排水管用吸気弁
【課題】取付方向に影響されずに設置の際の制約が少なく、構成部品が少なく、簡単な構造で弁機能を発揮でき、点検や清掃なども行い易い排水管用吸気弁。
【解決手段】排水管用吸気弁10は、筒状の弁箱12および弁部材14を含み、接続口22を介して排水管に外付けされて、排水管内に発生した負圧を解消する。弁箱12の一方端には、吸気口20が形成され、吸気口20には、弾性および柔軟性を有する筒状の膜である弁部材14が接続される。この弁部材14には、その内壁同士が面接触するように癖付けされた閉塞部28が形成されている。このような排水管用吸気弁10では、通常時には、閉塞部28が閉口することにより、吸気口20の連通は閉塞される。一方、排水管内に負圧が発生したときには、閉塞部28は開口して、吸気口20が連通される。このような吸気口20の開閉動作は、閉塞部28の弾性特性によって行われる。
【解決手段】排水管用吸気弁10は、筒状の弁箱12および弁部材14を含み、接続口22を介して排水管に外付けされて、排水管内に発生した負圧を解消する。弁箱12の一方端には、吸気口20が形成され、吸気口20には、弾性および柔軟性を有する筒状の膜である弁部材14が接続される。この弁部材14には、その内壁同士が面接触するように癖付けされた閉塞部28が形成されている。このような排水管用吸気弁10では、通常時には、閉塞部28が閉口することにより、吸気口20の連通は閉塞される。一方、排水管内に負圧が発生したときには、閉塞部28は開口して、吸気口20が連通される。このような吸気口20の開閉動作は、閉塞部28の弾性特性によって行われる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は排水管用吸気弁に関し、特にたとえば、排水管内に負圧が発生したときに、排水管内に外気を導入して負圧を解消する、排水管用吸気弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の吸気弁の一例が特許文献1に開示される。特許文献1に開示される吸気弁は、排水管の上部に延設される吸気管の上端に設置される吸気弁であり、2つの吸入口の間に排水管内と連通する開口部を形成した弁本体と、吸入口を開閉する弁部材(弁体)と、吸入口および開口部を覆う覆部材とを備えている。特許文献1の技術では、通常時は、弁部材の自重によって弁部材と弁座とを当接させることにより、吸入口を閉塞させている。そして、排水管内に負圧が発生したときには、案内棒に沿って弁部材が摺動することにより、吸入口が開口され、外気が排水管内に吸気される。
【0003】
また、従来技術の他の一例が特許文献2に開示される。特許文献2に開示される吸気弁は、排水システムの掃除口に設置される吸気弁であり、短管状の本体と、吸気穴を有する蓋体と、弁体ガイド筒部を有する弁体押さえと、ガイドポストを有する弁体と、弁体押さえと弁体との間に介装される圧縮バネとを備えている。特許文献2の技術では、通常時は、圧縮バネの弾性によって弁体を弁座に押し付けることにより、吸気穴を閉塞している。そして、排水管内に負圧が発生したときには、弁体ガイド筒部に沿って弁体が摺動することにより、吸気穴が開口され、外気が排水管内に流入される。
【特許文献1】特許第2866833号公報 [F16K 24/06]
【特許文献2】特許第2702389号公報 [E03C 1/122]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術のように、弁体の自重によって吸気口を閉じる吸気弁の場合には、弁体の摺動方向(摺動軸)が傾いていると、弁座と弁体とが適切に密着できないので、通常時の気密性を確保できずに臭気漏れが生じる恐れがある。このため、特許文献1の技術では、摺動軸が鉛直方向なるように正確に吸気弁を設置しなければならず、設置作業が困難なものとなる。また、取り付け方向に制約を受けることにより、吸気弁を設置できる場所も限定されてしまう。
【0005】
また、特許文献2の技術のように、圧縮バネの弾性を利用して吸気口を閉じる吸気弁の場合には、摺動軸が傾いていても弁体を弁座に押し付けることができるので、摺動軸の多少の傾きは許容される。しかしながら、摺動軸が傾いていると、摺動軸が鉛直方向の場合と比較して、摺動軸とガイドとの間に余分な摩擦がかかり、その摺動性に問題が生じる恐れがある。このため、圧縮バネを利用する場合でも、摺動軸が鉛直方向なるように吸気弁を設置することが望まれる。
【0006】
さらに、圧縮バネを利用する特許文献2の技術では、弁機能を発揮するために、軸部材、ガイド部材および圧縮バネ等の多くの部品が必要となるので、コストがかかる上、その構造も複雑になってしまう。構造が複雑になると、故障が生じ易く、点検や清掃なども行い難くなる。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、排水管用吸気弁を提供することである。
【0008】
この発明の他の目的は、設置の際の制約が少なく、簡単な構造で弁機能を発揮できる、排水管用吸気弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、この発明を何ら限定するものではない。
【0010】
第1の発明は、排水管内に負圧が発生したときに、排水管内に外気を導入する排水管用吸気弁であって、排水管との接続口を有し排水管に外付けされる筒状の弁箱、弁箱に形成され外気と連通する吸気口、および一方端部が吸気口に接続されて弁箱内に配置される弾性および柔軟性を有する筒状の膜であって、他端部にその内壁同士が接触するように癖付けされた閉塞部を有する弁部材を備え、通常時には閉塞部の内壁同士の接触により吸気口の連通が閉塞され、排水管内に負圧が発生したときには閉塞部の内壁同士が離れて開口することにより吸気口が連通される、排水管用吸気弁である。
【0011】
第1の発明では、排水管用吸気弁(10)は、筒状(たとえば円筒状)の弁箱(12)および弁部材(14)を備え、排水管(100)内に負圧が発生したときに、排水管内に外気を導入することによってその負圧を解消する。弁箱は、接続口(22)を介して排水管に外付けされる。また、弁箱には、外気と連通する吸気口(20)が形成される。弁部材は、弾性および柔軟性を有する筒状の膜であり、一方端部は開口して吸気口に接続され、他端部にはその内壁同士が接触するように癖付けされた閉塞部(28)が形成される。このような排水管用吸気弁では、通常時は、閉塞部が閉口することにより吸気口の連通が閉塞され、外部への臭気漏れが防止される。そして、排水管内に負圧が発生したときには、弁部材の内部と外部との圧力差によって閉塞部が開口することにより、吸気口が連通され、排水管内に外気が導入される。このような閉塞部による吸気口の開閉動作は、閉塞部の弾性特性によって行われるので、吸気弁の弁機能はその取付方向に影響されない。
【0012】
第1の発明によれば、取付方向に影響されずに弁機能を発揮できるので、排水管に対して様々な方向に取付可能である。したがって、設置の際の制約が少なく、設計施工が容易となる。
【0013】
また、構成部品が少なく、簡単な構造で弁機能を発揮できるので、製造コストを低減でき、点検や清掃なども行い易い。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、弁部材として筒状の膜を用い、その端部に形成した閉塞部の弾性特性によって吸気口の開閉を行うので、取付方向に影響されずに弁機能を発揮できる。したがって、排水管に対して様々な方向に取付可能である、つまり設置の際の制約が少ないので、設計施工が容易となる。
【0015】
また、構成部品が少なく、簡単な構造で弁機能を発揮できるので、製造コストを低減でき、点検や清掃なども行い易い。
【0016】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1を参照して、この発明の一実施例である排水管用吸気弁10(以下、単に「吸気弁10」という。)は、戸建住宅やマンション等の建物内の排水管100に取り付けられて、排水管100内に負圧が発生したときに、排水管100内に外気を導入することにより、排水騒音を低減したり、排水トラップの封水破壊を防止したりする。排水管100は、台所、トイレ、風呂、洗濯機および洗面台などの住設器具102からの排水(雑排水や汚水)を流して排水枡104や下水管などまで導く、排水トラップ、器具排水管106、排水横枝管108および排水立て管110などを含み、これら排水管100の適宜な位置に、適宜な個数の吸気弁10が取り付けられる。
【0018】
図2および図3に示すように、吸気弁10は、弁箱12および弁部材14を備える。弁箱12は、直管部16と屈曲部18とを含み、L字型の細長円筒状に形成される。また、弁箱12の両端は開口しており、弁箱12の一方端(直管部16側)の開口部は、外気を導入するための吸気口20であり、弁箱12の他端(屈曲部18側)の開口部は、排水管100と接続され、排水管100内と連通する接続口22である。
【0019】
弁箱12の材質は、特に限定されないが、たとえば排水管100と同様の材質を利用でき、ポリエチレン、ポリプロピレンおよび塩化ビニル等の合成樹脂を好適に利用することができる。
【0020】
弁箱12の大きさは、取り付ける排水管100の大きさや必要とされる吸気性能(吸気量)などに応じて適宜設定され、たとえば一般戸建住宅の排水管100に設置する吸気弁10では、弁箱12の内径は、たとえば30〜60mmであり、直管部16の長さは、たとえば80〜200mmである。また、弁箱12の内径は、必ずしもその全長に亘って一様である必要はなく、たとえば、直管部16と屈曲部18とで内径が変更されてもよいし、徐々に縮径または拡径していくように形成されてもよいし、中間部が両端部より拡径するように形成されてもよい。
【0021】
なお、図2および図3では、直管部16の端部を差口として屈曲部18の受口に嵌合し、接着接合した弁箱12を例示しているが、直管部16と屈曲部18とは、予め一体的に形成することもできる。また、直管部16と屈曲部18とを別部材として形成し、これらを接合する場合には、水密的および気密的に接合できればよく、接着接合、ねじ接合およびゴム輪接合などの公知の接合方法を用いることができる。
【0022】
弁部材14は、取付部材24によって弁箱12の吸気口20に取り付けられ、吸気口20からの外気の導入を制御する部材である。具体的には、弁部材14は、シリコーンゴムおよびウレタンゴム等の合成ゴム、或いは天然ゴム等の弾性材によって形成される、弾性および柔軟性を有する細長筒状の膜(メンブレン)である。弁部材14は、弁箱12の直管部16内において直管部16と同軸方向に延び、その一方端部には、円筒状に開口して吸気口20に接続される開口部26が形成され、その他端部には、その内壁同士が面接触して閉口する平板状の閉塞部28が形成される。
【0023】
弁部材14の閉塞部28は、成形時(たとえば加硫中)において、側面方向から荷重を加えることにより筒状の膜を平板状に折り、その内壁同士が当接するように癖付けする(つまり、その形状を記憶させる)ことによって形成される。たとえば、円筒状の膜を形成し、その全体を平板状に折って癖付けし、その後、一方端部のみを円筒状に開くようにすることによって、他端部のみが平板状に癖付けされた弁部材14を形成できる。この閉塞部28は、弁部材14の内部と外部との圧力差によって開口可能であり、その開口に要する力(圧力差)は、癖付けする際に加える荷重によって適宜設定できる。
【0024】
なお、図2および図3において、弁部材16は、閉塞部28が水平方向になるように弁箱12内に配置されている、つまり上下方向に開閉するように配置されているが、これに限定されず、閉塞部28が鉛直方向または斜め方向のいずれの方向になるように弁部材14を配置してもよい。
【0025】
また、弁部材14の大きさは、弁箱12の直管部16に収まる程度の大きさであり、弁箱12と同様に、取り付ける排水管100の大きさや必要とされる吸気性能(吸気量)などに応じて適宜設定される。
【0026】
このような弁部材14は、上述のように、取付部材24によって弁箱12の吸気口20に取り付けられる。取付部材24は、中央に柵状開口を有するドーナツ板状に形成される基端部30、基端部30の周縁に形成される短円筒状の外壁部32、基端部30の開口周縁に形成される短円筒状の内壁部34を含む。取付部材24の材質としては、弁箱12と同様の材質(合成樹脂など)を利用できる。
【0027】
取付部材24によって弁部材14を吸気口20に取り付けるときには、吸気口20の端部に対して、弁部材14の開口部26の端部を折り返すようにして接続し、これらを取付部材24の外壁部32と内壁部34とによって挟み込むことによって固定する。これにより、弁部材14は、吸気口20に対して水密的および気密的に取り付けられる。なお、図示は省略するが、取付部材24と吸気口20とは、ねじ方式やバヨネット方式などの適宜の係合手段を利用して着脱可能に係合され、抜け止めされている。
【0028】
ただし、弁部材14を吸気口20に対して水密的および気密的に固定できれば、弁部材14の取付方法または取付部材24の形状は、特に限定されない。たとえば、必ずしも弁部材14の端部を折り返すようにして吸気口20に接続する必要はなく、取付部材24の内壁部34に弁部材14の端部を外嵌し、その後、取付部材24の内壁部34の外側面と吸気口20の内側面とで挟み込むようにして、弁部材14を吸気口20に固定してもよい。この場合には、たとえば、鋸歯状などに形成される抜け止め用の突条を、取付部材24の内壁部34の外側面に形成しておけば、弁部材14をより確実に固定できる。
【0029】
図1および図4−図8を参照して、このような吸気弁10は、シンク下112、天井裏114、床下116、および内壁と外壁との間の空間118などにおいて、排水管100に外付けされる。詳細は後述するように、図4−図6には、排水横枝管108のような排水管100の横管部の側面に吸気弁10を取り付けた状態を、図7には、器具排水管106や排水立て管110などの排水管100の縦管部の側面に吸気弁10を取り付けた状態を、図8には、排水立て管110や通気管などの排水管100の縦管部の上端110aに吸気弁10を取り付けた状態をそれぞれ例示している。
【0030】
排水管100への吸気弁10の取り付け方法は、特に限定されないが、たとえば、排水管にチーズ(90度Yなど)やサドル継手などの分岐継手120を接続し、その分岐継手120の分岐口122と吸気弁10の接続口22とを、接着接合、ねじ接合およびゴム輪接合などの公知の接合方法などによって接続するとよい。たとえば、ねじ接合などを用いて排水管100(分岐継手120)の分岐口122と吸気弁10の接続口22とを着脱自在に接続すれば、吸気弁10を排水管100から容易に取り外すことができるので、吸気弁10の点検清掃や故障による交換などの作業を容易に行うことができる。この作用効果は、弁箱12の直管部16と屈曲部18とを着脱自在に接合した場合も同様であり、これらを着脱自在に接合した場合には、排水管100の分岐口122と吸気弁10の接続口22とを接着接合などにより接合しても、維持管理の作業負担を大きく低減できることに変わりはない。
【0031】
このように排水管100に設置された吸気弁10は、通常時には、弁部材14の閉塞部28が閉口することによって、吸気口20の連通が閉塞され、排水管100からの臭気漏れを防止する。また、排水管100内を流れる排水が、万一弁箱12内に流入したとしても、弁部材14が逆止弁機能を発揮して、外部への排水の流出を防止する。
【0032】
一方、住設器具102から多量の排水が排出される等して、排水管100内に負圧が発生したときには、弁箱12内も負圧状態となり、開口部26が外気と連通することにより大気圧に保たれる弁部材14の内部との間に圧力差が生じる。つまり、弁部材14の内部より外部の方が気圧が低くなるので、この圧力差によって閉塞部28の内壁同士が離れて開口し、吸気口20が連通する。これにより、弁箱12内および排水管100内に外気が導入されて、排水管100内の負圧が解消されるので、排水トラップの封水破壊が防止され、排水の流れが滑らかになって排水騒音が低減される。
【0033】
また、排水管100内の負圧が解消されて弁箱12内が大気圧に戻ると、弁部材14の閉塞部28は、内壁同士が面接触するように癖付されているため、その弾性特性により確実に閉口状態に戻る。
【0034】
上述のような弁部材14の閉塞部28の開閉動作、つまり吸気弁10の弁機能は、閉塞部28の弾性特性により行われるので、その取り付け方向に影響されない。つまり、吸気弁10は、縦、横および斜め方向のいずれに設置しても同様に弁機能を発揮するので、排水管100に対して様々な方向に取りつけることができる。
【0035】
たとえば、図4に示すように、天井裏114などに配管される排水管100の横管部の側面天頂部に対して、排水管100と同軸方向に吸気弁10を取り付けることもできるし、図5に示すように、排水管100の軸方向に対して角度をつけて(たとえば直角方向に)吸気弁10を取り付けることもできる。
【0036】
また、排水管100の横管部の側面天頂部だけでなく、図6に示すように、横管部側面の天頂部以外にも吸気弁10を取り付けることもできる。ただし、この場合には、吸気弁10の設置方向が天頂方向から水平方向に近づくにつれて、排水が弁箱12内に流入し易くなり、水平方向より下方向に設置すると、弁箱12内に排水が溜まってしまうので、吸気弁10は、横管部側面の斜め上方向から天頂方向に設置することが望ましい。
【0037】
さらに、吸気弁10は、排水管100の横管部だけでなく縦管部にも好適に設置できる。たとえば、図7に示すように、器具排水管106や排水立て管110のような、排水管100の縦管部の側面に吸気弁10を取り付けることもできるし、図8に示すように、外壁と内壁との間の空間118に配管される排水立て管110のような、排水管100の縦管部の上端110aに吸気弁10を取り付けることもできる。ただし、排水管100の縦管部の側面に吸気弁10を設置する場合には、吸気口20が水平方向より下向きになるように設置してしまうと、万一弁箱12内に排水が流入したときに、弁箱12内に排水が溜まってしまう恐れがあるので、吸気口20が水平方向より上向きになるように吸気弁10を設置することが望ましい。
【0038】
このように、吸気弁10は、排水管100の縦管部にも横管部にも設置できる上、設置する空間の態様に合わせて取付方向を決めることができるので、配管設計を行い易い。また、弁体を摺動させるタイプの弁部材と異なり、予め決められた方向に厳密に設置する必要がないので、設置作業(施工)が容易である。つまり、吸気弁10は、設置の際の制約が少ない。
【0039】
また、弁部材14が細長筒状に形成されることから、吸気弁10全体としても厚みを小さく形成できるので、吸気弁10は、天井裏114や床下116などの狭い空間にも好適に設置できる。特に、図6に示すように、吸気弁10は、排水管100の横管部側面の斜め上方向に設置でき、設置高さを抑えることができるので、高さ方向に制限のある天井裏114などの空間においても好適に設置できる。
【0040】
さらに、天井裏114の排水横枝管108に吸気弁10を設置するような場合には、図6に示すように、天井に設けた点検口124に向けて吸気弁10を傾けて設置しておけば、点検口124から吸気弁10に手が届き易くなり、維持点検作業を行い易い。
【0041】
以上のように、この実施例によれば、弁部材14として筒状の膜を用い、その端部に形成した閉塞部28の弾性特性によって吸気口20の開閉を行うので、取付方向に影響されずに弁機能を発揮できる。したがって、吸気弁10は、排水管100に対して様々な方向に取付可能であり、設置の際の制約が少ないので、設計施工が容易である。
【0042】
また、吸気弁10は、基本的には弁箱12および弁部材14のみで構成され、構成部品が少ないので、製造コストを低減できる。さらに、吸気弁10は、簡単な構造を有するので、点検や清掃なども行い易い。たとえば、弁部材14が万一汚れた場合でも、吸気口20から通水すれば弁部材14を洗浄可能であるので、吸気弁10を分解することなく弁部材14を洗浄できる。
【0043】
また、従来の吸気弁では、上述の特許文献1および2にも開示されているように、住設器具よりも上方に延びる通気管を排水管に別途配設し、その通気管の上端に吸気弁を設置するようにしている。これは、排水が吸気弁に流入して、外部に飛び出すことを防止するためであるが、この実施例の吸気弁10は、排水の逆止機能を有し、排水の飛び出しを防止できるので、排水管100に直接取り付けることができる。したがって、図1に仮想線で示すような通気管126を排水管100に別途配設する必要がないので、その配設作業を省略でき上、外壁と内壁との間の空間118を上階部分に設ける必要もなくなるので、上階部分の居住スペースを広くとることができる。
【0044】
なお、上述の実施例では、弁部材14を単一の材料で形成しているが、弁部材14は、必ずしも単一の材料で形成する必要はない。たとえば、異なる種類の弾性材を重ねた複層状に形成してもよいし、形状記憶合金などの金属材料によって形成した板状体を外側面に貼り付ける等して弁部材14を補強してもよい。
【0045】
また、上述の実施例では、円筒状の膜を用いて弁部材14を形成しているが、これに限定されず、たとえば楕円筒状(扁平筒状)の膜を用いて弁部材14を形成してもよい。楕円筒状の膜を用い、その短径方向に開閉する閉塞部28を形成すれば、閉塞部28の癖付けが行い易く、より適切に弁機能を発揮できる。さらに、全長に亘って径が一様の筒状膜を用いる必要はなく、たとえば、一方端部の径が大きく他端部の径が小さい筒状膜を用いて弁部材14を形成することもできる。この場合には、径が小さい他端部において閉塞部28を形成すれば、閉塞部28の癖付けが行い易く、より適切に弁機能を発揮できる。
【0046】
また、一体成形した筒状膜を用いる必要はなく、たとえば、2枚の平板状の膜をつなぎ合わせて形成した筒状膜を用いて弁部材14を形成することもできる。この場合には、たとえば、2枚の長方形状の膜を用意し、その2枚の膜を重ね合わせ、その長辺側の両側部同士を接着接合或いは融着接合などによってつなぎ合わせるとよい。その後、一方端部のみを円筒状に開けば、他端部のみが平板状に癖付けされた弁部材14を形成できる。
【0047】
また、上述の実施例では、弁箱12をL字型の円筒状に形成したが、弁箱12の形状は、これに限定されない。たとえば、弁箱12は、楕円筒状または角筒状でもよい。また、必ずしも屈曲部18を形成してL字型にする必要はなく、図9に示す実施例の吸気弁10のように、弁箱12を直管部16のみの直管状に形成してもよい。この場合には、直管部16の他端の開口部が、排水管100と接続される接続口22となる。図9に示す吸気弁10においても、取付方向に影響されずに弁機能を発揮できるので、排水管100の適宜な位置に、設置する空間の態様に合わせて取り付けることができ、図2に示す吸気弁10と同様の作用効果を示す。
【0048】
さらに、上述の各実施例では、弁箱12の他端部に排水管100との接続口22を形成したが、図10および図11に示す実施例の吸気弁10ように、弁箱12の側面に接続口22を形成することもできる。以下には、図10および図11に示す吸気弁10の構成について説明するが、上述の記載と同様の部分については、同じ参照番号を用い、その説明を省略或いは簡略化する。
【0049】
図10および図11に示す吸気弁10は、直管状の細長円筒状に形成される弁箱12を備える。弁箱12の一方端は開口しており、そこに外気を導入するための吸気口20が形成される。また、弁箱12の他端は、蓋部材40によって封止される。蓋部材40は、ねじ接合などによって着脱可能に弁箱12に接続される。ただし、蓋部材40は、必ずしも着脱可能に弁箱12に接続される必要はなく、たとえば弁箱12と予め一体的に形成されていてもよい。また、弁箱12の側面には、短円筒状の接続口22が形成され、この接続口22に排水管100が接続される。なお、図10および図11では、弁箱12の軸方向中央部に形成した接続口22を例示しているが、接続口22は、弁箱12の端部側面に形成することもできる。
【0050】
また、弁箱12の吸気口20には、取付部材24によって弁部材14が接続される。弁部材14の配置方向は、特に限定されないが、閉塞部28が接続口22の径方向と平行になるように配置すると、排水管100内に負圧が発生したとき等に、閉塞部28が接続口22側に引っ張られて垂れてしまい、接続口22を閉塞する恐れがある。このため、図10および図11に示す吸気弁10では、図示したように、閉塞部28が縦方向になるように弁部材14を配置することが望ましい。
【0051】
なお、接続口22方向への閉塞部22(弁部材14)の垂れを防止するために、上述のように、板状体を外側面に貼り付ける等して弁部材14自体を補強することもできる。また、弁箱12の内壁から突出する支持板を形成し、この支持板によって弁部材14を支えるようにしてもよい。
【0052】
図10および図11に示す吸気弁10においても、図2に示す吸気弁10と同様の作用効果を示す。つまり、設置の際の制約が少なくなるので、設計施工が容易になる。また、構成部品が少なく、簡単な構造で弁機能を発揮できるので、製造コストを低減でき、点検や清掃なども行い易い。さらに、図10および図11に示す吸気弁10では、接続口22を弁箱12の側面に形成することによって、弁箱12の長さを短くすることができるので、より小型化することができる。
【0053】
ただし、図10および図11に示す吸気弁10は、排水管100の縦管部の側面に設置すると、万一弁箱12内に排水が流入した場合には、弁箱12内に排水が溜まってしまう恐れがあるので、排水管100の横管部の側面、或いは縦管部の上端に設置することが望ましい。
【0054】
また、上述の各実施例では、排水管100に設けた分岐継手120に吸気弁10の接続口22を接続するようにしたが、接続口22に分岐継手部を予め設けておくこともできる。たとえば、分岐継手部として、接続口22の端部に、排水管100の外側面に沿うサドル部を形成しておくことができる。この場合には、排水管100の側面に分岐口を開け、吸気弁10のサドル部と排水管100の外側面とを接着接合等すれば、排水管100に吸気弁10を設置することができるので、既設の排水管100にも吸気弁10を取り付け易い。
【0055】
また、たとえば、接続口22の端部にチーズ状の分岐継手部を形成してもよく、図4などに示すチーズ120などの分岐継手を含めて吸気弁10とすることもできる。換言すると、吸気機能付きの管継手として吸気弁10を用いることもできる。これにより、従来の分岐継手を排水管100に接続する作業と同様の作業を行うだけで、吸気弁10を排水管100に取り付けることができる。
【0056】
また、上述の各実施例では、弁部材14のみによって弁機能(吸気弁機能および逆止弁機能を含む)を発揮するようにしたが、吸気弁10は、弁部材14に加えて、他の弁部材をさらに備えることもできる、つまり2重弁構造を採用することもできる。たとえば、この発明の他の実施例である図12に示す吸気弁10のように、接続口22に逆止部材(第2弁部材)50を設けることもできる。以下には、図12に示す吸気弁10の構成について説明するが、接続口22に逆止部材50を備えること以外は、上述の各実施例の吸気弁10と同様の構成を採用できるので、上述の記載と同様の部分については、同じ参照番号を用い、その説明を省略或いは簡略化する。
【0057】
図12に示す吸気弁10は、L字型の細長円筒状に形成される弁箱12を備える。弁箱12の両端は開口しており、弁箱12の一方端に形成される吸気口20には、取付部材24によって弁部材14が設けられる。また、弁箱12の他端には、排水管100と接続される接続口22が形成され、接続口22には、逆止部材50が設けられる。
【0058】
逆止部材50は、浮玉52、浮玉保持部材54および弁座部材56を備える。浮玉52は、弁体として機能する部材であり、合成樹脂などによって中空球状に形成されて、浮玉保持部材54内に保持される。
【0059】
浮玉保持部材54は、図13に示すように、合成樹脂などによって形成され、中央に開口58aを有するドーナツ板状に形成される天板部58を備える。この天板部58の外側縁には、下方に延びる複数(たとえば3つ)の矩形板状の側壁部60が形成される。側壁部60の下端は、内側に向かって屈曲しており、そこに浮玉52が下方に落ちないようにするための爪部62が形成されている。また、天板部58の外径は、接続口22の内径とほぼ同じ大きさを有し、側壁部60の外面は、接続口22の内面に沿う。
【0060】
さらに、浮玉保持部材54の天板部58の上面には、弁座部材56が設けられる。弁座部材56は、合成ゴム等によって、中央部に開口56aを有するドーナツ板状に形成される。弁座部材56の外径は、接続口22の内径とほぼ同じ大きさを有する。また、弁座部材56の内径、つまり開口56aの大きさは、浮玉52の外径よりも小さく形成される。
【0061】
このような逆止部材50を接続口22に取り付けるときには、浮玉52を内部に保持した浮玉保持部材54を接続口22内に挿入し、接続口22内に予め形成しておいた突起部42の下面と天板部58の上面とで弁座部材56を挟み込むようにした状態で、接続口22の内面と側壁部60の外面とを接着接合などによって接合するとよい。この際、浮玉52は、浮玉保持部材54を接続口22内に挿入する前に、浮玉保持部材54の天板部58の開口58a、または側壁部60と側壁部60との間を通して、浮玉保持部材54内に配置しておくとよい。
【0062】
このように接続口22に取り付けた逆止部材50では、浮玉52は、その下限位置においては爪部62によって抜け止めされ、浮玉保持部材54内の水位に応じて浮玉保持部材54内を上下動する。そして、排水管100内の排水が接続口22内に流入して、浮玉保持部材54内の水位が上昇したときには、浮玉54は、図12において破線で示すように、その上限位置において弁座部材56の下面と当接して、弁座部材56の開口56aを閉塞する。これにより、排水の弁箱12内への侵入は、開口56aの位置で止められ、逆止弁機能が発揮される。一方、排水管100内で負圧が発生したときには、弁部材14内を介して弁箱12内に流入した外気は、弁座部材56の開口56a、浮玉52の周囲および爪部62の間を通って排水管100内に導入される。これにより、排水管100内の負圧が解消される。
【0063】
図12に示す吸気弁10によれば、2重弁構造を採用することによって、より確実に排水の外部への飛び出しを防止できる。また、逆止部材50を設けることによって、弁部材14周囲への排水の流入が防止されるので、弁部材14の排水汚れを防止でき、排水汚れに起因する弁部材14の不具合の発生を防止できる。
【0064】
なお、図12では、接続口22つまり弁箱12の他端部に逆止部材50を配置したが、逆止部材50は、弁部材14よりも排水管100側であれば、弁箱12内のいずれの位置に配置してもよい。また、逆止部材50の構成および形状は上述のものに限定されず、適宜の構成および形状を有する逆止部材50を、弁部材14と組み合わせて吸気弁10に備えるようにしてもよい。たとえば、図12に示す逆止部材50では、浮玉保持部材54の上部に弁座部材56を別途設けるようにしているが、弁座部材56を設ける代わりに、浮玉保持部材54の天板部58を弁座として機能させてもよい。つまり、天板部58の下面と浮玉52とを当接させることにより、天板部58の開口58aを閉塞させて逆止機能を発揮させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】この発明の排水管用吸気弁を設置する建物の排水管の一例を模式的に示す図解図である。
【図2】この発明の一実施例である排水管用吸気弁の外観を示す図解図である。
【図3】図2の排水管用吸気弁の内部構造を示す断面斜視図である。
【図4】図2の排水管用吸気弁を排水管の横管部側面に設置した様子の一例を示す図解図である。
【図5】図2の排水管用吸気弁を排水管の横管部側面に設置した様子の他の一例を示す図解図である。
【図6】図2の排水管用吸気弁を排水管の横管部側面に設置した様子のさらに他の一例を示す図解図である。
【図7】図2の排水管用吸気弁を排水管の縦管部側面に設置した様子の一例を示す図解図である。
【図8】図2の排水管用吸気弁を排水管の縦管部上端に設置した様子の一例を示す図解図である。
【図9】この発明の他の実施例である排水管用吸気弁の外観を示す図解図である。
【図10】この発明のさらに他の実施例である排水管用吸気弁の外観を示す図解図である。
【図11】図11の排水管用吸気弁の内部構造を示す断面斜視図である。
【図12】この発明のさらに他の実施例である排水管用吸気弁の外観および一部断面を示す概略断面図である。
【図13】図12の排水管用吸気弁が備える逆止部材の浮玉保持部材を示す、(A)は斜視図であり、(B)は平面図である。
【符号の説明】
【0066】
10 …排水管用吸気弁
12 …弁箱
14 …弁部材
20 …吸気口
22 …接続口
24 …取付部材
28 …弁部材の閉塞部
50 …逆止部材
52 …浮玉
54 …浮玉保持部材
56 …弁座部材
100 …排水管
【技術分野】
【0001】
この発明は排水管用吸気弁に関し、特にたとえば、排水管内に負圧が発生したときに、排水管内に外気を導入して負圧を解消する、排水管用吸気弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の吸気弁の一例が特許文献1に開示される。特許文献1に開示される吸気弁は、排水管の上部に延設される吸気管の上端に設置される吸気弁であり、2つの吸入口の間に排水管内と連通する開口部を形成した弁本体と、吸入口を開閉する弁部材(弁体)と、吸入口および開口部を覆う覆部材とを備えている。特許文献1の技術では、通常時は、弁部材の自重によって弁部材と弁座とを当接させることにより、吸入口を閉塞させている。そして、排水管内に負圧が発生したときには、案内棒に沿って弁部材が摺動することにより、吸入口が開口され、外気が排水管内に吸気される。
【0003】
また、従来技術の他の一例が特許文献2に開示される。特許文献2に開示される吸気弁は、排水システムの掃除口に設置される吸気弁であり、短管状の本体と、吸気穴を有する蓋体と、弁体ガイド筒部を有する弁体押さえと、ガイドポストを有する弁体と、弁体押さえと弁体との間に介装される圧縮バネとを備えている。特許文献2の技術では、通常時は、圧縮バネの弾性によって弁体を弁座に押し付けることにより、吸気穴を閉塞している。そして、排水管内に負圧が発生したときには、弁体ガイド筒部に沿って弁体が摺動することにより、吸気穴が開口され、外気が排水管内に流入される。
【特許文献1】特許第2866833号公報 [F16K 24/06]
【特許文献2】特許第2702389号公報 [E03C 1/122]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術のように、弁体の自重によって吸気口を閉じる吸気弁の場合には、弁体の摺動方向(摺動軸)が傾いていると、弁座と弁体とが適切に密着できないので、通常時の気密性を確保できずに臭気漏れが生じる恐れがある。このため、特許文献1の技術では、摺動軸が鉛直方向なるように正確に吸気弁を設置しなければならず、設置作業が困難なものとなる。また、取り付け方向に制約を受けることにより、吸気弁を設置できる場所も限定されてしまう。
【0005】
また、特許文献2の技術のように、圧縮バネの弾性を利用して吸気口を閉じる吸気弁の場合には、摺動軸が傾いていても弁体を弁座に押し付けることができるので、摺動軸の多少の傾きは許容される。しかしながら、摺動軸が傾いていると、摺動軸が鉛直方向の場合と比較して、摺動軸とガイドとの間に余分な摩擦がかかり、その摺動性に問題が生じる恐れがある。このため、圧縮バネを利用する場合でも、摺動軸が鉛直方向なるように吸気弁を設置することが望まれる。
【0006】
さらに、圧縮バネを利用する特許文献2の技術では、弁機能を発揮するために、軸部材、ガイド部材および圧縮バネ等の多くの部品が必要となるので、コストがかかる上、その構造も複雑になってしまう。構造が複雑になると、故障が生じ易く、点検や清掃なども行い難くなる。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、排水管用吸気弁を提供することである。
【0008】
この発明の他の目的は、設置の際の制約が少なく、簡単な構造で弁機能を発揮できる、排水管用吸気弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、この発明を何ら限定するものではない。
【0010】
第1の発明は、排水管内に負圧が発生したときに、排水管内に外気を導入する排水管用吸気弁であって、排水管との接続口を有し排水管に外付けされる筒状の弁箱、弁箱に形成され外気と連通する吸気口、および一方端部が吸気口に接続されて弁箱内に配置される弾性および柔軟性を有する筒状の膜であって、他端部にその内壁同士が接触するように癖付けされた閉塞部を有する弁部材を備え、通常時には閉塞部の内壁同士の接触により吸気口の連通が閉塞され、排水管内に負圧が発生したときには閉塞部の内壁同士が離れて開口することにより吸気口が連通される、排水管用吸気弁である。
【0011】
第1の発明では、排水管用吸気弁(10)は、筒状(たとえば円筒状)の弁箱(12)および弁部材(14)を備え、排水管(100)内に負圧が発生したときに、排水管内に外気を導入することによってその負圧を解消する。弁箱は、接続口(22)を介して排水管に外付けされる。また、弁箱には、外気と連通する吸気口(20)が形成される。弁部材は、弾性および柔軟性を有する筒状の膜であり、一方端部は開口して吸気口に接続され、他端部にはその内壁同士が接触するように癖付けされた閉塞部(28)が形成される。このような排水管用吸気弁では、通常時は、閉塞部が閉口することにより吸気口の連通が閉塞され、外部への臭気漏れが防止される。そして、排水管内に負圧が発生したときには、弁部材の内部と外部との圧力差によって閉塞部が開口することにより、吸気口が連通され、排水管内に外気が導入される。このような閉塞部による吸気口の開閉動作は、閉塞部の弾性特性によって行われるので、吸気弁の弁機能はその取付方向に影響されない。
【0012】
第1の発明によれば、取付方向に影響されずに弁機能を発揮できるので、排水管に対して様々な方向に取付可能である。したがって、設置の際の制約が少なく、設計施工が容易となる。
【0013】
また、構成部品が少なく、簡単な構造で弁機能を発揮できるので、製造コストを低減でき、点検や清掃なども行い易い。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、弁部材として筒状の膜を用い、その端部に形成した閉塞部の弾性特性によって吸気口の開閉を行うので、取付方向に影響されずに弁機能を発揮できる。したがって、排水管に対して様々な方向に取付可能である、つまり設置の際の制約が少ないので、設計施工が容易となる。
【0015】
また、構成部品が少なく、簡単な構造で弁機能を発揮できるので、製造コストを低減でき、点検や清掃なども行い易い。
【0016】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1を参照して、この発明の一実施例である排水管用吸気弁10(以下、単に「吸気弁10」という。)は、戸建住宅やマンション等の建物内の排水管100に取り付けられて、排水管100内に負圧が発生したときに、排水管100内に外気を導入することにより、排水騒音を低減したり、排水トラップの封水破壊を防止したりする。排水管100は、台所、トイレ、風呂、洗濯機および洗面台などの住設器具102からの排水(雑排水や汚水)を流して排水枡104や下水管などまで導く、排水トラップ、器具排水管106、排水横枝管108および排水立て管110などを含み、これら排水管100の適宜な位置に、適宜な個数の吸気弁10が取り付けられる。
【0018】
図2および図3に示すように、吸気弁10は、弁箱12および弁部材14を備える。弁箱12は、直管部16と屈曲部18とを含み、L字型の細長円筒状に形成される。また、弁箱12の両端は開口しており、弁箱12の一方端(直管部16側)の開口部は、外気を導入するための吸気口20であり、弁箱12の他端(屈曲部18側)の開口部は、排水管100と接続され、排水管100内と連通する接続口22である。
【0019】
弁箱12の材質は、特に限定されないが、たとえば排水管100と同様の材質を利用でき、ポリエチレン、ポリプロピレンおよび塩化ビニル等の合成樹脂を好適に利用することができる。
【0020】
弁箱12の大きさは、取り付ける排水管100の大きさや必要とされる吸気性能(吸気量)などに応じて適宜設定され、たとえば一般戸建住宅の排水管100に設置する吸気弁10では、弁箱12の内径は、たとえば30〜60mmであり、直管部16の長さは、たとえば80〜200mmである。また、弁箱12の内径は、必ずしもその全長に亘って一様である必要はなく、たとえば、直管部16と屈曲部18とで内径が変更されてもよいし、徐々に縮径または拡径していくように形成されてもよいし、中間部が両端部より拡径するように形成されてもよい。
【0021】
なお、図2および図3では、直管部16の端部を差口として屈曲部18の受口に嵌合し、接着接合した弁箱12を例示しているが、直管部16と屈曲部18とは、予め一体的に形成することもできる。また、直管部16と屈曲部18とを別部材として形成し、これらを接合する場合には、水密的および気密的に接合できればよく、接着接合、ねじ接合およびゴム輪接合などの公知の接合方法を用いることができる。
【0022】
弁部材14は、取付部材24によって弁箱12の吸気口20に取り付けられ、吸気口20からの外気の導入を制御する部材である。具体的には、弁部材14は、シリコーンゴムおよびウレタンゴム等の合成ゴム、或いは天然ゴム等の弾性材によって形成される、弾性および柔軟性を有する細長筒状の膜(メンブレン)である。弁部材14は、弁箱12の直管部16内において直管部16と同軸方向に延び、その一方端部には、円筒状に開口して吸気口20に接続される開口部26が形成され、その他端部には、その内壁同士が面接触して閉口する平板状の閉塞部28が形成される。
【0023】
弁部材14の閉塞部28は、成形時(たとえば加硫中)において、側面方向から荷重を加えることにより筒状の膜を平板状に折り、その内壁同士が当接するように癖付けする(つまり、その形状を記憶させる)ことによって形成される。たとえば、円筒状の膜を形成し、その全体を平板状に折って癖付けし、その後、一方端部のみを円筒状に開くようにすることによって、他端部のみが平板状に癖付けされた弁部材14を形成できる。この閉塞部28は、弁部材14の内部と外部との圧力差によって開口可能であり、その開口に要する力(圧力差)は、癖付けする際に加える荷重によって適宜設定できる。
【0024】
なお、図2および図3において、弁部材16は、閉塞部28が水平方向になるように弁箱12内に配置されている、つまり上下方向に開閉するように配置されているが、これに限定されず、閉塞部28が鉛直方向または斜め方向のいずれの方向になるように弁部材14を配置してもよい。
【0025】
また、弁部材14の大きさは、弁箱12の直管部16に収まる程度の大きさであり、弁箱12と同様に、取り付ける排水管100の大きさや必要とされる吸気性能(吸気量)などに応じて適宜設定される。
【0026】
このような弁部材14は、上述のように、取付部材24によって弁箱12の吸気口20に取り付けられる。取付部材24は、中央に柵状開口を有するドーナツ板状に形成される基端部30、基端部30の周縁に形成される短円筒状の外壁部32、基端部30の開口周縁に形成される短円筒状の内壁部34を含む。取付部材24の材質としては、弁箱12と同様の材質(合成樹脂など)を利用できる。
【0027】
取付部材24によって弁部材14を吸気口20に取り付けるときには、吸気口20の端部に対して、弁部材14の開口部26の端部を折り返すようにして接続し、これらを取付部材24の外壁部32と内壁部34とによって挟み込むことによって固定する。これにより、弁部材14は、吸気口20に対して水密的および気密的に取り付けられる。なお、図示は省略するが、取付部材24と吸気口20とは、ねじ方式やバヨネット方式などの適宜の係合手段を利用して着脱可能に係合され、抜け止めされている。
【0028】
ただし、弁部材14を吸気口20に対して水密的および気密的に固定できれば、弁部材14の取付方法または取付部材24の形状は、特に限定されない。たとえば、必ずしも弁部材14の端部を折り返すようにして吸気口20に接続する必要はなく、取付部材24の内壁部34に弁部材14の端部を外嵌し、その後、取付部材24の内壁部34の外側面と吸気口20の内側面とで挟み込むようにして、弁部材14を吸気口20に固定してもよい。この場合には、たとえば、鋸歯状などに形成される抜け止め用の突条を、取付部材24の内壁部34の外側面に形成しておけば、弁部材14をより確実に固定できる。
【0029】
図1および図4−図8を参照して、このような吸気弁10は、シンク下112、天井裏114、床下116、および内壁と外壁との間の空間118などにおいて、排水管100に外付けされる。詳細は後述するように、図4−図6には、排水横枝管108のような排水管100の横管部の側面に吸気弁10を取り付けた状態を、図7には、器具排水管106や排水立て管110などの排水管100の縦管部の側面に吸気弁10を取り付けた状態を、図8には、排水立て管110や通気管などの排水管100の縦管部の上端110aに吸気弁10を取り付けた状態をそれぞれ例示している。
【0030】
排水管100への吸気弁10の取り付け方法は、特に限定されないが、たとえば、排水管にチーズ(90度Yなど)やサドル継手などの分岐継手120を接続し、その分岐継手120の分岐口122と吸気弁10の接続口22とを、接着接合、ねじ接合およびゴム輪接合などの公知の接合方法などによって接続するとよい。たとえば、ねじ接合などを用いて排水管100(分岐継手120)の分岐口122と吸気弁10の接続口22とを着脱自在に接続すれば、吸気弁10を排水管100から容易に取り外すことができるので、吸気弁10の点検清掃や故障による交換などの作業を容易に行うことができる。この作用効果は、弁箱12の直管部16と屈曲部18とを着脱自在に接合した場合も同様であり、これらを着脱自在に接合した場合には、排水管100の分岐口122と吸気弁10の接続口22とを接着接合などにより接合しても、維持管理の作業負担を大きく低減できることに変わりはない。
【0031】
このように排水管100に設置された吸気弁10は、通常時には、弁部材14の閉塞部28が閉口することによって、吸気口20の連通が閉塞され、排水管100からの臭気漏れを防止する。また、排水管100内を流れる排水が、万一弁箱12内に流入したとしても、弁部材14が逆止弁機能を発揮して、外部への排水の流出を防止する。
【0032】
一方、住設器具102から多量の排水が排出される等して、排水管100内に負圧が発生したときには、弁箱12内も負圧状態となり、開口部26が外気と連通することにより大気圧に保たれる弁部材14の内部との間に圧力差が生じる。つまり、弁部材14の内部より外部の方が気圧が低くなるので、この圧力差によって閉塞部28の内壁同士が離れて開口し、吸気口20が連通する。これにより、弁箱12内および排水管100内に外気が導入されて、排水管100内の負圧が解消されるので、排水トラップの封水破壊が防止され、排水の流れが滑らかになって排水騒音が低減される。
【0033】
また、排水管100内の負圧が解消されて弁箱12内が大気圧に戻ると、弁部材14の閉塞部28は、内壁同士が面接触するように癖付されているため、その弾性特性により確実に閉口状態に戻る。
【0034】
上述のような弁部材14の閉塞部28の開閉動作、つまり吸気弁10の弁機能は、閉塞部28の弾性特性により行われるので、その取り付け方向に影響されない。つまり、吸気弁10は、縦、横および斜め方向のいずれに設置しても同様に弁機能を発揮するので、排水管100に対して様々な方向に取りつけることができる。
【0035】
たとえば、図4に示すように、天井裏114などに配管される排水管100の横管部の側面天頂部に対して、排水管100と同軸方向に吸気弁10を取り付けることもできるし、図5に示すように、排水管100の軸方向に対して角度をつけて(たとえば直角方向に)吸気弁10を取り付けることもできる。
【0036】
また、排水管100の横管部の側面天頂部だけでなく、図6に示すように、横管部側面の天頂部以外にも吸気弁10を取り付けることもできる。ただし、この場合には、吸気弁10の設置方向が天頂方向から水平方向に近づくにつれて、排水が弁箱12内に流入し易くなり、水平方向より下方向に設置すると、弁箱12内に排水が溜まってしまうので、吸気弁10は、横管部側面の斜め上方向から天頂方向に設置することが望ましい。
【0037】
さらに、吸気弁10は、排水管100の横管部だけでなく縦管部にも好適に設置できる。たとえば、図7に示すように、器具排水管106や排水立て管110のような、排水管100の縦管部の側面に吸気弁10を取り付けることもできるし、図8に示すように、外壁と内壁との間の空間118に配管される排水立て管110のような、排水管100の縦管部の上端110aに吸気弁10を取り付けることもできる。ただし、排水管100の縦管部の側面に吸気弁10を設置する場合には、吸気口20が水平方向より下向きになるように設置してしまうと、万一弁箱12内に排水が流入したときに、弁箱12内に排水が溜まってしまう恐れがあるので、吸気口20が水平方向より上向きになるように吸気弁10を設置することが望ましい。
【0038】
このように、吸気弁10は、排水管100の縦管部にも横管部にも設置できる上、設置する空間の態様に合わせて取付方向を決めることができるので、配管設計を行い易い。また、弁体を摺動させるタイプの弁部材と異なり、予め決められた方向に厳密に設置する必要がないので、設置作業(施工)が容易である。つまり、吸気弁10は、設置の際の制約が少ない。
【0039】
また、弁部材14が細長筒状に形成されることから、吸気弁10全体としても厚みを小さく形成できるので、吸気弁10は、天井裏114や床下116などの狭い空間にも好適に設置できる。特に、図6に示すように、吸気弁10は、排水管100の横管部側面の斜め上方向に設置でき、設置高さを抑えることができるので、高さ方向に制限のある天井裏114などの空間においても好適に設置できる。
【0040】
さらに、天井裏114の排水横枝管108に吸気弁10を設置するような場合には、図6に示すように、天井に設けた点検口124に向けて吸気弁10を傾けて設置しておけば、点検口124から吸気弁10に手が届き易くなり、維持点検作業を行い易い。
【0041】
以上のように、この実施例によれば、弁部材14として筒状の膜を用い、その端部に形成した閉塞部28の弾性特性によって吸気口20の開閉を行うので、取付方向に影響されずに弁機能を発揮できる。したがって、吸気弁10は、排水管100に対して様々な方向に取付可能であり、設置の際の制約が少ないので、設計施工が容易である。
【0042】
また、吸気弁10は、基本的には弁箱12および弁部材14のみで構成され、構成部品が少ないので、製造コストを低減できる。さらに、吸気弁10は、簡単な構造を有するので、点検や清掃なども行い易い。たとえば、弁部材14が万一汚れた場合でも、吸気口20から通水すれば弁部材14を洗浄可能であるので、吸気弁10を分解することなく弁部材14を洗浄できる。
【0043】
また、従来の吸気弁では、上述の特許文献1および2にも開示されているように、住設器具よりも上方に延びる通気管を排水管に別途配設し、その通気管の上端に吸気弁を設置するようにしている。これは、排水が吸気弁に流入して、外部に飛び出すことを防止するためであるが、この実施例の吸気弁10は、排水の逆止機能を有し、排水の飛び出しを防止できるので、排水管100に直接取り付けることができる。したがって、図1に仮想線で示すような通気管126を排水管100に別途配設する必要がないので、その配設作業を省略でき上、外壁と内壁との間の空間118を上階部分に設ける必要もなくなるので、上階部分の居住スペースを広くとることができる。
【0044】
なお、上述の実施例では、弁部材14を単一の材料で形成しているが、弁部材14は、必ずしも単一の材料で形成する必要はない。たとえば、異なる種類の弾性材を重ねた複層状に形成してもよいし、形状記憶合金などの金属材料によって形成した板状体を外側面に貼り付ける等して弁部材14を補強してもよい。
【0045】
また、上述の実施例では、円筒状の膜を用いて弁部材14を形成しているが、これに限定されず、たとえば楕円筒状(扁平筒状)の膜を用いて弁部材14を形成してもよい。楕円筒状の膜を用い、その短径方向に開閉する閉塞部28を形成すれば、閉塞部28の癖付けが行い易く、より適切に弁機能を発揮できる。さらに、全長に亘って径が一様の筒状膜を用いる必要はなく、たとえば、一方端部の径が大きく他端部の径が小さい筒状膜を用いて弁部材14を形成することもできる。この場合には、径が小さい他端部において閉塞部28を形成すれば、閉塞部28の癖付けが行い易く、より適切に弁機能を発揮できる。
【0046】
また、一体成形した筒状膜を用いる必要はなく、たとえば、2枚の平板状の膜をつなぎ合わせて形成した筒状膜を用いて弁部材14を形成することもできる。この場合には、たとえば、2枚の長方形状の膜を用意し、その2枚の膜を重ね合わせ、その長辺側の両側部同士を接着接合或いは融着接合などによってつなぎ合わせるとよい。その後、一方端部のみを円筒状に開けば、他端部のみが平板状に癖付けされた弁部材14を形成できる。
【0047】
また、上述の実施例では、弁箱12をL字型の円筒状に形成したが、弁箱12の形状は、これに限定されない。たとえば、弁箱12は、楕円筒状または角筒状でもよい。また、必ずしも屈曲部18を形成してL字型にする必要はなく、図9に示す実施例の吸気弁10のように、弁箱12を直管部16のみの直管状に形成してもよい。この場合には、直管部16の他端の開口部が、排水管100と接続される接続口22となる。図9に示す吸気弁10においても、取付方向に影響されずに弁機能を発揮できるので、排水管100の適宜な位置に、設置する空間の態様に合わせて取り付けることができ、図2に示す吸気弁10と同様の作用効果を示す。
【0048】
さらに、上述の各実施例では、弁箱12の他端部に排水管100との接続口22を形成したが、図10および図11に示す実施例の吸気弁10ように、弁箱12の側面に接続口22を形成することもできる。以下には、図10および図11に示す吸気弁10の構成について説明するが、上述の記載と同様の部分については、同じ参照番号を用い、その説明を省略或いは簡略化する。
【0049】
図10および図11に示す吸気弁10は、直管状の細長円筒状に形成される弁箱12を備える。弁箱12の一方端は開口しており、そこに外気を導入するための吸気口20が形成される。また、弁箱12の他端は、蓋部材40によって封止される。蓋部材40は、ねじ接合などによって着脱可能に弁箱12に接続される。ただし、蓋部材40は、必ずしも着脱可能に弁箱12に接続される必要はなく、たとえば弁箱12と予め一体的に形成されていてもよい。また、弁箱12の側面には、短円筒状の接続口22が形成され、この接続口22に排水管100が接続される。なお、図10および図11では、弁箱12の軸方向中央部に形成した接続口22を例示しているが、接続口22は、弁箱12の端部側面に形成することもできる。
【0050】
また、弁箱12の吸気口20には、取付部材24によって弁部材14が接続される。弁部材14の配置方向は、特に限定されないが、閉塞部28が接続口22の径方向と平行になるように配置すると、排水管100内に負圧が発生したとき等に、閉塞部28が接続口22側に引っ張られて垂れてしまい、接続口22を閉塞する恐れがある。このため、図10および図11に示す吸気弁10では、図示したように、閉塞部28が縦方向になるように弁部材14を配置することが望ましい。
【0051】
なお、接続口22方向への閉塞部22(弁部材14)の垂れを防止するために、上述のように、板状体を外側面に貼り付ける等して弁部材14自体を補強することもできる。また、弁箱12の内壁から突出する支持板を形成し、この支持板によって弁部材14を支えるようにしてもよい。
【0052】
図10および図11に示す吸気弁10においても、図2に示す吸気弁10と同様の作用効果を示す。つまり、設置の際の制約が少なくなるので、設計施工が容易になる。また、構成部品が少なく、簡単な構造で弁機能を発揮できるので、製造コストを低減でき、点検や清掃なども行い易い。さらに、図10および図11に示す吸気弁10では、接続口22を弁箱12の側面に形成することによって、弁箱12の長さを短くすることができるので、より小型化することができる。
【0053】
ただし、図10および図11に示す吸気弁10は、排水管100の縦管部の側面に設置すると、万一弁箱12内に排水が流入した場合には、弁箱12内に排水が溜まってしまう恐れがあるので、排水管100の横管部の側面、或いは縦管部の上端に設置することが望ましい。
【0054】
また、上述の各実施例では、排水管100に設けた分岐継手120に吸気弁10の接続口22を接続するようにしたが、接続口22に分岐継手部を予め設けておくこともできる。たとえば、分岐継手部として、接続口22の端部に、排水管100の外側面に沿うサドル部を形成しておくことができる。この場合には、排水管100の側面に分岐口を開け、吸気弁10のサドル部と排水管100の外側面とを接着接合等すれば、排水管100に吸気弁10を設置することができるので、既設の排水管100にも吸気弁10を取り付け易い。
【0055】
また、たとえば、接続口22の端部にチーズ状の分岐継手部を形成してもよく、図4などに示すチーズ120などの分岐継手を含めて吸気弁10とすることもできる。換言すると、吸気機能付きの管継手として吸気弁10を用いることもできる。これにより、従来の分岐継手を排水管100に接続する作業と同様の作業を行うだけで、吸気弁10を排水管100に取り付けることができる。
【0056】
また、上述の各実施例では、弁部材14のみによって弁機能(吸気弁機能および逆止弁機能を含む)を発揮するようにしたが、吸気弁10は、弁部材14に加えて、他の弁部材をさらに備えることもできる、つまり2重弁構造を採用することもできる。たとえば、この発明の他の実施例である図12に示す吸気弁10のように、接続口22に逆止部材(第2弁部材)50を設けることもできる。以下には、図12に示す吸気弁10の構成について説明するが、接続口22に逆止部材50を備えること以外は、上述の各実施例の吸気弁10と同様の構成を採用できるので、上述の記載と同様の部分については、同じ参照番号を用い、その説明を省略或いは簡略化する。
【0057】
図12に示す吸気弁10は、L字型の細長円筒状に形成される弁箱12を備える。弁箱12の両端は開口しており、弁箱12の一方端に形成される吸気口20には、取付部材24によって弁部材14が設けられる。また、弁箱12の他端には、排水管100と接続される接続口22が形成され、接続口22には、逆止部材50が設けられる。
【0058】
逆止部材50は、浮玉52、浮玉保持部材54および弁座部材56を備える。浮玉52は、弁体として機能する部材であり、合成樹脂などによって中空球状に形成されて、浮玉保持部材54内に保持される。
【0059】
浮玉保持部材54は、図13に示すように、合成樹脂などによって形成され、中央に開口58aを有するドーナツ板状に形成される天板部58を備える。この天板部58の外側縁には、下方に延びる複数(たとえば3つ)の矩形板状の側壁部60が形成される。側壁部60の下端は、内側に向かって屈曲しており、そこに浮玉52が下方に落ちないようにするための爪部62が形成されている。また、天板部58の外径は、接続口22の内径とほぼ同じ大きさを有し、側壁部60の外面は、接続口22の内面に沿う。
【0060】
さらに、浮玉保持部材54の天板部58の上面には、弁座部材56が設けられる。弁座部材56は、合成ゴム等によって、中央部に開口56aを有するドーナツ板状に形成される。弁座部材56の外径は、接続口22の内径とほぼ同じ大きさを有する。また、弁座部材56の内径、つまり開口56aの大きさは、浮玉52の外径よりも小さく形成される。
【0061】
このような逆止部材50を接続口22に取り付けるときには、浮玉52を内部に保持した浮玉保持部材54を接続口22内に挿入し、接続口22内に予め形成しておいた突起部42の下面と天板部58の上面とで弁座部材56を挟み込むようにした状態で、接続口22の内面と側壁部60の外面とを接着接合などによって接合するとよい。この際、浮玉52は、浮玉保持部材54を接続口22内に挿入する前に、浮玉保持部材54の天板部58の開口58a、または側壁部60と側壁部60との間を通して、浮玉保持部材54内に配置しておくとよい。
【0062】
このように接続口22に取り付けた逆止部材50では、浮玉52は、その下限位置においては爪部62によって抜け止めされ、浮玉保持部材54内の水位に応じて浮玉保持部材54内を上下動する。そして、排水管100内の排水が接続口22内に流入して、浮玉保持部材54内の水位が上昇したときには、浮玉54は、図12において破線で示すように、その上限位置において弁座部材56の下面と当接して、弁座部材56の開口56aを閉塞する。これにより、排水の弁箱12内への侵入は、開口56aの位置で止められ、逆止弁機能が発揮される。一方、排水管100内で負圧が発生したときには、弁部材14内を介して弁箱12内に流入した外気は、弁座部材56の開口56a、浮玉52の周囲および爪部62の間を通って排水管100内に導入される。これにより、排水管100内の負圧が解消される。
【0063】
図12に示す吸気弁10によれば、2重弁構造を採用することによって、より確実に排水の外部への飛び出しを防止できる。また、逆止部材50を設けることによって、弁部材14周囲への排水の流入が防止されるので、弁部材14の排水汚れを防止でき、排水汚れに起因する弁部材14の不具合の発生を防止できる。
【0064】
なお、図12では、接続口22つまり弁箱12の他端部に逆止部材50を配置したが、逆止部材50は、弁部材14よりも排水管100側であれば、弁箱12内のいずれの位置に配置してもよい。また、逆止部材50の構成および形状は上述のものに限定されず、適宜の構成および形状を有する逆止部材50を、弁部材14と組み合わせて吸気弁10に備えるようにしてもよい。たとえば、図12に示す逆止部材50では、浮玉保持部材54の上部に弁座部材56を別途設けるようにしているが、弁座部材56を設ける代わりに、浮玉保持部材54の天板部58を弁座として機能させてもよい。つまり、天板部58の下面と浮玉52とを当接させることにより、天板部58の開口58aを閉塞させて逆止機能を発揮させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】この発明の排水管用吸気弁を設置する建物の排水管の一例を模式的に示す図解図である。
【図2】この発明の一実施例である排水管用吸気弁の外観を示す図解図である。
【図3】図2の排水管用吸気弁の内部構造を示す断面斜視図である。
【図4】図2の排水管用吸気弁を排水管の横管部側面に設置した様子の一例を示す図解図である。
【図5】図2の排水管用吸気弁を排水管の横管部側面に設置した様子の他の一例を示す図解図である。
【図6】図2の排水管用吸気弁を排水管の横管部側面に設置した様子のさらに他の一例を示す図解図である。
【図7】図2の排水管用吸気弁を排水管の縦管部側面に設置した様子の一例を示す図解図である。
【図8】図2の排水管用吸気弁を排水管の縦管部上端に設置した様子の一例を示す図解図である。
【図9】この発明の他の実施例である排水管用吸気弁の外観を示す図解図である。
【図10】この発明のさらに他の実施例である排水管用吸気弁の外観を示す図解図である。
【図11】図11の排水管用吸気弁の内部構造を示す断面斜視図である。
【図12】この発明のさらに他の実施例である排水管用吸気弁の外観および一部断面を示す概略断面図である。
【図13】図12の排水管用吸気弁が備える逆止部材の浮玉保持部材を示す、(A)は斜視図であり、(B)は平面図である。
【符号の説明】
【0066】
10 …排水管用吸気弁
12 …弁箱
14 …弁部材
20 …吸気口
22 …接続口
24 …取付部材
28 …弁部材の閉塞部
50 …逆止部材
52 …浮玉
54 …浮玉保持部材
56 …弁座部材
100 …排水管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水管内に負圧が発生したときに、前記排水管内に外気を導入する排水管用吸気弁であって、
前記排水管との接続口を有し、前記排水管に外付けされる筒状の弁箱、
前記弁箱に形成され、外気と連通する吸気口、および
一方端部が前記吸気口に接続されて前記弁箱内に配置される、弾性および柔軟性を有する筒状の膜であって、他端部にその内壁同士が接触するように癖付けされた閉塞部を有する弁部材を備え、
通常時には、前記閉塞部の内壁同士の接触により前記吸気口の連通が閉塞され、前記排水管内に負圧が発生したときには、前記閉塞部の内壁同士が離れて開口することにより前記吸気口が連通される、排水管用吸気弁。
【請求項1】
排水管内に負圧が発生したときに、前記排水管内に外気を導入する排水管用吸気弁であって、
前記排水管との接続口を有し、前記排水管に外付けされる筒状の弁箱、
前記弁箱に形成され、外気と連通する吸気口、および
一方端部が前記吸気口に接続されて前記弁箱内に配置される、弾性および柔軟性を有する筒状の膜であって、他端部にその内壁同士が接触するように癖付けされた閉塞部を有する弁部材を備え、
通常時には、前記閉塞部の内壁同士の接触により前記吸気口の連通が閉塞され、前記排水管内に負圧が発生したときには、前記閉塞部の内壁同士が離れて開口することにより前記吸気口が連通される、排水管用吸気弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−116744(P2010−116744A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291660(P2008−291660)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【Fターム(参考)】
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