説明

接続先ノード選択方法、ノード、およびプログラム

【課題】ノードの負荷を考慮した、動的な接続先ノード選択方法を提供する。
【解決手段】ノード1は死活監視信号を被選択ノード2〜4へ定期的に送信する。被選択ノード2〜4は、ノード1からの死活監視信号を受信すると、負荷情報である現在の加入者収容割合を算出し、該負荷情報を基に死活監視応答信号を作成し、ノード1へ送付する。ノード1は、被選択ノード2〜4からの死活監視応答信号を受信すると、負荷情報を死活監視応答信号から取り出し、負荷情報を基に、該当の捕捉比率を決定し、決定された捕捉比率を基に、接続先ノードの選択処理を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つのノードが、複数の他のノードから接続するノードを選択する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の接続先ノード選択方法として、接続先を決定するために、ラウンドロビン方式、優先順位方式、静的な比率分散方式が使用されている。
【0003】
ここで、本発明が踏襲している静的な比率分散方式について具体的な動作を説明する。
【0004】
図6は、静的な比率分散方式を用いてノード選択を実現する方法の説明図である。この時、ノード2には比率1を、ノード3には比率2を、ノード4には比率2が設定してある。ノード1はラウンドロビン方式と同様にノード2、ノード3、ノード4の順にノードを選択していくが、2順目において、ノード2は選択せず、ノード3、ノード4を選択することで、比率に基づいた選択を実施する。比率が満たされた時点で、選択論理は最初から繰り返される。
【0005】
上述の通り、静的な比率分散方式では、ノードの負荷を考慮せず、最初に設定した比率に基づいてノードを選択していくため、大幅な処理遅延が発生するケースがある。
【0006】
従来のノード選択方法である、ラウンドロビン方式、優先順位方式、静的な比率分散方式は、いずれもノードの負荷を考慮しておらず、ノードが高負荷状態でも気にせずアクセスしてしまい、大幅な処理遅延が発生するケースがある。最終的にはシステム全体としての処理能力低下を招いてしまう。
【0007】
この問題を解決するための手段として、システムを運営する側にて、各ノードの負荷を常にチェックしておき、負荷が高いノードが発生した場合には、手動で対象のノードが選択されないように設定を変更するという方法がある。この場合、いつ発生するかわからない高負荷ノードを常にチェックしておく必要があり、システムを運営する側にとって大きな負担となる。
【0008】
なお、特許文献1は、複数のルートを有するパケット通信網において、トラヒックの負荷分散比率を自由に操作することができるようにしたものである。特許文献2は、各通信経路の転送能力に沿った負荷分散を可能にしたものである。特許文献3は、ネットワーク内のトラヒックを増大させず、ノード間の負荷分散を考慮した最適ルート探索のための情報収集を行い、この収集情報に従ってダイナミックルーチング方式選択網における中継回線の探索を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平07−115434号公報
【特許文献2】特開平09−027833号公報
【特許文献3】特開平11−032081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記の問題点を解決するために、ノードの負荷を考慮した、動的な接続先ノード選択方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、従来のノード選択方式である、静的な比率分散方式を踏襲し、かつ、ノードの負荷情報を、死活監視を実施すると同時に収集し、動的に比率を変更していく。そのため、ノードの負荷を常にチェックしておくというシステム運営側の負担がなく、さらに処理遅延の発生を自動的に制限することができる。
【0012】
従来の静的な比率分散方式でノードを選択していくが、その時に、選択先の負荷状態を利用する。選択先が障害や輻輳などの状態で、処理遅延が発生するケースと思われる場合、比率を下げ、ノード選択対象から外す。そうすることにより障害や輻輳などの問題を起こしているノードを選択することなく、正常なノードのみを選択することができ、処理遅延の発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、従来の静的な比率分散方式でノード選択を実施する際に、死活監視と同時に負荷情報を収集し、動的に選択比率を変更していくことで、単一のノードに対して負荷をかけ過ぎる状況を規制できる。また、動的に選択比率を変更するため、システム運営者が負荷状況を常に確認していなくても、システム全体の負荷が分散し、システムを円滑に運営していくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態のシステム構成図である。
【図2】ノード1のブロック図ある。
【図3】ノード2−4のブロック図である。
【図4】ノード選択のシーケンス図である。
【図5】本発明のノード選択原理を示す図である。
【図6】従来の静的な比率分散方式の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1を参照すると、本システムは、ノード1と、ノード1に接続されるノード2から4で構成されている。ノード1は死活監視信号101をノード2から4に定期的に送信し、ノード2から4からの負荷情報を含めた死活監視応答信号104を受け取り、負荷情報を基に、接続先を決定し、接続を実施するノードである。ノード2から4は、ノード1から定期的に送信されてくる死活監視信号101を受信し、負荷情報を含めた死活監視応答信号104をノード1へ返信する機能を持ったノードである。ノード2、ノード3、ノード4を纏めて、以下被選択ノードと記載する。
【0017】
図2はノード1の構成図である。ノード1は死活監視信号送信部11と死活監視応答信号受信部12と死活監視応答信号解析部13と捕捉比率算出部14と選択先決定部15を有する。
【0018】
死活監視信号送信部11は死活監視信号101を被選択ノードへ定期的に送信する。死活監視応答信号受信部12は、被選択ノードからの死活監視応答信号104を受信する。死活監視応答信号104は、ノード1から定期的に送信される死活監視信号101に対する応答信号である。死活監視応答信号解析部13は、死活監視応答信号104を解析し、負荷情報105(加入者収容割合)を取り出す。捕捉比率算出部14は、表1の比率定義表を持っており、負荷情報105を捕捉比率情報106へと変換する。選択先決定部15は、捕捉比率情報106を基に、被選択ノードの中から、接続するノードを定期的に決定する。
【0019】
【表1】

【0020】
図3は被選択ノードの構成図である。ノード1は死活監視信号受信部21と加入者収容率算出部22と死活監視応答信号作成部23と死活監視応答信号送信部24とを有する。死活監視信号受信部21は、ノード1からの死活監視信号101を受信する。加入者収容率算出部22は、死活監視応答信号作成部23から負荷情報算出指示102を受け取ると、現在の負荷情報103を、死活監視信号受信までの位置登録加入者数を、当該ノードに収容できる最大収容加入者数で割ることで算出する。死活監視応答信号作成部23は、ノード1へ返信する死活監視応答信号104を作成する。死活監視応答信号送信部24は、ノード1へ死活監視応答信号104を送信する。
【0021】
次に、本実施の形態の動作を図4のシーケンス図および図5の接続先選択図を基に説明する。
【0022】
なお、図2、図3にはノード1から4が本来有している機能は、本発明とは関係ないため、図示されていない。
【0023】
まず、ノード1はノード2、ノード3、ノード4に対して定期的に死活監視信号101を送信し、死活監視を実施する(ステップ201)。ノード2、ノード3、ノード4は死活監視応答信号104を返送するが、その際に負荷情報(加入者収容割合)を信号内に記載する(ステップ202)。ノード1は、受信した死活監視応答信号104内の負荷情報を収集する(ステップ203)。この負荷情報(加入者収容割合)により、ノード選択比率の動的変更を実施する(ステップ204)。ノード1は、表1の比率定義表を内部に持っており、この定義表と負荷情報を比較し、捕捉比率を決定する。この加入者収容割合は10%刻みになっており、1〜10%、11%〜20%というように10段階に分けられ、%が低いものほど、現在の負荷が低いと判断される。10段階の中で91%〜100%については、ノードが輻輳と判断できるため、比率は0となり、選択対象から外される。順に、81%〜90%は比率が1、71%〜80%は比率が2というように、負荷の高いノードから順に1ずつ上昇し、最大捕捉比率9まで付与される。この比率により、ノード1は図5の場合、輻輳と判断されるノード4を避け、負荷が他のノードと比較して低いノード3を中心に選択する(ステップ204)ことが可能になる。図5の場合では、ノード2は負荷80%なので、比率は2、ノード3は負荷60%なので、比率は4、ノード4は負荷100%なので、比率は0と想定している。このような状況の場合、ノード1はノード2の比率を確認し、比率が2であり選択可能であるので、まずこのノードを選択する。続いてノード1はノード3の比率を確認し、比率が4であり選択可能であるのでこのノードを選択する。次に、ノード4の比率を確認するが、このノードは比率が0のため、選択してはならないと判断し、選択しない。次に、ノード1は最初のノード2の比率を確認し、2度目の選択を実施する。続いてノード3を選択する。ノード4は比率0のためスキップし、ノード2に戻るのだが、この時に比率により選択するノードを変更する。システム全体を見ると、ノード2の比率は2、ノード3の比率は4、ノード4の比率は0となっている。これは、ノード2が2回選択された場合、ノード3は4回、ノード4は0回選択されなければならないことを示している。そのため、ノード1はノード2をスキップし、ノード3を連続で3回選択する。次はまた、比率通りになるので最初に戻る。
【0024】
このような論理を用いることにより、高負荷のノードを避け、システム全体の負荷を軽減できる。この負荷情報は、例えば90秒間隔で更新される。選択実施中の場合でも、選択比率を考慮せず、更新後の比率を使用し、選択を再開する。図5で説明すると、例えば、4回目までの選択が完了した場合、残り2回ノード3を選択しなければならないが、このとき負荷情報が更新された場合、これまで選択していた情報はリセットされ、最初から選択を再開する。この場合であっても、ノード負荷情報を基に比率を確認しながら動作するため、負荷情報の変化に対応しながらノードを選択することが可能になり、引き続きシステム全体の負荷分散が可能になる。
【0025】
次に、図2、図3を用いて、ノード1、被選択ノードがそれぞれどのような動作をするのかを説明する。ノード1は死活監視信号送信部11より、死活監視信号101を被選択ノードへ定期的に送信する。その後、被選択ノードからの死活監視応答信号104を、死活監視応答信号受信部12で受信する。死活監視応答信号受信部12で受信された死活監視応答信号104は、死活監視応答信号解析部13へ送られる。死活監視応答信号解析部13は、捕捉比率の算出に必要な負荷情報105を死活監視応答信号104から取り出す。取り出された負荷情報105は捕捉比率算出部14へ送られる。捕捉比率算出部14は、送られてきた負荷情報105を、表1の比率定義表と比較し、該当の捕捉比率106を決定する。決定された捕捉比率106は選択先決定部15へ送付される。選択先決定部15は、送られてきた捕捉比率106を基に、接続先ノードの選択処理を実施する。
【0026】
被選択ノードは、ノード1からの死活監視信号101を死活監視信号受信部21で受信する。死活監視信号受信部21で信号を受信すると、死活監視信号101に対する応答を実施するために、死活監視応答信号作成部23へ返信の指示を行う。死活監視応答信号作成部23は、死活監視応答信号104に負荷情報を乗せるために、加入者収容率算出部22へ、加入者収容割合の算出指示102を出す。加入者収容割合の算出を求められた加入者収容率算出部22は、現時点での位置登録加入者数を、選択されるノードごとに設定されている最大収容加入者数で割ることで、加入者収容割合(負荷情報)103を算出し、10%単位へ変換する。算出された負荷情報103は死活監視応答信号作成部23へ通知される。死活監視応答信号作成部23は、通知された負荷情報103を基に死活監視応答信号104を作成する。負荷情報103は独自ヘッダ(X-Registration-Control)を定義して、例えば「X-Registration-Control:80; target=sip:10.4.88.244」と設定する。ここで、「80」は加入者割合を指し、「target=sip:10.4.88.244」は通知先である。出来上がった信号は、ノード1へ返送するために、死活監視応答信号送信部24へ送られる。死活監視応答信号送信部24は、送られてきた死活監視応答信号104をノード1へ送信する。選択比率の算出情報を、死活監視応答信号104上に独自ヘッダを使用して載せることで、算出情報専用の信号を新たに発出するより、システム全体のネットワーク使用率の増加を防ぐことができる。
【0027】
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。
【0028】
負荷情報は死活監視の際に併せて収集するのではなく、その他の信号のやり取りの中で収集してもよい。
【0029】
また、接続先のノード2〜4の先に、さらに接続しているノードがあった場合も、これらノードの選択論理も前述した選択論理と同様である。
【0030】
また、ノード1から4の機能は、その機能を実現するためのプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータに読み込ませ、実行するものであってもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD−ROM等の記録媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク装置等の記憶装置を指す。さらに、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、インターネットを介してプログラムを送信する場合のように、短時間、動的にプログラムを保持するもの(伝送媒体もしくは伝送波)、その場合のサーバとなるコンピュータ内の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものを含む。
【符号の説明】
【0031】
1〜4 ノード
11 死活監視信号送信部
12 死活監視応答信号受信部
13 死活応答信号解析部
14 捕捉比率算出部
15 選択先決定部
21 死活監視信号受信部
22 加入者収容率算出部
23 死活監視応答信号作成部
24 死活監視応答信号送信部
101 死活監視信号
102 負荷情報算出指示
103 負荷情報
104 死活監視応答信号
105 負荷情報
106 捕捉比率
201〜205 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続先のノードを選択する方法であって、
接続先の各ノードの加入者収容割合である負荷情報を収集することと、
前記負荷情報により各ノードの捕捉比率を決定することと、
前記の決定された捕捉比率に応じて接続先のノードを選択することと、
を有する
接続先ノード選択方法。
【請求項2】
前記の負荷情報の収集を、接続先のノードの死活監視の際に行う、請求項1に記載の接続先ノード選択方法。
【請求項3】
前記の負荷情報の収集を定期的に行う、請求項1また2に記載の接続先ノード選択方法。
【請求項4】
前記捕捉比率を、加入者収容割合と捕捉比率の関係を示す比率定義表を使用して決定する、請求項1から3のいずれか1項に記載の接続先ノード選択方法。
【請求項5】
前記負荷情報を独自ヘッダ(X-Registration-Control)を使用して設定する、請求項1から4のいずれか1項に記載の接続先ノード選択方法。
【請求項6】
選択されるノードから、当該ノードの加入者収容割合である負荷情報を収集する手段と、
前記負荷情報を当該ノードの捕捉比率情報へと変換する手段と、
前記捕捉比率情報を基に、前記の選択されるノードの中から接続先のノードを決定する手段と、
を有するノード。
【請求項7】
前記の負荷情報を収集する手段は、死活監視信号を、選択されるノードへ送信し、前記の選択されるノードからの、前記死活監視信号に対する応答信号である死活監視応答信号を受信することで前記負荷情報を収集する、請求項6に記載のノード。
【請求項8】
前記の負荷情報を収集する手段は負荷情報の収集を定期的に行う、請求項6また7に記載のノード。
【請求項9】
前記の捕捉比率情報へと変換する手段は、前記負荷情報を、加入者収容割合と捕捉比率の関係を示す比率定義表を使用して捕捉比率情報へと変換する、請求項6から8のいずれか1項に記載のノード。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか1項に記載のノードからの指示により、現在の加入者収容割合である負荷情報を算出する手段と、
前記負荷情報を含む信号を前記ノードへ送信する手段と、
を有するノード。
【請求項11】
死活監視信号を、選択されるノードへ送信する手順と、
前記の選択されるノードからの、前記死活監視信号に対する応答信号である死活監視応答信号を受信する手順と、
前記死活監視応答信号を解析し、当該ノードの加入者収容割合である負荷情報を取り出す手順と、
前記負荷情報を当該ノードの捕捉比率情報へと変換する手順と、
前記捕捉比率情報を基に、前記の選択されるノードの中から接続先のノードを決定する手順と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項12】
監視ノードから定期的に送信されてくる死活監視信号を受信する手順と、
現在の加入者収容割合である負荷情報を算出する手順と、
前記負荷情報を含む、前記死活監視信号に対する応答信号である死活監視応答信号を作成する手順と、
前記死活監視応答信号を前記監視ノードへ送信する手順と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−212751(P2010−212751A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53457(P2009−53457)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000232254)日本電気通信システム株式会社 (586)
【Fターム(参考)】