説明

接着剤塗布装置およびこれを用いた床材の製造方法

【課題】 基材への接着剤の塗布を均一に行うことができる接着剤塗布装置を提供する。
【解決手段】 板状の基材を搬送する送りロール301と、送りロール301との間に基材を挟持する塗布ロール303とを備え、塗布ロール303の表面に供給された接着剤を基材Bの表面に塗布する接着剤塗布装置3であって、塗布ロール303は、少なくとも表面がフッ素樹脂により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤塗布装置およびこれを用いた床材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅内装用の建具、造作材等には、装飾用に化粧シートを貼り付けた部材を使用することが多い(例えば、特許文献1)。
【0003】
最近では、上記のような化粧シートを、床材として使用することが提案されている。化粧シートを床材として使用する場合、建具、造作材等に使用するのに比べて強度が必要なことから、建具、造作材等用途より硬質な化粧シートとなっている。そして、この化粧シートを接着剤が塗布された基材に貼り付けることで、床材を形成している。
【特許文献1】特開平11−48422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基材に接着剤を塗布する方法として、塗布ロールの表面に接着剤を供給し、この接着剤を送りロールによって搬送される基材の表面に転写する方法が従来から知られている。塗布ロールは、一般にはシリコンゴムなどのゴムロールが用いられるが、基材への接着剤の塗り目が荒れやすく、後工程で基材と化粧シートとをラミネートする際に、基材と化粧シートとの間に気泡を抱き込み易いという問題があった。
【0005】
また、接着剤として湿気硬化型の接着剤を使用する場合には、シリコンゴムの内部に接着剤の低分子量成分が浸透して再結晶化や硬化等の現象が生じ、ゴムロールにフクレを生じるおそれがあり、耐久性の面でも問題があった。
更に、床材の製造後に塗布ロールを洗浄する場合に、従来の製造ロールは洗浄に時間がかかっており、生産効率を向上させる観点からも更に改良の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、基材への接着剤の塗布を均一に行うことができる接着剤塗布装置の提供を目的とし、更に、高品質の床材を効率よく製造することができる床材の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、板状の基材を搬送する送りロールと、前記送りロールとの間に前記基材を挟持する塗布ロールとを備え、前記塗布ロールの表面に供給された接着剤を前記基材の表面に塗布する接着剤塗布装置であって、前記塗布ロールは、少なくとも表面がフッ素樹脂により形成されていることを特徴とする接着剤塗布装置により達成される。
【0008】
また、本発明の前記目的は、木材からなる板状の基材の表面に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、接着剤が塗布された前記基材に化粧シートをラミネートするラミネート工程とを備える床材の製造方法であって、前記接着剤塗布工程は、前記接着剤塗布装置を用いて行われる床材の製造方法により達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基材への接着剤の塗布を均一に行うことができる接着剤塗布装置を提供することができ、更に、高品質の床材を効率よく製造することができる床材の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】

以下、本発明に係る床材の製造方法の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は床材の概略構成を示す断面図、図2は本実施形態で用いられる床材の製造ラインである。
【0011】
まず、本実施形態で製造される床材の一例について説明する。図1に示すように、この床材は、化粧シートAと基材Bとを接着剤Cを介してラミネートしたものである。化粧シートAは、従来から使用されているシートより剛性が高い化粧シートであり、厚さが約150μmで、次のように形成されている。すなわち、基本色が着色されたポリエチレンフィルム上にべた印刷部を介して印刷層(模様)が形成され、さらにこの印刷層上にプライマー、接着剤及びポリプロピレンフィルムを介してEB硬化型樹脂シートが形成されている。このEB硬化型樹脂シートの表面には、エンボス加工がなされている。また、この化粧シートAが貼り付けられる基材Bは、木材からなり、例えば木質繊維板、合板等で構成されている。
【0012】
次に、本実施形態に係る床材の製造ラインについて図2を参照しつつ説明する。この製造ラインは、木材からなる基材Bに、接着剤Cを介して化粧シートAをラミネートするためのものである。図2に示すように、この製造ラインは、上流から下流(同図の右側から左側)に向かって配置された表面処理装置1、接着剤塗布装置3、ラミネート装置5、及び押圧装置7を備えている。表面処理装置1は、基材の表面処理を行うものであり、その上流側及び下流側に基材Bを搬送する第1及び第2のコンベア91,92が配置されている。また、第2のコンベア92の上方には、後に詳述する接着剤塗布装置3に供給される基材Bを予熱するための加熱ヒータ921(例えば、短波長ヒータ)が設けられている。尚、本実施形態において、表面処理装置1は必ずしも必要ではなく、これを設けない構成にすることも可能である。
【0013】
図3に示すように、接着剤塗布装置3は、基材Bを矢示の搬送方向に沿って搬送する送りロール301と、送りロール301と対向するように上方に配置された塗布ロール303と、塗布ロール303と隣接するように配置されたドクターロール305とを備えており、送りロール301と塗布ロール303との間に基材Bを挟持可能に構成されている。塗布ロール303への接着剤の供給は、塗布ロール303とドクターロール305との間に接着剤307を貯留することによって行うことができ、塗布ロール303の表面に供給された接着剤は、塗布ロール303の回転によって基材Bの表面に転写される。ドクターロール305は、塗布ロール303に接着剤を供給可能であれば、非回転体など他の部材に置き換えることも可能であり、更にはドクターロール305を設けない構成にすることも可能である。
【0014】
塗布ロール303は、鉄芯にシリコンゴムなどの汎用ゴムが装着されたゴムロールに対して、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などのフッ素樹脂(例えば「テフロン」(登録商標)と称される)からなるシュリンクチューブを接着被覆することにより形成されている。一方、送りロール301及びドクターロール305は、金属ロールなどから構成することができる。塗布ロール303は、少なくとも表面がフッ素樹脂からなるものであれば上記構成に限定されるものではなく、例えば、ロールの表面にフッ素樹脂をコーティングしたり、フッ素樹脂シートを巻回することによって、塗布ロール303を形成することもできる。
【0015】
塗布ロール303に供給される接着剤としては、ホットメルト系接着剤を例示することができるが、他の水性接着剤に比べて初期タック力が強いPUR(Poly Urethane Reactive)型ホットメルト接着剤などの湿気硬化型接着剤を使用することが特に好ましい。また、ここで使用される接着剤は、製造コストを低減するという観点から低粘度のものが用いられ、例えば粘度が8000mPas以下の接着剤を用いることが好ましく、6500mPas以下の接着剤を用いることがさらに好ましく、5000mPas以下にすると特に好ましい。接着剤塗布装置3の下流側には、第3コンベア93が配設されており、接着剤が塗布された基材Bは、このコンベア93によってラミネート装置5へ搬送される。
【0016】
ラミネート装置5は、基材Bと化粧シートAとをラミネートする装置である。図3に示すように、ラミネート装置5は、化粧シートAがコイル状に巻かれた給紙ロール501を備えており、給紙ロール501から繰り出された化粧シートAは、テンションロール502,502を介して、搬送される基材Bの接着剤塗布面に供給される。一対の押圧ロール503,504は、化粧シートA及び基材Bを挟持して貼り合わせる。こうして、化粧シートAがラミネートされた基材Bは、押圧装置7に搬送される。
【0017】
図4は押圧装置7の側面図である。同図に示すように、この押圧装置7は、上下方向に並ぶ一対のローラ71,72で構成されている。下側に配置されたローラ72は軸受けに巻回されたベルト73を介してモータ74と接続されており、駆動ローラを構成している。一方、上側に配置されたローラ71は従動ローラを構成している。この従動ローラ71の軸受けにはプレス機75が設けられており、このプレス機75によって従動ローラ71が駆動ローラ72に押しつけられている。そして、このように構成された両ローラ71,72の間を床材Sが通過する。
【0018】
次に、上記のように構成された製造ラインによる床材の製造工程について説明する。まず、第1コンベア91によって基材Bを一枚ずつ表面処理装置1へ搬送する。表面処理装置1において平滑化された基材Bは、第2コンベア92によって搬送され、加熱ヒータ921で予熱された後、接着剤塗布装置3に供給される。接着剤塗布装置3では、塗布ロール303によって基材Bの上面に接着剤が塗布される。本実施形態においては、塗布ロール303の表面がフッ素樹脂からなるため、以下の効果を奏する。すなわち、基材Bの表面への均一な塗布が可能になり、従来のゴムロールに比べて基材Bへの塗りムラを低減することができると共に、塗り目を細かくすることができる。また、接着剤としてPUR(Poly Urethane Reactive)型ホットメルト接着剤などの湿気硬化型接着剤を使用する場合、従来のシリコンゴムロールなどの場合に生じていたロール内部への接着剤の浸透を遅らせることができ、塗布ロール303の耐久性を向上させることができる。更に、従来の塗布ロールに比べて洗浄を容易に行うことができるので、洗浄時間の短縮により生産効率を向上させることができる。
【0019】
また、接着剤が塗布される基材Bの表面は、表面処理装置1により平滑化されて凹凸が均されているため、凹部に接着剤が入り込む等して余分な接着剤が使用されるのを防止することができる。なお、基材Bの表面に塗布される接着剤は、15〜100g/mであることが好ましい。これは、15g/mより小さいと、十分な接着力を得ることができず、100g/mよりも大きいと製造コストが大きくなるからである。
【0020】
続いて、接着剤が塗布された基材Bは、第3コンベア93によって搬送され、ラミネート装置5に供給される。ラミネート装置5は、基材Bに化粧シートAをラミネートして床材を形成し、押圧装置7へ搬送する。図4に示す押圧装置7における両ローラ71,72の間に床材Sが進入すると、この床材Sは駆動ローラ72の回転によって前進し、両ローラ71,72の間を押圧されながら通過する。このように、床材Sの表面を押圧すると、接着剤が基材Bに浸透するため、化粧シートAと基材Bとを強固に固着することができる。
【0021】
以上の工程を経ることによって床材が完成する。なお、ローラ71,72によって床材Sを押圧する圧力は、線圧で20〜80kg/cmであることが好ましい。これは、20kg/cmより小さいと接着力が不十分であり、80kg/cmより大きいと基材Bが破壊されるおそれがあるからである。
【0022】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、接着剤としてPUR型ホットメルト接着剤を挙げているが、これ以外のものを使用することもできる。
【0023】
さらに、上記実施形態では、木材からなる基材に対して上記装置を用いているが、木材以外、例えば金属等で形成された基材に対しても本発明を適用することができる。
【0024】
また、上記実施形態では、表面処理装置1による基材表面の押圧時に、押圧板によって基材Bを加熱しているが、加熱は必ずしも必要でなく、押圧のみでも基材表面の平滑化は可能である。但し、より確実な平滑化のためには、基材表面の加熱を行うことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に使用される床材の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る床材の製造ラインの概略平面図である。
【図3】図2の製造ラインにおける接着剤塗布装置及びラミネート装置の側面図である。
【図4】図2の製造ラインにおける押圧装置の側面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 表面処理装置
3 接着剤塗布装置
5 ラミネート装置
7 押圧装置
301 送りロール
303 塗布ロール
305 ドクターロール
A 化粧シート
B 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の基材を搬送する送りロールと、
前記送りロールとの間に前記基材を挟持する塗布ロールとを備え、
前記塗布ロールの表面に供給された接着剤を前記基材の表面に塗布する接着剤塗布装置であって、
前記塗布ロールは、少なくとも表面がフッ素樹脂により形成されていることを特徴とする接着剤塗布装置。
【請求項2】
木材からなる板状の基材の表面に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
接着剤が塗布された前記基材に化粧シートをラミネートするラミネート工程とを備える床材の製造方法であって、
前記接着剤塗布工程は、請求項1に記載された接着剤塗布装置を用いて行われる床材の製造方法。
【請求項3】
接着剤として、湿気硬化型接着剤を用いる請求項2に記載の床材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−90187(P2007−90187A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281192(P2005−281192)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】