説明

接着性付与剤

【課題】 従来のアクリルプラスチゾルは電着塗膜に対する塗装性、耐チッピング性および耐温水性は優れるものの、貯蔵安定性および金属塗装面に対する接着性については満足するものではないことから、塗装性、耐チッピング性および耐温水性に優れ、かつ貯蔵安定性および金属塗装面に対する接着性に優れたアクリルプラスチゾル用の接着性付与剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
ブロック化ポリウレタンおよびビスフェノール化合物の各水酸基当たり1モルのアルキレノキシド付加物を主成分としてなるビスフェノール化合物アルキレンオキシド付加物を含んでなることを特徴とするアクリルプラスチゾル用接着性付与剤;および該接着性付与剤、アクリル重合体および可塑剤を含んでなるアクリルプラスチゾル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着性付与剤に関する。さらに詳しくは、特に自動車の外板に塗装され、車体鋼板の腐食を防止するアクリルプラスチゾル用接着性付与剤並びにそれを用いたアクリルプラスチゾルに関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン電着等による金属塗装面(以下、金属塗装面と略記)に接着性を有するプラスチゾルは従来、塩化ビニルプラスチゾルであった。しかしながら、近年、環境面への配慮から塩化ビニルプラスチゾルからアクリルプラスチゾルへの代替が進んでいる。また、プラスチゾル用の接着性付与剤としては、ブロック化ポリウレタンと含窒素ポリオールとからなるもの(例えば、特許文献1参照)等が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開昭59−78279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の接着性付与剤を用いたアクリルプラスチゾルは金属塗装面に対する塗装性(塗装外観)、耐チッピング性および耐温水性は優れるものの、アクリルプラスチゾルの貯蔵安定性(粘度安定性等)および金属塗装面に対する接着性については充分満足できるものではなかった。本発明の目的は、貯蔵安定性および金属塗装面に対する接着性に優れたアクリルプラスチゾル用の接着性付与剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、ブロック化ポリウレタン(A)およびビスフェノール化合物の各水酸基当たり1モルのアルキレンオキシド付加物(B1)を主成分としてなるビスフェノール化合物アルキレンオキシド付加物(B)を含んでなることを特徴とするアクリルプラスチゾスチゾル用接着性付与剤(C);該接着性付与剤(C)、アクリル重合体(D)および可塑剤(E)を含んでなるアクリルプラスチゾルである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の接着性付与剤を含有させてなるアクリルプラスチゾルは下記の効果を奏する。(1)貯蔵安定性に優れる。
(2)金属塗装面への優れた接着性を有する。
(3)低温または短時間での加熱処理で充分な硬化性を有する。
(4)金属塗装面上のアクリルプラスチゾル塗膜は優れた耐チッピング性を有する。
(5)耐温水性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の接着性付与剤(C)は、ブロック化ポリウレタン(A)およびビスフェノール化合物の各水酸基当たり1モルのアルキレンオキシド(以下AOと略記)付加物(B1)を主成分としてなるビスフェノール化合物AO付加物(B)を含んでなる。
【0008】
[ブロック化ポリウレタン(A)]
本発明におけるブロック化ポリウレタン(A)には、有機ポリ(2価〜4価またはそれ以上)イソシアネート(a1)とポリオール(a2)との反応で得られるウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基がブロック剤(a3)でブロック化された化合物が含まれる。
【0009】
(a1)としては、例えば下記のもの、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。(1)炭素数(以下Cと略記)(NCO基中のCを除く、以下同じ)6〜20の芳香族ポリイソシアネート(ポリイソシアネートは以下PIと略記)
ジイソシアネート(以下、DIと略記)、例えば1,3−および/または1,4−フェニレンDI、2,4−および/または2,6−トリレンDI(以下、TDIと略記)、4, 4’−および/または2,4’−ジフェニルメタンDI(以下、MDIと略記)、m−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニ ル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンDI、およびm−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート;および3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えば粗製TDI、粗製MDI(ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート)および4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート
【0010】
(2)C2〜18の脂肪族PI
DI、例えばエチレンDI、テトラメチレンDI、ヘキサメチレンDI(HDI)、ヘプタメチレンDI、オクタメチレンDI、デカメチレンDI、ドデカメチレンDI、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンDI、リジンDI、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、2,6−ジイソシアナトエチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネートおよびトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI);および3官能以上のポリイソシアネート(トリイソシアネート等)、例えば1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネートおよびリジンエステルトリイソシアネート(リジンとアルカノールアミンとの反応生成物のホスゲン化物、例えば2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、2−および/または3−イソシアナトプロピル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート)
【0011】
(3)C4〜45の脂環式PI
DI、例えばイソホロンDI(以下、IPDIと略記)、2,4−および/または2,6−メチルシクロヘキサンDI(水添TDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−DI(水添MDI)、シクロヘキシレンDI、メチルシクロヘキシレンDI、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレートおよび2,5−および/または2,6−ノルボルナンDI、ダイマー酸DI(DDI);および3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えばビシクロヘプタントリイソシアネート
(4)C8〜15の芳香脂肪族PI
m−および/またはp−キシリレンDI(XDI)、ジエチルベンゼンDIおよびα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンDI(TMXDI)
【0012】
これらのうちでアクリルプラスチゾルの接着性の観点から好ましいのは芳香族PI、さらに好ましいのはTDIおよびMDIである。
【0013】
ポリオール(a2)としては、水酸基当量(水酸基1個当りの分子量)が31〜3,000の、2価〜6価またはそれ以上のポリオール、例えば水酸基当量31〜250未満の低分子ポリオール、水酸基当量250〜3,000の高分子ポリオール(ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール等)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
これらのうちアクリルプラスチゾルの粘度および塗膜物性の観点から好ましいのは高分子ポリオール、さらに好ましいのはポリエステルポリオール、および特に好ましいのはポリエーテルポリオールである。
【0014】
低分子ポリオールには、多価アルコール、並びに低分子OH末端ポリマー (ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオール)が含まれる。多価アルコールには、以下のものが含まれる。
2価アルコール(C2〜20またはそれ以上)、例えばC2〜12の脂肪族2価アルコール[(ジ)アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−、2,3−、1,3−および1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよび3−メチルペンタンジオール(以下、それぞれEG、DEG、PG、DPG、BD、HD、NPGおよびMPDと略記)、ドデカンジオール];C6〜10の脂環式2価アルコール[1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等];C8〜20の芳香脂肪族2価アルコール[キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等];
【0015】
3価〜8価またはそれ以上の多価アルコール、例えば(シクロ)アルカンポリオールおよびそれらの分子内もしくは分子間脱水物[グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールおよびジペンタエリスリトール(以下それぞれGR、TMP、PE、SOおよびDPEと略記)、1,2,6−ヘキサントリオール、エリスリトール、シクロヘキサントリオール、マンニトール、キシリトール、ソルビタン、ジグリセリンその他のポリグリセリン等]、糖類およびその誘導体[例えばショ糖、グルコース、フラクトース、マンノース、ラクトース、およびグルコシド(メチルグルコシド等)];
【0016】
含窒素ポリオール(3級アミノ基含有ポリオールおよび4級アンモニウム基含有ポリオール):含窒素ジオール、例えばC1〜12の脂肪族、脂環式および芳香族1級モノアミン[メチルアミン、エチルアミン、1−および2−プロピルアミン、(イソ)アミルアミン、ヘキシルアミン、1,3−ジメチルブチルアミン、3,3−ジメチルブチルアミン、1−,2−および3−アミノヘプタン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、シクロプロピルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、ベンジルアミン等]のビスヒドロキシアルキル(C2〜4)化物[ビス(2−ヒドロキシエチル)化物、ビス(ヒドロキシプロピル)化物等、例えば米国特許第4,271,217号明細書に記載の3級窒素原子含有ポリオール]、およびそれらの4級化物[上記米国特許明細書に記載の4級化剤またはジアルキルカーボネートによる4級化物]、例えば上記米国特許明細書に記載の4級窒素原子含有ポリオール;および3価〜8価またはそれ以上の含窒素ポリオール、例えばトリアルカノール(C2〜4)アミン(トリエタノールアミン等)およびC2〜12の脂肪族、脂環式、芳香族および複素環ポリアミン[例えばエチレンジアミン、トリレンジアミン、アミノエチルピペラジン]のポリヒドロキシアルキル(C2〜4)化物[ポリ(2−ヒドロキシエチル)化物、ビス(ヒドロキシプロピル)化物等:例えばテトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミンおよびペンタキス(2−ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン]、およびこれらの上記と同様の4級化物;
【0017】
スルホ基含有ポリオール:上記2価および3価〜8価またはそれ以上の多価アルコールにスルホ基を導入してなるもの、例えばスルホグリセリン、スルホエリスリトール、スルホジ(ヒドロキシメチル)ベンゼン、スルホジ(ヒドロキシエチル)ベンゼン、スルホジ(ヒドロキシプロピル)ベンゼン、スルホヒドロキシメチルヒドロキシエチルベンゼン、およびそれらの塩〔金属塩[アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)塩、IIB族金属(亜鉛等)塩等]、アンモニウム塩、アミン(C1〜20)塩および4級アンモニウム塩等]。
【0018】
低分子OH末端ポリマーには、後述のような、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリウレタンポリオールで250未満のOH当量を有するものが含まれる。例えば低重合度のAO開環重合物および活性水素原子含有多官能化合物の低モルAO付加物[例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼンおよびビスフェノールAのEO2〜4モル付加物]、低縮合度の縮合ポリエステルポリオールおよびポリオールの低モルラクトン付加物[ポリカルボン酸と過剰(カルボキシル基1個当り1モル)の多価アルコールとの縮合物(例えばジヒドロキシエチルアジペート)およびEGのカプロラクトン1モル付加物]、並びに低重合度のポリウレタンポリオール[過剰(イソシアネート基1個当り1モル)の多価アルコールとの反応生成物(例えばTDI 1モルとEG2モルとの反応生成物)]が挙げられる。
【0019】
高分子ポリオールのうち、ポリエーテルポリオールとしては、例えば低分子ポリオール(上記のものおよびそれらの混合物)のAO付加物、テトラヒドロフランの開環重合で得られるポリオキシテトラメチレングリコールが挙げられる。これらのうちで好ましいのは低分子ポリオールのAO付加物およびポリオキシテトラメチレングリコールである。
【0020】
低分子ポリオールに付加させるAOには、C2〜12またはそれ以上(好ましくはC2〜4)のAO、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−、1,3−および2,3−ブチレンオキシド、テトラヒドロフランおよび3−メチル−テトラヒドロフラン(以下それぞれEO、PO、BO、THFおよびMTHFと略記)、1,3−プロピレンオキシド、イソBO、C5〜12のα−オレフィンオキシド、置換AO、例えばスチレンオキシドおよびエピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)、並びにこれらの2種以上の併用(ランダム付加および/またはブロック付加)が含まれる。
これらのうちで好ましいのはEO、PO、BO、およびさらに好ましいのはこれらの2種以上の混合物である。
【0021】
ポリエステルポリオールには、縮合ポリエステルポリオール、ポリラクトンポリオールおよびヒマシ油系ポリオールが含まれる。
縮合ポリエステルポリオールは、ポリオール(ジオールおよび必要により3価以上のポリオール)と、ポリカルボン酸(ジカルボン酸および必要により3価以上のポリカルボン酸)もしくはそのエステル形成性誘導体、またはポリカルボン酸無水物およびAOとを反応させることにより製造することができる。
【0022】
ポリオールとしては、低分子ポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールが使用でき、低分子ポリオールには前記のもの、また、ポリエーテルポリオールには、前記のうち500以下の水酸基当量を有するものが含まれる。
ポリカルボン酸としては、ジカルボン酸、およびジカルボン酸と少割合(例えば10当量%以下)の3価〜4価またはそれ以上のポリカルボン酸が使用できる。それらの例としては、C2〜12の脂肪族ポリカルボン酸[ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等)、トリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸等)等]、C8〜15の芳香族ポリカルボン酸[ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等)、トリ−およびテトラ−カルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸等)等]、およびC6〜40の脂環式ポリカルボン酸(ダイマー酸等)が挙げられる。
エステル形成性誘導体には、酸無水物、低級アルキル(C1〜4)エステル、酸ハライド(酸クロライド等)等が含まれる。
ポリカルボン酸のうちでアクリルプラスチゾルの粘度の観点から好ましいのはジカルボン酸、さらに好ましいのは脂肪族ジカルボン酸、とくに好ましいのはアジピン酸である。
【0023】
ポリラクトンポリオールは、ポリオールを開始剤として、ラクトン(C4〜15、例えばε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン)を開環重合させることにより製造できる。
ポリオールとしては、低分子ポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールが使用できる。それらの例としては、前記ジオールおよび/または3価以上のポリオール、および水酸基当量が500以下のポリエーテルポリオールが挙げられる。
ヒマシ油系ポリオールには、ヒマシ油(リシノール酸トリグリセリド)、およびそのエステル交換物が含まれる。該エステル交換物はヒマシ油とポリオールとのエステル交換により得られ、ポリオールとしては、前記の低分子ポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0024】
ポリマーポリオールは、ポリオール[例えば前記高分子ポリオール(ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等)およびこれらと前記低分子ポリオールの混合物]中でビニルモノマー[アクリル系モノマー、例えば(メタ)アクリロニトリル、アルキル(C1〜20)(メタ)アクリレート(メチルメタクリレート等)、芳香族炭化水素モノマー(C8〜20、例えばスチレン)、脂肪族炭化水素モノマー(C2〜20、例えばα−オレフィン、ブタジエン)等およびこれらの2種以上の併用(アクリロニトリルとスチレンとの併用等)]を重合させることにより得られるもの(重合体含量例えば5〜70%)で、例えば特開昭55−118948号公報記載のものが使用できる。
【0025】
ポリカーボネートポリオールには、ポリオールを開始剤とするアルキレンカーボネートの開環付加/重縮合、ポリオールとジフェニルもしくはジアルキルカーボネートの重縮合(エステル交換)、またはポリオールもしくは2価フェノール(ビスフェノールA等)のホスゲン化により得られるものが含まれる。
ポリオールには前記低分子ポリオール(2〜3価のアルコール等)が含まれる。
アルキレンカーボネートには、C2〜6のアルキレン基を有するもの、例えばエチレンおよびプロピレンカーボネートが含まれる。ジアルキルカーボネートには、C1〜4のアルキル基を有するもの、例えばジメチル、ジエチルおよびジ−i−プロピルカーボネートが含まれる。
【0026】
これらのポリオールのうちアクリルプラスチゾルの粘度の観点から好ましいのは、高分子ポリオール、さらに好ましいのは低分子ポリオールのAO付加物およびポリオキシテトラメチレングリコール、特に好ましいのはPGのPO付加物(水酸基当量250〜3,000)、TMPのPO付加物(水酸基当量250〜2,500)および/またはGRのPO付加物(水酸基当量250〜2,500)である。
【0027】
本発明におけるイソシアネート(a1)とポリオール(a2)との反応で得られるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの製造に際して、(a1)のイソシアネート基(NCO基)と(a2)の水酸基(OH基)との反応における当量比(NCO/OH)は接着性付与剤(C)の粘度の観点から好ましくは1.3/1〜3.0/1、さらに好ましくは1.5/1〜2.2/1である。ウレタンプレポリマーの末端基は、両末端ともNCO基か、または片末端がNCO基、他の末端がOH基であり、アクリルプラスチゾルの接着性の観点から好ましいのは両末端ともNCO基の場合である。
【0028】
反応を促進させるために公知のウレタン化触媒を使用することも可能である。該ウレタン化触媒としては、金属触媒[錫系(トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジメチルチンジラウレート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート、ジブチルチンマレエート等)、鉛系(オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、ナフテン酸鉛、オクテン酸鉛等)、コバルト系(ナフテン酸コバルト等)、水銀系(フェニル水銀プロピオン酸塩等)等]、アミン触媒[トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルヘキシレンジアミン、ジアザビシクロアルケン、ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノオクチルアミン、ジプロピルアミノプロピルアミン、2−(1−アジリジニル)エチルアミン,4−(1−ピペリジニル)−2−ヘキシルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、トリエチルアミン、ジエチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミンおよびこれらの有機酸(ギ酸、フェノール等)塩等、並びにこれらの2種以上の併用系が挙げられる。
ウレタン化触媒の使用量は、得られるウレタンプレポリマーの重量に基づいて、通常1%以下、好ましくは0.001〜0.1%である。
【0029】
ウレタンプレポリマーを製造する際の反応温度は、副反応抑制の観点から好ましくは20〜120℃、さらに好ましくは60〜110℃である。反応時間は副反応抑制の観点から好ましくは3〜10時間、さらに好ましくは5〜8時間である。
【0030】
該ウレタンプレポリマーの数平均分子量[以下、Mnと略記、測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による]の好ましい下限は500、さらに好ましくは700、好ましい上限は8,000、さらに好ましくは5,000である。Mnが500以上であると樹脂が軟らかくて耐チッピング性に好ましい影響を与え、8,000以下であるとアクリルプラスチゾル塗料の微粒化(霧化)がより良好となり、塗膜外観(特に平滑性)がより良好となる。
また、該プレポリマーの遊離イソシアネート基含有量[NCO%(固形分換算重量%)]は、アクリルプラスチゾルの接着性の観点から好ましくは1〜20%、さらに好ましくは2〜15%である。NCO%は滴定法か赤外線吸収スペクトル法により測定または確認できる。
【0031】
ブロック剤(a3)としては、ラクタム(C4〜10、例えばε−カプロラクタム、δ−バレロラクタムおよびγ−ブチロラクタム)、オキシム[C3〜10、例えばアセトオキシム、メチルエチルケトオキシム(MEKオキシム)およびメチルイソブチルケトオキシム(MIBKオキシム)]、アミン[C2〜20の2級アミン、例えば脂肪族アミン(ジメチルアミン、ジイソプロピルアミン等)、脂環式アミン(メチルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等)および芳香族アミン(ジフェニルアミン等)]、アルキルフェノール[C7〜20、例えばクレゾール、ノニルフェノール、キシレノールおよびジ−t−ブチルフェノール]、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうちアクリルプラスチゾルの接着性および貯蔵安定性の観点から好ましいのはラクタム、オキシムおよびアミン、さらに好ましいのはラクタム、特に好ましいのはε−カプロラクタムである。
【0032】
ブロック化ポリウレタン(A)は、ウレタンプレポリマー生成反応の任意の段階でブロック剤(a3)を添加して反応させることにより得られる。
添加の方法には、(1)予めポリオール(a1)に全量添加する方法、(2)ウレタンプレポリマー生成反応の初期に全量添加する方法、(3)反応初期もしくは反応途中に一部を添加し、反応終了時に残部を添加する方法および(4)反応終了後に添加する方法が含まれる。これらのうち、反応の再現性の観点から好ましいのは、(4)の方法である。
(a3)の添加量は、(1)〜(3)の方法の場合は、アクリルプラスチゾルの貯蔵安定性の観点から原料ポリイソシアネ−ト(a1)のNCO当量数からポリオ−ル(a2)の水酸基当量数を差し引いたものとほぼ同じ当量使用するのが好ましく、(4)の方法の場合は、ウレタンプレポリマーのNCO基に対して貯蔵安定性の観点から好ましくは1〜2当量、さらに好ましくは1.05〜1.5当量である。
上記(2)〜(4)の方法において(a3)を添加する場合の系内温度は、副反応防止の観点から50〜110℃ が好ましい。上記反応に際し前記ウレタン化触媒を添加して反応を促進することも可能である。ウレタン化触媒の使用量は、ウレタンプレポリマーの重量に基づいて、貯蔵安定性の観点から通常10%以下、好ましくは5%以下である。
また、上記(A)は粘度を調整するために後述の可塑剤を添加してもよい。
【0033】
[ビスフェノール化合物AO付加物(B)]
本発明におけるビスフェノール化合物AO付加物(B)は、ビスフェノール化合物の各水酸基当たり1モルのAO付加物(B1)を主成分としてなるもので、(B)には下記の(B1)〜(B3)が含まれる。ここにおいて主成分とは、(B)の重量に基づく含有量が85%以上であることを意味するものとする。
(B1)ビスフェノール化合物の各水酸基当たり1モルのアルキレンオキシド付加物
(B2)ビスフェノール化合物の、2モル未満のアルキレンオキシド付加物
(B3)ビスフェノール化合物の、2モルを超えるアルキレンオキシド付加物
【0034】
(B)の重量に基づく各成分の含有量は、(B1)は、85%以上、好ましくは92〜100%、さらに好ましくは95〜100%、とくに好ましくは98〜100%;(B2)と(B3)の合計含有量は15%以下、好ましくは0〜8%、さらに好ましくは0〜5%、とくに好ましくは0〜2%;また、(B2)は1%以下が好ましく、さらに好ましくは0〜0.8%、次にさらに好ましくは0〜0.5%、特に好ましくは0〜0.2%;(B3)は、14%以下が好ましく、さらに好ましくは0〜7.2%、次にさらに好ましくは0〜4.5%、特に好ましくは0〜1.8%である。
(B1)の含有量が85%未満では後述する接着性付与剤(C)のプラスチゾルの貯蔵安定性が悪化する。(B2)と(B3)の合計含有量が15%を超えるとプラスチゾルの貯蔵安定性が悪化する。
【0035】
(B)の重量に基づく(B1)〜(B3)の各成分の含有量は、液体クロマトグラフィー(LC)法によって測定し求めることができる。測定条件は次のとおりである。
【0036】
<LC法測定条件>
LCシステム :LC−20AD[(株)島津製作所製]
カラム :CAPCELL PAK C18[(株)資生堂製、内径4.6
mm×長さ250mm]
溶離液 :アセトニトリル/水=30/70(vol%)
流速 :1.0ml/min
検出器 :SPD−M20A[(株)島津製作所製]
検出波長 :275nm
注入量 :2μl
【0037】
(B)を構成するビスフェノール化合物としては、C12〜23(好ましくは12〜19、さらに好ましくは12〜15)、例えばビスフェノールA、−Fおよび−S等が挙げられる。
これらのうち接着性付与剤(C)の硬化性の観点から好ましいのはビスフェノールA、および−Sである。
【0038】
(B)を構成するAOとしては、C2〜12の前記のもの、およびこれらの併用が挙げられる。これらのうち接着性の観点から好ましいのは単一のAOであり、例えばEO単独およびPO単独である。
【0039】
ビスフェノール化合物AO付加物(B)は、ビスフェノール化合物にAOを水媒体中、アルカリ性触媒の存在下で付加させることにより製造することができる。
水媒体の使用量は、副生物低減の観点からビスフェノール化合物の重量に基づいて、好ましくは5〜100%、さらに好ましくは10〜60%である。
アルカリ性触媒としてはアルカリ金属触媒[アルカリ金属(Na、K、Li等)水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)、アルカリ金属(Na、K、Li等)アルコラート(C1〜2、例えばナトリウムメチラート、カリウムメチラート)、金属ナトリウム等]、アミン触媒(C3〜15、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン)、テトラアルキル(アルキル基のC4〜12)アンモニウムハイドロオキサイド(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等)が挙げられる。これらのうち好ましいのはアルカリ金属触媒、さらに好ましいのは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、とくに好ましいのは水酸化カリウム、水酸化リチウムである。
【0040】
アルカリ性触媒の使用量は、ビスフェノール化合物の重量に基づいて通常0.05〜20%、好ましくは0.1〜10%である。
ビスフェノール化合物にAOを付加させる方法としては、ビスフェノール化合物、水媒体およびアルカリ性触媒をオ−トクレ−ブに仕込み、釜内を窒素で置換した後、撹拌しながら所定温度に昇温して、AOを滴下等で徐々に仕込みながら常圧または加圧下(通常0.5MPa以下)で反応させる方法が挙げられる。反応温度は、生産性および副生物低減の観点から好ましくは60〜120℃、さらに好ましくは60〜110℃、また、反応時間は通常2〜8時間である。
【0041】
本発明における(B1)を主成分とするビスフェノール化合物AO付加物(B)は、通常以下の手順で製造することができる。
(1)アルカリ性触媒の存在下、ビスフェノール化合物1モルに対して、AO1.5〜2モル滴下し、その後1〜2時間反応させる。その後アルカリ性触媒の部分中和(好ましくは20〜99モル%、さらに好ましくは40〜90モル%)を行う。中和に用いられる酸としては、無機酸(リン酸、塩酸、硫酸等)または有機酸(酢酸、乳酸、マレイン酸、パラトルエンスルホン酸等)が挙げられる。
(2)部分中和後、上記(1)からの全AOの滴下モル数が2〜2.8(好ましくは2.2〜2.6)モルとなる量のAOをさらに追加滴下しその後1〜2時間反応させる。
(3)サンプリングを行いLC法で(B1)〜(B3)の含有量を測定し、(B1)が主成分であることを確認する。該手順(3)は、必要により上記手順(1)のAO付加反応後にも行なってもよい。
(4)上記確認後、水媒体を分液除去、さらに水洗、吸着剤による処理・濾過後、脱水して(B)を得る。
【0042】
本発明の接着性付与剤(C)は、ブロック化ポリウレタン(A)とビスフェノール化合物AO付加物(B)からなり、(A)中のブロック化されたNCO基と上記(B)中の活性水素との当量比は、金属塗装面に対するアクリルプラスチゾルの接着性の観点から好ましくは90/10〜25/75、さらに好ましくは80/20〜40/60である。
【0043】
[アクリル重合体(D)]
本発明のアクリルプラスチゾルは、接着性付与剤(C)、アクリル重合体(D)および可塑剤(E)を含んでなる。
(D)には(メタ)アクリル酸アルキル(C1〜20)エステルの1種単独の重合体もしくは2種以上の共重合体、またはこれらのモノマーとその他の重合性不飽和基含有モノマーとの共重合体が含まれる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとその他の重合性不飽和基含有モノマーとの共重合体における共重合比(重量比)は、樹脂物性の観点から、好ましくは50/50〜99/1、さらに好ましくは70/30〜95/5である。
【0044】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、C4〜30、例えば(メタ)アクリル酸メチル、−エチル、−ブチルおよび−ヘキシルが挙げられる。
【0045】
その他の重合性不飽和基含有モノマーとしては、下記のものが挙げられる。
(1)芳香族不飽和炭化水素(不飽和炭化水素は以下、HCと略記)
C8〜20、例えばスチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、トリメチルスチレン、ハロゲン化スチレン、t−ブチルスチレン、アミノスチレン、p−ベンジルスチレン、p−フェノキシスチレン、オキシスチレン
(2)脂肪族HC
C2〜18またはそれ以上、例えばアルケン[エチレン、プロピレン、(イソ)ブテン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、その他のα−オレフィン等]およびジエン[ブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等]
(3)脂環式HC
C4〜18またはそれ以上、例えば(ジ)シクロアルケン[シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、インデン、ビニルシクロヘキセンおよびエチリデンビシクロヘプテン等]
(4)アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル
C4〜30、例えば2−アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノ(メタ)アクリレート
(5)分子中に1〜4個もしくはそれ以上の水酸基、および1〜4個もしくはそれ以上の重合性不飽和基を有する化合物
C5〜600、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度3〜100)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(重合度3〜100)モノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート
(6)α、β−不飽和ジカルボン酸またはこれらの酸無水物
C4〜12のジカルボン酸、例えば(無水)マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、(無水)イタコン酸
(7)α、β−不飽和ジカルボン酸のエステル
C6〜30、例えばフマル酸エステル(ジエチルフマレート、ジオクチルフマレート等)
【0046】
(8)その他のビニルモノマー
ニトリル基含有ビニルモノマー[C3〜15、例えば(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアルキル(C1〜4)アクリレート];
ビニルエステル[脂肪族ビニルエステル(C4〜15、例えば酢酸ビニル、ビニルブチレート、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメトキシアセテート)、芳香族ビニルエステル(C9〜20、例えばジアリルフタレート、メチル−4−ビニルベンゾエート、アセトキシスチレン)等];
ハロゲン含有ビニルモノマー(C2〜4、例えば塩化ビニル、塩化ビニリデン);
ビニルエーテル{脂肪族ビニルエーテル〔C3〜15のビニルアルキル(C1〜10)エーテル[ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニル−2−エチルヘキシルエーテル、ビニル−2−クロロエチルエーテル等]、ビニルアルコキシ(C1〜6)アルキル(C1〜4)エーテル[ビニル−2−メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、ビニル−2−ブトキシエチルエーテル、3,4−ジヒドロ−1,2−ピラン、2−ブトキシ−2’−ビニロキシジエチルエーテル、ビニル−2−エチルメルカプトエチルエーテル等]、ポリ(2〜4)(メタ)アリロキシアルカン(C2〜6)(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン、テトラメタアリロキシエタン等)〕、芳香族ビニルエーテル(C8〜20、例えばビニルフェニルエーテルおよびフェノキシスチレン)等};
【0047】
複素環含有ビニルモノマー[ピリジン化合物(C7〜14、例えば4−ビニルピリジンおよび2−ビニルピリジン)、イミダゾール化合物(C5〜12、例えばN−ビニルイミダゾール)、ピロール化合物(C6〜13、例えばN−ビニルピロール)、ピロリドン化合物(C6〜13、例えばN−ビニル−2−ピロリドン)、カルバゾール化合物(C14〜20、例えばN−ビニルカルバゾール)等];
スルホ基含有ビニルモノマー[C4〜25、例えばビニルエチルスルホン、ジビニルスルホン、ジビニルスルホキサイド、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、メチルビニルスルホサクシネート、スチレンスルホン酸、α−メチルスチレンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−(メタ)アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、アルキル(C3〜18)アリルスルホコハク酸、およびこれらのアルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)塩];
ビニルケトン[脂肪族ビニルケトン(C4〜25、例えばビニルメチルケトンおよびビニルエチルケトン)、芳香族ビニルケトン(C9〜21、例えばビニルフェニルケトン)等];
サルファイド基含有モノマー(C4〜20、例えばジビニルサルファイド、p−ビニルジフェニルサルファイドおよびビニルエチルサルファイド);
ビニレンカーボネート、2−ビニルフラン、ビニルフェニルジシロキサン、ビニルウレタン等。
【0048】
これらのうち樹脂物性の観点から好ましいのは(メタ)アクリル酸メチルの単独重合体、(メタ)アクリル酸メチルとそれ以外の上記モノマーとの共重合体、さらに好ましいのは(メタ)アクリル酸メチルの単独重合体、(メタ)アクリル酸メチルと(メタ)アクリル酸ブチルの共重合体[好ましくは共重合比(重量比)98/2〜50/50]である。
上記モノマーの重合は公知の方法(溶液重合、乳化重合、懸濁重合等)で行うことができる。
【0049】
(D)のMnは特に限定はないが、樹脂物性の観点から好ましくは10万〜500万、さらに好ましくは30万〜300万である。
(D)の形態は、通常微粒子状の粉体であり、該微粒子の体積平均粒経は、好ましくは0.1〜50μm、さらに好ましくは0.2〜10μmである。(D)は2種以上を併用することができる。
【0050】
[可塑剤(E)]
可塑剤(E)としては、例えば芳香族カルボン酸エステル[フタル酸エステル(ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジラウリルフタレート、ジステアリルフタレート、ジイソノニルフタレート(以下、DINPと略記)、トリエチレングリコールジベンゾエート等]、脂肪族カルボン酸エステル[メチルアセチルリシノレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジ−2−エチルヘキシルセバケート(DOS)、アジピン酸−プロピレングリコールポリエステル、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオールジイソブチレート等]、リン酸エステル[トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等]、およびこれら2種以上の混合物が挙げられる。
これらのうちブロック化ポリウレタン(A)への溶解性の観点から好ましいのは芳香族カルボン酸エステル、さらに好ましいのはジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)およびジイソノニルフタレート(DINP)である。
【0051】
[アクリルプラスチゾル]
本発明のアクリルプラスチゾルは上記接着性付与剤(C)、アクリル重合体(D)および可塑剤(E)を含んでなる。該各成分の含有量は、(C)、(D)および(E)の合計重量に基づいて、(C)の含有量は、金属塗装面に対するアクリルプラスチゾルの接着性の観点及び耐チッピング性の観点から、好ましくは1〜40%、さらに好ましくは1〜36%、次にさらに好ましくは2〜30%、(D)の含有量は、アクリルプラスチゾルの粘度及び耐チッピング性の観点から、好ましくは30〜50%、さらに好ましくは32〜47%、次にさらに好ましくは35〜45%、(E)の含有量は、アクリルプラスチゾルの粘度及び耐チッピング性の観点から、好ましくは30〜55%、さらに好ましくは32〜52%、次にさらに好ましくは35〜55%である。
【0052】
また、アクリルプラスチゾルには上記(C)、(D)および(E)の他に、必要により本発明の効果を阻害しない範囲で、充填剤、発泡剤、着色剤、安定剤および希釈剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤を配合することができる。該添加剤全体の添加量はアクリルプラスチゾルの全重量(すなわち、(C)、(D)、(E)及び添加剤の合計重量。以下、同じ)に基づいて通常50%以下、好ましくは1〜40%である。
【0053】
充填剤としては、無機充填剤(炭酸カルシウム、タルク、クレー、ケイ藻土、けい酸、けい酸塩、カオリン、アスベスト、マイカ、ガラス繊維、ガラスバルーン、カーボン繊維、金属繊維、セラミックウィスカ、チタンウィスカ等)および有機充填剤[セルロース粉、粉末ゴム、有機架橋微粒子(エポキシ、ウレタン等)、尿素等]が挙げられる。
充填剤の使用量は、アクリルプラスチゾルの全重量に基づいて通常40%以下、アクリルプラスチゾルの塗料粘度の観点から好ましくは1〜35%である。
【0054】
発泡剤としては、アゾ系発泡剤(アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等)、ニトロソ系発泡剤(ジニトロソペンタメチレンテトラミン等)およびヒドラジド系発泡剤[トルエンスルホニルヒドラジド、オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等]が挙げられる。
発泡剤の使用量は、アクリルプラスチゾルの全重量に基づいて通常5%以下、好ましくは0.1〜2%である。
【0055】
着色剤としては無機顔料、有機顔料および染料が挙げられる。
無機顔料としては、白色顔料(酸化チタン、リトポン、鉛白、亜鉛華等)、コバルト化合物(オーレオリン、コバルトグリーン、セルリアンブルー、コバルトブルー、コバルトバイオレット等)、鉄化合物(酸化鉄、紺青等)、クロム化合物(酸化クロム、クロム酸鉛、クロム酸バリウム等)、硫化物(硫化カドミウム、カドミウムイエロー、ウルトラマリン等)およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0056】
有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ系、モノアゾ系、ジスアゾ系、キレートアゾ系)、多環式顔料(ベンジイミダゾロン系、フタロシニアン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、チオインジゴ系、ペリレン系、キノフタロン系、アンスラキノン系等)、およびこれらの混合物が挙げられる。
染料としては、アゾ系、アントラキノン系、インジゴイド系、硫化系、トリフェニルメタン系、ピラゾロン系、スチルベン系、ジフェニルメタン系、キサンテン系、アリザリン系、アクリジン系、キノンイミン系、チアゾール系、メチン系、ニトロ系、ニトロソ系、アニリン系およびこれらの混合物が挙げられる。
着色剤の使用量は、アクリルプラスチゾルの全重量に基づいて通常5%以下、好ましくは0.1〜2%である。
【0057】
安定剤としては、金属石ケン(ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミウム等)、無機酸塩(二塩基性亜リン酸塩、二塩基性硫酸塩等)および有機金属化合物(ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンマレエート等)等が挙げられる。安定剤の使用量は、アクリルプラスチゾルの全重量に基づいて通常10%以下、好ましくは0.2〜5%である。
【0058】
希釈剤としては、キシレン、ミネラルターペン等が挙げられる。希釈剤の使用量はアクリルプラスチゾルの全重量に基づいて通常20%以下、好ましくは5〜15%である。
【0059】
アクリルプラスチゾルの処方例は、下記の通りである(%は重量%を示す)。
・接着性付与剤 (C) [固形分換算] 2〜30%
・アクリル重合体(D) 15〜40%
・可塑剤 (E) 20〜45%
・添加剤(充填剤、発泡剤等) 1〜40%
【0060】
本発明のアクリルプラスチゾルは通常の方法(例えば特開平2−14271号公報記載の方法)で製造することができる。例えば、上記成分を仕込み、ディスパー、ボールミル、スチールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミル、サンドグラインダー、ポットミル、プラネタリーミキサー、ニーダー、グレンミル、ロールおよび万能混合機[(C)の分散性および製造の簡便性の観点から好ましいのはディスパー]等で均一に混合撹拌して、製造される。成分の仕込み順序については特に限定はないが、とくに(C)、(D)および(E)の均一混合の観点から好ましいのは、(C)、(D)および(E)をまず均一混合しその後、添加剤を加えて混合する方法である。
混合温度は通常0〜40℃(好ましくは10〜30℃)、また混合時間は通常20分〜1.5時間(好ましくは30分〜1時間)で行う。
【0061】
本発明のアクリルプラスチゾルの貯蔵安定性(後述の方法で測定されるアクリルプラスチゾル作成時の初期粘度に対する貯蔵後の粘度増加率で評価)は、塗装性の観点から好ましくは30%以下、さらに好ましくは0〜20%である。
【0062】
本発明のアクリルプラスチゾルは、各種金属(特に鋼板)面に施された各種下塗り塗装面に適用できるが、アクリルプラスチゾルの接着性の観点から特にカチオン型電着塗装面に有利に適用できる。
アクリルプラスチゾルの塗布量は、耐チッピング性の観点から好ましくは500〜3,000g/m2、塗布膜厚は耐チッピング性の観点から好ましくは0.5〜3mmである。なお、塗布時の膜厚と後述する熱処理後の膜厚はほとんど変わらない。
塗布方法としては、ハケ塗り、ヘラ塗り、ローラーコート、エアレススプレー塗装等が挙げられ、塗装効率および高粘度の塗料の塗装が可能という観点から好ましくはエアレススプレー塗装である。また、塗布後熱処理されるが、熱処理温度はアクリルプラスチゾルの硬化性および接着性の観点から好ましくは110〜160℃、さらに好ましくは120〜140℃であり、熱処理時間は同様の観点から好ましくは10〜40分、さらに好ましくは20〜30分である。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」は特記しない限りそれぞれ「重量部」および「重量%」を表し、また、(B1)〜(B3)は下記を意味するものとする。
(B1):ビスフェノール化合物の各水酸基当たり1モルのAO付加物
(B2):ビスフェノール化合物の、2モル未満のAO付加物
(B3):ビスフェノール化合物の、2モルを超えるAO付加物
【0064】
[ビスフェノール化合物アルキレンオキシド付加物(B)の製造例]
製造例1
滴下および撹拌装置を備えたガラス製オートクレーブに、ビスフェノールA228部(1モル)と水228部を仕込み、窒素置換を行った後、90℃まで昇温し、ビスフェノールAを水に分散させた。ここに水酸化カリウム3部を添加し再度窒素置換を行い、EO88部(2モル)を約4時間掛けて滴下し90℃、圧力0.2MPa以下で反応させた。滴下終了して約2時間後に、リン酸1.4部を加え、さらにEO22部(0.5モル)を約2時間掛けて追加滴下し90℃、圧力0.2MPa以下で反応させた。滴下終了後約2時間反応を継続した。
90℃で水を分液除去した。さらに、水300gを加え90℃で1時間撹拌した後、副生物(EG、DEG等)および水を分液除去した。その後吸着剤[商品名「キョワード600」、協和化学(株)製]10部を添加して約1時間撹拌後ろ過した。ろ液を130℃で減圧脱水し(減圧度約0.097MPa)、ビスフェノールAのEO付加物(B−1)を得た。(B−1)のOH価は355、(B−1)中の含有量は、(B1)100%、(B2)0%、(B3)0%であった。なお、含有量の測定は前記LC法に従った(以下同じ)。
【0065】
製造例2
製造例1において、追加のEO22部(0.5モル)に代えてEO44部(1モル)を用いたこと以外は、製造例1と同様に行い、ビスフェノールAのEO付加物(B−2)を得た。(B−2)のOH価は353、(B−2)中の含有量は、(B1)95%、(B2)0.5%、(B3)4.5%であった。
【0066】
製造例3
製造例1において、追加のEO22部(0.5モル)に代えてEO66部(1.5モル)を用いたこと以外は、製造例1と同様に行い、ビスフェノールAのEO付加物(B−3)を得た。(B−3)のOH価は353、(B−3)中の含有量は、(B1)92%、(B2)1%、(B3)7%であった。
【0067】
製造例4
製造例1において、追加のEO22部(0.5モル)に代えてEO110部(2.5モル)を用いたこと以外は、製造例1と同様に行い、ビスフェノールAのEO付加物(B−4)を得た。(B−4)のOH価は350、(B−4)中の含有量は、(B1)85%、(B2)1%、(B3)14%であった。
【0068】
製造例5
製造例1において、ビスフェノールA228部(1モル)に代えてビスフェノールS250部(1モル)を用いたこと以外は、製造例1と同様に行い、ビスフェノールSのEO付加物(B−5)を得た。(B−5)のOH価は332、(B−5)中の含有量は、(B1)99%、(B2)0.1%、(B3)0.9%であった。
【0069】
製造例6
製造例1において、EO[88部(2モル)および22部(0.5モル)]に代えてPO[116部(2モル)および29部(0.5モル)]を用いたこと以外は、製造例1と同様に行い、ビスフェノールAのPO付加物(B−6)を得た。(B−6)のOH価は326、(B−6)中の含有量は、(B1)99%、(B2)0.1%、(B3)0.9%であった。
【0070】
製造例7
製造例1において、追加のEO22部(0.5モル)に代えてEO220部(5モル)を用いたこと以外は、製造例1と同様に行い、ビスフェノールAのEO付加物(比B−1)を得た。(比B−1)のOH価は347、(比B−1)中の含有量は、(B1)80%、(B2)0.5%、(B3)19.5%であった。
【0071】
製造例8
製造例1において、EO88部(2モル)に代えてEO308部(7モル)を用い、追加のEO滴下を行わなかったこと以外は、製造例1と同様に行い、ビスフェノールAのEO付加物(比B−2)を得た。(比B−1)のOH価は362、(比B−2)中の含有量は、(B1)80%、(B2)15%、(B3)5%であった。
【0072】
製造例9
製造例1において、EO88部(2モル)に代えてEO528部(12モル)を用い追加のEO滴下を行わなかったこと以外は、製造例1と同様に行い、ビスフェノールAのEO付加物(比B−3)を得た。(比B−3)のOH価は358、(比B−3)中の含有量は、(B1)60%、(B2)20%、(B3)20%であった。
【0073】
[ブロック化ポリウレタン(A)の製造例]
製造例10
撹拌装置を備えた反応容器にTDI 1,218部、ポリテトラメチレングリコール(Mn1,000)2,000部、TMP134部、カルビトールアセテート4,222部を仕込み、窒素気流下撹拌混合して、70〜80℃で3時間反応させ、NCO%3.9(固形分換算値8.8)のウレタンプレポリマー溶液を得た。次いでε−カプロラクタム870部を添加してさらに80〜90℃で3時間反応させた後、滴定によりNCO基が消失していることを確認した。固形分50%、ブロック化されたみかけのNCO%(以下、潜在NCO%と略記)3.5(固形分換算値7.0)のブロック化ポリウレタン溶液(A−1)を得た。
【0074】
製造例11
製造例10において、TDI 1,218部、カルビトールアセテート4,222部に代えて、MDI 1,750部、カルビトールアセテート4,554部を用いた以外は製造例10と同様に行い、NCO%4.1(固形分換算値8.9)のウレタンプレポリマー溶液を得た。次いでメチルエチルケトオキシム670部を添加してさらに80〜90℃で3時間反応させた後、滴定によりNCO基が消失していることを確認した。固形分50%、潜在NCO%3.8(固形分換算値7.6)のブロック化ポリウレタン溶液(A−2)を得た。
【0075】
製造例12
製造例10において、TDI 1,218部、カルビトールアセテート4,222部に代えて、MDI 1,750部、カルビトールアセテート4,097部を用いた以外は製造例10と同様に行い、NCO%4.1(固形分換算値8.9)のウレタンプレポリマー溶液を得た。次いでジメチルアミン347部を添加してさらに80〜90℃で3時間反応させた後、滴定によりNCO基が消失していることを確認した。固形分50%、潜在NCO%3.8(固形分換算値7.6)のブロック化ポリウレタン溶液(A−3)を得た。
【0076】
実施例1
(A−1)100部と(B−1)13.2部の混合物に対して「ゼオンF−320」[日本ゼオン(株)製、メタアクリル酸メチル単独重合体(Mn300万、体積平均粒径1μmのパウダー)、以下同じ。]169部、「白艶華CC−R」[白石工業(株)製、表面処理極微細炭酸カルシウム(体積平均粒径0.08μm)、以下同じ。]188部およびDINP189部を添加しディスパーで均一に混練して、アクリルプラスチゾルを作成し、後述する方法で性能評価を行った。
該プラスチゾルの初期粘度は124Pa・s/25℃で、35℃で10日間貯蔵後の粘度は134Pa・s/25℃であった。また、接着性、耐水接着性は極めて良好であった。結果を表1に示す。
【0077】
実施例2
実施例1において、(B−1)に代えて(B−2)を同量用いた以外は実施例1と同様にしてアクリルプラスチゾルを作成し性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
実施例3
実施例1において、(B−1)に代えて(B−3)を同量用いた以外は実施例1と同様にしてアクリルプラスチゾルを作成し性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
実施例4
実施例1において、(B−1)に代えて(B−4)を13.4部用いた以外は実施例1と同様にしてアクリルプラスチゾルを作成し性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
実施例5
実施例1において、(B−1)に代えて(B−5)を14.1部用いた以外は実施例1と同様にしてアクリルプラスチゾルを作成し性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
実施例6
実施例1において、(B−1)に代えて(B−6)を14.3部用いた以外は実施例1と同様にしてアクリルプラスチゾルを作成し性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
実施例7
実施例1において、(A−1)100部、(B−1)13.2部に代えて(A−2)100部、(B−1)14.3部用いた以外は実施例1と同様にしてアクリルプラスチゾルを作成し性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
実施例8
実施例1において、(A−1)100部、(B−1)13.2部に代えて(A−3)100部、(B−1)14.3部用いた以外は実施例1と同様にしてアクリルプラスチゾルを作成し性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
実施例9
実施例1において、(A−1)122.8部、(B−1)1.8部に代えた以外は実施例1と同様にしてアクリルプラスチゾルを作成し性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
実施例10
実施例1において、(A−1)118.6部、(B−1)3.9部に代えた以外は実施例1と同様にしてアクリルプラスチゾルを作成し性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
実施例11
実施例1において、(A−1)90.6部、(B−1)17.9部に代えた以外は実施例1と同様にしてアクリルプラスチゾルを作成し性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0087】
実施例12
実施例1において、(A−1)70.6部、(B−1)28部に代えた以外は実施例1と同様にしてアクリルプラスチゾルを作成し性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
実施例13
実施例1において、(A−1)6.8部、(B-1)0.9部、「ゼオンF−320」[日本ゼオン(株)製、メタアクリル酸メチル単独重合体(Mn300万、体積平均粒径1μmのパウダー)、以下同じ。]210部、DINP232部に代えた以外は実施例1と同様にしてアクリルプラスチゾルを作成し性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
実施例14
実施例1において、(A−1)242.2部、(B-1)32部、「ゼオンF−320」[日本ゼオン(株)製、メタアクリル酸メチル単独重合体(Mn300万、体積平均粒径1μmのパウダー)、以下同じ。]134.1部、DINP134.1部に代えた以外は実施例1と同様にしてアクリルプラスチゾルを作成し性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
比較例1
実施例1において、(B−1)に代えて(比B−1)を13.5部用いた以外は実施例1と同様にしてアクリルプラスチゾルを作成し性能評価を行った。結果を表1に示す。本結果から硬化性、接着性、貯蔵安定性及び耐チッピング性が各実施例に比べて、劣ることがわかる。
【0091】
比較例2
実施例1において、(B−1)に代えて(比B−2)を12.9部用いた以外は実施例1と同様にしてアクリルプラスチゾルを作成し性能評価を行った。結果を表1に示す。本結果から硬化性、接着性、貯蔵安定性及び耐チッピング性が各実施例に比べて、劣ることがわかる。
【0092】
比較例3
実施例1において、(B−1)に代えて(比B−3)を13.1部用いた以外は実施例1と同様にしてアクリルプラスチゾルを作成し性能評価を行った。結果を表1に示す。本結果から硬化性、接着性、貯蔵安定性及び耐チッピング性が各実施例に比べて、劣ることがわかる。
【0093】
比較例4
実施例1において、(B−1)に代えてエチレンジアミンのPO4モル付加物6.2部用いた以外は実施例1と同様にしてアクリルプラスチゾルを作成し性能評価を行った。結果を表1に示す。本結果から硬化性、接着性、貯蔵安定性及び耐チッピング性が各実施例に比べて劣ることがわかる。
【0094】
上記性能評価における試験方法は以下の通りである。
(1)初期粘度
アクリルプラスチゾル作成直後の粘度[BH型粘度計、東京計器(株)製、単位はPa・s/25℃]を測定。
(2)貯蔵後の粘度
アクリルプラスチゾル作成後、内径約4cm、高さ約8cmのガラス製の密栓付き円筒容器に90g入れて、35℃で10日間密閉保存後の粘度[測定条件、単位は上記(1)と同じ。]を測定。
(3)貯蔵安定性
アクリルプラスチゾル作成時の初期粘度に対する貯蔵後の粘度増加率(%)を下記式から算出する。値が小さい程、貯蔵安定性が良好であることを示す。

貯蔵後の粘度増加率(%)=(貯蔵後の粘度−初期粘度)×100/初期粘度

(4)硬化性
エポキシ樹脂系カチオン型電着塗料[商品名:コナック/No.3500、日本油脂(株)製]塗装鋼板(以下、電着塗装鋼板と略記)の塗装面に、内容積が50×20×1mmとなるように枠を取り付け、その中にアクリルプラスチゾルを膜厚が1mmとなるようにヘラ塗りした。130℃×20分熱処理後、指触により塗膜の硬化程度を下記の基準で判定した。

◎ タックなく、硬化性良好
○ ややタックがあるが実用上差し支えない程度の硬化性
△ タックがあり、硬化性不十分
× 全く硬化が認められない。
【0095】
(5)接着性
100×25×1mmの電着塗装鋼板の塗装面の端部(面積約2×2cm2)にアクリルプラスチゾルをヘラ塗りし、圧着後の膜厚が1mmとなるように、もう1枚の同じ電着塗装鋼板を圧着した。その状態で130℃×20分焼付け熱処理した後、2枚の電着塗装鋼板の端部を引張速度50mm/minで剪断方向に引っ張り、その破壊状態から電着塗装鋼板の塗装面に対する接着性を評価した。判定基準は以下の通り。

○ 凝集破壊
△ 凝集破壊と界面剥離が共存
× 界面剥離

(6)耐温水性
上記(5)と同一の試験片を作成し、130℃×20分焼付け処理後、40℃温水中に3日間浸漬した後の電着塗装鋼板の塗装面に対する接着性を(5)と同じ判定基準で評価した。
(7)耐チッピング性
100×100×0.8mmの電着塗装鋼板の塗装面に400μm厚でアクリルプラスチゾルを塗布し、130℃×20分焼付け処理後、ナット落下装置に試験片を取り付け、JIS B−1181に規定する3種−M−4形状の真鍮六角ナットを2mの高さから管径20mmの筒を通してナットの落下方向に対して45°の角度を有する各試料板上に落下せしめ、塗膜のキズが金属面に達するまでのナットの総重量(kg)を測定した。
【0096】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の接着性付与剤(C)を含有するアクリルプラスチゾルは貯蔵安定性および金属塗装面に対する接着性に優れ、比較的低温で金属塗装面に強固に接着し、耐チッピング性に優れていることから、接着剤、シーラント、塗料等各種工業用途に適用可能であり、特に自動車工業において、カチオン型電着塗装が施された自動車車体鋼板表面の少なくとも一部に該アクリルプラスチゾルの硬化物を有するチッピング防止鋼板は耐チッピング性に優れていることから、ボデーシーラー、アンダーコート材として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック化ポリウレタン(A)およびビスフェノール化合物の各水酸基当たり1モルのアルキレンオキシド付加物(B1)を主成分としてなるビスフェノール化合物アルキレンオキシド付加物(B)を含んでなることを特徴とするアクリルプラスチゾル用接着性付与剤(C)。
【請求項2】
(B1)の含有量が、(B)の重量に基づいて92〜100%である請求項1記載の接着性付与剤。
【請求項3】
(A)が、ラクタム、オキシムおよびアミンからなる群から選ばれる1種または2種以上のブロック剤でブロック化されたポリウレタンである請求項1または2記載の接着性付与剤。
【請求項4】
(A)中のブロック化されたNCO基と(B)中の活性水素の当量比が90/10〜25/75である請求項1〜3のいずれか記載の接着性付与剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか記載の接着性付与剤(C)、アクリル重合体(D)および可塑剤(E)を含んでなるアクリルプラスチゾル。
【請求項6】
(C)、(D)および(E)の合計重量に基づいて(C)が1〜40%、(D)が30〜50%、(E)が30〜55%である請求項5記載のアクリルプラスチゾル。
【請求項7】
さらに、充填剤、発泡剤、着色剤、安定剤および希釈剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有させてなる請求項5または6記載のアクリルプラスチゾル。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか記載のアクリルプラスチゾルを硬化させてなる硬化物。
【請求項9】
請求項8記載の硬化物を鋼板表面の少なくとも一部に有するチッピング防止鋼板。

【公開番号】特開2009−96912(P2009−96912A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271189(P2007−271189)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】