説明

接続部材及びシート部材

【課題】導電糸を有する導電性布帛に接続され、エンジンコントロールユニットからの信号で供給される電力等により導電糸を発熱させ、導電性布帛を昇温させるための接続部材、及びそれを備えるシート部材を提供する。
【解決手段】本発明の接続部材1は、導電糸と非導電糸とを有する布帛本体の端部より部分的に導電糸が露出した導電性布帛に接続されるものであって、布帛本体を挟持可能な第1挟持部11a、11bと、布帛本体の端部より部分的に露出した導電糸を挟持可能であり、且つ導電部材を有する第2挟持部13(13a、13b)と、を備えており、第2挟持部13に、導電糸が挟持されることで、導電糸と導電部材とが電気的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続部材及びシート部材に関する。更に詳しくは、本発明は、導電糸を有する導電性布帛に接続され、エンジンコントロールユニット(ECU)からの信号で供給される電力等により導電糸を発熱させ、導電性布帛を昇温させるための接続部材、及びそれを備えるシート部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、織物、編み物の構成糸の一部に導電糸を使用し、この導電糸に通電し、発熱させて昇温させる各種のヒータ部材が知られており、多くの用途において用いられている。例えば、車両、特に乗用車等のシートでは、シートクッション等の表皮材の裏面にヒータ部材を貼着し、冬期等の寒冷時に乗員を下方等から暖めることができるシートが知られている。また、これらのヒータ部材では、通常、側端部に接続部材が取り付けられており、ヒータ部材の導電糸と、接続部材の導電部材とが電気的に接続され、給電されて導電糸が発熱し、ヒータ部材が昇温する構成となっている。
【0003】
上記のように、ヒータ部材に給電し、昇温させるために接続される部材は、各種の方法により取り付けることができ、多くの取り付け構造が知られている。例えば、導電糸群が接続された加熱帯が設けられ、各群の導電糸が平面接続手段を介して電気的に接続された表面加熱部材が知られており(例えば、特許文献1参照)、平面接続手段が圧力と熱によって加熱帯に接続(溶着)されると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−227384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された表面加熱部材では、導電糸が布帛中に存在しているため、平面接続手段(接続部材)を布帛に対して取り付ける(溶着させる)と、非導電糸(通常の織物の糸)の存在が邪魔となり、導電糸と接続部材を良好に接触させて接続させることができないという問題点がある。また、溶着の際には、圧力と熱とをそれぞれ最適な設定とする必要があり、条件によっては十分に密着させることができず、接触抵抗が高くなるおそれがある。更に、接続部材と導電糸とは片側のみでの接続であるため、十分な接圧が取れないおそれがある。また、表面加熱部材の端部は、直線的な接続部材で接続されているため、曲線的な接続が困難となるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、導電糸を有する導電性布帛に接続され、エンジンコントロールユニット(ECU)からの信号で供給される電力等により導電糸を発熱させ、導電性布帛を昇温させるための接続部材、及びそれを備えるシート部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、導電糸と非導電糸とを有する布帛本体の端部より部分的に前記導電糸が露出した導電性布帛に接続される接続部材であって、
前記布帛本体を挟持可能な第1挟持部と、
前記布帛本体の端部より部分的に露出した前記導電糸を挟持可能であり、且つ導電部材を有する第2挟持部と、を備えており、
前記第2挟持部に、前記導電糸が挟持されることで、前記導電糸と前記導電部材とが電気的に接続されることを要旨とする。
【0008】
上記問題を解決するために、請求項2に記載の発明は、導電糸と非導電糸とを有する布帛本体の端部より部分的に前記導電糸が露出した導電性布帛に接続される接続部材であって、
前記布帛本体を挟持可能な第1挟持部と、
前記布帛本体の端部より部分的に露出した前記導電糸を挟持可能であり、且つ導電部材を有する第2挟持部と、を備えた接続ユニットが、導電体を有する連結部材を介して複数連結されており、
前記第2挟持部に、前記導電糸が挟持されることで、前記導電糸と前記導電部材とが電気的に接続され、
前記導電体は前記導電部材と接触することにより前記導電部材と電気的に接続されることを要旨とする。
【0009】
上記問題を解決するために、請求項3に記載の発明は、シート部材であって、導電糸と非導電糸とを有する布帛本体の端部より部分的に前記導電糸が露出した導電性布帛に、請求項1又は2に記載の接続部材が接続されたことを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3記載において、前記第1挟持部は、前記布帛本体のうちで前記導電糸が配置された領域以外の非配置領域を挟持することを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の接続部材によれば、第2挟持部により露出した導電糸を挟持するとともに、第1挟持部により布帛本体を挟持して導電性布帛に接続できるため、導電性布帛を構成する非導電糸(導電糸以外の他の構成糸)に接続を邪魔されることがなく、安定した接続を確実に行うことができる。更には、第1挟持部により布帛本体を挟持しているので、第2挟持部のみによって導電糸を挟持する場合よりも力(負荷)を布帛本体に逃がして、導電糸に直接かかる負荷を減少させることができ、導電糸の脱落や損傷を十分に防止することができる。
【0011】
本発明の他の接続部材によれば、第2挟持部により露出した導電糸を挟持するとともに、第1挟持部により布帛本体を挟持して導電性布帛に接続できるため、導電性布帛を構成する非導電糸(導電糸以外の他の構成糸)に接続を邪魔されることがなく、安定した接続を確実に行うことができる。更には、第1挟持部により布帛本体を挟持しているので、第2挟持部のみによって導電糸を挟持する場合よりも力(負荷)を布帛本体に逃がして、導電糸に直接かかる負荷を減少させることができ、導電糸の脱落や損傷を十分に防止することができる。また、この接続部材によれば、導電性布帛の端部が直線状ではなく曲線状であっても、その形状に合わせて接続することができる。更に、接続ユニットを取り付ける導電糸を選択することができるため、導電性布帛の導電糸に対して、部分的に、電気的な同時接続を行うことができる。
【0012】
本発明のシート部材によると、端部より部分的に露出した導電糸を有する導電性布帛に、上述の本発明の接続部材が接続されているため、露出した導電糸にかかる負荷を減少させることができるとともに、外部からの電力等により導電糸を十分に発熱させ、導電性布帛を十分に昇温させることができる。更には、接続部材を取り付ける導電糸を選択することができるため、導電性布帛の導電糸に対して、部分的に、電気的な同時接続を行うことができる。
また、第1挟持部が、布帛本体のうちで導電糸が配置された領域以外の非配置領域を挟持する場合には、挟持による導電糸の損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】本発明の接続部材及びシート部材を説明する斜視図である。
【図2】接続部材(接続ユニット)が開いた状態を説明するための斜視図である。
【図3】接続部材(接続ユニット)が閉じた状態を説明するための斜視図である。
【図4】本発明の接続部材を導電性布帛に接続する方法を説明する模式図である。
【図5】本発明の接続部材を導電性布帛に接続する方法を説明する模式図である。
【図6】本発明の接続部材を導電性布帛に接続する方法を説明する模式図である。
【図7】本発明の接続部材を導電性布帛に接続する方法を説明する模式図である。
【図8】他の形態の接続部材及びシート部材を説明する斜視図である。
【図9】本発明の接続部材を導電性布帛に接続する方法を説明する模式図である。
【図10】本発明の接続部材を導電性布帛に接続する方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0015】
1.接続部材(実施形態1.及び実施形態2.)
本実施形態1.に係る接続部材は、導電糸と非導電糸とを有する布帛本体の端部より部分的に導電糸が露出した導電性布帛に接続される接続部材であって、
布帛本体を挟持可能な第1挟持部と、布帛本体の端部より部分的に露出した導電糸を挟持可能であり、且つ導電部材を有する第2挟持部と、を備えており、
第2挟持部に、導電糸が挟持されることで、導電糸と導電部材とが電気的に接続されることを特徴とする。
【0016】
また、本実施形態2.に係る接続部材は、導電糸と非導電糸とを有する布帛本体の端部より部分的に導電糸が露出した導電性布帛に接続される接続部材であって、
布帛本体を挟持可能な第1挟持部と、布帛本体の端部より部分的に露出した導電糸を挟持可能であり、且つ導電部材を有する第2挟持部と、を備えた接続ユニットが、導電体を有する連結部材を介して複数連結されており、
第2挟持部に、導電糸が挟持されることで、導電糸と導電部材とが電気的に接続され、
導電体は導電部材と接触することにより導電部材と電気的に接続されることを特徴とする。
特に、この実施形態2.においては、上記接続ユニットとして、上記実施形態1.に係る接続部材を用いるものとすることができる。
【0017】
(1)第1挟持部
上記「第1挟持部」は、接続部材が接続される導電性布帛の布帛本体を挟持するものである。
この第1挟持部の形状や材質等の構成は、布帛本体を挟持可能である限り特に限定されない。
特に、第1挟持部の外表面は絶縁性を備えていることが好ましい。具体的には、少なくとも外表面側が、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド6等のポリアミド系樹脂等の合成樹脂等により構成されていることが好ましい。
【0018】
また、第1挟持部には、布帛本体との接続をより確実なものとするために、係止部(図2におけるツメ状の係止部111参照)が形成されていることが好ましい。尚、この係止部の形状等の構成は特に限定されない。
【0019】
更に、この第1挟持部には、導電性布帛本体のうちで導電糸が配置された領域以外の非配置領域を挟持できるように、切り欠き部(図2及び図3における切り欠き部17参照)が形成されていることが好ましい。尚、この切り欠き部17の形状等の構成は特に限定されない。
【0020】
ここで、上記第1挟持部の具体的な構成としては、例えば、図2及び図3に示すように、永久ヒンジ15により開閉可能であり、一の挟持部11a及び他の挟持部11bを備えた第1挟持部11を挙げることができる。尚、この第1挟持部11には、複数の係止部111が形成されており、且つ、一の挟持部11aにおける係止部111の間、及び他の挟持部11aにおける係止部111の間には、それぞれ、切り欠き部17が形成されている。
【0021】
(2)第2挟持部
上記「第2挟持部」は、導電部材を有するものであって、導電性布帛の端部より部分的に露出した導電糸を挟持可能なものである。
第2挟持部の形状や材質等の構成は、導電性布帛の端部より部分的に露出する導電糸を挟持可能であり、且つ、導電糸と導電部材とが接触することにより、通電時に両者が電気的に接続される限り特に限定されない。
この第2挟持部は、導電部材のみから形成されていてもよいし、樹脂等により構成された他の部材に導電部材が配設されたものであってもよい。
上記導電部材の材質としては、例えば、金、銀、銅、黄銅、白金、鉄、ステンレス鋼及び耐熱鋼等の鋼、亜鉛、錫、ニッケル、アルミニウム、タングステン等の金属が挙げられる。
【0022】
また、上記第2挟持部における導電部材からなる導電部には、導電糸との接触面積を増大させたり、導電糸をより確実に挟持したりするために、孔部、凸部又は溝部等が形成されていてもよい。
【0023】
ここで、上記第2挟持部の具体的な構成としては、例えば、図2及び図3に示すように、一の挟持部13a及び他の挟持部13bを備えた第2挟持部13を挙げることができる。尚、一の挟持部13aは、第1挟持部11における一の挟持部11aの内表面に形成されており、他の挟持部13bは、第1挟持部11における他の挟持部11bの内表面に形成されている。
【0024】
(3)連結部材
上記「連結部材」は、導電体を有するものであって、複数の接続ユニットを連結可能なものである。
この連結部材の形状や材質等の構成は、接続ユニットを連結可能であり、且つ、接続ユニットにおける導電部材と連結部材における導電体とが接触することにより、通電時に両者が電気的に接続される限り特に限定されない。
導電体の材質としては、例えば、金、銀、銅、黄銅、白金、鉄、ステンレス鋼及び耐熱鋼等の鋼、亜鉛、錫、ニッケル、アルミニウム、タングステン等の金属が挙げられる。
【0025】
また、上記連結部材の外表面は絶縁性を備えていることが好ましい。具体的には、少なくとも外表面側が、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド6等のポリアミド系樹脂等の合成樹脂等により構成されていることが好ましい。
【0026】
具体的な連結部材としては、例えば、図1、図5及び図6に示すように、導電体(金属線)21と、この導電体21を挟持可能な絶縁部材23と、からなるものが挙げられる。尚、絶縁部材23の開閉構造は特に限定されず、螺合構造や嵌合構造等により構成することができる。
更には、図7に示すように、金属線(導電体31)が絶縁性樹脂33によりコーティングされたものが挙げられる。
【0027】
(4)導電性布帛
上記「導電性布帛」(図1及び図4における導電性布帛9参照)は、織物であってもよく、編み物であってもよい。織物も特に限定されず、平織り、綾織り、朱子織り等のいずれの織り組織であってもよい。また、編み物も特に限定されず、緯編み及び経編みのいずれの編み組織であってもよい。更に、織物及び編み物に用いる非導電糸の材質も特に限定されず、植物系及び動物系の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、アセテート等の半合成繊維、ポリアミド及びポリエステル等の合成樹脂からなる合成繊維等を用いてなる糸が挙げられる。これらの非導電糸は1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。尚、これらの非導電糸は、通常、比抵抗が10Ω・cmを超え、絶縁性である。
【0028】
織物及び編み物の構成糸の一部として用いられる上記「導電糸」(図1及び図4における導電糸91参照)は、通電可能な導電性の繊維状材料であり、特にJIS K 7194に準拠して測定した比抵抗(体積抵抗率)が100〜10−12Ω・cmの導電糸を使用することができる。このような導電糸としては、例えば、金属線、めっき線材及び炭素繊維のフィラメント等が挙げられる。
【0029】
金属線としては、金、銀、銅、黄銅、白金、鉄、ステンレス鋼及び耐熱鋼等の鋼、亜鉛、錫、ニッケル、アルミニウム、タングステン等からなる線材が挙げられる。これらのうちでは、ステンレス鋼製の金属線が、優れた耐食性及び強度等を有するため好ましい。ステンレス鋼は特に限定されず、SUS304,SUS316及びSUS316L等が挙げられ、SUS304は汎用性が高いため好ましく、SUS316及びSUS316Lはモリブデンが含有されており、優れた耐食性を有するため好ましい。
【0030】
金属線の線径も特に限定されないが、強度及び柔軟性の観点で、10〜150μm、特に20〜60μmであることが好ましい。更に、金属線は、例えば、ポリエステル繊維等の他の繊維材料を芯糸とし、金属線を鞘糸とし、S及びZのうちの少なくとも一方の撚方向に金属線を巻き付けてなる複合糸の形態で用いることもできる。この場合、線径の小さい金属線を使用すれば、優れた柔軟性を有するとともに、芯糸による十分な引張強度を併せて有する導電糸とすることができるため好ましい。
【0031】
また、金属線として、その表面に樹脂コーティング(電気絶縁性の被覆)が施された金属線を用いることもできる。このような金属線は、被覆された樹脂層により保護されるため優れた防錆性を有する。更に、導電糸の露出部と電線とを接続するときは、樹脂層を剥がして金属線を露出させ、電気的に確実に接続させることができる。コーティングに用いる樹脂は特に限定されず、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられ、耐久性の観点でポリウレタン樹脂が好ましい。
【0032】
樹脂層の厚さは、樹脂の種類及びその耐久性等、並びに導電性布帛の用途等によって設定することができ、例えば、0.05〜500μm、特に1〜10μmとすることができる。また、樹脂コーティングの方法も特に限定されないが、金属線を樹脂分散液に浸漬し、又は液中を通過させて樹脂分散液を付着させ、その後、加熱して媒体を除去し、次いで、冷却して固着させる方法が挙げられる。また、樹脂粉末を金属線に付着させ、その後、加熱し、次いで、冷却して固着させることもできる。更に、溶融樹脂を金属線に融着させ、必要に応じて加熱し、その後、冷却して固着させることもできる。
【0033】
めっき線材としては、非導電性又は導電性の繊維材料を芯材とし、この芯材の表面のうちの全面又は幅方向の一部において全長さに亘って形成された、単体金属又は合金からなるめっき層を有する線材を用いることができる。このように芯材の表面にめっき層を形成することで、芯材が非導電性の繊維材料であっても導電糸とすることができる。一方、芯材が導電性の繊維材料の場合、めっき層を形成することで耐久性を向上させることができる。
【0034】
めっき線材の芯材として用いることができる導電性繊維としては、各種の金属繊維等が挙げられる。一方、非導電性繊維としては、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリイミド繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維及びボロン繊維等が挙げられる。更に、めっき処理に用いられる金属としては、錫、ニッケル、金、銀、銅、鉄、鉛、白金、亜鉛、クロム、コバルト及びパラジウム等の単体金属、並びにニッケル−錫、銅−ニッケル、銅−錫、銅−亜鉛及び鉄−ニッケル等の合金が挙げられる。
【0035】
導電糸として用いられる炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系炭素繊維(PAN系炭素繊維)、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。これらの炭素繊維のうちでは、1000℃以上の焼成温度で製造される炭素化繊維、黒鉛化繊維、黒鉛繊維等の炭素繊維が、優れた電気伝導性を有するため好ましい。
【0036】
上記の各種の導電糸は、導電性布帛に用いられる他の糸である非導電糸と比べて高い耐熱性を有していることが好ましい。言い換えれば、加熱により溶融する温度、又は溶融しない糸である場合は、燃焼開始温度が非導電糸より高いことが好ましい。即ち、非導電糸より高融点であるか、又は燃焼し難い糸であることが好ましい。この燃焼性の指標としては、JIS K 7201及びJIS L 1091(1999) 8.5E−2法に準拠して測定される限界酸素指数(LOI)を用いることができ、LOIが26以上である導電糸が好ましい。上記の導電糸のうち、金属線は、一般に、非導電糸として用いられる天然繊維及び合成繊維より高融点であって、且つLOIは、通常、26以上であり、例えば、ステンレス鋼繊維のLOIは49.6である。また、炭素繊維は溶融せず、LOIは60以上である。
【0037】
非導電糸は、加熱により溶融する温度、又は溶融せず燃焼する場合は、燃焼開始温度が導電糸より低く、溶融せず燃焼する非導電糸の場合は、LOIが26未満であることが好ましい。天然繊維のLOIは26未満であることが多く、例えば、綿のLOIは18〜20であり、羊毛のLOIは24〜25である。更に、合成繊維は、導電糸より低融点であることが多く、燃焼性は導電糸より高いことが多い。例えば、ポリエステル繊維のLOIは18〜20であり、ポリアミド繊維のLOIは20〜22である。
【0038】
織物又は編み物の構成糸として織成される又は編成される非導電糸中の導電糸の間隔は特に限定されないが、例えば、乗用車のシートクッション等では、2〜100mm、特に5〜50mm程度が好ましい。間隔が狭いと均等に暖めることができるが導電糸1本当たりの電流が少なくなり温度が低下する、若しくは温度を上げるために電圧を高くすれば、消費電力が増加することになる。一方、間隔が広いと導電糸1本当たりの電流が多くなり温度が上がる、若しくは電圧を下げて消費電力を抑制することができる。しかし、間隔が広いためシートクッション表面等の温度ムラを生じ易くなる。
【0039】
また、導電性布帛における導電糸の配置は特に限定されず、導電糸は略等間隔に織成又は編成されていてもよく、等間隔でなくてもよい。導電糸が略等間隔に織成又は編成されておれば、導電性布帛の全面をより均等に暖めることができる。一方、導電性布帛の特定箇所を特に十分に暖めたい場合は、対応する箇所において導電糸を相対的に密に配置させ、他の箇所において相対的に粗に配置させることもできる。
【0040】
更に、導電糸は、非導電糸の間に1本のみを織成又は編成してもよく、非導電糸の間に複数本、例えば、2〜10本、特に2〜5本の導電糸を連続して織成又は編成してもよい。この場合も、連続して織成又は編成された複数の導電糸の、導電性布帛における配置は等間隔でもよく、等間隔でなくてもよい。このように、導電性布帛の全面を均等に暖めるか、特定箇所をより十分に暖めるかは、導電糸を配置させる間隔、及び連続して織成又編成するときの導電糸の本数等によって調整することができる。
【0041】
また、導電性布帛の端部より導電糸を部分的に露出させる方法は特に限定されない。
例えば、導電糸を露出させる端部における非導電糸等は加熱等により除去することができる。尚、導電糸に電気絶縁性の被覆がなされているときも、露出された導電糸の被覆を加熱することによって、溶融又は燃焼させて除去することができる。
加熱手段は特に限定されず、電熱加熱により昇温した発熱部材等を接触させる方法、及び炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等のレーザを照射する方法等が挙げられるが、レーザを照射する方法が好ましい。
【0042】
レーザを照射する方法であれば、非導電材の材質等によって、レーザの強度及び出力を非導電材の溶融、燃焼に必要とされるレベルに容易に調整することができ、非導電材を容易に、且つ効率よく除去することができる。更に、レーザは、導電性布帛のいずれの面から照射してもよく、導電性布帛の表面に対して焦点位置をずらして照射することにより、一時に幅広に加工することもでき、導電性布帛の長さ方向に往復して照射して非導電材を帯状に除去することもできる。また、レーザの照射とともに、窒素ガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを吹き付けることにより、過熱による導電体の酸化劣化を防止、又は少なくとも抑えることもできる。
【0043】
導電性布帛の側端部の非導電材は、全てを加熱により除去してもよいが、導電性布帛の側端部の全面を加熱し、溶融又は燃焼させて除去するのは容易ではない。そのため、導電性布帛の本体部と側端部との境界部で、非導電材を導電性布帛の長さ方向に帯状に除去し、その後、端部側を外方に引っ張って導電糸から抜き取り、導電性布帛の側端部の非導電材の全てを一時に除去することが好ましい。このようにすれば、非導電材をより効率よく除去することができる。
【0044】
2.シート部材
本実施形態3.に係るシート部材は、端部より部分的に導電糸が露出した導電性布帛に、上述の接続部材が接続されたことを特徴とする。
このシート部材では、上記実施形態1.又は実施形態2.に係る接続部材が接続されているため、露出した導電糸にかかる負荷を減少させることができるとともに、外部からの電力等により導電糸を十分に発熱させ、導電性布帛を十分に昇温させることができる。更には、接続部材(接続ユニット)を取り付ける導電糸を選択することができるため、導電性布帛の導電糸に対して、部分的に、電気的な同時接続を行うことができる。
【0045】
また、導電性布帛に接続されている接続部材における第1挟持部は、布帛本体のうちで導電糸が配置された領域以外の非配置領域を挟持していることが好ましい。この場合、第1挟持部の挟持による導電糸の損傷を防止することができる。
【0046】
また、このシート部材を表皮材の裏面に貼着し、例えば、乗用車のシートクッションに用いる場合、接続部材と布帛との接続部がシートクッションの幅方向のどの位置になるかは特に限定されないが、接続部がシートクッションのうちの人の臀部、大腿部等が触れる箇所にあると、硬さを感じて違和感がある。更に、シートバックでは、接続部がシートバックのうちの人の肩、背部等が触れる箇所にあると、硬さを感じて違和感がある。そのため、接続部は、表皮材と、この表皮材に隣接するサイド材等の他の部材との縫製部より外側に位置するように配設することが好ましい。このようにすれば、着座した人に違和感を与えることがないとともに、耐久性を向上させることもできる。
【実施例】
【0047】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。尚、本実施例では、本発明に係る接続部材を例示する。
【0048】
<実施例1>
(1−1)接続部材の構成
実施例1における接続部材10は、図1に示すように、複数の接続ユニット1と、これらの接続ユニット1を連結可能な連結部材2と、を備えている。
接続ユニット1は、図1〜図3に示すように、導電性布帛9の本体端部を挟持可能な第1挟持部11と、導電性布帛9の端部より部分的に露出した導電糸91を挟持可能な第2挟持部13と、を備えている。
【0049】
第1挟持部11は、可撓性の絶縁性樹脂によって構成されており、図2及び図3に示すように、永久ヒンジ15により開閉可能であり、一の挟持部11a及び他の挟持部11bを備えている。
また、一の挟持部11a及び他の挟持部11bには、それぞれ、導電性布帛の本体端部を係止可能なツメ状の係止部111が複数形成されている。
更に、一の挟持部11a及び他の挟持部11bには、それぞれの側における係止部111の間に切り欠き部17が形成されている。
【0050】
第2挟持部13は、導電性の金属によって構成されており、それ自身が導電部材となっている。
図2及び図3に示すように、第2挟持部13は、略角柱状の一の挟持部13a及び他の挟持部13bを備えている。そして、一の挟持部13aは、上記第1挟持部11における一の挟持部11aの内表面に形成されており、且つ、他の挟持部13bは、上記第1挟持部11における他の挟持部11bの内表面に形成されている。
【0051】
連結部材2は、複数本の導電体(金属線)21と、この導電体21を挟持可能な複数の絶縁部材23と、からなる。
導電体21は、導電性の金属線であり、接続ユニット1における第2挟持部13に挟持されることにより、接続ユニット1同士を連結するものである。
絶縁部材23は、可撓性の絶縁性樹脂によって構成されており、図6及び図1に示すように、永久ヒンジにより開閉可能であり、導電体21を挟持可能な挟持部(一の挟持部23a及び他の挟持部23b)を備えている。
【0052】
(1−2)導電性布帛の構成
図4に示すように、接続部材1が接続される導電性布帛9は、通電可能な導電性の導電糸と、非導電糸とを用いてなる織物であって、導電性布帛9の端部より部分的に露出した導電糸91を有するものである。尚、導電性布帛9の端部における非導電糸は除去されている。
【0053】
(1−3)接続部材の導電性布帛への接続
まず、図4に示すように、導電性布帛9の本体端部を、各接続ユニット1の第1挟持部11における他の挟持部11bの上に配置するとともに、部分的に露出している導電糸91を各接続ユニット1の第2挟持部13における他の挟持部13bの上に配置する。
その後、図5に示すように、連結部材2を構成する導電体(金属線)21を、各第2挟持部13における他の挟持部13b同士を橋渡しするように配置する。
その後、図6に示すように、第1挟持部11及び第2挟持部13を閉じ合わせる。この際、第1挟持部11における係止部111を導電性布帛9の本体に系合させて挟持状態を固定する。
次いで、図6及び図1に示すように、導電体21を絶縁部材22により挟持することで、接続部材1を導電性布帛9に接続することができ、接続部材1が接続されたシート部材100を得ることができる。
【0054】
(1−4)実施例1の作用効果
接続部材10が接続された導電性布帛9では、導電糸91と、この導電糸91を挟持しており、それ自身が導電部材からなる第2挟持部13と、が接触しており、この両者は通電時において電気的に接続される。更に、接続ユニット1同士は連結部材2によって連結されており、この連結部材2における導電体(金属線)21と、それ自身が導電部材からなる第2挟持部13とが接触するように結合されており、この両者は通電時に電気的に接続される。従って、通電時において、導電糸91は、導電部材からなる第2挟持部13を介して、連結部材2における導電体21と電気的に確実に接続されることになる。そのため、外部より供給される電力等により、接続部材10を介して、シート部材100における導電性布帛9を十分に昇温させることができる。
【0055】
また、接続部材10における接続ユニット1では、第2挟持部13(一の挟持部13a及び他の挟持部13b)により露出した導電糸91を挟持するとともに、第1挟持部11(一の挟持部11a及び他の挟持部11b)により布帛本体を挟持することにより、接続部材10と導電性布帛9との接続を容易且つ確実なものとしている。更には、接続部材10に衝撃が加わった場合に、挟持されている導電糸91のみが引っ張られることを抑制でき、導電糸91の脱落や損傷を十分に防止できる。また、第1挟持部11には、切り欠き部17が形成されており、第1挟持部11における係止部111は、導電性布帛9のうちで導電糸91が配置された領域以外の非配置領域を挟持しており、挟持による導電糸の損傷を防止している。
【0056】
更に、各接続ユニット1における第1挟持部11(一の挟持部11a及び他の挟持部11b)は、絶縁性の樹脂から構成されているため、導電性布帛9に接続された後には、絶縁部としての役割を果たす。
【0057】
また、接続部材10においては、複数の接続ユニット1が可撓性を有する連結部材2により連結されているため、各形状等を調節することにより上下左右に可動させることができる。そして、一本の導電糸91に対して一つの接続ユニット1が接続されるため、導電性布帛9の端部が直線状ではなく曲線状であっても、その形状に合わせて接続部材10を導電性布帛9に接続することができる。
【0058】
更に、接続部材10においては、接続ユニット1を取り付ける導電糸91を選択することができるため、導電性布帛9の導電糸91に対して、部分的に、電気的な同時接続を行うことができる。
【0059】
尚、本発明においては、上記実施例1に限られず、目的、用途に応じて、本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
即ち、上記実施例1においては、図5に示すように、複数本の導電体21を用いて、各接続ユニット1における第2挟持部13(他の挟持部13b)同士を連結しているが、図9に示すように、一本の導電体(金属線)22を用いることにより、他の挟持部13b同士を連結することもできる。
【0060】
また、上記実施例1においては、図1、図5及び図6に示すように、導電体21と絶縁部材23とを備える連結部材2により接続ユニット1を連結しているが、図7に示すように、金属線(導電体31)が絶縁性樹脂33によりコーティングされた複数本の連結部材3により接続ユニット1を連結することもできる。
この場合、図7に示すように、連結部材3における絶縁性樹脂33によりコーティングされていない両端側の金属線を、接続ユニット1における第2挟持部13に挟持させることで、図8に示すシート部材100が得られる。
尚、図8に示すシート部材100においては、図10に示すように、各接続ユニット1が、金属線(導電体41)のうち第2挟持部13に挟持されない部分のみが絶縁性樹脂43によりコーティングされた一本の連結部材4によって連結されたものであってもよい。
【0061】
また、前述の記載は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態を挙げて説明したが、本発明の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく、説明的及び例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料及び実施形態を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、寧ろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、車両用のシートクッション及びシートバック、ホットカーペット、電気毛布、家庭用電動マッサージシート、バイク用ヒータ付きジャケット等の、昇温させ、暖めることが必要とされる各種の製品に利用することができる。特に、乗用車等の車両のシートのように屋外ではないところで用いられる製品を暖めるヒータ部材において有用である。
【符号の説明】
【0063】
1;接続ユニット(接続部材)、10;接続部材、100;シート部材、11;第1挟持部、11a;一の挟持部、11b;他の挟持部、111;係止部、13;第2挟持部、13a;一の挟持部、13b;他の挟持部、15;永久ヒンジ、17;切り欠き部、2;連結部材、21、22;導電体、23;絶縁部材、3;連結部材、31;導電体、33;絶縁性樹脂、4;連結部材、41;導電体、43;絶縁性樹脂、9;導電性布帛、91;導電糸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電糸と非導電糸とを有する布帛本体の端部より部分的に前記導電糸が露出した導電性布帛に接続される接続部材であって、
前記布帛本体を挟持可能な第1挟持部と、
前記布帛本体の端部より部分的に露出した前記導電糸を挟持可能であり、且つ導電部材を有する第2挟持部と、を備えており、
前記第2挟持部に、前記導電糸が挟持されることで、前記導電糸と前記導電部材とが電気的に接続されることを特徴とする接続部材。
【請求項2】
導電糸と非導電糸とを有する布帛本体の端部より部分的に前記導電糸が露出した導電性布帛に接続される接続部材であって、
前記布帛本体を挟持可能な第1挟持部と、
前記布帛本体の端部より部分的に露出した前記導電糸を挟持可能であり、且つ導電部材を有する第2挟持部と、を備えた接続ユニットが、導電体を有する連結部材を介して複数連結されており、
前記第2挟持部に、前記導電糸が挟持されることで、前記導電糸と前記導電部材とが電気的に接続され、
前記導電体は前記導電部材と接触することにより前記導電部材と電気的に接続されることを特徴とする接続部材。
【請求項3】
導電糸と非導電糸とを有する布帛本体の端部より部分的に前記導電糸が露出した導電性布帛に、請求項1又は2に記載の接続部材が接続されたことを特徴とするシート部材。
【請求項4】
前記第1挟持部は、前記布帛本体のうちで前記導電糸が配置された領域以外の非配置領域を挟持する請求項3に記載のシート部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−150927(P2012−150927A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7284(P2011−7284)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】