描画装置、描画装置の描画方法およびプログラム
【課題】複雑な演算処理を必要とすることなく、記録媒体の蛇行に伴う印刷物の品質低下を防止することができる描画装置等を提供する。
【解決手段】記録媒体送り経路に沿って記録媒体Aを送る記録媒体送り手段と、送られてゆく記録媒体Aに臨み、記録媒体Aに印刷を行うヘッドユニット83と、ヘッドユニット83を記録媒体Aの幅方向に移動させるサーボモーター123と、記録媒体送り経路に臨み、記録媒体Aの幅方向におけるエッジ位置の変位量を検出する変位センサー100と、変位センサー100の検出結果に基づいて、ヘッドユニット83が幅方向における記録媒体Aの適正位置に臨むようにサーボモーター123を制御する演算装置200と、を備えたものである。
【解決手段】記録媒体送り経路に沿って記録媒体Aを送る記録媒体送り手段と、送られてゆく記録媒体Aに臨み、記録媒体Aに印刷を行うヘッドユニット83と、ヘッドユニット83を記録媒体Aの幅方向に移動させるサーボモーター123と、記録媒体送り経路に臨み、記録媒体Aの幅方向におけるエッジ位置の変位量を検出する変位センサー100と、変位センサー100の検出結果に基づいて、ヘッドユニット83が幅方向における記録媒体Aの適正位置に臨むようにサーボモーター123を制御する演算装置200と、を備えたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
送られてゆく記録媒体にヘッドを臨ませ、当該ヘッドにより記録媒体に描画を行なう描画装置、描画装置の描画方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、幅方向に蛇行した状態で送られてゆく記録媒体(印刷媒体)に対し、正確な位置に描画を行う(インクを着弾させる)ため、記録媒体の蛇行状態を検出し、検出された蛇行状態に応じて描画データー(印刷データー)を補正する印刷装置が知られている(例えば、特許文献1)。この印刷装置は、無端ベルトの蛇行状態を検出し、当該蛇行状態に基づいて記録媒体の蛇行量を算出する。さらに、算出した当該蛇行量に基づいて描画データーをシフト補正し、補正後の当該描画データーに基づいて印刷ヘッドを駆動させる。これにより、記録媒体の蛇行に伴う印刷物の品質低下(印刷画像の乱れ)を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2005/097510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のように、描画データーの補正によって、印刷位置を補償する印刷装置の場合、蛇行量を算出したりシフト補正したりするための処理演算量が多くなり、制御負荷が大きくなる問題があった。また、この制御負荷は、印刷物の解像度が高くなるほど大きくなるため、印刷物の品質に応じて処理能力の高い制御装置が必要となる。その結果、印刷装置導入の際のイニシャライズコストが高くなるといった問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑み、複雑な演算処理を必要とすることなく、記録媒体の蛇行に伴う印刷物の品質低下を防止することができる描画装置、描画装置の描画方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の描画装置は、記録媒体送り経路に沿って記録媒体を送る記録媒体送り手段と、送られてゆく記録媒体に臨み、記録媒体に印刷を行うヘッドと、ヘッドを記録媒体の幅方向に移動させるヘッド移動手段と、記録媒体送り経路に臨み、記録媒体の幅方向におけるエッジ位置の変位量を検出する変位量検出手段と、変位量検出手段の検出結果に基づいて、ヘッドが幅方向における記録媒体の適正位置に臨むようにヘッド移動手段を制御するヘッド位置制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の描画装置の描画方法は、幅方向に蛇行した状態で送られてゆく記録媒体にヘッドを臨ませ、当該ヘッドにより記録媒体に描画を行なう描画装置の描画方法であって、蛇行状態に倣って、ヘッドを記録媒体の幅方向に移動させながら描画を行うことを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、記録媒体の蛇行状態に倣って(記録媒体の幅方向におけるエッジ位置の変位に応じて)、ヘッドを記録媒体の幅方向に移動させながら描画を行うため、記録媒体の蛇行に伴う印刷物の品質低下を防止することができる。また、具体的な処理としては、記録媒体の幅方向におけるエッジ位置の変位を検出し、その変位量に応じてヘッドを幅方向に移動させる、といった簡単な制御で良いため、複雑な演算処理を必要としない。これにより、能力の低い制御装置でも対応でき、ひいては描画装置導入の際のイニシャライズコストを抑えることができる。
【0009】
上記に記載の描画装置において、変位量検出手段は、ヘッドを搭載するキャリッジに設けられ、ヘッド位置制御手段は、変位量検出手段の検出結果が固定値となるようにヘッド移動手段を制御することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、例えば、記録媒体の幅方向におけるエッジ位置が変位量検出手段の基準位置に合うように(変位量検出手段の検出結果が0となるように)制御するなど、簡易な制御方法で、記録媒体の蛇行に伴う印刷物の品質低下を防止することができる。
【0011】
上記に記載の描画装置において、変位量検出手段は、ヘッドの上流側の記録媒体送り経路に臨むことが好ましい。
【0012】
この構成によれば、エッジ位置の変位を、ヘッドの手前で先読みすることができるため、変位量検出手段として応答性能の低い変位センサーを用いた場合でも、安定した制御を行うことができる。
【0013】
上記に記載の描画装置において、変位量検出手段によるエッジ位置の検出からヘッド移動手段によるヘッドの移動完了に至る時間と、エッジ位置の検出から当該エッジ位置がヘッドの直下に達する時間と、が合致するように変位量検出手段を配設したことが好ましい。
【0014】
この構成によれば、変位センサーの応答時間や駆動指令から実際にヘッドが移動するまでの指令遅延時間などを考慮して、変位量検出手段が配設されている(変位量検出手段とヘッド間の距離が定められている)ため、それらに時間を要する場合でも、支障なく、ヘッドを適正位置に移動させることができる。つまり、変位センサーの応答時間や指令遅延時間などに関わらず、正確な位置に描画を行うことができる。
【0015】
上記に記載の描画装置において、変位量検出手段の位置を、記録媒体の搬送方向に可変させるための検出位置可変手段をさらに備え、検出位置可変手段は、記録媒体送り手段の送り速度に応じて、変位量検出手段の位置を可変することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、記録媒体送り手段の送り速度に応じて、変位量検出手段の位置を可変するため、送り速度を任意に設定することができる。言い換えれば、送り速度に関わらず、正確な位置に描画を行うことができる。
【0017】
上記に記載の描画装置において、変位量検出手段は、エッジ位置の検出データーを所定の時間間隔で生成し、検出データーを複数記憶する検出データー記憶手段をさらに備え、ヘッド移動手段は、記録媒体送り手段の送り速度に応じて、検出データー記憶手段に記憶されている複数の検出データーの中から1の検出データーを抽出し、抽出した当該検出データーを用いて、ヘッド移動手段を制御することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、記録媒体送り手段の送り速度に応じて、複数の検出データーの中から適切な1の検出データーを抽出する(つまり、エッジ位置の検出からヘッドの移動完了に至る時間と、エッジ位置の検出から当該エッジ位置がヘッドの直下に達する時間と、が合致するように、検出データーを抽出する)ため、送り速度を任意に設定することができる。言い換えれば、送り速度に関わらず、正確な位置に描画を行うことができる。
【0019】
本発明のプログラムは、コンピューターを、上記に記載の描画装置における各手段として機能させることを特徴とする。
【0020】
このプログラムを用いることにより、複雑な演算処理を必要とすることなく、記録媒体の蛇行に伴う印刷物の品質低下を防止することができる描画装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態に係るインクジェット装置の正面図である。
【図2】装置本体の裏面斜視図である。
【図3】キャリッジユニットの正面図である。
【図4】ヘッドユニット廻りの断面図である。
【図5】印刷ヘッドの斜視図である。
【図6】ヘッドユニットの裏面図である。
【図7】ピニングユニットの斜視図である。
【図8】メンテナンス時(a)および印刷処理時(b)のメンテナンスユニットを示した側面図である。
【図9】メンテナンス時のキャリッジユニットおよびメンテナンスユニットを示した正面図(a)および断面図(b)である。
【図10】第1実施形態に係るY軸移動機構周りの概念図である。
【図11】第1実施形態に係るY軸移動機構に組み込まれた演算装置のブロック図である。
【図12】第1実施形態に係るヘッド移動制御の流れを示すフローチャートである。
【図13】第2実施形態に係るY軸移動機構周りの概念図である。
【図14】第2実施形態に係るY軸移動機構に組み込まれた演算装置のブロック図である。
【図15】指令遅延時間の概念図、およびその計算式を示す図である。
【図16】第2実施形態に係るヘッド移動制御の流れを示すフローチャートである。
【図17】第3実施形態に係るY軸移動機構周りの概念図である。
【図18】第3実施形態に係るセンサー移動制御およびヘッド移動制御の流れを示すフローチャートである。
【図19】第4実施形態に係るインクジェット装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る描画装置、描画装置の描画方法およびプログラムを適用したインクジェット装置について説明する。このインクジェット装置は、周方向に複数のインクジェットヘッドを配置したセンタードラム式の印刷装置であり、リールツーリールで供給した長尺の記録媒体に、UVインク(紫外線硬化型インク)を用いて印刷を実施する。記録媒体としては、例えばラベル用のフィルムや用紙等のシート状のものであって、各種幅および厚みの異なるものを印刷対象としている。まず、図1ないし図9を参照し、装置概要から説明する。なお、以降の説明では、図1において紙面を貫通する方向を前後とし、手前側を「前」、奥側を「後」とする。具体的には、後述する回転ドラム61の回転軸(ドラム軸62)の延在方向を前後とし、後述するドラムモーター64から回転ドラム61へ向かう方向を手前方向(手前側)、回転ドラム61からドラムモーター64へ向かう方向を奥方向(奥側)とする。また、記録媒体の搬送経路において、後述する媒体供給装置6側を「上流側」、後述する媒体回収装置7側を「下流側」とする。
【0023】
図1の全体図に示すように、インクジェット装置1は、インクジェット方式で記録媒体Aに印刷を行うセンタードラム式の装置本体2と、装置本体2に記録媒体Aを供給し且つ印刷済みの記録媒体Aを回収するリールツーリール方式の媒体供給・回収装置3と、これら構成装置を統括制御する制御装置(図示省略)と、を備えている。媒体供給・回収装置3は、装置本体2に記録媒体Aを供給する媒体供給装置6と、装置本体2から記録媒体Aを回収する媒体回収装置7と、を有している。一方、装置本体2および媒体供給・回収装置3に構成した記録媒体Aの媒体送り経路Lは、媒体供給装置6から装置本体2に至る供給送り経路L1と、装置本体2に構成した円に近い円弧状の印刷送り経路L2(記録媒体送り経路)と、装置本体2から媒体回収装置7に至る回収送り経路L3と、を有している。
【0024】
供給送り経路L1を介して、媒体供給装置6から繰り出すようにして供給された記録媒体Aは、装置本体2において印刷送り経路L2に沿って送られ、この部分で印刷に供される。また、印刷が完了した記録媒体Aは、回収送り経路L3を介して媒体回収装置7により巻き取るようにして回収される。
【0025】
媒体供給装置6は、ロール状に巻回した記録媒体Aを繰り出す繰出しリール11と、繰出しリール11を繰出し回転させる繰出しモーター(図示省略)と、繰出しリール11の下流側に配設され、記録媒体Aにフォワードテンションを付与するフォワードテンションユニット13と、フォワードテンションユニット13の下流側に配設され、記録媒体Aを幅方向に位置決めしつつ装置本体2に送り込むステアリングユニット14と、を備えている。また、繰出しリール11および繰出しモーターは、給紙ユニットフレーム15に支持され、一体の給紙ユニット16を構成している。さらに、フォワードテンションユニット13は、フォワードテンションフレーム17に支持され、ユニット化されている。
【0026】
制御装置により、装置本体2に同期して繰出しモーターを駆動すると、繰出しリール11から記録媒体Aが繰り出される。繰り出された記録媒体Aは、フォワードテンションユニット13により所定のテンションを付与されつつ、供給送り経路L1に沿って送られ、最終的に、ステアリングユニット14により幅方向の位置を矯正されつつ装置本体2に送り込まれる。なお、本実施形態のステアリングユニット14は、記録媒体Aの一方(奥側)の幅端を基準に装置本体2に送り込むようになっている。したがって、幅の異なる記録媒体Aを導入する場合も同様に、一方(奥側)の幅端が基準となる。もっとも、幅方向の中心を基準(センター基準)として、記録媒体Aを導入することも可能である。
【0027】
媒体回収装置7は、印刷済みの記録媒体Aをロール状に巻き取る巻取りリール21と、巻取りリール21を巻取り回転させる巻取りモーター(図示省略)と、巻取りリール21の上流側に配設され、記録媒体Aにバックテンションを付与するバックテンションユニット23と、バックテンションユニット23の上流側に配設され、装置本体2から送り出された記録媒体AがUターンして送られるように、回収送り経路L3を経路変更する折返しユニット25と、を備えている。この場合も、巻取りリール21および巻取りモーターは、排紙ユニットフレーム26に支持され、一体の排紙ユニット27を構成している。また、バックテンションユニット23は、バックテンションフレーム28に支持され、ユニット化されている。さらに、装置本体2と折返しユニット25との間には、回収送り経路L3に臨むように、後述する装置本体2のUV照射ユニット44および冷却ユニット45が配設されている。
【0028】
制御装置により、装置本体2に同期して巻取りモーターを駆動すると、記録媒体Aは、バックテンションユニット23により所定のテンションを付与されつつ、装置本体2から送り出され、回収送り経路L3に沿って送られてゆく。装置本体2から送り出された記録媒体Aは、先ずUV照射ユニット44を通過する。この通過過程で、UVインクは硬化する。続いて、折返しユニット25によりUターンした記録媒体Aは、バックテンションユニット23を経て、巻取りリール21に巻き取られる。なお、巻取りリール21に巻き取られた記録媒体Aは、別工程の装置に導入され、ラベルとして裁断され或いはラベル部分にハーフカットが施される。
【0029】
図1および図2に示すように、装置本体2は、大口径の回転ドラム61を有し、印刷送り経路L2に沿って記録媒体Aを送る媒体送り機構41(記録媒体送り手段)と、それぞれが複数の印刷ヘッド76を有し、印刷送り経路L2に臨むように、回転ドラム61に対し放射状に配設した複数のキャリッジユニット42と、複数のキャリッジユニット42に対応し、その背面側に配設した複数のメンテナンスユニット43と、上記の回収送り経路L3に臨み、記録媒体AのUVインクを硬化させる本硬化用のUV照射ユニット44と、UV照射ユニット44に対し記録媒体Aを挟んで対向配置され、UV照射ユニット44および記録媒体Aを冷却する冷却ユニット45と、を備えている。また、装置本体2は、全体としてチャンバー(図示省略)に覆われている。複数のキャリッジユニット42は、供給するUVインクの色別のユニットであり、全体として印刷手段48を構成している。
【0030】
図2に示すように、装置フレーム46は、機台となるベースフレーム51と、ベースフレーム51の後半部に立設したメインフレーム52と、メインフレーム52の前面に広く設けた板状のサブフレーム53と、サブフレーム53を介しメインフレーム52の前部に配設したチャンバーフレーム54と、を有している。
【0031】
メインフレーム52は、サブフレーム53を介して各種の構成装置を支持すると共に、回転ドラム61を主体とする媒体送り機構41を支持している。サブフレーム53は、前面側において、複数のキャリッジユニット42、UV照射ユニット44、冷却ユニット45等を支持し、背面側(後面側)において、複数のメンテナンスユニット43等を支持している。チャンバーフレーム54は、メインフレーム52前部の構成装置を覆うように形成されている。メインフレーム52およびチャンバーフレーム54が構成する各面には、それぞれ壁体(図示省略)が取り付けられており、これらによって装置本体2全体を覆うチャンバーを構成する。すなわち、装置本体2は、このチャンバーによって、その内部の温度および清浄度を管理している。なお、チャンバーフレーム54とベースフレーム51との間には、所定の間隙が設けられており、この間隙において記録媒体Aの給紙および排紙が行われる。
【0032】
媒体送り機構41は、横倒しの王冠状に形成された回転ドラム61と、ドラム軸62を介して回転ドラム61を片持ちで回転自在に支持する軸受け63と、回転ドラム61を一方向に低速回転させるドラムモーター64と、ドラム軸62とドラムモーター64との間に介設した動力伝達機構(図示省略)と、を有している。ドラムモーター64は、例えばサーボモーターで構成され、回転ドラム61の外周面における周速(印刷速度)が一定になるように、回転ドラム61を回転させる。
【0033】
回転ドラム61は、円筒状のドラム本体を備え、ドラム本体は、最大幅の記録媒体Aに対応する幅を有し、外周面には滑り止めとなる焼付け塗装が施されている。記録媒体Aは、滑り止め加工されたドラム本体の外周面に密着し、回転するドラム本体により円(円弧)を描くように送られる。すなわち、媒体供給装置6から送り込まれた記録媒体Aは、回転ドラム61により印刷送り経路L2に沿って送られる。そして、この送りに同期して印刷手段48が適宜駆動することにより、記録媒体Aに印刷が行われる。
【0034】
上述のように、印刷手段48は、回転ドラム61に対し放射状に配設した複数のキャリッジユニット42を備えている(図1参照)。複数のキャリッジユニット42は、インク色別のユニットであり、印刷送り経路L2の始端側から終端側に向って、ホワイト(W)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ライトシアン(Lc)、ライトマゼンタ(Lm)、ブラック(Bk)、クリアー1(CL1)、クリアー2(CL2)の順で、周方向にほぼ等間隔で配設されている。詳細は後述するが、各キャリッジユニット42には、複数の印刷ヘッド76が搭載され、この複数の印刷ヘッド76により、最大幅の記録媒体Aに対応するヘッド77が構成されている。このため、印刷送り経路L2に沿って印刷送りされてゆく記録媒体Aに、各色のヘッド77が順に臨むことになり、記録媒体Aに印刷データーに基づく所望のカラー印刷が行われる。なお、クリアー1(CL1)およびクリアー2(CL2)のインクは、主にコーティング用に用いられ、この場合にはベタ塗り印刷となる。
【0035】
図3および図4に示すように、各キャリッジユニット42は、上記のサブフレーム53に固定されたキャリッジベース81と、回転ドラム61の法線方向において、キャリッジベース81にスライド自在に支持された箱型フレーム形式のキャリッジ82と、キャリッジ82に装着され、複数の印刷ヘッド76を搭載したヘッドユニット83と、キャリッジ82を介してヘッドユニット83を記録媒体Aの幅方向に移動させるY軸移動機構90(図10等参照)と、キャリッジ82を介してヘッドユニット83を法線方向に進退させるZ軸移動機構84と、キャリッジ82に搭載され、複数の印刷ヘッド76に吐出波形を印加するヘッド制御基板モジュール(図示省略)と、を備えている。また、各キャリッジユニット42は、キャリッジ82に搭載され、記録媒体AのUVインクを仮硬化させるピニングユニット86と、支持金具を介してキャリッジ82の外側面に支持され、複数の印刷ヘッド76にUVインクを供給するサブタンクユニット(図示省略)と、を備えている。なお、他の部材が回転ドラム61の法線方向に合わせた姿勢で支持されるのに対し、サブタンクユニットは、支持金具により、いずれも直立姿勢(UVインクの排出口が鉛直方向下を向く姿勢)で支持されている。
【0036】
また、詳細については後述するが、Y軸移動機構90には、記録媒体Aの蛇行状態を検出する変位センサー100(変位量検出手段)が含まれる。当該変位センサー100は、印刷送り経路L2上を蛇行しながら送られてゆく記録媒体Aのエッジ位置の変位量を検出するものであり、Y軸移動機構90は、当該変位センサー100の検出結果に基づいて、印刷位置を補償すべく、キャリッジ82(ヘッドユニット83)の幅方向における位置を制御する。
【0037】
ところで、実施形態のUVインクは、その粘性が、高い温度依存性(温度が高くなると粘性が低下する)を有している。このため、図示では省略したが、上記のサブタンクユニット、複数の印刷ヘッド76およびサブタンクユニットから複数の印刷ヘッド76に至るインク流路(主チューブ、マニホールド、個別チューブ)は、ヒーターにより被覆されている。例えば、UVインクを40℃程度に昇温して吐出する。
【0038】
図5に示すように、各印刷ヘッド76は、2インチのインクジェットヘッドで構成されており、そのノズル面91に相互に並行な複数の吐出ノズル92から成る2列のノズル列93を有している。この場合、2列のノズル列93は、ノズル列方向に1/2ノズルピッチ位置ズレして配設されている。
一方、図4および図6に示すように、ヘッドユニット83は、キャリッジ82に対し前方から着脱自在に装着されている。ヘッドユニット83は、ヘッドプレート94と、ヘッドプレート94に支持されると共に、それぞれが回転ドラム61の接線に対し並行になるように山形に連ねた一対のサブプレート95と、一対のサブプレート95に2分して搭載された複数の印刷ヘッド76(実施形態のものは、7個+7個)と、を備えている。
【0039】
この場合、各サブプレート95に搭載された複数の印刷ヘッド76(7個)は、いずれもノズル列93が前後方向に向く姿勢で、且つ前後方向において千鳥に配設されている。また、一方のサブプレート95に搭載された複数の印刷ヘッド76と、他方のサブプレート95に搭載された複数の印刷ヘッド76とは、前後方向(ノズル列方向)に1/4ノズルピッチ位置ズレして配設されている。これにより、ヘッドプレート94に搭載した全印刷ヘッド76により、前後方向(記録媒体Aの幅方向)に延在するラインヘッドとしてのヘッド77、すなわち最大幅の記録媒体Aに対応する1/4ノズルピッチのヘッド77が構成されている。これにより、高解像度の印刷が可能となる。
【0040】
図7に示すように、ピニングユニット86は、記録媒体AのUVインクを仮硬化させる仮硬化UVランプ98と、仮硬化UVランプ98に添設したダクト接続のミスト吸引口99と、を有している。仮硬化UVランプ(ランプアレイ)98およびミスト吸引口(スリット吸引口)99は、相互に並行に且つ前後方向に延在し、上記のヘッド77に対し、ほぼ同じ長さに且つ前後方向に同位置に配設されている。また、複数の印刷ヘッド76(ヘッド77)、ミスト吸引口99、仮硬化UVランプ98は、記録媒体Aの送り方向においてこの順で配設されており、印刷ヘッド76から吐出されたUVインクのミストをミスト吸引口99で吸引し、記録媒体Aに着弾したUVインクを仮硬化UVランプ98で仮硬化させる。これにより、仮硬化UVランプ98へのミストの付着を防止し、且つ混色が生じない程度にUVインクを硬化させることができる。なお、複数のキャリッジユニット42のおけるインク色別の順は、色別のUVインクにおける硬化し難い順となっている。すなわち、ホワイト(W)が最も硬化し難く、クリアー2(CL2)が最も硬化し易くなっている。
【0041】
図2に示すように、各メンテナンスユニット43は、上記のサブフレーム53を隔てて、対応するキャリッジユニット42の前後方向の延長上に配設されている。図8および図9に示すように、メンテナンスユニット43は、複数の印刷ヘッド76のノズル面91に臨んでメンテナンスを実施するユニット本体(図示省略)が搭載されたメンテナンスキャリッジ102と、メンテナンスキャリッジ102を介してユニット本体をホーム位置とメンテナンス位置との間で前後方向に移動させるメンテナンス移動機構103と、を備えている。印刷ヘッド76の捨て吐出(フラッシング)や吸引等のメンテナンスを行うときには、ユニット本体は前方のメンテナンス位置に移動し印刷ヘッド76に臨む(図8(a)および図9参照)。一方、記録媒体Aに印刷処理が実施されているときには、ユニット本体は後方のホーム位置で待機している(図8(b)参照)。なお、これに対し、ヘッドユニット83(キャリッジ82)は、印刷処理を実施するときには、Z軸移動機構84によって法線方向内側の描画位置に移動し、メンテナンスを行うときには、Z軸移動機構84によって法線方向外側のメンテナンス位置に移動する。すなわち、印刷処理時には、ヘッドユニット83とユニット本体とが前後に直列に位置し、メンテナンス時には、ヘッドユニット83とユニット本体とが回転ドラム61の法線方向に並列に位置する。
【0042】
ユニット本体は、例えば、印刷ヘッド76のノズル面91を払拭するワイピング機構と、ノズル面91の封止、捨て吐出の受容およびノズル吸引を行う吸引機構と、を有している。ユニット本体を移動させるメンテナンス移動機構103は、片持ち状態でサブフレーム53に固定したブラケットフレーム113と、ブラケットフレーム113とキャリッジユニット42との間に渡した一対のガイドレール114と、一対のガイドレール114に沿ってメンテナンスキャリッジ102を前後方向に移動させるローターアクチュエーター117と、有している。
なお、サブフレーム53には、メンテナンスキャリッジ102を通過させるためのメンテナンス開口53aが形成されている(図2参照)。
【0043】
図1に示すように、UV照射ユニット44は、UVランプで構成されており、回収送り経路L3上の記録媒体Aに下側(記録媒体Aの印刷面側)から臨み、記録媒体Aに着弾したUVインクを本硬化させる。なお、UV照射ユニット44には、UVランプおよび記録媒体Aを冷却するための吸引ファンが搭載されている。
【0044】
冷却ユニット45は、回収送り経路L3上の記録媒体Aに上側から臨み、記録媒体Aを挟んでUV照射ユニット44に対向配置されている。冷却ユニット45は、エアー吸引口および吸引ファンを備え、上記UVランプおよび記録媒体Aを冷却する。
【0045】
次に、図10ないし図12を参照し、第1実施形態に係るヘッド移動制御について説明する。図10は、第1実施形態に係るY軸移動機構90周りの概念図である。上記のとおり、Y軸移動機構90は、印刷送り経路L2を送られてゆく記録媒体Aの蛇行に倣って、ヘッドユニット83(ヘッド77)を記録媒体Aの幅方向に移動させる機構であり、ヘッドユニット83の移動をガイドするガイド軸121と、ガイド軸121に構成されたボールねじ122と、ヘッドユニット83を記録媒体Aの幅方向に移動させるためのサーボモーター123(ヘッド移動手段)と、記録媒体Aの幅方向におけるエッジ位置の変位量を検出する変位センサー100と、を備えている。なお、ガイド軸121を設けるのではなく、キャリッジ82をキャリッジベース81に対してスライドさせるためのスライドガイドを利用して、ヘッドユニット83を記録媒体Aの幅方向に移動させる構成としても良い。また、ヘッドユニット83には、実際には、合計14個の印刷ヘッド76が設けられているが(図6参照)、同図以降では、簡略化して図示するものとする。
【0046】
変位センサー100は、LEDを光源とし、有効検出範囲(CCDの操作範囲)が5mm〜15mm、投受光間距離が50mm〜100mm、測定精度が略±0.5μm、サンプリング回数が略2400回/秒のものを用いる。また、変位センサー100は、ヘッドユニット83が装着されたキャリッジ82の手前側端部に設けられ、キャリッジ82(ヘッドユニット83)の移動に伴って、幅方向に移動する。したがって、変位センサー100は、ヘッドユニット83の直下における記録媒体Aの変位量を検出することとなり、Y軸移動機構90は、変位センサー100の検出結果である変位量が常に「0(ゼロ)」となるように、ヘッドユニット83を移動させる。なお、種々の幅サイズの記録媒体Aに対応できるように、変位センサー100は、ヘッドユニット83が装着されたキャリッジ82の奥側端部(基準位置側)に設けるようにしても良い。また、以下の説明において、「蛇行量」とは、記録媒体Aの手前側端部の、基準線Bからのずれ量を指すものとする。なお、基準線Bを基準位置側に設け、記録媒体Aの奥側端部からのずれ量を「蛇行量」としても良い。さらに、「変位量」とは、変位センサー100の中心値からのずれ量を指すものとする。
【0047】
図11は、第1実施形態に係るY軸移動機構90に組み込まれた演算装置200(ヘッド位置制御手段)のブロック図である。ここでは、サーボモーター123の速度制御によりヘッド移動制御を行うものとして説明する。この場合、演算装置200には、位置制御回路210と、速度制御回路220と、が含まれる。また、演算装置200とサーボモーター123との間には、電力変換装置230が設けられ、さらにサーボモーター123には、位置および回転速度を検出するためのエンコーダー250が外付けされている。なお、演算装置200は、上記の制御装置(インクジェット装置1を統括制御する制御装置)に接続されるか、上記の制御装置の一部として機能する。
【0048】
図12は、第1実施形態に係るヘッド移動制御の流れを示すフローチャートである。Y軸移動機構90は、変位センサー100により、記録媒体Aの幅方向における変位量を検出する(S01)。演算装置200は、変位センサー100の検出データー(変位量)を取得すると(S02)、図11の点線枠内に示した位置ループにより、位置指令値を速度指令値に変換し(S03)、電力変換装置230により、速度指令値にしたがって、サーボモーター123を駆動する(S04)。以上S01〜S04は、描画処理が行われている間、所定の時間間隔で繰り返される。つまり、演算装置200は、記録媒体Aの蛇行状態に倣って、ヘッドユニット83が記録媒体Aの適正位置に臨むように、サーボモーター123の駆動制御を行う。
【0049】
以上説明したとおり、第1実施形態に係るヘッド移動制御によれば、記録媒体Aの蛇行状態に倣って、ヘッドユニット83を記録媒体Aの幅方向に移動させながら描画を行うため、記録媒体Aの蛇行に伴う印刷物(ラベル)の品質低下を防止することができる。また、具体的な処理としては、記録媒体Aの幅方向におけるエッジ位置の変位を検出し、当該検出結果に基づいてヘッドユニット83を幅方向に移動させる、といった簡単な制御で良いため、複雑な演算処理を必要としない。これにより、能力の低い制御装置でも対応でき、ひいてはインクジェット装置1を導入する際のイニシャライズコストを抑えることができる。
【0050】
さらに、本実施形態のY軸移動機構90は、ヘッドユニット83を搭載するキャリッジ82に変位センサー100を設けているため、変位センサー100の検出結果である変位量が常に0となるように制御すれば良く、演算装置200の制御負荷をより軽減することができる。
【0051】
なお、上記の例では、ヘッド移動制御を、サーボモーター123による速度制御により行うものとしたが、位置制御やトルク制御、またはパルスモーターによるステップ駆動制御を採用しても良い。また、ヘッドユニット83の移動方法は、上記のボールねじ機構に限らず、ベルト駆動機構やカム機構など、モーターの運動を水平運動に変換可能な機構であれば、その種類を問わない。また、変位センサー100についても、LED CCD式ではなく、レーザー式や超音波式など、他方式のセンサーを採用しても良い。
【0052】
[第2実施形態]
次に、図13ないし図16を参照し、第2実施形態に係るヘッド移動制御について説明する。上記の第1実施形態では、ヘッドユニット83を搭載するキャリッジ82に変位センサー100を設けるものとしたが、本実施形態では、ヘッドユニット83とは独立して配設する点で異なる。以下、第1実施形態と異なる点のみ説明する。なお、本実施形態において、第1実施形態と同様の構成部分については同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、第1実施形態と同様の構成部分について適用される変形例は、本実施形態についても同様に適用される。
【0053】
図13は、第2実施形態に係るY軸移動機構90周りの概念図である。同図に示すとおり、本実施形態では、記録媒体Aの変位量を検出するための変位センサー100を、ヘッドユニット83の上流側に固定配置している。これにより、記録媒体Aの変位量を先読みすることができるため、変位センサー100の応答性能が低い場合でも(変位センサー100の検出から、実際のヘッドユニット83の移動までに時間を要する場合でも)、安定したヘッド移動制御が可能となる。なお、説明の便宜上、変位センサー100とヘッドユニット83間の距離(記録媒体Aの搬送方向における距離)を「センサーヘッド間距離Lsh」、記録媒体Aの送り速度を「搬送速度Vm」であるものとする。
【0054】
なお、種々の幅サイズの記録媒体Aに対応できるように、変位センサー100は、幅方向にその配置位置を調整できるようにしても良い。さらにこの場合、記録媒体Aの幅サイズに応じて、変位センサー100の幅方向における配置位置を可変できるようにしても良い。
【0055】
図14は、第2実施形態に係るY軸移動機構90に組み込まれた演算装置200のブロック図である。本実施形態において、演算装置200は、記録媒体Aのエッジ位置の検出データーをサンプリング時間毎に(所定の時間間隔で)生成する(変位量検出手段)。また、演算装置200は、生成した当該検出データーを、複数記憶する記憶装置240(検出データー記憶手段)を有している。同図の例では、変位量が「1.000mm」、「1.005mm」、「1.010mm」・・・「1.500mm」・・・と変動した場合の検出データーの記録結果を示している。なお、これらの値は、変位センサー100の基準位置(中心位置)からの距離を示している。
【0056】
ところで、本実施形態の場合、センサーヘッド間距離Lshが存在するため、変位センサー100の検出タイミングに対し、サーボモーター123の指令タイミングを調整する(遅らせる)必要がある。そこで、このタイミング調整について、図15を参照して説明する。同図(a)は、プロセス時間(印刷時間)を横軸とし、変位センサー100による変位量の検出タイミング、変位センサー100の出力タイミング、サーボモーター123に対する位置指令タイミング、を示したものである。また、四角形のセルは、検出された変位量を示し、斜線矢印は、プロセス時間と共に記録媒体Aが変位し、サンプリング時間毎に値が更新されてゆく様子を示したものである。
【0057】
ここで、変位センサー100の出力特性として、値が更新されるサンプリング時間がTs、変位センサー100の検出(測定)から出力までに要するセンサー応答時間がTrであると仮定する。また、上記のとおり、センサーヘッド間距離がLsh、記録媒体Aの搬送速度がVmであるものとする。この場合、センサーヘッド間距離Lshおよび搬送速度Vmから、ある変位が変位センサー100の直下を通過した瞬間から、ヘッドユニット83の搬送方向における基準位置(例えば、中心位置)の直下に到達する時間Tmは、図15(b)の式(1)に示すとおり、Tm=Lsh/Vmである。また、ある変位が、ヘッド直下に到達したときに、その変位を打ち消すようにヘッドユニット83を移動させるためには、同図の式(2)に示すとおり、センサー応答時間Trを考慮して、指令遅延時間To=Tm−Trだけ遅らせる必要がある。したがって、本実施形態では、記憶装置240内に記憶されている複数の検出データー(図14参照)のうち、指令遅延時間To前に検出された検出データー(同図の例では、「1.500mm」)を用いて位置指令することとなる。
【0058】
但し、実際には、使用するモーターの応答性や、演算装置200の入出力の応答性などにより、上記のように算定した指令遅延時間Toを参考値として、演算装置200内に設ける遅延時間のチューニングを行う。
【0059】
図16は、第2実施形態に係るヘッド移動制御の流れを示すフローチャートである。Y軸移動機構90は、変位センサー100により、記録媒体Aの幅方向における変位量を検出する(S11)。演算装置200は、変位センサー100の検出データー(変位量)を取得し、記憶装置240内に、時系列にしたがって、これを記録する(S12)。一方、演算装置200は、搬送速度Vmに応じて(図15(b)の式(1),(2)にしたがって)、記憶装置240に記憶した検出データーの中から、指令遅延時間To分ずらした値を参照し(S13)、参照した検出データーを位置指令値として取得する(S14)。その後、図14の点線枠内に示した位置ループにより、位置指令値を速度指令値に変換し(S15)、電力変換装置230により、速度指令値にしたがって、サーボモーター123を駆動する(S16)。以上S11〜S16は、描画処理が行われている間、所定の時間間隔で繰り返される。
【0060】
以上説明したとおり、第2実施形態に係るヘッド移動制御によれば、変位センサー100を、ヘッドユニット83の上流側に配設したため、記録媒体Aの変位量を先読みすることができ、応答性能の低い変位センサー100を用いた場合でも、安定した制御を行うことができる。つまり、第1実施形態の場合は、変位センサー100の応答性が悪い場合、高速な位置決めができない、またはフィードバックループの中に大きな遅延が生じることになり、制御中に発振する恐れがあるが、第2実施形態では、これらの問題を解消することができる。
【0061】
また、変位センサー100の検出データーを複数記憶しておき、記録媒体Aの搬送速度Vmに応じて、適切な検出データーを抽出し、抽出した当該検出データーを用いて、ヘッドユニット83を移動させるため、搬送速度Vmを任意に設定することができる。言い換えれば、搬送速度Vmに関わらず、正確な位置に描画を行うことができる。
【0062】
なお、上記の例では、センサーヘッド間距離Lshを基準として指令遅延時間Toを算出し、記憶装置240に記憶した検出データーの中から、指令遅延時間To分ずらした値を参照したが、送り速度Vmが一定の場合、記憶装置240を有しない構成とすることも可能である。この場合、センサー応答時間Trや指令遅延時間Toを考慮して、センサーヘッド間距離Lshを設定すれば良い。つまり、図15(b)の式(3)に示すように、センサーヘッド間距離Lsh=Vm×(To+Tr)となる位置に、変位センサー100を配置すれば良い。この構成によれば、センサー応答時間Trや指令遅延時間Toを考慮して、変位センサー100が配設されている(センサーヘッド間距離Lshが定められている)ため、それらに時間を要する場合でも、支障なく、ヘッドユニット83を適正位置に移動させることができる。つまり、センサー応答時間Trや指令遅延時間Toに関わらず、正確な位置に描画を行うことができる。
【0063】
[第3実施形態]
次に、図17および図18を参照し、第3実施形態に係るヘッド移動制御について説明する。上記の第2実施形態では、変位センサー100を固定配置するものとしたが、本実施形態では、変位センサー100の位置を可変可能とした点で異なる。以下、第2実施形態と異なる点のみ説明する。なお、本実施形態において、上記の各実施形態と同様の構成部分については同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、上記の各実施形態と同様の構成部分について適用される変形例は、本実施形態についても同様に適用される。
【0064】
図17は、第3実施形態に係るY軸移動機構90周りの概念図である。同図に示すとおり、本実施形態のY軸移動機構90は、変位センサー100を、記録媒体Aの搬送方向(長手方向)に移動させるための変位センサー移動機構400(検出位置可変手段)を備えている。変位センサー移動機構400は、変位センサー移動機構400を制御するセンサー位置可変制御装置410と、電力変換装置420と、変位センサー100の移動をガイドするガイド軸431と、ガイド軸431に構成されたボールねじ432と、変位センサー100を記録媒体Aの搬送方向に移動させるためのサーボモーター433と、を備えている。
【0065】
本実施形態においては、センサー応答時間Trや指令遅延時間Toを考慮して、変位センサー移動機構400を制御すれば良い。つまり、図15(b)の式(3)に示すように、センサーヘッド間距離Lsh=Vm×(To+Tr)となる位置に、変位センサー100を移動させれば良い。
【0066】
なお、変位センサー100の移動制御は、サーボモーターによる速度制御、位置制御、トルク制御、またはパルスモーターによるステップ駆動制御など、を採用可能であり、詳細な説明を省略する。また、変位センサー100の移動機構は、上記のボールねじ機構に限らず、ベルト駆動機構やカム機構など、モーターの運動を水平運動に変換可能な機構であれば、その種類を問わない。また、ヘッドユニット83をY軸方向に移動させるための演算装置200のブロック図についても、図11や図14と略同様であるため、図示および説明を省略する。
【0067】
図18は、第3実施形態に係るセンサー移動制御およびヘッド移動制御の流れを示すフローチャートである。センサー位置可変制御装置410は、ユーザーが所定の操作手段を用いて搬送速度Vmを設定すると(S21)、サーボモーター433を駆動して、当該搬送速度Vmにより決定される位置(図15(b)の式(3)で求められる位置)に変位センサー100を移動させる(S22)。
【0068】
その後、変位センサー100により、記録媒体Aの幅方向における変位量を検出すると(S23)、ヘッドユニット83をY軸方向に移動させるための演算装置200は、変位センサー100の検出データー(変位量)を位置指令値として取得する(S24)。また、図11や図14に示した位置ループにより、位置指令値を速度指令値に変換し(S25)、電力変換装置230により、速度指令値にしたがって、サーボモーター123を駆動する(S26)。以上S23〜S26は、描画処理が行われている間、所定の時間間隔で繰り返される。
【0069】
以上説明したとおり、第3実施形態に係るヘッド移動制御によれば、変位センサー100の位置を、記録媒体Aの搬送方向に移動させるための変位センサー移動機構400を備えているため、第2実施形態のように記憶装置240を必要とすることなく、搬送速度Vmを任意に設定することができる。
【0070】
なお、上記の例では、ユーザーが設定した搬送速度Vmに応じて変位センサー100の位置を移動し、描画処理中は、その位置が固定されたままであるものとしたが、何らかの原因で搬送速度Vmが変化する可能性がある場合、搬送速度Vmの変化に応じて、変位センサー100の搬送方向における位置を微妙に移動させ得るようにしても良い。この構成によれば、描画処理中に搬送速度Vmが可変する場合でも、常に適切な位置に変位センサー100を配置させておくことができ、ひいては、正確な位置に描画を行うことができる。
【0071】
[第4実施形態]
次に、図19を参照し、第4実施形態について説明する。上記の第1実施形態では、円弧状の印刷送り経路L2を有するインクジェット装置1を例示したが、本実施形態では、水平に且つ直線状に延在した媒体送り経路L5を有するインクジェット装置501を例示する。以下、第1実施形態と異なる点のみ説明する。なお、本実施形態において、上記の各実施形態と同様の構成部分については、詳細な説明を省略する。また、上記の各実施形態と同様の構成部分について適用される変形例は、本実施形態についても同様に適用される。
【0072】
本実施形態に係るインクジェット装置501は、インクジェット方式で記録媒体Aに印刷を行うセル形式の装置本体502と、装置本体502に記録媒体Aを供給し且つ印刷済みの記録媒体Aを回収するリールツーリール方式の媒体供給・回収装置503と、これらの構成装置を統括制御する制御装置(図示省略)と、を備えている。媒体供給・回収装置503は、第1実施形態と同様に、装置本体502に記録媒体Aを供給する媒体供給装置505と、装置本体502から記録媒体Aを回収する媒体回収装置506と、を有している。そして、媒体供給装置505から媒体回収装置506に至る記録媒体Aの媒体送り経路L5は、装置本体502を縦断するように水平に且つ直線状に延在している。
【0073】
装置本体502は、2つの記録ユニット511を1組とする記録セル510を、記録媒体Aの送り方向に2つ直列に並べて構成されている。すなわち、記録セル510は、インク色の異なる2つの記録ユニット511を共通の機台520に搭載して構成されており、装置本体502は、この記録セル510の単位としてこれを1以上組み合わせて(増設)構成されている。また、UV照射ユニット540も、専用の機台550に搭載され、1のセルとして装置本体502の一部を構成している。
【0074】
各記録ユニット511は、第1実施形態と同様のキャリッジユニット512と、これに対応するメンテナンスユニット(図示省略)と、記録媒体AのUVインクを仮硬化させるピニングユニット513と、電装品を格納した電装ユニット514と、個別の媒体送り機構515と、を有しており、これら各機構を個別のチャンバー518に収容した状態で、機台520に搭載されている。そして、キャリッジユニット512は、第1実施形態と同様に、キャリッジと、キャリッジに装着され、複数の印刷ヘッドを搭載したヘッドユニットと、キャリッジを介してヘッドユニットを記録媒体Aの幅方向に移動させるY軸移動機構と、キャリッジを介してヘッドユニットを昇降させるZ軸移動機構と、複数の印刷ヘッドに吐出波形を印加するヘッド制御基板モジュールと、複数の印刷ヘッドにUVインクを供給するサブタンクユニットと、を備えている(いずれも、図示省略)。そして、この場合も、複数の印刷ヘッドにより、最大幅の記録媒体Aに対応するヘッドが構成されている。
【0075】
一方、各媒体送り機構515は、ベルトコンベアー形式のものであり、一対のベルトプーリー521と、一対のベルトプーリー521間に掛け渡した無端のコンベアーベルト522と、一方のベルトプーリー521を回転させるモーター(図示省略)と、を有している。コンベアーベルト522には、多数の吸着孔が形成される一方、コンベアーベルト522の内側空間には、図外の真空吸引設備に連通するエアー室523が配設されている。すなわち、周回するコンベアーベルト522は、その上辺において、記録媒体Aを吸着して送るようになっている。
【0076】
上述のように、媒体送り経路L5は、装置本体502を縦断するように直線状に延在しており、複数の記録ユニット511にそれぞれ設けた複数の媒体送り機構515は、媒体送り経路L5に沿って直列に列設されている。制御装置は、これら複数(4つ)の媒体送り機構515を同期して駆動することで、記録媒体Aを送り、併せて複数の記録ユニット511における各印刷ヘッド(ヘッド)を駆動することにより、印刷を実施する。
【0077】
なお、第4本実施形態においても、ステアリングユニット等により、記録媒体Aの一方(奥側)の幅端を基準に装置本体502に送り込むようになっている。したがって、幅の異なる記録媒体Aを導入する場合も同様に、一方(奥側)の幅端が基準となって送られる。
【0078】
また、第4本実施形態においても、変位センサー(図示省略)を設け、当該変位センサーの検出結果に応じて、Y軸移動機構を駆動させることとなる。この場合、変位センサーの設置位置については、第1実施形態〜第3実施形態を適用可能である。また、第2実施形態または第3実施形態を適用する場合(変位センサーを、ヘッドユニットの上流側に設ける場合)、変位センサーは、記録セル510毎に設けても良いし、記録ユニット511毎に設けても良い。すなわち、前者の場合、1の変位センサーの検出結果に応じて、2つのキャリッジユニット512(ヘッドユニット)の幅方向における位置制御を行うこととなり、後者の場合、1の変位センサーの検出結果に応じて、1つのキャリッジユニット512(ヘッドユニット)の幅方向における位置制御を行うこととなる。
【0079】
以上説明したとおり、第4実施形態によれば、媒体送り経路L5が、水平に且つ直線状に延在しているインクジェット装置501に、上記の各実施形態に示したヘッド移動制御を適用することができる。また、このような形状の媒体送り経路L5の場合、記録媒体Aの蛇行量が大きくなることが想定されるため、本発明を適用することで、より高い効果を得ることができる。
【0080】
なお、上記に示したインクジェット装置1,501(特に、演算装置200)の各構成要素をプログラムとして提供することが可能である。また、そのプログラムを各種記録媒体(CD−ROM、フラッシュメモリ等)に格納して提供することも可能である。すなわち、コンピューターをインクジェット装置1,501の各構成要素として機能させるためのプログラム、およびそれを記録した記録媒体も、本発明の権利範囲に含まれるものである。
【0081】
また、上記の実施形態では、本発明の描画装置を、インクジェット装置1,501に適用した場合を例示したが、他の印刷方式の描画装置に適用しても良い。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1,501…インクジェット装置 2…装置本体 3…媒体供給・回収装置 6…媒体供給装置 7…媒体回収装置 76…印刷ヘッド 83…ヘッドユニット 90…Y軸移動機構 100…変位センサー 121…ガイド軸 122…ボールねじ 123…サーボモーター 200…演算装置 230…電力変換装置 250…エンコーダー 400…変位センサー移動機構 410…センサー位置制御装置 420…電力変換装置 431…ガイド軸 432…ボールねじ 433…サーボモーター A…記録媒体
【技術分野】
【0001】
送られてゆく記録媒体にヘッドを臨ませ、当該ヘッドにより記録媒体に描画を行なう描画装置、描画装置の描画方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、幅方向に蛇行した状態で送られてゆく記録媒体(印刷媒体)に対し、正確な位置に描画を行う(インクを着弾させる)ため、記録媒体の蛇行状態を検出し、検出された蛇行状態に応じて描画データー(印刷データー)を補正する印刷装置が知られている(例えば、特許文献1)。この印刷装置は、無端ベルトの蛇行状態を検出し、当該蛇行状態に基づいて記録媒体の蛇行量を算出する。さらに、算出した当該蛇行量に基づいて描画データーをシフト補正し、補正後の当該描画データーに基づいて印刷ヘッドを駆動させる。これにより、記録媒体の蛇行に伴う印刷物の品質低下(印刷画像の乱れ)を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2005/097510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記のように、描画データーの補正によって、印刷位置を補償する印刷装置の場合、蛇行量を算出したりシフト補正したりするための処理演算量が多くなり、制御負荷が大きくなる問題があった。また、この制御負荷は、印刷物の解像度が高くなるほど大きくなるため、印刷物の品質に応じて処理能力の高い制御装置が必要となる。その結果、印刷装置導入の際のイニシャライズコストが高くなるといった問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑み、複雑な演算処理を必要とすることなく、記録媒体の蛇行に伴う印刷物の品質低下を防止することができる描画装置、描画装置の描画方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の描画装置は、記録媒体送り経路に沿って記録媒体を送る記録媒体送り手段と、送られてゆく記録媒体に臨み、記録媒体に印刷を行うヘッドと、ヘッドを記録媒体の幅方向に移動させるヘッド移動手段と、記録媒体送り経路に臨み、記録媒体の幅方向におけるエッジ位置の変位量を検出する変位量検出手段と、変位量検出手段の検出結果に基づいて、ヘッドが幅方向における記録媒体の適正位置に臨むようにヘッド移動手段を制御するヘッド位置制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の描画装置の描画方法は、幅方向に蛇行した状態で送られてゆく記録媒体にヘッドを臨ませ、当該ヘッドにより記録媒体に描画を行なう描画装置の描画方法であって、蛇行状態に倣って、ヘッドを記録媒体の幅方向に移動させながら描画を行うことを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、記録媒体の蛇行状態に倣って(記録媒体の幅方向におけるエッジ位置の変位に応じて)、ヘッドを記録媒体の幅方向に移動させながら描画を行うため、記録媒体の蛇行に伴う印刷物の品質低下を防止することができる。また、具体的な処理としては、記録媒体の幅方向におけるエッジ位置の変位を検出し、その変位量に応じてヘッドを幅方向に移動させる、といった簡単な制御で良いため、複雑な演算処理を必要としない。これにより、能力の低い制御装置でも対応でき、ひいては描画装置導入の際のイニシャライズコストを抑えることができる。
【0009】
上記に記載の描画装置において、変位量検出手段は、ヘッドを搭載するキャリッジに設けられ、ヘッド位置制御手段は、変位量検出手段の検出結果が固定値となるようにヘッド移動手段を制御することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、例えば、記録媒体の幅方向におけるエッジ位置が変位量検出手段の基準位置に合うように(変位量検出手段の検出結果が0となるように)制御するなど、簡易な制御方法で、記録媒体の蛇行に伴う印刷物の品質低下を防止することができる。
【0011】
上記に記載の描画装置において、変位量検出手段は、ヘッドの上流側の記録媒体送り経路に臨むことが好ましい。
【0012】
この構成によれば、エッジ位置の変位を、ヘッドの手前で先読みすることができるため、変位量検出手段として応答性能の低い変位センサーを用いた場合でも、安定した制御を行うことができる。
【0013】
上記に記載の描画装置において、変位量検出手段によるエッジ位置の検出からヘッド移動手段によるヘッドの移動完了に至る時間と、エッジ位置の検出から当該エッジ位置がヘッドの直下に達する時間と、が合致するように変位量検出手段を配設したことが好ましい。
【0014】
この構成によれば、変位センサーの応答時間や駆動指令から実際にヘッドが移動するまでの指令遅延時間などを考慮して、変位量検出手段が配設されている(変位量検出手段とヘッド間の距離が定められている)ため、それらに時間を要する場合でも、支障なく、ヘッドを適正位置に移動させることができる。つまり、変位センサーの応答時間や指令遅延時間などに関わらず、正確な位置に描画を行うことができる。
【0015】
上記に記載の描画装置において、変位量検出手段の位置を、記録媒体の搬送方向に可変させるための検出位置可変手段をさらに備え、検出位置可変手段は、記録媒体送り手段の送り速度に応じて、変位量検出手段の位置を可変することが好ましい。
【0016】
この構成によれば、記録媒体送り手段の送り速度に応じて、変位量検出手段の位置を可変するため、送り速度を任意に設定することができる。言い換えれば、送り速度に関わらず、正確な位置に描画を行うことができる。
【0017】
上記に記載の描画装置において、変位量検出手段は、エッジ位置の検出データーを所定の時間間隔で生成し、検出データーを複数記憶する検出データー記憶手段をさらに備え、ヘッド移動手段は、記録媒体送り手段の送り速度に応じて、検出データー記憶手段に記憶されている複数の検出データーの中から1の検出データーを抽出し、抽出した当該検出データーを用いて、ヘッド移動手段を制御することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、記録媒体送り手段の送り速度に応じて、複数の検出データーの中から適切な1の検出データーを抽出する(つまり、エッジ位置の検出からヘッドの移動完了に至る時間と、エッジ位置の検出から当該エッジ位置がヘッドの直下に達する時間と、が合致するように、検出データーを抽出する)ため、送り速度を任意に設定することができる。言い換えれば、送り速度に関わらず、正確な位置に描画を行うことができる。
【0019】
本発明のプログラムは、コンピューターを、上記に記載の描画装置における各手段として機能させることを特徴とする。
【0020】
このプログラムを用いることにより、複雑な演算処理を必要とすることなく、記録媒体の蛇行に伴う印刷物の品質低下を防止することができる描画装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態に係るインクジェット装置の正面図である。
【図2】装置本体の裏面斜視図である。
【図3】キャリッジユニットの正面図である。
【図4】ヘッドユニット廻りの断面図である。
【図5】印刷ヘッドの斜視図である。
【図6】ヘッドユニットの裏面図である。
【図7】ピニングユニットの斜視図である。
【図8】メンテナンス時(a)および印刷処理時(b)のメンテナンスユニットを示した側面図である。
【図9】メンテナンス時のキャリッジユニットおよびメンテナンスユニットを示した正面図(a)および断面図(b)である。
【図10】第1実施形態に係るY軸移動機構周りの概念図である。
【図11】第1実施形態に係るY軸移動機構に組み込まれた演算装置のブロック図である。
【図12】第1実施形態に係るヘッド移動制御の流れを示すフローチャートである。
【図13】第2実施形態に係るY軸移動機構周りの概念図である。
【図14】第2実施形態に係るY軸移動機構に組み込まれた演算装置のブロック図である。
【図15】指令遅延時間の概念図、およびその計算式を示す図である。
【図16】第2実施形態に係るヘッド移動制御の流れを示すフローチャートである。
【図17】第3実施形態に係るY軸移動機構周りの概念図である。
【図18】第3実施形態に係るセンサー移動制御およびヘッド移動制御の流れを示すフローチャートである。
【図19】第4実施形態に係るインクジェット装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る描画装置、描画装置の描画方法およびプログラムを適用したインクジェット装置について説明する。このインクジェット装置は、周方向に複数のインクジェットヘッドを配置したセンタードラム式の印刷装置であり、リールツーリールで供給した長尺の記録媒体に、UVインク(紫外線硬化型インク)を用いて印刷を実施する。記録媒体としては、例えばラベル用のフィルムや用紙等のシート状のものであって、各種幅および厚みの異なるものを印刷対象としている。まず、図1ないし図9を参照し、装置概要から説明する。なお、以降の説明では、図1において紙面を貫通する方向を前後とし、手前側を「前」、奥側を「後」とする。具体的には、後述する回転ドラム61の回転軸(ドラム軸62)の延在方向を前後とし、後述するドラムモーター64から回転ドラム61へ向かう方向を手前方向(手前側)、回転ドラム61からドラムモーター64へ向かう方向を奥方向(奥側)とする。また、記録媒体の搬送経路において、後述する媒体供給装置6側を「上流側」、後述する媒体回収装置7側を「下流側」とする。
【0023】
図1の全体図に示すように、インクジェット装置1は、インクジェット方式で記録媒体Aに印刷を行うセンタードラム式の装置本体2と、装置本体2に記録媒体Aを供給し且つ印刷済みの記録媒体Aを回収するリールツーリール方式の媒体供給・回収装置3と、これら構成装置を統括制御する制御装置(図示省略)と、を備えている。媒体供給・回収装置3は、装置本体2に記録媒体Aを供給する媒体供給装置6と、装置本体2から記録媒体Aを回収する媒体回収装置7と、を有している。一方、装置本体2および媒体供給・回収装置3に構成した記録媒体Aの媒体送り経路Lは、媒体供給装置6から装置本体2に至る供給送り経路L1と、装置本体2に構成した円に近い円弧状の印刷送り経路L2(記録媒体送り経路)と、装置本体2から媒体回収装置7に至る回収送り経路L3と、を有している。
【0024】
供給送り経路L1を介して、媒体供給装置6から繰り出すようにして供給された記録媒体Aは、装置本体2において印刷送り経路L2に沿って送られ、この部分で印刷に供される。また、印刷が完了した記録媒体Aは、回収送り経路L3を介して媒体回収装置7により巻き取るようにして回収される。
【0025】
媒体供給装置6は、ロール状に巻回した記録媒体Aを繰り出す繰出しリール11と、繰出しリール11を繰出し回転させる繰出しモーター(図示省略)と、繰出しリール11の下流側に配設され、記録媒体Aにフォワードテンションを付与するフォワードテンションユニット13と、フォワードテンションユニット13の下流側に配設され、記録媒体Aを幅方向に位置決めしつつ装置本体2に送り込むステアリングユニット14と、を備えている。また、繰出しリール11および繰出しモーターは、給紙ユニットフレーム15に支持され、一体の給紙ユニット16を構成している。さらに、フォワードテンションユニット13は、フォワードテンションフレーム17に支持され、ユニット化されている。
【0026】
制御装置により、装置本体2に同期して繰出しモーターを駆動すると、繰出しリール11から記録媒体Aが繰り出される。繰り出された記録媒体Aは、フォワードテンションユニット13により所定のテンションを付与されつつ、供給送り経路L1に沿って送られ、最終的に、ステアリングユニット14により幅方向の位置を矯正されつつ装置本体2に送り込まれる。なお、本実施形態のステアリングユニット14は、記録媒体Aの一方(奥側)の幅端を基準に装置本体2に送り込むようになっている。したがって、幅の異なる記録媒体Aを導入する場合も同様に、一方(奥側)の幅端が基準となる。もっとも、幅方向の中心を基準(センター基準)として、記録媒体Aを導入することも可能である。
【0027】
媒体回収装置7は、印刷済みの記録媒体Aをロール状に巻き取る巻取りリール21と、巻取りリール21を巻取り回転させる巻取りモーター(図示省略)と、巻取りリール21の上流側に配設され、記録媒体Aにバックテンションを付与するバックテンションユニット23と、バックテンションユニット23の上流側に配設され、装置本体2から送り出された記録媒体AがUターンして送られるように、回収送り経路L3を経路変更する折返しユニット25と、を備えている。この場合も、巻取りリール21および巻取りモーターは、排紙ユニットフレーム26に支持され、一体の排紙ユニット27を構成している。また、バックテンションユニット23は、バックテンションフレーム28に支持され、ユニット化されている。さらに、装置本体2と折返しユニット25との間には、回収送り経路L3に臨むように、後述する装置本体2のUV照射ユニット44および冷却ユニット45が配設されている。
【0028】
制御装置により、装置本体2に同期して巻取りモーターを駆動すると、記録媒体Aは、バックテンションユニット23により所定のテンションを付与されつつ、装置本体2から送り出され、回収送り経路L3に沿って送られてゆく。装置本体2から送り出された記録媒体Aは、先ずUV照射ユニット44を通過する。この通過過程で、UVインクは硬化する。続いて、折返しユニット25によりUターンした記録媒体Aは、バックテンションユニット23を経て、巻取りリール21に巻き取られる。なお、巻取りリール21に巻き取られた記録媒体Aは、別工程の装置に導入され、ラベルとして裁断され或いはラベル部分にハーフカットが施される。
【0029】
図1および図2に示すように、装置本体2は、大口径の回転ドラム61を有し、印刷送り経路L2に沿って記録媒体Aを送る媒体送り機構41(記録媒体送り手段)と、それぞれが複数の印刷ヘッド76を有し、印刷送り経路L2に臨むように、回転ドラム61に対し放射状に配設した複数のキャリッジユニット42と、複数のキャリッジユニット42に対応し、その背面側に配設した複数のメンテナンスユニット43と、上記の回収送り経路L3に臨み、記録媒体AのUVインクを硬化させる本硬化用のUV照射ユニット44と、UV照射ユニット44に対し記録媒体Aを挟んで対向配置され、UV照射ユニット44および記録媒体Aを冷却する冷却ユニット45と、を備えている。また、装置本体2は、全体としてチャンバー(図示省略)に覆われている。複数のキャリッジユニット42は、供給するUVインクの色別のユニットであり、全体として印刷手段48を構成している。
【0030】
図2に示すように、装置フレーム46は、機台となるベースフレーム51と、ベースフレーム51の後半部に立設したメインフレーム52と、メインフレーム52の前面に広く設けた板状のサブフレーム53と、サブフレーム53を介しメインフレーム52の前部に配設したチャンバーフレーム54と、を有している。
【0031】
メインフレーム52は、サブフレーム53を介して各種の構成装置を支持すると共に、回転ドラム61を主体とする媒体送り機構41を支持している。サブフレーム53は、前面側において、複数のキャリッジユニット42、UV照射ユニット44、冷却ユニット45等を支持し、背面側(後面側)において、複数のメンテナンスユニット43等を支持している。チャンバーフレーム54は、メインフレーム52前部の構成装置を覆うように形成されている。メインフレーム52およびチャンバーフレーム54が構成する各面には、それぞれ壁体(図示省略)が取り付けられており、これらによって装置本体2全体を覆うチャンバーを構成する。すなわち、装置本体2は、このチャンバーによって、その内部の温度および清浄度を管理している。なお、チャンバーフレーム54とベースフレーム51との間には、所定の間隙が設けられており、この間隙において記録媒体Aの給紙および排紙が行われる。
【0032】
媒体送り機構41は、横倒しの王冠状に形成された回転ドラム61と、ドラム軸62を介して回転ドラム61を片持ちで回転自在に支持する軸受け63と、回転ドラム61を一方向に低速回転させるドラムモーター64と、ドラム軸62とドラムモーター64との間に介設した動力伝達機構(図示省略)と、を有している。ドラムモーター64は、例えばサーボモーターで構成され、回転ドラム61の外周面における周速(印刷速度)が一定になるように、回転ドラム61を回転させる。
【0033】
回転ドラム61は、円筒状のドラム本体を備え、ドラム本体は、最大幅の記録媒体Aに対応する幅を有し、外周面には滑り止めとなる焼付け塗装が施されている。記録媒体Aは、滑り止め加工されたドラム本体の外周面に密着し、回転するドラム本体により円(円弧)を描くように送られる。すなわち、媒体供給装置6から送り込まれた記録媒体Aは、回転ドラム61により印刷送り経路L2に沿って送られる。そして、この送りに同期して印刷手段48が適宜駆動することにより、記録媒体Aに印刷が行われる。
【0034】
上述のように、印刷手段48は、回転ドラム61に対し放射状に配設した複数のキャリッジユニット42を備えている(図1参照)。複数のキャリッジユニット42は、インク色別のユニットであり、印刷送り経路L2の始端側から終端側に向って、ホワイト(W)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ライトシアン(Lc)、ライトマゼンタ(Lm)、ブラック(Bk)、クリアー1(CL1)、クリアー2(CL2)の順で、周方向にほぼ等間隔で配設されている。詳細は後述するが、各キャリッジユニット42には、複数の印刷ヘッド76が搭載され、この複数の印刷ヘッド76により、最大幅の記録媒体Aに対応するヘッド77が構成されている。このため、印刷送り経路L2に沿って印刷送りされてゆく記録媒体Aに、各色のヘッド77が順に臨むことになり、記録媒体Aに印刷データーに基づく所望のカラー印刷が行われる。なお、クリアー1(CL1)およびクリアー2(CL2)のインクは、主にコーティング用に用いられ、この場合にはベタ塗り印刷となる。
【0035】
図3および図4に示すように、各キャリッジユニット42は、上記のサブフレーム53に固定されたキャリッジベース81と、回転ドラム61の法線方向において、キャリッジベース81にスライド自在に支持された箱型フレーム形式のキャリッジ82と、キャリッジ82に装着され、複数の印刷ヘッド76を搭載したヘッドユニット83と、キャリッジ82を介してヘッドユニット83を記録媒体Aの幅方向に移動させるY軸移動機構90(図10等参照)と、キャリッジ82を介してヘッドユニット83を法線方向に進退させるZ軸移動機構84と、キャリッジ82に搭載され、複数の印刷ヘッド76に吐出波形を印加するヘッド制御基板モジュール(図示省略)と、を備えている。また、各キャリッジユニット42は、キャリッジ82に搭載され、記録媒体AのUVインクを仮硬化させるピニングユニット86と、支持金具を介してキャリッジ82の外側面に支持され、複数の印刷ヘッド76にUVインクを供給するサブタンクユニット(図示省略)と、を備えている。なお、他の部材が回転ドラム61の法線方向に合わせた姿勢で支持されるのに対し、サブタンクユニットは、支持金具により、いずれも直立姿勢(UVインクの排出口が鉛直方向下を向く姿勢)で支持されている。
【0036】
また、詳細については後述するが、Y軸移動機構90には、記録媒体Aの蛇行状態を検出する変位センサー100(変位量検出手段)が含まれる。当該変位センサー100は、印刷送り経路L2上を蛇行しながら送られてゆく記録媒体Aのエッジ位置の変位量を検出するものであり、Y軸移動機構90は、当該変位センサー100の検出結果に基づいて、印刷位置を補償すべく、キャリッジ82(ヘッドユニット83)の幅方向における位置を制御する。
【0037】
ところで、実施形態のUVインクは、その粘性が、高い温度依存性(温度が高くなると粘性が低下する)を有している。このため、図示では省略したが、上記のサブタンクユニット、複数の印刷ヘッド76およびサブタンクユニットから複数の印刷ヘッド76に至るインク流路(主チューブ、マニホールド、個別チューブ)は、ヒーターにより被覆されている。例えば、UVインクを40℃程度に昇温して吐出する。
【0038】
図5に示すように、各印刷ヘッド76は、2インチのインクジェットヘッドで構成されており、そのノズル面91に相互に並行な複数の吐出ノズル92から成る2列のノズル列93を有している。この場合、2列のノズル列93は、ノズル列方向に1/2ノズルピッチ位置ズレして配設されている。
一方、図4および図6に示すように、ヘッドユニット83は、キャリッジ82に対し前方から着脱自在に装着されている。ヘッドユニット83は、ヘッドプレート94と、ヘッドプレート94に支持されると共に、それぞれが回転ドラム61の接線に対し並行になるように山形に連ねた一対のサブプレート95と、一対のサブプレート95に2分して搭載された複数の印刷ヘッド76(実施形態のものは、7個+7個)と、を備えている。
【0039】
この場合、各サブプレート95に搭載された複数の印刷ヘッド76(7個)は、いずれもノズル列93が前後方向に向く姿勢で、且つ前後方向において千鳥に配設されている。また、一方のサブプレート95に搭載された複数の印刷ヘッド76と、他方のサブプレート95に搭載された複数の印刷ヘッド76とは、前後方向(ノズル列方向)に1/4ノズルピッチ位置ズレして配設されている。これにより、ヘッドプレート94に搭載した全印刷ヘッド76により、前後方向(記録媒体Aの幅方向)に延在するラインヘッドとしてのヘッド77、すなわち最大幅の記録媒体Aに対応する1/4ノズルピッチのヘッド77が構成されている。これにより、高解像度の印刷が可能となる。
【0040】
図7に示すように、ピニングユニット86は、記録媒体AのUVインクを仮硬化させる仮硬化UVランプ98と、仮硬化UVランプ98に添設したダクト接続のミスト吸引口99と、を有している。仮硬化UVランプ(ランプアレイ)98およびミスト吸引口(スリット吸引口)99は、相互に並行に且つ前後方向に延在し、上記のヘッド77に対し、ほぼ同じ長さに且つ前後方向に同位置に配設されている。また、複数の印刷ヘッド76(ヘッド77)、ミスト吸引口99、仮硬化UVランプ98は、記録媒体Aの送り方向においてこの順で配設されており、印刷ヘッド76から吐出されたUVインクのミストをミスト吸引口99で吸引し、記録媒体Aに着弾したUVインクを仮硬化UVランプ98で仮硬化させる。これにより、仮硬化UVランプ98へのミストの付着を防止し、且つ混色が生じない程度にUVインクを硬化させることができる。なお、複数のキャリッジユニット42のおけるインク色別の順は、色別のUVインクにおける硬化し難い順となっている。すなわち、ホワイト(W)が最も硬化し難く、クリアー2(CL2)が最も硬化し易くなっている。
【0041】
図2に示すように、各メンテナンスユニット43は、上記のサブフレーム53を隔てて、対応するキャリッジユニット42の前後方向の延長上に配設されている。図8および図9に示すように、メンテナンスユニット43は、複数の印刷ヘッド76のノズル面91に臨んでメンテナンスを実施するユニット本体(図示省略)が搭載されたメンテナンスキャリッジ102と、メンテナンスキャリッジ102を介してユニット本体をホーム位置とメンテナンス位置との間で前後方向に移動させるメンテナンス移動機構103と、を備えている。印刷ヘッド76の捨て吐出(フラッシング)や吸引等のメンテナンスを行うときには、ユニット本体は前方のメンテナンス位置に移動し印刷ヘッド76に臨む(図8(a)および図9参照)。一方、記録媒体Aに印刷処理が実施されているときには、ユニット本体は後方のホーム位置で待機している(図8(b)参照)。なお、これに対し、ヘッドユニット83(キャリッジ82)は、印刷処理を実施するときには、Z軸移動機構84によって法線方向内側の描画位置に移動し、メンテナンスを行うときには、Z軸移動機構84によって法線方向外側のメンテナンス位置に移動する。すなわち、印刷処理時には、ヘッドユニット83とユニット本体とが前後に直列に位置し、メンテナンス時には、ヘッドユニット83とユニット本体とが回転ドラム61の法線方向に並列に位置する。
【0042】
ユニット本体は、例えば、印刷ヘッド76のノズル面91を払拭するワイピング機構と、ノズル面91の封止、捨て吐出の受容およびノズル吸引を行う吸引機構と、を有している。ユニット本体を移動させるメンテナンス移動機構103は、片持ち状態でサブフレーム53に固定したブラケットフレーム113と、ブラケットフレーム113とキャリッジユニット42との間に渡した一対のガイドレール114と、一対のガイドレール114に沿ってメンテナンスキャリッジ102を前後方向に移動させるローターアクチュエーター117と、有している。
なお、サブフレーム53には、メンテナンスキャリッジ102を通過させるためのメンテナンス開口53aが形成されている(図2参照)。
【0043】
図1に示すように、UV照射ユニット44は、UVランプで構成されており、回収送り経路L3上の記録媒体Aに下側(記録媒体Aの印刷面側)から臨み、記録媒体Aに着弾したUVインクを本硬化させる。なお、UV照射ユニット44には、UVランプおよび記録媒体Aを冷却するための吸引ファンが搭載されている。
【0044】
冷却ユニット45は、回収送り経路L3上の記録媒体Aに上側から臨み、記録媒体Aを挟んでUV照射ユニット44に対向配置されている。冷却ユニット45は、エアー吸引口および吸引ファンを備え、上記UVランプおよび記録媒体Aを冷却する。
【0045】
次に、図10ないし図12を参照し、第1実施形態に係るヘッド移動制御について説明する。図10は、第1実施形態に係るY軸移動機構90周りの概念図である。上記のとおり、Y軸移動機構90は、印刷送り経路L2を送られてゆく記録媒体Aの蛇行に倣って、ヘッドユニット83(ヘッド77)を記録媒体Aの幅方向に移動させる機構であり、ヘッドユニット83の移動をガイドするガイド軸121と、ガイド軸121に構成されたボールねじ122と、ヘッドユニット83を記録媒体Aの幅方向に移動させるためのサーボモーター123(ヘッド移動手段)と、記録媒体Aの幅方向におけるエッジ位置の変位量を検出する変位センサー100と、を備えている。なお、ガイド軸121を設けるのではなく、キャリッジ82をキャリッジベース81に対してスライドさせるためのスライドガイドを利用して、ヘッドユニット83を記録媒体Aの幅方向に移動させる構成としても良い。また、ヘッドユニット83には、実際には、合計14個の印刷ヘッド76が設けられているが(図6参照)、同図以降では、簡略化して図示するものとする。
【0046】
変位センサー100は、LEDを光源とし、有効検出範囲(CCDの操作範囲)が5mm〜15mm、投受光間距離が50mm〜100mm、測定精度が略±0.5μm、サンプリング回数が略2400回/秒のものを用いる。また、変位センサー100は、ヘッドユニット83が装着されたキャリッジ82の手前側端部に設けられ、キャリッジ82(ヘッドユニット83)の移動に伴って、幅方向に移動する。したがって、変位センサー100は、ヘッドユニット83の直下における記録媒体Aの変位量を検出することとなり、Y軸移動機構90は、変位センサー100の検出結果である変位量が常に「0(ゼロ)」となるように、ヘッドユニット83を移動させる。なお、種々の幅サイズの記録媒体Aに対応できるように、変位センサー100は、ヘッドユニット83が装着されたキャリッジ82の奥側端部(基準位置側)に設けるようにしても良い。また、以下の説明において、「蛇行量」とは、記録媒体Aの手前側端部の、基準線Bからのずれ量を指すものとする。なお、基準線Bを基準位置側に設け、記録媒体Aの奥側端部からのずれ量を「蛇行量」としても良い。さらに、「変位量」とは、変位センサー100の中心値からのずれ量を指すものとする。
【0047】
図11は、第1実施形態に係るY軸移動機構90に組み込まれた演算装置200(ヘッド位置制御手段)のブロック図である。ここでは、サーボモーター123の速度制御によりヘッド移動制御を行うものとして説明する。この場合、演算装置200には、位置制御回路210と、速度制御回路220と、が含まれる。また、演算装置200とサーボモーター123との間には、電力変換装置230が設けられ、さらにサーボモーター123には、位置および回転速度を検出するためのエンコーダー250が外付けされている。なお、演算装置200は、上記の制御装置(インクジェット装置1を統括制御する制御装置)に接続されるか、上記の制御装置の一部として機能する。
【0048】
図12は、第1実施形態に係るヘッド移動制御の流れを示すフローチャートである。Y軸移動機構90は、変位センサー100により、記録媒体Aの幅方向における変位量を検出する(S01)。演算装置200は、変位センサー100の検出データー(変位量)を取得すると(S02)、図11の点線枠内に示した位置ループにより、位置指令値を速度指令値に変換し(S03)、電力変換装置230により、速度指令値にしたがって、サーボモーター123を駆動する(S04)。以上S01〜S04は、描画処理が行われている間、所定の時間間隔で繰り返される。つまり、演算装置200は、記録媒体Aの蛇行状態に倣って、ヘッドユニット83が記録媒体Aの適正位置に臨むように、サーボモーター123の駆動制御を行う。
【0049】
以上説明したとおり、第1実施形態に係るヘッド移動制御によれば、記録媒体Aの蛇行状態に倣って、ヘッドユニット83を記録媒体Aの幅方向に移動させながら描画を行うため、記録媒体Aの蛇行に伴う印刷物(ラベル)の品質低下を防止することができる。また、具体的な処理としては、記録媒体Aの幅方向におけるエッジ位置の変位を検出し、当該検出結果に基づいてヘッドユニット83を幅方向に移動させる、といった簡単な制御で良いため、複雑な演算処理を必要としない。これにより、能力の低い制御装置でも対応でき、ひいてはインクジェット装置1を導入する際のイニシャライズコストを抑えることができる。
【0050】
さらに、本実施形態のY軸移動機構90は、ヘッドユニット83を搭載するキャリッジ82に変位センサー100を設けているため、変位センサー100の検出結果である変位量が常に0となるように制御すれば良く、演算装置200の制御負荷をより軽減することができる。
【0051】
なお、上記の例では、ヘッド移動制御を、サーボモーター123による速度制御により行うものとしたが、位置制御やトルク制御、またはパルスモーターによるステップ駆動制御を採用しても良い。また、ヘッドユニット83の移動方法は、上記のボールねじ機構に限らず、ベルト駆動機構やカム機構など、モーターの運動を水平運動に変換可能な機構であれば、その種類を問わない。また、変位センサー100についても、LED CCD式ではなく、レーザー式や超音波式など、他方式のセンサーを採用しても良い。
【0052】
[第2実施形態]
次に、図13ないし図16を参照し、第2実施形態に係るヘッド移動制御について説明する。上記の第1実施形態では、ヘッドユニット83を搭載するキャリッジ82に変位センサー100を設けるものとしたが、本実施形態では、ヘッドユニット83とは独立して配設する点で異なる。以下、第1実施形態と異なる点のみ説明する。なお、本実施形態において、第1実施形態と同様の構成部分については同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、第1実施形態と同様の構成部分について適用される変形例は、本実施形態についても同様に適用される。
【0053】
図13は、第2実施形態に係るY軸移動機構90周りの概念図である。同図に示すとおり、本実施形態では、記録媒体Aの変位量を検出するための変位センサー100を、ヘッドユニット83の上流側に固定配置している。これにより、記録媒体Aの変位量を先読みすることができるため、変位センサー100の応答性能が低い場合でも(変位センサー100の検出から、実際のヘッドユニット83の移動までに時間を要する場合でも)、安定したヘッド移動制御が可能となる。なお、説明の便宜上、変位センサー100とヘッドユニット83間の距離(記録媒体Aの搬送方向における距離)を「センサーヘッド間距離Lsh」、記録媒体Aの送り速度を「搬送速度Vm」であるものとする。
【0054】
なお、種々の幅サイズの記録媒体Aに対応できるように、変位センサー100は、幅方向にその配置位置を調整できるようにしても良い。さらにこの場合、記録媒体Aの幅サイズに応じて、変位センサー100の幅方向における配置位置を可変できるようにしても良い。
【0055】
図14は、第2実施形態に係るY軸移動機構90に組み込まれた演算装置200のブロック図である。本実施形態において、演算装置200は、記録媒体Aのエッジ位置の検出データーをサンプリング時間毎に(所定の時間間隔で)生成する(変位量検出手段)。また、演算装置200は、生成した当該検出データーを、複数記憶する記憶装置240(検出データー記憶手段)を有している。同図の例では、変位量が「1.000mm」、「1.005mm」、「1.010mm」・・・「1.500mm」・・・と変動した場合の検出データーの記録結果を示している。なお、これらの値は、変位センサー100の基準位置(中心位置)からの距離を示している。
【0056】
ところで、本実施形態の場合、センサーヘッド間距離Lshが存在するため、変位センサー100の検出タイミングに対し、サーボモーター123の指令タイミングを調整する(遅らせる)必要がある。そこで、このタイミング調整について、図15を参照して説明する。同図(a)は、プロセス時間(印刷時間)を横軸とし、変位センサー100による変位量の検出タイミング、変位センサー100の出力タイミング、サーボモーター123に対する位置指令タイミング、を示したものである。また、四角形のセルは、検出された変位量を示し、斜線矢印は、プロセス時間と共に記録媒体Aが変位し、サンプリング時間毎に値が更新されてゆく様子を示したものである。
【0057】
ここで、変位センサー100の出力特性として、値が更新されるサンプリング時間がTs、変位センサー100の検出(測定)から出力までに要するセンサー応答時間がTrであると仮定する。また、上記のとおり、センサーヘッド間距離がLsh、記録媒体Aの搬送速度がVmであるものとする。この場合、センサーヘッド間距離Lshおよび搬送速度Vmから、ある変位が変位センサー100の直下を通過した瞬間から、ヘッドユニット83の搬送方向における基準位置(例えば、中心位置)の直下に到達する時間Tmは、図15(b)の式(1)に示すとおり、Tm=Lsh/Vmである。また、ある変位が、ヘッド直下に到達したときに、その変位を打ち消すようにヘッドユニット83を移動させるためには、同図の式(2)に示すとおり、センサー応答時間Trを考慮して、指令遅延時間To=Tm−Trだけ遅らせる必要がある。したがって、本実施形態では、記憶装置240内に記憶されている複数の検出データー(図14参照)のうち、指令遅延時間To前に検出された検出データー(同図の例では、「1.500mm」)を用いて位置指令することとなる。
【0058】
但し、実際には、使用するモーターの応答性や、演算装置200の入出力の応答性などにより、上記のように算定した指令遅延時間Toを参考値として、演算装置200内に設ける遅延時間のチューニングを行う。
【0059】
図16は、第2実施形態に係るヘッド移動制御の流れを示すフローチャートである。Y軸移動機構90は、変位センサー100により、記録媒体Aの幅方向における変位量を検出する(S11)。演算装置200は、変位センサー100の検出データー(変位量)を取得し、記憶装置240内に、時系列にしたがって、これを記録する(S12)。一方、演算装置200は、搬送速度Vmに応じて(図15(b)の式(1),(2)にしたがって)、記憶装置240に記憶した検出データーの中から、指令遅延時間To分ずらした値を参照し(S13)、参照した検出データーを位置指令値として取得する(S14)。その後、図14の点線枠内に示した位置ループにより、位置指令値を速度指令値に変換し(S15)、電力変換装置230により、速度指令値にしたがって、サーボモーター123を駆動する(S16)。以上S11〜S16は、描画処理が行われている間、所定の時間間隔で繰り返される。
【0060】
以上説明したとおり、第2実施形態に係るヘッド移動制御によれば、変位センサー100を、ヘッドユニット83の上流側に配設したため、記録媒体Aの変位量を先読みすることができ、応答性能の低い変位センサー100を用いた場合でも、安定した制御を行うことができる。つまり、第1実施形態の場合は、変位センサー100の応答性が悪い場合、高速な位置決めができない、またはフィードバックループの中に大きな遅延が生じることになり、制御中に発振する恐れがあるが、第2実施形態では、これらの問題を解消することができる。
【0061】
また、変位センサー100の検出データーを複数記憶しておき、記録媒体Aの搬送速度Vmに応じて、適切な検出データーを抽出し、抽出した当該検出データーを用いて、ヘッドユニット83を移動させるため、搬送速度Vmを任意に設定することができる。言い換えれば、搬送速度Vmに関わらず、正確な位置に描画を行うことができる。
【0062】
なお、上記の例では、センサーヘッド間距離Lshを基準として指令遅延時間Toを算出し、記憶装置240に記憶した検出データーの中から、指令遅延時間To分ずらした値を参照したが、送り速度Vmが一定の場合、記憶装置240を有しない構成とすることも可能である。この場合、センサー応答時間Trや指令遅延時間Toを考慮して、センサーヘッド間距離Lshを設定すれば良い。つまり、図15(b)の式(3)に示すように、センサーヘッド間距離Lsh=Vm×(To+Tr)となる位置に、変位センサー100を配置すれば良い。この構成によれば、センサー応答時間Trや指令遅延時間Toを考慮して、変位センサー100が配設されている(センサーヘッド間距離Lshが定められている)ため、それらに時間を要する場合でも、支障なく、ヘッドユニット83を適正位置に移動させることができる。つまり、センサー応答時間Trや指令遅延時間Toに関わらず、正確な位置に描画を行うことができる。
【0063】
[第3実施形態]
次に、図17および図18を参照し、第3実施形態に係るヘッド移動制御について説明する。上記の第2実施形態では、変位センサー100を固定配置するものとしたが、本実施形態では、変位センサー100の位置を可変可能とした点で異なる。以下、第2実施形態と異なる点のみ説明する。なお、本実施形態において、上記の各実施形態と同様の構成部分については同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。また、上記の各実施形態と同様の構成部分について適用される変形例は、本実施形態についても同様に適用される。
【0064】
図17は、第3実施形態に係るY軸移動機構90周りの概念図である。同図に示すとおり、本実施形態のY軸移動機構90は、変位センサー100を、記録媒体Aの搬送方向(長手方向)に移動させるための変位センサー移動機構400(検出位置可変手段)を備えている。変位センサー移動機構400は、変位センサー移動機構400を制御するセンサー位置可変制御装置410と、電力変換装置420と、変位センサー100の移動をガイドするガイド軸431と、ガイド軸431に構成されたボールねじ432と、変位センサー100を記録媒体Aの搬送方向に移動させるためのサーボモーター433と、を備えている。
【0065】
本実施形態においては、センサー応答時間Trや指令遅延時間Toを考慮して、変位センサー移動機構400を制御すれば良い。つまり、図15(b)の式(3)に示すように、センサーヘッド間距離Lsh=Vm×(To+Tr)となる位置に、変位センサー100を移動させれば良い。
【0066】
なお、変位センサー100の移動制御は、サーボモーターによる速度制御、位置制御、トルク制御、またはパルスモーターによるステップ駆動制御など、を採用可能であり、詳細な説明を省略する。また、変位センサー100の移動機構は、上記のボールねじ機構に限らず、ベルト駆動機構やカム機構など、モーターの運動を水平運動に変換可能な機構であれば、その種類を問わない。また、ヘッドユニット83をY軸方向に移動させるための演算装置200のブロック図についても、図11や図14と略同様であるため、図示および説明を省略する。
【0067】
図18は、第3実施形態に係るセンサー移動制御およびヘッド移動制御の流れを示すフローチャートである。センサー位置可変制御装置410は、ユーザーが所定の操作手段を用いて搬送速度Vmを設定すると(S21)、サーボモーター433を駆動して、当該搬送速度Vmにより決定される位置(図15(b)の式(3)で求められる位置)に変位センサー100を移動させる(S22)。
【0068】
その後、変位センサー100により、記録媒体Aの幅方向における変位量を検出すると(S23)、ヘッドユニット83をY軸方向に移動させるための演算装置200は、変位センサー100の検出データー(変位量)を位置指令値として取得する(S24)。また、図11や図14に示した位置ループにより、位置指令値を速度指令値に変換し(S25)、電力変換装置230により、速度指令値にしたがって、サーボモーター123を駆動する(S26)。以上S23〜S26は、描画処理が行われている間、所定の時間間隔で繰り返される。
【0069】
以上説明したとおり、第3実施形態に係るヘッド移動制御によれば、変位センサー100の位置を、記録媒体Aの搬送方向に移動させるための変位センサー移動機構400を備えているため、第2実施形態のように記憶装置240を必要とすることなく、搬送速度Vmを任意に設定することができる。
【0070】
なお、上記の例では、ユーザーが設定した搬送速度Vmに応じて変位センサー100の位置を移動し、描画処理中は、その位置が固定されたままであるものとしたが、何らかの原因で搬送速度Vmが変化する可能性がある場合、搬送速度Vmの変化に応じて、変位センサー100の搬送方向における位置を微妙に移動させ得るようにしても良い。この構成によれば、描画処理中に搬送速度Vmが可変する場合でも、常に適切な位置に変位センサー100を配置させておくことができ、ひいては、正確な位置に描画を行うことができる。
【0071】
[第4実施形態]
次に、図19を参照し、第4実施形態について説明する。上記の第1実施形態では、円弧状の印刷送り経路L2を有するインクジェット装置1を例示したが、本実施形態では、水平に且つ直線状に延在した媒体送り経路L5を有するインクジェット装置501を例示する。以下、第1実施形態と異なる点のみ説明する。なお、本実施形態において、上記の各実施形態と同様の構成部分については、詳細な説明を省略する。また、上記の各実施形態と同様の構成部分について適用される変形例は、本実施形態についても同様に適用される。
【0072】
本実施形態に係るインクジェット装置501は、インクジェット方式で記録媒体Aに印刷を行うセル形式の装置本体502と、装置本体502に記録媒体Aを供給し且つ印刷済みの記録媒体Aを回収するリールツーリール方式の媒体供給・回収装置503と、これらの構成装置を統括制御する制御装置(図示省略)と、を備えている。媒体供給・回収装置503は、第1実施形態と同様に、装置本体502に記録媒体Aを供給する媒体供給装置505と、装置本体502から記録媒体Aを回収する媒体回収装置506と、を有している。そして、媒体供給装置505から媒体回収装置506に至る記録媒体Aの媒体送り経路L5は、装置本体502を縦断するように水平に且つ直線状に延在している。
【0073】
装置本体502は、2つの記録ユニット511を1組とする記録セル510を、記録媒体Aの送り方向に2つ直列に並べて構成されている。すなわち、記録セル510は、インク色の異なる2つの記録ユニット511を共通の機台520に搭載して構成されており、装置本体502は、この記録セル510の単位としてこれを1以上組み合わせて(増設)構成されている。また、UV照射ユニット540も、専用の機台550に搭載され、1のセルとして装置本体502の一部を構成している。
【0074】
各記録ユニット511は、第1実施形態と同様のキャリッジユニット512と、これに対応するメンテナンスユニット(図示省略)と、記録媒体AのUVインクを仮硬化させるピニングユニット513と、電装品を格納した電装ユニット514と、個別の媒体送り機構515と、を有しており、これら各機構を個別のチャンバー518に収容した状態で、機台520に搭載されている。そして、キャリッジユニット512は、第1実施形態と同様に、キャリッジと、キャリッジに装着され、複数の印刷ヘッドを搭載したヘッドユニットと、キャリッジを介してヘッドユニットを記録媒体Aの幅方向に移動させるY軸移動機構と、キャリッジを介してヘッドユニットを昇降させるZ軸移動機構と、複数の印刷ヘッドに吐出波形を印加するヘッド制御基板モジュールと、複数の印刷ヘッドにUVインクを供給するサブタンクユニットと、を備えている(いずれも、図示省略)。そして、この場合も、複数の印刷ヘッドにより、最大幅の記録媒体Aに対応するヘッドが構成されている。
【0075】
一方、各媒体送り機構515は、ベルトコンベアー形式のものであり、一対のベルトプーリー521と、一対のベルトプーリー521間に掛け渡した無端のコンベアーベルト522と、一方のベルトプーリー521を回転させるモーター(図示省略)と、を有している。コンベアーベルト522には、多数の吸着孔が形成される一方、コンベアーベルト522の内側空間には、図外の真空吸引設備に連通するエアー室523が配設されている。すなわち、周回するコンベアーベルト522は、その上辺において、記録媒体Aを吸着して送るようになっている。
【0076】
上述のように、媒体送り経路L5は、装置本体502を縦断するように直線状に延在しており、複数の記録ユニット511にそれぞれ設けた複数の媒体送り機構515は、媒体送り経路L5に沿って直列に列設されている。制御装置は、これら複数(4つ)の媒体送り機構515を同期して駆動することで、記録媒体Aを送り、併せて複数の記録ユニット511における各印刷ヘッド(ヘッド)を駆動することにより、印刷を実施する。
【0077】
なお、第4本実施形態においても、ステアリングユニット等により、記録媒体Aの一方(奥側)の幅端を基準に装置本体502に送り込むようになっている。したがって、幅の異なる記録媒体Aを導入する場合も同様に、一方(奥側)の幅端が基準となって送られる。
【0078】
また、第4本実施形態においても、変位センサー(図示省略)を設け、当該変位センサーの検出結果に応じて、Y軸移動機構を駆動させることとなる。この場合、変位センサーの設置位置については、第1実施形態〜第3実施形態を適用可能である。また、第2実施形態または第3実施形態を適用する場合(変位センサーを、ヘッドユニットの上流側に設ける場合)、変位センサーは、記録セル510毎に設けても良いし、記録ユニット511毎に設けても良い。すなわち、前者の場合、1の変位センサーの検出結果に応じて、2つのキャリッジユニット512(ヘッドユニット)の幅方向における位置制御を行うこととなり、後者の場合、1の変位センサーの検出結果に応じて、1つのキャリッジユニット512(ヘッドユニット)の幅方向における位置制御を行うこととなる。
【0079】
以上説明したとおり、第4実施形態によれば、媒体送り経路L5が、水平に且つ直線状に延在しているインクジェット装置501に、上記の各実施形態に示したヘッド移動制御を適用することができる。また、このような形状の媒体送り経路L5の場合、記録媒体Aの蛇行量が大きくなることが想定されるため、本発明を適用することで、より高い効果を得ることができる。
【0080】
なお、上記に示したインクジェット装置1,501(特に、演算装置200)の各構成要素をプログラムとして提供することが可能である。また、そのプログラムを各種記録媒体(CD−ROM、フラッシュメモリ等)に格納して提供することも可能である。すなわち、コンピューターをインクジェット装置1,501の各構成要素として機能させるためのプログラム、およびそれを記録した記録媒体も、本発明の権利範囲に含まれるものである。
【0081】
また、上記の実施形態では、本発明の描画装置を、インクジェット装置1,501に適用した場合を例示したが、他の印刷方式の描画装置に適用しても良い。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1,501…インクジェット装置 2…装置本体 3…媒体供給・回収装置 6…媒体供給装置 7…媒体回収装置 76…印刷ヘッド 83…ヘッドユニット 90…Y軸移動機構 100…変位センサー 121…ガイド軸 122…ボールねじ 123…サーボモーター 200…演算装置 230…電力変換装置 250…エンコーダー 400…変位センサー移動機構 410…センサー位置制御装置 420…電力変換装置 431…ガイド軸 432…ボールねじ 433…サーボモーター A…記録媒体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体送り経路に沿って記録媒体を送る記録媒体送り手段と、
送られてゆく記録媒体に臨み、前記記録媒体に印刷を行うヘッドと、
前記ヘッドを前記記録媒体の幅方向に移動させるヘッド移動手段と、
前記記録媒体送り経路に臨み、前記記録媒体の幅方向におけるエッジ位置の変位量を検出する変位量検出手段と、
前記変位量検出手段の検出結果に基づいて、前記ヘッドが幅方向における前記記録媒体の適正位置に臨むように前記ヘッド移動手段を制御するヘッド位置制御手段と、を備えたことを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記変位量検出手段は、前記ヘッドを搭載するキャリッジに設けられ、
前記ヘッド位置制御手段は、前記変位量検出手段の検出結果が固定値となるように前記ヘッド移動手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記変位量検出手段は、前記ヘッドの上流側の前記記録媒体送り経路に臨むことを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項4】
前記変位量検出手段によるエッジ位置の検出から前記ヘッド移動手段による前記ヘッドの移動完了に至る時間と、前記エッジ位置の検出から当該エッジ位置が前記ヘッドの直下に達する時間と、が合致するように前記変位量検出手段を配設したことを特徴とする請求項3に記載の描画装置。
【請求項5】
前記変位量検出手段の位置を、前記記録媒体の搬送方向に可変させるための検出位置可変手段をさらに備え、
前記検出位置可変手段は、前記記録媒体送り手段の送り速度に応じて、前記変位量検出手段の位置を可変することを特徴とする請求項4に記載の描画装置。
【請求項6】
前記変位量検出手段は、前記エッジ位置の検出データーを所定の時間間隔で生成し、
前記検出データーを複数記憶する検出データー記憶手段をさらに備え、
前記ヘッド移動手段は、前記記録媒体送り手段の送り速度に応じて、前記検出データー記憶手段に記憶されている前記複数の検出データーの中から1の検出データーを抽出し、抽出した当該検出データーを用いて前記ヘッド移動手段を制御することを特徴とする請求項3に記載の描画装置。
【請求項7】
幅方向に蛇行した状態で送られてゆく記録媒体にヘッドを臨ませ、当該ヘッドにより記録媒体に描画を行なう描画装置の描画方法であって、
前記蛇行状態に倣って、前記ヘッドを記録媒体の幅方向に移動させながら描画を行うことを特徴とする描画装置の描画方法。
【請求項8】
コンピューターを、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の描画装置における各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項1】
記録媒体送り経路に沿って記録媒体を送る記録媒体送り手段と、
送られてゆく記録媒体に臨み、前記記録媒体に印刷を行うヘッドと、
前記ヘッドを前記記録媒体の幅方向に移動させるヘッド移動手段と、
前記記録媒体送り経路に臨み、前記記録媒体の幅方向におけるエッジ位置の変位量を検出する変位量検出手段と、
前記変位量検出手段の検出結果に基づいて、前記ヘッドが幅方向における前記記録媒体の適正位置に臨むように前記ヘッド移動手段を制御するヘッド位置制御手段と、を備えたことを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記変位量検出手段は、前記ヘッドを搭載するキャリッジに設けられ、
前記ヘッド位置制御手段は、前記変位量検出手段の検出結果が固定値となるように前記ヘッド移動手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記変位量検出手段は、前記ヘッドの上流側の前記記録媒体送り経路に臨むことを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項4】
前記変位量検出手段によるエッジ位置の検出から前記ヘッド移動手段による前記ヘッドの移動完了に至る時間と、前記エッジ位置の検出から当該エッジ位置が前記ヘッドの直下に達する時間と、が合致するように前記変位量検出手段を配設したことを特徴とする請求項3に記載の描画装置。
【請求項5】
前記変位量検出手段の位置を、前記記録媒体の搬送方向に可変させるための検出位置可変手段をさらに備え、
前記検出位置可変手段は、前記記録媒体送り手段の送り速度に応じて、前記変位量検出手段の位置を可変することを特徴とする請求項4に記載の描画装置。
【請求項6】
前記変位量検出手段は、前記エッジ位置の検出データーを所定の時間間隔で生成し、
前記検出データーを複数記憶する検出データー記憶手段をさらに備え、
前記ヘッド移動手段は、前記記録媒体送り手段の送り速度に応じて、前記検出データー記憶手段に記憶されている前記複数の検出データーの中から1の検出データーを抽出し、抽出した当該検出データーを用いて前記ヘッド移動手段を制御することを特徴とする請求項3に記載の描画装置。
【請求項7】
幅方向に蛇行した状態で送られてゆく記録媒体にヘッドを臨ませ、当該ヘッドにより記録媒体に描画を行なう描画装置の描画方法であって、
前記蛇行状態に倣って、前記ヘッドを記録媒体の幅方向に移動させながら描画を行うことを特徴とする描画装置の描画方法。
【請求項8】
コンピューターを、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の描画装置における各手段として機能させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−79214(P2011−79214A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233043(P2009−233043)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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