説明

推進機の制御装置

【課題】船舶に複数並置された推進機において、制御基準となる推進機を切り替える。
【解決手段】船舶に複数並置された各推進機2L、2M、2Rの運転状態を制御する制御装置であって、各制御装置同士を、各推進機の運転情報を相互に送受信する通信回線3により接続した制御装置であり、自推進機の設置位置を判定する手段32と、通信回線3に接続されている他推進機の接続状態を判定する33手段と、複数の制御装置の中から制御基準となる推進機を判定する手段34とを備え、操船者が指定した任意の推進機、または、制御基準となる優先順位が一番高い推進機に制御基準となる推進機を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特に船舶に複数並置された推進機の運転状態を制御する推進機の制御装置であって、各推進機の制御装置同士を、各推進機の運転情報を相互に送受信する通信回線により接続した制御装置であり、例えば、通信回線経由にて検出した相互の推進機の運転状態から、制御基準となる推進機の優先順位を判定し、優先順位が一番高い推進機に制御基準を切り替えるようにした推進機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶に複数の船外機やスターンドライブ、あるいは船内外機などの推進機を並置し、各推進機の運転状態を制御する制御装置同士を、各推進機の運転情報を相互に送受信する通信回線により接続して制御するものがある。そしてこのような制御装置においては、各推進機のいずれかが制御基準の推進機となり、同調目標となる平均化処理されたエンジン回転数を送信し、同調対象の他推進機は前記目標エンジン回転数に同調するようスロットル開度を補正することにより、制御基準となる推進機のエンジン回転数に同調するようにしている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−163863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるような従来装置においては、制御基準である推進機に故障が発生した場合など、制御基準となる状態を継続できなくなった場合に、他の推進機に制御基準を切り替える具体的な手段は示されておらず、制御基準である推進機が制御基準となる状態を継続できなくなると、同調対象の他推進機は、同調制御を行うことができなくなってしまう。
【0005】
この発明は、このような従来装置の課題を解消するためになされたものであって、制御基準となる推進機が制御基準となる状態を継続できなくなった場合においても、他の推進機に制御基準を切り替えることによって、例えば特許文献1記載のような同調制御を可能とする推進機の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る推進機の制御装置は、船舶に複数並置された各推進機の運転状態を制御する推進機の制御装置であって、各推進機の制御装置同士を、各推進機の運転情報を相互に送受信する通信回線により接続した制御装置であり、自推進機の設置位置を判定する設置位置判定手段と、前記通信回線に接続されている他推進機の接続状態を判定する接続状態判定手段と、前記複数の制御装置の中から制御基準となる推進機を判定する推進機判定手段とを備え、前記通信回線経由にて検出した相互の推進機の運転状態に応じて、前記制御基準となる推進機を切り替えるように構成したものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の推進機の制御装置によれば、各推進機の運転状態に応じて、自身または他の推進機が制御基準となるよう、制御基準となる推進機を切り替えることができるので、同調対象の推進機は、新たに制御基準となった推進機に合わせて制御を継続することができる。
従って、制御基準となる推進機に故障が発生した場合など、推進機が制御基準となる状態を継続できなくなった場合でも、同調対象の推進機は、新たに制御基準となった推進機に合わせて制御を継続することができる。
【0008】
上述した、またその他の、この発明の目的、特徴、効果は、以下の実施の形態における詳細な説明および図面の記載からより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係る推進機の制御装置を備えた船舶の上面概略図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る推進機の制御装置のシステム図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係るエンジン制御部の構成を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る初期化部のフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1に係る受信部のフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態1に係る推進機設置位置判定部のフローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態1に係る推進機接続判定部のフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態1に係る制御基準の推進機判定部のフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態1に係る同調制御部のフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態1に係る送信部のフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態2に係る推進機の制御装置を備えた船舶の上面概略図である。
【図12】この発明の実施の形態2に係る推進機の制御装置のシステム図である。
【図13】この発明の実施の形態2に係る操船席制御部とエンジン制御部の構成を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態2に係る操船席制御部における初期化部のフローチャートである。
【図15】この発明の実施の形態2に係る操船席制御部における通信回線受信部のフローチャートである。
【図16】この発明の実施の形態2に係る操船席制御部における通信回線送信部のフローチャートである。
【図17】この発明の実施の形態2に係る通信回線送信部97のフローチャートである。
【図18】この発明の実施の形態2に係るエンジン制御部における初期化部のフローチャートである。
【図19】この発明の実施の形態2に係るエンジン制御部における通信回線受信部のフローチャートである。
【図20】この発明の実施の形態2に係るエンジン制御部における通信回線送信部のフローチャートである。
【図21】この発明の実施の形態3に係る推進機の制御装置を備えた船舶の上面概略図である。
【図22】この発明の実施の形態3に係る推進機の制御装置のシステム図である。
【図23】この発明の実施の形態3に係る操船席側制御装置における操船席制御部と推進機側制御装置におけるエンジン制御部の構成を示す図である。
【図24】この発明の実施の形態3に係る操船席制御部における初期化部のフローチャートである。
【図25】この発明の実施の形態3に係る操船席制御部における制御基準の推進機判定部のフローチャートである。
【図26】この発明の実施の形態3に係る操船席制御部における通信回線送信部のフローチャートである。
【図27】この発明の実施の形態3に係るエンジン制御部における初期化部のフローチャートである。
【図28】この発明の実施の形態3に係るエンジン制御部における通信回線受信部のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照して詳述する。なお、各図中、同一符号は、同一又は相当部分を示すものとする。
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る推進機の制御装置を備えた船舶の上面概略図である。この実施の形態1においては、船舶は船体に3機の推進機を搭載しているが、2機以上の複数の推進機を搭載するものであればよい。また、本実施の形態1では、推進機として船外機を用いているが、スターンドライブ、あるいは船内外機などでもよい。
また、説明上、図1に矢印で示す船舶1の前進方向に対し、左側に位置する推進機を左
舷側推進機2Lと呼び、右側に位置する推進機を右舷側推進機2Rと呼び、中間に位置する推進機を中央推進機2Mと呼ぶ。
【0012】
図1において、各推進機2L、2M、2Rには各々制御装置が設置され、各制御装置間は通信回線3を介して接続されている。
【0013】
各制御装置には、操船者がどの推進機を制御基準に選択しているかを検出するための基準機切り替えスイッチSW(スイッチ)4L、4M、4Rが接続されている。
基準機切り替えSW4Lは、推進機2Lが基準機として選択されたことを検出するためのSWである。基準機切り替えSW4Mは、推進機2Mが基準機として選択されたことを検出するためのSW(スイッチ)である。基準機切り替えSW4Rは、推進機2Rが基準機として選択されたことを検出するためのSWである。
なお、本実施の形態1では、基準機切り替えSW4L、4M、4Rをプルアップ状態がONとなるSWとしているが、前記状態以外がONとなるSWとしてもよい。また、前述のように、本実施の形態1では船舶1に設置される3機全ての推進機を基準機として選択可能なSWを例としているが、例えば、基準機切り替えSW4L、4M、4Rのいずれか1つまたは2つを接続するようにしてもよい。また、本実施の形態1では、前述のように操船者からの基準機切り替え指示をスイッチ入力により検出しているが、操船者からの基準機切り替え指示を、例えば、通信機器8(図2参照)から受信した基準機切り替え指示値により検出するようにしてもよい。
【0014】
図2は実施の形態1に係る推進機の制御装置のシステム図である。左側の推進機2Lに備えられるエンジン制御部5Lは、不揮発性メモリ7Lからエンジン番号を読み出し、エンジン番号読み出し値が制御装置出荷時の値であるとき、エンジン番号が未学習であると判断する。エンジン番号が未学習の場合は、エンジン設置位置検出端子6Lから入力された電圧値(A/D)により、電圧値が左舷機判定電圧範囲内(左舷機判定下限値以上左舷機判定上限
値未満)であるとき、自身の設置位置が左側であると判定し、左側の設置位置に対応したエンジン番号を得る。エンジン設置位置検出端子6Lにより判定したエンジン番号は不揮発性メモリ7Lに記憶する。
【0015】
右側の推進機2Rに備えられるエンジン制御部5Rは、不揮発性メモリ7Rからエンジン番号を読み出し、エンジン番号読み出し値が制御装置出荷時の値であるとき、エンジン番号が未学習であると判断する。エンジン番号が未学習の場合は、エンジン設置位置検出端子6Rから入力された電圧値(A/D)により、電圧値が右舷機判定電圧範囲内(右舷機判定下限
値以上右舷機判定上限値未満)であるとき、自身の設置位置が右側であると判定し、右側の設置位置に対応したエンジン番号を得る。エンジン設置位置検出端子6Rにより判定したエンジン番号は不揮発性メモリ7Rに記憶する。
【0016】
中央の推進機2Mに備えられるエンジン制御部5Mは、不揮発性メモリ7Mからエンジン番号を読み出し、エンジン番号読み出し値が制御装置出荷時の値であるとき、エンジン番号が未学習であると判断する。エンジン番号が未学習の場合は、エンジン設置位置検出端子6Mから入力された電圧値(A/D)により、電圧値が中央機判定電圧範囲内(中央機判定下限
値以上中央機判定上限値未満)であるとき、自身の設置位置が中央であると判定し、中央の設置位置に対応したエンジン番号を得る。エンジン設置位置検出端子6Mにより判定したエンジン番号は不揮発性メモリ7Mに記憶する。
【0017】
本実施の形態1では、各推進機2L、2M、2Rのうち、エンジン番号最小のものが制御基準の推進機であると判定するので、左舷側の推進機ほど制御基準となる優先順位が高くなるように、左舷機のエンジン番号を「0」、中央機のエンジン番号を「1」、右舷機のエンジン番号を「2」に設定しているが、一番右舷側の推進機が制御基準の推進機となるように、左舷機のエンジン番号を「2」、中央機のエンジン番号を「1」、右舷機のエンジン番号を「0」に設定してもよい。また、一番中央側の推進機が制御基準の推進機となるように、例えば左舷機のエンジン番号を「1」、中央機のエンジン番号を「0」、右舷機のエンジン番号を「2」に設定してもよい。さらに、制御基準となる優先順位を、前述のエンジン番号が最大のもの、もしくは一番中央値のものが制御基準となる優先順位が一番高いと判定するようにしてもよい。
【0018】
また、本実施の形態1では、各推進機2L、2M、2Rの各エンジン制御部5L、5M、5Rにエンジン設置位置検出端子6L、6M、6Rを、通信回線3に通信機器8を備えており、エンジン設置位置検出端子6L、6M、6Rと通信機器8の両方の手段により、エンジン位置を取得することを可能としているが、エンジン設置位置検出端子6L、6M、6Rまたは通信機器8のいずれか一方が備わっていればよい。
推進機2L、2M、2Rの各エンジン制御部5L、5M、5Rは、通信機器8からエンジン番号を受信した場合は、そのエンジン番号を自身のエンジン番号と判断し、不揮発性メモリ7L
、7M、7Rに記憶する。また、通信機器8からエンジン番号を受信しなかった場合は、不揮発性メモリ7L、7M、7Rから読み出したエンジン番号またはエンジン設置位置検出端子6L、6M、6Rから判定したエンジン番号を自身のエンジン番号に設定する。
ここで、通信機器8を備えず、エンジン設置位置検出端子6L、6M、6Rのみを備える制御装置とした場合は、エンジン設置位置検出端子6L、6M、6Rによりエンジン番号を得ることができる。一方、エンジン設置位置検出端子6L、6M、6Rを備えず、通信機器8のみ備える制御装置とした場合は、通信機器8からエンジン番号を得ることができる。また、通信機器8はエンジン番号の初期設定のためだけではなく、ユーザーが別途カスタマイズした任意の値に再学習するために用いることもできる。
【0019】
以下、制御基準となる推進機を切り替える制御を、図3〜図10に基づいて説明する。図3はエンジン制御部の構成を示す図、図4はエンジン制御部の初期化部のフローチャート、図5はエンジン制御部の受信部のフローチャート、図6はエンジン制御部の推進機設置位置判定部のフローチャート、図7はエンジン制御部の推進機接続判定部のフローチャート、図8はエンジン制御部の制御基準の推進機判定部のフローチャート、図9はエンジン制御部の同調制御部のフローチャート、図10はエンジン制御部の送信部のフローチャートである。
【0020】
まず、エンジン制御部の構成を図3に基づいて説明する。以下、左舷機2Lのエンジン制御部5Lを代表として説明するが、中央機2M、右舷機2Rのエンジン制御部5M、5Rについても
構成は同じである。
推進機2L(2M、2R)の制御装置は、起動後、初期化部30にて初期化処理を行う。次に受信部31にて、通信回線3経由で受信した情報が推進機2L(2M、2R)のいずれから受信したものであるかを判別し、判別した推進機に対応する接続判定用タイマ(左舷機接続判定タイマ、中央機接続判定タイマ、右舷機接続判定タイマ)のリセット処理を行う。
その後、推進機設置位置判定部32にて、通信機器8からの情報を受信している場合はエンジン番号を通信機器8からの受信値により取得し、不揮発性メモリ7L(7M、7R)に記憶する。
【0021】
通信機器8からの情報を受信していない場合はエンジン設置位置検出端子6L(6M、6R)からの入力電圧によりエンジン番号を判定し、不揮発性メモリ7L(7M、7R)に記憶する。その後、推進機接続判定部33にて、通信回線3に推進機2L、2M、2Rが接続されているか否かを判定する。その後、制御基準の推進機判定部34にて、制御基準となる推進機が自身または他機のいずれであるかを判定する。その後、同調制御部35にて、同調制御を行うか否かを判定する。なお、同調制御開始時および解除時には、基準機の切り替わりにおいて動作が不安定にならないように制御値を補正する。
最後に、送信部36にて、目標エンジン回転数を有効値または無効値のいずれを送信するかを判定し、その後、自身の目標エンジン回転数と、自身のエンジン番号と、自身の故障情報を送信する。
【0022】
次に、図4の初期化部30のフローチャートに基づいて初期化処理の例を説明する。
ステップa1では、受信部31の出力である左舷機接続判定タイマ、中央機接続判定タイマ、右舷機接続判定タイマの初期値を設定し、ステップa2に進む。
ステップa2では、推進機接続判定部33の出力である左舷機接続判定、中央機接続判定、右舷機接続判定の判定結果初期値を「非接続」に設定し、ステップa3に進む。
ステップa3では、制御基準の推進機判定部34の出力である基準機判定結果初期値を「他機」に設定し、ステップa4に進む。ステップa4では、送信部36の出力である目標エンジン回転数初期値を無効値に設定し、処理を終了する。
【0023】
次に、図5の受信部31のフローチャートに基づいて、受信情報を解析する処理の例を説明する。
ステップb1では、左舷機接続判定タイマ、中央機接続判定タイマ、右舷機接続判定タイマを減算し、ステップb2に進む。ただし、前記タイマ=0の場合はアンダーフロー防止のため減算は行わずステップb2に進む。
ステップb2では、通信回線3から受信した受信情報が左舷機からのものか否かを判定する。受信情報が左舷機からのものであれば、ステップb3にて左舷機接続判定タイマを初期値にリセットし、左舷機の目標エンジン回転数と、エンジン番号と、故障情報を取得し、ステップb4に進み、通信回線3から受信した受信情報が左舷機からのものでなければ何も行わずステップb4に進む。
【0024】
ステップb4では、通信回線3から受信した受信情報が中央機からのものか否かを判定する。受信情報が中央機からのものであれば、ステップb5にて中央機接続判定タイマを初期値にリセットし、中央機の目標エンジン回転数と、エンジン番号と、故障情報を取得し、ステップb6に進み、通信回線3から受信した受信情報が中央機からのものでなければ何も行わずステップb6に進む。
【0025】
ステップb6では、通信回線3から受信した受信情報が右舷機からのものか否かを判定する。受信情報が右舷機からのものであれば、ステップb7にて右舷機接続判定タイマを初期値にリセットし、右舷機の目標エンジン回転数と、エンジン番号と、故障情報を取得し、処理を終了する。通信回線3から受信した受信情報が右舷機からのものでなければ何も行
わず処理を終了する。
【0026】
次に、図6の推進機設置位置判定部32のフローチャートに基づいて、推進機の設置位置を判定する処理の例を説明する。
【0027】
ステップc1では、通信機器8から情報を受信しているか否かを判定する。通信機器8からの情報を受信していると判断した場合は、ステップc2に進み、受信していないと判断した場合はステップc8に進む。
ステップc2では、通信機器8からエンジン番号を受信しているかどうかを判定する。
エンジン番号を受信していればステップc3に進み、受信していなければc4に進む。
ステップc3では、エンジン番号受信済みフラグを「受信済み」にセットし、ステップc5に進む。ステップc4では、エンジン番号受信済みフラグを「未受信」にセットし、ステップc5に進む。ステップc5では、エンジン番号受信済みフラグが「受信済み」であるか否かを判定する。エンジン番号受信済みフラグが「受信済み」であればステップc6に進み、「受信済み」でなければステップc1に戻る。
【0028】
ステップc6では、自身のエンジン番号を通信機器8から受信したエンジン番号に設定し、ステップc7に進む。ステップc7では、ステップc6にて設定した自身のエンジン番号を、不揮発性メモリ7L(7M、7R)に記憶し、ステップc8に進む。ステップc8では、不揮発性メモリ7L(7M、7R)から自身のエンジン番号を読み出し、ステップc9にて、読み出した自身のエンジン番号が制御装置出荷時の値か否かを判定する。
ステップc9では、ステップc8にて読み出した自身のエンジン番号読み出し値が制御装置出荷時の値であれば、エンジン番号を学習していないと判断し、ステップc10に進み、制御
装置出荷時の値以外であれば、エンジン番号を学習済みであると判断し、ステップc18に
進む。ステップc18では、自身のエンジン番号は不揮発性メモリ7L(7M、7R)からの読み
出し値に設定し、処理を終了する。
【0029】
ステップc10では、エンジン設置位置検出端子6L(6M、6R)からの入力電圧が左舷機判
定下限値以上左舷機判定上限値未満であれば、自身の設置位置は左舷であると判断し、ステップc11にて自身のエンジン番号を左舷機(0)に設定し、ステップc12に進む。
ステップc10の条件が成立しなければ、自身の設置位置は左舷ではないと判断し、ステッ
プc13に進む。
ステップc13では、エンジン設置位置検出端子6L(6M、6R)からの入力電圧が中央機判定
下限値以上中央機判定上限値未満であれば、自身の設置位置は中央であると判断し、ステップc14にて自身のエンジン番号を中央機(1)に設定し、ステップc12に進む。
ステップc13の条件が成立しなければ、自身の設置位置は中央ではないと判断し、ステッ
プc15に進む。
ステップc15では、エンジン設置位置検出端子6L(6M、6R)からの入力電圧が右舷機判定
下限値以上右舷機判定上限値未満であれば、自身の設置位置は右舷であると判断し、ステップc16にて自身のエンジン番号を右舷機(2)に設定し、ステップc12に進む。
ステップc15の条件が成立しなければ、自身の設置位置は、左舷/中央/右舷のいずれで
もないと判断し、ステップc17にて、エラー処理として自身のエンジン番号を左舷機(0
)と判定するようにするが、不揮発性メモリ7L(7M、7R)には記憶せず、処理を終了する。なお、本実施の形態1では、エンジン番号の定義を、左舷機を「0」、中央機を「1」、右舷機を「2」に設定しているが、左舷機<中央機<右舷機となる組み合わせの任意の値に設定してもよい。
【0030】
次に、図7の推進機接続判定部33のフローチャートに基づいて、推進機2L、2M、2Rの接続状態を判定する処理の例を説明する。
【0031】
ステップd1では、左舷機接続判定タイマが0か否かを判定する。左舷機接続判定タイマが0の場合は、左舷機接続タイムアウト判定時間が経過したと判断し、ステップd2にて左舷機接続判定結果を「非接続」に設定し、ステップd4に進む。左舷機接続判定タイマが0以外の場合は、左舷機接続タイムアウト判定時間経過中であると判断し、ステップd3にて左舷機接続判定結果を「接続」に設定し、ステップd4に進む。
ステップd4では、中央機接続判定タイマが0か否かを判定する。中央機接続判定タイマが0の場合は、中央機接続タイムアウト判定時間が経過したと判断し、ステップd5にて中央機接続判定結果を「非接続」に設定し、ステップd7に進む。中央機接続判定タイマが0以外の場合は、中央機接続タイムアウト判定時間経過中であると判断し、ステップd6にて中央機接続判定結果を「接続」に設定し、ステップd7に進む。
ステップd7では、右舷機接続判定タイマが0か否かを判定する。右舷機接続判定タイマが0の場合は、右舷機接続タイムアウト判定時間が経過したと判断し、ステップd8にて右舷機接続判定結果を「非接続」に設定し、処理を終了する。右舷機接続判定タイマが0以外の場合は、右舷機接続タイムアウト判定時間経過中であると判断し、ステップd9にて右舷機接続判定結果を「接続」に設定し、処理を終了する。
【0032】
次に、図8の制御基準の推進機判定部34のフローチャートに基づいて、制御基準となる推進機を判定する処理の例を説明する。
【0033】
ステップe1では、基準機切り替えSW4L、4M、4RのいずれかがONであるかどうかを判定する。基準機切り替えSW4L、4M、4RのいずれかがONである場合は、ユーザーからの基準機切り替え指示であると判断し、ステップe2にて自身への基準機切り替えSWがONか否かを判定する。
基準機切り替えSW4L、4M、4RのいずれもONでない場合は、ユーザーからの基準機切り替え指示なしと判断し、ステップe6に進む。
ステップe2では、自身への基準機切り替えSWがONである場合は、ステップe3にて自身に故障が発生しているか否かを判定する。自身への基準機切り替えSWがONでない場合は、ステップe5にて基準機は「他機」であると判定し、処理を終了する。
【0034】
ステップe3では、自身に故障が発生していない場合は、ステップe4にて基準機は「自身」であると判定し、自身に故障が発生している場合は、ステップe5にて基準機は「他機」であると判定し、処理を終了する。
ステップe6では、「接続」状態である自身以外の全てのエンジン番号を取得し、ステップe7に進む。ステップe7では、「接続」状態の推進機のエンジン番号最小値が自身のエンジン番号より小さい場合は、ステップe8に進む。ステップe7の条件が成立しなければ、ステップ12に進む。
ステップe8では、「接続」状態かつ自身のエンジン番号より小さいすべての推進機にて故障が発生している場合は、ステップe9に進み、ステップe8の条件が成立しなければ、ステップe11にて基準機は「他機」であると判定し、処理を終了する。
ステップe9では、自身に故障が発生していない場合は、ステップe10にて基準機は「自身
」であると判定し、処理を終了する。自身に故障が発生している場合は、ステップe11に
て基準機は「他機」であると判定し、処理を終了する。
【0035】
ステップe12では、自身に故障が発生している場合は、自身が基準機になることは不可
能であると判断し、ステップe14にて基準機は「他機」であると判定し、処理を終了する
。自身に故障が発生していなければ、ステップe13にて基準機は「自身」であると判定し
、処理を終了する。また、本実施の形態1では、前述のように操船者からの基準機切り替え指示をスイッチ入力により検出しているが、操船者からの基準機切り替え指示を、例えば、通信機器8から受信した基準機切り替え指示値により検出するようにしてもよく、その場合は、ステップe1の条件を「通信機器8から基準機切り替え指示値を受信しているか
?」に、ステップe2の条件を「自身への基準機切り替え指示か?」に置き換えることで実現することができる。
【0036】
次に、図9の同調制御部35のフローチャートに基づいて、同調制御の開始/終了を判定する処理の例を説明する。
【0037】
ステップf1では、自身に故障が発生しているか否かを判定する。自身に故障が発生している場合は、同調制御不可能と判断し、ステップf5に進み、自身に故障が発生していない場合には同調制御可能と判断し、ステップf2に進む。ステップf2では制御基準の推進機判定部34にて判定した基準機判定結果が「他機」であるか否かを判定する。
基準機判定結果が「他機」である場合は、自身は基準機でないと判断し、ステップf3に進み、基準機判定結果が「他機」でない場合は、自身は基準機であると判断し、ステップf5に進む。ステップf3では受信部31にて受信した「左舷機の目標エンジン回転数」、「中央機の目標エンジン回転数」、「右舷機の目標エンジン回転数」の中から有効値である目標エンジン回転数を取得し、ステップf4にて有効値である目標エンジン回転数に合わせて同調制御を行い、処理を終了する。一方、ステップf5では自身が同調制御中か否かを判定する。自身が同調制御中である場合は、ステップf6にて同調制御を解除して処理を終了する。
自身が同調制御中でない場合は何もせず処理を終了する。
【0038】
最後に、図10の送信部36のフローチャートに基づいて、目標エンジン回転数を送信する処理の例を説明する。
【0039】
ステップg1では、制御基準の推進機判定部34にて判定した基準機判定結果が自身であるか否かを判定する。基準機が自身である場合は、ステップg2にて目標エンジン回転数として有効値、すなわち自身にて演算した同調目標となる平均化処理されたエンジン回転数を設定し、ステップg4に進む。基準機が他機である場合は、ステップg3にて、目標エンジン回転数として無効値を設定し、ステップg4に進む。
ステップg4では、ステップg2またはg3にて設定した自身の目標エンジン回転数と、自身のエンジン番号と、自身の故障情報を、通信回線3経由にて自身以外の他推進機に送信する。
【0040】
なお、この実施の形態1においては、エンジン回転数の同調制御を例として挙げたが、この発明は、他にもスロットル開度やシフト位置などの同調制御に関係し、エンジン回転数に限定するものではない。また、この発明はその他エンジン制御にも関係するものであり、前述のような同調制御に限定するものではない。
【0041】
以上のようにこの発明の実施の形態1の推進機の制御装置によれば、前記構成により、以下のような優れた作用効果を有するものである。
【0042】
各推進機の運転状態に応じて、自身または他の推進機が制御基準となるよう、制御基準となる推進機を切り替えることができるので、同調対象の推進機は、新たに制御基準となった推進機に合わせて制御を継続することができる。
【0043】
従って、制御基準となる推進機に故障が発生した場合など、推進機が制御基準となる状態を継続できなくなった場合でも、他の推進機が制御基準となるよう制御基準を切り替えることによって、同調対象の推進機は、新たに制御基準となった推進機に合わせて制御を継続することができる。
【0044】
また、操船者が任意の推進機に制御基準を切り替えたい場合、操船者はスイッチや通信
機器などを操作することにより、制御基準となる推進機の切り替え指示を各推進機に与えることによって、操船者の意図に合わせて制御基準となる推進機を切り替えることができる。
【0045】
また、自推進機のエンジン番号と自身以外の推進機から受信したエンジン番号の中から最小のエンジン番号であるものが制御基準となる推進機であると判定することで、制御基準となる推進機を自律的に切り替えることができる。
【0046】
また、自身が制御基準となる優先順位を判定する情報を、制御装置に設けられた設置位置検出端子からの入力により判定することで、自身の優先順位を判断することができる。
【0047】
また、自身が基準機となる優先順位を判定する情報を、通信機器からの受信値により得ることができる。
【0048】
また、自身が制御基準となる優先順位を判定する情報を不揮発性メモリに記憶しておくことで、次回起動からは前記情報を前記不揮発性メモリから読み出し、その情報から自身が制御基準となる優先順位を判断することができる。
【0049】
実施の形態2.
図11はこの発明の実施の形態2に係る推進機の制御装置を備えた船舶の上面概略図であり、操船席側の制御装置と推進機の制御装置とが電気的に一対一接続され、機械的な接続を必要としない、いわゆるDBW(Drive-By-Wire)の一形態を示したものである。
この実施の形態2においては、船舶は船体に3機の推進機を搭載しているが、2機以上の複数の推進機を搭載するものであればよい。また、本実施の形態2では、推進機として船外機を用いているが、スターンドライブ、あるいは船内外機などでもよい。
また、説明上、図11に矢印で示す船舶61の前進方向に対し、左側に位置する推進機を左舷側推進機62Lと呼び、右側に位置する推進機を右舷側推進機と62Rと呼び、中間に位置する推進機を中央推進機62Mと呼ぶ。
【0050】
この実施の形態2の推進機の制御装置は、実施の形態1における推進機2L、2M、2Rの制御装置を、以下に説明する操船席側制御装置66L、66M、66R、および船尾側制御装置67L、67M、67Rに置き換えたものである。
【0051】
図11において、船舶61の操船席側には制御装置66L、66M、66Rが設置され、各制御
装置間は通信回線63を介して接続されている。推進機62L、62M、62Rには制御装置67L、67M、67Rが設置されている。制御装置66Lと制御装置67L間は通信回線65Lを介して接続さ
れている。制御装置66Mと制御装置67M間は通信回線65Mを介して接続されている。制御装
置66Rと制御装置67R間は通信回線65Rを介して接続されている。
【0052】
操船席側の制御装置66L、66M、66Rには、操船者がどの推進機を制御基準に選択してい
るか検出するための基準機切り替えSW(スイッチ)64L、64M、64Rが接続されている。基
準機切り替えSW64Lは、推進機62Lが基準機として選択されたことを検出するためのSW(スイッチ)である。基準機切り替えSW64Mは、推進機62Mが基準機として選択されたことを検出するためのSWである。基準機切り替えSW64Rは、推進機62Rが基準機として選択されたことを検出するためのSWである。
なお、本実施の形態2では、基準機切り替えSW64L、64M、64Rをプルアップ状態がONとな
るSWとしているが、実施の形態1同様に、前記状態以外がONとなるSWとしてもよい。また、前述のように、本実施の形態2では船舶61に設置される3機全ての推進機を基準機として選択可能なSWを例としているが、実施の形態1同様に、例えば、基準機切り替えSW64L、64M、64Rのいずれか1つまたは2つを接続するようにしてもよい。また、本実施の形態2では、前述のように操船者からの基準機切り替え指示をスイッチ入力により検出しているが、操船者からの基準機切り替え指示を、例えば、実施の形態1同様に、通信機器68(図12参照)から受信した基準機切り替え指示値により検出するようにしてもよい。
【0053】
図12は図11における推進機62L、62M、62Rの制御装置のシステム図である。
制御装置66Lに備えられる操船席制御部69Lは、不揮発性メモリ71Lからエンジン番号を読
み出し、エンジン番号読み出し値が制御装置出荷時の値であるとき、エンジン番号が未学習であると判断する。エンジン番号が未学習の場合は、エンジン設置位置検出端子
70Lから入力された電圧値(A/D)により、該電圧値が左舷機判定電圧範囲内(左舷機判定下限値以上左舷機判定上限値未満)であるとき、自身の設置位置が左側であると判定し、左側の設置位置に対応したエンジン番号を得る。エンジン設置位置検出端子70Lにより判
定したエンジン番号は不揮発性メモリ71Lに記憶する。
【0054】
制御装置66Rに備えられる操船席制御部69Rは、不揮発性メモリ71Rからエンジン番号を
読み出し、エンジン番号読み出し値が制御装置出荷時の値であるとき、エンジン番号が未学習であると判断する。エンジン番号が未学習の場合は、エンジン設置位置検出端子70R
から入力された電圧値(A/D)により、該電圧値が右舷機判定電圧範囲内(右舷機判定下
限値以上右舷機判定上限値未満)であるとき、自身の設置位置が右側であると判定し、右側の設置位置に対応したエンジン番号を得る。エンジン設置位置検出端子70Rにより判定
したエンジン番号は不揮発性メモリ71Rに記憶する。
【0055】
制御装置66Mに備えられる操船席制御部69Mは、不揮発性メモリ71Mからエンジン番号を
読み出し、エンジン番号読み出し値が制御装置出荷時の値であるとき、エンジン番号が未学習であると判断する。エンジン番号が未学習の場合は、エンジン設置位置検出端子70M
から入力された電圧値(A/D)により、該電圧値が中央機判定電圧範囲内(中央機判定下
限値以上中央機判定上限値未満)であるとき、自身の設置位置が中央であると判定し、中央の設置位置に対応したエンジン番号を得る。エンジン設置位置検出端子70Mにより判定
したエンジン番号は不揮発性メモリ71Mに記憶する。
【0056】
本実施の形態2では、実施の形態1と同様に、各推進機62L、62M、62Rのうち、エンジ
ン番号最小のものが制御基準の推進機であると判定するので、左舷側の推進機ほど制御基準となる優先順位が高くなるように、左舷機のエンジン番号を「0」、中央機のエンジン番号を「1」、右舷機のエンジン番号を「2」に設定しているが、一番右舷側の推進機が制御基準の推進機となるように、左舷機のエンジン番号を「2」、中央機のエンジン番号を「1」、右舷機のエンジン番号を「0」に設定してもよい。また、一番中央側の推進機が制御基準の推進機となるように、例えば左舷機のエンジン番号を「1」、中央機のエンジン番号を「0」、右舷機のエンジン番号を「2」に設定してもよい。さらに、制御基準となる優先順位を、前述のエンジン番号が最大のもの、もしくは一番中央値のものが制御基準となる優先順位が一番高いと判定するようにしてもよい。
【0057】
また、実施の形態2では、操船席に設置された各制御装置66L、66M、66Rの操船席制御
部69L、69M、69Rに、実施の形態1と同様に、エンジン設置位置検出端子70L、70M、70Rを、通信回線63に通信機器68を備えており、エンジン設置位置検出端子70L、70M、70Rと通信機器68の両方の手段により、エンジン位置を取得することを可能としているが、エンジン設置位置検出端子70L、70M、70Rまたは通信機器68のいずれか一方が備わっていればよい。
操船席に設置された各制御装置66L、66M、66Rの操船席制御部69L、69M、69Rは、通信機器68からエンジン番号を受信した場合は、そのエンジン番号を自身のエンジン番号と判断し、不揮発性メモリ71L、71M、71Rに記憶する。また、通信機器68からエンジン番号を
受信しなかった場合は、不揮発性メモリ71L、71M、71Rから読み出したエンジン番号また
はエンジン設置位置検出端子70L、70M、70Rから判定したエンジン番号を自身のエンジン
番号に設定する。
【0058】
ここで、通信機器68を備えず、エンジン設置位置検出端子70L、70M、70Rのみを備え
る制御装置とした場合は、エンジン設置位置検出端子70L、70M、70Rによりエンジン番号
を得ることができる。一方、エンジン設置位置検出端子70L、70M、70Rを備えず、通信機
器68のみ備える制御装置とした場合は、通信機器68からエンジン番号を得ることができる。また、通信機器68はエンジン番号の初期設定のためだけではなく、ユーザーが別途カスタマイズした任意の値に再学習するために用いることもできる。
【0059】
次に、制御基準となる推進機を切り替える制御について、図13〜図20に基づいて説明する。
図13は操船席制御部とエンジン制御部の構成を示す図、図14は操船席制御部69L(69M、69R)における初期化部90のフローチャート、図15は操船席制御部69L(69M、69R)における通信回線65L(65M、65R)受信部92のフローチャート、図16は操船席制御部69L(69M、69R)における通信回線63送信部96のフローチャート、図17は通信回線65L(65M、65R)送信部97のフローチャート、図18はエンジン制御部72L(72M、72R)における初期化部98のフローチャート、図19はエンジン制御部72L(72M、72R)におけ
る通信回線65L(65M、65R)受信部99のフローチャート、図20はエンジン制御部72L(72M、72R)における通信回線65L(65M、65R)送信部101のフローチャートである。
【0060】
まず、操船席部とエンジン制御部の構成を図13に基づいて説明する。
以下、左舷機62Lの操船席部69Lおよびエンジン制御部72Lを代表として説明するが、中央
機62M、右舷機62Rの操船席部69M、69R、およびエンジン制御部72M、72Rについても構成は同じである。この実施の形態2では、実施の形態1における図3の初期化部30を、後述の初期化部90および初期化部98に置き換える。
さらに、操船席制御部に通信回線65L(65M、65R)受信部92および通信回線65L(65M、65R)送信部97を、エンジン制御部に通信回線65L(65M、65R)受信部99および通信回
線65L(65M、65R)送信部101を加える。
【0061】
操船席に設置される制御装置66L(66M、66R)は、起動後、初期化部90にて初期化処
理を行う。次に通信回線63の受信部91にて、通信回線63経由で受信した情報が制御装置66L(66M、66R)のいずれから受信したものであるかを判別し、判別した推進機に対
応する接続判定用タイマ(左舷機接続判定タイマ、中央機接続判定タイマ、右舷機接続判定タイマ)のリセット処理を行う。なお、処理内容は実施の形態1における図3の受信部31と等価である。その後、通信回線65L(65M、65R)の受信部92にて、通信回線65L(65M、65R)経由にて後述のエンジン制御部からの目標エンジン回転数を受信する。
【0062】
その後、推進機設置位置判定部93にて、通信機器68からの情報を受信している場合はエンジン番号を通信機器68からの受信値により取得し、不揮発性メモリ71L(71M、71R)に記憶する。通信機器68からの情報を受信していない場合はエンジン設置位置検出端子70L(70M、70R)からの入力電圧によりエンジン番号を判定し、不揮発性メモリ71L(71M、71R)に記憶する。なお、処理内容は実施の形態1における図3の推進機設置位置判定部32と等価である。
その後、推進機接続判定部94にて、通信回線63に推進機62L、62M、62Rが接続されて
いるか否かを判定する。なお、処理内容は実施の形態1における図3の推進機接続判定部33と等価である。その後、制御基準の推進機判定部95にて、制御基準となる推進機が自身または他機のいずれであるかを判定する。なお、処理内容は実施の形態1における図3の制御基準の推進機判定部34と等価である。
【0063】
その後、通信回線63送信部96にて、自推進機から受信した目標エンジン回転数と、自推進機から受信した故障情報を転送し、自身のエンジン番号を送信する。
最後に、通信回線65L(65M、65R)の送信部97にて、目標エンジン回転数を有効値また
は無効値のいずれを送信するかを判定し、目標エンジン回転数を自推進機の制御装置67L
(67M、67R)に通信回線65L(65M、65R)経由にて送信する。
【0064】
推進機62L(62M、62R)に設置される制御装置67L(67M、67R)は、起動後、初期化部98にて初期化処理を行う。その後、通信回線65L(65M、65R)の受信部99にて、操船席に設置される制御装置66L(66M、66R)から、目標エンジン回転数を通信回線65L(65M、65R)経由にて受信する。
その後、同調制御部100にて同調制御を行うか否かを判定する。なお、同調制御開始時および解除時には、基準機の切り替わりにおいて動作が不安定にならないように制御値を補正する。なお、処理内容は実施の形態1における図3の同調制御部35と等価である。最後に、通信回線65L(65M、65R)の送信部101にて、自身にて演算した、同調目標と
なる平均化処理されたエンジン回転数と、自身の故障情報を通信回線65L(65M、65R)経
由にて操船席に設置される制御装置66L(66M、66R)に送信する。
【0065】
次に、図14の初期化部90のフローチャートに基づいて初期化処理の例を説明する。
【0066】
ステップh1では、通信回線63の受信部91の出力である左舷機接続判定タイマ、中央機接続判定タイマ、右舷機接続判定タイマの初期値を設定し、ステップh2に進む。
ステップh2では、推進機接続判定部94の出力である左舷機接続判定、中央機接続判定、右舷機接続判定の判定結果初期値を「非接続」に設定し、ステップh3に進む。
ステップh3では、制御基準の推進機判定部95の出力である基準機判定結果初期値を「他機」に設定し、ステップh4に進む。
ステップh4では、自推進機接続判定タイマ初期値をセットし、ステップh5に進む。
ステップh5では通信回線65L(65M、65R)の送信部101の出力である目標エンジン回転
数初期値を無効値に設定し、処理を終了する。
【0067】
次に、図15の通信回線65L(65M、65R)受信部92のフローチャートに基づいて、操
船席制御部66L(66M、66R)における通信回線65L(65M、65R)受信処理の例を説明する。
【0068】
ステップi1では自推進機接続判定タイマを減算し、ステップi2に進む。ただし、タイマ=0の場合は、アンダーフロー防止のため減算せずステップi2に進む。
ステップi2では、自推進機、すなわち制御装置67L(67M、67R)から目標エンジン回転数
を受信したか否かを判定する。目標エンジン回転数を受信していれば、ステップi3に進み、自推進機接続判定タイマをリセットし、通信回線63経由にて送信するための目標エンジン回転数を取得する。目標エンジン回転数を受信していなければ、何も行わず処理を終了する。
【0069】
次に、図16の通信回線63送信部96のフローチャートに基づいて通信回線63送信部96送信処理の例を説明する。
【0070】
ステップj1では自推進機接続判定タイマが0でないか否かを判定する。自推進機接続判定タイマが0でなければ、ステップj2にて自身の目標エンジン回転数を自推進機から受信した目標エンジン回転数に設定し、自身の故障情報を自推進機から受信した故障情報に設定し、ステップj4に進む。自推進機接続判定タイマが0であれば、推進機に設置された制御装置67L(67M、67R)が起動していない、もしくは通信回線65L(65M、65R)が断線していると判断し、ステップj3にて目標エンジン回転数を無効値に設定し、自身の故障情報を無効値に設定し、ステップj4に進む。
ステップj4では、制御基準の推進機判定部95にて判定した基準機判定結果が自身であるか否かを判定する。基準機判定結果が自身である場合は、何も行わずステップj6に進み、基準機判定結果が自身でない場合は、ステップj5にて自身の目標エンジン回転数を無効値に設定し、ステップj6に進む。ステップj6では、自身の目標エンジン回転数と、自身の故障情報と、自身のエンジン番号を送信し、処理を終了する。
【0071】
次に、図17の通信回線65L(65M、65R)送信部97のフローチャートに基づいて、操
船席制御部66L(66M、66R)における通信回線65L(65M、65R)送信処理の例を説明する。
【0072】
ステップk1では制御基準の推進機判定部95にて判定した基準機判定結果を送信し、ステップk2では通信回線63受信部91にて受信した左舷機の目標エンジン回転数、中央機の目標エンジン回転数、右舷機の目標エンジン回転数を送信する。
【0073】
次に、図18の初期化部98のフローチャートに基づいてエンジン制御部72L(72M、72R)の初期化処理の例を説明する。
【0074】
ステップm1では、操船席に設置される制御装置66L(66M、66R)から通信回線65L(65M
、65R)経由にて受信する基準機判定結果受信値(初期値)を「他機」にセットし、ステ
ップm2に進む。ステップm2では後述の通信回線65L(65M、65R)受信部99にて使用する
自操船席接続判定タイマの初期値をセットし、ステップm3に進む。
ステップm3では、後述の同調制御部100にて使用する、左舷機目標エンジン回転数受信値、中央機目標エンジン回転数受信値、右舷機目標エンジン回転数受信値、の初期値を無効値にセットし、処理を終了する。
【0075】
次に、図19の通信回線65L(65M、65R)受信部99のフローチャートに基づいて、エ
ンジン制御部67L(67M、67R)における通信回線65L(65M、65R)受信処理の例を説明する。
【0076】
ステップn1では、自操船席接続判定タイマを減算し、ステップn2に進む。ただし、前記タイマ=0の場合は減算を行わずステップn2に進む。
ステップn2では、自操船席すなわち制御装置66L(66M、66R)から通信データを受信して
いるか否かを判定する。自操船席から通信データを受信している場合は、ステップn3にて自操船席接続判定タイマをリセットし、基準機判定結果、左舷機目標エンジン回転数、中央機目標エンジン回転数、右舷機目標エンジン回転数、を取得し、ステップn4に進む。自操船席から通信データを受信していない場合は何も行わずステップn4に進む。
ステップn4では、自操船席接続判定タイマが0か否かを判定する。自操船席接続判定タイマが0である場合は、ステップn5にて基準機判定結果(受信値)=「自身」、左舷機目標エンジン回転数(受信値)=無効値、中央機目標エンジン回転数(受信値)=無効値、右舷機目標エンジン回転数(受信値)=無効値に設定し、処理を終了する。
自操船席接続判定タイマが0でない場合は、何も行わず処理を終了する。
【0077】
次に、図20の通信回線65L(65M、65R)送信部101のフローチャートに基づいて、
エンジン制御部67L(67M、67R)における通信回線65L(65M、65R)送信処理の例を説明する。
【0078】
ステップp1では、自身の目標エンジン回転数と、自身のエンジン番号と、自身の故障情報を、通信回線65L(65M、65R)経由にて、自操船席の制御装置66L(66M、66R)に送信し、処理を終了する。
【0079】
以上のように、実施の形態2の発明によれば、実施の形態1の効果に加え、例えば、基
準機切り替えSW(スイッチ)64L、64M、64Rが操船席側の制御装置66L(66M、66R)に入力されるため、前記基準機切り替えSW(スイッチ)の配線長を短くできる。また、エンジン番号は操船席側の制御装置66L(66M、66R)に記憶されており、さらに操船席側の制御装
置66L(66M、66R)と推進機の制御装置67L(67M、67R)は一対一接続であるので、推進機の制御装置67L(67M、67R)にエンジン番号を記憶する必要がない。これにより、推進機
が故障した場合などにユーザーが新しい推進機に交換する必要が生じたとき、ユーザーはエンジン番号を再設定する手間を省けるといった効果がある。
【0080】
実施の形態3.
図21はこの発明の実施の形態3に係る推進機の制御装置を備えた船舶の上面概略図であり、実施の形態2同様、DBW(Drive-By-Wire)の一形態を示したものであるが、実施の形態2では操船席側の制御装置と推進機側の制御装置が一対一接続であるのに対し、本実施の形態3では、操船席側の制御装置と複数の推進機の制御装置とが同一通信ネットワーク上に接続されることを特徴としている
この実施の形態3の船舶は、船体に3機の推進機を搭載しているが、2機以上の複数の推進機を搭載するものであればよい。また、本実施の形態3では、推進機として船外機を用いているが、スターンドライブ、あるいは船内外機などでもよい。
【0081】
説明上、図21に矢印で示す船舶121の前進方向に対し、左側に位置する推進機を左舷側推進機122Lと呼び、右側に位置する推進機を右舷側推進機122Rと呼び、中間に位置する推進機を中央推進機122Mと呼ぶ。
【0082】
この実施の形態3は、実施の形態1における推進機2L、2M、2Rの制御装置が備えている基準機切り替え判定を、操船席側に設置される後述の制御装置126が判定するようにしたものである。
【0083】
図21において、船舶121の操船席側には制御装置126が、船尾側の各推進機には制御装置122L、122M、122Rが設置され、該各制御装置間は通信回線123を介して接続されている。
制御装置126には、操船者がどの推進機を制御基準に選択しているか検出するための基準機切り替えSW(スイッチ)124L、124M、124Rが接続されている。
基準機切り替えSW124Lは、推進機122Lが基準機として選択されたことを検出するためのSW(スイッチ)である。基準機切り替えSW124Mは、推進機122Mが基準機として選択されたことを検出するためのSWである。基準機切り替えSW124Rは、推進機122Rが基準機として選択されたことを検出するためのSWである。
なお、本実施の形態3では、基準機切り替えSW124L、124M、124Rをプルアップ状態がONとなるSWとしているが、実施の形態1同様に、前記状態以外がONとなるSWとしてもよい。
また、前述のように、この実施の形態3では船舶121に設置される3機全ての推進機を基準機として選択可能なSWを例としているが、実施の形態1と同様に、例えば、基準機切り替えSW124L、124M、124Rのいずれか1つ、または2つを接続するようにしてもよい。また、この実施の形態3では、前述のように操船者からの基準機切り替え指示をスイッチ入力により検出しているが、操船者からの基準機切り替え指示を、例えば、実施の形態1と同様に、通信機器128から受信した基準機切り替え指示値により検出するようにしてもよい。
【0084】
図22は図21における推進機の制御装置のシステム図である。
制御装置127Lに備えられるエンジン制御部132Lは、不揮発性メモリ131Lからエンジン番号を読み出し、エンジン番号読み出し値が制御装置出荷時の値であるとき、エンジン番号が未学習であると判断する。エンジン番号が未学習の場合は、エンジン設置位置検出端子130Lから入力された電圧値(A/D)により、該電圧値が左舷機判定電圧範囲内(左舷機判定下限値以上左舷機判定上限値未満)であるとき、自身の設置位置が左側であると判定し、左側の設置位置に対応したエンジン番号を得る。エンジン設置位置検出端子130Lにより判定したエンジン番号は不揮発性メモリ131Lに記憶する。
制御装置127Rに備えられるエンジン制御部132Rは、不揮発性メモリ131Rからエンジン番号を読み出し、エンジン番号読み出し値が制御装置出荷時の値であるとき、エンジン番号が未学習であると判断する。エンジン番号が未学習の場合は、エンジン設置位置検出端子130Rから入力された電圧値(A/D)により、該電圧値が右舷機判定電圧範囲内(右舷機判
定下限値以上右舷機判定上限値未満)であるとき、自身の設置位置が右側であると判定し、右側の設置位置に対応したエンジン番号を得る。エンジン設置位置検出端子130Rにより判定したエンジン番号は不揮発性メモリ131Rに記憶する。
制御装置127Mに備えられるエンジン制御部132Mは、不揮発性メモリ131Rからエンジン番号を読み出し、エンジン番号読み出し値が制御装置出荷時の値であるとき、エンジン番号が未学習であると判断する。エンジン番号が未学習の場合は、エンジン設置位置検出端子130Mから入力された電圧値(A/D)により、該電圧値が中央機判定電圧範囲内(中央機判
定下限値以上中央機判定上限値未満)であるとき、自身の設置位置が中央であると判定し、中央の設置位置に対応したエンジン番号を得る。エンジン設置位置検出端子130Mにより判定したエンジン番号は不揮発性メモリ131Mに記憶する。
【0085】
本実施の形態3では、実施の形態1同様に、各推進機122L、122M、122Rのうち、エンジン番号最小のものが制御基準の推進機であると判定するので、左舷側の推進機ほど制御基準となる優先順位が高くなるように、左舷機のエンジン番号を「0」、中央機のエンジン番号を「1」、右舷機のエンジン番号を「2」に設定しているが、一番右舷側の推進機が制御基準の推進機となるように、左舷機のエンジン番号を「2」、中央機のエンジン番号を「1」、右舷機のエンジン番号を「0」に設定してもよい。また、一番中央側の推進機が制御基準の推進機となるように、例えば左舷機のエンジン番号を「1」、中央機のエンジン番号を「0」、右舷機のエンジン番号を「2」に設定してもよい。さらに、制御基準となる優先順位を、前述のエンジン番号が最大のもの、もしくは一番中央値のものが制御基準となる優先順位が一番高いと判定するようにしてもよい。
【0086】
また、本実施の形態3では、推進機に設置された各制御装置127L、127M、127Rのエンジン制御部132L、132M、132Rに、実施の形態1と同様に、エンジン設置位置検出端子130L、130M、130Rを、通信回線123に通信機器128を備えており、エンジン設置位置検出端子130L、130M、130Rと通信機器128の両方の手段により、エンジン位置を取得することを可能としているが、エンジン設置位置検出端子130L、130M、130Rまたは通信機器128のいずれか一方が備わっていればよい。
推進機に設置された各制御装置127L、127M、127Rのエンジン制御部132L、132M、132Rは、通信機器128からエンジン番号を受信した場合は、そのエンジン番号を自身のエンジン番号と判断し、不揮発性メモリ131L、131M、131Rに記憶する。
また、通信機器128からエンジン番号を受信しなかった場合は、不揮発性メモリ131L、131M、131Rから読み出したエンジン番号またはエンジン設置位置検出端子130L、130M、130Rから判定したエンジン番号を自身のエンジン番号に設定する。
ここで、通信機器128を備えず、エンジン設置位置検出端子130L、130M、130Rのみを備える制御装置とした場合は、エンジン設置位置検出端子130L、130M、130Rによりエンジン番号を得ることができる。一方、エンジン設置位置検出端子130L、130M、130Rを備えず、通信機器128のみ備える制御装置とした場合は、通信機器128からエンジン番号を得ることができる。また、通信機器128はエンジン番号の初期設定のためだけではなく、ユーザーが別途カスタマイズした任意の値に再学習するために用いることもできる。
【0087】
以下、制御基準となる推進機を切り替える制御について、図23〜図29に基づいて説明する。
図23は、操船席側制御装置126における操船席制御部と、推進機側制御装置127L(127M、127R)におけるエンジン制御部の構成を示す図、図24は操船席制御部129における初期化部150のフローチャート、図25は操船席制御部129における制御基準の推進機判定部153のフローチャート、図26は操船席制御部129における通信回線123送信部154のフローチャート、図27はエンジン制御部132L(132M、132R)における初期化部155のフローチャート、図28はエンジン制御部132L(132M、132R)における通信回線123受信部156のフローチャートである。
【0088】
まず、操船席部とエンジン制御部の構成を図23に基づいて説明する。
以下、左舷機122Lのエンジン制御部132Lを代表として説明するが、中央機122M、右舷機122Rのエンジン制御部132M、132Rについても構成は同じである。また、本実施の形態3では、実施の形態1における図3の初期化部30を、後述の初期化部150および初期化部155に置き換える。さらに、図3の制御基準の推進機判定部34を操船席部129の制御基準の推進機判定部153に置き換える。
【0089】
操船席に設置される制御装置126は、起動後、初期化部150にて初期化処理を行う。次に通信回線123受信部151にて、通信回線123経由で受信した情報が制御装置127L(127M、127R)のいずれから受信したものであるかを判別し、判別した推進機に対応する接続判定用タイマ(左舷機接続判定タイマ、中央機接続判定タイマ、右舷機接続判定タイマ)のリセット処理を行い、判定した推進機の目標エンジン回転数と、エンジン番号と、故障情報を受信する。なお、処理内容は実施の形態1における図3の受信部31と等価である。
【0090】
その後、推進機接続判定部152にて、通信回線123に推進機127L、127M、127Rが接続されているか否かを判定する。なお、処理内容は実施の形態1における図3の推進機接続判定部33と等価である。その後、制御基準の推進機判定部153にて、推進機接続判定部152にて判定した、「接続」状態である推進機の中からエンジン番号最小の推進機を検索することにより、制御基準となる推進機を判定する。
最後に、通信回線123送信部154にて、制御基準の推進機判定部153にて判定した基準機判定結果を、通信回線123経由にて、制御装置127L(127M、127R)に送信する。
【0091】
推進機122L(122M、122R)に設置される制御装置127L(127M、127R)は、起動後、初期化部155にて初期化処理を行う。その後、通信回線123受信部156にて、操船席に設置される制御装置126から、基準機判定結果と、目標エンジン回転数を通信回線123経由にて受信する。
その後、推進機設置位置判定部157にて、通信機器128からの情報を受信している場合はエンジン番号を通信機器128からの受信値により取得し、不揮発性メモリ131L(131M、131R)に記憶する。通信機器128からの情報を受信していない場合はエンジン設置位置検出端子130L(130M、130R)からの入力電圧によりエンジン番号を判定し、不揮発性メモリ131L(131M、131R)に記憶する。
なお、処理内容は実施の形態1における図3の推進機設置位置判定部32と等価である。
【0092】
その後、同調制御部158にて同調制御を行うか否かを判定する。なお、同調制御開始時および解除時には、基準機の切り替わりにおいて動作が不安定にならないように制御値を補正する。なお、処理内容は実施の形態1における図9の同調制御部35のステップf2の判定条件を「基準機=自身以外、かつ基準機=「無し」でないか否か」に、ステップf3の処理を「基準機判定結果(受信値)に対応する推進機の目標エンジン回転数を取得」に置き換えることで実現できる。
最後に、通信回線123送信部159にて、自身にて演算した、同調目標となる平均化処理されたエンジン回転数と、自身のエンジン番号と、自身の故障情報を通信回線123経
由にて操船席に設置される制御装置126に送信する。なお、処理内容は実施の形態2における図20の通信回線65L(65M、65R)送信部101と等価である。
【0093】
次に、図24の初期化部150のフローチャートに基づいて初期化処理の例を説明する。
ステップr1では、通信回線123受信部151の出力である左舷機接続判定タイマ、中央機接続判定タイマ、右舷機接続判定タイマの初期値を設定し、ステップr2に進む。
ステップr2では、推進機接続判定部152の出力である左舷機接続判定、中央機接続判定、右舷機接続判定の判定結果初期値を「非接続」に設定し、ステップr3に進む。
ステップr3では、制御基準の推進機判定部153の出力である基準機判定結果初期値を「無し」に設定し、処理を終了する。
【0094】
次に、図25の制御基準の推進機判定部153のフローチャートに基づいて、操船席制御部129における制御基準の推進機を判定する処理の例を説明する。
【0095】
ステップs1では、基準機切り替えSW124L、124M、124RのいずれかがONであるかどうかを判定する。基準機切り替えSW124L、124M、124RのいずれかがONである場合は、ユーザーからの基準機切り替え指示であると判断し、ステップs2に進む。
基準機切り替えSW124L、124M、124RのいずれもONでない場合は、ユーザーからの基準機切り替え指示なしと判断し、ステップs5に進む。
ステップs2では、ON状態である基準機切り替えSWに対応する推進機の接続判定=「接続」、かつその推進機にて故障が発生していないかどうかを判定する。
前記ステップs2の条件が成立する場合は、ユーザーによる基準機切り替え可能と判断し、ステップs3に進む。ステップs2の条件が成立しない場合は、ユーザーによる基準機切り替え不可能と判断し、ステップs4に進む。ステップs3では、基準機を、ON状態となっている基準機切り替えSWに対応する推進機と判定し、処理を終了する。ステップs4では、基準機を「無し」に設定して処理を終了する。
【0096】
ステップs5では、「接続」状態かつ故障が発生していない推進機が存在するか否かを判定する。ステップs5の条件が成立する場合は、基準機として動作可能な推進機が存在すると判断し、ステップs6に進む。ステップs5の条件が成立しない場合は、基準機として動作可能な推進機は存在しないと判断し、ステップs8に進む。
ステップs6では、「接続」状態かつ故障が発生していない推進機の中からエンジン番号最小の推進機を検索し、ステップs7に進む。ステップs7では基準機を、「接続」状態かつ故障が発生していない推進機の中でエンジン番号最小の推進機と判定し、処理を終了する。ステップs8では、基準機を「無し」に設定して処理を終了する。
【0097】
なお、本実施の形態3では、前述のように操船者からの基準機切り替え指示をスイッチ入力により検出しているが、操船者からの基準機切り替え指示を、例えば、通信機器128から受信した基準機切り替え指示値により検出するようにしてもよく、その場合は、ステップs1の条件を「通信機器128から基準機切り替え指示値を受信しているか?」に、ステップs2の条件を「基準機切り替え指示値に対応する推進機の接続判定=「接続」かつその推進機にて故障発生なし?」に、ステップs3の処理を「基準機=通信機器128から受信した基準機切り替え指示値に対応する推進機」に置き換えることで実現することができる。
【0098】
次に、図26の通信回線123送信部154のフローチャートに基づいて、操船席制御部129における通信回線123送信処理の例を説明する。
【0099】
ステップt1では、制御基準の推進機判定部153にて判定した基準機判定結果を送信し
、処理を終了する。
【0100】
次に、図27の初期化部155のフローチャートに基づいてエンジン制御部132L(132M、132R)の初期化処理の例を説明する。
【0101】
ステップu1では、操船席に設置される制御装置126から通信回線123経由にて受信する基準機判定結果(初期値)を「無し」にセットし、ステップu2に進む。ステップu2では後述の通信回線123受信部156にて使用する操船席接続判定タイマの初期値をセットし、ステップu3に進む。ステップu3では、同調制御部158にて使用する、左舷機目標エンジン回転数受信値、中央機目標エンジン回転数受信値、右舷機目標エンジン回転数受信値、の初期値を無効値にセットし、処理を終了する。
【0102】
次に、図28の通信回線123受信部156のフローチャートに基づいて、エンジン制御部127L(127M、127R)における通信回線123受信処理の例を説明する。
【0103】
ステップv1では、操船席接続判定タイマを減算し、ステップv2に進む。ただし、前記タイマ=0の場合は減算を行わずステップv2に進む。
ステップv2では、操船席すなわち制御装置126から通信データを受信しているか否かを判定する。操船席から通信データを受信している場合は、ステップv3にて操船席接続判定タイマをリセットし、基準機判定結果、左舷機目標エンジン回転数、中央機目標エンジン回転数、右舷機目標エンジン回転数、を取得し、ステップv4に進む。
操船席から通信データを受信していない場合は何も行わずステップv4に進む。
ステップv4では、操船席接続判定タイマが0か否かを判定する。操船席接続判定タイマが0であればステップv5にて基準機判定結果=「無し」にセットして処理を終了し、操船席接続判定タイマが0でなければ何も行わず処理を終了する。
【0104】
以上のように、実施の形態3の発明によれば、実施の形態1の効果に加え、例えば、実施の形態2と同様に基準機切り替えSW(スイッチ)の配線長を短くできる。また、基準機切り替え判定を操船席側の制御装置126のみが行うことで、実施の形態1および実施の形態2と比して、より統合された基準機判定手段を実現できるので、システム全体の制御が容易になる。さらに、実施の形態2と比して操船席側の制御装置の数が少ない分、システムコストを削減することができる。また、将来制御装置126の基準機判定手段がより新しい手段に更新・修正されたとき、制御装置126のみを改修するだけで済むので、実施の形態2と比してメンテナンスコストをより削減できるといった効果もある。
【符号の説明】
【0105】
1 船舶、2L、2M、2R 推進機、3 通信回線、4L、4M、4R 基準機切り替えSW、
5L、5M、5R エンジン制御部、6L、6M、6R エンジン設置位置検出端子、
7L、7M、7R 不揮発性メモリ、8 通信機器、30 初期化部、31 受信部、
32 推進機設置位置判定部、33 推進機接続判定部、
34 制御基準の推進機判定部、35 同調制御部、36 送信部、
61 船舶62L、62M、62R 推進機、63 通信回線、
64L、64M、64R 基準機切り替えSW、65L、65M、65R 通信回線、
66L、66M、66R 操船席の制御装置、67L、67M、67R 推進機の制御装置、
68 通信機器、69L、69M、69R 操船席制御部、
70L、70M、70R エンジン設置位置検出端子、71L、71M、71R 不揮発性メモリ、
72L、72M、72R エンジン制御部、90 初期化部、91 通信回線63受信部、
92 通信回線65L(65M、65R)受信部、93 推進機設置位置判定部、
94 推進機接続判定部、95 制御基準の推進機判定部、
96 通信回線63送信部、97 通信回線65L(65M、65R)送信部、
98 初期化部、99 通信回線65L(65M、65R)受信部、
100 同調制御部、101 通信回線65L(65M、65R)送信部、
121 船舶、122L、122M、122R 推進機、123 通信回線、
124L、124M、124R 基準機切り替えSW、126 操船席の制御装置、
127L、127M、127R 推進機の制御装置、128 通信機器、129 操船席制御部、
130L、130M、130R エンジン設置位置検出端子、
131L、131M、131R 不揮発性メモリ、150 初期化部、
151 通信回線123受信部、152 推進機接続判定部、
153 制御基準の推進機判定部、154 通信回線123送信部、155 初期化部、
156 通信回線123受信部、157 推進機設置位置判定部、158 同調制御部、
159 通信回線123送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に複数並置された各推進機の運転状態を制御する推進機の制御装置であって、各推進機の制御装置同士を、各推進機の運転情報を相互に送受信する通信回線により接続した制御装置であり、
自推進機の設置位置を判定する設置位置判定手段と、
前記通信回線に接続されている他推進機の接続状態を判定する接続状態判定手段と、
前記複数の制御装置の中から制御基準となる推進機を判定する推進機判定手段とを備え、前記通信回線経由にて検出した相互の推進機の運転状態に応じて、前記制御基準となる推進機を切り替えることを特徴とする推進機の制御装置。
【請求項2】
前記推進機判定手段は、制御基準である推進機に故障が発生した場合など、制御基準となる状態を継続できなくなった場合に、他の推進機に制御基準を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の推進機の制御装置。
【請求項3】
前記推進機判定手段は、ユーザー(操船者)からの制御基準となる推進機切り替え指示を検知した場合に、自身または他の推進機に制御基準を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の推進機の制御装置。
【請求項4】
前記推進機判定手段は、前記設置位置判定手段をもとに得られた各推進機のエンジン番号により推進機の優先順位を判定し、一番優先順位の高い推進機に制御基準を切り替えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の推進機の制御装置。
【請求項5】
前記設置位置判定手段は、前記制御装置に設けられた設置位置検出端子からの入力により自推進機の設置位置を判定することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の推進機の制御装置。
【請求項6】
前記設置位置判定手段は、前記通信回線に接続された通信機器からの受信値により自推進機の設置位置を判定することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の推進機の制御装置。
【請求項7】
前記設置位置判定手段により判定した推進機のエンジン番号を不揮発性メモリに記憶することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の推進機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−187999(P2012−187999A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52756(P2011−52756)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】