説明

排水浄化用凝集剤、並びにこれを用いた排水浄化方法及び排水浄化装置

【課題】排水中に溶解している金属を高効率で除去する手段を提供すること。
【解決手段】金属の塩1が溶解している排水に、カルボキシル基を有する水溶性高分子2を添加する。これにより、金属イオン酸性基を有する水溶性高分子からなるイオン結合3が生成する。次に、アミノ基を有する水溶性高分子4の溶液を加える。アミノ基を有する水溶性高分子添加により、酸性基を有する水溶性高分子の酸性基とアミノ基を有する水溶性高分子のアミノ基からなるイオン結合5が形成される。このイオン結合形成により、アミノ基を有する水溶性高分子と酸性基を有する水溶性高分子が架橋する。この架橋物は水に溶解できなくなり、金属イオンをトラップした凝集物6として析出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水浄化用凝集剤、並びにこれを用いた排水浄化方法及び排水浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用水を始めとする金属含有排水は、カドミウムや銅等毒性の高い成分が含まれている場合は、種々の方法で放流基準まで濃度を下げ、河川,海洋に放流されている。また、飲料水対応の浄水器でも、内部にイオン交換樹脂を充填し、金属をトラップするものも提案されている。
【0003】
一般に、水に溶解している金属は、水中ではイオンの形で存在する。そのため、前述のイオン交換樹脂でトラップする方法(特許文献1)や逆浸透膜で濾過する方法が提案されている。その他、水酸化鉄を含有する凝集剤(特許文献2)、或いはキレート剤を添加して水に不溶の凝集物を形成後、濾過する方法も提案されている。下記特許文献3に、油分を含んだ排水に特定のアンモニウム塩構造を有する水溶性高分子とアニオン性水溶性高分子を添加することで油分を凝集物化し、油分を除去する旨の方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−232361号公報
【特許文献2】特開2006−218359号公報
【特許文献3】特開2004−255349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このうち、イオン交換樹脂や逆浸透膜を用いる方法は、排水中の金属濃度が高い場合や処理する排水の量が多い場合は、短時間で金属トラップ機能が低下してしまう。したがって、工業用水等には向かず、飲料水用等の、金属濃度が低くて処理量が少ない用途で用いられている。
【0006】
水酸化鉄を用いる場合は、凝集物のサイズが小さいため、そのサイズを大型化するための凝集剤を必要とする。また、凝集の反応が遅いため、処理時間が長いという問題がある。キレート剤は、他の方法の材料に比べて高コストであること、及び添加量を適切に制御しなければ排水中に残留してしまう問題がある。
【0007】
このように、従来技術では高速で大量の排水から金属を除くことは困難であった。本発明の目的は、高速で大量の排水から金属を除くことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の特徴は、金属をイオン結合により凝集物とする凝集剤であって、アミノ基を有する水溶性高分子と、酸性基を有する水溶性高分子とからなる凝集剤である。
【0009】
本発明の別の特徴として、金属をイオン結合により凝集物とする排水浄化方法において、排水に酸性基を有する水溶性高分子を添加した後、アミノ基を有する水溶性高分子を添加する排水浄化方法である。
【0010】
本発明の別の特徴として、排水に含まれる金属をイオン結合により凝集物とする金属回収方法であって、排水に対して酸性基を有する水溶性高分子を添加した後、アミノ基を有する水溶性高分子を添加することで凝集物を回収し、強酸または強塩基を加えて凝集物を溶解する金属回収方法である。
【0011】
本発明の別の特徴として、排水中の金属をイオン結合により凝集物とする排水浄化装置であって、金属及び酸性基を有する水溶性高分子の水溶液を混合する第一の混合槽と、第一の混合槽中の液体及びアミノ基を有する水溶性高分子の水溶液を混合する第二の混合槽と、金属が前記第一の混合槽に移動するための第一の配管と、第一の混合槽中の液体が第二の混合槽に移動するための第二の配管と、凝集物を濾過する濾過部と、を有する排水浄化装置である。
【0012】
本発明の別の特徴として、排水中の金属をイオン結合により凝集物とする金属回収装置であって、金属及び酸性基を有する水溶性高分子の水溶液を混合する第一の混合槽と、第一の混合槽中の液体及びアミノ基を有する水溶性高分子の水溶液を混合する第二の混合槽と、凝集物及び酸または塩基の水溶液を混合する第三の混合槽と、金属が前記第一の混合槽に移動するための第一の配管と、第一の混合槽中の液体が第二の混合槽に移動するための第二の配管と、を有する金属回収装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、高速で大量に排水中の金属が除去可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のフロック(凝集物)形成のスキームである。
【図2】本発明の金属回収のスキームである。
【図3】本発明の金属回収のスキームである。
【図4】本発明の排水浄化装置の模式図である。
【図5】本発明の排水浄化装置の模式図である。
【図6】本発明の排水浄化装置の模式図である。
【図7】本発明の排水浄化装置の模式図である。
【図8】本発明の排水浄化装置の模式図である。
【図9】本発明の排水浄化装置の模式図である。
【図10】本発明の排水浄化装置の模式図である。
【図11】本発明の金属回収装置の模式図である。
【図12】本発明の金属回収装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
本発明の排水中からの金属除去の原理について、図1を用いて説明する。
【0017】
まず、金属の塩1が溶解している排水に、カルボキシル基を有する水溶性高分子2を添加する。ここでは、酸性基としてカルボキシル基を有している場合を図示しているが、スルホン基の場合でも同様である。また、金属は1価のものを図示しているが、1価以外の金属(2価,3価,4価等の金属)の場合は、1個の金属イオンに対して、最大で価数分の酸性基がイオン結合する。これにより、金属イオンとカルボキシル基を有する水溶性高分子からなるイオン結合3が生成する。こうして、排水中の金属イオンがカルボキシル基を有する水溶性高分子2にトラップされる。ここで、凝集剤のイオン結合できる置換基の数の方が、排水中の金属イオン数と価数の積より大きくないと、排水中にイオン結合できない金属イオンが生じるため、金属除去効率が向上しない。そのため、カルボキシル基を有する水溶性高分子2のカルボキシル基は、排水中の金属イオンの数と価数の積より多く添加することが望ましい。
【0018】
次に、アミノ基を有する水溶性高分子4の溶液を加える。アミノ基を有する水溶性高分子4の添加により、カルボキシル基を有する水溶性高分子2のカルボキシル基とアミノ基を有する水溶性高分子4のアミノ基からなるイオン結合5が形成される。このイオン結合5の形成により、アミノ基を有する水溶性高分子4とカルボキシル基を有する水溶性高分子2が架橋する。すると、この架橋物は水に溶解できなくなり、金属イオンをトラップした凝集物6として析出する。この凝集物は、濾過槽を通すことで分離でき、結果として金属を除去することが可能となる。
【0019】
本発明で形成される凝集物6は、アミノ基を有する水溶性高分子4を加えると瞬時に形成される。そのため、高速で排水処理を行うことが可能になる。また、アミノ基を有する水溶性高分子4を加える量が、カルボキシル基を有する水溶性高分子2に比べてわずかでも凝集するので、排水中にこれら高分子が残る割合は極わずかである。これは、高分子同士がわずかでも架橋すると水に不溶になるためである。そのため、凝集剤による排水の汚染が無視できるほどわずかである。
【0020】
次に、本発明の金属回収の原理について、図2及び図3を用いて説明する。
【0021】
まず始めに、酸を加える方法を説明する。前述の方法で形成された凝集物6を容器に移し、酸(H+-)7を加える。すると凝集物が溶解し、金属イオンは加えた酸のアニオンとイオン結合した形(M+-)を形成する。また、カルボキシル基を有する水溶性高分子は、凝集物形成時、カルボキシル基がアニオン構造(CO2-)になり、イオン結合を形成していた。しかし、酸を加えられることでカルボキシル基(CO2H)に変化し、トラップした金属イオン、及びアミノ基を有する水溶性高分子とのイオン結合が解消する。
【0022】
高分子同士のイオン結合が解消するため、凝集物は水溶性となり溶解する。更に、アミノ基を有する水溶性高分子はアミノ基が加えた酸のアニオンとアンモニウム塩構造の高分子8に変化する。
【0023】
ここで、酸7はカチオン,アニオンとも1価の構造のものを示しているが、2価や3価でも使え、特に価数の制限は受けない。
【0024】
凝集物が溶解した溶液は、透析膜等により高分子量のアミノ基を有する水溶性高分子、及びカルボキシル基を有する水溶性高分子と金属塩を分離することにより、金属塩として回収することが可能となる。
【0025】
続いて、塩基を加える方法を説明する。前述の方法で形成された凝集物6を容器に移し、塩基(N+OH-)9の水溶液を加える。すると凝集物が溶解し、金属イオンは加えた塩基のアニオンとイオン結合した形(M+OH-)を形成する。またアミノ基を有する水溶性高分子は、凝集物形成時、アミノ基がカチオン構造(NH3+)になり、イオン結合を形成していた。しかし、塩基の水溶液を加えられることで、アミノ基(NH2)に変化し、カルボキシル基を有する水溶性高分子とのイオン結合が解消する。
【0026】
高分子同士のイオン結合が解消するため凝集物は、水溶性となり溶解する。更に、カルボキシル基を有する水溶性高分子は、カルボキシル基が加えた塩基のカチオンとカルボン酸塩構造の高分子10となる。
【0027】
ここで、塩基9はカチオン,アニオンとも1価の構造のものを示しているが、2価や3価でも使え、特に価数の制限は受けない。
【0028】
凝集物が溶解した溶液は、透析膜等により高分子量のアミノ基を有する水溶性高分子、及びカルボキシル基を有する水溶性高分子と金属塩を分離することにより、金属塩として回収することが可能となる。
【0029】
酸性基を有する水溶性高分子について、具体的に説明する。酸性基を有する水溶性高分子は、酸性基としてカルボキシル基またはスルホン酸基が考えられる。このうち、カルボキシル基を有する水溶性高分子としては、安価でアミノ基とイオン結合しやすい点でポリアクリル酸が好適である。このほか、アミノ酸由来のポリアスパラギン酸またはポリグルタミン酸等も毒性が低いという特徴がある。アルギン酸は、コンブ等海草の主成分の一種であり、原料が生物由来という点で環境負荷が小さい特徴を持つ。スルホン酸基を有する水溶性高分子としては、ポリビニルスルホン酸またはポリスチレンスルホン酸が挙げられる。これらスルホン酸基は、カルボキシル基よりも酸性度が大きいため、アミノ基とのイオン結合を形成する割合が高く、安定な凝集物を得られる点で好ましい。
【0030】
なお、酸性基を有する高分子のうち、水溶性が低い場合は酸性基をアンモニウム塩構造,ナトリウム塩構造、またはカリウム塩構造にすることで、水に対する溶解性を向上させることが可能である。酸性基を有する水溶性高分子をアンモニウム塩構造,ナトリウム塩構造、またはカリウム塩構造とした後、排水に添加することで、アミノ基を有する高分子と効率良くイオン結合を形成することが可能である。
【0031】
ところで、酸性基を有する水溶性高分子の平均分子量は、低すぎると凝集物の架橋部位の数が少なくなるので、凝集物の安定性が低くなる。また、凝集物が粘度の高い液状になる傾向もある。こうなると、濾過では凝集物の除去は困難になる。そこで酸性基を有する水溶性高分子の平均分子量は、2000以上が望ましい。
【0032】
なお、排水の温度が40℃以上になると、平均分子量が2000の場合は凝集物が粘着性を有するようになる。工業排水の場合、温度が60℃程度まで高くなる場合もある。この場合は、更に平均分子量を大きくすることで、高温でも凝集物を固体化することが可能となる。具体的には、平均分子量を5000以上にすることで、排水の温度が40℃でも凝集物を固体化が可能となる。よって、酸性基を有する水溶性高分子の平均分子量は、5000以上がより好ましい。更に、平均分子量を10000以上にすることで、排水の温度が60℃でも凝集物を固体化が可能となる。よって、酸性基を有する水溶性高分子の平均分子量は10000以上が更に好ましい。
【0033】
また、分子量が大きくなりすぎると、金属イオンとイオン結合を形成途中において、水に対して溶解性が低下し析出してしまう傾向がある。これは、金属の価数が2以上の場合に顕著である。この原因は、価数が2以上の金属は1個の金属イオンが1つの高分子内で複数の架橋構造を形成し、水に難溶となる。高分子の分子量が大きくなると、この傾向が強まるため、アミノ基を有する水溶性高分子を加える前に溶解性が低下し、処理中の排水が濁ってくるものと考えられる。こうなると、金属イオンが酸性基を有する水溶性高分子とイオン結合を作らず排水中に残ってしまう割合が増え、結果として金属除去率が低下する。そのため、酸性基を有する水溶性高分子の平均分子量は、200000以下であることが望ましい。これにより、銅またはカドミウム等2価のイオンとイオン結合しても、その結合物は水には析出しなくなる。ただ、アルミニウムまたは鉄のような3価のイオンでは、やはり若干の析出が見られる。そこで、酸性基を有する水溶性高分子の平均分子量は、より好ましくは100000以下であることが望ましい。これにより、アルミニウムまたは鉄等3価のイオンとイオン結合しても、その結合物は水には析出しなくなる。
【0034】
アミノ基を有する水溶性高分子について、具体的に説明する。アミノ基を有する水溶性高分子としては、同じ分子量中でアミノ基の割合が最も大きくなる点でポリエチレンイミンが好適である。また、ポリビニルアミンまたはポリアリルアミンといった、直鎖にアミノ基を有するタイプも比較的安価で水に溶解しやすいので好適である。キトサンは、水に対する溶解性は低いが、かにの甲羅やえびの外骨格,カブトムシやゴキブリといった生物の外骨格の主成分であるキチンを加水分解することで得られるので、原料が生物由来という点で環境負荷が小さい特徴を持つ。ポリリシンまたはポリアルギニンは、アミノ酸由来で毒性も低い特徴がある。
【0035】
アミノ基を有する水溶性高分子は、平均分子量が小さいと常温でもアミン特有の臭気を発生する。具体的には、平均分子量が200未満の場合に顕著になる。そこで、アミノ基を有する水溶性高分子は平均分子量が200以上であることが好ましい。また、臭気をほとんど感じなくなるようにするため、可能であれば平均分子量は500以上が好ましい。
【0036】
一方、平均分子量が大きくなると、水溶液にしてもその粘度が高く、投入量管理,排水への投入操作の際扱いが難しくなる。具体的には、平均分子量が1000000を超えると、10重量%の水溶液にしても粘度は3000mPa・s以上になる。そこで、アミノ基を有する水溶性高分子の平均分子量は1000000以下が好ましい。また、10重量%水溶液にしても粘度が1000mPa・s以下となり、投入量管理または排水への投入操作の際扱いを簡便にするためには、アミノ基を有する水溶性高分子の平均分子量は200000以下が好ましい。
【0037】
なお、アミノ基を有する高分子のうち、水溶性が低い場合はアミノ基を塩酸塩構造または硝酸塩構造にすることで、水に対する溶解性を向上させることが可能である。塩酸塩構造または硝酸塩構造とした後、排水に添加することで、金属イオンと効率良くイオン結合を形成することが可能である。
【0038】
アミノ基を有する水溶性高分子または酸性基を有する水溶性高分子の溶解性向上策について、具体的に説明する。酸性基を有する水溶性高分子の水に対する溶解性が低い場合は、酸性基を強塩基で塩構造にすることで、水に対する溶解性を向上可能である。具体的には、水酸化ナトリウム,水酸化マグネシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物を添加し、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩等に変換することにより、水に対する溶解性は大幅に向上する。
【0039】
また、アミノ基を有する水溶性高分子の水に対する溶解性が低い場合は、アミノ基を強酸でアンモニウム塩構造にすることで、水に対する溶解性を向上できる。具体的には塩酸,硝酸または硫酸等を添加し、塩酸塩,硝酸塩または硫酸塩等に変換することにより、水に対する溶解性は大幅に向上する。
【0040】
金属トラップ向上のための添加剤について、具体的に説明する。処理する排水中の金属塩の塩基性度が低い場合、酸性基とイオン結合を形成する割合が低下する。そこで、アミノ基を有する水溶性高分子を添加する前に塩化ナトリウムや塩化カリウム等の無機塩を排水に添加することにより、酸性基とイオン結合する金属イオンの割合が高まる。これは、金属塩の対アニオンが酢酸イオン,安息香酸イオン等有機物の場合に効果が大きい。この効果が現れる原因は、塩を添加して水中に溶解している有機物を析出させる塩析と類似の効果により、排水中に溶解できる金属イオンの許容割合下げているのではないかと考えられる。
【0041】
添加する無機塩は、塩化ナトリウム,塩化カリウム,塩化マグネシウムもしくは塩化カルシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩酸塩,硫酸ナトリウム,硫酸カリウム,硫酸マグネシウム、もしくは硫酸カルシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の硫酸塩、または硝酸ナトリウム,硝酸カリウム,硝酸マグネシウムもしくは硝酸カルシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の硝酸塩、等が挙げられる。
【0042】
本発明の凝集方法の概略について説明する。本発明の金属を凝集物にする方法は、前述の図1の通りである。これを簡単に記述すると、以下の(A)〜(D)のようになる。なお、酸性基を図1ではカルボキシル基で説明しているが、スルホン酸基でも同様である。また、金属は1価、対アニオンも1価で示しているが、価数が2以上であっても同様に考えられる。(A):初めに、排水へ酸性基を有する水溶性高分子を添加する。(B):排水中の金属塩の金属イオンが酸性基を有する水溶性高分子の酸性基とイオン結合を形成し、酸性基を有する水溶性高分子にトラップされる。(C):アミノ基を有する水溶性高分子を添加する。(D):カルボキシル基を有する水溶性高分子の金属イオンと結合していないカルボキシル基と、アミノ基を有する水溶性高分子のアミノ基が分子同士で多数のイオン結合し架橋する。こうなると、お互い水溶性高分子であったものが水に不溶化し凝集物となる。
【0043】
凝集剤の添加割合等について、具体的に説明する。ここで、排水中の金属イオンのモル数と価数の積をMB、添加する酸性基を有する水溶性高分子の酸性基の数をPA、添加するアミノ基を有する水溶性高分子のアミノ基の数をPBとするとき、排水に対する酸性基を有する水溶性高分子、及びアミノ基を有する水溶性高分子の添加量が下記不等式となるよう調整することで、金属の除去割合を高めることができる。
【0044】
PA≧MB 式(1)
【0045】
PB≧PA 式(2)
【0046】
式(1)は、排水中には金属イオンのモル数と価数の積より酸性基を有する水溶性高分子の酸性基の方が多くなることを意味している。本発明では、酸性基を有する水溶性高分子の酸性基と金属イオンのイオン結合を形成する反応は、元々平衡反応と考えられる。そのため、金属イオンのモル数と価数の積に比べて酸性基を有する水溶性高分子の酸性基の方が過剰になれば、金属イオンのトラップ割合を高くできる。仮に、式(1)がPA<MBの場合は、金属イオンに比べてカルボキシル基が少ないので、トラップできない金属イオンが排水中に必ず残るようになる。
【0047】
また、式(2)は酸性基を有する水溶性高分子の酸性基の数より、アミノ基を有する水溶性高分子のアミノ基の数が多くなることを意味している。これにより、金属イオンをトラップした酸性基を有する水溶性高分子のほとんど全てを水に不溶の凝集物として析出させることができる。この不等式の添加割合から大きく外れると、水中に溶解している金属イオンをトラップした酸性基を有する水溶性高分子が、水中に溶解している有機物として検出されてしまうので、水質面でもこの不等式の添加割合で排水処理を行うことが望まれる。仮に、式(2)がPB≪PAの場合は、金属イオンをトラップした酸性基を有する高分子が凝集物として析出せず、排水中に溶解した状態で存在するため、最終的には金属イオンの除去率が低下するという問題が生じる。
【0048】
以上のように、上記不等式を維持するような割合を保つことが排水中の金属イオン除去効率維持にとっては重要である。また、式(1)及び式(2)をまとめると、
【0049】
PB≧PA≧MB 式(3)
となる。排水処理においては、式(2)の条件で処理を行うことで、水中に溶解している有機化合物の量を、本発明の排水処理によって増加させることなく処理可能となる。また、式(3)の条件で処理を行うことによって、高効率で排水中の金属イオンを除去可能となる。
【0050】
金属除去の向上策について説明する。上記以外の金属除去の向上策としては、酸性基を有する水溶性高分子の添加量は、酸性基の数として考えた場合、排水中の金属イオンのモル数と価数の積の数よりなるべく多く添加する。また、アミノ基を有する水溶性高分子の溶液を排水中に添加する際、なるべく激しく攪拌することで、排水全体にアミノ基を有する水溶性高分子が行き渡り、効率良く凝集物を形成できる。よって、アミノ基を有する水溶性高分子添加の際の攪拌状態を高めることで、排水中の金属の除去率が向上する。
【0051】
その他金属の除去率を高める方法は、アミノ基を有する水溶性高分子を添加する前に、排水中に無機の塩を添加しておく方法が挙げられる。これは、塩析に類似の効果により除去率が高まるものと考えられる。加える無機の塩は、自然界に豊富に存在する塩化ナトリウムが好適である。特に、海底油田の排水処理の場合は海水中の平均塩化ナトリウム濃度が約3%なので、そのレベルまでは添加しても環境に与える影響は軽微であり、特に好適である。なお、添加の順序としては酸性基を有する水溶性高分子の先でも後でも良いが、必ずアミノ基を有する水溶性高分子の添加前に加えるようにする。これはアミノ基を有する水溶性高分子の添加後に加えても、これ以上は凝集しないためである。
【0052】
凝集物の大型化について説明する。前述のように、アミノ基を有する水溶性高分子の溶液を添加する際は、なるべく激しく攪拌する方が金属を凝集物内に効率良くトラップできる。しかし、攪拌が激しすぎると凝集物のサイズが小さくなりすぎ、濾過槽を通す際に詰まりやすくなるので、処理速度が低下する恐れもある。そこで、凝集物を形成後、ポリ塩化アルミニウムまたはポリアクリルアミドを添加し、凝集物を大型化することで、濾過槽の濾過速度を向上させ、ひいては排水処理速度UPにつなげることも可能である。
【0053】
磁気分離の適用について説明する。凝集物形成時に、凝集物内に磁性粉または鉄粉を含有させておくことで、磁気分離による凝集物除去が可能になる。ただ、アミノ基を有する水溶性高分子を添加した後では、凝集物内に磁性粉または鉄粉を入れることが困難なので、アミノ基を有する水溶性高分子を添加する前か、アミノ基を有する水溶性高分子と混合して排水中に添加することで、凝集物内に含有させることが可能になる。なお、凝集物の大型化のため、ポリ塩化アルミニウムまたはポリアクリルアミドを添加する場合がある。この場合は、アミノ基を有する水溶性高分子を添加した後でも、ポリアクリルアミド添加前に磁性粉、或いは鉄粉を添加することで時期分離での凝集物分離が可能となる。
【0054】
(1)排水浄化装置の発明の形態1
【0055】
次に、本発明の排水浄化装置について説明する。まず、本発明の排水浄化装置の基本構成について、図4を使って説明する。排水はポンプ11により、配管12を通って、第一の混合槽13に投入される。この中の液体は、オーバーヘッドスターラ14によって攪拌される。ポンプ16を使って、第一のタンク15から配管17を通って酸性基を有する水溶性高分子の水溶液が、第一の混合槽13に投入される。
【0056】
第一の混合槽13内の液体を十分混合した後、第一の混合槽13中の液体を、ポンプ18を用いて配管19を通して第二の混合槽20に投入する。第二の混合槽20中の液体は、オーバーヘッドスターラ21によって攪拌されている。
【0057】
次に、ポンプ23を用いて、第三のタンク22から配管24を通って、アミノ基を有する水溶性高分子の水溶液が第二の混合槽20に投入される。これにより、第二の混合槽20中で凝集物が生成される。凝集物が混ざった状態の液体は、バルブ25aまたはバルブ25bを開けることにより、濾過部26aまたは濾過部26bに流れ込む。流れ込んだ液体は、濾過用の砂からなる濾過槽27aまたは濾過槽27bで濾過され、その後、多孔質部材28aまたは多孔質部材28bにより、再度濾過され金属イオンが低減された水として出てくる。
【0058】
図4では、濾過部26a及び濾過部26b有している装置を示している。始めに、濾過部26aで濾過処理を行い、濾過槽27aが詰まり、濾過速度が低下した場合は、濾過部26bで濾過処理を行うようにする。濾過部26bで濾過処理中に、濾過槽27aを交換する等の処置をすることで、濾過処理を極力滞らないようにすることが可能となる。
【0059】
ところで、金属除去能力が低い場合は、ポンプ30により第二のタンク29から配管31を通って、塩化ナトリウムの水溶液を第二の混合槽20に投入する。これにより、酸性基にトラップされる金属イオンの割合が大きくなり金属除去能力が向上する。塩化ナトリウムの代わりに、塩化カリウム等の無機の塩を用いてもかまわない。排水浄化装置で浄化した水を海に放流する場合は海水が塩水のため、塩化ナトリウムを用いた場合は、海洋の生態系に対する影響が軽微なので好適である。
【0060】
第二の混合槽20に酸性基を有する水溶性高分子の水溶液を投入する配管24の先端32aは、ストレートではなく、扇状に広げたり、シャワーの口のように広げたり等、酸性基を有する水溶性高分子の水溶液がなるべく広範囲に第二の混合槽20中に投入するようにする。これは、酸性基を有する水溶性高分子の水溶液の投入に伴い、瞬時に凝集が始まるため、狭い面積に投入すると、投入した酸性基を有する水溶性高分子の水溶液が凝集物に内包され、更なる凝集物生成に生かされないためである。第二の混合槽20に液を投入する配管24の先端32a及び配管19の先端32bについて、第二の混合槽20の液面に接触しないよう、液体の投入口は液面の上に設ける。これは、第二の混合槽20で生成する凝集物が配管24の先端32a及び配管19の先端32bに付着し、先端の穴を塞ぐことを防ぐためである。
【0061】
(2)本発明の排水浄化装置の形態2
本発明の排水浄化装置のうち、沈降槽を有するものの基本構成について図5を使って説明する。この装置の構成は沈降槽33を持つ。この構成により、凝集物を沈降槽下部に沈殿させ、上澄みを浄化水として得る。
【0062】
(3)本発明の排水浄化装置の形態3
【0063】
本発明の排水浄化装置のうち、濾過部に濾過槽の目詰まりを防止する機構を有するものの基本構成について、図6を使って説明する。濾過処理を続けていくと、濾過槽27は凝集物により表面が目詰まりを起こし、濾過速度が低下してくる。そこで、図6の装置では濾過槽の上面付近に、表面に凹凸のあるディスクを配置し、これをモーターで回転させる濾過槽攪拌機構34を設けた。これにより、濾過槽27の上部表面を削り、凝集物による目詰まりを解消することで、濾過を円滑に行うことが可能となる。
【0064】
(4)本発明の排水浄化装置の形態4
本発明の排水浄化装置のうち、磁気分離方式を利用したものの基本構成について図7を使って説明する。排水はポンプ35により、配管36を通って第一の混合槽37に投入される。この中の液体は、オーバーヘッドスターラ38によって攪拌される。ここに、ポンプ40により、第一のタンク39から配管41を通って、酸性基を有する水溶性高分子水溶液が第一の混合槽37に投入される。
【0065】
第一の混合槽内の液体を十分混合した後、ポンプ42を用いて、第一の混合槽37中の液体を、配管43を通して第二の混合槽44に投入する。この中の液体は、オーバーヘッドスターラ45によって攪拌されている。
【0066】
次に、第三のタンク46からポンプ47により、配管48を通ってアミノ基を有する水溶性高分子の水溶液と磁性粉の混合された液体が、第二の混合槽44に投入される。これにより、第二の混合槽44中で凝集物が生成される。凝集物には磁性粉が混ざった状態である。この凝集物は、表面がメッシュ状で磁気を帯びているドラム49に付着する。ドラム49は、図6では時計回りに回転し、表面に付着した凝集物はスクレイパー50によってドラム49のメッシュから剥がされる。剥がされた凝集物は、下面がメッシュ状になった凝集物集積容器51に集められる。集められたばかりの凝集物は、かなりの水分を含んでいるので、凝集物集積容器51下面のメッシュから排水される。
【0067】
一方、ドラム49のメッシュを通り抜けた水は、メッシュにより凝集物が除かれた状態になっている。この水は、浄化された水としてドラム49の中心部分にある配管52を通って出てくる。
【0068】
金属除去能力が低い場合は、ポンプ54により、第二のタンク53から配管55を通って、塩化ナトリウムの水溶液を第一の混合槽37に投入する。これにより、酸性基にトラップする金属イオンの割合が大きくなり、金属除去能力が向上する。塩化ナトリウムの代わりに、塩化カリウム等の無機の塩を用いてもかまわない。しかし、排水浄化装置で浄化した水を海に放流する場合は海水が塩水のため、塩化ナトリウムを用いた場合は海洋の生態系に対する影響が軽微なので好適である。
【0069】
第二の混合槽44に液体を投入する配管48の先端56aは、ストレートではなく、扇状に広げたり、シャワーの口のように広げたり等、酸性基を有する水溶性高分子の水溶液がなるべく広範囲に第二の混合槽44中に投入するようにする。これは、投入に伴い、瞬時に凝集が始まるため、狭い面積に投入すると、投入した酸性基を有する水溶性高分子の水溶液が凝集物に内包され、更なる凝集物生成に生かされないためである。
【0070】
第二の混合槽44に液体を投入する配管48の先端56a及び配管43の先端56bについて、第二の混合槽44の液面に接触しないよう、液体の投入口は液面の上に設ける。これは、第二の混合槽44で生成される凝集物が配管等の配管48の先端56a及び配管43の先端56bに付着し、先端の穴を塞ぐ恐れがあるためである。
【0071】
第三のタンク46内は、アミノ基を有する水溶性高分子の水溶液と磁性粉を混合するためのオーバーヘッドスターラ57(タンク内にある羽根等は図示していない)を設ける。
【0072】
なお、アミノ基を有する水溶性高分子の水溶液と磁性粉は、第二の混合槽44に別々に入れることも可能である。しかし、凝集物に含有する磁性粉の単位堆積あたりの密度に偏りが生じる傾向があるので、本装置のようにあらかじめ混合後に第二の混合槽44へ投入する方法が望ましい。
【0073】
この装置では、磁気分離するためのドラムを設けず、凝集物を沈降後、濾過する機構を設けても良い。凝集物は磁性粉を含有しているため、比重が大きくなり、沈みやすくなる。そこで、大半の凝集物を第二の混合槽44の下に沈め、上澄みを濾過することにより、磁気分離を行わなくても水の浄化が可能となる。
【0074】
(5)本発明の排水浄化装置の形態5
本発明の排水浄化装置のうち、磁気分離方式でドラムを2個備えたものの基本構成について、図8を使って説明する。この装置は、表面がメッシュのドラム49上に凝集物を集めた後、ドラム内部から少量の水を吹き出す。これにより、凝集物をドラム49のメッシュ上から剥がし、ドラム58の方に飛ばし、ドラム58の表面に付着させる。このドラム58の表面はメッシュではなく金属板である。凝集物を剥がす際、メッシュ表面をスクレイパー50で擦るが、この時メッシュにスクレイパー50が引っかかり、メッシュを破損することがある。しかし、本装置では、スクレイパー50で凝集物を剥がす際、接触するのはメッシュに比べて丈夫な金属板であるため、スクレイパー50による破損を起こしにくいため好適である。
【0075】
(6)本発明の排水浄化装置の形態6
本発明の排水浄化装置のうち、磁気分離方式で凝集物除去槽59を別に設けたものの基本構成について、図9を使って説明する。これは、第二の混合槽44で形成した凝集物を、同じ槽中で磁気分離するのではなく、別の槽(凝集物除去槽59)に移し、そこで磁気分離を行うものである。凝集物除去槽59に入れる処理水の量はバルブ60で制御する。この構成にすることで、磁気分離前にかなりの割合の凝集物が第二の混合槽中44に残り、磁気分離で除去する凝集物の量が少なくなる。そのため、ドラム49のメッシュが詰まりにくくなり、メッシュへのメンテナンスの軽減が図れるため、好適である。
【0076】
(7)本発明の排水浄化装置の形態7
本発明の排水浄化装置のうち、磁気分離方式でドラムが1個で且つ凝集物除去槽61を別に設けたものの基本構成について、図10を使って説明する。これは凝集物除去槽61の底とドラム58の距離を小さくすることで、凝集物をドラム58にほぼ完全に付着させる。こうしてドラム1個で浄化を行う。ドラム58に付着した凝集物はスクレイパー50で取り除く。この方式は、ドラム58が1個で浄化できるため凝集物除去槽61、ひいては装置の省スペース化が図れるため、好適である。
【0077】
次に、本発明の金属の回収装置について、図11及び図12を使って説明する。
【0078】
上述の図5,図7,図8,図9、または図10で示される排水浄化装置は、凝集物のみを回収できる。本発明の金属の回収装置は、まず、図5,図7,図8,図9、または図10に示す装置が一部となっている。図5,図7,図8,図9、または図10に示す装置で凝集物をまずは回収し、図11または図12で示す装置を使って、金属を回収できる形態に加工する。よって、図5,図7,図8,図9、または図10で示す装置と図11または図12で示す装置とを組み合わせて、本発明の金属の回収装置として機能する。
【0079】
図5,図7,図8,図9、または図10に示す装置で回収した凝集物6は、凝集物集積容器51に投入され、凝集物洗浄機構62にセットされる。凝集物は、まず散水部63から出てくる水をかけられ、洗浄される。洗浄に使われた水は、受器64に入るように配置される。洗浄された凝集物の入った凝集物集積容器51は、水分を除去するため、乾燥風発生部65の下に移動する。ここから、風を凝集物に当てることで、凝集物の水分が低減する。風は、温風や乾燥風の方が凝集物は乾燥しやすい。風が当たって洗浄に使われた水が飛散することがあるので、受器66で回収される。乾燥された凝集物は、第三の混合槽67に投入される。第三の混合槽67には、ポンプ69により、予め第四のタンク68から配管70を通って、酸または塩基の水溶液が第三の混合槽67に投入される。この中の液体は、オーバーヘッドスターラ71によって攪拌されると、凝集物は溶解する。溶解物は、ポンプ72により、配管73を通って回収される。溶解物は、この後透析膜を用いてアミノ基を有する水溶性高分子と酸性基を有する水溶性高分子を除くことで、金属イオンの溶解した液となる。こうして、希少金属を回収することが可能になる。
【0080】
磁気分離方式で凝集物を回収した場合は、凝集物内部に磁性粉が内包されているので、凝集物溶解時に回収することが望まれる。そこで、第三の混合槽67内の下部にポリプロピレン等の加える酸や塩基で溶解しにくい材料で被覆した磁性を有する部材、例えば磁石74を置いておく。凝集物溶解後、液体を排出すると、磁石74に磁性粉が付着するので、回収が容易となる。
【0081】
また、図12のように、第三の混合槽67内の下部に、バット75を用意しておき、第三の混合槽67の外側のバットの下付近に、磁石76を配置しておく。こうすると、磁性粉は下部のバット75に集まり、凝集物溶解後、液体を排出しなくても、バット75を引き上げることで、磁性粉の回収が可能になる。また、バット75の底面は、磁性粉が落下しない程度の大きさのメッシュにしておくことで、凝集物の溶解物がバット75からメッシュを通過してバット外に落ちる。そのため、磁性粉回収の際、バット75から溶解物の除去が容易になる。
【0082】
凝集物洗浄機構62に備えられている洗浄機構や乾燥風発生部65は省略しても良いが、凝集物に付着または内包された排水中の成分が回収した希少金属の純度を低下させる傾向がある。
【0083】
また、凝集物溶解に用いる酸は酸性度が高いため、添加量が僅かで済む点で塩酸,硝酸または硫酸等の無機の強酸が好適である。塩基の場合は、塩基性の度合いが高いため、添加量が少量で済むアルカリ金属の水酸化物、具体的には水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが好適である。
【0084】
本発明の実施例を、以下に示す。
【実施例1】
【0085】
金属塩として、硫酸銅が1595ppm溶解している試験水1リットル(硫酸銅としては10mmol)を攪拌中に酸性基を有する水溶性高分子としてポリアクリル酸(平均分子量は25000)の10重量%水溶液20g(カルボキシル基の数としては27.8mmol)を加える。次に、アミノ基を有する水溶性高分子としてポリエチレンイミン(平均分子量は70000)の10重量%水溶液15g(アミノ基の数としては34.9mmol)を加えると、凝集物が析出する。この凝集物を濾取し、濾過液の硫酸銅濃度を誘導結合プラズマ発光分光分析装置で定量したところ、濾過液中の硫酸銅濃度は80ppmに低下した。よって、本発明の凝集剤により水に溶解している硫酸銅の除去が可能であることを確認した。
【実施例2】
【0086】
硫酸銅が1595ppm溶解している試験水1リットルの代わりに、塩化ニッケルが1300ppm溶解している試験水1リットルを用いる以外は実施例1と同様の試験を試みたところ、濾過液中の酢酸濃度は65ppmに低下した。よって、本発明の凝集剤により水に溶解している塩化ニッケルの除去が可能であることを確認した。
【実施例3】
【0087】
ポリエチレンイミン(平均分子量は70000)の10重量%水溶液15gの代わりに、ポリアリルアミン(平均分子量は10000)の10重量%水溶液20g(アミノ基の数としては35.1mmol)を用いる以外は実施例1と同様の試験を試みたところ、濾過液中の硫酸銅濃度は80ppmに低下した。よって、カルボキシル基を有する水溶性高分子とアミノ基を有する水溶性高分子を用いることで水に溶解している金属を除去できることが確かめられた。
【実施例4】
【0088】
ポリアリルアミン(平均分子量は10000)の10重量%水溶液20gの代わりに、ポリアリルアミン塩酸塩(平均分子量は10000)の10重量%水溶液32g(アミノ基が塩酸塩になった構造の数としては34.2mmol)を用い、ポリアクリル酸(平均分子量は25000)の10重量%水溶液20gの代わりに、ポリアクリル酸ナトリウムの10重量%水溶液27g(カルボキシル基がナトリウム塩になった構造の数としては28.7mmol)を用いる以外は実施例3と同様の試験を試みたところ、濾過液中の硫酸銅濃度は90ppmに低下した。よって、アミノ基及びカルボキシル基とも塩構造に変換された水溶性高分子を用いても、水に溶解している金属を除去できることが確かめられた。
【実施例5】
【0089】
ポリアクリル酸ナトリウムの10重量%水溶液27gの代わりにポリメタクリル酸ナトリウムの10重量%水溶液30g(カルボキシル基がナトリウム塩になった構造の数としては27.5mmol)を用いる以外は実施例4と同様の試験を試みたところ、濾過液中の硫酸銅濃度は90ppmに低下した。よって、カルボキシル基を有する水溶性高分子としてポリアクリル酸の代わりにポリメタクリル酸を用いても、水に溶解している金属を除去できることが確かめられた。
【実施例6】
【0090】
ポリアクリル酸ナトリウムの10重量%水溶液27gの代わりにポリスチレンスルホン酸ナトリウムの10重量%水溶液60g(スルホン酸基がナトリウム塩になった構造の数としては29.1mmol)を用いる以外は実施例4と同様の試験を試みたところ、濾過液中の硫酸銅濃度は90ppmに低下した。よって、酸性基を有する水溶性高分子としてスルホン酸基を有する水溶性を用いても、水に溶解している金属を除去できることが確かめられた。
【実施例7】
【0091】
試験水1リットルにポリアクリル酸の10重量%水溶液20gを加えた後、ポリエチレンイミンの10重量%水溶液15gを加える前に5.85重量%の塩化ナトリウム水溶液1gを加える以外は実施例1と同様の試験を試みたところ、濾過液中の硫酸銅濃度は60ppmに低下した。よって、塩化ナトリウムを添加することにより、添加しない場合に比べて試験水中の硫酸銅濃度を低減できることが確かめられた。
【実施例8】
【0092】
5.85重量%の塩化ナトリウム水溶液の添加量を1gから10gにする以外は実施例7と同様の試験を試みたところ、濾過液中の硫酸銅濃度は40ppmに低下した。よって、添加する塩化ナトリウム量を大きくすることで、硫酸銅濃度をより低減できることが確かめられた。
【実施例9】
【0093】
5.85重量%の塩化ナトリウム水溶液1gの代わりに7.45重量%の塩化カリウム水溶液1gを用いる以外は実施例7と同様の試験を試みたところ、濾過液中の硫酸銅濃度は60ppmに低下した。また、5.85重量%の塩化ナトリウム水溶液1gの代わりに6重量%の硫酸マグネシウム水溶液2gを用いる以外は実施例7と同様の試験を試みたところ、濾過液中の硫酸銅濃度は60ppmに低下した。よって、種々の無機塩を添加することで、硫酸銅濃度をより低減できることが確かめられた。
【実施例10】
【0094】
金属として、硫酸銅が1595ppm溶解している試験水1リットル(硫酸銅としては10mmol、銅が2価なので銅イオンの数と価数の積は20mmolになる)を攪拌中に、カルボキシル基を有する水溶性高分子としてポリアクリル酸(平均分子量は25000)の10重量%水溶液を表1に示す量だけ加える。次に、アミノ基を有する水溶性高分子としてポリエチレンイミン(平均分子量は70000)の10重量%水溶液15g(アミノ基の数としては34.9mmol)を加えると、凝集物が析出する。この凝集物を濾取し、濾過液の硫酸銅濃度を誘導結合プラズマ発光分光分析装置で定量したところ、濾過液中の硫酸銅濃度は表1のような結果になった。
【0095】
【表1】

【0096】
この結果より、排水中の金属イオンの数と価数の積(MB)と、酸性基を有する水溶性高分子の酸性基の数(PA)の関係が、PA<MBの時は金属の除去率が低いことが確かめられた。即ち、上記式(1)の不等式のように、酸性基を有する高分子の酸性基の数(PA)が、排水中の金属イオンの数と価数の積(MB)以上、つまり、PA≧MBとすることで、金属の除去率の向上することが確かめられた。
【0097】
金属イオンと水溶性高分子の酸性基とのイオン結合は、平衡反応と考えられる。そのため、酸性基を過剰にすることでトラップ量(イオン結合数)が大きくなるものと考えられる。
【実施例11】
【0098】
金属として、硫酸銅が1595ppm溶解している試験水1リットル(硫酸銅としては10mmol、銅が2価なので銅イオンの数と価数の積は20mmolになる)を攪拌中に酸性基を有する水溶性高分子としてポリアクリル酸(平均分子量は25000)の10重量%水溶液20g(カルボキシル基の数としては27.8mmol)を加える。次に、アミノ基を有する水溶性高分子としてポリエチレンイミン(平均分子量は70000)の10重量%水溶液を表2で示す量だけ加えると、凝集物が析出する。この凝集物を濾取し、濾過液の硫酸銅濃度を誘導結合プラズマ発光分光分析装置で定量したところ、濾過液中の硫酸銅濃度は表2のような結果になった。
【0099】
【表2】

【0100】
この結果より、酸性基を有する水溶性高分子の酸性基の数(PA)と、アミノ基を有する水溶性高分子のアミノ基の数(PB)の関係が、PB<PAの時は金属の除去率が低いことが確かめられた。即ち、金属の除去効率を高めるには、PB≧PAであることが重要である。この理由は、PB<PAの場合、金属をトラップした酸性基を有する高分子の一部が凝集物として析出せず、排水中に溶解した状態で存在するため、濾過では金属が十分除けず、結果的に金属の除去率が低下したものと考えられる。
【実施例12】
【0101】
用いるポリアクリル酸の平均分子量を25000ではなく、800,1600,2000、または3000とする以外は、実施例1と同様に実験を行った。すると、平均分子量が800及び1600のポリアクリル酸を用いた場合は凝集物が液状になり、濾過時、用いた濾紙表面に広がるようにこびりつき、濾紙の目をすぐに詰まらせたため、複数の濾紙を使用し濾過を行った。平均分子量が2000及び3000のポリアクリル酸を用いた場合は、凝集物は固体状態となったため、濾紙の目は詰まりにくかった。よって、凝集物形成の際加えられるポリアクリル酸の平均分子量は、2000以上であることが望まれる。
【0102】
用いるポリアクリル酸の平均分子量を25000ではなく、100000,200000,250000、または1000000とする以外は、実施例1と同様に実験を行った。すると、平均分子量が100000及び200000のポリアクリル酸を用いた場合は、10重量%の水溶液として2gを加え、生成した凝集物を濾過し、濾液中の硫酸銅濃度を測定したところ80ppmであった。しかし、平均分子量が250000及び1000000のポリアクリル酸を同量だけ用いたところ、濾液中の硫酸銅濃度はそれぞれ200ppm、及び400ppmであった。なお、平均分子量が高くなると、その水溶液は粘度が高くなり、加える量を正確に制御することが難しくなったため、平均分子量が250000、及び1000000のポリアクリル酸は2重量%のものを10gずつ用いた。
【0103】
ポリアクリル酸は分子量が大きくなりすぎると、金属イオンとイオン結合を形成途中で水に対して溶解性が低下し析出してしまう傾向がある。これは、金属の価数が2以上の場合に顕著である。この原因は、価数が2以上の金属は、1個の金属イオンが1つの高分子内で複数の架橋構造を形成し、水に難溶となる。高分子の分子量が大きくなると、この傾向が強まるため、アミノ基を有する水溶性高分子を加える前に溶解性が低下し、処理中の排水が濁ってくるものと考えられる。こうなると、金属イオンが酸性基を有する水溶性高分子とイオン結合を作らず排水中に残ってしまう割合が増え、結果として金属除去率が低下する。そのため、排水中の金属が主に1価(銀等)または2価(銅,ニッケル,カドミウム等)の場合、酸性基を有する水溶性高分子の平均分子量は200000以下であることが望ましいことがわかった。
【0104】
ただ、ポリアクリル酸の平均分子量を200000にしてもアルミニウムまたは鉄のような3価のイオンでは、やはり若干の析出が見られる。実施例1で用いた硫酸銅1リットルの代わりに鉄が3価の塩化第二鉄水溶液(濃度は1622ppm(10mmol/L)1リットルで実験したところ、アミノ基を有する水溶性高分子を添加する前に試験水が濁った。そこで、用いるポリアクリル酸の平均分子量を100000にしたところ濁りは回避された。
【0105】
以上より凝集物形成の際の酸性基を有する水溶性高分子の平均分子量200000以下が好適であると判断される。更に好ましくは100000以下が好適であると判断される。
【0106】
まとめると、本実施例より、本発明で用いる酸性基を有する水溶性高分子の平均分子量は2000〜200000が好適であることが示された。また、より好ましくは、酸性基を有する水溶性高分子の平均分子量は2000〜100000が好適であることが示された。
【実施例13】
【0107】
実施例1において、ポリエチレンイミンの10重量%水溶液を加える際、攪拌はオーバーヘッドスターラを用い、その際の回転数は200rpmとした。すると生成する凝集物のサイズは1〜3mm程度であった。
【0108】
そこで、本実施例ではオーバーヘッドスターラの回転数は500rpmとしたところ、生成する凝集物のサイズは0.01〜0.3mmであり、粒子径のばらつきも大きかった。そのため、種々の目のサイズの濾紙の目を詰まらせやすくなるため、処理の効率が低くなる。そこで、この細かな凝集物の生成した試験水に汚濁微粒子を大きな凝集物にする際用いるポリ塩化アルミニウム(PAC)の1重量%水溶液を1.5g加え、攪拌後ポリアクリルアミドの0.1重量%の水溶液を1g加え、更にオーバーヘッドスターラの回転数を200rpmに下げて攪拌し続けたところ、凝集物のサイズが1〜3mm程度まで大きくなった。凝集物が大きくなったため濾紙を用いての凝集物の濾取において、濾紙の目をほとんど詰まらせずに容易に行えるようになった。よって凝集物が小さい場合は、ポリ塩化アルミニウムまたはポリアクリルアミドを加えて凝集物のサイズを大型化し、濾過をしやすくすることが可能となった。
【実施例14】
【0109】
実施例1において、ポリエチレンイミンの水溶液を加える前に、試験水にフェライト系の磁性粉を100mg添加した。その後、ポリエチレンイミンの水溶液を加え、凝集物が生成後、試験水内に永久磁石を入れ、30秒後に引き上げると、凝集物の約90%が磁石表面に付着した。残りは試験水を入れた容器の表面またはオーバーヘッドスターラの試験水に浸っている表面にこびり付いていた。
【0110】
試験水を濾紙で濾過後、濾液中の硫酸銅濃度は80ppmであった。以上より、磁性粉または磁石を用いることにより、濾過を行わなくとも、試験水中から金属を除去できることが確認された。
【実施例15】
【0111】
実施例14において磁性粉の量を半分の50mgにする以外は同様の実験を行ったところ、磁性粉に付着した凝集物は全体の50%程度であった。約40%の凝集物は磁石には付着せず、試験水中を漂っていた。つまり、この方法では磁性粉量が凝集物の除去には不十分であることを示している。
【0112】
しかし、磁性粉をポリエチレンイミン水溶液に混合後、試験水中に加えた場合、即ち、ポリエチレンイミンと磁性粉を同時に試験水に加えた場合は、磁性粉に付着した凝集物は全体の90%であった。またこの方法で試験水を処理したところ、硫酸銅濃度は80ppmになった。
【0113】
以上より、磁性粉を試験水に加える際は、磁性粉とアミノ基を有する水溶性高分子を同時に加えることで、必要な磁性粉の量を低減できることが示された。
【0114】
試験水及びポリエチレンイミン水溶液に比べて磁性粉は比重が大きいため、試験水の攪拌速度をかなり高めても、試験水中に均一には存在しにくい。そのため、凝集物中に含有される磁性粉の割合は、凝集物によって差がつきやすい。そこで、磁性粉をポリエチレンイミン水溶液と一緒に加えることで、磁性粉が生成する凝集物に対してほぼ均一に含有され、結果として少量の磁性粉で磁石に付着させることが可能になったと考えられる。
【符号の説明】
【0115】
1 金属の塩
2 カルボキシル基を有する水溶性高分子
3,5 イオン結合
4 アミノ基を有する水溶性高分子
6 凝集物
7 酸(H+-
8 アンモニウム塩構造の高分子
9 塩基(N+OH-
10 カルボン酸塩構造の高分子
11,16,18,23,30,35,40,42,47,54,69,72 ポンプ
12,17,19,24,31,36,41,43,48,55,70,73 配管
13,37 第一の混合槽
14,21,38,45,57,71 オーバーヘッドスターラ
15,39 第一のタンク
20,44 第二の混合槽
22,46 第三のタンク
25,25a,25b,60 バルブ
26,26a,26b 濾過部
27,27a,27b 濾過槽
28,28a,28b 多孔質部材
29,53 第二のタンク
32,32a,32b,56 配管の先端
33 沈降槽
34 濾過槽攪拌機構
49,58 ドラム
50 スクレイパー
51 凝集物集積容器
52 ドラムの中心部分にある配管
59,61 凝集物除去槽
62 凝集物洗浄機構
63 散水部
64,66 受器
65 乾燥風発生部
67 第三の混合槽
68 第四のタンク
74,76 磁石
75 バット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属をイオン結合により凝集物とする凝集剤であって、
アミノ基を有する水溶性高分子と、
酸性基を有する水溶性高分子とからなる凝集剤。
【請求項2】
請求項1に記載の凝集剤において、
前記酸性基は、カルボキシル基またはスルホン酸基であり、
酸性基を有する水溶性高分子は、ポリアクリル酸,ポリアスパラギン酸,ポリグルタミン酸,アルギン酸,ポリビニルスルホン酸、またはポリスチレンスルホン酸を含む凝集剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載の凝集剤において、
前記アミノ基を有する高分子がポリエチレンイミン,ポリビニルアミン,ポリアリルアミン,キトサン,ポリリシン、またはポリアルギニンを含む凝集剤。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の凝集剤において、
前記アミノ基を有する水溶性高分子の平均分子量は、200以上1000000以下である凝集剤。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の凝集剤において、
前記アミノ基を有する水溶性高分子の平均分子量は、200以上200000以下である凝集剤。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の凝集剤において、
前記アミノ基を有する水溶性高分子の平均分子量は、500以上200000以下である凝集剤。
【請求項7】
請求項1乃至6に記載の凝集剤において、
前記アミノ基を有する水溶性高分子のアミノ基は、塩酸塩,硝酸塩、または硫酸塩構造である凝集剤。
【請求項8】
請求項1乃至7に記載の凝集剤において、
前記酸性基を有する水溶性高分子の平均分子量は、2000以上200000以下である凝集剤。
【請求項9】
請求項1乃至8に記載の凝集剤において、
前記酸性基を有する水溶性高分子の平均分子量は、5000以上200000以下である凝集剤。
【請求項10】
請求項1乃至9に記載の凝集剤において、
前記酸性基を有する水溶性高分子の平均分子量は、10000以上200000以下である凝集剤。
【請求項11】
請求項1乃至10に記載の凝集剤において、
前記酸性基を有する水溶性高分子の酸性基は、アンモニウム塩,アルカリ金属塩、またはアルカリ土類金属塩構造である凝集剤。
【請求項12】
金属をイオン結合により凝集物とする排水浄化方法において、
前記排水に酸性基を有する水溶性高分子を添加した後、アミノ基を有する水溶性高分子を添加する排水浄化方法。
【請求項13】
請求項12に記載の排水浄化方法において、
前記酸性基を有する水溶性高分子の酸性基の数をPA、前記アミノ基を有する水溶性高分子のアミノ基の数をPBとするとき、
前記アミノ基を有する水溶性高分子及び酸性基を有する水溶性高分子について、PB≧PAを満たすように調整する排水浄化方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の排水浄化方法において、
前記金属のモル数と価数の積をMB、前記酸性基を有する水溶性高分子の酸性基の数をPA、前記アミノ基を有する水溶性高分子のアミノ基の数をPBとするとき、
前記アミノ基を有する水溶性高分子及び酸性基を有する水溶性高分子について、PB≧PA≧MBを満たすように調整する排水浄化方法。
【請求項15】
請求項12乃至14に記載の排水浄化方法において、
前記アミノ基を有する水溶性高分子を添加する前に、無機の塩を添加する排水浄化方法。
【請求項16】
請求項12乃至15に記載の排水浄化方法において、
前記無機の塩は、塩化ナトリウムである排水浄化方法。
【請求項17】
請求項12乃至16に記載の排水浄化方法において、
前記凝集物にポリ塩化アルミニウムまたはポリアクリルアミドを添加する排水浄化方法。
【請求項18】
請求項12乃至17に記載の排水浄化方法において、
前記アミノ基を有する水溶性高分子を添加する前に磁性粉または鉄粉を添加する排水浄化方法。
【請求項19】
請求項12乃至18に記載の排水浄化方法において、
前記金属に前記酸性基を有する水溶性高分子を添加した後、アミノ基を有する水溶性高分子及び磁性粉または鉄粉を混合して添加する排水浄化方法。
【請求項20】
排水に含まれる金属をイオン結合により凝集物とする金属回収方法であって、
前記排水に対して酸性基を有する水溶性高分子を添加した後、アミノ基を有する水溶性高分子を添加することで前記凝集物を回収し、強酸または強塩基を加えて前記凝集物を溶解する金属回収方法。
【請求項21】
請求項20に記載の金属回収方法において、
前記酸性基を有する水溶性高分子の酸性基の数をPA、前記アミノ基を有する水溶性高分子のアミノ基の数をPBとするとき、
前記アミノ基を有する水溶性高分子及び酸性基を有する水溶性高分子について、PB≧PAを満たすように調整する金属回収方法。
【請求項22】
請求項21に記載の金属回収方法において、
前記金属のモル数と価数の積をMB、前記酸性基を有する水溶性高分子の酸性基の数をPA、前記アミノ基を有する水溶性高分子のアミノ基の数をPBとするとき、
前記アミノ基を有する水溶性高分子及び酸性基を有する水溶性高分子について、PB≧PA≧MBを満たすように調整する金属回収方法。
【請求項23】
請求項21または22に記載の金属回収方法において、
前記凝集物にポリ塩化アルミニウムまたはポリアクリルアミドを添加する金属回収方法。
【請求項24】
請求項21乃至23に記載の金属回収方法において、
前記アミノ基を有する水溶性高分子を添加する前に磁性粉または鉄粉を添加する金属回収方法。
【請求項25】
請求項21乃至24に記載の金属回収方法において、
前記金属に前記酸性基を有する水溶性高分子を添加した後、アミノ基を有する水溶性高分子及び磁性粉または鉄粉を混合して添加する金属回収方法。
【請求項26】
排水中の金属をイオン結合により凝集物とする排水浄化装置であって、
前記金属及び酸性基を有する水溶性高分子の水溶液を混合する第一の混合槽と、
前記第一の混合槽中の液体及びアミノ基を有する水溶性高分子の水溶液を混合する第二の混合槽と、
前記金属が前記第一の混合槽に移動するための第一の配管と、
前記第一の混合槽中の液体が前記第二の混合槽に移動するための第二の配管と、
前記凝集物を濾過する濾過部と、を有する排水浄化装置。
【請求項27】
請求項26に記載の排水浄化装置において、
無機の塩の水溶液を含む第一のタンクを有する排水浄化装置。
【請求項28】
請求項27に記載の排水浄化装置において、
前記アミノ基を有する水溶性高分子の水溶液を前記第二の混合槽に投入するための第三の配管を有し、
前記第二の配管及び第三の配管は、前記第二の混合槽中の液面に接触しない排水浄化装置。
【請求項29】
請求項27または28に記載の排水浄化装置において、
前記凝集物を沈殿させる沈降槽有する排水浄化装置。
【請求項30】
請求項27乃至29に記載の排水浄化装置において、
前記濾過部は、濾過槽を有し、
前記濾過槽の上面付近に濾過槽攪拌機構を有する排水浄化装置。
【請求項31】
請求項27乃至30に記載の排水浄化装置において、
前記酸性基を有する水溶性高分子の水溶液及び磁性粉または鉄粉を有する第二のタンクと、
表面がメッシュ状である第一のドラムと、を有する排水浄化装置。
【請求項32】
請求項31に記載の排水浄化装置において、
表面が金属である第二のドラムを有する排水浄化装置。
【請求項33】
請求項31または32に記載の排水浄化装置において、
磁気分離を行う凝集物除去槽を有する排水浄化装置。
【請求項34】
排水中の金属をイオン結合により凝集物とする金属回収装置であって、
前記金属及び酸性基を有する水溶性高分子の水溶液を混合する第一の混合槽と、
前記第一の混合槽中の液体及びアミノ基を有する水溶性高分子の水溶液を混合する第二の混合槽と、
前記凝集物及び酸または塩基の水溶液を混合する第三の混合槽と、
前記金属が前記第一の混合槽に移動するための第一の配管と、
前記第一の混合槽中の液体が前記第二の混合槽に移動するための第二の配管と、を有する金属回収装置。
【請求項35】
請求項34に記載の金属回収装置において、
前記凝集物を水で洗浄する凝集物洗浄機構を有する金属回収装置。
【請求項36】
請求項34または35に記載の金属回収装置において、
前記凝集物を水で洗浄した後、前記凝集物を乾燥する乾燥風発生部を有する金属回収装置。
【請求項37】
請求項34乃至36に記載の金属回収装置において、
磁気分離を行う凝集物除去槽を有し、
前記第三の混合槽に磁性を有する部材を設ける金属回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−172815(P2010−172815A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17451(P2009−17451)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】