説明

掘進機

【課題】 止水区間を掘進するときには、掘進機の後方から延設された配管を通じてチャンバ内に水や泥水を圧送することなく、チャンバ内の水圧を容易に調整することができる掘進機を提供することを課題とする。
【解決手段】 掘進機1であって、カッタ2と、筒体部10と、カッタ2と筒体部10の間に形成されたチャンバ3と、チャンバ3の排土手段であるスクリュコンベヤ4とを備え、筒体部10の前部11と後部12とには、掘削壁面Bに定着可能なフロントサポート11c、メイングリッパ12cが設けられ、後部12には推進ジャッキ15が設けられており、チャンバ3内はカッタ2側の加圧室3bと隔壁11a側の調圧室3cとに分割され、加圧室3bと調圧室3cとの連通部3dが設けられているとともに、調圧室3c内の気圧調整手段が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤内を掘進する掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤内を掘進する掘進機としては、図3に示すように、掘進方向の軸周りに回転可能なカッタ52と、カッタ52の後方に配置され、カッタ52の駆動手段64を有する筒体部60と、カッタ52と筒体部60を閉塞している隔壁53aとの間に形成されたチャンバ53と、チャンバ53内から掘削土砂を排出するためのスクリュコンベヤ54と、チャンバ53内に連通している泥水供給管55と、チャンバ53内から泥水を排出するための排泥管56とを備え、筒体部60は、掘進方向に伸縮自在なスラストジャッキ63によって連結された前部61と後部62とからなり、前部61および後部62には、トンネルの掘削壁面に定着可能なグリッパ61a,62aが各々設けられ、後部62には、掘進方向に伸縮自在な推進ジャッキ65が設けられている掘進機50がある。
【0003】
そして、軟弱な地盤で地下水位を保つ必要がある区間(以下、「止水区間」という。)を前記掘進機50が掘進するときには、泥水供給管55からチャンバ53内に泥水を供給し、チャンバ53内を泥水で満たした状態にする。このとき、チャンバ53内の泥水圧を地下水の水圧と同等あるいは多少高めに調整し、切羽面に圧力を付与することにより、地下水の流出を防いで水位を保つことができる。なお、前記掘進機50を止水区間で前進させるには、掘進機50後方に施工されたセグメントCの前端面に推進ジャッキ65の一端を当接させ、推進ジャッキ65を伸長させることにより掘進機50全体を前方に押し出している。
【0004】
また、硬質な地盤で地下水位に影響を与えない区間(以下、「非止水区間」という。)を掘進するときには、切羽面に圧力を付与する必要がないため、チャンバ53内を泥水で満たす必要がない。そして、前記掘進機50を非止水区間で前進させるには、まず、筒体部60の後部62のメイングリッパ62aをトンネルの掘削壁面に圧着させ、スラストジャッキ63を伸長させて前部61を前方に押し出す。続いて、前部61のフロントグリッパ61aを掘削壁面に圧着させるとともに、後部62のメイングリッパ62aの圧着を解除し、スラストジャッキ63を縮退させることにより後部62を前方に引き寄せて、掘進機50全体を前進させている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このように、前記掘進機50では、止水区間においては、セグメントCに推進反力を取って掘進し、非止水区間ではグリッパ61a,62aによって掘削壁面に推進反力を取ることができるため、非止水区間にセグメントCを施工することなく、止水区間および非止水区間を連続して掘進することができる。
【特許文献1】特開平11−002097号公報(段落0019〜0023、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記掘進機50では、止水区間を掘進するときに、チャンバ53内の泥水圧を地下水の水圧と同等あるいは多少高めに保つため、トンネルの基端部に設置した送水ポンプから泥水供給管55を通じて泥水を圧送している。これにより、掘進機50の掘進に伴って泥水供給管55が延長されると、泥水供給管55内の圧力損失による影響が大きくなるため、チャンバ53内の泥水圧を所望の値に調整することが困難となり、地下水の水圧変化に対して早急に対応することができないという問題がある。
また、チャンバ53と送水ポンプとの距離が遠くなるに連れて、送水ポンプの供給圧力を高める必要があるため、高出力の送水ポンプを用いなければチャンバ53内の圧力を保つことができないという問題がある。
さらに、非止水区間を通過して止水区間を掘進する場合には、非止水区間でも泥水供給管55を延長する必要があり、施工コストが増加するとともに、作業が煩雑になってしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、非止水区間にセグメントを施工することなく、止水区間および非止水区間を連続して掘進可能な掘進機において、止水区間を掘進するときに、掘進機の後方から延設された配管を通じてチャンバ内に水や泥水を圧送することなく、チャンバ内の水圧を容易に調整することができ、さらに、チャンバ内全体を水や泥水で満たすことなく、従来の掘進機と比べて少ない量の水や泥水によって、切羽面に圧力を付与することができる掘進機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、掘進機であって、掘進方向の軸周りに回転可能なカッタと、カッタの後方に配置され、カッタの駆動手段を有する筒体部と、カッタと筒体部を閉塞している隔壁との間に形成されたチャンバと、チャンバ内から掘削土砂を排出するための排土手段とを備え、筒体部は、掘進方向に伸縮自在な連結部材によって連結された前部と後部とからなり、前部および後部には、地盤の掘削壁面に定着可能な支持手段が各々設けられ、後部には、掘進方向に伸縮自在な推進部材が設けられており、チャンバ内は、区画壁によってカッタ側の加圧室と隔壁側の調圧室とに分割され、区画壁の下部には、加圧室内と調圧室内との連通部が設けられているとともに、調圧室内の気圧を調整する気圧調整手段が設けられていることを特徴としている。
【0009】
本発明の掘進機では、チャンバ内がカッタ側の加圧室と隔壁側の調圧室とに分割されており、加圧室内と調圧室内とを連通させる連通部が区画壁の下部に設けられているとともに、調圧室内の気圧調整手段が設けられている。そして、本発明の掘進機によって止水区間を掘進するときには、加圧室内を水や泥水で満たし、連通部を通じて調圧室内に水や泥水を流入させる。このとき、調圧室内の気圧を調整して、調圧室内の水圧を調整することにより、加圧室内の水圧を調整することができる。
このように、チャンバ内に設けられた調圧室内の気圧を調整することにより、カッタ後方の加圧室内の水圧を調整することができるため、掘進が進行した場合であっても、切羽面に付与する圧力を容易に所望の値に調整することができるとともに、地下水の水圧変化に対して早急に対応することができる。なお、調圧室内の気圧の調整は、例えば、調圧室内の水や泥水と空気層との間にダイヤフラムを設けることにより、調圧室内の気圧を正確に調整することができる。
また、チャンバ内全体を水や泥水で満たす必要がなくなり、泥水をチャンバ内に圧送する必要がないため、従来の掘進機と比べて少ない量の水や泥水によって、切羽面に圧力を付与することができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の掘進機であって、排土手段として、スクリュコンベヤまたはベルトコンベヤが交換可能に設けられていることを特徴としている。
【0011】
このように、本発明の掘進機では、排土手段として、スクリュコンベヤまたはベルトコンベヤが交換可能に設けられており、止水区間を掘進するときには、スクリュコンベヤによってチャンバ内から塑性流動化した掘削土砂を排出することができる。また、非止水区間を掘進するときには、スクリュコンベヤに比べて排土効率が高いベルトコンベヤに交換することにより、チャンバ内から掘削土砂を効率良く排出することができる。そのため、止水区間においては塑性流動化した掘削土砂を確実に排出し、非止水区間においては掘削土砂を効率良く排出しながら、止水区間および非止水区間を連続して掘進することができる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の掘進機であって、排土手段のスクリュコンベヤは、内部に取り込んだ掘削土砂に固化剤を注入する固化剤注入手段を備えていることを特徴としている。
【0013】
このように、本発明の掘進機では、スクリュコンベヤ内に取り込んだ掘削土砂に固化剤を注入する固化剤注入手段を備えており、止水区間を掘進するときには、スクリュコンベヤ内で掘削土砂を適度に固めることができる。ここで、適度な固さとは、掘削土砂がスクリュコンベヤ内に詰まってスクリュの回転を妨げない程度の固さであるとともに、加圧状態のチャンバ内からスクリュコンベヤ内に流入した水や泥水を止水可能な程度の固さである。
そして、スクリュコンベヤ内で掘削土砂を適度に固めることにより、加圧状態のチャンバ内からスクリュコンベヤ内に流入した水や泥水が掘削土砂によって止水されるため、スクリュコンベヤの排出口から水や泥水が噴出してしまうことを防ぐことができる。
また、スクリュコンベヤから排出される掘削土砂が適度な固さになっており、この掘削土砂をベルトコンベヤや運搬台車によって掘削機の後方に搬送することができるため、排土効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非止水区間にセグメントを施工することなく、止水区間および非止水区間を連続して掘進することで施工コストを削減することができる掘進機において、チャンバ内に設けられた調圧室内の気圧を調整することにより、カッタ後方の加圧室内の水圧を調整することができる。これにより、掘進が進行した場合であっても、切羽面に付与する圧力を容易に所望の値に調整することができるとともに、地下水の水圧変化に対して早急に対応することができ、さらに、チャンバ内全体を水や泥水で満たす必要がなく、従来の掘進機と比べて少ない量の水や泥水によって、切羽面に圧力を付与することができるため、施工効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の掘進機を示した図で、止水区間を掘進するときの側断面図である。図2は、本実施形態の掘進機を示した図で、非止水区間を掘進するときの側断面図である。
【0016】
本実施形態の掘進機1は、図1および図2に示すように、山岳トンネルの施工に好適に用いられる装置であり、止水区間を掘進させる場合と非止水区間を掘進させる場合とで仕様を変更するように構成されている。本実施形態では、まず、図1に示す止水区間の仕様について説明し、その後、図2に示す非止水区間の仕様について説明する。
【0017】
止水区間を掘進させるときの掘進機1は、図1に示すように、掘進方向の軸周りに回転可能なカッタ2と、カッタ2の後方に配置された円筒状の筒体部10と、カッタ2と筒体部10を閉塞している隔壁11aとの間に形成されたチャンバ3と、チャンバ3内から掘削土砂を排出するための排土手段であるスクリュコンベヤ4とを備えている。
【0018】
この掘進機1では、カッタ2を掘進方向の軸周りに回転させ、カッタ2の前面に設けられた各ビット2a・・・によって切羽面Aを掘削することができ、その掘削土砂をカッタ2の後面に設けられたバケット2bに取り込み、このバケット2bからチャンバ3内に投入された掘削土砂をスクリュコンベヤ4によって排出するように構成されている。
【0019】
筒体部10は、掘進方向に伸縮自在なスラストジャッキ13によって連結された前部11と後部12とから構成され、前部11の後端部に後部12の前端部が内嵌されており、スラストジャッキ13を伸縮させることにより、前部11および後部12が前後に移動し、筒体部10が掘進方向に伸縮するように構成されている。
【0020】
前部11は、その内部に配置された隔壁11aによって閉塞されており、外周壁11bの前端部は隔壁11aから前方に突出し、カッタ2の後面近傍まで延長されている。
また、隔壁11aの後面には、カッタ2を回転駆動させるための駆動モータおよび減速機からなる駆動手段14が取り付けられており、この駆動手段14の駆動力によってカッタ2の後面に設けられたリングギヤ(図示せず)を回転させることにより、カッタ2が掘削方向の軸周りに回転するように構成されている。
さらに、隔壁11aの後面には、スラストジャッキ13の前端部が取り付けられている。
また、隔壁11aの前面には、外周壁11bから外側に突出してトンネル(地盤)の掘削壁面Bに圧着可能なフロントサポート11c(請求項における「支持手段」)が設けられている。
【0021】
後部12は、その内部に配置された垂直壁12aによって閉塞されており、外周壁12bの前端部は垂直壁12aから前方に突出して前部11の後端部に内嵌されている。そして、前部11の外周壁11bと後部12の外周壁12bとは摺動可能となっている。
また、垂直壁12aの前面には、スラストジャッキ13の後端部が取り付けられている。
後部12の後端部には、掘進方向に伸縮自在なロッド15aを有する推進ジャッキ15の基部15bが取り付けられており、ロッド15aの先端部に取り付けられた支圧板15cが、掘進機1の後方に施工されたセグメントCの前端面に当接するように配置されている。なお、推進ジャッキ15は、後部12の外周に沿って等間隔に複数台が取り付けられている。
さらに、後部12の後端部には、セグメントCを掘削壁面Bに取り付けるためのエレクタ16が設けられている。
また、垂直壁12aの後方には、外周壁12bから外側に突出してトンネルの掘削壁面Bに圧着可能なメイングリッパ12c(請求項における「支持手段」)が設けられている。
【0022】
チャンバ3は、その内部に設けられた区画壁3aによって、カッタ2側の加圧室3bと隔壁11a側の調圧室3cとに分割されており、区画壁3aの下端部には、加圧室3b内と調圧室3c内との連通部3dが設けられている。
また、加圧室3b内には、掘削土砂の塑性流動化を促進させる加泥材を注入する加泥材注入手段(図示せず)が設けられている。ここで、加泥材としては、例えば、セルロース系増粘材やポリアクリルアマイド系の凝集材を用いることができる。
さらに、調圧室3c内には、後部12内に設けられたコンプレッサからなる気圧調整手段(図示せず)の給排気口が連通しており、この気圧調整手段から圧縮空気を送り込むことにより、調圧室3c内の気圧を高くすることができ、気圧調整手段の排気口を通じて空気を排出することにより、調圧室3cの気圧を低くすることができる。
【0023】
スクリュコンベヤ4は、螺旋状の羽根を有するスクリュ4aが円筒状の胴体部4b内で軸周りに回転することにより、前端部の取込口4cから後端部の排出口4dに掘削土砂を搬送する排土手段である。このスクリュコンベヤ4では、掘削土砂を適度な固さにするための固化剤を注入する固化剤注入手段(図示せず)が胴体部4bの中間部に設けられている。なお、適度な固さとは、掘削土砂がスクリュコンベヤ4内に詰まってスクリュ4aの回転を妨げない程度の固さであるとともに、チャンバ3内からスクリュコンベヤ4内に流入した水や泥水を止水可能な程度の固さである。
ここで、固化剤としては、例えば、チャンバ3内に注入した加泥材がセルロース系増粘材である場合には、アルカリ性ボラックスやポリリン酸であり、加泥材がポリアクリルアマイド系の凝集材である場合には、PAC(ポリ塩化アルミニウム)や酢酸等の酸性物質を用いることができる。
【0024】
このスクリュコンベヤ4は、取込口4cから排出口4dに向けて斜め上方に配置されており、取込口4cがチャンバ3の加圧室3b内に配置され、区画壁3aの連通部3d、隔壁11aおよび垂直壁12aの開口部を通過して、排出口4dが筒体部10の後方に配置されている。また、排出口4dの下方には、掘削土砂を運搬するトラック等の待機場所まで延設された坑内用ベルトコンベヤ17の前端部が配置されている。
【0025】
次に、非止水区間を掘進させるときの掘進機1について説明する。
掘進機1を非止水区間で掘進させるときには、図2に示すように、前記掘進機1のスクリュコンベヤ4(図1参照)を取込用ベルトコンベヤ5に交換し、連通部3dを蓋等によって閉塞することにより、その仕様を変更することができる。
【0026】
非止水区間を掘進させるときの掘進機1において、取込用ベルトコンベヤ5の前端部5aはカッタ2の後面の略中央部近傍に配置され、後端部5bは、区画壁3a、隔壁11aおよび垂直壁12aの開口部を通過して筒体部10の後部12内に配置されている。また、取込用ベルトコンベヤ5の前端部5aには、カッタ2のバケット2bから掘削土砂が投入されるホッパシュート5cが取り付けられており、このホッパシュート5cを介して、取込用ベルトコンベヤ5の前端部に掘削土砂が載置される。さらに、取込用ベルトコンベヤ5の後端部5bの下方には坑内用ベルトコンベヤ17の前端部が配置されている。
【0027】
なお、区画壁3a、隔壁11aおよび垂直壁12aには、スクリュコンベヤ4または取込用ベルトコンベヤ5を通過させるための開口部が設けられており、スクリュコンベヤ4と取込用ベルトコンベヤ5とを交換したときには、使用されない開口部は蓋等により閉塞されている。
【0028】
次に、前記掘進機1を用いて止水区間および非止水区間を掘削する手順について説明する。
まず、掘進機1を止水区間で掘進させるときには、図1に示すように、排土手段としてスクリュコンベヤ4を取り付けた後に、カッタ2の前面が切羽面Aに当接するように掘進機1を配置する。
【0029】
また、切羽面Aからカッタ2を通じてチャンバ3内に流入した泥水によって加圧室3b内を満たすとともに、連通部3dを通じて調圧室3c内に泥水を流入させる。そして、後部12の気圧調整手段(図示せず)によって、調圧室3c内の気圧を調整することにより、調圧室3c内の泥水位を調整する。なお、調圧室3c内の泥水と空気層との間にダイヤフラム3eを設けることにより、調圧室3c内の気圧を正確に調整することができる。
このとき、調圧室3c内の気圧を高くして、調圧室3c内の泥水圧を高くすれば、加圧室3b内の泥水圧が高くなり、調圧室3c内の気圧を低くして、調圧室3c内の泥水圧を低くすれば、加圧室3b内の泥水圧が低くなる。すなわち、調圧室3c内の気圧を調整することにより、加圧室3b内の泥水圧を調整することができる。
そして、加圧室3b内の泥水圧を地下水の水圧と同等あるいは多少高めに調整し、カッタ2から切羽面Aに圧力を付与することにより、地下水の流出を防ぐことができ、止水区間における地下水の水位を保つことができる。
【0030】
その後、カッタ2を駆動手段14の駆動力によって回転させ、各ビット2a・・・によって切羽面Aを掘削する。
切羽面Aの掘削によりカッタ2のバケット2bに取り込まれた掘削土砂は、バケット2bからチャンバ3内に投入される。このとき、チャンバ3内では、加泥材注入手段(図示せず)から加泥材が注入され、掘削土砂の塑性流動化が促進される。
【0031】
さらに、掘削土砂はスクリュコンベヤ4の取込口4cから取り込まれる。このとき、掘削土砂は塑性流動化されているため、スクリュコンベヤ4のスクリュ4aに付着することなく円滑に搬送され、スクリュコンベヤ4の中間部では、固化剤注入手段(図示せず)から注入された固化剤によって適度に固まる。これにより、加圧状態の加圧室3b内からスクリュコンベヤ4内に流入した泥水が、固化した掘削土砂によって止水されるため、スクリュコンベヤ4の排出口4dから泥水が噴出することがない。
また、スクリュコンベヤ4から排出された掘削土砂は適度な固さになっているため、この掘削土砂を坑内用ベルトコンベヤ17によって搬送することができる。
【0032】
一方、掘進機1の後方では、地盤の崩落や、トンネル内への漏水を防ぐために、エレクタ16を用いて掘削壁面BにセグメントCを配置し、セグメントCと掘削壁面Bとの間に裏込注入を行う。
そして、掘進機1を前進させるときには、掘進機1の後方に施工されたセグメントCの前端面に推進ジャッキ15の支圧板15cを当接させ、ロッド15aを伸長させることにより掘進機1全体をセグメントC一枚分の距離だけ前方に押し出す。その後、ロッド15aを縮退させ、支圧板15cと既設のセグメントCとの間に新たなセグメントCを施工する。
【0033】
次に、非止水区間を掘進するときには、スクリュコンベヤ4を取り外して、図2に示すように、取込用ベルトコンベヤ5を取り付ける。なお、非止水区間では、切羽面Aに圧力を付与する必要がないため、チャンバ3の加圧室3b内を泥水で満たす必要がない。
【0034】
そして、切羽面Aの掘削によりカッタ2のバケット2bに取り込まれた掘削土砂は、バケット2bからホッパシュート5c内に投入され、取込用ベルトコンベヤ5によって排出される。さらに、取込用ベルトコンベヤ5の後端部5bから坑内用ベルトコンベヤ17に投入されて掘削機1の後方に搬送される。
一方、掘進機1の後方では、地盤の崩落を防ぐために支保工Hが順次に施工される。
【0035】
掘進機1を非止水区間で前進させるには、まず、筒体部10の後部12のメイングリッパ12cをトンネルの掘削壁面Bに圧着させ、スラストジャッキ13を伸長させて前部11を前方に押し出す。続いて、前部11のフロントサポート11cを掘削壁面Bに圧着させるとともに、後部12のメイングリッパ12cの圧着を解除し、スラストジャッキ13を縮退させることにより後部12を前方に引き寄せて、掘進機1全体を前進させることができる。
【0036】
このように、本実施形態の掘進機1では、図1および図2に示すように、止水区間においては、セグメントCに推進反力を取って掘進し、非止水区間ではフロントサポート11cおよびメイングリッパ12cによって掘削壁面Bに推進反力を取ることができるため、非止水区間にセグメントCを施工することなく、止水区間および非止水区間を連続して掘進することができ、施工コストを削減することができる。
【0037】
また、調圧室3c内の気圧を調整することにより、カッタ2後方の加圧室3b内の泥水圧を調整することができるため、掘進が進行した場合であっても、切羽面Aに付与する圧力を容易に所望の値に調整することができるとともに、地下水の水圧変化に対して早急に対応することができ、施工効率を高めることができる。
さらに、チャンバ3内全体を水や泥水で満たす必要がなく、従来の掘進機と比べて少ない量の水や泥水によって、切羽面Aに圧力を付与することができるため、施工効率を高めることができる。
【0038】
また、チャンバ3の排土手段として、スクリュコンベヤ4または取込用ベルトコンベヤ5が交換可能に設けられており、止水区間を掘進するときには、スクリュコンベヤ4によって塑性流動化した掘削土砂を排出することができる。そして、非止水区間を掘進するときには、スクリュコンベヤ4に比べて排土効率が高い取込用ベルトコンベヤ5に交換することにより、掘削土砂を効率良く排出することができる。そのため、止水区間においては塑性流動化した掘削土砂を確実に排出し、非止水区間においては掘削土砂を効率良く排出しながら、止水区間および非止水区間を連続して掘進することができる。
【0039】
また、スクリュコンベヤ4の固化剤注入手段(図示せず)によって、スクリュコンベヤ4内で掘削土砂を適度に固めることができ、加圧状態のチャンバ3内からスクリュコンベヤ4内に流入した泥水が掘削土砂によって止水されるため、スクリュコンベヤ4の排出口4dから泥水が噴出してしまうことを防ぐことができる。さらに、スクリュコンベヤ4から排出される掘削土砂が適度な固さになっているため、この掘削土砂を坑内用ベルトコンベヤによって搬送することができ、排土効率を高めることができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態には限定されない。例えば、本実施形態では、切羽面Aからチャンバ3内に流入した泥水によって加圧室3b内を満たしているが、チャンバ3内に泥水や水を供給する給水手段を設けてもよい。なお、加圧室3b内の水圧は、調圧室3c内の気圧によって調整されるため、給水手段は泥水や水を圧送する必要がなく、簡易な構成にすることができる。
【0041】
また、スクリュコンベヤ4または取込用ベルトコンベヤ5から排出された掘削土砂を坑内用ベルトコンベヤ17によって搬送しているが、掘削土砂を効率良く搬送することができるのであれば、その構成は限定されるものではなく、運搬台車や連続ベルトコンベヤ等を用いて搬送してもよい。
【0042】
さらに、あらかじめ止水区間の位置を把握している場合には、非止水区間を掘進している掘進機1が止水区間に到達する前に、掘進機1の後方にセグメントCを施工し、セグメントCに推進反力を取った状態で、止水区間に進入するように構成してもよい。なお、止水区間の位置を把握していない場合には、切羽面A前方のボーリング探査を行うことにより、止水区間を把握することができる。
【0043】
また、非止水区間を掘進しているときに、突発的に止水区間を掘進する場合には、吹付コンクリートやロックボルト等により支保工を補強し、この支保工に推進反力を取って掘進させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施形態の掘進機を示した図で、止水区間を掘進するときの側断面図である。
【図2】本実施形態の掘進機を示した図で、非止水区間を掘進するときの側断面図である。
【図3】従来の掘進機を示した側断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 掘進機
2 カッタ
3 チャンバ
3a 区画壁
3b 加圧室
3c 調圧室
3d 連通部
4 スクリュコンベヤ
5 取込用ベルトコンベヤ
10 筒体部
11 前部
11a 隔壁
12 後部
12c メイングリッパ
13 スラストジャッキ
14 駆動手段
15 推進ジャッキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘進方向の軸周りに回転可能なカッタと、
前記カッタの後方に配置され、前記カッタの駆動手段を有する筒体部と、
前記カッタと前記筒体部を閉塞している隔壁との間に形成されたチャンバと、
前記チャンバ内から掘削土砂を排出するための排土手段と、を備え、
前記筒体部は、掘進方向に伸縮自在な連結部材によって連結された前部と後部とからなり、前記前部および前記後部には、地盤の掘削壁面に定着可能な支持手段が各々設けられ、前記後部には、掘進方向に伸縮自在な推進部材が設けられており、
前記チャンバ内は、区画壁によってカッタ側の加圧室と隔壁側の調圧室とに分割され、前記区画壁の下部には、前記加圧室内と前記調圧室内との連通部が設けられているとともに、前記調圧室内の気圧を調整する気圧調整手段が設けられていることを特徴とする掘進機。
【請求項2】
前記排土手段として、スクリュコンベヤまたはベルトコンベヤが交換可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の掘進機。
【請求項3】
前記排土手段のスクリュコンベヤは、内部に取り込んだ掘削土砂に固化剤を注入する固化剤注入手段を備えていることを特徴とする請求項2に記載の掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−249670(P2006−249670A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63600(P2005−63600)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】