説明

推進剤ユニット構造体のための熱保護用コーティングを形成する方法

本発明は、推進剤ユニット構造体に熱保護用コーティングを形成する方法であって、少なくとも1種類のポリウレタンと特定の充填剤が予め分散されている重合剤の混合物とを連続的に測量および混合(14)することと、1つの回転している円筒形の支持面(2)を、互いに隣接する巻部に混合物のフィラメント(18)を連続的に注型することによってコーティングすることと、ポリウレタンが機械的なストレスに耐えるのに十分なように重合化されるように形成されたコーティングを周囲圧力で予重合化することとを有する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、推進剤構造体、特に、固体推進剤ロケットエンジンの一部を形成する構造体のための内側並びに/もしくは外側の熱保護用コーティングを形成する方法に関し、更に、ロケットエンジン構造体を形成する方法並びにこの方法によって得られるロケットエンジン構造体に関する。
【0002】
固体推進剤ロケットエンジンの構造体は、基本的に、例えば複合材料で形成されて、3つの基本的な機能を果たすことが必要な内側の熱保護用コーティングを一般的に備えているケーシングを有している。内側の熱保護用コーティングが果たさなくてはならない3つの基本的な機能とは、推進剤の燃焼から生じる温ガスの攻撃に対して熱保護を与える複合的なケーシングを与えることと、推進剤の燃焼中に圧力下でケーシングが変形することによって発生される機械的なストレスを減じることと、ガス漏れに対してケーシングを密封することとである。
【0003】
熱保護用コーティングをロケットエンジン構造体のケーシングに適用するためには様々の方法がある。その内の1つの方法は、半製品の加硫処理していない状態で一貫した粘性を有するゴムを与えるためにゴム産業で一般的な手段(オープンミル(open mill)、ニーダー(kneaders)など)を使用することによって開始することと、オートクレーブ内で加硫処理を行なう前に裁断してマンドレルを覆うためにゴムをエラストマーシートに変形させることとを有している。このように形成された様々の熱保護用部材は、続いて、これらそれぞれのマンドレルから分離され、上述したように与えられた熱保護用部材に複合(composite)のケーシングのフィラメントを巻きつけるために他のマンドレル(一般的には金属製の取外し可能なマンドレル)に取り付けられる。この方法は、製造サイクルを長くするため、この技術を実行する際には特にコストが高くなる。本方法は、多量のツールを必要とし、また、一部が手作業となる不連続な一連の作業を提供する。本方法を実施する際に様々の工程で多数の異なるマンドレルを使用することにより、時間がかかり、製造サイクルの持続時間が長くなる。
【0004】
他のタイプの公知の方法によれば、実施コストが減じられ得る。この方法は、複合材料のフィラメントを巻きつけることによってロケットエンジン構造体のケーシングを形成する前に、エラストマーの層でマンドレルを覆うことを有している。このような方法では、エラストマー層が、回転しているマンドレルの外面全体にわたって押出されたストリップを堆積させることによって、形成される。このようにして得られたコーティングは、続いて、フィラメントに巻きつける前に、オートクレーブ内で加硫処理される。このような方法は内側の熱保護用コーティングを形成する方法を単純にしているが、それでもまだ、押出成形機のような複雑なツールの使用を必要とし、そのため、高額の実施コストがかかる。特に、所望の機械特性および熱性質を与えるためにコーティングに加硫処理を行なうことが必要である。オートクレーブ内での加硫処理作業は、圧力(一般的には1メガパスカル(MPa)ないし3MPaのオーダ)と温度(典型的には140℃ないし180℃のオーダ)との複合効果を受けながら行なわれる。したがって、マンドレルは、機械的にオートクレーブの圧力に関連した大きさにされる必要があり、構造体のフィラメントの巻きつけ作業のために特にマンドレルを使用するときは、マンドレルのデザインが必要以上に複雑にされる。
【0005】
更に、可撓性の熱保護用コーティングが、3つの上述した主要な機能、即ち、プロパーゴルの(propergol)燃焼ガスによる熱的および機械的な攻撃にも関わらず磨耗に耐えることと、構造体に断熱性を与えることと、機械的なストレスを減じることとを果たすように特に配合されたゴム(複数の材料の特定の関連)を使用している。更に、固体推進剤ロケットエンジンの機能を最大限に利用するにはそのおもり(即ち、内側の熱保護用部材の重さを含む)が減じられる必要があることを考えると、この内側熱保護用部材を形成するための理想的な材料としては、低密度と低熱伝導性とに関連して、熱的および機械的な攻撃による磨耗に対する非常によい抵抗を与える必要がある。残念なことに、磨耗に対するよい抵抗を与えるための配合技術と、低密度(一般的に低熱伝導率と関係している)を得るための配合技術とは、互いに拮抗しており、1つだけの材料が熱保護機能を果たすために使用されている時は、熱性質と磨耗特性との観点で妥協点を見出さなくてはならない。このような妥協点を見つけることにより、ロケットエンジンの性能のためによくない解決法が導き出される。このような欠点を軽減するために、機能材料を含む熱保護のための解決法を想定することが可能である。このような解決法は、ロケットエンジンが作業中のときは熱にさらされない下に横たわる層のために一般的に低熱伝導性に関係して低密度の材料を使用する一方で、燃焼ガスに直接にさらされるコーティングの層のために一般的に高密度に関係して磨耗に対するよい抵抗を有する材料を使用することを有している。しかしながら、このような解決法は、加硫処理されていない半製品状態のゴムを用意することと、熱保護用部材を実際に形成することから見て、付加的な製造コストを発生させるため、非常に稀にしか利用されない。
【0006】
かくして、本発明は、実施作業を著しく軽減するためにロケットエンジン構造体のための熱保護用コーティングを形成する方法を提案し、よって、必要なツールおよび製造サイクルを簡素化することによって、このような欠点を軽減しようと努めている。本発明の方法により、ロケットエンジン構造体の熱保護用コーティングと関係している機能を任意で満たすことによって、コーティングが得られる。本発明はまた、内側の熱保護用部材および外側の熱保護用部材とを形成するのに同様に適している方法を提案するように努めている。本発明はまた、本方法によって得られた内側並びに/もしくは外側の熱保護用コーティングが取着されているロケットエンジン構造体を与えるように努めている。本発明はまた、このようにして形成されたロケットエンジン構造体にも関連している。
【0007】
このために、本発明は、ロケットエンジン構造体のための熱保護用コーティングを形成する方法であって、少なくとも1種類のポリウレタンと、特定の充填剤が液中に予め分散されている重合剤の混合物とを連続的に測量および混合することと、結果的に生じた混合物からなり互いに接触した複数の巻部を有するストリップを連続的に注型することによって回転している円筒形の支持面をコーティングすることと、ポリウレタンが機械的なストレスに耐えるのに十分なように重合化されるように結果的に生じたコーティングを周囲圧力で予重合化することとを有することを特徴とする方法を提供している。
【0008】
従って、上述した方法と比較すると、熱保護用コーティングの製造サイクルを著しく短くすることが可能である。よって、熱保護用コーティングを形成するコストを抑えることができる。本発明の方法の様々の工程は、1つの多機能ワークステーションで行なわれ、混合および注型工程に関して中断することなく連続して互いに続くことができ、そして、殆ど完全に自動化され得る。
【0009】
支持面をコーティングする混合物は、特に、プレポリマータイプのポリウレタンを有している。好ましくは、この混合物は、イソシアネート末端基を有し、ポリエーテルをジフェニルーメタンージイソシアネートと反応させた有益な結果である。重合剤は、効果的にはアミンタイプ並びに/もしくはポリオールタイプである。更に、粉末状並びに/もしくはファイバ状の充填剤を選択することが好ましい。粉末状の充填剤は、シリカタイプ、並びに/もしくは、三酸化アンチモン、並びに/もしくは、塩素含有化合物、並びに/もしくは、ガラスマイクロビーズ、並びに/もしくは、シリカマイクロビーズ、並びに/もしくは、アクリロニトリルマイクロビーズであってよい。ファイバ状の充填剤は、不連続のアラミドタイプ並びに/もしくはセルロースタイプであってよい。
【0010】
熱保護機能を果たすために高い充填剤の含有量を有しているのにも関わらず、注型ヘッドから出るときに実質的に液状であり、支持面に堆積されている間にこの支持面から流れ落ちないようにすぐに半固体状になり、周囲温度で重合化された後に部分的だがコーティングが機械的なストレスに耐えるのに十分なように重合化された状態に変化する混合物が、注目に値する。
【0011】
本方法のパラメータ(様々の重合剤の密度、注型率、支持面の回転速度、注型ヘッドの移動速度など)を連続的かつ自動的に変えることにより、円筒形または球形の表面にわたって様々の厚さに堆積させることが可能である。更に、厚い熱保護用のコーティングを形成する時は、本方法の連続的かつ自動的な性質を維持しながら、複数の連続的なパス(passes)にコーティングを堆積させることがまた可能である。
【0012】
ポリウレタンと重合剤との量は、第1の混合物と少なくとも1種類の第2の混合物とを得られるように様々にされ得る。このような環境では、本方法の連続的かつ自動的な性質を維持しながら、例えば燃焼ガスによる磨耗に対してよい抵抗を有する第1の混合物のストリップの注型物を、例えば低密度および低熱伝導率を有する第2の混合物のストリップの注型物によって覆うことにより、支持面にコーティングを形成することができる。
【0013】
本発明はまた、所望の外側の外形を有する予重合化されたコーティングを機械加工する工程を有している。最後の工程はまた、熱加硫によって予重合化されたコーティングを重合化することを有するようにされている。
【0014】
本発明のロケットエンジン構造体を形成する方法では、上述された方法によって形成される熱保護を与えるために内側のコーティング並びに/もしくは外側のコーティングを備えたケーシングを提供する。
【0015】
このような方法は、内側の熱保護用コーティングを形成するために使用される支持面が回転しているマンドレルの外面であるようなロケットエンジン構造物を形成することに応用可能である。ロケットエンジンのケーシングは、続いて、このように形成されたコーティングの外面に堆積および接着される。ロケットエンジンのケーシングが複合材料のフィラメントを巻きつけることによって得られる時は、複合材料の巻部が、熱加硫によってコーティングを重合化するのと同時に重合化されると好ましい。このように形成されるロケットエンジン構造体が、続いて、マンドレルから分離される。
【0016】
本方法はまた、内側の熱保護用コーティングを形成するために使用される支持面がロケットエンジンのケーシングの内面であるロケットエンジン構造体を形成することにも応用可能である。このような環境では、予め含浸されたファイバ材料のフィラメントをマンドレルの外面に巻きつけることによって好ましくは得られるロケットエンジンのケーシングは、それ自体が、コーティング作業の前に形成される。結果的に生じたケーシングがマンドレルから分離された後に、内側の熱保護用コーティングがケーシングの内面に形成され、そして、フィラメントの巻部を重合化するのと同時に熱加硫によって好ましくは重合化される。
【0017】
最後に、本方法は、単独でもしくは内側の熱保護用コーティングと組み合わせて外側の熱保護用コーティングが取着されているケーシングを有するロケットエンジン構造体を形成することに応用可能である。このような環境では、外側の熱保護用コーティングが、ただ同じ方法を実行することによって、ケーシングの外面に堆積および接着される。
【0018】
本発明の他の特徴と利点とは、非制限的な特徴を有している一実施の形態を示す1つの添付図面を参照した以下の説明によって明らかになる。
【0019】
本発明では、ロケットエンジン構造体のための熱保護用コーティングを形成する方法は、基本的に、
a)少なくとも1種類のポリウレタンと、特定の充填剤が予め分散された複数の重合剤の混合物とを、連続的に測量および混合する工程と、
b)このようにして得られた混合物からなり互いに接触した複数の巻部を有するストリップを連続的に注型することによって、回転している円筒形の支持面をコーティングする工程と、
c)ポリウレタンが機械的なストレスに耐えるのに十分なように重合化されるように、結果的に生じたコーティングを周囲温度で予重合化する工程とを有している。
【0020】
本方法のこれらの実施工程は、円筒形のコーティングを形成するための装置を用いて行なわれる。このような装置は、コーティングを堆積させるための手段が押出成形手段でなく単なる注型手段を提供するような従来技術で知られている内側の熱保護用コーティングを形成するための装置とは異なっている。従って、このような装置は、本出願では詳しく説明されない。典型的には、これらの装置は、2つのカテゴリーに分類できる。1つが、回転しているマンドレルの外面にコーティングを形成し、この後で、このようにして形成されたコーティング上に、ロケットエンジンのケーシングが堆積および接着される装置である。もう1つが、ロケットエンジンのケーシングの内面もしくは外面に直接的にコーティングを形成する装置である。
【0021】
1つの図が、1つ目のカテゴリーに属する装置の1例を示している。しかしながら、本発明は、2つのカテゴリーのいずれに属する装置によっても同じくらい上手く実施され得る。この図では、熱保護用コーティングを形成する装置は、例えば金属で形成されていて駆動主軸台6および動く心押し台8によって保持されている回転可能なシャフト4に設けられたマンドレル2を有している。マンドレル2は、矢印Fの方向に連続して回転可能である。マンドレル2に平行に延びている細長い作業台10は、この作業台に沿って長手方向に移動可能な台車12の支持部として働く。注型ヘッド14が、マンドレルおよび作業台の軸に垂直な方向に延びているポール16を介して台車12によって支持されている。かくして、注型ヘッド14は、矢印Dの方向にマンドレルおよび作業台の軸に対して平行に移動可能である。注型ヘッド14は、ダクトおよび計量ポンプ(図示されず)を介してコーティングの多様な材料を貯蔵している様々のレセプタクル(図示されず)に接続されている。
【0022】
本発明の方法の工程a)では、熱保護用コーティングを形成するためにポリウレタンを含む混合物を連続的に用意する。例を挙げると、ポリウレタンは、イソシアネート末端基を有するタイプのプレポリマーであってよい。ポリウレタンプレポリマーは、ポリエーテルをジフェニルーメタンージイソシアネートと反応させた結果生じたものであると好ましい。ポリウレタンは、測量されて、注型ヘッド14内で、特定の充填剤が予め中に分散された重合剤と混合される。このために、ポリウレタンと、様々の重合剤(触媒)と、様々の充填剤とが、それぞれ異なるレセプタクルに貯蔵される。そして、これらのレセプタクルに接続されたダクトおよび測量ポンプを使用することによって、所望の材料を所望の量だけ所望の比率で注型ヘッドへと搬送することが可能である。かくして、材料の量は、結果的に生じた混合物の注型を中断させることなく、連続的に変えられ得る。重合剤は、ポリウレタンが、注型ヘッドから出たときの実質的な液体の状態から、流れ落ちることなくマンドレル2の外面に接着するように十分に粘性のある状態へと変わるように、これらのレオロジー特性および重合化特性とに応じて選択されている。このために、結果的に生じた混合物の“硬化時間”は、非常に短い。例えば、重合剤には、アミン並びに/もしくはポリオールを使用することが可能である。更に、粉末状もしくはファイバ状の充填剤を選択することが好ましい。粉末状の充填剤は、シリカタイプ、並びに/もしくは、三酸化アンチモン、並びに/もしくは、塩素含有化合物、並びに/もしくは、ガラスマイクロビーズ、並びに/もしくは、シリカマイクロビーズ、並びに/もしくは、アクリロニトリルマイクロビーズであってよい。ファイバ状の充填剤は、不連続のアラミドタイプ並びに/もしくはセルロースタイプであってよい。
【0023】
更に、例えば、異なる混合物の配合をそれぞれに有する複数の重ねられた層を備えているコーティングを形成するために、混合物が注型されている間に、1つの配合から別の配合への切り替えが進行するかあるいは別の方法によって、混合物を形成している様々の材料の量を調節することが可能である。
【0024】
本方法の工程b)では、このようにして得られる混合物のストリップ18の互いに接触した複数の巻部を連続的に注型することによってマンドレル2の外面をコーティングする。混合物は、注型ヘッド14の出口からマンドレルの外面上に流れ出て、連続的なストリップ18を形成する。重合剤を加えたことによってポリウレタンの“硬化時間”が非常に短くされるため、混合物ゲルのストリップ18は、粘性を有するようになり、マンドレルの連続的な回転中にも流れ落ちることがない。注型が行なわれている間に混合物を構成している様々な材料の量を調節することと(様々の重合剤の密度など)、コーティング装置の作動パラメータを調節することとにより(マンドレル2の回転速度、台車12の前進速度、もしくは、注型ヘッド14から出る出口での混合物の流量など)、マンドレルの外面全体にわたって定期的な較正された厚さを有しているコーティングを形成する正確に互いに接触した複数の巻部の形態にストリップ18を注型することが可能である。しかしながら、様々の厚さに堆積させることが可能であり、堆積は、同じようにうまく円筒形もしくは球形にされ得る表面上になされ得る。更に、厚い熱保護用コーティングを形成するときは、本方法の連続的かつ自動的である性質を依然として維持しながらも、複数の連続的なパスに堆積を行なうこともまた可能である。
【0025】
本方法の工程d)の間、形成されたコーティングが予重合化される。この予重合化する工程は、周囲圧力で、効果的には周囲温度で行なわれる。従って、オートクレーブを必要としないため、本方法を実施するコストを相当に減じることができる。この予重合化する工程により、コーティングは、実質的に粘性のある状態から、例えば外側巻部を機械加工もしくは提供する次の工程の間に機械的なストレスに耐えるのに十分なように重合化された状態へと変化され得る。コーティングのこのような変化は、液状のポリウレタンが1つ以上の重合触媒と混合されることから、理解され得るだろう。
【0026】
更に、予重合化する工程の後に、コーティングの外形をロケットエンジンの注型部を堆積および接着するために必要な外形に適合させるように、コーティングを機械加工することが成され得る。
【0027】
このように予重合化されるときにコーティングを熱硬化させることによって重合化の最終工程が果たされ得る。コーティングのこの硬化は、同様に周囲圧力で、しかしオーブン内で行なわれる。これにより、よい機械特性と熱的性質とがコーティングに与えられ得る。ロケットエンジンのケーシングを堆積および接着する前に(特にケーシングが金属で形成されている場合)、または、コーティングが堆積および接着された後に、硬化が行なわれ得る。特に、ロケットエンジンのケーシングが予め含浸されたファイバ材料のフィラメントをコーティングの外面に巻きつける(例えばカーボン、ガラス、もしくは重合化されない熱硬化性樹脂に含浸されたポリアミドを巻きつける)ことによって形成されるとき、フィラメントの巻部などを重合化するのと同時に、コーティングを重合化することが有益である。このような環境下で、同時の重合化工程により、コーティングの外面に予め堆積された接着剤によってコーティングと複合的な構造体との間の接着がまた得られる。
【0028】
図を参照して上述されたような本発明の方法は、ストリップを回転しているマンドレルの外面に注型し、その後に、ロケットエンジンのケーシングがこのように形成されたコーティング上に堆積および接着されることによって内側コーティングを形成する装置によって、実施される。本発明の方法はまた、ロケットエンジンのケーシングの内面にストリップを直接的に注型することによって内側コーティングを形成する装置にもあてはまる。このような環境で、金属もしくは効果的には重合化される混合材料で形成されるロケットエンジン構造体の中空のケーシングが、熱保護用コーティングの前に形成され、硬化されて駆動主軸台と動く心押し台との間で回転する。コーティング装置はまた、エンジンロケットのケーシング内部でその長軸に沿って移動可能な注型ヘッドを有している。熱保護用コーティングを形成する方法は、上述した方法と同じである。互いに接触した複数の巻部の形態に混合物のストリップを連続的に注型する工程の前に、ロケットエンジンのケーシングの内面は、脱脂され、接着剤を塗布される。ケーシングの内面がコーティングされると、結果的に生じたコーティングが、周囲温度および周囲圧力で予重合化され、任意で機械加工される。コーティングはまた、オーブン内で重合化される。この構成では、本発明の方法はまた、製造コストを抑えるという観点から節約を果たせる。
【0029】
同様に、本発明の方法は、ロケットエンジン構造体のための外側の熱保護用コーティングの形成に応用され得る。このような外側のコーティングは、ロケットエンジン構造体のケーシングの外面に堆積および接着される。この外側の熱保護用コーティングは、それだけで、もしくは、内側の熱保護用コーティングと組み合わせて、使用され得る。内側のコーティングと外側のコーティングとの両方が設けられている複合材料のケーシングの場合は、両コーティングの重合化を、ケーシングを構成している巻部およびフィラメントを重合化するのと同時に果たすことが有益である。
【0030】
熱保護用コーティングとロケットエンジン構造体のケーシングとの間の接着は、公知のタイプの接着剤を使用して、または、ポリウレタンの接着性のフィルムを使用して、果たされる。このようなフィルムは、注型ヘッドを通る接着剤として特に配合されたポリウレタンを測量することによって得られ、本発明の方法を利用して互いに接触した複数の巻部からなる連続的なストリップとして注型されることによって堆積される。この解決法により、スプレーガンによって堆積され、溶媒の使用を必要とするため安全性の問題および環境問題を生じさせるイソシアネートのような所定の公知の接着剤の使用が回避され得る。
【0031】
本発明の方法の実施例が、以下の状況下で実行された。
【0032】
実施例1(シリカが充填されたポリウレタンコーティング)
下の表1に規定された様々の材料が、測量されて、図に示されている注型装置の注型ヘッド14内で混合された。
【表1】

【0033】
結果的に生じた混合物は、回転している円筒形マンドレル(直径が0.3mで長さが1mのマンドレル)の外面上に互いに接触した複数の巻部を有するストリップとして連続的に注型されることによって堆積された。混合物の注型速度、マンドレルの回転速度、および注型ヘッドの移動速度が、2列の連続的な厚いパスとして10mmの均等な厚さを有するコーティングを堆積させるように調節された。約2日間にわたって周囲温度で予重合化して、続いて2時間にわたって140℃で重合化した後に(複合材料のケーシングを重合化するサイクルをシミュレートするために)、このようにして形成されたコーティングIが、内側の熱保護に限った所定の試験を受けるために、そのマンドレルから分離された。即ち、牽引強度、熱抵抗(熱伝導率および比熱)、および点火の特性(推進剤の燃焼ガスからの熱的および機械的な攻撃による侵食速度の測定)が試験された。これらの試験の結果が、シリカが充填されたEPDMゴム状物質に基づいて形成された従来の熱保護用コーティングIIと比較した形で、下の表2に示されている。
【表2】

【0034】
この表に示された結果から、本発明の方法によって得られるコーティングIの特徴が、一般的な方法で得られるコーティングIIの特徴と非常に近いことが判る。
【0035】
実施例2(ガラスマイクロビーズが充填されたポリウレタンの低密度のコーティング)
下の表3に規定されている様々の材料が、測量されて、図に示されている注型装置の注型ヘッド14内で混合された。
【表3】

【0036】
状況、堆積のためのツール、および結果的に生じた混合物を予重合化する工程は、実施例1で説明したのと同じであった。これらの工程の後に、結果的に生じたコーティングIIIが、そのマンドレルから分離され、上述された試験と類似している試験を受けた。その結果が、下の表4に示されている。
【表4】

【0037】
コーティングIIIの様々のポイントから取られたサンプルで測定された密度は、様々の材料の容量および密度に基づいて算出された理論価値(0.66)に近い約0.68g/mLであった。これは、様々の材料を混合する段階にわたってガラスマイクロビーズが比較的影響を受けないことを示している。更に、泡タイプであること、もしくは、2つの層の間の接着が弱いことなどの材料の欠点は、観察されなかった。
【0038】
実施例3(様々の配合に対応して重ねられた複数の層を有しているコーティング)
実施例1で規定されている配合の様々の材料が、測量されて、注型装置の注型ヘッド内で混合された。結果的に生じた混合物が、回転している円筒形のマンドレル(直径が0.3mで長さが1mのマンドレル)の外面に互いに接触した複数の巻部を有するストリップを形成するように連続的に注型されることによって堆積された。混合物の注型速度、マンドレルの回転速度、および注型ヘッドの移動速度が、1つのパスに5mmの厚さを有する層を堆積させるように調節された。1時間にわたって周囲温度で予重合化した後に、本方法が、実施例2に規定されている配合の材料を使用して繰り返された。この混合物は、10mmの厚さの層を得るために、5mmの厚さをそれぞれ有する2列の連続的なパスに注型された。2日にわたって周囲温度で予重合化し、続いて2時間にわたって140℃で重合化した後に(複合材料のケーシングを重合化するサイクルをシミュレートするために)、結果的に生じたコーティングが、そのマンドレルから分離され、様々の試験を受けた。実施例1の配合を有する層の厚さは、4.6mmないし5.2mmの範囲内に収まる。動揺に、実施例2の配合を有する層の厚さは、9.3mmないし10.1mmの範囲内に収まる。泡タイプの欠陥または複数の層間の接着が弱いことなどは見られなかった。
【0039】
実施例4(カーボンエポキシケーシング内に保護され、シリカが充填されたポリウレタンコーティング)
実施例1に規定されている配合の様々の材料が、測量されて、注型装置の注型ヘッド内で混合された。結果的に生じた混合物は、回転している円筒形のマンドレル(直径が0.3mで長さが1mのマンドレル)の外面に互いに接触した複数の巻部を有するストリップとして連続的に鋳造されることによって堆積された。混合物の注型速度、マンドレルの回転速度、および注型の移動速度が、5mmの厚い層を1つのパスに堆積させるように調節された。7日間にわたって周囲温度で予重合化した後に(産業プロセスにおいてマンドレルから分離される熱保護用コーティングとこの上に巻かれる混合物のフィラメントとの間で発生し得る最大待機時間を現実的な方法でシミュレートするために)、120℃クラスのエポキシ樹脂が湿含浸された(wet-impregnated)カーボンファイバが、約4mmの厚さにコーティングの周囲で巻かれた。この巻かれた後、このようにして取着されたマンドレルが、重合化サイクルを受けるために通気オーブン(ventilated oven)内に配置された。この重合化サイクルは、1分当り1℃の率での140℃までの温度上昇と、これに続く2時間にわたる140℃での安定期と、1分当り1℃の率での温度下降とを有する。このようにして得られた構造体から試験片を取るために、機械加工が利用された。各試験片は、幅が25mm、厚さが約9mm、および曲線の長さが約300mmである。熱保護用コーティングとケーシングとの間の接着が、特別な牽引ツールを用いて、牽引が働かせられたコーティングの長さ方向とケーシングとの間での約90°の角度をつけた引き剥がし試験を利用して、試験片で試験された。このような試験環境で、コーティングをケーシングから分離させるために必要な牽引力は、これら2つの部材間のよい接着性に対応して、25デカニュートン(daN)より大きかった。
【0040】
本発明は、様々の利点を提供し、特に、連続的に互いに続く一連の自動的な作業を利用している。使用されるコーティング装置によれば、材料の測量および混合に続いて結果的に生じた混合物の注型という連続的な作業を行なうことが出来る。結果的に生じたコーティングを予重合化することで、オーブン内の通路が必要にならず、つまり、同じ支持部が重合化の段階で使用可能である。
【0041】
また、本発明は、短い製造サイクルをもたらし、必要な時間と必要なツールとを減らして、結果として、コーティングを形成する際のコストを抑える。特に、1つのワークステーションで以下の工程:コーティング、機械加工、予重合化、および任意の巻きつけとが実行され得るため、必要なワークステーションの数がより少なくなっている。ロケットエンジンの注型が、複合材料のフィラメントを巻きつけることによって形成されるとき、巻きつける工程で続いて使用するためのマンドレルを直接的に使用することが可能である。かくして、大きなロケットエンジン構造体の形成を構想することができる。
【0042】
また、本発明により、いくつかの改良された特徴を有している熱保護用コーティングが得られる。それぞれ異なる配合を有する複数の重ねられた層を備えているコーティングを形成することが可能である(実施例3に説明されたように)。例えば、燃焼ガスによる熱的もしくは機械的な攻撃にさらされた時によい磨耗抵抗を与えるように特に配合された適当な厚さの第1の層と、第1の層に重ねるように、低密度および低熱伝導性を与えるように特に配合された第2の層とを堆積させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】1つ目のカテゴリーに属する装置の1例を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロケットエンジン構造体に熱保護用コーティングを形成する方法であって、この方法は、
少なくとも1種類のポリウレタンと、特定の充填剤が予め分散された重合剤の混合物とを、連続的に測量および混合(14)する工程と、
形成された混合物からなり、互いに接触した複数の巻部を有するストリップ(18)を連続的に注型することによって、回転している円筒形状の支持面(2)をコーティングする工程と、
前記ポリウレタンが機械的なストレスに耐えるのに十分なように重合化されるように、形成されたコーティングを周囲圧力で予重合化する工程、とを具備していることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ポリウレタンは、イソシアネート末端基を有し、また前記重合剤は、アミン並びに/もしくはポリオールであり、そして、前記特定の充填剤は、粉末状もしくはファイバ状であることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】
前記ポリウレタンは、ポリエーテルをジフェニルーメタンージイソシアネートと反応させた結果生じたものであることを特徴とする請求項2の方法。
【請求項4】
前記混合物のストリップを連続的に注型することは、前記支持面全体にわたって変化する様々の厚さを有しているコーティングを得るために調節されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1の方法。
【請求項5】
ポリウレタンと、重合剤および充填剤の混合物との前記測量は、第1の混合物と、第1の混合物と異なる少なくとも1種類の第2の混合物との両方を得るような形で変わることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1の方法。
【請求項6】
前記支持面のコーティングは、前記第1の混合物のストリップ(18)の第1の注型物と、第1の注型物に重ねられる、前記第2の混合物のストリップの少なくとも1つの第2の注型物とを用いて得られることを特徴とする請求項5の方法。
【請求項7】
前記コーティングを周囲圧力で予重合化する工程は、また、周囲温度で行なわれることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1の方法。
【請求項8】
所望の外形を有するように前記予重合化されたコーティングに機械加工する工程を更に具備していることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1の方法。
【請求項9】
前記予重合化されるコーティングを重合化する工程を更に具備していることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1の方法。
【請求項10】
内側の熱保護用コーティング並びに/もしくは外側の熱保護用コーティングが施されたケーシングを有しているロケットエンジン構造体を形成する方法であって、前記熱保護用コーティングは、請求項1ないし8のいずれか1に従って形成されることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記内側の熱保護用コーティングは、マンドレル(2)の外面に形成され、ロケットエンジンの前記ケーシングは、前記熱保護用コーティングの外面に堆積および接着されることを特徴とする請求項10の方法。
【請求項12】
内側の熱保護用コーティングが、前記ケーシングが形成された後にケーシングの内面に堆積および接着されることを特徴とする請求項10の方法。
【請求項13】
外側の熱保護用コーティングが、前記ケーシングの外面に堆積および接着されることを特徴とする請求項10ないし12のいずれか1の方法。
【請求項14】
前記ケーシングと熱保護用コーティングとの間の接着は、接着剤を利用して行なわれることを特徴とする請求項11ないし13のいずれか1の方法。
【請求項15】
前記ケーシングと熱保護用コーティングとの間の接着は、互いに接触した複数の巻部を有するストリップを連続的に注型することによって得られる接着性ポリウレタンのフィルムを使用して行なわれることを特徴とする請求項11ないし13のいずれか1の方法。
【請求項16】
前記ロケットエンジンのケーシングは、金属で形成されていることを特徴とする請求項10ないし15のいずれか1の方法。
【請求項17】
前記ロケットエンジンのケーシングは、予め含浸されたファイバ材料のフィラメントを巻きつけることによって得られることを特徴とする請求項10ないし15のいずれか1の方法。
【請求項18】
前記熱保護用コーティングとフィラメントの巻部は、同時に重合化されることを特徴とする請求項17の方法。
【請求項19】
請求項10ないし18のいずれか1に係わって形成されていることを特徴とする固体推進剤ロケットエンジンの構造体。

【図1】
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【公表番号】特表2006−512202(P2006−512202A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−567017(P2004−567017)
【出願日】平成15年12月17日(2003.12.17)
【国際出願番号】PCT/FR2003/003763
【国際公開番号】WO2004/065106
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(502202281)スネクマ・プロピュルシオン・ソリド (48)
【氏名又は名称原語表記】SNECMA PROPULSION SOLIDE
【Fターム(参考)】