説明

排熱回収発電装置

【課題】小型化および低コスト化した装置構成で温度の異なる熱媒体から熱を回収できる排熱回収発電装置を提供する。
【解決手段】作動媒体の有機媒体経路23に並列に設置され、それぞれ温度の異なる熱媒体によって作動媒体を蒸発させる複数の第一排熱回収器5、第二排熱回収器11および第三排熱回収器15と、単一のラジアルタービンホイールで構成され、それぞれ軸線方向で異なる位置から導入される第一排熱回収器5、第二排熱回収器11および第三排熱回収器15からの各作動媒体の旋回エネルギーを回転動力に変換するパワータービン17と、パワータービン17の回転動力によって発電する発電機19と、パワータービン17を通過した作動媒体を凝縮させる凝縮器21と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排熱回収発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排熱回収発電装置は、各種産業用プラント、船舶や車両用の動力源、等から排出される排ガス、温排水等あるいは地熱・OTEC等から回収した熱エネルギーを用いて発電するものである(特許文献1、特許文献2参照)。
排熱回収発電装置では、一般に、熱源の熱によって加熱蒸発させられた作動媒体をタービンに導入し、作動媒体の旋回エネルギーを回転動力に変換し、発電している。タービンとしては、ラジアルタービンが広く用いられている。
【0003】
ラジアルタービンでは、作動媒体の圧力に対し最適な条件に設計されるので、圧力の異なる複数の作動媒体が提供される場合、たとえば、特許文献1に示されるように、複数のタービンおよび発電機、すなわち、それぞれの1つの圧力の作動媒体に対して1つのタービンおよび発電機が用いられている。
あるいは、発電機は1台で、複数のタービンが軸接続されている構造も用いられる。これは、同一圧力の作動媒体を用いているものであるが、たとえば、特許文献2に示される構造とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平01−285607号公報
【特許文献2】特開平08−218816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に示されるように複数のタービンを用いるものは、装置が大型化し、それに伴い製造コストが増加することになる。特に、設置スペースが限定される船舶では使用が制約される。
また、特許文献2に示されるように同一軸に複数のタービンホイールを設ける場合、タービン部品点数が多く、構造が複雑となるし、製造コストが増加することになる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、小型化および低コスト化した装置構成で温度の異なる熱媒体から熱を回収できる排熱回収発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の一態様は、作動媒体の循環経路に並列に設置され、それぞれ温度の異なる熱媒体によって前記作動媒体を蒸発させる複数の蒸発器と、単一のタービンホイールで構成され、それぞれ軸線方向で異なる位置から導入される前記各蒸発器からの前記各作動媒体の旋回エネルギーを回転動力に変換するラジアルタービンと、該ラジアルタービンの回転動力によって発電する発電機と、前記ラジアルタービンを通過した前記作動媒体を凝縮させる凝縮器と、を備えている排熱回収発電装置である。
【0008】
本態様では、複数の蒸発器が作動媒体の循環経路に並列に設置され、各蒸発器では作動媒体が温度の異なる熱媒体によって蒸発させられているので、各蒸発器では、温度および圧力の異なるガス状の作動媒体が生成される。これらの圧力の異なる作動媒体は、ラジアルタービンのタービンホイールにおけるそれぞれ軸線方向で異なる位置、すなわち、供給される作動媒体の圧力がタービンホイールを流れる出口に向かい順次低下する圧力に一致するような位置に導入される。これら軸線方向で異なる位置から導入された作動媒体は、順次混合されるとともに順次圧力を低減されつつタービンホイールから流出し、タービンホイールに回転動力を発生させる。発電機は、タービンホイール、言い換えるとラジアルタービンの回転動力によって発電を行う。ラジアルタービンを通過した作動媒体は、凝縮器によって凝縮され、循環経路を通って各蒸発器に送られる。
このように、温度の異なる熱媒体によって圧力の異なる作動媒体を発生させ、それらの作動媒体を単一のタービンホイールによって回転動力として取り出すことができるので、装置全体の小型化をはかることができ、製造コストを低減することができるとともに温度の異なる熱媒体から有効に熱を回収できる。
【0009】
本態様では、前記タービンホイールは、外周端に主入口を有し、半径方向から軸方向に湾曲しつつ順次翼高さが高くなる主通路を備えるとともに該主通路のシュラウド面に少なくとも1個のシュラウド側入口を備えているようにしてもよい。
【0010】
主入口には、最も圧力の高い作動媒体が供給される。主入口から導入された作動媒体は、半径方向から軸方向に湾曲しつつ順次翼高さが高くなる主通路を通って順次圧力を低減されつつタービンホイールから吐出される。シュラウド面に設けられたシュラウド側入口に供給される作動流体は、主入口から導入され主通路を通る作動媒体と混合される。
シュラウド側入口に供給される作動流体は、主入口から導入され、主通路を通って順次圧力が低減される作動流体の圧力と略一致する大きさの圧力、すなわち、主入口へ供給される作動媒体よりも低圧力とされる。軸線方向で主入口から離隔するほど低圧力とされる。蒸発器で生成される作動媒体の圧力に応じて、シュラウド側入口の設置位置が設定される。
【0011】
本態様では、前記タービンホイールは、外周端に主入口を有し、半径方向から軸方向に湾曲しつつ順次翼高さが高くなる主通路を備えるとともに該主通路のハブ面から分岐され前記主通路の背面側に向かい延在する従通路の外周端に前記主入口と異なる半径方向位置とされたハブ側入口を備えているようにしてもよい。
【0012】
主入口から導入された作動媒体は、半径方向から軸方向に湾曲しつつ順次翼高さが高くなる主通路を通って順次圧力を低減されつつタービンホイールから吐出される。主通路のハブ面から分岐され主通路の背面側に向かい延在する従通路の外周端に主入口と異なる半径方向位置とされたハブ側入口に供給される作動流体は、従通路を通って主入口から導入され主通路を通る作動媒体と混合される。ハブ側入口から導入される作動媒体は、混合部分における圧力が、主入口から導入され、主通路を通って順次圧力が低減される作動流体の圧力と略一致する大きさの圧力とされる。ハブ側入口と主入口との半径方向位置に応じ、外周側に位置する方に高圧力の作動流体が供給される。
なお、シュラウド側入口と組み合わせることによって、多数の圧力の異なる作動媒体を取り扱えることができる。
【0013】
本態様では、前記熱媒体として内燃機関本体を冷却するエンジン冷却水と、該内燃機関の過給機から吐出される圧縮空気を冷却する空気冷却水と、が用いられるようにしてもよい。
【0014】
このようにすると、排ガスよりも温度レベルが低く有効利用されていなかったエンジン冷却水(たとえば80〜90℃)および過給機から吐出される圧縮空気を冷却する空気冷却水(たとえば130〜140℃)から熱量を回収することができる。
【0015】
本態様では、前記熱媒体として内燃機関本体を冷却するエンジン冷却水と、該内燃機関の過給機から吐出される圧縮空気を冷却する空気冷却水を該内燃機関の排ガスによって加熱した蒸気と、が用いられるようにしてもよい。
【0016】
このようにすると、エンジン冷却水および空気冷却水に加えて内燃機関の排ガスからも熱回収できるので、有効な排熱回収を行うことができる。
また、過給機から吐出される圧縮空気を冷却する空気冷却水を内燃機関の排ガスによって加熱した蒸気は、比較的高温であるので、蒸発器で高圧の作動媒体を得ることができ、ラジアルタービンの出力を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、温度の異なる熱媒体によって圧力の異なる作動媒体を発生させ、それらの作動媒体を単一のタービンホイールによって回転動力として取り出すことができるので、装置全体の小型化をはかることができ、製造コストを低減することができるとともに温度の異なる熱媒体から有効に熱を回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態にかかる排熱回収発電装置を概略的に示すブロック図である。
【図2】本発明の第一実施形態にかかるパワータービンを示す断面図である。
【図3】本発明の第一実施形態にかかるパワータービンの別の実施態様を示す断面図である。
【図4】本発明の第一実施形態にかかるパワータービンのさらに別の実施態様を示す断面図である。
【図5】本発明の第二実施形態にかかる排熱回収発電装置を概略的に示すブロック図である。
【図6】本発明の第三実施形態にかかる排熱回収発電装置を概略的に示すブロック図である。
【図7】本発明の第三実施形態にかかるパワータービンを示す断面図である。
【図8】本発明の第三実施形態にかかるパワータービンの別の実施態様を示す断面図である。
【図9】本発明の第三実施形態にかかるパワータービンの別の実施態様を示す断面図である。
【図10】本発明の第三実施形態にかかるパワータービンの別の実施態様を示す断面図である。
【図11】本発明の第三実施形態にかかるパワータービンの別の実施態様を示す断面図である。
【図12】本発明の第三実施形態にかかるパワータービンの別の実施態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
[第一実施形態]
以下、本発明の第一実施形態にかかる排熱回収発電装置1について図1および図2に基づいて説明する。
本実施形態にかかる排熱回収発電装置1は、船舶の推進用主機としてのディーゼルエンジン(内燃機関)3の排熱回収用として設置された構成を例としている。
図1は、本実施形態にかかる排熱回収発電装置1を概略的に示すブロック図である。図2は、排熱回収発電装置1のパワータービン17を示す断面図である。
【0021】
排熱回収発電装置1には、ディーゼルエンジン3のシリンダブロック等を冷却するシリンダジャケット内を流れるジャケット冷却水(熱媒体、エンジン冷却水)から熱回収し、する第一排熱回収器(蒸発器)5と、ディーゼルエンジン3の過給機7から吐出される圧縮空気を冷却する第一空気冷却器9を通る空気冷却水(熱媒体)から熱回収する第二排熱回収器(蒸発器)11と、第一空気冷却器9を通る空気冷却水が第二排ガスエコノマイザ13で加熱された蒸気(熱媒体)から熱回収する第三排熱回収器(蒸発器)15と、第一排熱回収器5、第二排熱回収器11および第三排熱回収器15で熱回収され、蒸発された有機媒体(作動媒体)のエネルギーを回転動力に変換するパワータービン(ラジアルタービン)17と、パワータービン17の回転動力によって電力を生成する発電機19と、パワータービン17からの有機媒体を凝縮させる凝縮器21と、これらの機器を結んで有機媒体が循環する有機媒体経路(循環経路)23と、有機媒体経路23を通って有機媒体を循環させる有機媒体用ポンプ24と、が備えられている。
【0022】
排熱回収発電装置1は、有機ランキンサイクル(Organic Rankin Cycle)を構成している。
有機媒体経路23は、有機媒体用ポンプ24とパワータービン17との間で、第一排熱回収器5を通る経路、第二排熱回収器11を通る経路および第三排熱回収器15を通る経路が並列となるようにされている。言い換えると、第三排熱回収器15を通る経路から第一排熱回収器5を通る経路および第二排熱回収器11を通る経路が分岐され、パワータービン17で合流するようにされている。
有機媒体経路23を流れる有機媒体としては、たとえば、イソペンタン、ブタン、プロパン等の低分子炭化水素や冷媒として用いられるR134a、R245fa等を用いることができる。有機媒体は、回収する複数の熱媒体の温度分布に応じて最適なものが選定される。
【0023】
シリンダジャケット内を流れるジャケット冷却水は、ジャケット冷却水ポンプ25によって、ジャケット冷却水循環流路27内を循環する。このジャケット冷却水循環流路27は、シリンダジャケット、温度調整用三方弁29、ジャケット冷却水ポンプ25という順番でジャケット冷却水が流れるように形成されている。ジャケットから出たジャケット冷却水は、たとえば80〜90℃の水温である。
ジャケット冷却水循環流路27には、第一排熱回収器5を経由するバイパス流路31が設けられている。このバイパス流路31を流れる流量は、バイパス流量調節弁33によって調整する。これにより、第一排熱回収器5を流れるジャケット冷却水の流量を調整できるようになっている。
【0024】
温度調整用三方弁29は、シリンダジャケットから流出するジャケット冷却水が所望の出口温度となるように動作する。具体的には、ジャケット冷却水がシリンダジャケットから流出する出口温度が設定値よりも高い場合には、図示しないセントラル冷却器から流入する約36℃程度の清水をジャケット冷却水循環流路27へ多く流すように動作する。
第二空気冷却器35は、過給機7から吐出された圧縮空気の流れに対して、第一空気冷却器9の下流側に設置されている。したがって、第一空気冷却器9の方が、第二空気冷却器35よりも温度レベルが高くなるように設置されている。
第二空気冷却器35にて圧縮空気を冷却した清水は、再びセントラル冷却器へと返送される。
【0025】
過給機7で圧縮された圧縮空気は、たとえば、150〜160℃であり、第一空気冷却器9および第二空気冷却器35を通ってディーゼルエンジン3に供給され、図示しない燃料供給系から供給された燃料と混合されて燃焼される。燃焼に伴う排ガスは、過給機7の作動に用いられた後、排ガス経路37を通って煙突39から外部に排出される。過給機7を出た排ガスの温度は、たとえば、220℃程度である。
排ガス経路37には、第二排ガスエコノマイザ13と、第二排ガスエコノマイザ13の上流側に配置された第一排ガスエコノマイザ41と、が設置されている。排ガス経路37は、排ガスが、第一排ガスエコノマイザ41および第二排ガスエコノマイザ13を通過する、両者のいずれか一方を通過する、あるいは、両者を通過しない、のいずれかを選択できるように構成されている。
【0026】
第一排ガスエコノマイザ41には、蒸気ドラム43との間に循環経路45が形成されている。蒸気ドラム43内の水をボイラドラム水循環ポンプ47によって第一排ガスエコノマイザ41へ送り、排ガスの熱回収によって蒸気を発生させている。発生した蒸気は、船舶の補助装置へ送られた後、たとえば、70℃程度の水として大気圧ドレンタンク49へ戻される。
大気圧ドレンタンク49の水は、給水ポンプ51によって蒸気ドラム43に給水される。このとき、蒸気ドラムレベル制御弁53によって蒸気ドラム43内の水位が調整される。
【0027】
また、大気圧ドレンタンク49の水は、給水ポンプ55によって給水経路57を通って、第一空気冷却器9および第二排熱回収器11を通った後、大気圧ドレンタンク49に戻るように循環される。
給水経路57には、第一空気冷却器9と第二排熱回収器11との間に位置する分岐点Aで分岐された分岐経路59が接続されている。分岐経路59は、第二排ガスエコノマイザ13および第三排熱回収器15を通って大気圧ドレンタンク49に戻るように構成されている。第一空気冷却器9を通った空気冷却水は、分岐経路59を通って第二排ガスエコノマイザ13に供給され、排ガスによって高温・高圧の蒸気とされ、第三排熱回収器15に供給される。
【0028】
パワータービン17には、ケーシング61と、ケーシング61に回転可能に支持された回転軸63と、回転軸13の外周に取り付けられたラジアルタービンホイール(タービンホイール)65と、が備えられている。
ラジアルタービンホイール65の外周端には、回転軸63にほぼ平行な主入口67が形成されている。
主入口67の外周側には、スクロール状の空間である主流入路69が形成されている。主流入路69には、第三排熱回収器15から供給される有機媒体が導入される主導入路71が接続されている。主流入路69と主入口67との間は、周方向に間隔を空けて配置された複数の翼から構成されるノズル73が設けられている接続路で接続されている。
【0029】
ラジアルタービンホイール65には、主入口67からタービンホイール出口75に向かって流れが流出するように半径方向から軸方向に向かい湾曲するとともに翼高さが順次高くなる主通路77が形成されている。
主通路77のシュラウド面には、主入口67に対し半径方向および軸方向に離隔した位置にシュラウド側従入口(シュラウド側入口)79が形成されている。
シュラウド側従入口79の外周側には、スクロール状の空間であるシュラウド側従流入路81が形成されている。シュラウド側従流入路81には、第二排熱回収器11から供給される有機媒体が導入されるシュラウド側従導入路83が接続されている。シュラウド側従流入路81とシュラウド側従入口79との間は、周方向に間隔を空けて配置された複数の翼から構成されるノズル85が設けられている接続路で接続されている。
【0030】
主通路77のハブ面には、背面側に向かい延在する従通路87が備えられている。主通路77と従通路87とは、点線で示される主通路77のハブ面の仮想線である合流部で流れが合流するように構成されている。言い換えれば、従通路87は、主通路77から分岐され、主通路77の背面側に向かい延在するように形成されている。
従通路87の背面側の外周端には、主入口27と異なる半径位置に全周に亘るハブ側従入口(ハブ側入口)89が形成されている。
ハブ側従入口89の外周側には、一様な断面形状をした空間であるハブ側従流入路91が形成されている。ハブ側従流入路91には、第一排熱回収器5から供給される有機媒体が導入されるハブ側従導入路93が接続されている。ハブ側従流入路91とハブ側従入口89との間は、周方向に間隔を空けて配置された複数の翼から構成されるノズル95が設けられている接続路で接続されている。
【0031】
主入口67、シュラウド側従入口79およびハブ側従入口89の半径方向位置は、主入口67が最も外周側に位置し、ハブ側従入口89が最も内周側に位置させている。
シュラウド側従入口79の半径方向位置は、シュラウド側従入口79から導入される有機媒体の圧力が、主入口67から導入され、主通路77を通って順次圧力が低減される作動流体の圧力と略一致する大きさとなるように設定される。
シュラウド側従入口79は、スペースに余裕があれば軸線方向に複数設けられるようにしてもよい。
【0032】
ハブ側従入口89の半径方向位置は、ハブ側従入口89から導入される有機媒体の圧力が従通路87を通って順次低減された合流部における有機媒体の圧力が、主入口67から導入され、主通路77を通って順次圧力が低減される作動流体の合流部における圧力と略一致する大きさとなるように設定される。
したがって、ハブ側従入口89の半径方向位置を主入口67の半径方向位置よりも外周側に位置させ、ハブ側従入口89に主入口67に導入する有機媒体よりも高圧の有機媒体を供給するようにしてもよい。
【0033】
次に、上記構成の排熱回収発電装置1の動作について説明する。
有機媒体用ポンプ24を作動させると、凝縮器21で海水によって凝縮された、たとえば、35℃程度の有機媒体は、有機媒体経路23を循環する。このとき、有機媒体の一部は、第一排熱回収器5を通ってパワータービン17のハブ側従導入路93へ、他の一部は、第二排熱回収器11を通ってパワータービン17のシュラウド側従導入路83へ、残りは、第三排熱回収器15を通ってパワータービン17の主導入路71へ供給される。
【0034】
ジャケット冷却水ポンプ25によってシリンダジャケットへと導かれたジャケット冷却水は、シリンダジャケットにてシリンダブロック等を冷却することによって、たとえば、80〜90℃に昇温させられる。このジャケット冷却水はバイパス流路31を経由して第一排熱回収器5を通るので、ジャケット冷却水と有機媒体との間で熱交換が行われ、有機媒体は、ジャケット冷却水によって、たとえば、64℃程度に昇温され、蒸発させられる。言い換えると、ジャケット冷却水の顕熱が有機媒体経路23を通る有機媒体に回収される。
【0035】
ディーゼルエンジン3の過給機7によって圧縮された圧縮空気は、第一空気冷却器9および第二空気冷却器35を通ってディーゼルエンジン3に供給される。このとき、第一空気冷却器9には、給水ポンプ55によって大気圧ドレンタンク49の、たとえば、70℃程度の水が給水経路57を通って通過しているので、たとえば、150〜160℃になる圧縮空気は、この水と熱交換され、たとえば、80℃程度に冷却される。一方、給水経路57を通る水は、圧縮空気によって加熱され、たとえば、140℃程度に昇温される。言い換えると、圧縮空気の顕熱が給水経路57を通る水に回収される。
給水経路57を通る水は、第一空気冷却器9で昇温された後、第二排熱回収器11を通るので、有機媒体経路23を通る有機媒体との間で熱交換が行われ、有機媒体は、たとえば、100℃程度に昇温され、蒸発させられる。したがって、給水経路57を通る水を介して、圧縮空気の顕熱が有機媒体経路23の有機媒体に回収されることになる。
【0036】
第一空気冷却器9で昇温された給水経路57を通る温水の一部は、分岐点Aにおいて分岐され分岐経路59を通って第二排ガスエコノマイザ13を通る。
第二排ガスエコノマイザ13には、第一排ガスエコノマイザ41によって熱回収された、たとえば、210℃程度の排ガスが導入されているので、分岐経路59を通る温水は、排ガスと熱交換され、たとえば、190〜200℃に昇温され、蒸気とされる。言い換えると、排ガスの顕熱が分岐経路59を通過する温水に回収される。
この温水は、分岐経路59を経由して第三排熱回収器15を通るので、有機媒体経路23を通る有機媒体との間で熱交換が行われ、有機媒体は、たとえば、120〜130℃程度に昇温され、蒸発させられる。したがって、分岐経路59を通る温水を介して、圧縮空気および排ガスの顕熱が有機媒体経路23の有機媒体に回収されることになる。
【0037】
このように、有機媒体経路23を通る有機媒体は、第一排熱回収器5、第二排熱回収器11および第三排熱回収器15で独立して蒸発させられる。このとき、有機媒体の圧力は、第三排熱回収器15で生成されたものが最も高く、第二排熱回収器11、第一排熱回収器5の順に低くなる。
第三排熱回収器15で蒸発させられた比較的高圧の有機媒体は、主導入路71を通って主流入路69に流入する。主流入路69に流入した有機媒体は、主流入路69およびノズル73によって流量、流速を調整され、主入口67から主通路77に供給される。主通路77を通る有機媒体は、ラジアルタービンホイール65の出口まで連続的に圧力が低下しながら流れ、ラジアルタービンホイール65および回転軸63に回転動力を発生させる。
【0038】
第二排熱回収器11で蒸発させられた比較的中圧の有機媒体は、シュラウド側従導入路83を通ってシュラウド側従流入路81に流入する。シュラウド側従流入路81に流入した有機媒体は、シュラウド側従流入路81およびノズル85によって流量、流速を調整され、シュラウド側従入口79からラジアルタービンホイール65に供給され、主入口67から供給された有機媒体と混合される。
このとき、このシュラウド側従入口79からラジアルタービンホイール65内に供給される有機媒体の圧力は、主通路77を流れる出口に向かい順次、言い換えれば連続的に低下する有機媒体のシュラウド側従入口79位置における圧力に一致するようにされている。
【0039】
第一排熱回収器5で蒸発させられた比較的低圧の有機媒体は、ハブ側従導入路93を通ってハブ側従流入路91に流入する。ハブ側従流入路91に流入した有機媒体は、ノズル95によって流量、流速を調整され、ハブ側従入口89からラジアルタービンホイール65の従通路87に供給される。この有機媒体は、従通路87を通るにつれて減圧され、合流部で主通路77を流れる有機媒体と合流される。
このとき、ハブ側従入口89に供給される有機媒体の圧力は、合流部での主通路77を流れる有機媒体の圧力と略一致するように設定されている。
【0040】
このように、第一排熱回収器5、第二排熱回収器11および第三排熱回収器15からの圧力の異なる有機媒体を、それぞれラジアルタービンホイール65の主入口67、シュラウド側従入口79およびハブ側従入口89に供給することによって、単一のラジアルタービンホイール65によって回転動力として取り出すことができる。
これにより、本実施形態にかかるパワータービン17は、複数のタービンあるいは複数のラジアルタービンホイールを備えるタービンに比べて部品点数を低減することができ、製造コストを低減することができる。このため、排熱回収装置1の小型化をはかることができ、製造コストを低減することができる。
また、第一排熱回収器5、第二排熱回収器11および第三排熱回収器15で、有機媒体は、ジャケット冷却水、過給機7で圧縮された圧縮空気および燃焼排ガスから熱回収するので、ディーゼルエンジン3の排熱を有効に回収することができる。
【0041】
パワータービン17にて仕事を終えた有機媒体は、凝縮器21へと導かれ、海水等の冷却水によって冷却されることにより凝縮され、液化される。
なお、上記した各温度は、一例を示したものであり、それぞれの流体の流量、ディーゼルエンジン3の運転状況等種々の状況に応じて変化するものである。
【0042】
なお、本実施形態では、シュラウド側従流入路81がスクロール状とされているが、図3に示されるように一様な断面形状をした空間であるコレクタとしてもよい。これは、主流入路69も同様である。こうすると、製造コストをより低減させることができる。
主導入路71、シュラウド側従導入路83およびハブ側従導入路93の取付位置は、パワータービン17の設置位置に合わせて設定してもよい。たとえば、図4に示されるように、シュラウド側従導入路83を下部に位置するように設定してもよい。
【0043】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について図5を用いて説明する。本実施形態は、第一実施形態に対して第二排熱回収器11および第三排熱回収器15の熱源が異なるので、この異なる点について主として説明する。したがって、第一実施形態と同様の構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
図5は、本実施形態にかかる排熱回収発電装置1を概略的に示すブロック図である。
【0044】
本実施形態では、第二排ガスエコノマイザ13は設置されていない。
また、給水経路57は、大気圧ドレンタンク49の水が、第二空気冷却器35を通って第二排熱回収器11に供給され、その後は、大気圧ドレンタンク49に戻るように構成されている。
給水経路57には、第二空気冷却器35と第二排熱回収器11との間に位置する分岐点Bで分岐された分岐経路97が接続されている。分岐経路97は、第一空気冷却器9および第三排熱回収器15を通って大気圧ドレンタンク49に戻るように構成されている。
【0045】
このように構成された本実施形態にかかる排熱回収装置1は、排熱回収を除き第一実施形態と同様に動作するので、重複する部分の説明は省略する。
本実施形態では、ディーゼルエンジン3の過給機7によって圧縮された、たとえば、150〜160℃になる圧縮空気は、第一空気冷却器9で後述する熱交換を行い低温とされた状態で第二空気冷却器35に導入される。このとき、第二空気冷却器35には、給水ポンプ55によって大気圧ドレンタンク49の水が給水経路57を通って通過しているので、圧縮空気は、この水と熱交換され、冷却される。一方、給水経路57を通る水は、圧縮空気によって加熱され、昇温される。言い換えると、圧縮空気の顕熱が給水経路57を通る水に回収される。
給水経路57を通る水は、第二空気冷却器35で昇温された後、第二排熱回収器11を通るので、有機媒体経路23を通る有機媒体との間で熱交換が行われ、有機媒体は昇温され、蒸発させられる。したがって、給水経路57を通る水を介して、圧縮空気の顕熱が有機媒体経路23の有機媒体に回収されることになる。
【0046】
第二空気冷却器35で昇温された給水経路57を通る温水の一部は、分岐点Bにおいて分岐され分岐経路97を通って第一空気冷却器9を通る。
第一空気冷却器9には、第二空気冷却器35よりも温度の高い圧縮空気が導入されているので、分岐経路97を通る温水は、温度の高い圧縮空気と熱交換され、昇温される。言い換えると、圧縮空気の顕熱が分岐経路97を通過する温水に回収される。
分岐経路97が第三排熱回収器15を通る際、有機媒体経路23を通る有機媒体との間で熱交換が行われ、有機媒体は昇温され、蒸発させられる。したがって、分岐経路97を通る温水を介して、圧縮空気が有機媒体経路23の有機媒体に回収されることになる。
【0047】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について図6および図7を用いて説明する。本実施形態は、第一実施形態に対して第二排熱回収器11が備えられていない点で異なるので、この異なる点について主として説明する。したがって、第一実施形態と同様の構成については同一符号を付し、その説明を省略する。
図6は、本実施形態にかかる排熱回収発電装置1を概略的に示すブロック図である。図7は、排熱回収発電装置1のパワータービン17を示す断面図である。
【0048】
本実施形態では、第二排熱回収器11が用いられていないので、第二排熱回収器11およびこれに関連する部材を省略できる分、排熱回収発電装置1をより小型化することができる。
また、パワータービン17は、第一実施形態のものに比べ、第二排熱回収器11からの作動流体を取り扱うシュラウド側従入口79、シュラウド側従流入路81、シュラウド側従導入路83およびノズル85が省略されている構成とされている。
したがって、パワータービン17の構造を簡素化でき、小型化できるとともに製造コストを低減できる。
【0049】
なお、排熱回収発電装置1に用いられるパワータービン17は、図7に示される構造に限定されるものではない。
たとえば、図8に示されるように、主流入路69および主導入路71とシュラウド側従流入路91およびシュラウド側従導入路93とが全周に亘り一体的に構成されるとともに主流入路69とシュラウド側従流入路91とが連通するように構成されている。そして、主流入路69とシュラウド側従流入路91とが仕切板100で仕切られ、高圧側では、ノズル73、主入口67および主通路77、低圧側では、ノズル95、ハブ側従入口89および従通路87がそれぞれ構成されるようにしてもよい。
これにより、回転軸63は、長さを短くすることができ、軸振動を減少させることができる。
【0050】
また、図9に示されるように、スクロールを形成するシュラウド側従流入路91およびシュラウド側従導入路93が軸方向に扁平にされていてもよ。
このようにすると、ケーシング61の開放時に、ケーシング61がシュラウド側従流入路91およびシュラウド側従導入路93に干渉しないようにすることができる。これにより、ケーシング61の分解を容易に行うことができる。
【0051】
また、図10に示されるように、回転軸63におけるパワータービン17の取付位置に対する反対側端部に、別の独立した付加パワータービン18を備えるようにしてもよい。
付加パワータービン18は、パワータービン17とは媒体の流れる流路が独立しているので、パワータービン17とは別の媒体で駆動することも、同一の媒体で駆動することもできる。たとえば、付加パワータービン18にパワータービン17に供給される有機媒体よりも高圧な第二排ガスエコノマイザ13からの蒸気を直接導入することができる。これにより、ディーゼルエンジン3の排熱を一層有効に回収することができる。パワータービン18の排気を、別途設けられた低圧のパワータービンに導入することもできる。
なお、図10では、パワータービン17は図8に示された構造のものとしているが、これに限定されるものではなく、付加パワータービン18は、本実施形態で説明したパワータービン17を含む適宜構造をしたパワータービン17と組み合わせることができる。
【0052】
図11に示されるパワータービン17は、回転軸63が磁気軸受110,111によって支持されるように構成されている。
このように回転軸63が磁気軸受110,111によって支持されると、潤滑油を供給しないでもよいので、有機媒体中に潤滑油が飛散することを防止することができる。
【0053】
また、図12に示されるように、パワータービン17は、シュラウド側従入口79、シュラウド側従流入路81、シュラウド側従導入路83およびノズル85を備え、ハブ側従入口89、シュラウド側従流入路91、シュラウド側従導入路93およびノズル95を省略するようにし、第一排熱回収器5からの有機媒体をシュラウド側従入口79から主通路77導入するようにしてもよい。
このようにすると、従通路87を設けなくともよいので、パワータービン17をより小型化することができる。
【0054】
また、給水経路57は、大気圧ドレンタンク49の水が第一空気冷却器9を通った後、第二排ガスエコノマイザ13および第三排熱回収器15を通って大気圧ドレンタンク49に戻るように構成されている。
【0055】
このように構成された本実施形態にかかる排熱回収装置1は、第二排熱回収器11がない点およびそれに伴う排熱回収を除き第一実施形態と同様に動作するので、重複する部分の説明は省略する。
給水経路57を通る水は、第一空気冷却器9を通る際に、圧縮空気によって昇温され、次いで、第二排ガスエコノマイザ13を通る際に、排ガスに加熱され、第三排熱回収器15に供給される。第三排熱回収器15で、有機媒体は、給水経路57を通る熱媒により加熱され、昇温される。
したがって、給水経路57を通る水を介して、圧縮空気および排ガスの顕熱が有機媒体経路23の有機媒体に回収されることになる。
【0056】
なお、本発明は以上説明した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形を行ってもよい。
たとえば、上述した各実施形態の排熱回収発電装置1は、船舶への適用を例として説明したが、発電等に用いられる陸用の内燃機関に適用することもできるし、各種産業用プラントの排熱、地熱・OTEC等を用いた発電等に適用することもできる。
【符号の説明】
【0057】
1 排熱回収発電装置
3 ディーゼルエンジン
5 第一排熱回収器
7 過給機
11 第二排熱回収器
15 第三排熱回収器
17 パワータービン
19 発電機
21 凝縮器
23 有機媒体経路
65 ラジアルタービンホイール
67 主入口
77 主通路
79 シュラウド側従入口
87 従通路
89 ハブ側従入口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動媒体の循環経路に並列に設置され、それぞれ温度の異なる熱媒体によって前記作動媒体を蒸発させる複数の蒸発器と、
単一のタービンホイールで構成され、それぞれ軸線方向で異なる位置から導入される前記各蒸発器からの前記各作動媒体の旋回エネルギーを回転動力に変換するラジアルタービンと、
該ラジアルタービンの回転動力によって発電する発電機と、
前記ラジアルタービンを通過した前記作動媒体を凝縮させる凝縮器と、
を備えていることを特徴とする排熱回収発電装置。
【請求項2】
前記タービンホイールは、外周端に主入口を有し、半径方向から軸方向に湾曲しつつ順次翼高さが高くなる主通路を備えるとともに該主通路のシュラウド面に少なくとも1個のシュラウド側入口を備えていることを特徴とする請求項1に記載の排熱回収発電装置。
【請求項3】
前記タービンホイールは、外周端に主入口を有し、半径方向から軸方向に湾曲しつつ順次翼高さが高くなる主通路を備えるとともに該主通路のハブ面から分岐され前記主通路の背面側に向かい延在する従通路の外周端に前記主入口と異なる半径方向位置とされたハブ側入口を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排熱回収発電装置。
【請求項4】
前記熱媒体として内燃機関本体を冷却するエンジン冷却水と、該内燃機関の過給機から吐出される圧縮空気を冷却する空気冷却水と、が用いられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の排熱回収発電装置。
【請求項5】
前記熱媒体として内燃機関本体を冷却するエンジン冷却水と、該内燃機関の過給機から吐出される圧縮空気を冷却する空気冷却水を該内燃機関の排ガスによって加熱した蒸気と、が用いられることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の排熱回収発電装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−215124(P2012−215124A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81094(P2011−81094)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】