説明

接着構造体および接着性フィルム

【課題】本発明は、耐熱性の高い接着性と絶縁性とを兼ね備え、かつ、低分子のシロキサンの残留する量が極めて少ない、あるいは全く含まない組成物を主成分とした接着材からなる接着層を有した接着構造体、および前記接着材からなる接着性フィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】シリケート化合物と、末端をシリケート変性したポリジメチルシロキサンとを有する混合物を、加水分解反応および縮合反応することによって得られた組成物を主成分とする接着材からなる接着層によって、一対の被接着材を接着したことを特徴とする接着構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の被接着材を接着材からなる接着層によって接着した接着構造体、および接着材を材料とした接着性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、150℃以上の高温の環境で使用される被接着材の接着に使用する接着材(接着剤)は、主にエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂が使用されている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−237559号公報
【特許文献2】特開平5−263062号公報
【特許文献3】特開2002−277185号公報
【特許文献4】特開2004−107652号公報
【特許文献5】特開2005−320461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記接着材として使用される、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂およびポリイミド樹脂には、いくつかの問題が発生している。
【0005】
前記エポキシ樹脂やポリイミド樹脂は硬いので、高温域での被接着材の変形に対する応力緩和が困難であって接着材の層に割れや剥離という破壊現象が発生し、また、接着された被接着材に反り等の変形が発生するという問題点が存在する。さらに、これら接着材は高温下での絶縁性にも欠ける。
【0006】
またシリコーン樹脂では200℃近辺での高温下では劣化が著しく、接着力が低下して使用困難となる。
【0007】
さらに、シリコーン樹脂には、微量ではあるが低分子のシロキサンが残留しており、この低分子のシロキサンが揮発して環状シロキサンを発生するため、以下の問題が生じている。すなわち、シリコーン樹脂系接着材を採用する電気・電子分野においては、この環状シロキサンが端子等の電気接点の表面に付着し、絶縁皮膜となって接点障害に至り、導通不良や動作不良を起こすといった問題がある。
【0008】
本発明は、前記した問題に鑑みてなされたものであり、耐熱性の高い接着性と絶縁性とを兼ね備え、かつ、低分子のシロキサンの残留する量が極めて少ない、あるいは全く含まない組成物を主成分とした接着材からなる接着層を有した接着構造体、および前記接着材からなる接着性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シリケート化合物と、末端をシリケート変性したポリジメチルシロキサンとを有する混合物を、加水分解反応および縮合反応することによって得られた組成物を主成分とする接着材からなる接着層によって、一対の被接着材を接着したことを特徴とする接着構造体に関するものである。
【0010】
まず、本発明にかかる、一対の被接着材を接着させる接着材について説明する。
この接着材は、シリケート化合物と、末端をシリケート変性されたポリジメチルシロキサンとを、加水分解反応および縮合反応することによって得られる組成物を主成分としている。
以下、ポリジメチルシロキサンを「PDMS」と略し、末端をシリケート変性されたポリジメチルシロキサンを「変性PDMS」と略す。
【0011】
(シリケート化合物)
本発明のシリケート化合物とは、シリコン(Si)でできた金属アルコキシドのオリゴマーであり、主鎖にシロキサン(−Si−O−Si−)骨格を持ち、外鎖にアルコキシ基(RO)を導入した化合物のことである。ここで、アルコキシ基(RO)のアルキル部分である(R)は、メチル基、エチル基、プロピル基等が例示される。このシリケート化合物は、水と容易に反応する特性を持っている。
【0012】
シリケート化合物は、金属アルコキシドのオリゴマーであるので、金属アルコキシドよりも分子量が大きいので、揮発しにくい。このため、シリケート化合物が加水分解した時に、前記変性PDMSに含まれる揮発性の高い低分子のシロキサンの揮発を、より一層、抑制することができる。また、シリケート化合物は、高い化学反応性を有しており、縮合反応を円滑に進めることができる。
【0013】
また、本発明で使用するシリケート化合物の種類として、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン)、メチルシリケート、エチルシリケート、プロピルシリケート等が挙げられる。品質の安定性および安全性の点からエチルシリケートが好ましい。反応性を上げることを目的にメチルシリケートの使用の場合、揮発されるメタノールの処理を確実に実施する必要がある。
【0014】
(変性PDMS)
本発明の変性PDMSとは、シリケート化合物にてPDMSの末端を変性処理したものであり、両末端にシラノール基を有するPDMSと、主鎖の片側または両側に加水分解可能な官能基であるアルコキシ基を有するアルコキシシラン部分縮合物とを反応させて得られるものをいう。
【0015】
この変性PDMSは、通常のPDMSと比べると、格段に高い官能基濃度を有している。また、変性PDMSは、シリケート化合物との縮合反応性が高いため、変性PDMSに含まれるアルコキシシラン部分縮合物は、円滑に縮合反応が行われ、硬化してポリマー化することができる。
【0016】
本発明で使用される変性PDMSは、質量平均分子量が5000以上で100000以下の範囲にあるものが使用される。
【0017】
(接着材の生成)
本発明において接着材は、前記したシリケート化合物と、前記した変性PDMSとを有する混合物を加水分解および縮合反応させて得られた組成物を主成分とするものである。
【0018】
シリケート化合物は、水の存在下にて容易に加水分解するため、シリケート化合物の分子内のアルコキシ基が、反応性の高いシラノール基(−OH基)となる。
一方、前記変性PDMSも同様に、加水分解をすることにより、水の存在によってシラノール基(「シラノール変性」とも呼ぶ。)となる。
【0019】
これら双方のシラノール基は、高い反応性を有していると同時に、似通った反応性を有しているため、シリケート化合物と変性PDMSとを有する混成物を加水分解することによって、シラノールの凝集が加速されることなく、変性PDMSとの縮合反応が順調に進行する。これにより、変性PDMSに含まれる低分子のシロキサンも、反応生成物(組成物)中に取り込まれる。
【0020】
つまり、加水分解反応および縮合反応により、低分子のシロキサンは、組成物を構成する物質の一部となり、単体として存在しなくなる、または単体として存在する量が極めて微量(シロキサンの価数が15まで)となる。このため、組成物から低分子のシロキサンが揮発することがないか、揮発量が極めて微量となる。
この組成物に必要に応じて、添加剤等を混ぜることができる。
【0021】
(被接着材)
前記該一対の被接着材としては、一般的に合成樹脂、金属またはセラミックである。
【0022】
本発明に使用される被接着材として、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン(PS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリエステル(PE)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミノビスマレイミド、メチルペンテンコポリマー(TPX)、セルロースアセテート(CA)、アモルファスポリマー、ポリアミノビスマレイミド、ビスマレイミド−トリアジン系熱硬化型芳香族ポリイミド、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の合成樹脂、木材、合板、木質繊維板等の有機材料、機械構造用炭素鋼、合金鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、クロム鋼、アルミニウムクロムモリブデン鋼、オーステナイト系ステンレス、フェライト系ステンレス、マルテンサイト系ステンレス、銅および銅の合金、金銀およびそれらの合金、異種の金属で表面処理された金属等の金属材料、単純酸化物系のアルミナ、マグネシア、ベリリア、ジルコニア、ケイ酸塩系のシリカ、ホルステライト、ステアタイト、ジルコン、複酸化物系のチタン酸アルミニウム、サイアロン、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化物系、ホウ化物系、ケイ化物系等のセラミック材料、ガラス、陶磁器、コンクリート等が挙げられ、本発明の接着材は、いずれの被接着材との接着に有用である。
【0023】
(接着構造体の製造方法)
前記組成物を主成分とする接着材を、前記一対の被接着材の一方または双方の接着面に塗布し、所望なれば所定の厚みの間隔を介して、前記一対の被接着材の接着面同士を重ね合わせる。
【0024】
次に、前記接着材は液状(「ゾル」とも呼ぶ。)であるので、接着材から接着層として成形する場合、前記接着材を乾燥焼成処理によって、通常200℃以上の温度で加熱処理し、硬化させて、接着層が形成される。
【0025】
上述した目的を達成するために、前記被接着材の接着面に前記接着材を塗布した後、通常200℃〜250℃の温度で加熱して所定時間放置し、シリケート化合物と、末端をシリケート変性したポリジメチルシロキサンとを有する混合物の加水分解反応および縮合反応を、接着性を喪失しない程度に進めると共に、混合物の揮発成分を一部または全部を揮散させて硬化状態の接着層を形成することが望ましい。
【0026】
そして、前記接着材を硬化させて接着層を成形することにより、被接着材同士が接着され、接着構造体が提供できる。
【0027】
前記接着材を加熱硬化させる乾燥焼成処理としての高温炉(「オーブン」とも呼ぶ。)の使用が一般的である。
【0028】
前記接着材を塗布する方法として、とくに問わないが、一般的には、接着材を定量的に塗布できる塗布装置を利用するのが望ましい。
【0029】
また、前記シリケート化合物は、
〔化学式1〕SinO(n−1)(RO)2(n+1) (R=アルキル基、n=4〜16)で表されるものであり、
また、変性PDMSは、〔化学式2〕SinO(n−1)(RO)2(n+1) (OSi(CH3)2)m(RO)2(n+1)SinO(n−1)(R=アルキル基、n=4〜16、m>50)で表されるものであっても良い。
【0030】
また、前記シリケート化合物(A)と、前記変性PDMS(B)の配合の割合が、A/Bのモル比にて、0.1以上10以下の範囲であることが好ましい。最適な配合の割合は、A/Bのモル比にて1前後である。
【0031】
本発明に係る接着材に含有する組成物は、この最適な配合の割合を基準にし、柔軟性を要求する場合は変性PDMS(B)を増加し、反対に高硬度を要求する場合はシリケート化合物(A)を増加させるのがよい。
【0032】
ただし、前記組成物は、シリケート化合物(A)を増加させる場合、モル比10を越えると、低分子のシロキサンの揮発成分が増加する。つまり、低分子のシロキサンが単体として存在する量が増加するため、硬化時の収縮や薄膜化、場合によってはクラックの発生などの問題が生じ、本発明の効果を奏しない。
【0033】
また、モル比0.1より小さい場合は、シリケート化合物(A)と変性PDMS(B)との加水分解反応および縮合反応が円滑に行われず、結果として未硬化の状態となり、低分子のシロキサンが残留してしまい、本発明の効果を奏しない。
【0034】
また、前記シリケート化合物は、3量体〜12量体(3量体以上12量体以下)であることが望ましい。これは、3量体未満ではシリケートが持つ特性の効果が少なく、また12量体より上のものシリケート化合物の粘度が高くなることから合成時に扱いにくいからである。
【0035】
また、前記組成物は、260℃以下でガスクロマトグラフ(GC−MS)により測定した場合に、価数が15以下のシロキサンを含まないことが好適である。
【0036】
(接着性フィルムの成形)
また、本発明にあっては、前記接着材を、離型性基材面に塗布し、常温または加熱して縮合反応を進めると共に、接着材の一部を揮散させて半硬化状態の半硬化接着層を形成し、前記半硬化接着層を前記離型性基材面から剥離することによって得られることによって得られる接着性フィルムとしても提供できる。
【0037】
本発明で用いられる離型性基材は特に限定されるものでなく、接着材から成形された接着性フィルム(半硬化接着層)に対して離型性を有する基材、離型処理を施した基材であればよい。
【0038】
まず、前記接着材から接着性フィルム(半硬化接着層)に成形するには、接着材を離型性基材としてのガラストレイの表面に塗布し、乾燥焼成処理としてのオーブンによって、通常120℃以上の温度で加熱処理し、硬化させて、接着性フィルムが形成される。
ここでも使用する前記接着材を塗布する方法や、乾燥焼成処理については、前述したとおりの、本発明を完成させる上で、一般的に使用されるものでよく、この機構限定されるものではないことは言うまでもない。
【0039】
上述した目的を達成するために、前記ガラストレイの表面に接着材を塗布した後、オーブンにて通常120℃〜150℃の温度で加熱して所定時間2〜3時間放置し、前記組成物に含有するシリケート化合物と、末端をシリケート変性したポリジメチルシロキサンとを有する混合物の加水分解反応および縮合反応を、接着性を喪失しない程度に進めると共に、半硬化状態の半硬化接着層(接着性フィルム)を形成することが望ましい。
【0040】
すなわち、半硬化状態とは、半硬化接着層に含有する組成物の揮発成分の一部または全部を揮散させ、かつ、縮合反応を進めた状態であって、前記半硬化接着層が完全に接着性を喪失せず、接着可能な状態をいう。この場合の放置の時間は、及ぼす温度によって影響されるが通常10分〜10時間程度とし、この条件で得られる半硬化状態の半硬化接着層は組成物等の揮発成分を5質量%以下、0質量%以上の量で含有し、そして、半硬化接着層(接着性フィルム)は接着性を保有した状態である。
【0041】
前記接着性フィルムの成形形状は、被接着材の接着面に置いて接着できるものであれば任意でよいが、一般的にはシート状、板状に成形する。また、前記接着性フィルムの硬化状態としては、半固体(「半硬化」「ゲル」とも呼ぶ。)が望ましい。
【0042】
(接着性フィルムの接着方法)
前記したようなシート状に成形した接着性フィルム(半硬化接着層)を、前記一対の被接着材の一方または双方の接着面に、密着または接着させて固定(保持)し、所望なれば所定の厚みの間隔を介して、前記一対の被接着材の接着面同士を重ね合わせる。
【0043】
次に、前記接着性フィルム(半硬化接着層)を接着した前記一対の被接着材を、
乾燥焼成処理としてのオーブンによって、通常200℃以上の温度で加熱処理し、硬化させて、接着性フィルム(半硬化接着層)は、接着層として形成される。
【0044】
そして、前記被接着材に有した接着性フィルムを硬化させて、接着層として成形することにより、被接着材同士が接着され、接着構造体が提供できる。
【0045】
つまり、前記接着性フィルムを、一対の被接着材の一方または双方の接着面に設置し、この状態で該一対の被接着材の接着面を重ね合わせ、該接着性フィルムを加熱硬化させ接着することで、接着構造体を提供できる、接着性フィルムの接着方法である。
【0046】
従来から接着材として使用されているシリコーン樹脂は、経年劣化することで、白濁色や黄褐色となり、また、エポキシ樹脂が主成分とする接着材の場合は茶褐色および黒褐色であったので、接着層に付着した異物等の発見が困難であった。しかし、本発明に係る接着材は、経年劣化することがなく、常に無色透明であるので、異物の発見が容易にできる。
【0047】
また、従来のシリコーン樹脂には、低分子のシロキサンが微量ではあるが残留しており、シリコーン樹脂をリフロー等により高温で加熱することで、シロキサンが揮発され、シリコーン樹脂の柔軟性および粘着性が損なわれていた。
しかし、本発明に係る接着材より成形した接着層には、低分子のシロキサンが含まれていない、または、シロキサン単体として存在する量が極めて微量(シロキサンの価数が15まで)であるので、接着材に沸きや気泡が発生しにくくなり、また、柔軟性および粘着性が損なわれず、経年劣化しにくいという効果が得られる。
【0048】
そして、本発明の接着材からなる接着層、および接着材からなる接着性フィルムは、200℃以上の高温域にも耐える耐熱性と、良好な絶縁性を有し、そして柔軟性を有するから被接着材の変形に対して容易に応力緩和し、割れや剥離という破壊現象を示めさず、しかも比較的安価である。
【発明の効果】
【0049】
本発明は、耐熱性の高い接着性と絶縁性とを兼ね備え、かつ、低分子のシロキサンの残留する量が極めて少ない、あるいは全く含まない組成物を主成分とした接着材からなる接着層を有した接着構造体、および前記接着材からなる接着性フィルムを提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る接着構造体を有するパワーモジュールを示した全体構成図である。(実施例1)
【図2】実験治具を示した構成図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明を更に具体的に説明するための実施例について以下に記載する。
尚、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の「部」及び「%」は、特記しない限り、「質量部」及び「質量%」を意味する。
【実施例1】
【0052】
本発明を以下に詳細に説明する。
【0053】
〔接着構造体〕
本実施例1においては、電動モータを駆動源の一部とする電気自動車(ハイブリッドカー)等の車両に適用される、パワーモジュールの一部として採用する接着構造体について事例する。
【0054】
パワーモジュールとは、上述したハイブリッドカーに搭載する、車両の運転状況に応じて電動モータに供給する電力を制御する機能を持った構造体である。図1に示すように、パワーモジュール1の構造として、前記電動モータに供給する電力を制御する、通称IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)と呼ばれる半導体素子Pと、半導体素子Pの下面方向に備え、半導体素子Pから発せられる熱を効率良く放熱し、かつ、温度を所定温度以下に保つ、前後方向に長い方形状の放熱板2としてのアルミニウム平板2と、放熱板2の上面に前後方向に間隔をおいて、半導体素子Pと接合された、本発明の接着性フィルムより形成される接着層3と、接着層3と放熱板2との線膨張係数の差に起因する、放熱板2の反りを拘束する拘束板4と、拘束板4における放熱板2に接合された側と反対側の面に接合された放熱フィン5としてのヒートシンク5と、放熱板2の下面に、ヒートシンク5を覆うように固定された冷却ジャケット6とを備えている。
【0055】
〔放熱板〕
放熱板2は、アルミニウム、銅(銅合金も含む。以下、同様)などの高熱伝導性材料、ここではアルミニウムで形成されている。
【0056】
〔拘束板〕
拘束板4は、線膨張係数およびヤング率が、接着層3と同程度であれば、どのような材料から形成されていてもよく、セラミックス、インバー合金、電磁軟鉄などから形成される。セラミックスから形成される場合、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素などが用いられる。但し、拘束板4は、接着層3と同じ材料で形成されていること、および接着層3と同程度の肉厚であることが好ましい。
【0057】
また、拘束板4は、接着層3に対して放熱板2を間に挟んで対称に配置されている。さらに、接着層3と同数の拘束板4が用いられることがあり、あるいは接着層3よりも小数の拘束板4が、複数の接着層3に跨るように用いられることがある。前者の場合、前後方向および左右方向の寸法が接着層3とほぼ同じである方形の拘束板4を用いることが好ましい。後者の場合、左右方向の寸法が接着層3とほぼ同じであり、かつ前後方向の寸法が前端の接着層3の前縁と後端の接着層3の後縁との距離とほぼ同じである拘束板4を用いることが好ましい。
【0058】
ヒートシンク5は、アルミニウム、銅などの高熱伝導性材料、ここではアルミニウムで形成されており、波頂部、波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部とからなるコルゲート状であり、波頂部および波底部の長さ方向を前後方向に向けて、拘束板4にろう付されている。なお、複数の拘束板4が放熱板2にろう付されている場合、拘束板4と同数のヒートシンク5が各拘束板4にろう付される場合と、拘束板4よりも少数のヒートシンク5が複数の拘束板4に跨ってろう付される場合とがある。
【0059】
冷却ジャケット6は全体に箱状となされ、その内部に、全周が周壁9により囲繞されるとともに上方に開口した放熱フィン収容部11が設けられている。冷却ジャケット6の周壁9の前壁部に冷却液入口パイプ(図示せず)が、後壁部に冷却液出口パイプ(図示せず)が、それぞれ放熱フィン収容部11内に通じるように、溶接などによって接続されている。
【0060】
また、冷却ジャケット6の左右壁部に、複数のねじ穴14がそれぞれ前後方向に間隔をおいて形成されている。そして、放熱板2の周縁部が冷却ジャケット6の周壁9上に載せられ、放熱板2を貫通したおねじ15(締結具)をねじ穴14にねじ嵌めることによって、冷却ジャケット6が放熱板2に固定され、これにより放熱フィン収容部11内にヒートシンク5が収容された状態で、放熱フィン収容部11の上端開口が放熱板2により閉鎖されている。
【0061】
なお、図示は省略したが、放熱板2の周縁部下面と、冷却ジャケット6の周壁9上端面との間は、公知の適当なシール手段、たとえばOリングやガスケットによって液密状にシールされている。したがって、入口パイプから送り込まれた冷却液が冷却ジャケット6内の放熱フィン収容部11を後方に流れ、出口パイプから送り出されるようになっている。
〔接着性フィルム〕
次に、本発明に係る接着性フィルムの製造方法について説明する。
まず、接着性フィルムの主成分とする組成物の生成について、以下に説明する。 ちなみに、前記接着層は、接着性フィルムを本焼成し、硬化して形成されたものである。
【0062】
〔組成物の生成〕
本発明に係る組成物は、シリケート化合物と、末端をシリケート変性したポリジメチルシロキサンとを有する混合物を、加水分解反応および縮合反応することによって得られたものである。まず、この組成物の製造方法について以下に具体的に説明する。
【0063】
攪拌装置、温度計、滴下ラインを取り付けた反応容器に、エチルシリケート(多摩化学工業株式会社製、シリケート40 n=4〜6 またはシリケート45 n=6〜8)1.0gと、エチルシリケートを両末端にアルコキシ変性したポリジメチルシロキサン(質量平均分子量;32,000相当)(荒川化学株式会社製HBSIL039)32.0gとを入れ、大気中(室温)にて約30分間、攪拌混合し、混成物である原料液Aを得た。
ここで、エチルシリケートと、エチルシリケートを両末端にアルコキシ変性したポリジメチルシロキサンで用いられたシリケートは、同じ種類および同じ特性を持つシリケートを使用した。
【0064】
そして、原料液Aを加水分解工程および縮合工程にて、必要量の水0.93gを約1時間かけて滴下して加え、攪拌混合した。
その後、攪拌しながら約30分かけて室温まで自然冷却し、組成物(接着材)を得た。
【0065】
〔接着性フィルムの成形〕
前記接着材は液状(「ゾル」とも呼ぶ。)であるので、接着材から接着性フィルムに成形するには、接着材を金型等のトレイに塗布し、乾燥焼成処理によって施し、半固体(「半硬化」「ゲル」とも呼ぶ。)させてシート状に成形する必要がある。
【0066】
前記接着材を、仕上がりで200μmの厚みになるように均一に金型等のトレイに塗布した後、高温炉〔(「オーブン」とも呼ぶ。)アドバンテック東洋株式会社製のDRC433FA〕に120℃で3時間、乾燥焼成処理を行い、接着材を硬化させ、接着性フィルムを完成させた。
【0067】
〔パワーモジュールの製造方法〕
パワーモジュール用ベース1は次のようにして製造される。
すなわち、接着層3設けられた面側に放熱板2を積層し、放熱板2における接着層3とは反対側の面に、拘束板4を積層し、拘束板4における放熱板2とは反対側の面にヒートシンク5を配置する。放熱板2と拘束板4との間、および拘束板4とヒートシンク5との間には、それぞれそれぞれAl−Si系合金、Al−Si−Mg系合金などからなるシート状アルミニウムろう材を介在させておく。
【0068】
ついで、放熱板2、拘束板4およびヒートシンク5を適当な手段で仮止めし、接合面に適当な荷重を加えながら、真空雰囲気中または不活性ガス雰囲気中において、570〜600℃に加熱することによって、放熱板2と拘束板4、および拘束板4とヒートシンク5とをそれぞれ同時にろう付する。その後、冷却ジャケット6を放熱板2に固定する。これまでに、パワーモジュール用ベースとして完成する。
【0069】
前記接着性フィルム(半硬化接着層)を、被接着材となる、半導体素子Pと、ハイブリッドカー車両に設ける電動モータとの配線するための、フィルム状のFPC〔フレキシブルプリント配線基板(図示せず)〕の下面と、前記パワーモジュール用ベースの放熱板2としてのアルミニウム平板2上面とする双方の接着面に、密着または接着させて固定(保持)し、所望なれば所定の厚みの間隔を介して、被接着材の接着面同士を重ね合わせる。
【0070】
次に、前記接着性フィルムを接着した前記一対の被接着材を、乾燥焼成処理としてのオーブンによって、通常200℃以上の温度で加熱処理(本焼成)し、硬化させて、接着性フィルム(半硬化接着層)は、接着層として形成され、被接着材同士が接着される。そして、半導体素子Pを、接着したFPCの上面にのせ、はんだ付で接合されることにより装着される。こうして、パワーモジュールが製造される。
【0071】
上記実施形態1において、FPCと放熱板2の接着接合として、接着性フィルムを使用しているが、これに代えて、本発明の接着材を用いた接着を行ってもよい。
【0072】
〔評価1 低分子シロキサンの揮発量測定〕
(測定試験片シート)
前記した組成物をシャーレ(直径103mm)に仕上がりで1mmの厚みになるように注入し、高温炉〔(「オーブン」とも呼ぶ。)アドバンテック東洋株式会社製のDRC433FA〕に200℃で2時間、乾燥焼成処理を行い、その後、シャーレから脱型して、測定試験片シート(直径103mm、厚さ1mm)とした。
【0073】
(シリコーンゴム)
また、比較対象となる従来のシリコーン樹脂として、シリコーン樹脂を主成分とするシリコーンゴムを採用し、市販されているタイガースポリマー株式会社製のSR−50を採用し、直径103mm、厚さ1mmのシートを作成した。
【0074】
(評価機器)
低分子のシロキサンの揮発成分である環状シロキサンの残量を測定するため、評価機器は、加熱脱着器〔Twister Desorption Unit(以下、「TDU」と略す。)〕(Gerstel社)のCooled Injection System(以下、「CIS」と略す。)付ガスクロマトグラフ質量分析計〔Gas Chromatography Mass Spectrometry(以下、「GC−MS」と略す。)〕を用いた。尚、GC−MS装置は、アジレントテクノロジー社製5975Bシステムである。
【0075】
(評価方法)
試料中の揮発性成分を気化させるため、TDUによってサンプルホルダーの試料にヘリウムガスを流しながら加熱した。そして、ヘリウム中に気化したアウトガスをCISユニット中の吸着管に吸着させた後、吸着管に捕集されたアウトガスをGC−MS装置に流して、揮発性成分の種類と量とを測定した。GC−MS装置のカラムは、キャピラリーカラム(液層:フェニルメチルシロキサン)である。
【0076】
(測定条件の詳細)
加熱部は、TDUにて、160℃/minで40℃〜200℃(ホールド時間5分)まで昇温加熱し、不活性キャピラリ管(温度:350℃)を通して、質量分析を実施した。
【0077】
GC−MS装置は、注入口温度:−150℃〜12℃/秒〜325℃、カラム:Agilent
19091S−433(カラム長さ60m カラム内径0.25mm カラム膜厚0.25μm)、オーブン:40℃〜25℃/min〜300℃(ホールド時間10分)、ヘリウム流量:1.2mL/min、MSイオン源温度230℃:、MS四重極温度:150℃、MSイオン化電圧:69.9eV)、スキャン範囲:m/z 100〜1000
である。ここで、MSは、Mass Spectrometryの略である。
【0078】
(評価結果)
評価結果を、表1に示す。この表1は、揮発成分のうち150℃以上260℃以下での高温下で揮発が懸念されるD3〜D15のシロキサンの価数の領域に分類し、それぞれの揮発成分量をまとめたものである。
【0079】
表1により、本発明に係る組成物からなる測定試験片シートと、従来のシリコーンゴムとを比較すると、従来のシリコーンゴムは、価数が3〜15にて環状シロキサンの揮発が見られるが、測定試験片シートは、環状シロキサンの揮発が全く見られないことがわかる。つまり、本発明に係る組成物は、低分子のシロキサンが残留していない(価数が15までのシロキサンを含まない)ことがわかる。
【0080】
【表1】

【0081】
尚、表1において縦軸は揮発量を表し、「0.00E+00」は、0.00×10すなわち0、「3.50E+08」は、3.50×10の意味である。
また、揮発量は、ピーク面積として表し、単位はCounts(「ct」と略す)である。また、横軸は、環状シロキサンの価数である。
【0082】
〔評価2 耐熱接着強度試験〕
(測定試験片S)
前記した組成物をそれぞれアルミニウム板(長さ80mm、巾20mm、厚さ2mm)である、一対の被接着材の夫々の接着面(面積20mm×15mm=300mm2)に厚み100μmになるよう塗布し、これらを測定試験片として120℃、60分の予備加熱の後、200℃の条件で3時間プレキュア(前処理段階焼成)を行なった。プレキュア後の組成物塗布厚は40μmとなった。
【0083】
上記プレキュアした測定試験片の一対の接着面(組成物塗布面)同士を80μm厚の間隔を介して重ね合わせ、締付け治具によって5N/cmの圧力で締付けて250℃で5時間の本焼成を行った。本焼成後は常温で30分以上放置して測定試験片Sとした。接着層の厚みは40×2=80μmとなる。
【0084】
(比較例1)
また、比較対象となる従来のシリコーン樹脂のとして、シリコン樹脂系接着材の代表として、スーパーXクリア(セメダイン社製、品番AX−041)を用いた。被接着材として前記と同様なアルミニウム板を使用し、前記被接着材に塗布する接着材の厚さ、接着面の面積は、前記測定試験片と同様とした。即ち接着材を上記被接着材の一対の表面にそれぞれ40μm厚に塗布して10分間放置した後、接着面同士を80μm厚の間隔を介して重ね合わせ、締付け治具によって5N/cmの圧力で締付けた状態のまま、室温で24時間放置してシリコーン樹脂試験片を完成させた。
【0085】
(比較例2)
代表的なエポキシ樹脂として、ハイスーパー30(セメダイン社製、品番CA−193)を用いた。接着材の主成分はA液:エポキシ樹脂100%、B液:ポリチオール100%である。容積比で等量のA,B両液を充分に混合した後に、アルミニウム板である被接着材料の一対の表面にそれぞれ40μm厚に塗布して10分間放置した後、接着面同士を80μm厚の間隔を介して重ね合わせ、付け治具によって5N/cmの圧力で締付けた状態のまま、室温で24時間放置した後に100℃にて10分間熱処理を加えてエポキシ樹脂試験片を作成させた。
【0086】
(評価方法)
上記測定試験片S、比較例1のシリコーン樹脂試験片、および比較例2エポキシ樹脂試験片に対して耐熱接着強度試験を行った。耐熱接着強度試験としては、200℃、500時間保存試験における試験前後の接着強度を測定した。接着強度としては、各測定試験片に対して島津製作所製オートグラフAGS−J 5kN引張り試験機を使用して常温で引張りせん断力試験(JIS
K 6831に準拠)を測定した。更に200℃、1時間→−196℃、10分間の冷熱繰返し試験における接着層破壊の有無を調べた。上記耐熱接着強度試験の結果を表2〜3に示した。
【0087】
(評価結果)
評価結果を、表2〜3に示す。表2より、前記測定試験片Sは200℃、500時間の保存試験では試験前よりも試験後の方が若干接着強度が向上するが、比較例1(シリコーン樹脂試験片)は大巾に接着強度が低下し、比較例2(エポキシ樹脂試験片)は接着層の破壊によって接着強度は0となった。また、200℃、500時間保存後の質量減少率も測定試験片Sは比較例1、比較例2の試験片よりも低く、特に比較例1の試験片は、質量減少率42%と圧倒的に大きい。また、冷熱繰返し接着試験にあっては、測定試験片Sは50回繰返しでも接着層の破壊は認められなかったが、比較例1の試験片では、僅か3.8回、比較例2の試験片では、繰返しすることなく低温下に置いただけで接着層が破壊した。
【0088】
また表3より、試験温度が0℃の時のせん断接着力は、前記測定試験片S、比較例1のシリコーン樹脂試験片、および比較例2エポキシ樹脂試験片共に、とくに差は現れていないが、試験温度が50℃以上より、測定試験片Sの接着力は、ほとんど変化がないのに対し、比較例1の試験片および比較例2の試験片は、接着力が急激に低下していることがわかる。つまり、測定試験片Sは、耐熱性に優れていることがわかる。
【0089】
【表2】

【表3】

【0090】
尚、表2において、引張りせん断(剪断)力の単位は、「N/mm」とし、質量減少率としての単位を、「%」とした。また、表3において縦軸は、せん断(剪断)接着力を表し、単位は、「Mpa」(メガパスカル)とし、横軸は温度を表し、単位は、「℃」とする。
【0091】
〔評価3 絶縁試験〕
(測定試験片V)
前記した組成物をシャーレ(直径103mm)に仕上がりで250μmの厚みになるように注入し、高温炉〔(「オーブン」とも呼ぶ。)アドバンテック東洋株式会社製のDRC433FA〕に200℃で2時間、乾燥焼成処理を行い、その後、シャーレから脱型して、測定試験片V(直径103mm、厚さ40μm)とした。測定試験片Vは5枚作成した。
【0092】
(評価方法)
上記測定試験片Vに対して絶縁試験を行なった。絶縁試験としては、JIS規格とする絶縁耐力(絶縁破壊電圧)測定(JIS C2110)に基づいて測定を実施した。また、側定時は、短時間破壊法を採用し、電圧を0〜5kvまで、平均10秒で絶縁破壊が起こるような一定の速度で上昇させたときの破壊した実測を求める。
実験治具としては、図2に示すような構成とする。測定試験片Vを電極の間に挟みこみ、試験容器内に浸される、フッ素不活性液体〔住友3M株式会社製のFC−72 フロリナート〕の中に、入れる。耐電圧試験機として、菊水電子工業製 TOS5050Aを使用し、電圧を0〜5kvまで上げていく。
固体電気絶縁材料が電圧に耐え得る能力を示す絶縁破壊電圧(kv)、 絶縁破壊強の強さ(kv/s)、耐電圧を測定する。
【0093】
(評価結果)
評価結果より、測定試験片V5枚は、耐電圧4〜5kvまで、電圧に耐ええる結果となった。つまり、絶縁性を有しているがわかる。
【0094】
前記した実施例は、説明のために例示したものであって、本発明としてはそれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲、明細書および図面の記載から当業者が認識することができる本発明の技術的思想に反しない限り、変更、削除および付加が可能である。
【0095】
前記した実施例1においては、エチルシリケートと、エチルシリケートを両末端にアルコキシ変性したポリジメチルシロキサンで用いられたシリケートは、同じ種類および同じ特性を持つシリケートを使用した。この場合、似通った反応性を有しているため、反応速度が同じぐらいとなり、好ましい。
【0096】
しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、異なった種類・特性同士(例えば、エチルシリケートとメチルシリケートを用いる場合、純度が異なるエチルシリケートを用いる場合)のシリケートを使用しても良い。この場合は、互いの反応速度に差が発生するため、反応速度を同じにするための合成時間の調整や、製造の条件を変更する必要がある。
【0097】
前記組成物を加熱硬化させる乾燥焼成処理としての高温炉(「オーブン」とも呼ぶ。)が一般的であるが、組成物に硬化剤を混成して、オーブンを必要としない硬化させる方法でもよい。
【0098】
また、前記した実施例1において、組成物を被接着材に塗布した後、乾燥焼成処理を行うにあたっての加熱初期に関しては、オーブン等の加熱器内の温度を、前記組成物を塗布した被接着材を投入する前に設定温度に十分高くしておき、その加熱器に前記組成物を塗布した被接着材を投入して初期から急激な加熱を行うことが望ましい。これにより、前記組成物を有した被接着材の特性のばらつきを最小限にすることができる。
【0099】
また、前記組成物には必要に応じて、前記変性PDMSと共に、シランカップリング剤を使用してもよい。
【0100】
前記シランカップリング剤としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン、ジプロピルジブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン、N−ヘキシルトリメトキシシラン、N−ヘキシルトリエトキシシラン、N−オクチルトリエトキシシラン、N−デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルトリメトキシシラン、ジフェニルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン、ビニルシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性シランカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤を添加すると、接着層の柔軟性や接着性が改良される。
【0101】
また、前記接着層には充填材が混合されていることが望ましく、前記充填材は窒化金属および/または窒化類金属および/または酸化金属および/または酸化類金属であることが望ましい。
【0102】
前記で使用される充填材として、主として金属、金属酸化物、金属窒化物および金属炭化物の微粒子がある。上記充填材を更に具体的に例示すれば、例えば銅、アルミニウム、銀、ステンレススチール等の金属粉、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ニッケル、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化バナジウム、酸化セリウム、酸化銅、酸化鉄、酸化銀等の金属あるいは類金属の酸化物、または窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウム等の金属あるいは類金属の窒化物、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化タンタル、炭化チタン、炭化鉄、炭化ホウ素等の金属あるいは類金属の炭化物等の微粒子がある。上記充填材の粒子形状は、球状、フレーク状、針状のいずれでもよいが、その平均粒子径は、通常、0.1μm〜50μm(レーザー散乱法による)の範囲内であることが望ましい。本発明で使用される充填材は、粒子径の異なる2種以上の同種または異種の混合物として使用することが好ましい。前記充填材の粒子径の差は、3倍以上であることが望ましい。上記充填材、特に窒化金属、窒化類金属、酸化金属、酸化類金属は前記組成物の熱伝導率、絶縁性、導電性を改良する。
【0103】
更に本発明の接着材には、フェライト、希土類元素を含む磁性材料、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、ケイ藻土、ドロマイト、石膏、タルク、クレー、マイカ、セピオライト、ケイ酸カルシウム、ベンナイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、鉄粉、アルミニウム粉、石粉、高炉スラグ、フライアッシュ、セメント、ジルコニア粉等の無機充填材、アスベスト繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維、ロックウール、ウィスカー等の無機繊維、合成樹脂、ゴム、エラストマー等が添加されてもよい。
【0104】
また、前記接着材を、被接着材の接着面上に塗布する方法として、例えば、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、ディップコート法等がある。前記組成を該被接着材の接着面上に塗布する前に、予め、前記接着面を脱脂洗浄してもよい。また、所望により、前記接着面をプライマー処理して形成される接着層と接着面との接着性を向上させてもよい。
【0105】
また、本発明は、以下のように把握できる。
(第5発明)
シリケート化合物と、末端をシリケート変性したポリジメチルシロキサンとを有する混合物を、加水分解反応および縮合反応することによって得られたものを主成分とする組成物を、一対の被接着材の一方または双方の接着面に塗布し、
該一対の被接着材の接着面を重ね合わせ、加熱硬化して接着させる接着方法。
【0106】
(第6発明)
前記第5発明に記載の接着性フィルムを、一対の被接着材の一方または双方の接着面に設置し、この状態で該一対の被接着材の接着面を重ね合わせ、該接着性フィルムを加熱硬化させ接着することを特徴とする接着方法。
【0107】
(第7発明)
電気自動車(ハイブリッドカー)等の車両に適用される、パワーモジュールに有したことを特徴とする、前記請求項1乃至4のいずれか1項に記載の接着構造体。
【0108】
前記する接着材を塗布する方法および塗布装置としては、これに限定されるものではなく、前記接着材を塗布できるものであれば、方法・手段については問わない。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明に係る接着構造体および接着性フィルムは、耐熱性の高い接着性と絶縁性とを兼ね備え、かつ、低分子のシロキサンの残留する量が極めて少ない、あるいは全く含まない組成物を主成分とした接着材からなる接着層を有した接着構造体、および前記接着材からなる接着性フィルムを提供できる。
【符号の説明】
【0110】
1…パワーモジュール、2…放熱板(例えば、アルミニウム平板)、3…接着層、
4…拘束板、5…放熱フィン(例えば、ヒートシンク)、6…冷却ジャケット、
9…周壁、11…放熱フィン収容部、P…半導体素子(例えば、IGBT)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリケート化合物と、末端をシリケート変性したポリジメチルシロキサンとを有する混合物を、加水分解反応および縮合反応することによって得られた組成物を主成分とする接着材からなる接着層によって、
一対の被接着材を接着したことを特徴とする接着構造体。
【請求項2】
前記シリケート化合物は、
〔化学式1〕 SinO(n−1)(RO)2(n+1) (R=アルキル基、n=4〜16)
であり、
前記末端をシリケート変性したポリジメチルシロキサンは、
〔化学式2〕 SinO(n−1)(RO)2(n+1) (OSi(CH3)2)m(RO)2(n+1)SinO(n−1)
(R=アルキル基、n=4〜16、m>50)
で表されることを特徴とする請求項1に記載の接着構造体。
【請求項3】
前記シリケート化合物(A)と、
前記末端をシリケート変性したポリジメチルシロキサン(B)の配合の割合が、
A/Bのモル比にて、0.1以上10以下の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の接着構造体。
【請求項4】
前記組成物は、260℃以下でガスクロマトグラフ(GC−MS)により測定した場合に、価数が15以下のシロキサンを含まないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の接着構造体。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれか1項に記載の組成物からなる接着材を、離型性基材面に塗布し、
常温または加熱して縮合反応を進めると共に、接着材の一部を揮散させて半硬化状態の半硬化接着層を形成し、
該半硬化接着層を該離型性基材面から剥離することによって得られることを特徴とする接着性フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−160942(P2009−160942A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2009−99268(P2009−99268)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000251288)鈴鹿富士ゼロックス株式会社 (156)
【Fターム(参考)】