説明

掘削部材、掘削方法および該掘削部材を用いる土壌改良方法

【課題】 掘削時の圧縮空気に潤滑材としての機能を確保させつつ、圧縮空気を適切に放出させ、効率的に掘削することを可能にする掘削部材および該掘削部材を用いる掘削方法を提供する。
【解決手段】 本発明の掘削部材は、中空の軸体21と、軸体21の先端に設けられる切削部材22と、軸体21に周設される螺旋状羽根23と、螺旋状羽根23の外周に突起部24または螺旋状羽根23に切欠き部とを備える。本発明の掘削方法は、掘削部材を回転可能かつ昇降可能に支持する支持手段により回転および降下させるとともに、軸体の先端から圧縮空気を噴射させ、噴射させた圧縮空気を、突起部により形成した羽根と掘削穴との間の隙間を通して、または、切欠き部を通して放出させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削部材、掘削方法および土壌改良方法に関し、より詳細には、圧縮空気を噴射させつつ掘削する際に、噴射させた圧縮空気を放出させ、効率的に掘削することを可能にする掘削部材および該掘削部材を用いた掘削方法に関し、さらに、該掘削部材を用い、鉄粉または酸化鉄粉と石膏系固化材とを土壌に供給し、撹拌混合して土壌を浄化するとともに、地盤強度の低下を防止する土壌改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定強度の地盤を得るための地盤改良に、AMP(Air Mixing Pillar)工法が採用されている。AMP工法は、掘削時に、水の代わりに高圧空気を潤滑材として用いるため、排泥が出ないという特徴を有している。また、AMP工法に使用する機械設備は、コンパクトであるため、狭い場所、上空制限がある場所などにおいても容易に施工できるという特徴を有している。
【0003】
ここで、図1を参照してAMP工法について説明する。AMP工法に使用される機械設備は、図1に示すように、中空の軸体1と、軸体1の先端に設けられる切削部材2と、軸体1に周設される螺旋状羽根3と、図示しない軸体1の内部に一部が挿設され、軸体1を貫通し、螺旋状羽根3の羽根面に沿って一部が配設される注入管とを備えた掘削部材4と、支持手段5と、圧縮空気供給手段6と、注入材供給手段7とから構成される(例えば、特許文献1参照)。支持手段5は、ロッド10と、挟持手段11と、ロッド10を支持し、ロッド10の角度を変更可能にするアーム12と、ロッド10を昇降可能にする昇降手段13と、走行手段14とを備えている。ロッド10は、地面に向いた下端部に配設された掘削部材4の回転および昇降を可能にする。挟持手段11は、ロッド10を移動可能に、かつ回転可能に挟持する。また、挟持手段11は、油圧駆動などによりロッド10を正逆両方向に回転させる。走行手段14は、所定の土壌位置に移動し、また、位置を変更する。
【0004】
原位置において土壌改良する場合、走行手段14によって改良するべき位置に移動し、挟持手段11によってロッド10を回転させ、昇降手段13によってロッド10を降下させることにより掘削部材4を地盤に貫入させ、所定深さまで掘削する。なお、掘削部材4を地盤に貫入させる際、圧縮空気供給手段6から掘削部材4に高圧空気を供給し、掘削部材4の軸体1の先端から噴射させる。この高圧空気は、主に、掘削土をスムーズに流動させる潤滑材的効果を与えて掘削を容易にさせるために供給されるものであり、この高圧空気の供給によってさらに、掘削中の地盤への衝撃を低減させ、掘削部材4に揺動撹拌効果を与えてさらに掘削を容易にさせ、切削部材2の発熱を抑制することができる。所定深さまで掘削した後、掘削部材4の回転方向を変え、昇降手段13によってロッド10を上昇させつつ、注入材供給手段7から掘削部材4の注入管に注入材を供給する。注入管に供給された注入材は、掘削部材4の周囲の土壌に向けて噴射される。噴射された注入材は、螺旋状羽根3の回転により土壌と撹拌混合され、所定範囲の土壌に均一に分散される。注入材の注入は、掘削部材4が所定深さに上昇されるまで行われる。掘削部材4が所定深さに上昇された後は、注入材の注入を停止し、掘削部材4を引き上げ、走行手段14によって次の位置に移動し、再び土壌の掘削を行う。これを繰り返すことにより、所定範囲の地盤の地盤改良を行うことができる。
【0005】
高圧空気は、掘削時のみならず、注入材の注入時においても供給することができる。地盤改良において注入材は、例えば、セメントミルク、水ガラス系の薬剤、石膏などの固化材とすることができ、スラリーまたはガスに分散させた状態で供給することができる。これら固化材は、土壌に供給されると土壌とともに固化し、所定の強度を発現する。なお、固化速度は、固化材中の急結剤の添加量を変えることで調整することができる。
【0006】
図1に示す機械設備は、地盤改良のみならず、有機塩素化合物などの汚染物質で汚染された土壌を浄化する場合にも使用することができる(例えば、特許文献2参照)。この場合には、注入材に、水に鉄粉または酸化鉄粉を分散させたスラリーや圧縮空気に鉄粉または酸化鉄粉を分散させたガスを使用することにより実施することができる。
【0007】
AMP工法に使用される掘削部材を含む機械は、自重が約20tonで、例えば、アスコラム工法で使用される機械は、作業条件によっても異なるが、一般に大型で、自重が約50〜120tonもあり、AMP工法に使用される機械は軽いことを特徴としている。なお、上記アスコラム工法とは、軟弱、粘性土などの地盤中に、スラリー状のセメント系固化材を注入しながら、土と固化材とを混合撹拌し、均一な改良コラムを築造する工法である。
【0008】
従来、AMP工法に使用される機械は、上述したように自重が小さいため、掘削時に、自重不足となり、特に、硬い地盤において掘削できないといった問題があった。これは、AMP工法が約0.7MPaの圧縮空気を用いて掘削する工法であるため、噴射した圧縮空気が螺旋状羽根と掘削穴とによって形成される閉鎖された空間に滞留し、圧縮空気による高い圧力が掘削部材の螺旋状羽根の下面にかかり、その圧力が機械の自重を上回ることによって、掘削部材を掘削方向である下方に降下させることができないというものである。比較的軟らかい地盤であれば、掘削部材を水平方向に揺動させるなどしてできた螺旋状羽根と掘削穴との間のわずかな隙間から、噴射した圧縮空気を放出させることができるものの、関東ロームなどの粘性が高く、比較的締まった硬い地盤を掘削する場合には、容易に揺動させることはできず、揺動させたとしても圧縮空気を抜くことはできず、圧縮空気を供給し続けた場合、上述した機械の自重を上回り、掘削することができない。したがって、このような硬い地盤においても、効率的に掘削することができる掘削部材が望まれている。
【特許文献1】特開2003−090189号公報
【特許文献2】特開2003−251327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、掘削時の圧縮空気に潤滑材としての機能を確保させつつ、圧縮空気を適切に放出させ、効率的に掘削することを可能にする掘削部材および該掘削部材を用いる掘削方法を提供することを目的とする。本発明は、効率的に掘削することを可能にする掘削部材を使用して、土壌を浄化するとともに地盤強度の低下を防止することを可能にする土壌改良方法も提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1の発明によれば、中空の軸体と、前記軸体の先端に設けられる切削部材と、前記軸体に周設される螺旋状羽根と、前記螺旋状羽根の外周に突起部または前記螺旋状羽根に切欠き部とを備える掘削部材が提供される。
【0011】
本発明の請求項2の発明によれば、前記軸体は、長さ方向に沿った中央部において径が大きく、かつ両端部において径が小さくなるように形成され、前記螺旋状羽根は、前記両端部から前記中央部に向けて羽根径が大きくなるように形成されており、最大の前記羽根径となる前記羽根の外周に前記突起部または前記最大の羽根径となる羽根に前記切欠き部を備えることを特徴とする掘削部材が提供される。
【0012】
本発明の請求項3の発明によれば、前記突起部は、前記掘削部材の掘削時の回転方向に先細とされた形状であることを特徴とする掘削部材が提供される。
【0013】
本発明の請求項4の発明によれば、前記掘削部材は、前記軸体内部と前記切欠き部とを連通するノズルを備え、前記ノズルから圧縮空気を噴射させることを特徴とする掘削部材が提供される。
【0014】
本発明の請求項5の発明によれば、前記螺旋状羽根は、上面および下面に配設される複数の突出部材を備える掘削部材が提供される。
【0015】
本発明の請求項6の発明によれば、前記掘削部材は、さらに、少なくとも1つの注入管を備える掘削部材が提供される。
【0016】
本発明の請求項7の発明によれば、中空の軸体と、前記軸体の先端に設けられる切削部材と、前記軸体に周設される螺旋状羽根と、前記螺旋状羽根の外周に突起部または前記螺旋状羽根に切欠き部とを備える掘削部材を回転可能かつ昇降可能に支持する支持手段により回転および降下させるとともに、前記軸体の先端から圧縮空気を噴射させる工程と、
噴射させた前記圧縮空気を、前記突起部により形成した前記羽根と掘削穴との間の隙間を通して、または、前記切欠き部を通して放出させる工程とを含む、掘削方法が提供される。
【0017】
本発明の請求項8の発明によれば、中空の軸体と、前記軸体の先端に設けられる切削部材と、前記軸体に周設される螺旋状羽根と、前記螺旋状羽根の外周に突起部または前記螺旋状羽根に切欠き部と、少なくとも1つの注入管とを備える掘削部材を回転可能かつ昇降可能に支持する支持手段により回転および降下させるとともに、前記軸体の先端から圧縮空気を噴射させる工程と、
噴射させた前記圧縮空気を、前記突起部により形成した前記羽根と掘削穴との間の隙間を通して、または、前記切欠き部を通して放出させる工程と、
前記掘削部材を回転させつつ、前記少なくとも1つの注入管から該掘削部材周囲の前記土壌に向けて、水に、鉄粉または酸化鉄粉と石膏系固化材とを分散させたスラリー、または、圧縮空気または窒素に、前記鉄粉または前記酸化鉄粉と前記石膏系固化材とを分散させたガスを噴射させるステップと、
前記螺旋状羽根の回転により、前記土壌と前記スラリーまたは前記ガスとを混合するステップとを含む、土壌改良方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の掘削部材および掘削方法を提供することにより、掘削時に噴射した圧縮空気を適切に放出させることができるため、効率的に掘削することができ、短期間に、より広い範囲の土壌を施工することが可能となる。また、本発明の土壌改良方法を提供することにより、効率的に掘削、浄化材および固化材の供給および撹拌混合することができ、短期間に、より広い範囲の土壌を浄化し、かつ地盤強度の低下を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を図面を参照して説明するが、本発明は以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。本発明の掘削部材は、図1に示すロッド10に連結して使用されるものである。図2は、本発明の掘削部材の第1実施形態を示した図である。図2(a)に掘削部材の全体を示す斜視図を、図2(b)に突起部を拡大して示した図を示す。図2(a)に示す掘削部材20は、中空の軸体21と、軸体21の先端に設けられる切削部材22と、軸体21に周設される螺旋状羽根23と、螺旋状羽根23の外周に突起部24とを備えている。図2(a)に示す実施形態では、軸体21が、先導管25を備えた構成とされており、切削部材22が先導管25の先端部26およびフランジ部27に設けられ、先導管25がフランジにより軸体21を構成する中空部材28と連結されている。軸体21を構成する中空部材28は、長さ方向に沿った中央部29において径が大きく、かつ両端部30a、30bにおいて径が小さくなるように形成されている。螺旋状羽根23は、両端部30a、30bから中央部29に向けて羽根径が大きくなるように形成されている。また、螺旋状羽根23には、羽根径が最大となる部分の外周に突起部24が設けられている。
【0020】
図2(a)では、切削部材22が溶接するなどして先導管25の先端部26およびフランジ部27に設けられている。先導管25は、圧縮空気が噴射できるよう中空であれば、いかなる径、長さの管であっても良いが、軸体21を構成する中空部材28の両端部の径と同じ径にすることが好ましい。切削部材22は、先端が鋭く尖った先端部を備えており、硬い土壌や石なども切削することができるようになっている。また、切削部材22は、先導管25の先端部26およびフランジ部27に、いかなる数設けられていても良い。
【0021】
図2(a)に示す軸体21を構成する中空部材28は、中央部29の径が大きくされ、その中央部29の所定の長さにおいて一定の径とされていて、両端部30a、30bに向けて一定の割合で径が小さくなるような形状とされている。また、中空とされた内部を通して高圧の圧縮空気が供給できるようになっている。本発明では、掘削部材20を、土壌を浄化するための施工や地盤改良するための施工に使用する場合、浄化剤または固化材をスラリーとして、または、ガスに分散させて供給し、噴射させるための注入管を中空部材28に挿設することができる。この場合、注入管を除いた空間を通して圧縮空気を流し、軸体21の先端から噴射させることができる。軸体21の先端から噴射される圧縮空気は、主に掘削土をスムーズに流動させる潤滑材的効果を与えて掘削を容易にさせるために供給される。また、この圧縮空気の供給により、掘削中の地盤への衝撃を低減させ、掘削部材20に揺動撹拌効果を与えてさらに掘削を容易にさせ、切削部材22の発熱を抑制することができる。
【0022】
図2(a)に示す軸体21を構成する中空部材28には、外側面に螺旋状に形成された螺旋状羽根23が周設されている。螺旋状羽根23は、軸体21の中央部に向けて螺旋状羽根23の羽根径が大きくなるように形成されていて、土壌中を上下にスムーズに撹拌することができる構造とされている。
【0023】
図2(a)では、螺旋状羽根23の最大の羽根径となる羽根の外周に突起部24が設けられている。図2(a)に示す実施形態では、最大径となる2つの羽根のそれぞれの外周に、それぞれ2つの突起部24が軸体21を中心として180°となる位置にそれぞれ設けられている。また、突起部24は、回転方向となる矢線Aに示す方向に先細とされた形状とされており、この形状により、掘削時に突起部24が土壌にスムーズに挿入されるようになっている。なお、突起部24は、螺旋状羽根23の外周、すなわち外周側面に、矢線Bに示す軸体21とは反対方向に向けて突出するように設けられているため、土壌を掘削してできた掘削穴は、螺旋状羽根23の羽根径に、2つの突起部24の外周側面から突出する長さを含めた径として形成される。したがって、掘削穴の径と、螺旋状羽根23の最大の羽根径との間に差が生じ、この差によって形成される隙間を通して圧縮空気を放出することができる。
【0024】
本発明の掘削部材20は、例えば、軸体21を構成する先導管25が、長さ0.2m、径0.14mで、中空部材28が、全体の長さ0.8m、中央部29の長さ0.16mで0.4mの一定の径とし、長さ方向の両端部0.32mの範囲において0.14mから0.4mの径に一定の割合で拡大する構造のものとすることができる。この場合、一定の割合で拡大するテーパ角が22°となる。この場合の螺旋状羽根23は、例えば、最大羽根径が約1〜1.5mのものとすることができる。なお、羽根径は、羽根の一端から軸体21を通した他端までの直径である。突起部24は、図1に示すような形状とすることができ、一点鎖線Cで表される部分を拡大した図2(b)に示す長さLを、約0.15〜0.3m、幅Wを、約0.03〜0.1m、厚さtを、約0.01〜0.03mとすることができる。また、突起部24は、掘削部材20の掘削時の回転方向に先細とされた形状で、土壌にスムーズに挿入できるようになっている。突起部24の先細とされた部分の角度αは、土壌にスムーズに挿入できればいかなる角度であってもよいが、例えば、20〜50°とすることができる。本発明では、これらの数値に限定されるものではなく、いかなる長さ、径、角度にもすることができる。なお、圧縮空気を使用して効率的に掘削するためには、軸体21の先端から噴射させた圧縮空気が上記潤滑材的効果を与えることなく即座に放出されないよう、上記隙間を所望の大きさとすることが好ましく、所望の大きさに形成するために、上記螺旋状羽根23の径では、突起部24の幅Wを上記値とすることが好ましい。このように、上記隙間を所望の大きさにすることにより、軸体21の先端から噴射させた圧縮空気が上記潤滑材的効果を与えるとともに、装置の自重を上回らないように部分的に放出させることができる。
【0025】
本発明の掘削部材20の軸体21および螺旋状羽根23は、土壌に挿入できる強度があればいかなる材料であってもよく、例えば、炭素鋼、ステンレス鋼とすることができる。切削部材22および突起部24は、硬い地盤を掘削する際、破損しないように超合金を含む材料または超合金とすることができる。超合金としては、例えば、チタン、ジルコニウム、ハフコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、トリウムなどの炭化物、窒化物、ホウ化物、ケイ化物の粉体を、金属結合剤として鉄、ニッケル、コバルトのいずれかとともに、水素または窒素といった不活性ガス中で、1300℃〜1600℃といった高温で焼結した材料を用いることができる。また、硬い地盤に使用することにより、突起部24が摩耗し、寸法不足となるため、適宜肉盛りすることができる。肉盛りには、上記合金のほか、いかなる合金および金属でも用いることができる。
【0026】
図3は、本発明の掘削部材の第2実施形態を示した図である。図3に示す実施形態では、螺旋状羽根23の上面23aおよび下面23bに、複数の突出部材31が設けられている。図3に示す突出部材31は、矩形の板状のものとされ、矩形とされた面が軸体21に向くように配設されている。また、突出部材31は、螺旋状羽根23の縁部および軸体21に近隣した内縁部に設けられ、矩形の角部が面取りされた構造とされている。矩形とされた板状の突出部材31の回転方向に向いた側の角部が面取りされた構造とすることにより、螺旋状羽根23の回転をスムーズにし、効果的に撹拌することができる。図3に示す掘削部材20において、土壌を掘削する場合、螺旋状羽根23の下面23bに設けられた突出部材31が鋭く土壌にくい込みながら土壌を効果的に撹拌し、上面23aに設けられた突出部材31は、切削および撹拌された土砂をスムーズに後方に送ることができ、土壌中に石などを含んでいても、噛みにくくなっている。また、掘削部材20を地中から地表面に向けて上昇させる場合には、螺旋状羽根23の上面23aに設けられた突出部材31が効果的に切削および撹拌し、下面23bに設けられた突出部材31がスムーズに土砂を後方に送ることができる。したがって、図3に示す掘削部材20を使用して土壌を掘削する場合には、掘削した土砂が地上に排出されるのを低減させることができる。本発明において突出部材31は、いかなる数設けられていても良く、形状も上述した矩形の板状のものでなくても螺旋状羽根23の螺旋形状に沿って矩形の板が曲げられた形状とされていても良い。
【0027】
なお、図3に示す実施形態では、注入材の供給を行うことができるよう、注入管32を備えている。注入管32は、軸体21の中空部分に一部が挿設されていて、軸体21の長さ方向の中央部29において垂直に曲げられ、軸体21を構成する中空部材28を貫通し、螺旋状羽根23の縁部に向けて延びた構造となっている。図3では、注入管32が1本であるが、注入管32が2本の場合には、一方の注入管が中空部材28の一方の面を貫通するように、他方の注入管がその一方の面の裏面、すなわち一方の注入管が突出する位置から周方向へ180°の角度となるように設けることができる。土壌浄化のための施工においては、スラリーが土壌中において接触し、適切に汚染物質の分解反応を生じさせることができるように、2本の注入管が、中空部材28の長さ方向の位置が同じとなるように配設されていることが好ましく、中空部材28から螺旋状羽根23に沿って突出する長さも同じであることが好ましい。なお、注入管32の径は、いかなる径であってもよく、例えば、1インチ〜1.5インチのものを使用することができる。
【0028】
なお、注入管32は、螺旋状羽根23の縁部にまで延びていなくてもよく、螺旋状羽根23の中央部、または内縁部までであってもよい。土壌浄化においては、鉄粉または酸化鉄粉を土壌と混合するため、単にスラリーを供給するだけでもよいが、高い圧力で供給し、注入管32から噴射させることが好ましい。この場合、注入管32は、広範囲に噴射させるために、螺旋状羽根23の縁部にまで延びているほうが好ましい。
【0029】
図4は、本発明の掘削部材20の第3実施形態を示した図である。図4に示す実施形態は、螺旋状羽根23の羽根径が最大となる部分に、切欠き部40が設けられている。切欠き部40は、形成した螺旋状羽根23の一部を所望の形状に切り取ることにより形成することができる。図4に示す実施形態では、半円形に切り取られた切欠き部40が形成されている。本発明においては、切欠き部40は、圧縮空気を放出することができればいかなる形状、大きさであってもよいが、高圧の圧縮空気を使用して効率的に掘削するためには、軸体21の先端から噴射させた圧縮空気を部分的に放出させることができる所望の大きさとすることが好ましい。例えば、最大径1〜1.5mの螺旋状羽根23においては、4つの半径約0.1m〜約0.3mの半円形の切欠き部40とすることができる。また、螺旋状羽根23において、図4に示すように、中央部29に同じ最大径をもつ羽根が2段に形成されている場合には、各羽根に切欠き部40を設ける必要がある。これは、下段の羽根のみに切欠き部40が設けられている場合、上段の羽根によって閉鎖され、圧縮空気が放出されないためである。したがって、確実に放出するためには、それぞれに同じ数、同じ大きさの切欠き部40が設けられることが好ましく、上方に連結されるロッド側から見た切欠き部40の位置が上段の羽根と下段の羽根とが同じ位置であることがより好ましい。このように同じ位置である場合、圧縮空気が下段の切欠き部を通してそのまま上部の上段の切欠き部を通り、放出されるからである。なお、同じ最大径の羽根が3段以上ある場合、その3段以上の最大径の羽根の各々に切欠き部が設けられる。
【0030】
本発明では、切欠き部に向けて圧縮空気を噴射するために、図5(a)、(b)に示すように、軸体21の内部と切欠き部40とを連通するノズル41を備える構成とすることもできる。なお、図5(a)は、軸体21の長さ方向の所定位置で切断した断面図を示し、図5(b)は、切断線D−Dで切断した断面図を示す。図5に示すような構成を採用することで、掘削時、軸体21の内部には常時圧縮空気が供給されているため、図5(b)の矢線で示すように、切欠き部40にも常時圧縮空気を噴射させることができ、切欠き部40に土砂が堆積しないようにすることができる。図5に示す実施形態では、螺旋状羽根23の内部にノズル41が設けられているが、本発明では、切欠き部40に向けて圧縮空気を噴射することができるよう、ノズルが、螺旋状羽根23の上面または下面に沿って設けられ、噴射口が切欠き部40に向いた構成とすることもできる。
【0031】
図6は、本発明の土壌改良方法に使用される装置の概略を示した図である。ここでは、水に酸化鉄粉と焼き石膏とを分散させたスラリーを使用し、土壌を改良する方法について説明するが、水に鉄粉と焼き石膏とを分散させたスラリー、圧縮空気または窒素に、鉄粉または酸化鉄粉と焼き石膏とを分散させたガスを使用して行うこともできる。また、固化材としては、焼き石膏のほか、中性の石膏系固化材であればいかなるものでも用いることができる。
【0032】
まず、本発明の土壌改良方法に使用することができる鉄粉、酸化鉄粉、石膏系固化材について説明する。鉄粉は、水、圧縮空気または窒素とともに供給することができる粒径であればいかなる粒径のものであってもよく、例えば、粒径が0.05μm〜150μmのものを用いることができるが、水またはガスに分散しやすい、粒径が小さいもののほうが好ましい。また、鉄粉を供給する状態としては、水、圧縮空気または窒素に鉄粉を混合させ、鉄粉の粒と粒との間に水、圧縮空気または窒素を含んだ、水、圧縮空気または窒素に分散した状態で供給され、土壌に向けて噴射されることが好ましい。鉄粉を噴射される量としては、いかなる量であってもよいが、充分な浄化作用を付与するためには、土壌1mあたり、例えば、10kg〜100kgとすることができる。鉄粉は、粒径が一定ではなく、粒度分布があるほうが、粒と粒との間に水やガスを含みやすく、分散した状態になりやすいので好ましい。鉄粉供給の際、粉塵爆発を生じるおそれがある場合には、圧縮空気ではなく、窒素を供給することができる。本発明においてスラリーまたはガスは、圧力が高いほど、供給ライン途中において鉄粉の堆積がなくなるので好ましく、例えば、スラリーでは15MPa〜20MPa、ガスでは0.7MPaとすることができる。なお、鉄粉の供給量は、圧縮空気とともに供給する場合、粉塵爆発を起こさない爆発下限界濃度未満になる量とすることができ、具体的には、空気1m中の鉄粉濃度を0.1kg以下とすることができる。
【0033】
また、本発明では、汚染土壌に対する鉄粉を混合する割合は、汚染土壌における揮発性有機塩素化合物などの濃度によって異なり、適切な量を混合することができる。スラリー状態で供給する場合、地盤強度を低下させないように水が少ないほど好ましいが、上記鉄粉を供給することができる量として決定することができる。本発明では、例えば、水と鉄粉との質量比を、1:1〜20:1とすることができる。
【0034】
酸化鉄粉は、比重7.8の鉄粉に比べて、比重が4〜5と小さいため、水、圧縮空気または窒素に分散しやすく、また、高い浄化作用を有するため、鉄粉に代えて使用することができる。本発明では、より高い浄化作用を有するマグネタイト(Fe)を約70質量%〜約90質量%含有するものが好ましい。なお、その他の成分については、例えば、純鉄(Fe)や2価鉄(Fe2+)などとすることができる。2価鉄としては、2価の酸化鉄(FeO)などとすることができる。鉄粉を用いる土壌浄化では、鉄粉を汚染土壌に混合した場合、例えば、TCEは中間副生成物であるシス−1,2−DCEなどを生じ、最終的に多くがエチレンおよびアセチレンに分解されるが、上記マグネタイトを含む酸化鉄粉を用いた場合には、エチレンガスやアセチレンガスへの分解に止まらず、分解反応が炭酸ガスまで進行する。本発明では、上記酸化鉄粉を用いることにより、浄化処理工程においてエチレンやアセチレンといった副生成物を生じないため、それらの副生成物を処理するための他の工程や装置を必要とせず、処理期間を大幅に短縮することができるので、上記酸化鉄粉を使用することが好ましい。
【0035】
また、酸化鉄粉は、平均粒子径が0.05μm〜0.2μmのものを用いることができる。このような微細な粒子径のものを用いることにより、水に容易に分散し、安定なスラリーを形成することができる。供給圧力は、水に分散した状態で供給することができるのであればいかなる圧力であってもよい。また、比重が小さいため、圧縮空気中にも容易に、かつ均一に分散させることができ、途中のライン中に堆積することなく、所定量を供給することができる。なお、圧縮空気の圧力は、ライン途中における堆積をなくし、広範囲へ噴射させるためには、高いほど好ましいが、上述したように比重が小さく、微細なものであるため、例えば、0.7MPaで供給することができる。また、この酸化鉄粉は、鉄粉とは異なり、二次的に発生する赤錆による赤水を生じることがないといった利点も有する。本発明では、上記酸化鉄粉を用いることにより、より少ない水量、圧縮空気量で、かつ低圧で、所定量供給することができる。
【0036】
本発明では、汚染土壌に対する酸化鉄粉を混合する割合は、汚染土壌における揮発性有機塩素化合物の濃度によっても異なるが、土壌1mに対し、15kg〜150kgとすることができる。また、水とともに供給する場合には、水:酸化鉄粉が、質量比で2:1〜15:1とすることができる。なお、酸化鉄粉は多いほど分解、除去作用を付与することができるが、安価で実施し、かつ酸化鉄粉を供給するために水量が増加することによる地耐力の低下を抑制するため、上記値とすることが好ましい。
【0037】
本発明の土壌改良方法では、スラリーまたはガス中に、中性の固化材である石膏系固化材を添加して供給される。この石膏系固化材を含むスラリーまたはガスの供給によって、水分を多く含む地盤や、スラリーに含まれる水または噴射あるいは撹拌混合によって軟化する地盤において、所定の強度を得ることができる。従来、地盤強度を高めるために、セメントが使用されている。セメントは、アルカリ性であり、水和反応により強度を発現し、安価で、充分な強度を得ることができるという特徴を有する。しかしながら、アルカリ性であるセメントは、鉄粉または酸化鉄粉と有機塩素化合物との反応を阻害するため、セメントを混合した土壌では充分な浄化を行うことができない。そこで、低アルカル性セメントを用いることができるが、セメントに比べて高価であり、低いながらもアルカリ性であるため、多量には使用することができず、また、充分な強度を得ることができない。したがって、セメントは、多量に使用する必要がある含水比の高い地盤には適用することができない。そこで、中性で、水和反応を伴うことなく強度を発現する石膏を使用することができる。しかしながら、石膏を水に添加して供給しようとする場合、容器内で固まったり、ライン途中で固まったり、供給することができたとしても、供給した部分のみの土壌が急速に固まり、所定範囲全体の土壌を撹拌できず、その範囲に均一に石膏を分散させ、均一に固めることができないといった問題があった。また、別途、石膏のみを供給するにしても、土壌に添加して急速に固まり、上述したように撹拌できない以上、土壌全体にわたって所定強度の地盤を得ることができないといった問題があった。
【0038】
本発明では、石膏系固化材と鉄粉または酸化鉄粉とを多量の水に分散させることにより、石膏系固化材による固化速度を遅延させることができることを見出した。これにより、途中で固まることなく、土壌に充分に行き渡らせ、また、充分に撹拌混合することができる。
【0039】
石膏系固化材としては、無水石膏を使用することもできるが、フッ素の溶出がなく、硫化水素の発生を抑制する焼き石膏が好ましい。焼き石膏は、例えば、硫酸カルシウムの二水和物(CaSO・2HO)を低温加熱処理することにより得ることができる。具体的には、硫酸法により酸化チタンを製造する際に発生する廃硫酸を、炭酸カルシウムを用いてpHを5とし、pHを5とすることにより生成する生成物を非酸化性雰囲気下、150℃で1時間加熱焼成することにより得ることができる。また、本発明において石膏系固化材と鉄粉との質量比は、スラリー中の水量や土壌中の水分量によって決定することができるが、例えば、0.01:1〜200:1とすることができる。本発明では、充分な揮発性有機塩素化合物の分解除去効果を得るのに必要とされる土壌1mあたりの鉄粉量が10kg〜100kgであり、水と鉄粉との質量比が1:1〜20:1であることを考慮し、石膏系固化材として焼き石膏を用いた場合、焼き石膏と鉄粉との質量比は1:1〜10:1とすることが好ましい。例えば、スラリー中の焼き石膏の量が多い場合、土壌強度を高めることができるが、スラリー粘度が上昇し、この結果、スラリー供給手段の能力を増強する必要が生じ、多くの電力も消費することとなる。一方、焼き石膏の量が少ない場合、土壌強度が不充分なものとなる。したがって、これら地盤強度や設備コストなどの点から、上述した範囲の添加量が好ましい。
【0040】
上記酸化鉄粉を使用する場合の焼き石膏の添加量は、酸化鉄粉の質量と同じか、それ以上であることが好ましく、2〜20倍であることがより好ましい。焼き石膏の添加量は、酸化鉄粉およびこの焼き石膏とともに供給される水量、土壌に含まれる水量により決定することができる。本発明に使用することができる石膏系固化材は、粉末状のものが好ましく、上記スラリーに限らず、圧縮空気や窒素とともに供給することもできる。
【0041】
図6を参照して本発明の掘削方法および土壌改良方法を説明する。まず、容器50に、所定量の水を入れ、所定量の酸化鉄粉と所定量の焼き石膏とを予め混合したものを入れ、容器50の内部の撹拌手段51によって撹拌することによりスラリーを作成する。作成されたスラリーは、容器50の下部から弁52を介して容器53へ送られる。容器53では、分散した鉄粉または酸化鉄粉および焼き石膏が沈澱しないように撹拌手段54によって撹拌される。上述したように、固化速度を遅延させることができるため、必要に応じて作成するのではなく、予め所定量を作成しておくことができる。なお、スラリーは、土壌掘削後に、スラリー供給手段55によって掘削部材に供給される。圧縮空気や窒素とともに酸化鉄粉および焼き石膏を供給する場合には、容器内に酸化鉄粉と焼き石膏との混合物を収容し、弁により所定量の混合物を排出させ、その容器の下部に常時供給している圧縮空気または窒素中に上記所定量の混合物を分散させることによりガスとして供給することができる。なお、容器に粒状の混合物を収容する場合、排出の際、目詰まりを生じる可能性があるため、圧縮空気の一部を容器に供給し、内部を加圧することができる。また、容器を揺動させるため、バイブレータを容器側部に配設することもできる。容器50、53は、ステンレス鋼などの鋼製のホッパーを用いることができる。スラリー供給手段55は、酸化鉄粉および焼き石膏を分散させた状態で供給することができるいかなるポンプでも使用することができる。圧縮空気または窒素を供給する場合には、圧縮機を使用することができる。
【0042】
改良したい地盤上では、走行手段60によって所定位置にロッド61を配置し、アーム62を使用して地表面80に対してロッド61が垂直になるように調整する。次に、図示しない圧縮空気供給手段からロッド61に圧縮空気を供給し、掘削部材70の軸体71の先端から噴射させる。その後、挟持手段63によってロッド61を回転させ、昇降手段64によりロッド61を降下させて土壌の掘削を開始する。土壌の掘削は、掘削部材70の軸体71の先端に設けられた切削部材72を使用して行うことができる。また、圧縮空気の噴射により、掘削部材70の揺動撹拌、切削部材72の冷却のほか、中空の軸体71内へ土壌が入り込むことを防止する。掘削時、ロッド61の長さが足りなくなった場合には、挟持手段63によるロッド61の回転を止め、ロッド61とライン56とを連結する連結部65を取り外し、連結部65とロッド61との間に延長するロッドを連結することができる。連結した後、ロッドを再び回転させ、引き続き土壌の掘削を行うことができる。
【0043】
本発明では、掘削部材70が入る程度の穴を事前掘削し、その掘削により生じた土砂を他の場所に仮置きしておき、掘削部材70による掘削時に上昇する土砂がその穴からあふれないようにすることもできる。この仮置きした土砂は、バックホウなどを使用して、所定量の酸化鉄粉を添加し、混合した後、埋め戻すことができる。
【0044】
掘削部材70の螺旋状羽根73の外周には、図2に示すような突起部が設けられており、螺旋状羽根73の羽根径に突起部の突出する長さを加えた径の掘削穴81が形成される。したがって、掘削穴81と螺旋状羽根73との間には、突起部の突出する長さ分の隙間が生じており、その隙間を通して、軸体71の先端から噴射させた圧縮空気が部分的に放出される。この圧縮空気は、掘削部材70上部の掘削穴81を通り、大気中へ放散される。本発明では、螺旋状羽根73と掘削穴81とによって形成される空間に噴射させた圧縮空気が滞留することなく、掘削部材70を含む装置の自重を上回らないよう、部分的に放出されるようにすることで、効率的に掘削することができる。
【0045】
所定深さまで土壌を効率的に掘削した後、挟持手段63によるロッド61の回転方向を変え、スラリーの供給があるまで上昇させることなく回転させたままの状態で保持する。本発明では、ロッドの回転を停止しておくこともできる。スラリー供給手段55を起動し、容器53からスラリーの供給を開始する。本発明では、スムーズに掘削部材を上昇させるために、上記のように、ロッド61の回転方向を変えることが好ましい。
【0046】
スラリーが掘削部材70に供給されると、スラリーは、注入管から、矢線に示す周囲の土壌に向けて噴射される。スラリーは、螺旋状羽根73の周囲方向に連続的に噴射され、螺旋状羽根73により土壌と噴射されたスラリーとが撹拌混合される。スラリーの供給と螺旋状羽根73による撹拌混合とを行いつつ、昇降手段64により所定速度でロッド61を上昇させる。こうすることにより、原位置において、排土を伴うことなく、所定深さまでの土壌に酸化鉄粉と焼き石膏とを均一に供給することができる。土壌中に酸化鉄粉と焼き石膏とを均一に分散させるためには、充分に撹拌混合することができるよう、ロッド61の上昇速度を小さくするほうが好ましいが、小さすぎる場合、作業効率が低下するため、例えば、毎分0.05m〜毎分0.3mとすることができる。
【0047】
掘削部材70を地表面80の近くまで上昇させたところで、スラリー供給手段55を停止し、図示しない圧縮空気供給手段による圧縮空気の供給を停止する。掘削部材70をさらに上昇させ、地表面80から掘削部材70が離間した状態となった後に、走行手段60により次の改良すべき位置に移動し、再び上述したようにして掘削、スラリーの供給および噴射、撹拌混合を行うことができる。これまで、ロッド61の上昇時のみ、スラリーを供給することを説明してきたが、これに限らず、掘削時にスラリーを供給し、周囲の土壌に向けて噴射させることもできるし、掘削時と上昇時の両方において、スラリーを供給し、噴射させることもできる。
【0048】
本発明を上述した実施の形態をもって詳細に説明してきたが、本発明の掘削部材は、いかなる大きさ、螺旋状羽根の巻数、突起部の形状、切欠き部の形状、突起部の数、切欠き部の数、注入管の配設位置であってもよい。また、鉄粉または酸化鉄粉、水、焼き石膏の配合比は、土壌の含水比、浄化する土壌の質量、さらにはコストによって適切な値に設定することができる。さらに、ロッドは、掘削時とロッドの上昇時とで逆回転させることが好ましいが、同じ回転方向にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】AMP工法に使用される機械設備を示した図。
【図2】本発明の掘削部材の第1実施形態を示した図。
【図3】本発明の掘削部材の第2実施形態を示した図。
【図4】本発明の掘削部材の第3実施形態を示した図。
【図5】本発明の掘削部材の第4実施形態を示した図。
【図6】本発明の掘削方法および土壌改良方法に使用する装置を示した図。
【符号の説明】
【0050】
1…軸体
2…切削部材
3…螺旋状羽根
4…掘削部材
5…支持手段
6…圧縮空気供給手段
7…注入材供給手段
10…ロッド
11…挟持手段
12…アーム
13…昇降手段
14…走行手段
20…掘削部材
21…軸体
22…切削部材
23…螺旋状羽根
24…突起部
25…先導管
26…先端部
27…フランジ部
28…中空部材
29…中央部
30a、30b…両端部
31…突出部材
32…注入管
40…切欠き部
41…ノズル
50…容器
51…撹拌手段
52…弁
53…容器
54…撹拌手段
55…スラリー供給手段
56…ライン
60…走行手段
61…ロッド
62…アーム
63…挟持手段
64…昇降手段
65…連結部
70…掘削部材
71…軸体
72…切削部材
73…螺旋状羽根
80…地表面
81…掘削穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の軸体と、前記軸体の先端に設けられる切削部材と、前記軸体に周設される螺旋状羽根と、前記螺旋状羽根の外周に突起部または前記螺旋状羽根に切欠き部とを備える、掘削部材。
【請求項2】
前記軸体は、長さ方向に沿った中央部において径が大きく、かつ両端部において径が小さくなるように形成され、前記螺旋状羽根は、前記両端部から前記中央部に向けて羽根径が大きくなるように形成されており、最大の前記羽根径となる前記羽根の外周に前記突起部または前記最大の羽根径となる羽根に前記切欠き部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の掘削部材。
【請求項3】
前記突起部は、前記掘削部材の掘削時の回転方向に先細とされた形状であることを特徴とする、請求項1または2に記載の掘削部材。
【請求項4】
前記掘削部材は、前記軸体内部と前記切欠き部とを連通するノズルを備え、前記ノズルから圧縮空気を噴射させることを特徴とする、請求項1または2に記載の掘削部材。
【請求項5】
前記螺旋状羽根は、上面および下面に配設される複数の突出部材を備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の掘削部材。
【請求項6】
前記掘削部材は、さらに、少なくとも1つの注入管を備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の掘削部材。
【請求項7】
中空の軸体と、前記軸体の先端に設けられる切削部材と、前記軸体に周設される螺旋状羽根と、前記螺旋状羽根の外周に突起部または前記螺旋状羽根に切欠き部とを備える掘削部材を回転可能かつ昇降可能に支持する支持手段により回転および降下させるとともに、前記軸体の先端から圧縮空気を噴射させる工程と、
噴射させた前記圧縮空気を、前記突起部により形成した前記羽根と掘削穴との間の隙間を通して、または、前記切欠き部を通して放出させる工程とを含む、掘削方法。
【請求項8】
中空の軸体と、前記軸体の先端に設けられる切削部材と、前記軸体に周設される螺旋状羽根と、前記螺旋状羽根の外周に突起部または前記螺旋状羽根に切欠き部と、少なくとも1つの注入管とを備える掘削部材を回転可能かつ昇降可能に支持する支持手段により回転および降下させるとともに、前記軸体の先端から圧縮空気を噴射させる工程と、
噴射させた前記圧縮空気を、前記突起部により形成した前記羽根と掘削穴との間の隙間を通して、または、前記切欠き部を通して放出させる工程と、
前記掘削部材を回転させつつ、前記少なくとも1つの注入管から該掘削部材周囲の前記土壌に向けて、水に、鉄粉または酸化鉄粉と石膏系固化材とを分散させたスラリー、または、圧縮空気または窒素に、前記鉄粉または前記酸化鉄粉と前記石膏系固化材とを分散させたガスを噴射させるステップと、
前記螺旋状羽根の回転により、前記土壌と前記スラリーまたは前記ガスとを混合するステップとを含む、土壌改良方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−45994(P2006−45994A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231203(P2004−231203)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】