説明

接着部品を有するワイパブレード

【課題 】本発明は鉄/鉄の接着はもちろんのこと、樹脂、SEBS、EPDM、クロロプレンゴムなどの樹脂と合成ゴム、合成ゴム同士の接着、鉄/合成ゴムの異種材質の接着等幅広い用途において、優れた耐湿熱性を有し、かつ、耐薬品性にも優れたα−シアノアクリレート系接着剤組成物を用いて構成部品を接着したワイパブレードを提供すること。
【解決手段】 本発明では、必須成分として(A)α−シアノアクリレート、(B)(メタ)アクリロイル基を有する多官能性化合物、(C)過酸化物、(D)増粘剤を主成分とするシアノアクリレート系接着剤組成物によってワイパブレードにおける構成部品の相互接触面が接着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着部品を有するワイパブレードに係り、更に詳しくは、構成部品相互の接合に際して接着剤を用いるとともに、その接着性能を長期に亘って維持する耐久性を備えた接着部品を有するワイパブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にワイパブレードは、ウインドシールド面を払拭するブレードラバーと、当該ブレードラバーを保持するとともにワイパアームの先端部に連結されるレバーとを含んで構成されている。
【0003】
特許文献1には、全体としての高さ抑制を図るとともに、ブレードラバーによる払拭面への押圧力を良好に分配ないし維持することのできるワイパブレードが開示されている。同文献におけるワイパブレードは、ブレードラバーと、当該ブレードラバーを受容するフィン部材と、当該フィン部材の長手方向に沿う所定箇所に配置されて前記ブレードラバーを保持するグリッパと、ワイパアームの先端が連結されるとともに、ブレードラバーとフィン部材との間に配置されてグリッパと協働してブレードラバーを長手方向に保持するレバーと、ブレードラバーの長手方向に沿う領域内に取り付けられたバッキングとを備えて構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−22632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された構成にあっては、フィン部材とレバーとの相互接触面、フィン部材とグリッパとの相互接触面が接着剤による接合となっている。かかる接着剤としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の加熱硬化性接着剤や一液常温硬化型の瞬間接着剤であるα−シアノアクリレート系接着剤等が存在する。
しかしながら、加熱硬化性接着剤は硬化させるために加熱炉が必要であったり、仮止めが必要であったりするため作業性が悪い欠点がある。α−シアノアクリレート系接着剤は被着体表面に吸着されている微量の水分により急速にアニオン重合、硬化して、被着体同士を短時間で極めて強固に接着させることから、金属、プラスチック、ゴム、木材などの接着に広く利用されている。
【0006】
しかしながら、ワイパブレードは雨水を払拭するものであり、水に晒されながら機能するものであるのに対し、α−シアノアクリレート系接着剤は一般的に耐湿性・耐水性が悪いものとされている。その理由として、α−シアノアクリレート系接着剤硬化物自体が水やアルカリ性溶媒などによって分解することや、硬化物の柔軟性が乏しいために接着時に硬化歪みを生じやすく、外部応力や内部応力に対する緩和作用が乏しいことから、高湿熱下においては接着界面に及ぶ影響が大きいことなどが挙げられる。しかし、一液、常温で湿気により迅速に硬化すると言うメリットは捨て難く、生産性が良好で優れた耐湿性・耐水性を示すα−シアノアクリレート系接着剤でワイパブレードにおける構成部品間の接着の実現が望まれている。
【0007】
ところで、接着時に生じる内部応力、又は接着後の外部から加わる外部応力を緩和する手法としては、可撓性を付与する目的で飽和共重合ポリエステルを配合するもの(特開昭63−284279号公報)、ゴム状ポリマーとガラス状ポリマーのコアシェル構造体を配合するもの(特開平7−331186号公報)、更に、耐湿性、耐水性をも向上させるものとしてアクリロニトリルブタジエン共重合体を配合するもの(特開平7−53924号公報)などが報告されている。ただこれらの系では柔軟性及び耐湿耐水性付与剤がシアノアクリレート硬化物中に海島状に分散しているだけであり、湿気の侵入を防ぐには不完全で、シアノアクリレート自体の劣化を防ぐものではないため、高湿熱環境下において満足する耐湿熱性を有するとは言い難い。
【0008】
また、これらとは別にα−シアノアクリレート系接着剤に特定のアクリルモノマーを配合することで、硬化物そのものの耐湿熱性を向上させる手法が報告されている。C1〜C4のアルキルもしくはアルコキシ(メタ)アクリレートを添加したα−シアノアクリレート系接着剤が特開昭58−185666号公報で報告されているが、単官能(メタ)アクリレートでは湿気の侵入を防ぐには十分ではなかった。
【0009】
[発明の目的]
本発明は鉄/鉄の接着はもちろんのこと、樹脂やSEBS、EPDM、クロロプレンゴムなど、樹脂/合成ゴム、合成ゴム同士の接着、鉄/合成ゴムの異種材質の接着等幅広い用途において、優れた耐湿熱性を有し、かつ、耐薬品性にも優れたα−シアノアクリレート系接着剤組成物を用いて構成部品相互間を接合した接着部品を有するワイパブレードを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明は、ブレードラバーを含む複数の構成部品を備え、前記ブレードラバーが払拭面に接触して当該払拭面を払拭するワイパブレードにおいて、
前記構成部品の少なくとも二部品が、
(A)α−シアノアクリレート
(B)(メタ)アクリロイル基を有する多官能性化合物
(C)過酸化物
(D)増粘剤
上記(A)〜(D)を主成分とするシアノアクリレート系接着剤組成物によって接着される、という構成を採っている。
【0011】
より具体的には、払拭面を払拭するブレードラバーと、当該ブレードラバーを受容するフィン部材と、このフィン部材の領域内に受容されて前記ブレードラバーを保持するように設けられたレバーと、前記フィン部材とブレードラバーとの間に設けられたグリッパとを備えたワイパブレードにおいて、
前記フィン部材とレバーとの相互接触面、及びフィン部材とグリッパとの相互接触面の少なくとも一方が、
(A)α−シアノアクリレート
(B)(メタ)アクリロイル基を有する多官能性化合物
(C)過酸化物
(D)増粘剤
上記(A)〜(D)を主成分とするシアノアクリレート系接着剤組成物によって接着される、という構成を採っている。
【0012】
本発明において、前記フィン部材はSEBSであり、前記レバー及びグリッパの少なくとも一方は、鋼材にエポキシ樹脂カチオン電着塗装を施して形成されたものを対象とすることができる。
【0013】
また、前記接着剤の配合割合が、(A)成分に対して、(B)成分を1〜50重量%、(C)成分を0.01〜5重量%、(D)成分を1〜50重量%含有することが好ましい。
【0014】
更に、前記接着剤を構成する(B)成分が(メタ)アクリロイル官能基を三つ以上有するものであることが好ましい。
【0015】
また、前記接着剤を構成する(B)成分が(メタ)アクリロイル官能基を四つ以上有するものであることがより好ましい。
【0016】
更に、前記(D)増粘剤として、アクリルゴム或いはポリメタクリル酸メチルを採用するとよい。
また、前記シアノアクリレート系接着剤組成物によって接着される部品は、表面にプライマー処理が施されたプライマー部を有するものであるとよい。
【0017】
本発明に用いられるα−シアノアクリレートの種類としては、従来から公知のα−シアノアクリレートが使用可能である。具体的には、メチル−α−シアノアクリレート、エチル−α−シアノアクリレート、プロピル−α−シアノアクリレート、ブチル−α−シアノアクリレート、シクロヘキシル−α−シアノアクリレート等のアルキル及びシクロアルキル−α−シアノアクリレート、アリル−α−シアノアクリレート、メタリル−α−シアノアクリレート、シクロヘキセニル−α−シアノアクリレート等のアルケニル及びシクロアルケニル−α−シアノアクリレート、プロパンギル−α−シアノアクリレート等のアルキニル−α−シアノアクリレート、フェニル−α−シアノアクリレート、トルイル−α−シアノアクリレート等のアリール−α−シアノアクリレート、ヘテロ原子を含有するメトキシエチル−α−シアノアクリレート、エトキシエチル−α−シアノアクリレート、フルフリル−α−シアノアクリレート、ケイ素を含有するトリメチルシリルメチル−α−シアノアクリレート、トリメチルシリルエチル−α−シアノアクリレート、トリメチルシリルプロピル−α−シアノアクリレート、ジメチルビニルシリルメチル−α−シアノアクリレート等が挙げられる。この中でも性能的、コスト的な理由からエチル−α−シアノアクリレートが本発明に最も好ましい。
【0018】
本発明に用いられる(メタ)アクリレート(B)成分の種類は、アクリロイル基及びメタクリルロイル基を分子内に2個以上有する多官能性化合物である。
2官能(メタ)アクリレートの具体例としては、モノエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
4官能の(メタ)アクリレートの具体例としては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
5官能以上の(メタ)アクリレートの具体例としては、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。この他にもアクリロイル基及びメタクリロイル基を分子内に3個以上有するウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートを用いることができる。
この中でも、耐湿熱性、初期接着性共に良好で、最も好ましいのはジトリメチロールプロパンテトラアクリレートであり、NKエステル、AD−TMPとして新中村化学工業社から市販されている。
【0019】
上記(B)成分の配合量は、α−シアノアクリレート(A)成分に対し1〜50重量%で使用されることが適当であり、好ましくは5〜40重量%であり、更に好ましくは10〜30重量%である。(B)成分の添加量が1重量%未満であると良好な耐湿熱性が発現せず、また50重量%を越えると硬化不良及び強度低下をきたす。
【0020】
本発明に用いられる過酸化物(C)成分の具体例としては、一般に知られるハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド等の有機過酸化物である。これらの中で好ましい化合物としては、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(パーブチルI:日本油脂社製)、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3(パーヘキシン25B:日本油脂社製)、クメンハイドロパーオキサイド(パークミルH:日本油脂社製)である。
【0021】
上記(C)成分の配合量は、α−シアノアクリレート(A)成分に対し、0.01〜10重量%で使用されることが適当であり、より好ましくは0.05〜5重量%である。(C)成分の添加量が0.01重量%未満であると硬化性が悪くなり、また、10重量%を越えると、保存安定性が悪化する。
【0022】
前記(D)成分である増粘剤は組成物の粘度を増大させるために加えられる。増粘剤の例として、ポリメタクリル酸メチル、メタクリレートタイプ共重合体、アクリル系ラバー、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート及びポリ(α−シアノアクリレート)等があげられる。この中でも分子量が10万〜40万(g/mol)のポリ(メチル)メタクリレートを使用すると糸引きも少なく増粘することができ、より好ましい。
上記(D)成分の配合量は、α−シアノアクリレート(A)成分に対し、1〜50重量%で使用されることが適当であり、より好ましくは、5〜30重量%である。(D)成分の添加量が1重量%未満であると増粘及び補強効果が小さくなり、また、50重量%を越えると、保持安定性が悪くなり、且つ、糸引きが起こり易くなり、作業性が悪くなる。
【0023】
また、通常の多くの重合体添加剤もまた増粘及び強靭化のために加えられる。その例として、特公平4−75268号公報に記載されるようなアクリル系エラストマー(ゴム)、アクリロニトリル共重合体エラストマー(ゴム)、フルオロエラストマー及び微細シリカフィラー等の充填剤があげられる。また、微細シリカフィラーについてはあらかじめナノレベルのシリカフィラーを分散させている(B)成分、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートを用いることで、粘度を上昇させ過ぎずに樹脂強度を向上させることも可能である。また、アクリルゴムを増粘剤として使用すると耐衝撃性、耐はく離性が向上するため寄り好ましい。
【0024】
また、この発明の効果を損なわない限り、更に下記の成分の幾つかを加えても良い。
(1)アニオン重合禁止剤
(2)ラジカル重合禁止剤
(3)芳香族電子系配位子を含有する周期律表第8族遷移金属メタロセン化合物
(4)分子内開裂型光ラジカル開始剤
(5)硬化促進剤、タフナー及び熱安定剤のような特定添加物
(6)香料、染料、顔料等
【0025】
(1)アニオン重合禁止剤は、組成物の貯蔵安定性を増大させるために加えられる。既知の禁止剤の例として、二酸化硫黄、三酸化硫黄、酸化窒素、メタンスルホン酸、フッ化ホウ素、フッ化水素やp−トルエンスルホン酸等があげられる。
【0026】
(2)ラジカル重合禁止剤の例としては、キノン、ヒドロキノン、t−ブチルカテコール、p−メトキシフェノール等があげられる。
【0027】
(3)芳香族電子系配位子を含有する周期律表第8族遷移金属メタロセン化合物の例としては、フェロセン、エチルフェロセン、ベンゾイルフェロセンなどがあげられる。
【0028】
(4)分子内開裂型光ラジカル開始剤の例としては、アセトフェノン系開裂型光開始剤、ベンゾイン系開裂型光開始剤、アシルフォスフィン(APO)系開裂型開始剤、ビスアシルフォスフィン(BAPO)系開裂型開始剤である。この中でも好ましいものはBAPOの一種であるビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(Irgacure819:CibaSpecialtyChemicals社製)である。
【0029】
(5)硬化促進剤の例としては、ポリエチレングリコール誘導体、クラウンエーテル及びその誘導体、カリックスアレーン誘導体、チアカリックスアレーン誘導体などがあげられる。
【0030】
また、難接着材料として知られるポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフルオロエチレン、ポリアセタールの非極性又は高結晶性プラスチック、更に軟質ポリ塩化ビニル、シリコンゴム、EPDM、SEBSなど非極性又は可塑剤が大量に配合されているゴムを接着する際にはプライマーと呼ばれる接着界面の仲介物質を使用することにより接着性を著しく向上させることができる。これは本発明の接着剤組成物においても同様である。一般的なプライマー成分としてはアルミニウムアルコラート及びアルミニウムキレート塩、ピリジン系化合物、ルチジン、第3級アミン、ホスフィン及びホスファイト系化合物、アルデヒドアニリン系化合物、アミジン化合物、イミダゾール誘導体、有機含窒化合物と無機塩基性化合物を併用する方法などが知られており、これらの化合物を溶媒等に溶解または分散して、被着体の一方若しくは両方の表面に予め塗布しプライマー層を形成するようにして用いる。更に、ラジカル重合を促進させる目的で上記プライマーに過酸化物を添加して使用しても良い。
【発明の効果】
【0031】
本発明に用いられるシアノアクリレート系接着剤組成物は、シアノアクリレート硬化物中に(メタ)アクリレート成分が硬化する際に形成する網目状架橋構造がより均一に分散されることで、全体として微細な凹凸を有する硬化物になり、物理的に湿気の侵入を防ぐことにより、優れた耐湿熱性を示し、且つ、適当な柔軟性を有しており、鉄/鉄やゴム/ゴムなど同系統の被着材接着だけではなく、樹脂とゴム、ゴムと鉄など固さの異なる被着材の接着についても対応でき、更には、酸性雰囲気、アルカリ性雰囲気、沸騰水、ガソリンなどに対しても十分な耐性がある。これにより、従来の瞬間接着剤では困難であった水回り用途や高湿環境下での用途、あるいは特殊環境下での使用など用途範囲が広がり、大いに工程短縮・コストダウンなど工業的に貢献するものとなり、過酷な使用環境下に晒されるワイパブレードを構成する部品相互間の接着に適用することで、耐熱湿性を含む耐久性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明に用いられるシアノアクリレート系接着剤が適用されるワイパブレードの構成について説明を行い、その後に、複数の実施例と比較例に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、ワイパブレードの以下の説明に際し、位置ないし方向を示す用語は、特に明記しない限り、図1に示されるワイパブレードをA方向から見た状態を基準として用いるものとする。
【0033】
図1には、本実施形態に係るワイパブレードの概略斜視図が示され、図2には、その分解斜視図が示されている。また、図3には、構成部品の上下を反転させた状態の一部概略拡大斜視図が示されている。これらの図において、ワイパブレード10は、長手方向に延びるフィン部材11と、このフィン部材11の図1中下面側に受容されるブレードラバー12と、当該ブレードラバー12と前記フィン部材11との間に配置されるレバー13と、ブレードラバー12の短寸幅方向両側面領域に受容される一対のバッキング15,15と、フィン部材11の下面側に受容されてブレードラバー12を保持する複数のグリッパ16とを備えて構成されている。
【0034】
フィン部材11は、本実施形態では、エラストマー(SEBS)により構成されている。このフィン部材11は、図2及び図8(A)に示されるように、相互に略平行となる鉛直面内に位置して短寸幅を決定する前後一対の前端面20及び後端面21と、これら前後各端面20,21の長手方向両側に位置する左右一対の側端面22,23とを備えた形状に設けられている。ここで、前端面20の上下幅寸法は、長手方向中央部を除き、後端面21の上下幅寸法よりも小さく設定されている。前端面20の上端と後端面21の上端との間は、緩やかな円弧状をなす傾斜面24として形成されており、これにより、車両の走行風を受けることによる抗力を分散させ、その分力をブレードラバー12に作用せしめて払拭面に対する浮き上がりを防止できるようになっている。フィン部材11の上面側略中央部は、上下幅寸法が最大となる厚みを備えた領域とされ、当該中央部に、レバー13を受容する平面視略方形の上下空間25が形成されている。また、フィン部材11の下面側は、図3に示されるように、下向き(図3中上向き)に開放する凹状部26が形成されている。この凹状部26は、レバー13を受け入れる第1の凹状部26Aと、この第1の凹状部26Aの長手方向両側にそれぞれ形成された第2の凹状部26B,26Bとにより構成されている。第1の凹状部26Aは、中央部に前記空間25が位置する状態で形成されているとともに、その凹状部の底面は、長手方向中央部が仮想平面に対して僅かに凹んだ湾曲面に形成されている。なお、第2の凹状部26Bの深さは、第1の凹状部26Aの深さよりも若干浅く形成されている。また、第2の凹状部26Bの領域内には、グリッパ16を受容するためのグリッパ用溝28が、略等間隔を隔てて形成されている。
【0035】
前記ブレードラバー12は、ゴム(天然ゴムをベースゴムとするブレンド品)により構成されている。このブレードラバー12は、図4及び図5に示されるように、前記凹状部26内に受容可能な前後幅と左右幅を備えた平面視略長方形状をなす片状の本体部30と、この本体部30の下面側略中央部に連設された払拭部31とからなる。本体部30の前面及び後面の上部側には、長手方向に沿って延びる前後一対のバッキング用溝32,32が形成されている。これらバッキング用溝32,32は、前記バッキング15が嵌入されて当該バッキング15を保持する領域であり、その長手方向両端は、本体部30の左右両端よりも若干内方位置を終端として両端が開放しない形状に設けられている。バッキング用溝32,32の下部側において、本体部30の前面及び後面には、当該本体部30の長手方向全領域に沿う保持用溝33,33がそれぞれ形成されている。図2及び図5に示されるように、保持用溝33,33における左端側には規制部34が形成されている。この規制部34は、保持用溝33の溝深さを次第に浅くする左右一対の傾斜底面33A,33Aと、これら傾斜底面33A,33A間に形成された凹部33Bとにより構成され、この凹部33B内に、図2中最も左側に配置されるグリッパ16が係合するようになっている。なお、払拭部31は、先尖形状に設けられ、図7等に示されるように、肉厚の薄いネック部36を介して本体部30に一体に連設されている。
【0036】
前記レバー13は鋼材の表面にエポキシ樹脂カチオン電着塗装が施されたものが採用されている。このレバー13は、フィン部材11の中央部に設けられた空間25内に受容される前後一対の板状をなす軸保持部材40,40と、これら軸保持部材40,40を相互に連結する左右一対のアーム41,41とを含む。軸保持部材40,40は、相互に略平行に位置するとともに、それらの面内略中央部に、軸ピン43支持するための穴40A,40Aが形成されている。軸ピン43には、図6に示されるように、連結具47が軸ピン43回りに回転可能に取り付けられており、その連結具47にはワイパアーム45の自由端側に形成されたU字状フックが連結され、これにより、ワイパブレード10全体がワイパアーム45に連結可能となっている。
【0037】
前記アーム41,41は、平面視略長方形状となる断面コ字状に形成されている。各アーム41,41は、フィン部材11における第1の凹状部26Aの底面に密着して位置するように、長手方向中央部が僅かに湾曲した面形状を備えたアーム本体面50と、このアーム本体面50の前後(短寸幅方向)両端に連なる前後一対の屈曲縁51,51と、これら屈曲縁51,51の外方端部に設けられた略L字状の爪部材52,52とを備えて構成されている。本実施形態において、レバー13は、軸保持部材40,40とフィン部材11の空間25を形成する前端面20及び後端面21の各内面との相互接触面、及び、アーム41と第1の凹状部26Aとの相互接触面を前記接着剤で接合することにより、フィン部材11に固定される。
【0038】
前記バッキング15,15は、細長い片状をなす金属材により構成されている。このバッキング15は、図示例では、仮想平面に沿う平坦状に示されているが、実際には、図示しないウインドシールドの払拭面の曲面形状に倣うように湾曲した形状を初期形状として形成されている。従って、バッキング15をブレードラバー12のバッキング用溝32に嵌入したときに、ブレードラバー12が弾性変形し、前記払拭面に対して払拭部31の先端が部分的な隙間を生ずることなく密着可能となっている。
【0039】
前記グリッパ16は、フィン部材11におけるグリッパ用溝28に前記接着剤を介して接合されるコ字状部16Aと、コ字状の開放端側に連設されて先端が相互に向き合う屈曲部16Bとからなり、当該屈曲部16Bがブレードラバー12の保持用溝33に係合するように設けられている。なお、グリッパ16は、前述したレバー13と同様に鋼材の表面にエポキシ樹脂カチオン電着塗装が施されたものが採用されている。
【0040】
前記ワイパブレード10を組み立てるときは、レバー13とフィン部材11との相互接触面を前記接着剤を用いて接合するとともに、グリッパ16とグリッパ用溝28の相互接触面を同様に接合する。この一方、ブレードラバー12のバッキング用溝32,32に、バッキング15,15をそれぞれ嵌入する。
【0041】
次いで、ブレードラバー12における本体部30の長手方向一端側をフィン部材11の一端側にあてがうとともに、フィン部材11の凹状部26に本体部30が受容されるように長手方向に沿ってブレードラバー12を押し込む。これにより、レバー13の爪部材52が保持用溝33内に入り込むとともに、グリッパ16の屈曲部16Bが保持用溝33内に入り込む。そして、ブレードラバー12の押し込み側先端が、フィン部材11の側端面22の内面側に突き当たる位置で、装着を完了することができる。この際、図2中最も左側に位置するグリッパ16は、規制部34の凹部34B内に位置することとなる。
【実施例】
【0042】
次に、前記ワイパブレードに示した構成部品相互間の接着性能を以下に説明する試験で代替した評価結果について説明する。
表1に示す配合割合にてそれぞれα−シアノアクリレート系接着剤組成物を調整した(実施例1〜4及び比較例1〜3)。次に、それぞれの組成物の特性を下記に示す試験方法を用いて評価した。その結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
尚、表1の配合表に記載された配合量は全て重量部である。また、各種略号は次のことを意味する。「ECA」は、エチル−α−シアノアクリレートである。「AD−TMP」はジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(新中村化学工業社製:NKエステルAD−TMP)である。「A−TMPT」はトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業社製:NKエステルA−TMPT)である。「A−DPH」はジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業社製:NKエステルA−DPH)である。「A−DCP」はトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート(新中村化学工業社製:NKエステルA−DCP)である。「S−1800A」はイソステアリルアクリレート(新中村化学工業社製:NKエステル S−1800A)である。「アクリルゴム」はエチレンメタクリレート共重合体である。「PMMA」はポリメチルメタクリレートである。「NBR」はアクリロニトリルブタジエン共重合体である。「PLG」はピロガロールである。「パークミルH」はクメンハイドロオキサイド(日本油脂社製)である。
【0045】
表1に示す各種エラストマー(SEBS、CR、EPDM)の接着性についての試験方法を説明する。本試験はエポキシ樹脂によりカチオン電着塗装した100×25×1.6mmの冷間圧廷銅版(SPCC−SD)にてゴム材を挟み込むように接着し(エポキシ樹脂系カチオン電着塗装を施した鉄/ゴム/エポキシ樹脂系カチオン電着塗装を施した鉄のサンドイッチ式(20×25mmオーバーラップ))、引張せん断接着強さを測定するもので、それぞれ実施例1〜4及び比較例1〜3にて調整した各種接着剤組成物にて試験片を貼合わせクリップにて固定した後、23±2℃、55±5RH%の環境下に72時間放置し接着した。この時の接着強度を「初期」とした。更にこの接着試験片を80℃95%72時間及び1,000時間エージングした後、23±2℃、55±5RH%の環境下に24時間放置後、引張せん断接着強さを測定した結果が「80℃95% 72h」及び「80℃95% 1000h」欄に記載された値である。引張速度は毎分10mmである。また、表中において「プライマーTB1797使用」とあるものについては、ゴム表面に瞬間接着剤用プライマーであるTB1797(スリーボンド1797(アミン系化合物):スリーボンド社製)を塗布し、乾燥させた後接着を行ったものである。
【0046】
表1中のSEBSはポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン、EPDMはエチレンプロピレンジエン三元共重合体、CRはクロロプレンゴムのそれぞれ略である。
【0047】
表1によると、実施例1〜4は比較例1〜3を比較して優れた接着性を有していることが分かる。また、SEBSを一方の被着体とした場合、4官能アクリレートが特に優れた接着性を有していることがわかる。
【0048】
また、表1の結果から、難接着剤として知られるゴム(エラストマー)・プラスチックについては、接着する際にプライマーを併用することで、接着力の立ち上がりが速くなり、且つ、十分な接着力が得られることが分かる。さらに、実施例1はEPDM、CRについても同様に優れた耐湿熱性を示すことが分かる。この結果から本発明は幅広いエラストマー材料について適応可能であると言える。
【0049】
次に、実施例1、3、4及び比較例1,3で調整したα−シアノアクリレート系接着剤組成物について、その硬化物の耐薬品性試験の結果を表2に示す。この耐薬品性試験は、下記の方法によって行った。先に説明したエポキシ樹脂系カチオン電着塗装を施した鉄/ゴム/エポキシ樹脂系カチオン電着塗装を施した鉄のサンドイッチ式にテストピースを接着し、23±2℃、55±5RH%の環境下にて72時間養生した。その後、各薬品に所定時間浸漬し、軽く洗浄・乾燥後、常温にて3時間放置した後テンシロン引張試験機にて引張せん断接着強さを測定した。引張速度は毎分10mmである。なお、今回の試験はすべてゴム表面をTB1797によってプライマー処理して行った。
【0050】
【表2】

【0051】
表2中の「引張せん断接着強さ保持率」とは、浸漬後接着強度÷初期強度であり、これを百分率にて表中に示す。また、各薬品への浸漬条件を次に示す。
(1)25%メタノール水溶液、(2)37%硫酸水溶液、(3)酸性洗剤及び(4)アルカリ性洗剤は常温(25℃)にて72時間浸漬した。(5)沸騰水は沸騰水中にて30分、(6)ガソリンは常温(25℃)にて30分浸漬した。
【0052】
表2より、特にシアノアクリレートポリマーを分解させるアルカリ性洗剤、沸騰水において耐久性の差が顕著に表れており、アクリロイル基を4つ以上有する実施例1が全ての試験条件において良好な耐薬品性を示していることが分かる。
従って、本発明に係る接着剤組成物を用いて前記フィン部材とレバーとの相互接触面、フィン部材とグリッパとの相互接触面に適用することで、優れた接着性能を発揮し、耐久性に富むワイパブレードを提供することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施形態に係るワイパブレードの概略斜視図。
【図2】前記ワイパブレードの分解斜視図。
【図3】図2の一部を上下反転して示す要部拡大斜視図。
【図4】(A)は前記ワイパブレードの平面図、(B)は一部断面正面図。
【図5】(A)はフィン部材を省略したワイパブレードの正面図、(B)は、(A)のE−E線矢視断面図。
【図6】図4のA−A線矢視拡大断面図。
【図7】図6のB−B線矢視拡大断面図。
【図8】(A)は図4(B)のC−C線矢視拡大端面図、(B)は図4(B)のD−D線矢視拡大端面図、(C)は図5(A)のF−F線矢視拡大端面図。
【符号の説明】
【0054】
10 ワイパブレード
11 フィン部材
12 ブレードラバー
13 レバー
16 グリッパ
41 アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレードラバーを含む複数の構成部品を備え、前記ブレードラバーが払拭面に接触して当該払拭面を払拭するワイパブレードにおいて、
前記構成部品の少なくとも二部品が、
(A)α−シアノアクリレート
(B)(メタ)アクリロイル基を有する多官能性化合物
(C)過酸化物
(D)増粘剤
上記(A)〜(D)を主成分とするシアノアクリレート系接着剤組成物によって接着されている接着部品を有するワイパブレード。
【請求項2】
払拭面を払拭するブレードラバーと、当該ブレードラバーを受容するフィン部材と、このフィン部材の領域内に受容されて前記ブレードラバーを保持するように設けられたレバーと、前記フィン部材とブレードラバーとの間に設けられたグリッパとを備えたワイパブレードにおいて、
前記フィン部材とレバーとの相互接触面、及びフィン部材とグリッパとの相互接触面の少なくとも一方が、
(A)α−シアノアクリレート
(B)(メタ)アクリロイル基を有する多官能性化合物
(C)過酸化物
(D)増粘剤
上記(A)〜(D)を主成分とするシアノアクリレート系接着剤組成物によって接着されている接着部品を有するワイパブレード。
【請求項3】
前記フィン部材はSEBSであり、前記レバー及びグリッパの少なくとも一方は、鋼材にエポキシ樹脂カチオン電着塗装を施して形成されている請求項2記載の接着部品を有するワイパブレード。
【請求項4】
前記接着剤の配合割合が、(A)成分に対して、(B)成分を1〜50重量%、(C)成分を0.01〜5重量%、(D)成分を1〜50重量%含有する請求項1、2又は3記載の接着部品を有するワイパブレード。
【請求項5】
前記接着剤を構成する(B)成分が(メタ)アクリロイル官能基を三つ以上有する請求項1、2又は3記載の接着部品を有するワイパブレード。
【請求項6】
前記接着剤を構成する(B)成分が(メタ)アクリロイル官能基を四つ以上有する請求項1、2又は3記載の接着部品を有するワイパブレード。
【請求項7】
前記(D)増粘剤がアクリルゴムである請求項1,2又は3記載の接着部品を有するワイパブレード。
【請求項8】
前記(D)増粘剤がポリメタクリル酸メチルである請求項1,2又は3記載の接着部品を有するワイパブレード。
【請求項9】
前記シアノアクリレート系接着剤組成物によって接着される部品は、表面にプライマー処理が施されたプライマー部を有することを特徴とする請求項1,2又は3記載の接着部品を有するワイパブレード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−256551(P2006−256551A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79440(P2005−79440)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【出願人】(000132404)株式会社スリーボンド (140)
【Fターム(参考)】