説明

接続制御装置

【課題】過負荷による接続制御装置のダウンを抑制し、通信端末間における接続の信頼性の向上を図ること。
【解決手段】ネットワークを介して接続された通信端末あるいは他の接続制御装置から受け付けた接続制御メッセージに基づいて通信端末間の接続制御処理を行う接続制御装置であって、自装置内に保持している未処理の接続制御メッセージの数に基づいて、自装置の負荷状態を判定する負荷状態判定手段と、この負荷状態判定手段による判定結果に応じて、自装置の負荷増加を抑制する処理を実行する負荷増加抑制手段と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続制御装置にかかり、特に、ネットワークを介して接続された通信端末間の接続制御を行う接続制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ネットワーク等の通信インフラが整備され、インターネットの接続スピードが高速となっている。これに伴い、インターネット網を用いて通話可能な端末を接続するIP(Internet Protocol)電話サービスが普及している。このIP電話サービスは、IP電話端末間をネットワーク上に設置されたSIP(Session Initiation Protocol)サーバなどの接続制御装置を介して接続制御することによって実現している。さらに、携帯電話による通話やデータ通信の利用も普及し、これらの通信をパケット網やIP網上で制御するために、上述した接続制御装置の役割が特に重要となっている。
【0003】
ところが、近年のIP電話サービスや携帯電話のさらなる普及に伴って、トラヒック増加により接続制御装置が過負荷状態となる、という問題が生じる。つまり、接続制御装置が多数の端末間の接続制御を行う状況になると、接続制御装置に負荷が集中し、当該装置の処理能力を超えてしまい、装置がダウンしてしまうという状況が生じうる。すると、新たなセッションの確立ができず、利用者が安定した通信サービスを受けることができない、という問題があった。
【0004】
そして、上述したようなIP電話などの通信端末を接続制御する接続制御装置の負荷制御を行う技術の一例が、特許文献1に開示されている。この特許文献1に記載のシステムは、システム(通信制御装置)の負荷状況を継続的に観測し、過負荷時に受信規制を行うなど、システムダウンに対する対応処理を行っている。
【0005】
また、特許文献2には、関連する負荷分散技術が開示されている。この特許文献2に開示の技術は、単位時間当たりの新規の接続要求数の上限値を予め設定してあり、単位時間当たりに実際に処理した新規の接続要求数を、上記上限値と比較し、上限値以上になると当該接続要求を破棄する、という技術である。また、同時に接続可能なコネクション数の上限値を予め設定してあり、新規の接続要求受信時に確立しているコネクション数を、上記上限値と比較し、上限値以上になると当該接続要求を破棄する、という技術である。
【0006】
【特許文献1】特開平8−274839号公報
【特許文献2】特開2004−246833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、システムに負荷が集中した場合に、過負荷が観測されるまでは負荷を検出することができない。つまり、実際に過負荷が生じてから受信規制などの対応を行っているため、過負荷が生じた段階でシステムのダウンが生じる可能性があり、信頼性の向上を図ることができない、という問題が生じる。また、上記特許文献2に開示の技術では、新規接続要求数と確立しているコネクション数に基づいてシステムの負荷分散を行っているが、より正確に装置の負荷状況を把握することができない、という問題も生じうる。つまり、仮に処理していない接続制御メッセージが多く蓄積されている場合には、接続要求や確立しているコネクション数が上限値に満たない場合であっても、過負荷状態となっている場合もありうる。すると、システムが過負荷状態を検知できす、ダウンしてしまう場合があり、依然として信頼性の向上を図ることができない、という問題が生じる。
【0008】
このため、本発明の目的は、上述した課題である過負荷による接続制御装置のダウン、さらには、これによる当該接続制御装置の信頼性の低下、を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明の一形態である接続制御装置は、ネットワークを介して接続された通信端末あるいは他の接続制御装置から受け付けた接続制御メッセージに基づいて通信端末間の接続制御処理を行う接続制御装置であって、自装置内に保持している未処理の接続制御メッセージの数に基づいて、自装置の負荷状態を判定する負荷状態判定手段と、この負荷状態判定手段による判定結果に応じて、自装置の負荷増加を抑制する処理を実行する負荷増加抑制手段と、を備えた、という構成を採っている。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以上のように構成されているため、接続制御装置がダウンすることを抑制し、信頼性の向上を図ることができる、という従来に無い優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、IP電話や携帯電話をはじめとした通信端末間の接続制御を行う、固定網電話交換機や移動網電話交換機として機能する接続制御装置である。そして、本発明における接続制御装置は、通信端末や他の接続制御装置といった外部から受信する接続制御メッセージに従って、主にセッションの確立と解放を管理し、独立した複数のセッションを制御するよう構成されている。
【0012】
例えば、本発明の一形態である接続制御装置は、ネットワークを介して接続された通信端末あるいは他の接続制御装置から受け付けた接続制御メッセージに基づいて通信端末間の接続制御処理を行う接続制御装置であって、自装置内に保持している未処理の接続制御メッセージの数に基づいて、自装置の負荷状態を判定する負荷状態判定手段と、この負荷状態判定手段による判定結果に応じて、自装置の負荷増加を抑制する処理を実行する負荷増加抑制手段と、を備えた、という構成を採る。
【0013】
上記構成の接続制御装置は、まず、通信端末や他の接続制御装置からの接続制御メッセージを受け付けると、負荷が高く無い状態では、接続制御メッセージに基づいて通信端末間の接続制御処理を行う。このとき、接続制御装置は、未処理である処理待ちのメッセージの数に基づいて、自装置の負荷状態を判定する。そして、判定結果に基づいて、自装置が過負荷とならず、処理すべきタスク量が一定値を超えないように負荷の増加を抑制する処理を実行する。従って、自装置が過負荷となる前に負荷状態を検知することができ、これに応じて負荷増加抑制処理を実行するため、自装置がダウンすることを抑制でき、通信端末間の接続制御の安定化を図ることができる。
【0014】
また、上記接続制御装置は、上記負荷状態判定手段が、自装置内にて保持している未処理の接続制御メッセージの数と、受け付けた接続制御メッセージの数と、自装置にて確立されている通信端末間のセッションの数と、に基づいて自装置の負荷状態を判定する、という構成を採る。
【0015】
これにより、接続制御装置の負荷状態を、未処理である接続制御メッセージのみならず、受け付けたメッセージ数や確立しているセッション数に基づいても判定することができる。従って、負荷状態を接続制御装置のあらゆる状況から判定することができ、負荷状態の判定精度が向上する。その結果、より有効に負荷増加抑制処理を実行でき、装置が事前にダウンすることを抑制することができる。
【0016】
また、上記接続制御装置は、上記負荷増加抑制手段が、受け付けた接続制御メッセージを破棄する処理、あるいは、自装置にて確立されているセッションを切断する処理、を実行する、という構成を採る。
【0017】
このように、受け付けた接続制御メッセージを破棄することで、かかるメッセージの処理を中止でき、負荷の増加を抑制できる。また、確立中のセッションを切断してセッション確立処理を中止でき、さらに有効に負荷を軽減することができる。
【0018】
また、上記接続制御装置は、上記負荷状態判定手段が、自装置内にて保持している未処理の接続制御メッセージの数である未処理メッセージ数と、予め設定された未処理メッセージ許容数と、を比較し、上記負荷増加抑制手段は、未処理メッセージ数が未処理メッセージ許容数を超えている場合に、受け付けた接続制御メッセージを破棄する、という構成を採る。このとき、上記未処理メッセージ数は、通信端末間の接続開始を指示するセッション開始メッセージの数、あるいは、セッションの開始及び終了を指示すること以外の接続制御メッセージである通常メッセージの数、であると共に、未処理メッセージ許容数は、セッション開始メッセージの数あるいは通常メッセージの数にそれぞれ対応して比較されるセッション開始メッセージ許容数、あるいは、通常メッセージ許容数である、という構成を採る。また、上記接続制御装置は、上記負荷状態判定手段が、受け付けた接続制御メッセージの数である受付メッセージ数と、予め設定された受付メッセージ許容数と、を比較し、負荷増加抑制手段は、受付メッセージ数が受付メッセージ許容数を超えている場合に、受け付けた接続制御メッセージを破棄する、という構成を採る。さらに、上記接続制御装置は、上記負荷状態判定手段が、自装置にて確立しているセッションの数である確立セッション数と、予め設定されたセッション許容数と、を比較し、負荷増加抑制手段は、確立セッション数がセッション許容数を超えている場合に、受け付けた接続制御メッセージを破棄して既に確立されているセッションを切断する、という構成を採る。
【0019】
これにより、受け付けるメッセージの種類毎に、受付可能な許容数、あるいは、未処理メッセージとして保持可能な許容数、さらには、保持可能なセッションの許容数、を予め設定しておくことで、実際の数との比較が容易であり、装置の負荷状態の判定処理を容易に行うことができる。そして、実際のメッセージやセッションの数が許容数を超えていた場合には、受け付けたメッセージやセッションを破棄することで、負荷の増加を抑制することができる。
【0020】
また、上記接続制御装置は、自装置に装備されたCPU(Central Processing Unit)の使用率を測定するCPU使用率測定手段と、この測定されたCPU使用率に基づいて、負荷状態判定手段における判定基準を設定する判定基準設定手段と、を備えた、という構成を採る。
【0021】
これにより、装置のCPU使用率を測定して取得し、このCPU使用率に基づいて負荷状態判定手段による判定基準を設定する。従って、装置の現在の負荷状態に基づいて、実際の状況に応じた適切な負荷状態の判定基準を設定することができる。その結果、より正確に負荷状態を判定でき、適切に負荷増加抑制処理を実行ことができる。
【0022】
また、上記接続制御装置は、上記判定基準設定手段が、通信端末間の接続開始を指示するセッション開始メッセージの受付メッセージ数の許容数である受付メッセージ許容数を設定する、という構成を採る。そして、上記判定基準設定手段が、過去に受け付けたセッション開始メッセージの受付メッセージ数に基づいて受付メッセージ許容数を設定する、という構成を採る。また、上記接続制御装置は、上記判定基準設定手段が、自装置にて確立しているセッションの数の許容数であるセッション許容数を設定する、という構成を採る。そして、上記判定基準設定手段は、自装置にて過去に確立したセッションの数に基づいてセッション許容数を設定する、という構成を採る。
【0023】
これにより、装置の過去の具体的な処理状態に応じて、判定基準を設定することができる。従って、より高精度に、装置の負荷状態を判定することがで、装置ダウンを有効に抑制できる。
【0024】
また、本発明の他の形態であるプログラムは、ネットワークを介して接続された通信端末あるいは他の接続制御装置から受け付けた接続制御メッセージに基づいて通信端末間の接続制御処理を行うコンピュータに、自コンピュータ内にて保持している未処理の接続制御メッセージの数に基づいて、自コンピュータの負荷状態を判定する負荷状態判定手段と、この負荷状態判定手段による判定結果に応じて、自コンピュータの負荷増加を抑制する処理を実行する負荷増加抑制手段と、を実現させる、という構成を採る。
【0025】
また、上記プログラムは、上記負荷状態判定手段が、自コンピュータ内にて保持している未処理の接続制御メッセージの数と、受け付けた接続制御メッセージの数と、自コンピュータにて確立されている通信端末間のセッションの数と、に基づいて自コンピュータの負荷状態を判定する、という構成を採る。さらに、上記プログラムは、コンピュータに、自コンピュータに装備されたCPUの使用率を測定するCPU使用率測定手段と、この測定されたCPU使用率に基づいて、負荷状態判定手段における判定基準を設定する判定基準設定手段と、を実現させる、という構成を採る。
【0026】
また、本発明の他の形態である接続制御方法は、ネットワークを介して接続された通信端末あるいは他の接続制御装置から受け付けた接続制御メッセージに基づいて通信端末間の接続制御処理を行う接続制御方法であって、
前記接続制御メッセージを受信した後に、保持している未処理の接続制御メッセージの数に基づいて自己の負荷状態を判定する負荷状態判定工程と、この負荷状態判定工程による判定結果に応じて自己の負荷増加を抑制する処理を実行する負荷増加抑制工程と、を有する、という構成を採る。
【0027】
また、上記接続制御方法は、保持している未処理の接続制御メッセージの数と、受け付けた接続制御メッセージの数と、確立されている通信端末間のセッションの数と、に基づいて自己の負荷状態を判定する、という構成を採る。さらに、上記接続制御方法は、上記負荷状態判定工程の前に、自己に装備されたCPUの使用率に基づいて、負荷状態判定工程における判定基準を設定する判定基準設定工程を備えた、という構成を採る。
【0028】
また、本発明の他の形態である接続制御システムは、ネットワークを介して接続された通信端末及び接続制御装置を備え、当該接続制御装置が、通信端末あるいは他の接続制御装置から受け付けた接続制御メッセージに基づいて通信端末間の接続制御処理を行う、接続制御システムであって、
上記接続制御装置が、
自装置内に保持している未処理の接続制御メッセージの数に基づいて、自装置の負荷状態を判定する負荷状態判定手段と、
この負荷状態判定手段による判定結果に応じて、自装置の負荷増加を抑制する処理を実行する負荷増加抑制手段と、を備えた、
という構成を採る。
【0029】
また、上記接続制御システムは、上記接続制御装置が有する負荷状態判定手段が、自装置内にて保持している未処理の接続制御メッセージの数と、受け付けた接続制御メッセージの数と、自装置にて確立されている通信端末間のセッションの数と、に基づいて自装置の負荷状態を判定する、という構成を採る。さらに、上記接続制御システムは、上記接続制御装置が、自装置に装備されたCPUの使用率を測定するCPU使用率測定手段と、この測定されたCPU使用率に基づいて、上記負荷状態判定手段における判定基準を設定する判定基準設定手段と、を備えた、という構成を採る。
【0030】
上述した構成のプログラムや接続制御方法、接続制御システムの発明であっても、上記接続制御装置と同様に作用するため、上述した本発明の目的を達成することができる。
【0031】
以下、本発明の具体的な構成及び動作について説明する。なお、以下の各実施形態では、通信端末の一例としてIP(Internet Protocol)電話端末を挙げて説明するが、接続制御装置にて接続制御される端末は、携帯電話などの他の電話端末であってもよい。また、通信端末は、電話端末に限定されず、PDA(Personal Digital Assistants)やパソコンといった通信可能なコンピュータなど、いかなる情報処理端末であってもよい。さらに、以下の実施形態では、接続制御装置として、IP電話をSIP(Session Initiation Protocol)にて接続制御するSIPサーバを例に挙げて説明するが、接続制御装置は、他のプロトコルにて接続制御を行ういかなるコンピュータであってもよい。
【0032】
<実施形態1>
本発明の第1の実施形態を、図1乃至図10を参照して説明する。図1は、接続制御システムの全体構成を示すブロック図である。図2は、接続制御装置の構成を示す機能ブロック図であり、図3は、接続制御装置に記憶されるデータの一例を示す図である。図4は、端末間の接続制御の様子を示す説明図である。図5乃至図10は、接続制御装置の動作を示すフローチャートである。
【0033】
[構成]
本発明における接続制御システムは、ネットワーク上に接続されたSIPサーバといった複数の接続制御装置1,21等を備えている。そして、各接続制御装置1,21等は、それぞれが管理するIP電話などの通信端末31等を接続している。なお、各接続制御装置1,21等は、全てがほぼ同一の構成を採っているため、以下では、符号1に示す接続制御装置1の構成について説明する。また、この符号1の接続制御装置1に接続された他の接続制御装置21,22,23を、隣接する接続制御装置として説明する。
【0034】
図1に示すように、接続制御装置1には、通信端末31,32が接続している。そして、接続制御装置1は、これら通信端末31,32間、あるいは、他の接続制御装置21等に接続された通信端末33等との間のセッションの確立・切断といった接続制御を行う機能を有する。具体的には、接続制御装置1は、SIPサーバといった通信機能を有するサーバコンピュータである。そして、接続制御装置1は、CPUといった演算装置に接続制御用プログラムが読み込まれることで、図2に示すように、メッセージ受信部11と、負荷状態判定部12と、通常処理部13a及び負荷抑制処理部13bを有するメッセージ処理部13と、メッセージ後処理部14と、許容数設定部15と、タイマ16と、CPU使用率測定部17と、を備えている。また、フラッシュメモリなどの記憶装置であるメモリ18に、後述する接続制御に必要な情報を記憶している。以下、各構成について詳述する。
【0035】
まず、メッセージ受信部11(メッセージ受付手段)は、通信端末31,32から、あるいは、隣接する他の接続制御装置21等から、通信端末間のセッションを制御するための接続制御メッセージを受信する。例えば、図4に示すように、接続制御装置1が直接接続している通信端末31,32と、隣接する接続制御装置21,22に接続している通信端末33,35とのセッションを制御する場合には、通信端末31,32からの接続制御メッセージは直接受信し、通信端末33,35からの接続制御メッセージは隣接する接続制御装置21,22から受信する。そして、矢印Y1,Y3に示すように、各端末間で接続制御メッセージを送受信することで、矢印Y2,Y4に示すように、セッションの確立、切断を行うことができる。
【0036】
ここで、接続制御メッセージとしては、セッションの開始を指示する「セッション開始メッセージ(例えば、INVITE)」、このセッション開始メッセージに対応してセッションの確立完了を報告する「セッション確立メッセージ(例えば、200 OK)」、また、セッションの終了を指示する「セッション終了メッセージ(例えば、BYE)」、上記メッセージ以外の接続制御メッセージである「その他のメッセージ」、がある。なお、接続制御装置1は、上述したように少なくとも4種類にメッセージを区別可能なよう、予め構成されている。
【0037】
次に、負荷状態判定部12(負荷状態判定手段)について説明する。負荷状態判定部12は、上記メッセージ受信部11にて接続制御メッセージを受信したときに、接続制御装置1の負荷状態を判定する。この負荷状態判定部12は、受信した接続制御メッセージや、セッションの接続状況に基づいて負荷状態を判定するが、このときの判定基準となるデータをメモリ18から読み出す。以下、負荷状態判定部12による負荷状態の判定処理について、さらに詳述する。
【0038】
例えば、負荷状態判定部12は、上記「セッション開始メッセージ」を受け付けた際には、接続制御装置1が既に保持している未処理の「セッション開始メッセージ」の数に基づいて判定する。具体的には、まず、未処理の「セッション開始メッセージ」の数は、接続制御装置1がカウントしており、当該接続制御装置1が「開始メッセージ滞留数18b」(未処理メッセージ数)としてメモリ18に記憶している。また、この比較対象となる「開始メッセージ滞留許容数18g」(未処理メッセージ許容数)は、予め設定されてメモリ18に記憶されている。そして、上記「開始メッセージ滞留数18b」と「開始メッセージ滞留許容数18g」とを比較し、その結果、つまり、どちらが大きいかという結果をメッセージ処理部13に通知する。なお、上記「開始メッセージ滞留許容数18g」は、接続制御装置1の処理能力に応じて予め設定されている値であり、設定変更可能である。但し、この「開始メッセージ滞留許容数18g」は、接続制御装置1の処理能力に対して十分な余裕のある値に設定されており、特に、後述する「通常メッセージ滞留許容数18h」よりもさらに、接続制御装置1の処理能力に対して十分な余裕のある値であることが望ましい。
【0039】
また、負荷状態判定部12は、上記「セッション開始メッセージ」を受け付けた際に、接続制御装置1が上記メッセージ受信部11にて受け付けた「セッション開始メッセージ」の数に基づいて判定する。具体的には、「セッション開始メッセージ」の受け付けた数は、接続制御装置1がカウントしており、当該接続制御装置1が「開始メッセージ受信数18a」(受付メッセージ数)としてメモリ18に記憶している。この「開始メッセージ受信数18a」は、特に、タイマ16にて計測された一定時間内にメッセージ受信部11にて受け付けた「セッション開始メッセージ」の数である。そして、「開始メッセージ受信数18a」の比較対象となる「開始メッセージ受信許容数18e」(受付メッセージ許容数)は、予め設定されてメモリ18に記憶されている。そして、上記「開始メッセージ受信数18a」と「開始メッセージ受信許容数18e」とを比較し、その結果、つまり、どちらが大きいかという結果をメッセージ処理部13に通知する。なお、この「開始メッセージ受信許容数18g」は、初期状態では、所定の値が設定されているが、接続制御装置1が稼働し続けることで、稼働状況に応じて許容数設定部15により再設定される。ここで、上記タイマ16は、一定周期を計測するタイマであり、負荷状態判定部12や許容数設定部15に一定時間が経過したことを通知する機能を有する。そして、負荷状態判定部12は、タイマ16からの通知により、メモリ18に記憶されている「開始メッセージ受信数18a」を「0」に初期化し、ここから一定時間内における「セッション開始メッセージ」の受信数をカウントする。
【0040】
また、負荷状態判定部12は、「セッション確立メッセージ」を受け付けた際に、接続制御装置1が既に保持している未処理の「セッション確立メッセージ」を含む「通常メッセージ」の数に基づいて判定する。ここで、「通常メッセージ」は、上記「セッション確立メッセージ」の他に、上述した「セッション開始メッセージ」と後述する「セッション終了メッセージ」を除いた「その他のメッセージ」を含む接続制御メッセージを指すこととする。具体的には、未処理の「通常メッセージ」の数は、接続制御装置1がカウントしており、「通常メッセージ滞留数18c」(未処理メッセージ数)としてメモリ18に記憶している。そして、この「通常メッセージ滞留数18c」の比較対象となる「通常メッセージ滞留許容数18h」(未処理メッセージ許容数)は、予め設定されてメモリ18に記憶されている。そして、上記「通常メッセージ滞留数18c」と「通常メッセージ滞留許容数18h」とを比較し、その結果、つまり、どちらが大きいかという結果をメッセージ処理部13に通知する。なお、上記「通常メッセージ滞留許容数18h」は、接続制御装置1の処理能力に応じて予め設定されている値であり、設定変更可能である。但し、この「通常メッセージ滞留許容数18h」は、接続制御装置1の処理能力に対して十分な余裕のある値に設定されている。
【0041】
ここで、上述したように、「開始メッセージ滞留許容数18g」の方が、「通常メッセージ滞留許容数18h」よりも接続制御装置1の処理能力に対して十分な余裕のある値に設定されている。これにより、接続制御装置1の負荷がより低い段階で「開始メッセージ滞留数18b」が「開始メッセージ滞留許容数g」を超える場合があり、その結果、後述するように「セッション開始メッセージ」が破棄されるタイミングが早くなる。つまり、「セッション開始メッセージ」の方が「セッション確立メッセージ」や「その他のメッセージ」よりも早いタイミングで破棄される傾向にあるため、接続制御装置1の負荷増加をより有効に抑制することができる。
【0042】
また、負荷状態判定部12は、上記「その他のメッセージ」を受け付けた際に、接続制御装置1が既に保持している未処理の「その他のメッセージ」を含む「通常メッセージ」の数に基づいて判定する。ここで、「通常メッセージ」は、上述したように「その他のメッセージ」と上記「セッション確立メッセージ」とを含む接続制御メッセージを言う。具体的には、未処理の「通常メッセージ」の数は、接続制御装置1がカウントしており、「通常メッセージ滞留数18c」(未処理メッセージ許容数)としてメモリ18に記憶している。そして、この「通常メッセージ滞留数18c」の比較対象となる「通常メッセージ滞留許容数18h」(未処理メッセージ許容数)は、予め設定されてメモリ18に記憶されている。そして、上記「通常メッセージ滞留数18c」と「通常メッセージ滞留許容数18h」とを比較し、その結果、つまり、どちらが大きいかという結果をメッセージ処理部13に通知する。なお、上記「通常メッセージ滞留許容数18h」は、接続制御装置1の処理能力に応じて予め設定されている値であり、設定変更可能である。但し、この「通常メッセージ滞留許容数18h」は、上述したように、接続制御装置1の処理能力に対して十分な余裕のある値に設定されている。
【0043】
さらに、負荷状態判定部12は、上記「セッション確立メッセージ」あるいは「その他のメッセージ」を受け付けた際に、接続制御装置1が既に保持しているセッションの数に基づいて、接続制御装置1の負荷状態を判定する機能を有する。具体的には、セッションの数は、接続制御装置1が現在確立して保持しているセッションの総数であり、当該接続制御装置1がカウントして、「保持セッション数18d」(確立セッション数)としてメモリ18に記憶している。そして、この「保持セッション数18d」の比較対象となる「保持セッション許容数18f」(セッション許容数)は、予め設定されてメモリ18に記憶されている。そして、上記「保持セッション数18d」と「保持セッション許容数18f」とを比較し、その結果、つまり、どちらが大きいかという結果をメッセージ処理部13に通知する。なお、上記「保持セッション許容数18f」は、初期状態では、所定の値が設定されているが、接続制御装置1が稼働を継続することで、稼働状況に応じて許容数設定部15により再設定される。
【0044】
次に、メッセージ処理部13について説明する。図2に示すように、メッセージ処理部13は、通常処理部13aと負荷抑制処理部13bとを備えている。通常処理部13a(接続制御手段)は、上記負荷状態判定部12の判定結果に基づいて、接続制御装置1の負荷状態が過負荷にならない状態であると判断できる場合に、通常の接続制御メッセージの処理を行う。一方、負荷抑制処理部13b(負荷増加抑制手段)は、上記負荷状態判定部12の判定結果に基づいて、接続制御装置1の負荷状態が過負荷に近づいていると判断できる場合に、接続制御装置1自体の負荷の増加を抑制する負荷増加抑制処理を実行する。以下、上記通常処理部13aと負荷抑制処理部13bによる処理内容を具体的に説明する。
【0045】
例えば、接続制御装置1が「セッション開始メッセージ」を受信した際に、「開始メッセージ滞留数18b」が「開始メッセージ滞留許容数18g」以下であり、かつ、「開始メッセージ受信数18a」が「開始メッセージ受信許容数18e」以下である場合には、通常処理部13aは、受け付けた「セッション開始メッセージ」を処理する。一方、「開始メッセージ滞留数18b」が「開始メッセージ滞留許容数18g」よりも大きい、あるいは、「開始メッセージ受信数18a」が「開始メッセージ受信許容数18e」よりも大きい場合には、負荷抑制処理部13bは、受け付けた「セッション開始メッセージ」を破棄する。
【0046】
また、接続制御装置1が「セッション確立メッセージ」あるいは「その他のメッセージ」を受信した際に、「通常メッセージ滞留数18c」が「通常メッセージ滞留許容数18h」以下であり、かつ、「保持セッション数18d」が「保持セッション許容数18f」以下である場合には、通常処理部13aは、受け付けた「セッション確立メッセージ」あるいは「その他のメッセージ」を処理する。一方、「通常メッセージ滞留数18c」が「通常メッセージ滞留許容数18h」よりも大きい場合には、負荷抑制処理部13bは、受け付けた「セッション確立メッセージ」あるいは「その他のメッセージ」を破棄する。また、「保持セッション数18d」が「保持セッション許容数18f」よりも大きい場合には、負荷抑制処理部13bは、上述同様に受け付けた「セッション確立メッセージ」あるいは「その他のメッセージ」を破棄した上で、確立しようとしているセッション、あるいは、既に確立して保持しているセッションを切断する。
【0047】
また、メッセージ後処理部14は、上述したように行った処理によって変化する上記「開始メッセージ滞留数18b」、「通常メッセージ滞留数18c」、「保持セッション数18d」などの更新をメモリ18に対して行う。
【0048】
次に、CPU使用率測定部17、許容数設定部15について説明する。CPU使用率測定部17(CPU使用率測定手段)は、接続制御装置1に装備されているCPUの使用率を測定して、許容数設定部15に通知する。なお、CPU使用率は、0〜100%の範囲で測定して通知する。例えば、0%は無負荷状態を表し、100%はCPUが稼動し続けている状態を表す。また、許容数測定部15(判定基準設定手段)は、上記CPU使用率測定部17からの通知に応じて、上述した負荷状態判定部12による判定基準となる値の再設定を行う。
【0049】
具体的に、許容数設定部15は、CPU使用率に応じて、「開始メッセージ受信許容数18e」と「保持セッション許容数18f」とを再設定して、メモリ18に記憶する。例えば、過去の計測値と比較してCPU使用率が高くなると、接続制御装置1の負荷状況が高くなるので、「開始メッセージ受信許容数18e」と「保持セッション許容数18f」と減少させて設定する。このとき、特に、CPU使用率が「開始メッセージ受信許容数18e」を減少させるときの値よりも高い状態になったときに、「保持セッション許容数18f」を減少させる。例えば、「開始メッセージ受信許容数18e」は、CPU使用率が50%を超えた段階から当該CPU使用率の増加に応じて徐々に「開始メッセージ受信許容数18e」を減少させていく場合に対して、「保持セッション許容数18f」は、CPU使用率が70%を超えた段階で減少させていくよう設定する。これにより、接続制御装置1の負荷が高い状態までより多くのセッションを保持でき、一方で、限界に近い状態でセッションを切断することで、効率よく負荷を軽減できる。なお、許容数設定部15による上述した各許容数の設定方法は一例であって、いかなる方法にて各許容数を設定してもよい。また、上述した許容数以外の他の許容数を、CPU使用率に応じて再設定してもよい。
【0050】
[動作]
次に、上述した接続制御装置1の動作を、図4の説明図、及び、図5乃至図10のフローチャートを参照して説明する。なお、ここでは、図4に示すように、例えば、符号1に示す接続制御装置1が、符号32,35に示す通信端末間で接続制御メッセージの送受信を行い(矢印Y1)、当該通信端末間32,35のセッションを確立する場合(矢印Y2)を想定する。また、符号1に示す接続制御装置1が、既にセッションが確立している符号31,33に示す通信端末間で接続制御メッセージの送受信を行い(矢印Y3)、当該通信端末間31,33のセッションを切断する場合(矢印Y4)を想定する。
【0051】
まず、図5に示すように、接続制御装置1が、通信端末31等から接続制御メッセージを受信すると(ステップS1、メッセージ受付工程)、受信したメッセージの種別を判断する。そして、判別したメッセージの種別毎に処理を行う(ステップS2)。具体的には、受信したメッセージが「セッション開始メッセージ」である場合は(ステップS3)、図6に進む。また、受信したメッセージが「セッション確立メッセージ」である場合は(ステップS4)、図7に進む。また、受信したメッセージが「その他のメッセージ」である場合は(ステップS5)、図8に進む。また、受信したメッセージが「セッション終了メッセージ」である場合は(ステップS6)、図9に進む。なお、後述する図10は、メッセージの受信に関係なく、任意のタイミングで実行される判断基準を設定する処理を示している。
【0052】
次に、受信した接続制御メッセージが、「セッション開始メッセージ」である場合の動作を、図6を参照して説明する。まず、「セッション開始メッセージ」を受信すると、メモリ18に記憶されている「開始メッセージ受信数18a」を1カウントアップする(ステップS11)。なお、「開始メッセージ受信数18a」は、図示しないが、タイマ16からの一定時間毎の通知により、「0」にリセットされる。つまり、「開始メッセージ受信数18a」は、一定時間内に受信した「セッション開始メッセージ」の数となる。
【0053】
続いて、接続制御装置1にてカウントされる当該接続制御装置1において未処理の「セッション開始メッセージ」の数である「開始メッセージ滞留数18b」をメモリ18から読み出す。また、メモリ18から予め設定された「開始メッセージ滞留許容数18g」も読み出す。そして、「開始メッセージ滞留数18b」と「開始メッセージ滞留許容数」とを比較する(ステップS12、負荷状態判定工程)。このとき、「開始メッセージ滞留数18b」が「開始メッセージ滞留許容数18g」よりも大きい場合には(ステップS12でノー)、受信した「セッション開始メッセージ」を破棄し(ステップS13、負荷増加抑制工程)、処理を終了する。
【0054】
一方、「開始メッセージ滞留数18b」が「開始メッセージ滞留許容数18g」以下であった場合には(ステップS12でイエス)、受信した「セッション開始メッセージ」は接続制御装置1にて処理待ち状態となるため、メモリ18内の「開始メッセージ滞留数18b」を1カウントアップする(ステップS14)。
【0055】
続いて、上述したように一定時間内に受信した「セッション開始メッセージ」の数である「開始メッセージ受信数18a」と「開始メッセージ受信許容数18e」とをメモリ18から読み出し、これらを比較する(ステップS15、負荷状態比較工程)。そして、「開始メッセージ受信数18a」が「開始メッセージ受信許容数18e」よりも大きい場合には(ステップS15でノー)、受信した「セッション開始メッセージ」を破棄する(ステップS18、負荷増加抑制工程)。その後、「開始メッセージ滞留数18b」を1カウントダウンし(ステップS17)、処理を終了する。
【0056】
一方、「開始メッセージ受信数18a」が「開始メッセージ受信許容数18e」以下であった場合には(ステップS15でイエス)、受け付けた「セッション開始メッセージ」を処理する(ステップS16、接続制御工程)。つまり、通信端末から送信された「セッション開始メッセージ」を、通信相手となる通信端末に送信するよう、当該他の通信端末が接続されている隣接する他の接続制御装置に送信する。これにより、「セッション開始メッセージ」を1つ処理したことになるため、その後、「開始メッセージ滞留数18b」を1カウントダウンし(ステップS17)、処理を終了する。
【0057】
次に、受信した接続制御メッセージが、「セッション確立メッセージ」である場合の動作を、図7を参照して説明する。まず、「セッション確立メッセージ」を受信すると、接続制御装置1にてカウントされる接続制御装置1において未処理の「通常メッセージ」の数である「通常メッセージ滞留数18c」と、予め設定された「通常メッセージ滞留許容数18h」と、をメモリ18から読み出す。そして、「通常メッセージ滞留数18c」と、「通常メッセージ滞留許容数18h」とを比較する(ステップS21、負荷状態判定工程)。
【0058】
比較の結果、「通常メッセージ滞留数18c」が「通常メッセージ滞留許容数18h」よりも大きい場合には(ステップS21でノー)、受信した「セッション確立メッセージ」を破棄し(ステップS22、負荷増加抑制工程)、処理を終了する。一方、「通常メッセージ滞留数18c」が「通常メッセージ滞留許容数18h」以下であった場合には(ステップS21でイエス)、受信した「セッション確立メッセージ」は接続制御装置1にて処理待ち状態となるため、メモリ18内の「通常メッセージ滞留数18c」を1カウントアップする(ステップS23)。
【0059】
続いて、接続制御装置1にてカウントされ当該接続制御装置1が保持しているセッションの数である「保持セッション数18d」と、予め設定されたあるいは許容数設定部15にて設定された「保持セッション許容数18f」と、をメモリ18から読み出す。そして、「保持セッション数18d」と「保持セッション許容数18f」とを比較する(ステップS24、負荷状態判定工程)。
【0060】
比較の結果、「保持セッション数18d」が「保持セッション許容数18f」よりも大きい場合には(ステップS24でノー)、受信した「セッション確立メッセージ」を破棄し(ステップS27)、セッション終了メッセージを通信相手となる通信端末に送信することで(ステップS28)、セッションを切断する(ステップS29、負荷増加抑制工程)。その後、「通常メッセージ滞留数18c」を1カウントダウンし(ステップS30)、処理を終了する。
【0061】
一方、「保持セッション数18d」が「保持セッション許容数18f」以下であった場合には(ステップS24でイエス)、接続制御装置1が保持するセッションの数を表すメモリ18に記憶された保持セッション数18dを1カウントアップする(ステップS25)。そして、受け付けた「セッション確立メッセージ」を処理する(ステップS26、接続制御工程)。つまり、「セッション開始メッセージ」に応じた「セッション確立メッセージ」を送信し、通信端末間のセッションを確立する。これにより、「セッション確立メッセージ」が1つ処理されるため、その後、「通常メッセージ滞留数18c」を1カウントダウンし(ステップS30)、処理を終了する。
【0062】
次に、受信した接続制御メッセージが、上述した「セッション開始メッセージ」や「セッション確立メッセージ」でもなく、また、後述する「セッション終了メッセージ」でもなく、「その他のメッセージ」である場合の動作を、図8を参照して説明する。
【0063】
まず、「その他のメッセージ」を受信すると、接続制御装置1にてカウントされ当該接続制御装置1における未処理の「通常メッセージ」の数である「通常メッセージ滞留数18c」と、予め設定された「通常メッセージ滞留許容数18h」とを、メモリ18から読み出す。そして、「通常メッセージ滞留数18c」と、「通常メッセージ滞留許容数18h」とを比較する(ステップS41、負荷状態判定工程)。
【0064】
比較の結果、「通常メッセージ滞留数18c」が「通常メッセージ滞留許容数18h」よりも大きい場合には(ステップS41でノー)、受信した「その他のメッセージ」を破棄し(ステップS42、負荷増加抑制工程)、処理を終了する。一方、「通常メッセージ滞留数18c」が「通常メッセージ滞留許容数18h」以下であった場合には(ステップS21でイエス)、受信した「その他のメッセージ」は処理待ち状態となるため、メモリ18内の「通常メッセージ滞留数18c」を1カウントアップする(ステップS43)。
【0065】
続いて、接続制御装置1にてカウントされ当該接続制御装置1が保持しているセッションの数である「保持セッション数18d」と、予め設定されたあるいは許容数設定部15にて設定された「保持セッション許容数18f」と、をメモリ18から読み出す。そして、「保持セッション数18d」と「保持セッション許容数18f」とを比較する(ステップS44、負荷状態判定工程)。
【0066】
比較の結果、「保持セッション数18d」が「保持セッション許容数18f」よりも大きい場合には(ステップS44でノー)、上述したように受信した「その他のメッセージ」を破棄し(ステップS47)、セッション終了メッセージを通信相手となる通信端末に送信することで(ステップS48)、セッションを切断する(ステップS49、負荷増加抑制工程)。このとき、受信した「その他のメッセージ」が、現在確立しているセッションに対するものであった場合には(ステップS50でイエス)、メモリ18に記憶されている「保持セッション数18d」を1カウントダウンする(ステップS51)。そして、さらに、「通常メッセージ滞留数18c」を1カウントダウンし(ステップS46)、処理を終了する。
【0067】
一方、「保持セッション数18d」が「保持セッション許容数18f」以下であった場合には(ステップS44でイエス)、受信した「その他のメッセージ」を処理する(ステップS45、接続制御工程)。例えば、既存のセッションに対する「その他のメッセージ」に応じた処理を行う。その後、「通常メッセージ滞留数18c」を1カウントダウンし(ステップS46)、処理を終了する。
【0068】
次に、受信した接続制御メッセージが、「セッション終了メッセージ」である場合の動作を、図9を参照して説明する。まず、「セッション終了メッセージ」を受信すると、メモリ18に記憶されている「保持セッション数18d」を1カウントダウンする(ステップS61)。そして、確立しているセッションの切断処理を行う(ステップS62、接続制御工程)。
【0069】
次に、接続制御メッセージの受信とは関係なく実行される許容数設定部15の動作を、図10を参照して説明する。まず、タイマ18からの一定時間が経過した旨の通知のタイミングで、CPU使用率測定部17からCPU使用率を取得する(ステップS71)。そして、取得したCPU使用率に基づいて、メモリ18に記憶されている「開始メッセージ受信許容数18e」と「保持セッション許容数18f」とを再設定し(ステップS72、判定基準設定工程)、メモリ18に記憶し直す(ステップS73)。例えば、CPU使用率が高くなるにつれて、各許容数18e,18fが低くなるよう再設定する。なお、この設定は、例えば、予め定められ記憶された、CPU使用率と各許容数との関係を表すグラフに基づいて設定してもよい。
【0070】
以上のように、上述した接続制御装置1によると、まず、接続制御装置1自体の負荷が高くない状態に置いては、通常の接続制御処理が実行される。つまり、通信端末や他の接続制御装置から受信した接続制御メッセージに応じて、通信相手となる通信端末と直接、あるいは、隣接する他の接続制御装置を経由して通信端末と、セッションを制御するための接続制御メッセージを送受信する。そして、セッションの確立を開始したり、セッションを解放するなど、接続制御を行う。
【0071】
一方で、上述した負荷状態判定部12にて、接続制御装置1自体の負荷が高くなっていると予測される状況においては、受信した接続制御メッセージを破棄したり、確立しているセッションを切断するなど、負荷増加を抑制する処理を行う。このとき、CPUの負荷を、接続制御装置1内で未処理である処理待ちのメッセージの数に基づいて判定しているため、装置1が過負荷となる前に過負荷となりうる状態を高精度に検知することができる。そして、これに応じて負荷増加抑制処理を実行するため、装置がダウンすることを事前に抑制でき、通信端末間の接続制御の安定化を図ることができる。
【0072】
<実施形態2>
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。本実施形態における接続制御装置1は、上記実施形態1における接続制御装置1とほぼ同一の構成を採っている。従って、以下では、相違点のみ説明する。
【0073】
本実施形態における接続制御装置1は、図2に開示した許容数設定部15による処理が、上記とは異なる。つまり、実施形態1における許容数設定処理部15は、上述したようにCPU使用率に基づいて「開始メッセージ受信許容数18a」と「保持セッション許容数18f」を設定して記憶しているが、さらに、過去の動作状況に応じて、これらの許容数を設定する、という機能を有する。換言すると、各許容数の算出式に、過去の「開始メッセージの受信数」、「保持するセッション数」をパラメータとして含める。
【0074】
具体的には、まず、「開始メッセージ受信許容数18a」は以下の式で求める。
(開始メッセージ受信許容数)=(再設定した開始メッセージ受信許容数)−{((一定時間内に受信した開始メッセージの数)−(装置が動作を保障する開始メッセージ数))÷100}×(装置が動作を保障する開始メッセージ数)
ここで、(再設定した開始メッセージ受信許容数)は、例えば、前回に設定した、あるいは、取得したCPU使用率に応じて設定した開始メッセージ受信許容数である。また、(一定時間内に受信した開始メッセージの数)は、タイマ16にて計測された直前の一定時間内に受信した開始メッセージ数である。また、(装置が動作を保障する開始メッセージ数)は、例えば、事前に接続制御装置1の処理能力に応じて設定された受信可能な開始メッセージ数の上限値、あるいは、測定されたCPU使用率に基づき現在の負荷状況に応じて設定された開始メッセージ数の上限値である。なお、(一定時間内に受信した開始メッセージの数)は、直前の一定時間内に受信した開始メッセージ数であることが望ましいが、さらに過去の一定時間内に受信した数でもよく、また、過去に計測した数の平均値であってもよい。
【0075】
また、上記許容数設定部15は、「保持セッション許容数18f」を過去の動作状況によって設定する。具体的には、「保持セッション許容数18f」は以下の式で求める。
(保持セッション許容数)=(再設定した保持セッション許容数)−{((装置が保持しているセッションの数)−(装置が動作を保障するセッションの数))÷100}×(装置が動作を保障するセッションの数)
ここで、(再設定した保持セッション許容数)は、例えば、前回に設定した、あるいは、取得したCPU使用率に応じて設定した保持セッション許容数である。また、(装置が保持しているセッション数)は、今現在あるいは過去に装置1が同時に保持したセッションの数である。また、(装置が動作を保障するセッションの数)は、例えば、事前に接続制御装置1の処理能力に応じて設定された保持可能なセッション数の上限値、あるいは、測定されたCPU使用率に基づき現在の負荷状況に応じて設定された開始メッセージ数の上限値である。
【0076】
以上のように、本実施形態では、過去に受信した開始メッセージ数や保持したセッション数など、実際の作動状況に応じて、装置の負荷状態を判定する基準となる「開始セッション受信許容数18e」や「保持セッション許容数18f」を設定している。従って、接続制御装置1の実際の稼働状況に応じて、メッセージを破棄したり、セッションを切断するなどの負荷増加抑制処理を行う負荷状況を、より適切に判定することができる。従って、より確実に、接続制御装置1のダウンを抑制できる。
【0077】
<実施形態3>
次に、本発明の第3の実施形態を、図11を参照して説明する。本実施形態における接続制御装置1は、上述した実施形態1における接続制御装置1とほぼ同様の構成を採っている。但し、図11に示すように、本実施形態では、図2に開示した許容数設定部15とCPU使用率測定部17を備えていない点で異なる。
【0078】
このように、上述した許容数設定部15を備えていない場合には、負荷状態判定部12にて判定基準として使用するメモリ18に記憶された各値は、予め設定された値を用いることとなる。つまり、上述した実施形態1,2では、「開始メッセージ受信許容数18e」と「保持セッション許容数28f」とが自動的に再設定される場合を説明したが、手動で設定して、負荷状態の判定に利用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の一形態である接続制御装置は、固定網電話交換機や移動網電話交換機といった用途に利用することができ、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】接続制御システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態1における接続制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】接続制御装置に記憶されるデータの一例を示す図である。
【図4】通信端末間の接続制御の様子を示す説明図である。
【図5】接続制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】接続制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】接続制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】接続制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】接続制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】接続制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】実施形態3における接続制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0081】
1 接続制御装置
11 メッセージ受信部
12 負荷状態判定部
13 メッセージ処理部
13a 通常処理部
13b 負荷軽減処理部
14 メッセージ後処理部
15 許容数設定部
16 タイマ
17 CPU使用率測定部
18 メモリ
18a 開始メッセージ受信数
18b 開始メッセージ滞留数
18c 通常メッセージ滞留数
18d 保持セッション数
18e 開始メッセージ受信許容数
18f 保持セッション許容数
18g 開始メッセージ滞留許容数
18f 通常メッセージ滞留許容数
21,22,23 他の接続制御装置
31,32,33,34,35,36 通信端末


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して接続された通信端末あるいは他の接続制御装置から受け付けた接続制御メッセージに基づいて通信端末間の接続制御処理を行う接続制御装置であって、
自装置内に保持している未処理の前記接続制御メッセージの数に基づいて、自装置の負荷状態を判定する負荷状態判定手段と、
この負荷状態判定手段による判定結果に応じて、自装置の負荷増加を抑制する処理を実行する負荷増加抑制手段と、
を備えたことを特徴とする接続制御装置。
【請求項2】
前記負荷状態判定手段は、自装置内にて保持している未処理の前記接続制御メッセージの数と、受け付けた前記接続制御メッセージの数と、自装置にて確立されている前記通信端末間のセッションの数と、に基づいて自装置の負荷状態を判定する、
ことを特徴とする請求項1記載の接続制御装置。
【請求項3】
前記負荷増加抑制手段は、受け付けた前記接続制御メッセージを破棄する処理、あるいは、自装置にて確立されているセッションを切断する処理、を実行する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の接続制御装置。
【請求項4】
前記負荷状態判定手段は、自装置内にて保持している未処理の前記接続制御メッセージの数である未処理メッセージ数と、予め設定された未処理メッセージ許容数と、を比較し、
前記負荷増加抑制手段は、前記未処理メッセージ数が前記未処理メッセージ許容数を超えている場合に、受け付けた前記接続制御メッセージを破棄する、
ことを特徴とする請求項1,2又は3記載の接続制御装置。
【請求項5】
前記未処理メッセージ数は、前記通信端末間の接続開始を指示するセッション開始メッセージの数、あるいは、セッションの開始及び終了を指示すること以外の接続制御メッセージである通常メッセージの数、であると共に、
前記未処理メッセージ許容数は、前記セッション開始メッセージの数あるいは前記通常メッセージの数にそれぞれ対応して比較されるセッション開始メッセージ許容数、あるいは、通常メッセージ許容数である、
ことを特徴とする請求項4記載の接続制御装置。
【請求項6】
前記負荷状態判定手段は、受け付けた前記接続制御メッセージの数である受付メッセージ数と、予め設定された受付メッセージ許容数と、を比較し、
前記負荷増加抑制手段は、前記受付メッセージ数が前記受付メッセージ許容数を超えている場合に、受け付けた前記接続制御メッセージを破棄する、
ことを特徴とする請求項2,3,4又は5記載の接続制御装置。
【請求項7】
前記負荷状態判定手段は、自装置にて確立しているセッションの数である確立セッション数と、予め設定されたセッション許容数と、を比較し、
前記負荷増加抑制手段は、前記確立セッション数が前記セッション許容数を超えている場合に、受け付けた前記接続制御メッセージを破棄して既に確立されているセッションを切断する、
ことを特徴とする請求項2,3,4,5又は6記載の接続制御装置。
【請求項8】
自装置に装備されたCPUの使用率を測定するCPU使用率測定手段と、
この測定されたCPU使用率に基づいて、前記負荷状態判定手段における判定基準を設定する判定基準設定手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6又は7記載の接続制御装置。
【請求項9】
前記判定基準設定手段は、前記通信端末間の接続開始を指示するセッション開始メッセージの受付メッセージ数の許容数である受付メッセージ許容数を設定する、
ことを特徴とする請求項8記載の接続制御装置。
【請求項10】
前記判定基準設定手段は、過去に受け付けた前記セッション開始メッセージの受付メッセージ数に基づいて前記受付メッセージ許容数を設定する、
ことを特徴とする請求項9記載の接続制御装置。
【請求項11】
前記判定基準設定手段は、自装置にて確立しているセッションの数の許容数であるセッション許容数を設定する、
ことを特徴とする請求項8,9又は10記載の接続制御装置。
【請求項12】
前記判定基準設定手段は、自装置にて過去に確立したセッションの数に基づいて前記セッション許容数を設定する、
ことを特徴とする請求項10記載の接続制御装置。
【請求項13】
ネットワークを介して接続された通信端末あるいは他の接続制御装置から受け付けた接続制御メッセージに基づいて通信端末間の接続制御処理を行うコンピュータに、
自コンピュータ内にて保持している未処理の前記接続制御メッセージの数に基づいて、自コンピュータの負荷状態を判定する負荷状態判定手段と、
この負荷状態判定手段による判定結果に応じて、自コンピュータの負荷増加を抑制する処理を実行する負荷増加抑制手段と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項14】
前記負荷状態判定手段は、自コンピュータ内にて保持している未処理の前記接続制御メッセージの数と、受け付けた前記接続制御メッセージの数と、自コンピュータにて確立されている前記通信端末間のセッションの数と、に基づいて自コンピュータの負荷状態を判定する、
ことを特徴とする請求項13記載のプログラム。
【請求項15】
前記コンピュータに、
自コンピュータに装備されたCPUの使用率を測定するCPU使用率測定手段と、
この測定されたCPU使用率に基づいて、前記負荷状態判定手段における判定基準を設定する判定基準設定手段と、
を実現させるための請求項13又は14記載のプログラム。
【請求項16】
ネットワークを介して接続された通信端末あるいは他の接続制御装置から受け付けた接続制御メッセージに基づいて通信端末間の接続制御処理を行う接続制御方法であって、
前記接続制御メッセージを受信した後に、保持している未処理の前記接続制御メッセージの数に基づいて自己の負荷状態を判定する負荷状態判定工程と、この負荷状態判定工程による判定結果に応じて自己の負荷増加を抑制する処理を実行する負荷増加抑制工程と、を有する、
ことを特徴とする接続制御方法。
【請求項17】
前記負荷状態判定工程は、保持している未処理の前記接続制御メッセージの数と、受け付けた前記接続制御メッセージの数と、確立されている前記通信端末間のセッションの数と、に基づいて自己の負荷状態を判定する、
ことを特徴とする請求項16記載の接続制御方法。
【請求項18】
自己に装備されたCPUの使用率に基づいて、前記負荷状態判定工程における判定基準を設定する判定基準設定工程を備えた、
ことを特徴とする請求項16又は17記載の接続制御方法。
【請求項19】
ネットワークを介して接続された通信端末及び接続制御装置を備え、当該接続制御装置が、前記通信端末あるいは他の接続制御装置から受け付けた接続制御メッセージに基づいて通信端末間の接続制御処理を行う、接続制御システムであって、
前記接続制御装置が、
自装置内に保持している未処理の前記接続制御メッセージの数に基づいて、自装置の負荷状態を判定する負荷状態判定手段と、
この負荷状態判定手段による判定結果に応じて、自装置の負荷増加を抑制する処理を実行する負荷増加抑制手段と、を備えた、
ことを特徴とする接続制御システム。
【請求項20】
前記接続制御装置が有する前記負荷状態判定手段は、自装置内にて保持している未処理の前記接続制御メッセージの数と、受け付けた前記接続制御メッセージの数と、自装置にて確立されている前記通信端末間のセッションの数と、に基づいて自装置の負荷状態を判定する、
ことを特徴とする請求項19記載の接続制御システム。
【請求項21】
前記接続制御装置が、
自装置に装備されたCPUの使用率を測定するCPU使用率測定手段と、
この測定されたCPU使用率に基づいて、前記負荷状態判定手段における判定基準を設定する判定基準設定手段と、を備えた、
ことを特徴とする請求項19又は20記載の接続制御システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−225385(P2009−225385A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70533(P2008−70533)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】