説明

推進剤を含まないイプラトロピウムブロマイド及びサルブタモールスルフェート含有吸入エアロゾル製剤

本発明は、イプラトロピウムブロマイド及びサルブタモールを含有する、推進剤を含まない吸入用エアロゾル製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、イプラトロピウムブロマイド及びサルブタモールを含有する推進剤を含まない吸入用エアロゾル製剤に関する。
【0002】
本発明は、薬理学的に許容される酸添加塩の形態でもよい活性物質サルブタモール、及びイプラトロピウムブロマイド及び任意にさらなる賦形剤を、水、エタノール及び水-エタノール混合物の中から選択される溶媒中に含有する推進剤を含まない吸入用溶液製剤であって、サルブタモール対イプラトロピウムブロマイドの質量比が5 : 1〜5.5 : 1である製剤に関する。
本発明の溶液製剤は、サルブタモール及びイプラトロピウムブロマイド以外のいかなる他の活性物質も含有しない。
サルブタモール/イプラトロピウムブロマイドの質量比は、該溶液製剤に含有されるサルブタモール対該溶液に含有されるイプラトロピウムブロマイドの質量比に基づく。
【0003】
サルブタモールは、好ましくは本発明の製剤において、薬理学的に許容される酸による酸添加塩の1種の形態で含有される。サルブタモールの好ましい酸添加塩は、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸及びリン酸の塩から選択される。本発明で特に好ましくは、サルブタモールが、本発明の製剤において、硫酸添加塩の形態で用いられる。この酸添加塩は、任意に本発明の範囲内においてサルブタモールスルフェートとしても呼ばれる。イプラトロピウムブロマイドは、本発明の製剤の調製において、無水物形態又はさらに水和物の1種の形態、好ましくはその一水和物形態で用いられ得る。
【0004】
本発明の医薬製剤は、溶媒として純水、純エタノール又はエタノール及び水の混合物を含有する。エタノール-水混合物が用いられる場合、これらの混合物におけるエタノールの質量%含有量は、好ましくは5〜99%の範囲のエタノール、特に好ましくは10〜96%の範囲のエタノールである。本発明の目的に最も特に好ましい医薬製剤は、溶媒として純水、純エタノール又は50〜92%、特に好ましくは69〜91%のエタノールを含有するエタノール-水混合物を含有する。
任意の他の共溶媒が、エタノール及び水以外に用いられ得る。それらは、好ましくはアルコール又はエーテル、例えばイソプロパノール又はテトラヒドロフランなどの中から選択される。しかし、本発明では好ましくは他の溶媒を用いない。
本発明の特に好ましい医薬製剤は、溶媒として水のみを含有する。
【0005】
通常は、本発明の製剤は、pHを調整するための薬理学的に許容される酸を含有する。本発明の製剤のpHは、好ましくは3.0〜4.0、好ましくは3.1〜3.7、特に好ましくは3.3〜3.5の範囲にある。特に好ましい溶液製剤は3.4のpHを有する。
pHを調整するために用いられる薬理学的に許容される酸は、無機酸又は有機酸でよい。好ましい無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸及びリン酸からなる群から選択される。特に好適な有機酸の例は、アスコルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、酢酸、蟻酸及びプロピオン酸からなる群から選択される。好ましい無機酸は塩酸及び硫酸であり、本発明では塩酸が特に好ましい。有機酸の中では、アスコルビン酸、フマル酸及びクエン酸が好ましく、本発明ではクエン酸が特に好ましい。望ましくは、上記酸の混合物は、特に他の特性をそれらの酸性化特性に加えて有する酸、例えば、香料又は抗酸化剤として作用するもの、例えばクエン酸又はアスコルビン酸などの場合にも用いられ得る。
【0006】
望ましくは、 薬理学的に許容される塩基を用いてpHを正確に滴定してもよい。好適な塩基は、例えばアルカリ金属水酸化物及びアルカリ金属炭酸塩を含む。好ましいアルカリ金属イオンはナトリウムである。この種の塩基が用いられる場合、後に最終的な医薬製剤に含有されることとなる生じた塩が、上記酸と薬理学的に適合性であることを保証することに注意しなければならない。
本発明の溶液中に活性物質サルブタモール及びイプラトロピウムブロマイドに加えて任意に存在していてもよいさらなる賦形剤の例は、特に好ましくは本発明の保存剤及び錯化剤である。
【0007】
錯化剤により、本発明の範囲内では複合体結合に入ることのできる分子が意味される。好ましくは、これらの化合物はカチオン、最も好ましくは金属カチオンを錯化する効果を有するべきである。本発明の製剤は、好ましくはエデト酸(EDTA)又はその公知の塩の1種、例えばナトリウムEDTA又は二ナトリウムEDTAを含有する。好ましくは、二ナトリウムエデテートが用いられ、任意にその水和物形態であり、特に好ましくはその二水和物形態である。二ナトリウムエデテートが錯化剤として本発明の製剤の範囲内で用いられる場合、二ナトリウムエデテートの含有量は、好ましくは本発明の製剤100g当たり0〜100mgの範囲、特に好ましくは5〜70mgの範囲である。好ましくは、本発明の製剤は、錯化剤、特に好ましくは二ナトリウムエデテートを、本発明の製剤100g当たり約40〜60mg、特に好ましくは約45〜55mg、特に好ましくは50mgの量で含有する。本発明では、本発明の製剤100g当たり約7〜12mg、特に好ましくは約10mgの量で錯化剤を含有する製剤も同様に重要である。
本発明でさらに同様に重要なのは、本発明の製剤100g当たり約3〜7mg、特に好ましくは約5mgの量で錯化剤を含有する製剤である。
【0008】
保存剤を用いて、該製剤を病原体による汚染から保護してもよい。好適な保存剤は当技術分野で公知のものであり、特に先行技術で公知の濃度のベンズアルコニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド又は安息香酸又は安息香酸塩、例えばナトリウムベンゾエートである。好ましくは、ベンズアルコニウムクロライドが本発明の製剤に加えられる。ベンズアルコニウムクロライドの量は、本発明の製剤100g当たり約1mg〜約50mg、好ましくは約2〜15mg、特に好ましくは約3〜12mg、特に好ましくは約10mgである。ベンズアルコニウムクロライドはまた、本発明では他の保存剤との混合物でも用いられ得る。
本発明の製剤では、イプラトロピウムブロマイドが通常は溶液100g当たり125〜200mgの量で存在する。好ましくは、本発明の製剤は、活性物質イプラトロピウムブロマイドを溶液100g当たり150〜190mg、特に好ましくは160〜180mgの量で含有する。当業者は、これらの数字から特に好ましく本発明に用いられるイプラトロピウムブロマイド一水和物の相当量を容易に計算できるだろう。
【0009】
本発明の特に好ましい製剤は、上記量のイプラトロピウムブロマイド以外に、サルブタモール対イプラトロピウムブロマイドの質量比が5.1 : 1〜5.4 : 1の範囲にあるような量のサルブタモールを含有する。本発明の特に好ましい製剤では、サルブタモール対イプラトロピウムブロマイドの質量比が5.2 : 1〜5.3 : 1の範囲にある。
本発明の特に好ましい製剤は、溶液100g当たり160〜190mg、好ましくは170〜180mgのイプラトロピウムブロマイド一水和物、及び900〜1200mg、好ましくは1000〜1100mgのサルブタモールスルフェートを含有する。
【0010】
別の特徴では、本発明は、種々の由来の閉塞性肺疾患、種々の由来の肺気腫、拘束性肺疾患、間質性肺疾患、嚢胞性線維症、種々の由来の気管支炎、気管支拡張、ARDS(成人呼吸促進症候群)及び全ての形態の肺浮腫を含む群から選択される肺疾患の治療のための薬剤を調製するための、本発明の上記医薬製剤の使用に関する。
好ましくは、本発明の医薬製剤を用いて、気管支喘息、小児喘息、重症喘息、急性喘息発作、慢性気管支炎及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)からなる群から選択される閉塞性肺疾患の治療のための薬剤を調製し、気管支喘息又はCOPDの治療のための薬剤を調製するためのそれらの使用が本発明に特に好ましい。
【0011】
さらに好ましくは、本発明の医薬製剤を用いて、その由来がCOPD(慢性閉塞性肺疾患)又はα1-プロテイナーゼ阻害剤欠乏症にある肺気腫の治療のための薬剤を調製する。
さらに好ましくは、本発明の医薬製剤を用いて、アレルギー性肺胞炎、作業関連の有毒物質によって誘発される拘束性肺疾患、例えば石綿症又は珪肺症、及び肺腫瘍、例えばリンパ管癌腫症、気管支肺胞癌及びリンパ腫などによって引き起こされる拘束の中から選択される拘束性肺疾患の治療のための薬剤を調製する。
さらに好ましくは、本発明の医薬製剤を用いて、感染、例えばウイルス、バクテリア、菌類、原虫、蠕虫又は他の病原体による感染などによって引き起こされる肺炎、種々の要因、例えば吸引及び左心不全などによって引き起こされる肺炎、放射線で誘発される肺炎又は線維症、膠原病、例えばエリテマドーデス、全身性強皮症又はサルコイドーシスなど、肉芽種、例えばベック病など、突発性間質性肺炎又は突発性肺線維症(IPF)の中から選択される間質性肺疾患の治療のための薬剤を調製する。
【0012】
また好ましくは、本発明の医薬製剤を用いて、嚢胞性線維症又はムコビシドーシスの治療のための薬剤を調製する。
さらに好ましくは、本発明の医薬製剤を用いて、気管支炎、例えばバクテリア又はウイルス感染によって引き起こされる気管支炎、アレルギー性気管支炎及び中毒性気管支炎などの治療のための薬剤を調製する。
さらに好ましくは、本発明の医薬製剤を用いて、気管支拡張の治療のための薬剤を調製する。
さらに好ましくは、本発明の医薬製剤を用いて、ARDS(成人呼吸促進症候群)の治療のための薬剤を調製する。
さらに好ましくは、本発明の医薬製剤を用いて、肺浮腫、例えば有毒物質及び異物の吸引又は吸入後の中毒性肺浮腫の治療のための薬剤を調製する。
【0013】
特に好ましくは、本発明は、喘息又はCOPDの治療のための薬剤を調製するための本発明の医薬製剤の使用に関する。さらに特に重要なのは、1日に数回、好ましくは1日に3回又は4回、炎症性及び閉塞性肺疾患、特に喘息又はCOPDを治療するための薬剤を調製するための上記使用である。
本発明はまた、本発明の1種以上の上記医薬製剤を治療上有効量で投与することを特徴とする上記疾患の治療方法にも関する。
本発明はさらに、薬剤の用量当たり約5〜25μL、好ましくは約7〜20μLの本発明の溶液を投与することを特徴とする、上記疾患の1種、特に喘息又はCOPDの治療のための薬剤を調製するための上記医薬製剤の使用に関する。薬剤の用量当たり約10〜13μLの本発明の溶液が投与されることを特徴とする、上記疾患の1種、特に喘息又はCOPDの治療のための薬剤を調製するために上記医薬製剤を用いるのが特に好ましい。
【0014】
上記疾患の1種、上記量の溶液を単回投与又は二回投与することを特徴とする、喘息又はCOPDの治療のための薬剤を治療するために上記医薬製剤を用いるのが特に好ましく、単回投与が本発明では特に好ましい。
用量当たり1回又は2回、好ましくは1回行う薬剤の上記投与が、少なくとも1日当たり1回、好ましくは少なくとも1日当たり2回、特に好ましくは1日当たり3〜4回与えられることを特徴とする、上記疾患の1種、特に喘息又はCOPDの治療のための薬剤を調製するために上記医薬製剤を用いるのが特に好ましい。
本発明はさらに、薬剤の用量当たり約5〜25μL、好ましくは約7〜20μLの本発明の溶液が投与されることを特徴とする、上記疾患の1種、特に喘息又はCOPDを治療する方法に関する。特に好ましくは、薬剤の用量当たり約10〜13μLの本発明の溶液が投与される、上記疾患の1種、特に喘息又はCOPDを治療する方法である。
さらに特に好ましくは、上記量の溶液が用量当たり1回又は2回投与されることを特徴とする、上記疾患の1種、特に喘息又はCOPDを治療する方法であり、本発明では用量当たり1回のみの量を投与するのが特に好ましい。
【0015】
さらに特に好ましくは、用量当たり1回又は2回、好ましくは1回行う薬剤の上記投与が、少なくとも1日に1回、好ましくは少なくとも1日に2回、特に好ましくは1日に3〜4回与えられることを特徴とする、上記疾患の1種、特に喘息又はCOPDを治療する方法である。
本発明の製剤は、経口的又は経鼻的に吸入され得る。肺における該活性物質の最適な分布を達成するためには、この目的のために好適な吸入器を用いて送達される推進剤ガスを含まない液体製剤を用いるのが望ましい。この種の製剤は、経口及び経鼻吸入の両方によって投与され得る。小量の液体製剤を治療目的に必要な投与形態で数秒以内に治療吸入に好適なエアロゾルで噴霧することのできるそれらの吸入器が、特に好適である。
【0016】
計量した量の吸入用液体医薬組成物の推進剤を含まない投与のためのこの種の装置は、例えば国際特許出願WO 91/14468及びさらにWO 97/12687、特に図6a及び6b及び添付されている図面に詳細に記載されている。この種の噴霧器では、医薬溶液が、600bar以下の高圧を用いて噴霧されて肺に向かうエアロゾルに変化される。本明細書の範囲内では、上記文献の全内容を明確に参照されたい。
この種の吸入器では、溶液の製剤が保存器に保存される。用いた活性物質製剤が保存されるときに十分安定であり、且つ同時にそれらがそれらの医療用途に応じて、可能であればいなかるそれ以上の取扱いをせずに直接投与することのできるようであることが本質的である。さらに、それらは、吸入器又は該溶液又は製造されたエアロゾルの医薬的品質に損害を与えないような方法で吸入器と相互作用し得るいかなる成分も含有してはならない。
【0017】
該溶液を噴霧するために、例えばWO 94/07607又はWO 99/16530に記載のような特別なノズルが用いられる。これらの両出版物をここで明確に参照されたい。
本発明の目的は、下記の吸入器を用いて溶液の最適な噴霧を達成するのに必要な高水準を満たす式1の化合物の水性、エタノール性又は水-エタノール性の製剤を提供することである。本発明の活性物質製剤は、十分に医薬的に高品質でなければならず、すなわち、それらは数年の保存期間、好ましくは少なくとも1年、さらに好ましくは2年の保存期間に渡って医薬的に安定であるべきである。
これらの推進剤を含まない製剤はまた、圧力下で吸入器を用いて噴霧することができ、製造されたエアロゾルによって送達される組成物が特定の範囲内に再現性よく収まらなければならない。
【0018】
本発明の医薬製剤は、好ましくは以下に記載される種類の吸入器で用いられ、本発明の推進剤を含まないエアロゾルを製造する。ここで、上記特許文献に再度明確に言及し、その内容を参照としてここに組み込む。
文頭に記載したように、好ましい吸入器のさらに発展した実施態様は、WO 97/12687に開示されている(特に図6a及び6b及び関連する記載部分を参照)。この噴霧器(Respimat(登録商標))を有利に用いて、本発明の吸入可能なエアロゾルを製造することができる。その円筒形状及び長さ9〜15cm及び幅2〜4cm未満の手ごろなサイズのために、該装置はどこにでも患者が運ぶことができる。該噴霧器は、高圧下で小さなノズルを介して決められた体積の医薬製剤を噴霧し、吸入可能なエアロゾルを製造する。
【0019】
好ましい噴霧器は、上部筐体部分、ポンプ筐体、ノズル、締付けクランプ、バネ式筐体、バネ及び保存容器から、
該上部筐体部分に固定され、一端にノズル又はノズル配置を有するノズル体を備えるポンプ筐体、
バルブ体を有する中空ピストン、
該中空体が固定されており、該上部筐体部分に配置される動力取出フランジ、
該上部筐体部分に配置される締付けクランプ機構、
そこに配置されるバネを有するバネ式筐体、これは回転ベアリングによって該上部筐体部分に回転自在に搭載される、
軸方向で該バネ式筐体上に適合される下部筐体部分、
を特徴として本質的に構成される。
【0020】
バルブ体を有する中空ピストンは、WO 97/12687に開示されている装置に対応する。部分的にポンプ筐体の円筒に突出しており、該円筒において軸方向に移動可能に配置される。特に図1-4、特に図3、及び本記載の関連部分を参照されたい。バネ放出の瞬間に、バルブ体を有する中空ピストンは、その高圧末端で5〜60Mpa(約50〜600bar)、好ましくは10〜60Mpa(約100〜600bar)の圧力を、計量した量の活性物質溶液である流体上に及ぼす。10〜50μLの容積が好ましく、10〜20μLの容積がさらに好ましく、作動当たり15μLの容積が特に好ましい。
該バルブ体は、好ましくはノズル体と向かい合う中空ピストンの末端に搭載される。
【0021】
ノズル体におけるノズルは、好ましくは微細構造であり、すなわち、微細な技術によって製造される。微細構造のノズル体は、例えばWO 94/07607及びWO 99/16530に記載されている。その中では、特にWO-94/07607の図1及び関連する記載を参照されたい。
該ノズル体は、例えば互いに安全に固定された2枚のガラス及び/又はシリコンシートからなり、その少なくとも1種はノズル注入口末端とノズル排出口末端を繋ぐ1種以上の微細構造の溝を有する。ノズル注入口末端では、深さ2〜10μms及び幅5〜15μmsの、深さは好ましくは4.5〜6.5μmsであり、長さは好ましくは7〜9μmsの少なくとも1種の円形又は非円形開口部がある。
【0022】
多数のノズル開口部がある場合、該ノズル体におけるノズルの好ましくは2つの噴霧方向は互いに並行であるか、又はノズル開口部において互いに対して傾いていてよい。排出末端に少なくとも2つのノズル開口部を有するノズル体の場合、噴霧の方向は互いに対して20〜160°、好ましくは60〜150°の角度、最も好ましくは80〜100°の角度で傾けてよい。
ノズル開口部は、好ましくは10〜200μm、さらに好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは30〜70μmの間隔で配置される。50μmの間隔が最も好ましい。
従って、噴霧の方向は該ノズル開口部の領域に集まる。
上記のように、該液体医薬製剤は600bar以下、好ましくは200〜300barの加入圧力でノズル体に当たり、ノズル開口部を介して吸入可能なエアロゾルに噴霧される。エアロゾルの好ましい粒子サイズは20μm以下、好ましくは3〜10μmである。
【0023】
締付けクランプ機構は、バネ、好ましくは円筒形螺旋状の圧縮バネを機械的エネルギーの保存場所として含有する。該バネは、動力取出フランジにおいて締付け部材の位置によってその動きが決定されるバネ部材として作用する。動力取出フランジの運動は、上部絞り及び下部絞りによって正確に限定される。該バネは、好ましくは強化ギア、例えば上部筐体部分が下部筐体部分におけるバネ筐体に対して回転すると生成される外部回転力による螺旋状の滑りギアによって張られる。この場合、上部筐体部分及び動力取出フランジは、一速又は多速のスプラインギアを含有する。
【0024】
結合用締付け表面を有する締付け部材が、動力取出フランジの周囲に環状に配置される。これは例えば、本質的に放射状に伸縮自在な変形可能のプラスチック又は金属のリングからなる。該リングは、該噴霧器の軸と垂直な平面に配置される。バネの締付け後、該締付け部材の締付け表面を動力取出フランジの一部に滑らし、該バネが放出されることを防ぐ。締付け部材はボタンで作動される。作動ボタンは締付け部材に接続又は結合されている。締付けクランプ機構を作動するためには、作動ボタンを環状平面と平行に好ましくは噴霧器の中に移動させ、それによって変形可能リングが環状平面で変形される。締付けクランプ機構の構造の詳細は、WO 97/20590に記載されている。
下部筐体部分はバネ筐体の軸に沿って押出され、ベアリング、心棒のための動力源及び流体のための保存容器を覆う。
【0025】
該噴霧器が操作されると、該筐体の上部が下部に対して回転し、該下部がバネ筐体と上部を受け取る。一方でバネは螺旋状滑りギアで圧縮及び偏らせられ、クランプ機構が自動的に咬み合う。回転角度は、好ましくは360°の整数で割った分数、例えば180°である。バネが張るのと同時に、上部筐体部分における動力取出部品が所定量移動し、該中空ピストンがポンプ筐体におけるシリンダー内に引き戻され、その結果として保存容器からの流体の一部がノズル前面の高圧チャンバーに吸い取られる。
望ましくは、噴霧される流体を含有する多数の取替え可能保存容器が、噴霧器に次々に挿入され、続いて用いることができる。保存容器は、本発明の水性エアロゾル製剤を含有する。
噴霧プロセスは、作動ボタンを穏やかに押すことによって開始される。続いて、クランプ機構が動力取出部品のための通路を開く。偏ったバネは該ピストンをポンプ筐体中のシリンダーに押出す。該流体はスプレー形態で噴霧器のノズルから生じる。
【0026】
構造のさらなる詳細は、PCT出願WO 97/12683及びWO 97/20590に開示されており、それを参照されたい。
噴霧器(霧吹き器)の部品は、それらの機能に好適な材料からなる。噴霧器の筐体及び-該機能が許容する場合は-他の部品も同様に、好ましくは例えば射出成形によってプラスチックからなる。医療用途のために、生理学的に許容される材料が用いられる。
WO 97/12687の図6a/bは、本発明の水性エアロゾル製剤を有利に吸入することのできるRespimat(登録商標)噴霧器を示している。
図6aは張力を受けたバネを有する噴霧器の縦断面を示しており、図6bは解放されたバネを有する噴霧器の縦断面を示している。
【0027】
上部筐体部分(51)はポンプ筐体(52)を含有し、その末端に噴霧器ノズルのためのホルダー(53)が搭載される。ホルダーにはノズル体(54)及びフィルター(55)がある。締付けクランプ機構の動力取出フランジ(56)に固定されている中空ピストン(57)は、ポンプ筐体のシリンダーに部分的に突出している。その末端では、中空ピストンがバルブ体(58)を有する。中空ピストンはガスケット(59)で密閉されている。上部筐体部分内には絞り(60)があり、そこでバネが解放されたときに動力取出フランジが静止する。動力取出フランジ上に絞り(61)が配置され、そこでバネが張力下にあるときに動力取出フランジが静止する。バネに張力を与えた後、締付け部材(62)を上部筐体部分において絞り(61)及び土台(63)の間に滑らせる。動ボタン(64)は締付け部材に接続される。上部筐体部分がマウスピース(65)となり、取り外し可能な保護キャップ(66)で閉じられる。
【0028】
圧縮バネ(68)を有するバネ筐体(67)を、スナップ式のつまみ(69)及び回転式ベアリングによって上部筐体部分上に回転自在に搭載する。下部筐体部分(70)をバネ筐体に押出す。バネ筐体の内部には、噴霧される流体(72)のための取替え可能保存容器(71)がある。該保存容器はストッパー(73)によって閉じられ、それを介して中空ピストンは保存容器に突き出し、その末端を該流体(活性物質溶液の供給物)に浸す。
機械的計測器のための心棒(74)がバネ筐体の外に搭載される。動力ピニオン(75)を、上部筐体部分に面する心棒の末端に配置する。該心棒上に滑動部(76)がある。
【0029】
上記噴霧器は、本発明のエアロゾル製剤を噴霧し、吸入に好適なエアロゾルを形成するのに好適である。
本発明の製剤が上記方法(Respimat(登録商標))を用いて噴霧される場合、放出される質量は、その吸入器(パフ)の全ての作動の少なくとも97%、好ましくは少なくとも98%が、この量の25%以下、好ましくは20%以下の許容範囲を有する決められた量に相当すべきである。好ましくは、5〜30mg、さらに好ましくは5〜20mgの製剤が、パフ当たりの決められた質量として送達される。
【0030】
本発明の製剤は、上記のもの以外の吸入器、例えばジェット気流吸入器を用いても噴霧することができる。
本発明はまた、上記した本発明の医薬製剤の1種及びこの医薬製剤を噴霧するのに好適な吸入器からなる吸入キットに関する。
本発明は、好ましくは上記した本発明の医薬製剤の1種及び上記Respimat(登録商標)吸入器からなる吸入キットに関する。
【0031】
以下に与えられる製剤の例は、本発明の主題を例示されている組成物に制限することの無い説明として役立つ。
与えられた割合は、各場合において質量%(w/w)である。
A)製剤の調製
純水を容器に入れ、そこに攪拌しながら周囲温度下でイプラトロピウムブロマイド一水和物、サルブタモールスルフェート、ベンズアルコニウムクロライド(無水物)及び二ナトリウムエデテート二水和物を加えた。各場合において用いた成分の量は、以下に説明される製剤成分によって示される。全ての成分が溶解し、必要に応じて特定の濃度を得るために水を加えた後に、得られた溶液を1Nの塩酸で3.4のpHに調整した。
【0032】
B)製剤の例:以下の製剤の例では、BACはベンズアルコニウムクロライドを意味し、EDTAは二ナトリウムエデテート二水和物を意味する。該実施例は1Nの塩酸で3.4のpHに調整した。
【0033】

1)100gの溶液当たり1.057gのサルブタモールスルフェートに相当;
【0034】
C)Respimatにおける使用:B)で特定した製剤がRespimat(登録商標)吸入器を用いて投与される場合、各パフ(約11.4μLの体積)は以下に特定される量の製剤成分を患者に送達する。
【0035】

1)パフ当たり0.1205mgのサルブタモールスルフェートに相当;

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬理学的に許容される酸添加塩の形態でもよい活性物質サルブタモール、及びイプラトロピウムブロマイド及び任意にさらなる賦形剤を、水、エタノール及び水-エタノール混合物の中から選択される溶媒中に含有する、推進剤を含まない吸入用溶液製剤であって、サルブタモール対イプラトロピウムブロマイドの質量比が5 : 1〜5.5 : 1であり、且つ他の活性物質を含有しない、溶液製剤。
【請求項2】
前記サルブタモールが、塩化水素酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸及びリン酸の中から選択される酸、好ましくは硫酸との薬理学的に許容される酸添加塩の1種の形態で存在する、請求項1記載の推進剤を含まない溶液製剤。
【請求項3】
前記溶媒が水である、請求項1又は2記載の推進剤を含まない溶液製剤。
【請求項4】
前記製剤のpHが3.0〜4.0、好ましくは3.1〜3.7である、請求項1記載の推進剤を含まない溶液製剤。
【請求項5】
前記pHが無機酸又は有機酸を用いて調節される、請求項4記載の推進剤を含まない溶液製剤。
【請求項6】
さらなる構成成分として、保存剤及び錯化剤の中から選択される1種以上の化合物を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の推進剤を含まない溶液製剤。
【請求項7】
前記錯化剤がエデト酸(EDTA)又はその公知の塩の1種である、請求項6記載の推進剤を含まない溶液製剤。
【請求項8】
前記保存剤が、ベンズアルコニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、安息香酸又は安息香酸の塩である、請求項6記載の推進剤を含まない溶液製剤。

【公表番号】特表2009−537475(P2009−537475A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510412(P2009−510412)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054490
【国際公開番号】WO2007/134967
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】