説明

排水処理方法及び排水処理剤セット

【課題】簡易な設備で広範囲の汚濁物質、特にエマルジョンを含む排水を容易に浄化する排水処理方法を提供し、誰にでも簡単に使用可能な排水処理剤及び排水処理剤セットを提供すること。
【解決手段】鉱物に界面活性剤を吸着させ、鉱物に吸着した界面活性剤の疎水基とエマルジョンに吸着している界面活性剤の疎水基との疎水性相互作用を利用し、排水中のエマルジョンを、界面活性剤を吸着した鉱物に付着させ、分離除去する。
【選択図面】なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広範囲の汚濁物質、特にエマルジョンを含む排水を簡易な設備で容易に処理する排水処理方法、排水処理剤及び排水処理剤セットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
汚濁成分を含む排水の処理剤に関して、従来からケイ酸塩鉱物であるモンモリロナイト、ベントナイト、ゼオライト等が提案されている。
例えば、ベントナイト、ゼオライトを吸着・凝集剤として、他の無機凝集剤及び高分子凝集剤とともに使用し、排水中の汚濁成分を短時間に凝集し脱水性が良好なフロックを形成する方法が提案されている(特許文献1〜3)。
また、ベントナイトを無機凝集剤として、他の無機凝集剤及び高分子凝集剤と共に使用し、有機系、無機系の排水にかかわらず処理でき、また簡単な操作と装置で処理できる排水処理剤が提案されている(特許文献4〜5)。
さらに、モンモリロナイトを無機凝集剤として他の無機凝集剤及び高分子凝集剤と共に使用し、洗車排水などの汚濁物を含む排水の処理システムが提案されている(特許文献6)。
さらに、人工ゼオライトをフロック安定化剤としてのベントナイト及びカチオン系高分子凝集剤とともに使用した、固体系排水処理剤が提案されている(特許文献7)。
【0003】
上記特許文献に記載される汚濁排水の処理方法や処理剤は、いずれも高分子凝集剤を必須成分とした凝集沈殿法に関するものであり、生成した凝集物を分離する手段を必要とし、排水を簡易な設備で容易に浄化できる排水処理方法とはいえない。また処理剤成分も多く、処理操作が複雑となり単純ではない。
特に、排水中のエマルジョンは、従来から処理されにくく、酸性にしたり、エマルジョンブレーカーを添加し、エマルジョンを破壊してから処理されている。またガソリンスタンド等の油水分離槽では油吸着用の吸着マットを使用しているが、エマルジョンは吸着されず、その対策に苦慮しているのが実情である。さらに、高分子凝集剤を使用しても溶解している非イオン界面活性剤を分離することはできない。
【特許文献1】特開平9-239207公報
【特許文献2】特開平10-28808公報
【特許文献3】特開平ll-76706公報
【特許文献4】特開2003-33604公報
【特許文献5】特開2004-154726公報
【特許文献6】特開2004-202339公報
【特許文献7】特開2004-305893公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、簡易な設備で広範囲の汚濁物質、特にエマルジョンを含む排水を容易に浄化する排水処理方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は誰にでも簡単に使用可能な排水処理剤及び排水処理剤セットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鉱物に界面活性剤を吸着させると、鉱物に吸着した界面活性剤の疎水基とエマルジョンに吸着している界面活性剤の疎水基との疎水性相互作用により、両者が付着し排水処理能力が格段に向上することを見出し、本発明に至った。
【0006】
本発明による排水処理方法について説明する。
本発明で使用する鉱物は、界面活性剤を吸着するものであればよく、種々の物質が使用できるが、ケイ酸塩鉱物が排水処理効率及び豊富に産出し安価に入手できる点で好ましく、ケイ酸塩鉱物に対して界面活性剤はカチオン界面活性剤が吸着性の点で好ましいが、これに限定されるものではない。
【0007】
排水の汚濁物質が非イオン性エマルジョンである場合を図1で説明する。
排水中にケイ酸塩鉱物とカチオン界面活性剤を添加すると、カチオン界面活性剤は負帯電のエマルジョン粒子に親水基を水相に向けて吸着し、エマルジョン粒子は正帯電となり、負帯電のケイ酸塩鉱物粒子には疎水基を水相に向けて吸着する。
正帯電したエマルジョン粒子は、負帯電のケイ酸塩鉱物粒子に界面活性剤の疎水性相互作用及び静電引力により付着する。
【0008】
排水の汚濁物質がカチオン性エマルジョンである場合を図2で説明する。
排水中にケイ酸塩鉱物とカチオン界面活性剤を添加すると、カチオン界面活性剤は負帯電のケイ酸塩鉱物粒子に疎水基を水相に向けて吸着されるので、その結果、カチオン性エマルジョン粒子も、疎水性相互作用及び静電引力により負帯電のケイ酸塩鉱物粒子に付着する。
【0009】
排水の汚濁物質がアニオン性エマルジョンである場合を図3で説明する。
排水中にケイ酸塩鉱物とカチオン界面活性剤を添加すると、カチオン界面活性剤は、負帯電のケイ酸塩鉱物粒子に疎水基を水相に向けて吸着され、負帯電のエマルジョン粒子には吸着しているアニオン界面活性剤とイオン対を作ると同時に吸着もされるので、その結果、アニオン性エマルジョン粒子は、疎水性相互作用及び静電引力により負帯電のケイ酸塩鉱物粒子に付着する。
【0010】
排水の汚濁物質が分散微粒子の場合を図4で説明する。
排水中にケイ酸塩鉱物とカチオン界面活性剤を添加すると、カチオン界面活性剤は負帯電のケイ酸塩鉱物粒子及び負帯電の分散微粒子に疎水基を水相に向けて吸着されるので、その結果、分散微粒子は、負帯電のケイ酸塩鉱物粒子に疎水性相互作用により付着する。
【0011】
排水の汚濁物質が非イオン界面活性剤の場合を図5で説明する。
排水中にケイ酸塩鉱物とカチオン界面活性剤を添加すると、カチオン界面活性剤は負帯電のケイ酸塩鉱物粒子に疎水基を水相に向けて吸着されるので、その結果、排水中に溶解している非イオン界面活性剤は疎水性相互作用により、カチオン界面活性剤を吸着したケイ酸塩鉱物粒子に吸着する。
【0012】
排水の汚濁物質がアニオン界面活性剤の場合を図6で説明する。
排水中にケイ酸塩鉱物とカチオン界面活性剤を添加すると、カチオン界面活性剤は負帯電のケイ酸塩鉱物粒子に疎水基を水相に向けて吸着され、排水中のアニオン界面活性剤とはイオン対を作る。その結果、排水中に溶解しているアニオン界面活性剤は疎水性相互作用により、カチオン界面活性剤を吸着したケイ酸塩鉱物粒子に付着する。
【0013】
以上、排水にケイ酸塩鉱物とカチオン界面活性剤を添加し、排水中でカチオン界面活性剤をケイ酸塩鉱物に吸着させる方法を説明したが、あらかじめ、カチオン界面活性剤を吸着したケイ酸塩鉱物を使用した場合にも、ケイ酸塩鉱物に疎水基を水相に向け吸着された界面活性剤の疎水性相互作用により、エマルジョン粒子、及び界面活性剤はケイ酸塩鉱物と吸着及び付着する。
【0014】
次に、汚濁物質が負帯電のケイ酸塩鉱物粒子に吸着及び付着された排水中に空気を吹き込むと、ケイ酸塩鉱物粒子は、図1ないし図6に示されるように、カチオン界面活性剤で疎水化されている為、疎水性の気泡に吸着及び付着し、スカムとなって容易に水面へ浮上する。従って大掛かりな加圧式浮上装置は不要で、コンプレッサー及び散気管によるバブリングだけで汚濁物質を吸着及び付着したケイ酸塩鉱物粒子を浮上させ回収することができる。
【0015】
カチオン界面活性剤の添加量には使用材料によって異なる適正な範囲がある。
例えば、ケイ酸塩鉱物としてモンモリロナイトを、カチオン界面活性剤としてセチルトリメチルアンモニウムブロマイドを使用した場合、セチルトリメチルアンモニウムブロマイドのモンモリロナイトに対する適正添加量は5〜45%である。セチルトリメチルアンモニウムブロマイドが過剰に添加されると、モンモリロナイト粒子表面に2層吸着し、2層目は親水基が水相に配向し、モンモリロナイト粒子表面は親水性且つ正帯電となり、排水処理能力が低下する。
【0016】
ケイ酸塩鉱物としてモンモリロナイトを使用して汚濁物質である墨汁(カーボンブラック分散液)を処理した実施例3、4、5からわかるように、処理効率はカチオン界面活性剤より劣るが、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤も使用することができる。
【0017】
以上説明したように、本発明の方法によれば、排水中に溶存する界面活性剤も除去することができるが、排水に溶解している界面活性剤は分子単位でカチオン界面活性剤を吸着したケイ酸塩鉱物粒子に吸着及び付着されるので、効率が悪い。そこで、溶解している界面活性剤量に見合う液体油を添加しエマルジョン化することで、界面活性剤を効率良く除去できる。
【0018】
汚濁物質の吸着及び付着した鉱物をより簡単に回収する為に、処理効率は劣るが鉱物としてガラス繊維を、界面活性剤としてカチオン界面活性剤を使用し、ガラス繊維を不織布に収納して排水と接触させ排水処理を行うこともできる。
【0019】
本発明の排水処理剤セットは、鉱物と界面活性剤、および必要に応じて液体油をセットにしたもので、この処理剤セットを使用すれば、だれでも簡単に汚濁排水を処理することができる。
【0020】
本発明の廃水処理剤セットの鉱物には、微粉末、該微粉末の水分散液であるスラリー、および繊維をマット状にしたもの等がある。一方、界面活性剤は水溶液が好ましく、あらかじめ鉱物に吸着させておいてもよい。
【0021】
本発明の実施の態様は以下の通りである。
(1)鉱物に界面活性剤を吸着させて、排水中の汚濁物質を吸着及び付着除去する排水処理方法。
(2)前記鉱物を含む排水中に空気をバブリングしてなる(1)の排水処理方法。
(3)排水中に液体油を添加してなる(1)ないし(2)の排水処理方法。
(4)あらかじめ界面活性剤を吸着させた鉱物からなる排水処理剤。
(5)(4)記載の排水処理剤と曝気手段からなる排水処理剤セット。
(6)界面活性剤および鉱物からなる排水処理剤セット。
(7)さらに液体油を加えてなる(6)の排水処理剤セット。
(8)鉱物があらかじめ界面活性剤を吸着させたものである(7)の排水処理剤セット。
(9)さらに、曝気手段を加えてなる(6)ないし(8)のいずれかの排水処理剤セット。
【0022】
本発明における鉱物としては、ケイ酸塩鉱物、酸化鉱物、炭酸塩鉱物、硫酸塩鉱物等を使用できる。また鉱物は天然物、合成物のいずれでも良い。
【0023】
ケイ酸塩鉱物には、網目構造鉱物であるゼオライト、層状構造をもった鉱物であるタルク、カオリン、スメクタイト粘土鉱物群、繊維状鉱物であるセピオライト等がある。
【0024】
スメクタイト粘土鉱物群には、モンモリロナイト、サポナイト、バイデライト、ヘクトライト、スチイブンサイト等があるが、モンモリロナイトを主成分としたベントナイトが実用的である。
【0025】
本発明における界面活性剤としては、水溶性のカチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等を使用できるが、疎水性相互作用の強い界面活性剤が好ましい。
【0026】
アニオン界面活性剤には、アルカンスルホン塩酸、アルファオレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルリン酸塩等がある。
【0027】
カチオン界面活性剤には、モノアルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等がある。
【0028】
非イオン界面活性剤にはポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、しょ糖エステル等がある。
【0029】
両性界面活性剤にはアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリニウム−1−アセテート、アルキル(又はジアルキル)ジアミノエチルグリシン等がある。
【0030】
ケイ酸塩鉱物と界面活性剤の組合せにおいては、カチオン界面活性剤が好ましい。
【0031】
本発明における液体油とは、水に溶解せず、引火点が100℃以上で融点が0℃以下の乳化されやすい液体油であれば良く、例えば流動パラフィン、中鎖脂肪酸グリセライド等をあげることができる。
【0032】
本発明による既設の油水分離槽を利用した排水処理法について説明する。
図7に示すように、一般的に油水分離槽は4槽で構成されている。本発明による既設の油水分離槽は2槽あればよく、第3槽、第4槽は水槽として利用すればよい。
第1槽においてスラリー状ケイ酸塩鉱物、カチオン界面活性剤水溶液、液体油等を排水流入量に対して定量的にポンプで注入し、さらにコンプレッサーで空気を散気管に送りバブリングを行い混合する。すると、汚濁物質は上述したメカニズムによりケイ酸塩鉱物に吸着及び付着される。
【0033】
第2槽において第1槽より移行した排水にコンプレッサー及び散気管によるバブリングを行い、汚濁物質を吸着及び付着したケイ酸塩鉱物粒子を浮上させる。
浮上したスカム状のケイ酸塩鉱物粒子は掻き取り、吸引、ろ過、液体サイクロン等により回収する。ケイ酸塩鉱物粒子は疎水性の為、水分の除去性がよく、ろ過も容易である。
処理水は排出しても良いが、リサイクルすることもできる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、既設の油水分離槽を利用し、簡易な設備で広範囲の汚濁物質、特にエマルジョンを含む排水を容易に浄化でき、処理水の再利用も可能である。水質保全及び節水に対して大きく貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
モデル排水を使用した本発明の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0036】
(1)500mlビーカーに汚濁物質として非イオン性40%マイクロクリスタリンワックスエマルジョン(日本精蝋株式会社製、EMUSTA-042X)を1ml採取し、水道水で約500mlとしたものをモデル排水とする。
(2)上記モデル排水にアニオン界面活性剤(テイカ株式会社製、テイカライトA1225、25%アンモニウム高級アルコールサルフェート)の12%水溶液を2.5g添加し、さらにアルミナ (日本軽金属株式会社製、A33F、平均粒径0.7μm)を12g添加し、マグネチックスターラーで1分間攪拌すると、エマルジョン粒子を付着した鉱物が沈降し、上層が無色透明となった。
(3)上記モデル排水をNo.5Cのろ紙で沈降物をろ別し、モデル排水より非イオン性エマルジョン粒子が除去された無色透明の処理水を得ることができた。
【実施例2】
【0037】
(1)500mlビーカーに実施例1と同様のモデル排水を調製する。
(2)上記モデル排水にテイカライトAl225の12%水溶液を2.5g添加し、さらに酸化マグネシウム (クニミネ工業株式会社製、M-511、粒状)を乳鉢で粉砕後、8gを添加し、マグネチックスターラーで1分問攪拌すると、エマルジョン粒子を付着した鉱物が沈降し、上層が無色透明となった。
(3)上記モデル排水をNo.5Aのろ紙で沈降物をろ別し、モデル排水より非イオン性エマルジョン粒子が除去された無色透明の処理水を得ることができた。
【実施例3】
【0038】
(1)100mlビーカーに汚濁物質として墨汁(不易糊工業株式会社製、墨彩)を1.5ml採取し、水道水で約100m1としたものをモデル排水とする。
(2)上記モデル排水にカチオン界面活性剤(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド:試薬)を0.02g添加し、さらにソジウム・モンモリロナイト (クニミネ工業株式会社製、クニピアF)の5%スラリーを2g添加し、マグネチックスターラーで1分間攪拌する。
(3)上記モデル排水をNo.5Aのろ紙でろ過し、沈降物を除去後、ろ液の波長450nmでの透過率を測定したところ、透過率は96.3%であった。
【実施例4】
【0039】
(1)100mlビーカーに実施例3と同様のモデル排水を調製する。
(2)上記モデル排水に非イオン界面活性剤 (日本油脂株式会社製、ノニオンID-206、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル)を0.02g添加し、さらにソジウム・モンモリロナイト(クニピアF)の5%スラリーを6g添加し、マグネチックスターラーで1分間攪拌する。
(3)上記モデル排水をNo.5Aのろ紙でろ過し、沈降物を除去後、ろ液の波長450nmでの透過率を測定したところ、透過率は80.8%であった。
【実施例5】
【0040】
(1)100mlビーカーに実施例3と同様のモデル排水を調製する。
(2)上記モデル排水にアニオン界面活性剤(テイカライトAl225)を0.02g添加し、さらにソジウム・モンモリロナイト(クニピアF)の5%スラリーを8g添加し、マグネチックスターラーで1分間攪拌する。
(3)上記モデル排水をNo.5Aのろ紙でろ過し、沈降物を除去後、ろ液の波長450nmでの透過率を測定したところ、透過率は79.9%であった。
【実施例6】
【0041】
(1)500m1ビーカーに実施例1と同様のモデル排水を調製する。
(2)上記モデル排水にカチオン界面活性剤 (日本油脂株式会社製、カチオンF2-50、50%アルキル(ヤシ)ジメチルベンジルアンモニウムクロライド)の6%水溶液を5g添加し、さらにカオリン (ENGLHARD CORPORATION製、サテントンNo.5、平均粒径0.8μm)を7.5g添加し、マグネチックスターラーで1分間攪拌すると、エマルジョン粒子を付着した鉱物が沈降し、上層が無色透明となった。
(3)上記モデル排水に観賞魚用のエアーレーション装置により空気を吹き込み、エマルジョン粒子の付着した鉱物を浮上させた。その後、アスピレーターで浮上物を吸引除去し、白濁不透明のモデル排水より非イオン性エマルジョン粒子が除去された無色透明の処理水を得ることができた。
【実施例7】
【0042】
(1)500mlビーカーに実施例1と同様のモデル排水を調製する。
(2)上記モデル排水にカチオン界面活性剤(カチオンF2-50)の6%水溶液を4g添加し、さらにゼオライト (クニミネ工業株式会社製、ゼオライト150、200メッシュ通過分74.7%)5gと塩化ナトリウムを0.2g添加し、マグネチックスターラーで1分間攪拌すると、エマルジョン粒子を付着した鉱物が沈降し、上層が無色透明となった。
(3)上記モデル排水をNo.5Aのろ紙で沈降物をろ別し、モデル排水より非イオン性エマルジョン粒子が除去された無色透明の処理水を得ることができた。
【実施例8】
【0043】
(1)500mlビーカーに実施例1と同様のモデル排水を調製する。
(2)上記モデル排水にカチオン界面活性剤(カチオンF2-50)の6%水溶液を12.2g添加し、さらにCa型ベントナイト (クニミネ工業株式会社製、クニボンド、200メッシュ通過分80%以上)を4.5g添加し、マグネチックスターラーで1分間攪拌すると、エマルジョン粒子を付着した鉱物が沈降し、上層が無色透明となった。
(3)上記モデル排水を実施例6と同様に処理することで、白濁不透明のモデル排水より非イオン性エマルジョン粒子が除去された無色透明の処理水を得ることができた。
【実施例9】
【0044】
(1)500mlビーカーに実施例1と同様のモデル排水を調製する。
(2)上記モデル排水にカチオン界面活性剤(カチオンF2-50)の6%水溶液を4.5g添加し、さらにNa型ベントナイト (クニミネ工業株式会社製、クニゲルV2、250メッシュ通過分90%以上)の10%スラリーを15g添加し、マグネチックスターラーで1分間攪拌すると、エマルジョン粒子を付着した鉱物が沈降し、上層が無色透明となった。
(3)上記モデル排水を実施例6と同様に処理することで、白濁不透明のモデル排水より非イオン性エマルジョン粒子が除去された無色透明の処理水を得ることができた。
【実施例10】
【0045】
(1)500mlビーカーに実施例1と同様のモデル排水を調製する。
(2)上記モデル排水にカチオン界面活性剤(カチオンF2-50)の6%水溶液を4.5g添加し、さらに活性化ベントナイト (クニミネ工業株式会社製、ネオクニボンド、200メッシュ通過分80%以上)の10%スラリーを10g添加し、マグネチックスターラーで1分間攪拌すると、エマルジョン粒子を付着した鉱物が沈降し、上層が無色透明となった。
(3)上記モデル排水を実施例6と同様に処理することで、白濁不透明のモデル排水より非イオン性エマルジョン粒子が除去された無色透明の処理水を得ることができた。
【実施例11】
【0046】
(1)500mlビーカーに実施例1と同様のモデル排水を調製する。
(2)上記モデル排水にカチオン界面活性剤(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)の3%水溶液を3.3g添加し、さらにソジウム・モンモリロナイト(クニピアF)の5%スラリーを10g添加し、マグネチックスターラーで1分間攪拌すると、エマルジョン粒子の付着した鉱物の一部が浮上、一部が沈降し、モデル排水は無色透明であった。
(3)上記モデル排水を実施例6と同様に処理することで、白濁不透明のモデル排水より非イオン性エマルジョン粒子が除去された無色透明の処理水を得ることができた。
【実施例12】
【0047】
(1)500mlビーカーに汚濁物質としてカチオン性30%アミノ変性シリコーンオイルエマルジョン (東レ・ダウコーニング株式会社製、SM8709)を1ml採取し、水道水で約500mlとしたものをモデル排水とする。
(2)上記モデル排水にカチオン界面活性剤(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)の3%水溶液を4g添加し、さらにソジウム・モンモリロナイト(クニピアF)の5%スラリーを10g添加し、マグネチックスターラーで1分間攪拌すると、エマルジョン粒子の付着した鉱物の一部が浮上、一部が沈降し、モデル排水は無色透明であった。
(3)上記モデル排水を実施例6と同様に処理することで、白濁したモデル排水よりカチオン性エマルジョン粒子が除去された無色透明の処理水を得ることができた。
【実施例13】
【0048】
(1)500mlビーカーに汚濁物質として非イオン性45%シリコーンオイル/レジンエマルジョン (東レ・ダウコーニング株式会社製、BY-22-736EX)を1ml採取し、水道水で約500mlとしたものをモデル排水とする。
(2)上記モデル排水にカチオン界面活性剤(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)の3%水溶液を4g添加し、さらにソジウム・モンモリロナイト(クニピアF)の5%スラリーを10g添加し、マグネチックスターラーで1分間攪拌すると、エマルジョン粒子の付着した鉱物の一部が浮上、一部が沈降し、モデル排水は無色透明であった。
(3)上記モデル排水を実施例6と同様に処理することで、白濁不透明のモデル排水より非イオン性エマルジョン粒子が除去された無色透明の処理水を得ることができた。
【実施例14】
【0049】
(1)500mlビーカーに汚濁物質としてアニオン性35%ジメチルポリシロキサン(両末端OH)エマルジョン (東レ・ダウコーニング株式会社製、SM8706)を1ml採取し、水道水で約500mlとしたものをモデル排水とする。
(2)上記モデル排水にカチオン界面活性剤(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)の3%水溶液を4g添加し、さらにソジウム・モンモリロナイト(クニピアF)の5%スラリーを10g添加し、マグネチックスターラーで1分間攪拌すると、エマルジョン粒子の付着した鉱物の一部が浮上、一部が沈降し、モデル排水は無色透明であった。
(3)上記モデル排水を実施例6と同様に処理することで、白濁不透明のモデル排水よりアニオン性エマルジョン粒子が除去された無色透明の処理水を得ることができた。
【実施例15】
【0050】
(1)500mlビーカーに汚濁物質として非イオン性38%アクリル・スチレン共重合樹脂エマルジョン (ガンツ化成株式会社製、ウルトラゾールF-360)を1ml採取し、水道水で約500mlとしたものをモデル排水とする。
(2)上記モデル排水にカチオン界面活性剤(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)の3%水溶液を6g添加し、さらにソジウム・モンモリロナイト(クニピアF)の5%スラリーを10g添加し、マグネチックスターラーで1分間攪拌すると、エマルジョン粒子の付着した鉱物が沈降し、上層が無色透明となった。
(3)上記モデル排水を実施例6と同様に処理することで、白濁不透明のモデル排水より非イオン性エマルジョン粒子が除去された無色透明の処理水を得ることができた。
【実施例16】
【0051】
(1)500mlビーカーに汚濁物質として非イオン界面活性剤 (日本油脂株式会社製、ノニオンID-206、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル)を0.1g採取し、水道水で約500mlとしたものをモデル排水とする。
(2)上記モデル排水にカチオン界面活性剤(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)の3%水溶液を4g添加し、さらにソジウム・モンモリロナイト(クニピアF)の5%スラリーを10g添加し、マグネチックスターラーで1分間攪拌すると、鉱物が沈降した。
(3)上記モデル排水をNo.5Aのろ紙でろ過し、沈降物を除去後、ろ液についてチオシアン酸コバルト法により非イオン界面活性剤の確認を行なったが、検出されなかった。
【実施例17】
【0052】
(1)500mlビーカーに汚濁物質としてアニオン界面活性剤 (テイカ株式会社製、テイカライトA1225、25%アンモニウム高級アルコールサルフェート)を0.05g採取し、水道水で約500mlとしたものをモデル排水とする。
(2)上記モデル排水にカチオン界面活性剤(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)の3%水溶液を5.5g添加し、さらにソジウム・モンモリロナイト(クニピアF)の5%スラリーを10g添加し、マグネチックスターラーで1分間攪拌すると、鉱物が沈降した。
(3)上記モデル排水をNo.5Aのろ紙でろ過し、沈降物を除去後、ろ液についてメチレンブルー法によりアニオン界面活性剤の確認を行なったが、検出されなかった。
【実施例18】
【0053】
(1)500mlビーカーに汚濁物質としてケイソウ土 (昭和化学工業株式会社製、ラジオライトF、平均粒径4.3μm)を0.1g採取し、水道水で約500mlとしたものをモデル排水とする。
(2)上記モデル排水にカチオン界面活性剤(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)の3%水溶液を3g添加し、さらにソジウム・モンモリロナイト(クニピアF)の5%スラリーを10g添加し、マグネチックスターラーで1分間攪拌すると、ケイソウ土を付着した鉱物の一部が浮上、一部が沈降し、モデル排水は無色透明であった。
(3)上記モデル排水を実施例6と同様に処理することで、白濁不透明のモデル排水よりケイソウ土が除去された無色透明の処理水を得ることができた。
【実施例19】
【0054】
(1)500mlビーカーに汚濁物質として非イオン界面活性剤 (日本油脂株式会社製、ノニオンID-206、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル)を0.2g採取し、水道水で約500mlとしたものをモデル排水とする。
(2)上記モデル排水に液体油として中鎖脂肪酸トリグリセライド (日清オイリオグループ株式会社製、スコレー64G)を0.2g添加し、マグネチックスターラーで2分間攪拌すると、モデル排水は白濁したエマルジョンとなった。
(3)上記モデル排水にカチオン界面活性剤(カチオンF2-50)の6%水溶液を3.3g添加し、さらにソジウム・モンモリロナイト(クニピアF)の5%スラリーを10g添加し、マグネチックスターラーで1分間攪拌すると、エマルジョン粒子の付着した鉱物の一部が浮上、一部が沈降し、モデル排水は無色透明であった。
(4)上記モデル排水をNo.5Aのろ紙でろ過し、沈降物を除去後、ろ液についてチオシアン酸コバルト法により非イオン界面活性剤の確認を行なったが、検出されなかった。液体油を添加し、エマルジョン化することで、実施例16より2倍多い非イオン界面活性剤を除去することができた。
【実施例20】
【0055】
(1)1000mlビーカーに汚濁物質としてカチオン性30%アミノ変性シリコーンオイルエマルジョン (東レ・ダウコーニング株式会社製、SM8709)を1ml採取し、水道水で約1000mlとしたものをモデル排水とする。
(2)上記モデル排水にカチオン界面活性剤(カチオンF2-50)の6%水溶液を5g添加し、さらにガラス繊維 (セントラル硝子株式会社製、SB-032-PW)10gを不織布製ティーパックに収納して添加し、マグネチックスターラーで5分間攪拌すると、白濁度が減少した。
(3)上記モデル排水の白濁度は原水を水道水で2倍に希釈したものと同程度であった。
【0056】
〔比較例1〕
(1)500m1ビーカーに実施例1と同様のモデル排水を調製する。
(2)上記モデル排水にソジウム・モンモリロナイト(クニピアF)の5%スラリーを10g添加し、マグネチックスターラーで1分間攪拌したが、白濁不透明の状態であった。
カチオン界面活性剤が、無添加の場合、非イオン性エマルジョン粒子は鉱物に付着しなかった。
【0057】
〔比較例2〕
(1)500mlビーカーに実施例1と同様のモデル排水を調製する。
(2)上記モデル排水にカチオン界面活性剤(セチルトリメチルアンモニウムブロマイド)の3%水溶液を8.5g添加し、さらにソジウム・モンモリロナイト(クニピアF)の5%スラリーを10g添加し、マグネチックスターラーで1分間攪拌したが、白濁不透明の状態であった。
カチオン界面活性剤の添加量が、モンモリロナイトに対して45%以上になると排水処理能力が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の排水処理方法によれば、排水中のエマルジョン、界面活性剤、分散微粒子等を、そのイオン性を問わずに処理できる。特にエマルジョン、中でも処理困難とされている非イオン性エマルジョンを完全に、しかも容易に処理できる。
主要処理薬剤は、鉱物と界面活性剤と単純であり、コンプレッサー及び散気管による空気のバブリングだけで、汚濁物質を吸着及び付着した鉱物を浮上させることができる。
最近は、環境問題等より油性塗料から水性のエマルジョン塗料への切替えが進んでおり、エマルジョンを含んだ排水処理の需要が高くなる。
また、ナノテクノロジーの発展と共に、ナノ粒子の排水からの除去、回収も重要となってくる。
以上のように、本発明の産業上の利用可能性は高い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】ケイ酸塩鉱物/カチオン界面活性剤系による非イオン性エマルジョン処理のメカニズム
【図2】ケイ酸塩鉱物/カチオン界面活性剤系によるカチオン性エマルジョン処理のメカニズム
【図3】ケイ酸塩鉱物/カチオン界面活性剤系によるアニオン性エマルジョン処理のメカニズム
【図4】ケイ酸塩鉱物/カチオン界面活性剤系による分散微粒子処理のメカニズム
【図5】ケイ酸塩鉱物/カチオン界面活性剤系による非イオン界面活性剤処理のメカニズム
【図6】ケイ酸塩鉱物/カチオン界面活性剤系によるアニオン界面活性剤処理のメカニズム
【図7】既設油水分離槽の利用による排水処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱物に界面活性剤を吸着させて、排水中の汚濁物質を吸着及び付着除去する排水処理方法。
【請求項2】
前記鉱物を含む排水中に空気をバブリングしてなる請求項1に記載の排水処理方法。
【請求項3】
排水中に液体油を添加してなる請求項1ないし2に記載の排水処理方法。
【請求項4】
あらかじめ界面活性剤を吸着させた鉱物からなる排水処理剤。
【請求項5】
請求項4記載の排水処理剤と曝気手段からなる排水処理剤セット。
【請求項6】
界面活性剤及び鉱物からなる排水処理剤セット。
【請求項7】
さらに液体油を加えてなる請求項6記載の排水処理剤セット。
【請求項8】
鉱物があらかじめ界面活性剤を吸着させたものである請求項7記載の排水処理剤セット。
【請求項9】
さらに、曝気手段を加えてなる請求項6ないし8のいずれかに記載の排水処理剤セット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−29770(P2007−29770A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−212309(P2005−212309)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(592007612)横浜油脂工業株式会社 (29)
【出願人】(592218300)学校法人神奈川大学 (243)
【Fターム(参考)】