/sec)から求められる。すなわち、排気ガスエネルギーQexは、エンジン回転数Ne、エンジントルクT及び吸入空気量Viaの関数として算出することができる。
【0071】
Qex=F(Ne、T、Via)
このとき、エンジン回転数Neはエンジン回転数センサによって検出でき、吸入空気量Viaはエアロフローメータによって検出することができると共に、エンジントルクTはエンジン回転数Neから求めることができる。
【0072】
一方、排気熱回収器78で回収される排気熱回収熱量Qrex(kw)は、排気熱回収器78の熱効率ηexと、冷却水の流量Vw(l/min)に応じて変化する。このとき、熱効率ηexは、排気熱回収器78によって定まる定数であることから、排気熱回収熱量Qexは、図4に示されるように、冷却水の流量Vwをパラメータとして、排気ガスエネルギーQexに比例する。
【0073】
すなわち、排気ガスエネルギーQexが同じであれば、冷却水の流量Vwが低い(例えば、流量Vwmin)と排気熱回収熱量Qrexも少なくなるが、冷却水の流量Vwが多い(例えば、流量Vwmax)と、排気熱回収熱量Qrexも多くなる。
なお、図4では、一例として最低流量の流量Vwminから最大流量Vwmaxの間で複数段階分の流量Vwを例示している。
【0074】
ここで、冷却水の流量Vwは、ウォータポンプ76の吐出能力と回転数によって変化し、このウォータポンプ76の回転数がエンジン回転数Neによって定まることから、エンジン回転数Neから求めることができる。
【0075】
さらに、排気熱回収器78での冷却水の上昇温度である水温ΔTwは、排気熱回収器76での排気熱回収熱量Qrexと冷却水の流量Vwから得られる。すなわち、
ΔTw=Qrex/(Cp・γ・Vw)
として算出することができる。ここで、Cpは冷却水の比熱、γは冷却水の比重であり、これにより、水温ΔTwは、排気熱回収熱量Qrexと冷却水の流量Vwから求められる。
【0076】
エンジンECU66では、エンジン回転数Ne、吸入空気量Viaに基づいて、排気熱回収器78での冷却水の温度上昇分である水温ΔTwを算出すると、水温センサ68によって検出される冷却水の水温Twと、排気熱回収器78での冷却水の温度上昇分である水温ΔTwをエアコンECU50へ出力する。
【0077】
エアコンECU50では、ヒータコア26に供給される冷却水の水温Twinを、水温Twと水温ΔTwから設定し(Twin=Tw+ΔTw)、エアミックスダンパ36の開度Sを制御する。
【0078】
これにより、エアコン10では、目標吹出し温度TAOの空調風が生成され、この空調風を車室内へ吹き出すことにより車室内の空調を行う。
【0079】
ここで、水温Twinとして、水温センサ68によって検出する水温Twを用いた場合、実際の温度よりも低い温度となり、この温度に基づいてエアミックスダンパ36の開度Sを制御すると、車室内の空調風の温度が目標吹出し温度TAOより高くなり、乗員に暖房の効き過ぎ感を生じさせてしまう。
【0080】
これに対して、排気熱回収器78での排気熱回収熱量Qrexを算出すると共に、この排気熱回収熱量Qrexと冷却水の流量Vwに基づいて、冷却水の温度上昇分となる水温ΔTwを算出し、水温Twと水温ΔTwに基づいてエアミックスダンパ36の開度Sを制御することにより、高精度の開度制御が可能となり、排気熱回収を行って車室内の暖房を行う時の効率化を図るときに、乗員に暖房の効き過ぎ感を生じさせてしまうのを確実に防止することができる。
【0081】
このときに、排気熱回収器78で加熱された冷却水の温度を検出するための温度センサを用いることがないので、温度センサを設けることによる部品数の増加、部品数の増加に伴う重量やコストの上昇を生じさせてしまうことがない。
【0082】
なお、以上説明した本実施の形態は、本発明の構成を限定するものではない。例えば、本実施の形態では、エンジンECU66で水温ΔTwの算出を行うようにしたが、本発明は、これに限らず、エンジンECU50で排気ガスエネルギーQexの算出から、水温ΔTwの算出までも行うようにしても良く、これにより、エンジンECU66の処理負荷の低減を図ることができる。
【0083】
また、本実施の形態では、エアコン10を例に説明したが、本発明が適用される車両用空調装置は、ヒータコアに循環されるエンジン冷却液を用いて空調風を加熱する任意の構成の車両用空調装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本実施の形態に係る排気熱回収装置の概略構成図である。
【図2】エアコンの概略構成図である。
【図3】エアコンの制御部の概略構成図である。
【図4】排気熱回収器における排気ガスエネルギーに対する排気熱回収熱量の概略を示す線図である。
【符号の説明】
【0085】
10 エアコン(車両用空調装置)
12 コンプレッサ
18 エバポレータ
26 ヒータコア
36 エアミックスダンパ
50 エアコンECU(算出手段、空調制御手段)
54B アクチュエータ
64 エンジン
66 エンジンECU(算出手段)
68 水温センサ(液温検出手段)
70 排気管
72 排気熱回収装置
74 冷却水回路(冷却液回路)
76 ウォータポンプ
78 排気熱回収器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気とエンジンから送り出されたエンジン冷却液との間で熱交換を行う排気熱回収器と、
前記エンジンと前記排気熱回収器との間で前記エンジン冷却液が循環されると共に排気熱回収器で熱交換が行われたエンジン冷却液によって被加熱媒体を加熱する冷却液回路と、
前記排気熱回収器から送り出されて前記被加熱媒体の加熱に用いられる前記エンジン冷却液の液温を、前記エンジンと排気熱回収器との間に設けた温度検出手段による検出温度及び排気熱回収器によって前記排気から回収する回収熱量から算出する算出手段と、
を含むことを特徴とする排気熱回収装置。
【請求項2】
前記回収熱量を、前記排気熱回収器を通過する前記エンジン冷却液の流量及び、前記エンジンの排気から回収される回収熱量に基づいて算出することを特徴とする請求項1に記載の排気熱回収装置。
【請求項3】
エンジン冷却液によって空調風を加熱するヒータコアを備えた車両用空調装置であって、
エンジンの排気とエンジンから送り出されたエンジン冷却液との間で熱交換を行う排気熱回収器と、
前記エンジンから送り出されたエンジン冷却液が前記排気熱回収器及び前記ヒータコアを順に経てエンジンに戻されるように循環される冷却液回路と、
前記冷却液回路を前記排気熱回収器から前記ヒータコアへ送られる前記エンジン冷却液の液温を、前記エンジンと排気熱回収器との間に設けた温度検出手段による検出温度及び排気熱回収器によって前記排気から回収する回収熱量から算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出された前記冷却液の液温に基づいて暖房能力を制御する空調制御手段と、
を含むことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
前記空調制御手段が、前記ヒータコアを通過する空調風の空気量を増減するエアミックスダンパの開度を制御することを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記回収熱量を、前記排気熱回収器を通過する前記エンジン冷却液の流量及び、前記エンジンの排気から回収される回収熱量に基づいて算出することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−111365(P2008−111365A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294322(P2006−294322)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】