説明

接着複合体

【課題】優れた接着性及び耐熱性を有する変性ポリオレフィン系樹脂を含有する接着剤により金属製材料からなる成形体が接着された接着複合体を提供する。
【解決手段】(A)少なくとも2つの成形体が(B)変性ポリオレフィン系樹脂組成物を含有する接着剤により接着された接着複合体であって、(A)成形体の少なくとも1つが(a−1)金属製材料からなる成形体であり、(B)変性ポリオレフィン系樹脂組成物が(b−1)ポリオレフィン系樹脂に(b−2)エポキシ基含有ビニル単量体及び(b−3)芳香族ビニル単量体を、またはさらに(b−4)(メタ)アクリル酸エステル単量体をグラフト反応させて成る変性ポリオレフィン系樹脂組成物である接着複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂からなる成形体と金属製材料からなる成形体を、または2つ以上の金属製材料からなる成形体を、エポキシ基含有ビニル単量体及び芳香族ビニル単量体を、またはさらに(メタ)アクリル酸エステル単量体をポリオレフィン系樹脂にグラフト反応させて成る変性ポリオレフィン系樹脂組成物で接着させた接着複合体に関する。自動車内装部材、建材、住宅資材などに好適に使用できる。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車内装部材に用いられる接着剤は、溶剤系接着剤が主流であり、成形品に直接塗布した後、乾燥し速やかに二次加工工程で供される。通常、溶剤系接着剤は、スプレーにより成形品に塗布されているが、飛散によるロスや作業環境の悪化、塗装ムラなどの問題点がある。
【0003】
ホットメルト接着剤は、溶融状態で塗布し、冷却して接着が完了する簡便な接着剤であり、昨今のVOCフリー要求を満足する利点から、様々な産業で使用されている。自動車内装用天井材等のホットメルト接着剤として、ポリプロピレンフィルムの両面にエチレン・メチルアクリレート・無水マレイン酸三次元共重合体とエチレン・メチルメタクリレート共重合体からなるホットメルト接着剤が開示されている(特許文献1)。しかしながら、被着体と接着剤との層間強度は不充分であり、また自動車内装部材用に必要な耐熱性を満足する強度は得られていない。また、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、非晶性ポリプロピレン、スチレン系ブロック共重合体をベースポリマーとし、これに様々な粘着付与剤、オイル、ワックスなどが加えてなるホットメルト接着剤が開示されている(特許文献2)。ポリプロピレン等の低極性被着体同士、またこれと木質材や布等の高極性被着体に対する接着性能を発現することは可能であるが、耐熱性に乏しいという欠点を有している。
【特許文献1】特開平8−1877号公報
【特許文献2】特開平12−226561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
優れた接着性及び耐熱性を有する変性ポリオレフィン系樹脂を含有する接着剤により金属製材料からなる成形体が接着された接着複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上述の現状に鑑み、鋭意検討した結果、ポリオレフィン系樹脂にエポキシ基含有ビニル単量体及び芳香族ビニル単量体を、またはさらに(メタ)アクリル酸エステル単量体をグラフト反応させてなる変性ポリオレフィン系樹脂組成物を接着剤に用いるとポリオレフィン系樹脂からなる成形体と金属製材料からなる成形体をまたは金属製材料からなる成形体同士を強固に接着することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の第1は、(A)少なくとも2つの成形体が(B)変性ポリオレフィン系樹脂組成物を含有する接着剤により接着された接着複合体であって、(A)成形体の少なくとも1つが(a−1)金属製材料からなる成形体であり、変性ポリオレフィン系樹脂組成物が(b−1)ポリオレフィン系樹脂に(b−2)エポキシ基含有ビニル単量体及び(b−3)芳香族ビニル単量体を、またはさらに(b−4)(メタ)アクリル酸エステル単量体をグラフト反応させて成る変性ポリオレフィン系樹脂組成物である接着複合体に関する。
【0007】
本発明の第2は、前記(A)成形体の少なくとも2つが(a−1)金属製材料からなる成形体であることを特徴とする、第1に記載の接着複合体に関する。
【0008】
本発明の第3は、前記(A)成形体の少なくとも1つが(a−1)金属製材料からなる成形体であり、他の少なくとも1つが(a−2)ポリオレフィン系樹脂からなる成形体であることを特徴とする、第1〜2のいずれかに1項に記載の接着複合体に関する。
【0009】
本発明の第4は、(b−1)ポリオレフィン系樹脂が、プロピレン単位が過半量であるポリプロピレン系樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着複合体に関する。
【0010】
本発明の第5は、(B)変性ポリオレフィン系樹脂組成物を含有する接着剤が、変性ポリオレフィン系樹脂組成物を50〜100重量%含有する接着剤である、第1〜4のいずれか1項に記載の接着複合体に関する。
【0011】
本発明の第6は、(B)変性ポリオレフィン系樹脂組成物を含有する接着剤が、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、変性ポリオレフィン系樹脂組成物を0.1〜100重量部含有するポリオレフィン系樹脂組成物である、第1〜4のいずれか1項に記載の接着複合体に関する。
【0012】
本発明の第7は、(a−1)金属製材料が、鉄鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、ガルバリウム鋼板及び亜鉛めっき鋼板から選ばれる少なくとも1種である、第1〜6の何れか一項に記載の接着複合体に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の接着複合体においては、変性ポリオレフィン系樹脂組成物を接着剤に用いることにより、金属製基材に対し優れた接着力を確保することができ、特に高温雰囲気下においても高い接着性能を維持することができる。得られた接着複合体は、文具、雑貨、レトルト食品などの包装材、各種自動車用部品、金属樹脂複合板や化粧鋼板などの建材・住宅資材、家電などの電気電子部品、各種産業用資材などの幅広い分野に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の詳細について述べる。
【0015】
本発明の接着複合体は、(A)少なくとも2つの成形体が(B)変性ポリオレフィン系樹脂組成物を含有する接着剤で接着されたものである。(A)成形体の少なくとも1つが(a−1)金属製材料からなる成形体であることが必須であり、必要に応じて(a−2)ポリオレフィン系樹脂からなる成形体を併用してもよい。(B)接着剤として、(b−1)ポリオレフィン系樹脂に対して、(b−2)エポキシ基含有ビニル単量体、(b−3)芳香族ビニル単量体、及び必要に応じて(b−4)(メタ)アクリル酸エステル単量体をグラフト反応させて成る変性ポリオレフィン系樹脂組成物を使用することにより、各層間が強固に接着された接着複合体とすることができる。
【0016】
<<(b−1)ポリオレフィン系樹脂について>>
前記(b−1)ポリオレフィン系樹脂とは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンおよび/または1−ブテンとのあらゆる比率でのランダム共重合体またはブロック共重合体、エチレンとプロピレンとのあらゆる比率においてジエン成分が50重量%以下であるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンとエチレンおよび/またはプロピレンとの共重合体などの環状ポリオレフィン、エチレンまたはプロピレンと50重量%以下のビニル化合物などとのランダム共重合体、ブロック共重合体などが挙げられる。
【0017】
中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソブチレンが好ましく、ポリプロピレンが特に好ましい。
【0018】
また、極性基を有する不飽和カルボン酸単量体と相溶し易い点で、極性基が導入されたポリオレフィン樹脂も使用できる。極性基が導入されたポリオレフィン樹脂の具体例としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、アクリル酸変性ポリプロピレンなどの酸変性ポリプロピレン;エチレン/塩化ビニル共重合体、エチレン/塩化ビニリデン共重合体、エチレン/アクリロニトリル共重合体、エチレン/メタクリロニトリル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリルアミド共重合体、エチレン/メタクリルアミド共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン/アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸イソブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸金属塩共重合体、エチレン/メタクリル酸金属塩共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、又はその鹸化物、エチレン/プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体エチレン/アクリル酸エチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/ビニル単量体共重合体;塩素化ポリプロピレン塩素化ポリエチレンなどの塩素化ポリオレフィンなどが挙げられる。これらの極性基導入ポリオレフィンは混合しても使用できる。
【0019】
工業的規模で安価に製造できるという点でポリプロピレンが好ましい。
【0020】
前記原料ポリオレフィン樹脂には、必要に応じて、ほかの樹脂またはゴムを本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。
【0021】
前記ほかの樹脂またはゴムとしては、たとえばポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリイソブテン、ポリペンテン−1、ポリメチルペンテン−1などのポリα−オレフィン;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、プロピレン含有量が75重量%未満のプロピレン/ブテン−1共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/α−オレフィン共重合体;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/α−オレフィン/ジエン系単量体共重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン系共重合体;スチレン/ブタジエンランダム共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体ランダム共重合体;スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体ブロック共重合体;水素化(スチレン/ブタジエンランダム共重合体)などの水素化(ビニル単量体/ジエン系単量体ランダム共重合体);水素化(スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体)などの水素化(ビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体ブロック共重合体);アクリロニトリル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体グラフト共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンなどのビニル重合体;塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体などのビニル系共重合体などがあげられる。
【0022】
ポリオレフィン樹脂に対するこれらほかの樹脂またはゴムの添加量は、この樹脂の種類またはゴムの種類により異なり、前述のように本発明の効果を損なわない範囲内にあればよいものであるが、通常、25重量%程度以下であることが好ましい。
【0023】
さらに、ポリオレフィン樹脂には必要に応じて、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸着剤などの安定剤、または架橋剤、連鎖移動剤、核剤、滑剤、可塑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。
【0024】
また、これらポリオレフィン樹脂(各種の添加材料を含むばあいもある)は粒子状のものであってもペレット状のものであってもよく、その大きさや形はとくに制限されるものではない。
【0025】
また、前記の添加材料(ほかの樹脂、ゴム、安定剤および/または添加剤)を用いるばあいは、この添加材料は予めポリオレフィン樹脂に添加されているものであっても、ポリオレフィン樹脂を溶融するときに添加されるものであってもよく、また変性ポリオレフィン系樹脂を製造したのちに適宜の方法でこの変性ポリオレフィン系樹脂に添加されるものであってもよい。
【0026】
ポリオレフィン樹脂におけるプロピレン成分に関しては、ポリオレフィン樹脂に対しラジカルが発生し易くなる点で、プロピレン単位が過半量であることが好ましい。ここでいう過半量とはポリオレフィン樹脂に対するプロピレン成分が50重量%以上のことを意味する。
【0027】
<<(b−2)エポキシ基含有ビニル単量体について>>
エポキシ基含有ビニル単量体としては、特に制限されないが、好ましくは炭素数4〜20、より好ましくは4〜10のエポキシ基含有ビニル単量体である。例示するならば、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノグリシジル、マレイン酸ジグリシジル、イタコン酸モノグリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルコハク酸モノグリシジル、アリルコハク酸ジグリシジル、p−スチレンカルボン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレンなどのグリシジル基含有ビニル単量体、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテンなどのエポキシオレフィン、ビニルシクロヘキセンモノオキシドなどの1種または2種以上が挙げられる。
【0028】
これらのうち、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジルが安価という点で好ましい。前記エポキシ基含有ビニル単量体の添加量は、(b−1)ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.1〜100重量部であることが好ましく、0.5〜50重量部であることがさらに好ましい。また、(b−2)エポキシ基含有ビニル単量体の割合が、(b−1)ポリオレフィン系樹脂、(b−2)エポキシ基含有ビニル単量体及び(b−3)芳香族ビニル単量体の合計量が0.1〜50重量%の範囲であることが好ましく、0.5〜40重量%の範囲であることがより好ましく、1〜30重量%の範囲であることが特に好ましい。添加量が少なすぎると接着性が充分に改善されない傾向があり、添加量が多すぎると好適な形状や外観を有する樹脂組成物として取得できない傾向がある。
【0029】
<<(b−3)芳香族ビニル単量体について>>
芳香族ビニル単量体としては、特に制限されないが、好ましくは炭素数4〜20、より好ましくは6〜15の芳香族ビニル単量体である。例示するならば、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレンなどのメチルスチレン;o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、α−クロロスチレン、β−クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのクロロスチレン;o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレンなどのブロモスチレン;o−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、p−フルオロスチレン、ジフルオロスチレン、トリフルオロスチレンなどのフルオロスチレン;o−ニトロスチレン、m−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン、ジニトロスチレン、トリニトロスチレンなどのニトロスチレン;o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、トリヒドロキシスチレンなどのビニルフェノール;o−ジビニルスチレン、m−ジビニルスチレン、p−ジビニルスチレンなどのジビニルスチレン;o−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、p−ジイソプロペニルベンゼンなどのジイソプロペニルベンゼン;などの1種または2種以上が挙げられる。これらのうちスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどのメチルスチレン、ジビニルベンゼン単量体またはジビニルベンゼン異性体混合物が安価であるという点で好ましい。
【0030】
前記(b−3)芳香族ビニル単量体の添加量は、(b−1)ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.1〜50重量部であることが好ましく、0.5〜40重量部であることがさらに好ましく、1〜30重量部であることが特に好ましい。添加量が少なすぎるとポリオレフィン系樹脂に対するエポキシ基含有ビニル単量体のグラフト率が劣る傾向がある。一方、添加量が多すぎるとエポキシ基含有ビニル単量体のグラフト効率が飽和域に達するので、50重量部を上限とすることが好ましい。
【0031】
<<(b−4)(メタ)アクリル酸エステル単量体について>>
(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に制限されないが、好ましくは炭素数4〜20、より好ましくは4〜10の(メタ)アクリル酸エステルである。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルエチル、(メタ)アクリル酸ナフチル等が挙げられ、なかでも(メタ)アクリル酸メチルが安価である点で好ましい。
【0032】
前記(b−4)(メタ)アクリル酸エステル単量体を使用する場合の添加量は、(b−1)ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.01〜50重量部であることが好ましく、0.05〜40重量部であることがさらに好ましく、0.1〜30重量部であることが特に好ましい。添加量が少なすぎるとポリオレフィン系樹脂に対するエポキシ基含有ビニル単量体のグラフト率が劣る傾向がある。一方、添加量が多すぎるとグラフトに寄与しないフリーポリマーの副生する傾向があるので、芳香族ビニル単量体と同重量部を上限とすることが好ましい。
【0033】
<<ラジカル開始剤について>>
(b−1)ポリオレフィン系樹脂、(b−2)エポキシ基含有ビニル単量体、(b−3)芳香族ビニル単量体、及び(b−4)(メタ)アクリル酸エステル単量体を共重合する際、反応を促進するため、ラジカル開始剤を添加することができる。
【0034】
ラジカル重合開始剤としては、一般に過酸化物またはアゾ化合物などがあげられる。前記ラジカル重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;パーメタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの有機過酸化物の1種または2種以上があげられる。
【0035】
これらのうち、とくに水素引き抜き能が高いものが好ましく、そのようなラジカル重合開始剤としては、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの1種または2種以上があげられる。
【0036】
前記ラジカル重合開始剤の添加量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲内にあることが好ましく、0.2〜5重量部の範囲内にあることがさらに好ましい。0.01重量部未満では変性が充分に進行せず、10重量部を超えると流動性、機械的特性の低下を招く。
【0037】
本発明に用いるグラフト重合反応としては、特に制限されないが、溶液重合法、含浸重合法、溶融重合法などを用いることができ、これらの中で溶融重合法が好ましく、溶融混錬による重合法が簡便であり更に好ましい。
【0038】
溶融混練時の添加順序及び方法については、ポリオレフィン系樹脂とラジカル重合開始剤を溶融混練した混合物に、エポキシ基含有ビニル単量体、芳香族ビニル単量体を加え溶融混練する添加順序がよく、この添加順序で行うことでグラフトに寄与しない低分子量体の生成を抑制することができる。なお、そのほか必要に応じ添加される材料の混合や溶融混練の順序及び方法はとくに制限されるものではない。
【0039】
溶融混練時の加熱温度は、130〜300℃であることが、ポリオレフィン系樹脂が充分に溶融し、かつ熱分解しないという点で好ましい。また溶融混練の時間(ラジカル重合開始剤を混合してからの時間)は、通常30秒間〜60分間である。
【0040】
また、前記の溶融混練の装置としては、一軸又は多軸押出機、バンバリーミキサー、プラストミル、加熱ロールニーダー、などを使用することができる。生産性の面から減圧装置を装備した単軸あるいは二軸押出機を用いる方法が好ましい。また、各々の材料を充分に均一に混合するために、前記溶融混練を複数回繰返してもよい。
【0041】
<<(B)変性ポリオレフィン系樹脂組成物を含有する接着剤について>>
前記変性ポリオレフィン系樹脂組成物は、それ自体を接着剤として使用してもよく、他の樹脂やフィラーなどを配合した組成物を接着剤として使用してもよい。
【0042】
配合するフィラーの具体例としては、特に限定されるものではないが、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、ガラスビーズ、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、ワラストナイト、ケイ酸カルシウム繊維、炭素繊維、マグネシウムオキシサルフェート繊維、チタン酸カリウム繊維、酸化チタン、亜硫酸カルシウム、ホワイトカーボン、クレー、モンモリロナイト、硫酸カルシウム、各種フレーク等を挙げることができる。これらのフィラーは、界面活性剤、カップリング剤等で表面処理を施されていてもよい。また、これらのフィラーは、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0043】
配合する樹脂の具体例としては、特に限定されるものではないが、前記(b−1)成分として例示したポリオレフィン系樹脂、その他の樹脂およびゴムに加えて、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、(変性)ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレン系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、また2種以上を併用してアロイとしてもよい。
【0044】
変性ポリオレフィン系樹脂組成物の含有量が多いほど接着性に優れるという観点からは、(B)変性ポリオレフィン系樹脂組成物を含有する接着剤が、変性ポリオレフィン系樹脂組成物を50〜100重量%含有する接着剤であることが好ましく、75〜100重量%含有することがより好ましく、80〜100重量%含有することが特に好ましい。一方、コストダウンや材料設計の観点からは、変性ポリオレフィン系樹脂組成物を50重量%以下とし、他の樹脂を50重量%以上配合して使用することが好ましい。
【0045】
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、添加剤として、ポリオレフィン系樹脂に添加しても、接着性を向上することができる。ここで用いるポリオレフィン系樹脂は、(b−1)成分として用いるポリオレフィン系樹脂と同じものであってもよく、異なっていてもよい。
【0046】
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂が配合されるポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリプロピレン単独重合体、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンおよび/または1−ブテンとのあらゆる比率でのランダム共重合体またはブロック共重合体、エチレンとプロピレンとのあらゆる比率においてジエン成分が50重量%以下であるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンとエチレンおよび/またはプロピレンとの共重合体などの環状ポリオレフィン、エチレンまたはプロピレンと50重量%以下のたとえば酢酸ビニル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニルなどのビニル化合物などとのランダム共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーブロック共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー(ポリプロピレンとエチレン/プロピレン共重合体又はエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体の単純混合物、その一部架橋物、又はその完全架橋物)などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0047】
剛性が高く、安価であるという点からはポリプロピレン単独重合体が好ましく、剛性および耐衝撃性がともに高いという点からはプロピレンとほかの単量体とのブロック共重合体であることが好ましい。また、柔軟性が必要な場合にはポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0048】
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂をポリオレフィン系樹脂に配合する際にその配合量は特に限定はないが、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、0.1〜100重量部、更には0.1〜70重量部を含有させることが好ましい。より好ましくは0.3〜50重量部であり、更に好ましくは0.5〜20重量部である。ポリオレフィン系樹脂に対する充分な改質効果を得るためには変性ポリオレフィン系樹脂の量が多いほど好ましいが、逆に多すぎるとポリオレフィン系樹脂本来の機械特性が低下し、またコストダウンの効果を得にくい場合がある。
【0049】
(B)変性ポリオレフィン系樹脂組成物を含有する接着剤は、特に限定なく任意の性状のものを使用でき、目的に応じて使い分けることが出来る。全面接着による接着の信頼性という点からは、シートまたはフィルム状成形体に成形してホットメルト接着剤として用いることが好ましい。本発明のシートまたはフィルム状成形体とは、成形体の厚みとしては3μmから3mmが例示でき、好ましくは10μm〜1mmであり、シートあるいはフィルムとして利用することができるものである。
【0050】
本発明の優れた接着性を有するポリオレフィン系シートまたはフィルム状成形体の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば本発明のポリオレフィン系樹脂と変性ポリオレフィン系樹脂をドライブレンド、あるいは溶融混練した後に、各種の押出成形機、射出成形機、カレンダー成形機、インフレーション成形機、ロール成形機、あるいは加熱プレス成形機などを用いてシート状成形体に成形加工することが可能である。
【0051】
<<(A)成形体について>>
本発明の接着複合体は、少なくとも1つの(a−1)金属製材料からなる成形体を含む少なくとも2つ以上の成形体が(B)変性ポリオレフィン系樹脂組成物を含有する接着剤で接着されていれば良い。2つ以上の(a−1)金属製材料からなる成形体を含む組み合わせ、または少なくとも1つの(a−2)ポリオレフィン系樹脂からなる成形体と少なくとも1つの(a−1)金属製材料からなる成形体という組み合わせが、好ましい。さらに複数の成形体を接着しても良く、また、(a−1)(a−2)以外の被着体を組み合わせて接着しても良い。
【0052】
本発明の(a−1)金属製材料からなる成形体としては、金、銀、銅、鉄、錫、鉛、鉄鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、及び亜鉛系めっき鋼板等である。鉄鋼としては、炭素鋼、合金鋼、クロム鋼、マンガン鋼、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼等が挙げられ、亜鉛やアルミニウムなどでめっき処理されていても良い。ステンレス鋼としては、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、オーステナイト・フェライト系二相ステンレス鋼等が挙げられる。また、ステンレス鋼は、表面仕上げを施してあってもよく、例えば、圧延処理、研磨処理、ブラスト処理等が挙げられる。アルミニウム、アルミニウム合金としては、JIS1000番台(純アルミニウム)、JIS2000番台(Al−Cu系合金)、JIS3000番台(Al−Mn系合金)、JIS4000番台(Al−Si系合金)、JIS5000番台(Al−Mg系合金)、JIS6000番台(Al−Mg−Si系合金)、JIS7000番台(Al−Zn−Mg系合金)等が挙げられる。亜鉛系めっき鋼板としては、5%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板、55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板すなわちガルバリウム鋼板、アルミニウム−マグネシウム−亜鉛合金めっき鋼板、アルミニウム−マグネシウム−シリコン−亜鉛合金めっき鋼板、錫−亜鉛合金めっき鋼板、鉄−亜鉛合金めっき鋼板、ニッケル−亜鉛合金めっき鋼板等が挙げられる。また、めっきの方法は特に限定されず、溶融めっき法、電気めっき法、化学めっき法、浸透めっき法、溶射法、化学蒸着法、物理蒸着法等が挙げられる。さらに、めっき後、表面処理を施してもよく、処理方法としては、クロメート処理(光沢クロメート、有色クロメート、黒色クロメート、緑色クロメート)、不動態化皮膜処理(モリブデン酸、リン酸などを利用)、キレート形成皮膜処理(タンニン酸、多価フェノールなどを利用)、無機バリアー皮膜処理(ポリリン酸、ケイ酸、ジルコニウムなどを利用)、有機複合皮膜処理(有機複合シリケートなどを利用)、有機樹脂薄膜処理(有機樹脂中に防錆剤が配合)等が挙げられ、上市されているものの例としては、ジンコート21(新日本製鐵株式会社製)、シルバージンク21(新日本製鐵株式会社製)、エコフロンティアコート(JFEスチール株式会社製)、スミジンクネオコート(住友金属工業株式会社製)、タフジンクネオコート(住友金属工業株式会社製)、コーベジンクグリーンコート(株式会社神戸製鋼所製)、月星ジンク(日新製鋼株式会社製)、シルバートップエコ(東洋鋼鈑株式会社製)等がある。これらのうち鉄鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、及びガルバニウム鋼板を含む亜鉛系めっき鋼板が好ましい。
【0053】
本発明の(a−2)ポリオレフィン系樹脂からなる成形体としては、例えばポリプロピレン単独重合体、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンおよび/または1−ブテンとのあらゆる比率でのランダム共重合体またはブロック共重合体、エチレンとプロピレンとのあらゆる比率においてジエン成分が50重量%以下であるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンとエチレンおよび/またはプロピレンとの共重合体などの環状ポリオレフィン、エチレンまたはプロピレンと50重量%以下のたとえば酢酸ビニル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニルなどのビニル化合物などとのランダム共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーブロック共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー(ポリプロピレンとエチレン/プロピレン共重合体又はエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体の単純混合物、その一部架橋物、又はその完全架橋物)などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。(A)成分のポリオレフィン系樹脂は、(B)変性ポリオレフィン系樹脂組成物を含有する接着剤中に配合して用いるポリオレフィン系樹脂や(b−1)成分として用いるポリオレフィン系樹脂と同じものであってもよく、異なっていてもよい。
【0054】
本発明で用いられる(a−1)(a−2)以外の被着体の材料としては、例えば、本発明の接着性フィルムの接着樹脂層と接着し得る材料である。具体的には、例えば、紙、布などのセルロース系高分子材料、メラミン系樹脂、アクリル・ウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン・アクリロニトリル系共重合体、ポリカーボネート系樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などの合成高分子材料等が挙げられる。被着体の材料として、異なる2種類以上の材料を混合、複合してもよい。また、接着複合体が本発明の接着性フィルムを介して、異なる2つの被着体が接着してなるものである場合、2つの被着体を構成する材料は、同じ種類の材料でも異なる種類の材料のいずれでもよい。
【0055】
被着体の形状としては特に限定されないが、例えば、フィルム状、シート状、板状、繊維状などが挙げられ、これらの形状が組み合わさっていても、また、目的に応じて変形加工されていてもよい。また、被着体には、必要に応じて、離型剤、めっきなどの被膜、塗料による塗膜、プラズマやレーザーなどによる表面改質、表面酸化、エッチングなどの表面処理等を実施してもよい。
【0056】
本発明の接着複合体の用途の具体例としては、トリム類(ドアトリム、内装トリムなど)、成形天井、シート材(内装シート、インパネ表皮、装飾シートなど)、外装モール、センターピラー等の自動車部材や、二輪車、船舶、鉄道車両、航空機、室内ドア、パーティション、内装壁板、家具、システムキッチン、バスタブ等の住宅資材、楽器、家電製品、建築材料、容器、事務用品、スポーツ用品、玩具などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0057】
以下に具体的な実施例を示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。下記実施例および比較例中「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。
【0058】
<<被着体が樹脂と金属の組み合わせにおける接着評価>>
(製造例1)
ランダムポリプロピレン(プライムポリマー製J229E、MFR=50)100重量部、1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株)製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5重量部をシリンダー温度200℃、スクリュ回転数250rpmに設定した二軸押出機(30mmφ、L/D=28、(株)日本製鋼所製、製品名TEX30HSS)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中よりメタクリル酸グリシジル5重量部、スチレン5重量部を加え溶融混練して変性ポリオレフィン系樹脂ペレットを得た。次に得られたペレットを、シリンダー及びダイス温度200℃、スクリュ回転数100rpmに設定した単軸押出機(20mmφ、L/D=20、(株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)のホッパーに投入し、ダイス先端に取り付けたT型ダイスより、幅約13cm、厚み100μmのフィルム(B−1)を得た。
【0059】
(製造例2)
ランダムポリプロピレン((株)プライムポリマー製J229E、MFR=50)50重量部、ポリプロピレンエチレンラバー(ダウケミカル製V3401、MFR=8)50重量部、1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株)製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5重量部をシリンダー温度200℃、スクリュ回転数250rpmに設定した二軸押出機(30mmφ、L/D=28、(株)日本製鋼所製、製品名TEX30HSS)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中よりメタクリル酸グリシジル5重量部、スチレン5重量部を加え溶融混練して変性ポリオレフィン系樹脂ペレットを得た。次に得られたペレットを、シリンダー及びダイス温度200℃、スクリュ回転数100rpmに設定した単軸押出機(20mmφ、L/D=20、(株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)のホッパーに投入し、ダイス先端に取り付けたT型ダイスより、幅約13cm、厚み100μmのフィルム(B−2)を得た。
【0060】
(製造例3)
ポリプロピレンエチレンラバー(ダウケミカル製V3401、MFR=8)100重量部、1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株)製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5重量部をシリンダー温度200℃、スクリュ回転数250rpmに設定した二軸押出機(30mmφ、L/D=28、(株)日本製鋼所製、製品名TEX30HSS)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中よりメタクリル酸グリシジル5重量部、スチレン5重量部を加え溶融混練して変性ポリオレフィン系樹脂ペレットを得た。次に得られたペレットを、シリンダー及びダイス温度200℃、スクリュ回転数100rpmに設定した単軸押出機(20mmφ、L/D=20、(株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)のホッパーに投入し、ダイス先端に取り付けたT型ダイスより、幅約13cm、厚み100μmのフィルム(B−3)を得た。
【0061】
(製造例4)
ランダムポリプロピレン(プライムポリマー製J229E、MFR=50)100重量部、製造例1にて作成した変性ポリオレフィン系樹脂ペレット20重量部を、シリンダー及びダイス温度200℃、スクリュ回転数100rpmに設定した単軸押出機(20mmφ、L/D=20、(株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)のホッパーに投入し、ダイス先端に取り付けたT型ダイスより、幅約13cm、厚み100μmのフィルム(B−4)を得た。
【0062】
(参考製造例1)
ランダムポリプロピレン(プライムポリマー製J229E、MFR=50)を、シリンダー及びダイス温度200℃、スクリュ回転数100rpmに設定した単軸押出機(20mmφ、L/D=20、(株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)のホッパーに投入し、ダイス先端に取り付けたT型ダイスより、幅約13cm、厚み100μmのフィルム(B−5)を得た。
【0063】
(実施例1〜4、比較例1)
製造例1〜4、参考製造例1で得られたフィルム(B−1)〜(B−5)を用いてポリオレフィン系樹脂板と金属板を接着したテストサンプルを作成し、せん断強度を測定した。実施例、比較例で用いたテスト板を以下に示す。
(a−1−1)アルミニウム
(a−1−2)鋼板
(a−2−1)ポリプロピレン
【0064】
(180度剥離試験−被着体が樹脂と金属の組み合わせの場合−)
テストサンプルは、以下の方法で作成した。アルミプレート(25mm×150mm)とポリプロピレン板の間にフィルムを挟み、プレス機(プレス温度200℃、プレス時間1分)にて接着し、テストサンプルを得た。180度剥離強度評価は、島津製作所製AG−2000Aを用い、23℃にて引張テストスピード200mm/minで行った。結果を表1に示す。
【0065】
(せん断試験−被着体が樹脂と金属の組み合わせの場合−)
テストサンプルは、以下の方法で作成した。鋼板(25mm×100mm)とポリプロピレン板(25mm×100mm)の間にフィルムを挟み、プレス機(プレス温度200℃、プレス時間1分)にて接着し、テストサンプルを得た。せん断強度評価は、島津製作所製AG−2000Aを用い、23℃にて引張テストスピード50mm/minで行った。結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
実施例1〜3は溶融混練で製造された本発明の変性ポリオレフィン系樹脂であり、実施例4は本発明の変性ポリオレフィン系樹脂を含有する本発明のポリオレフィン系樹脂である。比較例1は変性ポリオレフィン系樹脂を含有しないポリオレフィン系樹脂である。実施例1〜4については、その接着性は高い。一方で比較例1では180度剥離強度は低く、接着性に劣ることが判る。
【0068】
<<被着体が金属同士での接着評価>>
(製造例5)
ホモポリプロピレン(プライムポリマー製S119、MFR=60)100重量部、1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株)製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5重量部をシリンダー温度200℃、スクリュ回転数150rpmに設定したベント付き二軸押出機(44mmφ、L/D=38.5、(株)日本製鋼所製、製品名TEX44XCT)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中よりメタクリル酸グリシジル5重量部、スチレン5重量部を加え溶融混練して変性ポリオレフィン系樹脂ペレットを得た。次に得られたペレットを、シリンダー及びダイス温度200℃、スクリュ回転数100rpmに設定した単軸押出機(20mmφ、L/D=20、(株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)のホッパーに投入し、ダイス先端に取り付けたT型ダイスより、幅約13cm、厚み100μmのフィルム(B−6)を得た。
【0069】
(製造例6)
ブロックポリプロピレン(プライムポリマー製J6083HP、MFR=60)100重量部、1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株)製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5重量部をシリンダー温度200℃、スクリュ回転数150rpmに設定したベント付き二軸押出機(44mmφ、L/D=38.5、(株)日本製鋼所製、製品名TEX44XCT)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中よりメタクリル酸グリシジル5重量部、スチレン5重量部を加え溶融混練して変性ポリオレフィン系樹脂ペレットを得た。次に得られたペレットを、シリンダー及びダイス温度200℃、スクリュ回転数100rpmに設定した単軸押出機(20mmφ、L/D=20、(株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)のホッパーに投入し、ダイス先端に取り付けたT型ダイスより、幅約13cm、厚み100μmのフィルム(B−7)を得た。
【0070】
(製造例7)
ランダムポリプロピレン(プライムポリマー製J229E、MFR=50)100重量部、1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株)製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5重量部をシリンダー温度200℃、スクリュ回転数150rpmに設定したベント付き二軸押出機(44mmφ、L/D=38.5、(株)日本製鋼所製、製品名TEX44XCT)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中よりメタクリル酸グリシジル5重量部、スチレン5重量部を加え溶融混練して変性ポリオレフィン系樹脂ペレットを得た。次に得られたペレットを、シリンダー及びダイス温度200℃、スクリュ回転数100rpmに設定した単軸押出機(20mmφ、L/D=20、(株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)のホッパーに投入し、ダイス先端に取り付けたT型ダイスより、幅約13cm、厚み100μmのフィルム(B−8)を得た。
【0071】
(製造例8)
ホモポリプロピレン(プライムポリマー製S119、MFR=60)100重量部、1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株)製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5重量部をシリンダー温度200℃、スクリュ回転数150rpmに設定したベント付き二軸押出機(44mmφ、L/D=38.5、(株)日本製鋼所製、製品名TEX44XCT)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中よりメタクリル酸グリシジル5重量部、スチレン5重量部、アクリル酸ブチル5重量部を加え溶融混練して変性ポリオレフィン系樹脂ペレットを得た。次に得られたペレットを、シリンダー及びダイス温度200℃、スクリュ回転数100rpmに設定した単軸押出機(20mmφ、L/D=20、(株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)のホッパーに投入し、ダイス先端に取り付けたT型ダイスより、幅約13cm、厚み100μmのフィルム(B−9)を得た。
【0072】
(製造例9)
製造例4で得られた変性ポリオレフィン系樹脂ペレット80重量部、ポリプロピレンエチレンラバー(ダウケミカル製V3401、MFR=8)20重量部をシリンダー温度200℃、スクリュ回転数150rpmに設定したベント付き二軸押出機(44mmφ、L/D=38.5、(株)日本製鋼所製、製品名TEX44XCT)に供給して溶融混練して変性ポリオレフィン系樹脂ペレットを得た。次に得られたペレットを、シリンダー及びダイス温度200℃、スクリュ回転数100rpmに設定した単軸押出機(20mmφ、L/D=20、(株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)のホッパーに投入し、ダイス先端に取り付けたT型ダイスより、幅約13cm、厚み100μmのフィルム(B−10)を得た。
【0073】
(参考製造例2)
ホモポリプロピレン(プライムポリマー製S119、MFR=60)を、シリンダー及びダイス温度200℃、スクリュ回転数100rpmに設定した単軸押出機(20mmφ、L/D=20、(株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)のホッパーに投入し、ダイス先端に取り付けたT型ダイスより、幅約13cm、厚み100μmのフィルム(B−11)を得た。
【0074】
(参考製造例3)
ブロックポリプロピレン(プライムポリマー製J6083HP、MFR=60)を、シリンダー及びダイス温度200℃、スクリュ回転数100rpmに設定した単軸押出機(20mmφ、L/D=20、(株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)のホッパーに投入し、ダイス先端に取り付けたT型ダイスより、幅約13cm、厚み100μmのフィルム(B−12)を得た。
【0075】
(参考製造例4)
ランダムポリプロピレン(プライムポリマー製J229E、MFR=50)を、シリンダー及びダイス温度200℃、スクリュ回転数100rpmに設定した単軸押出機(20mmφ、L/D=20、(株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)のホッパーに投入し、ダイス先端に取り付けたT型ダイスより、幅約13cm、厚み100μmのフィルム(B−13)を得た。
【0076】
(参考例)
市販品アドマーフィルム(東セロ製QE−080)をそのまま用いた(B−14)。
【0077】
(実施例5〜19、比較例2〜7)
製造例5〜9、参考製造例2〜4で得られたフィルム(B−6)〜(B−13)および市販接着フィルム(B−14)を用いて金属板を接着したテストサンプルを作成し、せん断強度を測定した。実施例、比較例で用いた金属板を以下に示す。
(a−1−3)フェライト系ステンレス鋼(SUS430)
(a−1−4)オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)
【0078】
(せん断試験−被着体が金属同士の場合−)
テストサンプルは、以下の方法で作成した。2枚の金属板(25mm×100mm)の間に、接着面の大きさが25mm×12.5mmとなるようにフィルムを挟み、プレス機(プレス温度220℃、プレス時間1分)にて接着し、テストサンプルを得た。せん断強度評価は、島津製作所製AG−2000Dを用い、−30℃、23℃、80℃のいずれかにて引張テストスピード50mm/minで行った。せん断強度は、せん断力(N)をせん断面積(mm2)で除して求めた(MPa)。また、破壊状態についても観察した。結果を表2に示す。
【0079】
【表2】

【0080】
実施例5〜19は溶融混練で製造された変性ポリオレフィン系樹脂を接着剤に用いており、いずれも非常に良好な接着性能を示し、破壊状態も凝集破壊であった。これに対して、比較例2〜4では、変性ポリオレフィン系樹脂を含有しないポリオレフィン系樹脂を接着剤に用いており、接着性は不十分で、試験機に装着するときに破壊してしまい評価できず、また、その破壊状態も界面剥離であった。比較例5〜7では、市販品の接着フィルムを用いているが、高温雰囲気下での接着強度は本発明の変性ポリオレフィン系樹脂よりも低い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも2つの成形体が(B)変性ポリオレフィン系樹脂組成物を含有する接着剤により接着された接着複合体であって、(A)成形体の少なくとも1つが(a−1)金属製材料からなる成形体であり、変性ポリオレフィン系樹脂組成物が(b−1)ポリオレフィン系樹脂に(b−2)エポキシ基含有ビニル単量体及び(b−3)芳香族ビニル単量体を、またはさらに(b−4)(メタ)アクリル酸エステル単量体をグラフト反応させて成る変性ポリオレフィン系樹脂組成物である接着複合体。
【請求項2】
前記(A)成形体の少なくとも2つが(a−1)金属製材料からなる成形体であることを特徴とする、請求項1に記載の接着複合体。
【請求項3】
前記(A)成形体の少なくとも1つが(a−1)金属製材料からなる成形体であり、他の少なくとも1つが(a−2)ポリオレフィン系樹脂からなる成形体であることを特徴とする、請求項1〜2のいずれかに1項に記載の接着複合体。
【請求項4】
(b−1)ポリオレフィン系樹脂が、プロピレン単位が過半量であるポリプロピレン系樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着複合体。
【請求項5】
(B)変性ポリオレフィン系樹脂組成物を含有する接着剤が、変性ポリオレフィン系樹脂組成物を50〜100重量%含有する接着剤である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着複合体。
【請求項6】
(B)変性ポリオレフィン系樹脂組成物を含有する接着剤が、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、変性ポリオレフィン系樹脂組成物を0.1〜100重量部含有するポリオレフィン系樹脂組成物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着複合体。
【請求項7】
(a−1)金属製材料が、鉄鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、ガルバリウム鋼板及び亜鉛めっき鋼板から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜6の何れか一項に記載の接着複合体。

【公開番号】特開2009−226921(P2009−226921A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267369(P2008−267369)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】