説明

揚げ物用衣材の製造方法、揚げ物用衣材及び揚げ物食品

【課題】膨化処理により得られる穀物パフを用いて、分級処理を行う前であっても、微細な特定粒度未満の衣材の含有割合を低くでき、衣材としてクリスピー感が感じ易い好ましい粒度の衣材の含有割合を高くでき、しかも、揚げ油の吸収量を抑制しうる揚げ物用衣材の製造方法、揚げ物用衣材及び揚げ物食品を提供すること。
【解決手段】本発明の方法は、揚げ物用衣材原料を準備する工程(A)、穀物パフを製造するために、衣材原料を膨化する工程(B)、得られた穀物パフを乾燥し、複数の穀物パフを連続的に移動搬送しうる移動面を有する搬送手段と、該移動面との間隔を保持して搬送手段の上方に設けた押圧手段とを備えたプレス装置を用いて粉砕する工程(C)とを含み、工程(B)により穀物パフを特定の形態にし、工程(C)の粉砕を、穀物パフを穀物パフの大きさより狭い所定間隔を通過させることにより行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膨化処理により得られる穀物パフを用いて、分級処理を行う前であっても、微細な特定粒度未満の衣材の含有割合を低くでき、衣材としてクリスピー感が感じ易い好ましい粒度の衣材の含有割合を高くでき、しかも、微細な衣材の発生が少ないので、工業的生産における微粉の舞い上がり等による問題点を抑制でき、更に、穀物パフの製造からその粉砕までを連続に行うことが可能な工業的にも有利な揚げ物用衣材の製造方法、該方法により得られた揚げ物用衣材及び該衣材を利用した揚げ物食品に関する。
【背景技術】
【0002】
肉類、魚介類や野菜類、並びにこれらの加工品を中種とし、パン粉やパン粉様の衣材を使用した揚げ物食品の衣材として、例えば、食感の改善や、油ちょう後の揚げ油の吸収量を抑制するために、穀物粉や穀物砕物を使用した原材料を用いて、膨化処理した穀物パフを粉砕する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜5)。
このようにして得られる粉砕物は、パリパリ感を有し、揚げ物用衣材として使用することができる。特許文献1〜5に記載された製造方法においては、粉砕工程についての詳細な記載は少なく公知の粉砕機を用いて行われているものと推測される。また、得られた粉砕物の粒度についても様々であり、分級により選別されている。
【0003】
ところで、食品用の粉砕機としては、例えば、ハンマ型、ピン型、遠心分級型等の衝撃せん断力を利用した粉砕機、ロール回転型、ロール移動型、回転刃型等の圧縮せん断力やせん断力を利用した粉砕機、衝撃や圧縮力を利用した粉砕機等の様々な粉砕機が開発され、所望の粒度等を得るために使用する粉砕機の種類が選択されている(非特許文献1及び2)。また、パンを粉砕してパン粉を製造する粉砕機も市販されている。
しかし、上記穀物パフを公知の粉砕機、特に、パン粉粉砕機等を用いて粉砕した場合、微粉の割合が多く、揚げ物食品における衣材のクリスピー感等を強調しうる1.18mm以上の粉砕物の割合を高くすることが困難であった。このような現象は、例えば、特許文献2に記載されるような、穀物パフを膨化処理にて製造した後、圧延・乾燥したものを粉砕する場合には特に顕著である。
また、工場における、衣材の製造から中種への衣付け工程を連続に行う場合には、微粉率の高い衣材を用いて生産スピードを速めると、衣付け装置において該微粉が舞い上がり、歩留りが悪化し、更には衣付け装置の動作不良や衛生上の問題が生じる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−37449号公報
【特許文献2】特開昭48−49942号公報
【特許文献3】特開昭57−186431号公報
【特許文献4】特開2002−253156号公報
【特許文献5】特開2009−165412号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「食品工業の固体粉体処理」(粉砕、p71-91、昭和37年12月25日発行)
【非特許文献2】「食品工業基礎講座第3巻」(固体・粉体処理、第2章粉砕、p25-39、昭和63年12月25日発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、膨化処理により得られる穀物パフを用いて、分級処理を行う前であっても、微細な特定粒度未満の衣材の含有割合を低くでき、衣材としてクリスピー感が感じ易い好ましい粒度の衣材の含有割合を高くでき、しかも、揚げ油の吸収量を抑制しうる揚げ物用衣材の製造方法、該方法により得られた揚げ物用衣材及び該衣材を利用した揚げ物食品を提供することにある。
本発明の別の目的は、上記揚げ物用衣材を、穀物パフの製造からその粉砕までを連続に行うことが可能な工業的にも有利な揚げ物用衣材の製造方法、該方法により得られた揚げ物用衣材及び該衣材を利用した揚げ物食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、穀物粉及び/又は穀物砕物を含む揚げ物用衣材原料を準備する工程(A)と、穀物パフを製造するために、工程(A)で準備した衣材原料を膨化する工程(B)と、複数の穀物パフを連続的に移動搬送しうる移動面を有する搬送手段と、該移動面との間隔を保持して搬送手段の上方に設けた押圧手段とを備えたプレス装置を用いて、穀物パフを粉砕する工程(C)とを含み、工程(B)の膨化を、得られる穀物パフが、実質的に略球状体になるようにエクストルーダーを用いて行い、工程(B)で得られる穀物パフを、工程(C)における粉砕前に乾燥させる乾燥工程を行い、工程(C)の粉砕を、前記プレス装置における移動面と押圧手段との間隔の少なくとも一部を、穀物パフの大きさより狭い所定間隔とし、穀物パフを移動させながら、前記所定間隔箇所を通過させることにより行い、工程(C)により、長径1.18mm未満の穀物パフの粉砕物量が50質量%以下である穀物パフの粉砕物を得ることを特徴とする揚げ物用衣材の製造方法が提供される。
また本発明によれば、上記製造方法により得られた、揚げ物用衣材が提供される。
更に本発明によれば、中種と、該中種を被覆した前記揚げ物用衣材とを含むことを特徴とする油ちょう前の揚げ物食品及び、該油ちょう前の揚げ物食品を油ちょうした揚げ物食品が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の揚げ物用衣材の製造方法は、特に、上記工程(B)において、特定形態の穀物パフをエクストルーダーを用いて調製し、該穀物パフを、工程(C)における粉砕前に乾燥させる乾燥工程を行い、上記工程(C)において、特定のプレス装置を用いて穀物パフを粉砕するので、分級処理を行う前であっても、微細な特定粒度未満の衣材の含有割合を低くでき、衣材としてクリスピー感が感じ易い好ましい粒度の衣材の含有割合を高くでき、しかも、揚げ油の吸収量を抑制しうる揚げ物用衣材を得ることができ、更には、このような揚げ物用衣材を、穀物パフの製造からその粉砕までを連続に行うことが可能な工業的にも有利な方法である。
従って、本発明の製造方法により得られる揚げ物用衣材は、コロッケ、各種カツ類、各種フライ類等の揚げ物食品の衣材として有用であり、工業的生産における工場での衣付け工程において、微粉な衣材の舞い上がり、衣付け装置の動作不良や衛生上の問題を防止でき、衣材の歩留りを向上させて揚げ物食品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の製造方法は、穀物粉及び/又は穀物砕物を含む揚げ物用衣材原料を準備する工程(A)を含む。
穀物粉及び穀物砕物の穀物としては、例えば、米、麦、トウモロコシ、蕎麦が挙げられ、特に米の使用が、本発明の所望の効果をより効果的に得られ易い点で好ましい。この点において、穀物粉及び/又は穀物砕物として米粉及び/又は米破砕物を用いる場合は、その含有割合が50〜100質量%、好ましくは70〜100質量%とすることが好ましい。
【0010】
前記揚げ物用衣材原料は、次の工程(B)における膨化を良好に行うために、エクストルーダーの種類や条件に応じて水分量を適宜選択することができる。例えば、一軸式のロータリーエクストルーダーを用いる場合には、揚げ物用衣材原料中の水分量が、22質量%以下となるように水を含有させることが好ましい。この際、水分量が25質量%を超える場合には、得られる穀物パフが膨化し難くなることで、硬くなりすぎて粉砕が困難になるおそれがあり、また、得られる揚げ物食品の食感が固くなりすぎるおそれがある。
【0011】
前記揚げ物用衣材原料には、穀物粉及び/又は穀物砕物の他に、本願発明の効果を損なわない範囲で、また、他の効果を得るために、必要に応じて、例えば、醤油、粉末醤油、砂糖、塩、味噌等の調味料や、香辛料、色素、油脂、野菜、果物等の他の食品素材を含有させる場合には、揚げ物用衣材原料全量中、25質量%以下とすることが好ましい。
工程(A)において揚げ物用衣材原料は、公知の混合機を用いて各成分が均一になるように混合することができる。
【0012】
本発明の製造方法は、穀物パフを製造するために、工程(A)で準備した衣材原料を膨化する工程(B)を含む。該工程(B)の膨化は、得られる穀物パフが、実質的に略球状体になるようにエクストルーダーを用いて行う必要がある。
穀物パフの形態が略球状態で無く、棒状や板状等の場合には、(C)工程における粉砕の際に所望の粒度範囲とすることが困難となり、更には、後述するプレス装置において穀物パフの詰まり等が生じる可能性が高くなる。
前記穀物パフの最大径は、所望の粒度分布の衣材をより得易くするために、好ましくは3〜30mm、特に好ましくは3〜20mmに調整することができる。
ここで、穀物パフの最大径は、後述する乾燥工程後の穀物パフの最も長い箇所をノギスで測定することにより測定した値である。
また、実質的に略球状体とは、穀物パフのような食品における膨化物を真球状にすることは不可能であって、楕円状や表面がいびつな状態の球状様のものを含む意味である。
【0013】
工程(B)において穀物パフの調製に用いるエクストルーダーは、例えば、一軸型、二軸型の公知のエクストルーダーを用いて行うことができる。エクストルーダーによる条件は、その種類に応じて、公知の条件範囲から適宜選択することができる。
工程(B)において、穀物パフを、上記略球状体にするには、例えば、エクストルーダーにおける出口ノズルから排出される衣材原料の加工物を、略球状体となるような長さに連続的に切断することにより行うことができる。具体的には、例えば、エクストルーダーにおけるダイに取り付ける出口ノズルの口径を、好ましくは2〜4.2mmとし、該ダイに回転式カッターを取り付けて、排出される衣材原料の加工物を、該回転式カッターでそのカット長さを制御して連続的に切断する方法によって行うことができる。
【0014】
本発明の製造方法は、複数の穀物パフを連続的に移動搬送しうる移動面を有する搬送手段と、該移動面との間隔を保持して搬送手段の上方に設けた押圧手段とを備えたプレス装置を用いて、穀物パフを粉砕する工程(C)を含む。工程(C)で粉砕される穀物パフは、後述する乾燥工程を行った後の穀物パフである必要がある。
工程(C)の粉砕は、前記プレス装置における移動面と押圧手段との間隔の少なくとも一部を、穀物パフの大きさより狭い所定間隔とし、穀物パフを移動させながら、前記所定間隔箇所を通過させることにより行う必要がある。
本発明の製造方法においては、工程(B)で調製した前記特定形態の穀物パフを利用して、前記プレス装置により穀物パフを移動させながら、前記所定間隔を通過させるという方法でプレス粉砕するので、微細な粉砕物の発生率を低くすることが可能であり、また、移動面における穀物パフの重なりを抑制でき、穀物パフやその粉砕物によるプレス装置の動作不良、例えば、前記所定間隔箇所を通過させる際に詰まり等が生じるのを抑制することができる。
【0015】
前記所定間隔は、穀物パフの大きさより狭い範囲であれば良いが、効率的には、穀物パフの最大径等によって決定できる。例えば、上述のような穀物パフの最大径が3〜30mmの場合には、該穀物パフの平均最大径より狭くなるように、前記所定間隔を1〜22mm程度狭い範囲とすることが好ましい。工程(C)に用いるプレス装置における前記所定間隔の箇所を複数設ける場合には、該箇所を穀物パフが通過する順に、所定間隔を狭くすることが好ましく、この場合は、最終のプレス粉砕する箇所の所定間隔を、2〜8mmとすることが、所望粒度の粉砕物を効率よく得られる点で好ましい。前記所定間隔の箇所は、1箇所でも良いが、2箇所設けて2段階でプレス粉砕することが、所望粒度の割合をより高くする制御がし易い点で好ましい。
【0016】
前記プレス装置としては、例えば、搬送手段の移動面が無端ベルトで構成され、該搬送手段が、該無端ベルトを回転させる複数のローラを備えたベルトコンベアーであり、押圧手段が、前記無端ベルトの幅方向の長さと略同一幅のローラであって、該押圧手段のローラが、ベルトコンベアーのローラの少なくとも1つの上方に設けられている装置が挙げられる。
【0017】
上記プレス装置を用いる場合、複数の穀物パフを、ベルトコンベアーの無端ベルト上に、重ならないように連続供給し、無端ベルトにより移動させる。穀物パフが、押圧手段のローラ面とベルトコンベアーのローラ上の無端ベルトとで形成される前記所定間隔となっている箇所に到達し、通過することにより、上記両ローラにより押圧されプレス粉砕される。前記所定間隔箇所が複数ある場合は、プレス粉砕が繰返される。
上記両ローラの回転速度は、粉砕の制御がし易い点からは、なるべくせん断力が生じないように同一速度にすることが好ましい。
【0018】
また、上記と別のプレス装置としては、例えば、搬送手段の移動面が無端ベルトで構成され、該搬送手段が、該無端ベルトを回転させる複数のローラを備えた第1のベルトコンベアーであり、押圧手段が、無端ベルトと複数のローラとを備えた、第1のベルトコンベアーの長手方向の長さより短い第2のベルトコンベアーであって、該第2のベルトコンベアーが、第1のベルトコンベアーと、穀物パフの移動方向側に向かってテーパをなすように、且つ該テーパの先端側のローラ部分の間隔が、前記所定間隔となるように設置されている装置が挙げられる。
このような装置において、第2のベルトコンベアーが複数設置される場合には、複数の第2のベルトコンベアーは、第1のベルトコンベアーの長手方向に、直列に間隔をおいて設置される。
【0019】
上記別のプレス装置を用いる場合、複数の穀物パフを、第1のベルトコンベアーの無端ベルト上に、重ならないように連続供給し、無端ベルトにより移動させる。穀物パフが、押圧手段を備える第2のベルトコンベアーの前記所定間隔となっている箇所に到達し、通過することにより、上記所定箇所で押圧されプレス粉砕される。前記所定間隔箇所が複数ある場合には、プレス粉砕が繰返される。
ここで、第2のベルトコンベアーは、穀物パフの移動方向側に向かってテーパをなすように設置されているので、移動している穀物パフは、第2のベルトコンベアーの上記所定間隔箇所に到達するまで、第2のベルトコンベアーの無端ベルトにより、重ならないようにガイドされ、重なるおそれが生じた場合には、その穀物パフが、第2のベルトコンベアーの上記所定間隔箇所に到達するまでの無端ベルトに接触してそれが防止される。
上記第1のベルトコンベアーの無端ベルトと第2のベルトコンベアーの無端ベルトとを回転させる速度は、粉砕の制御がし易い点からは、なるべくせん断力が生じないように同一速度にすることが好ましい。
【0020】
上記各プレス装置のベルトコンベアーにおいて、無端ベルトを回転させる複数のローラは、通常、端部の1つ又は両端部の2つのローラに回転の動力源が接続され、他のローラは、無端ベルトの回転をガイドするように構成される。また、無端ベルトの材質及び表面形状は、穀物パフ搬送中の落下、粉砕中の逃げを抑制するために、滑り難い材質及び表面形状とすることが好ましい。
本発明の製造方法においては、上記無端ベルトを回転させる速度を制御することで、工程(C)の粉砕の程度を調整することが可能であって、このような調整により、所望粒度の穀物パフの粉砕物をより効率良く得ることができる。
【0021】
本発明の製造方法においては、前記工程(B)で得られる穀物パフを、工程(C)における粉砕前に乾燥させる乾燥工程を行う必要がある。該乾燥工程は、公知の方法で行うことができ、例えば、常温で放冷又は冷却乾燥により行うことができる。
また本発明の製造方法において上記乾燥工程は、例えば、前記工程(B)で得られた穀物パフを、工程(C)に用いるプレス装置の移動面に連続的に供給し、該移動面上において粉砕前に行うことができる。また、工程(C)に用いるプレス装置の搬送手段の前に、適宜別のコンベアー等の搬送手段を設けて穀物パフを搬送することでその間に乾燥させることもできる。
上記のような乾燥工程の方法は、工程(B)と工程(C)とを実質的に連続して行うことができ、工業生産に有利である。この際、乾燥は、穀物パフが粉砕されるまでの移動距離やその雰囲気温度並びに湿度等を調整する方法等により行うことができる。
乾燥工程における乾燥は、穀物パフの水分量が15%以下となるように行うことが好ましい。
乾燥工程を行わない場合は、膨化直後の穀物パフがやわらかいため、粉砕工程において潰れて変形するのみで、所望の粉砕ができない。
【0022】
本発明の製造方法では、上述の工程(C)により、長径1.18mm未満の穀物パフの粉砕物量が50質量%以下、好ましくは30質量%以下の微細な粉砕物の割合が低い粉砕物を得ることができる。このようにして得られた穀物パフの粉砕物は、そのまま所望の揚げ物食品の衣材として使用できる他、必要により、分級して所望粒度のものを用いることも可能である。
本発明の製造方法において、工程(A)に用いる揚げ物用衣材原料として、上述の米粉及び/又は米粉砕物を用いた場合には、上述の工程(C)により、穀物パフの粉砕物が、長径1.18mm未満の含有量が50質量%以下、好ましくは30質量%以下、長径1.18mm〜5.6mmの含有量が50質量%以上、好ましくは70質量%以上の粉砕物を得ることができる。このような米粉及び/又は米粉砕物を用いた長径1.18mm〜5.6mmの含有量が多い粉砕物は、例えば、コロッケ、トンカツ、アジフライ、イカリングフライ等の揚げ物食品の衣材として用いた場合、香ばしい風味、独特のカリッとした食感を演出でき、かつ微粉が舞い上がらないという工業的生産におけるライン適性を持つ点で好ましい。
【0023】
前記粉砕物の長径及びその割合の測定は、粉砕物を目開き1.18mm、5.6mmのふるいで分級後、質量を測定し、割合を算出することにより求めることができる。
【0024】
本発明の揚げ物食品は、中種と、該中種を被覆した本発明の製造方法により得られた揚げ物用衣材とを含む。
中種は、揚げ物食品に用いられる公知の中種を使用することができる。該中種を本発明の製造方法により得られた揚げ物用衣材により被覆するには、通常、中種の外表面にバッターを付け、本発明の製造方法により得られた揚げ物用衣材を付着させることにより行うことができる。
バッターは、揚げ物食品に用いられる公知のバッターを用いることができる。例えば、水、各種穀物粉、各種タンパク質素材、油脂、粉末油脂、油脂粉末、各種澱粉類、各種増粘剤、各種乳化剤等を適宜組み合わせた公知のバッターを用いることができる。
【0025】
上記本発明の製造方法により得られた揚げ物用衣材により被覆した油ちょう前の揚げ物食品は、例えば、冷蔵又は冷凍し、冷蔵製品又は冷凍製品として流通させることができる。
また、上記油ちょう前の揚げ物食品を油ちょうして、揚げ物食品として流通させることもできる他、油ちょう後に冷蔵又は冷凍し、冷蔵製品又は冷凍製品として流通させることができる。
前記冷凍及び油ちょうは、中種の種類や揚げ物食品の種類等に応じて公知の条件で行うことができる。
【実施例】
【0026】
以下本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
米粉砕物(商品名「米グリッツ」、熊本製粉株式会社製)80kg、水2.7kg及び粉末醤油(商品名「粉末しょうゆKS」、キッコーマン食品株式会社製)1.6kgを撹拌混合機(商品名「大竹式渦巻麺捏機」、株式会社大竹麺機製)で均一混合した。得られた混合物を、出口ノズル径2.0mmのダイ(24穴)及び回転式カッターを備えた一軸型エクストルーダー(商品名「P7型パフマシン」、株式会社オオヤマフーズマシナリー製)を用いて、本体スクリュー280rpm、バンド温度130℃の条件で、加熱加圧処理を行い、該処理物をエクストルーダーの出口ノズルから連続的に排出させ、取り付けた回転カッターで、得られる米パフが略球状体となる長さにカットして、略球状の米パフを得た。
得られた米パフを、後述するプレス装置とは別に準備した乾燥用ベルトコンベアー上を移動させることにより乾燥させ、その平均の最大径を測定した。該測定は、無作為に10個の米パフの最も長い箇所をノギスで測定し、平均値を算出することにより求めた。その結果、平均の最大径は約8.5mmであった。
【0027】
一方、水平に並べられたローラ20本(片方の端部ローラに回転モータ付き)に、食品搬送用無端ベルトを巻いた長さ約2.5mの第1のベルトコンベアーと、その上方に、ローラ9本(片方の端部ローラに回転モータ付き)に、食品搬送用無端ベルトを巻いた長さ約0.5mの第2のベルトコンベアー2機とを備えたプレス装置を準備した。このプレス装置の各第2のベルトコンベアーは、第1のベルトコンベアーの長手方向に直列に、間隔25cmをおいて該第1のベルトコンベアーの進行方向に向かってテーパをなすように、また、該進行方向手前に設置された第2のベルトコンベアーの、第1のベルトコンベアーとテーパをなした先端側のローラ部分におけるベルト間隔を3mm、その前方に設置された第2のベルトコンベアーの、第1のベルトコンベアーとテーパをなした先端側のローラ部分におけるベルト間隔を2mmに設定した。尚、第1のベルトコンベアーの速度は、該第1のベルトコンベアーにより搬送されるものが、前記2mmの間隔に到達するまでの時間が約10秒間となるように調整した。
【0028】
上記乾燥した米パフが、重ならないように上記プレス装置の第1のベルトコンベアーに連続的に供給されるようにし、該第1のベルトコンベアー上において米パフを搬送し、上記第2のベルトコンベアーの、第1のベルトコンベアーとテーパをなした先端側のローラ部分におけるベルト間隔部分をそれぞれ通過させ、プレス粉砕し、第1のベルトコンベアーの先端部分から落下する粉砕物を収集した。
得られた粉砕物の粒度分布を目開き1.18mm、5.6mmのふるいで分級後、各質量を測定し、1.18mm未満、1.18〜5.6mm、5.6mmを超える質量割合を求めた。結果を表1に示す。
【0029】
常法により開いたアジにバッターを付け、上記で得られた粉砕物を衣材として約15g付着させた。これを−35℃で急速凍結した後、170〜180℃の油で揚げてアジフライを調製した。
得られたアジフライの吸油割合は、酸分解法により、脂質量を定量することにより行った。結果を表1に示す。
【0030】
実施例2
一軸型エクストルーダーの出口ノズル径を2.4mmとした以外は、実施例1と同様にの米パフ、その粉砕物、アジフライを調製し、各測定を行った。結果を表1に示す。
【0031】
実施例3
一軸型エクストルーダーの出口ノズル径を4.2mmとし、プレス装置における第2のベルトコンベアーの、第1のベルトコンベアーとテーパをなした先端側のローラ部分におけるベルト間隔を6mm、及び3mmにそれぞれ設定を変更した以外は、実施例1と同様にの米パフ、その粉砕物、アジフライを調製し、各測定を行った。結果を表1に示す。
【0032】
比較例1
一軸型エクストルーダーの出口ノズルから連続的に排出される処理物を、回転カッターにより、実施例1より約3倍の長さにカットして、棒状の米パフを得た以外は、実施例1と同様にプレス粉砕を行った。
その結果、棒状の米パフが第1のベルトコンベアーによる搬送中に立ち上がりや、重なりが生じ、粉砕箇所における詰まりが生じてプレス装置が動作不良となったので衣材の製造を中止した。
【0033】
比較例2
プレス装置の代わりに、パン粉粉砕機(型式「81SFN」、株式会社ミカワ電機製作所製)を用いた以外は、実施例3と同様に衣材を調製し、その粒度を測定した。結果を表1に示す。
【0034】
比較例3
衣材として、業務用のパン粉(粒度約10mm、主原料:小麦粉)を用いた以外は実施例1と同様にアジフライを調製し、吸油割合を測定した。結果を表1に示す。
【0035】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物粉及び/又は穀物砕物を含む揚げ物用衣材原料を準備する工程(A)と、
穀物パフを製造するために、工程(A)で準備した衣材原料を膨化する工程(B)と、
複数の穀物パフを連続的に移動搬送しうる移動面を有する搬送手段と、該移動面との間隔を保持して搬送手段の上方に設けた押圧手段とを備えたプレス装置を用いて、穀物パフを粉砕する工程(C)とを含み、
工程(B)の膨化を、得られる穀物パフが、実質的に略球状体になるようにエクストルーダーを用いて行い、
工程(B)で得られる穀物パフを、工程(C)における粉砕前に乾燥させる乾燥工程を行い、
工程(C)の粉砕を、前記プレス装置における移動面と押圧手段との間隔の少なくとも一部を、穀物パフの大きさより狭い所定間隔とし、穀物パフを移動させながら、前記所定間隔箇所を通過させることにより行い、
工程(C)により、長径1.18mm未満の穀物パフの粉砕物量が50質量%以下である穀物パフの粉砕物を得ることを特徴とする揚げ物用衣材の製造方法。
【請求項2】
工程(B)において、エクストルーダーにおける出口ノズルから排出される衣材原料の加工物を、得られる穀物パフが実質的に略球状体となるような長さに連続的に切断することを特徴とする請求項1記載の揚げ物用衣材の製造方法。
【請求項3】
工程(B)で得られた穀物パフを、工程(C)に用いるプレス装置の移動面に連続的に供給し、前記乾燥工程を該移動面上において粉砕前に行い、工程(B)と工程(C)とを実質的に連続して行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の揚げ物用衣材の製造方法。
【請求項4】
工程(C)に用いるプレス装置における前記所定間隔の箇所を複数設け、該箇所を穀物パフが通過する順に、所定間隔を狭くしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の揚げ物用衣材の製造方法。
【請求項5】
前記プレス装置における、搬送手段の移動面が無端ベルトで構成され、該搬送手段が、該無端ベルトを回転させる複数のローラを備えたベルトコンベアーであり、押圧手段が、前記無端ベルトの幅方向の長さと略同一幅のローラであって、該押圧手段のローラが、ベルトコンベアーのローラの少なくとも1つの上方に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の揚げ物用衣材の製造方法。
【請求項6】
前記プレス装置における、搬送手段の移動面が無端ベルトで構成され、該搬送手段が、該無端ベルトを回転させる複数のローラを備えた第1のベルトコンベアーであり、押圧手段が、無端ベルトと複数のローラとを備えた、第1のベルトコンベアーの長手方向の長さより短い第2のベルトコンベアーであって、該第2のベルトコンベアーが、第1のベルトコンベアーと、穀物パフの移動方向側に向かってテーパをなすように、且つ該テーパの先端側のローラ部分の間隔が、前記所定間隔となるように設置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の揚げ物用衣材の製造方法。
【請求項7】
複数の第2のベルトコンベアーを、第1のベルトコンベアーの長手方向に、直列に間隔をおいて設置したことを特徴とする請求項6記載の揚げ物用衣材の製造方法。
【請求項8】
工程(A)に用いる穀物粉及び/又は穀物砕物が、米粉及び/又は米破砕物を50質量%以上含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の揚げ物用衣材の製造方法。
【請求項9】
工程(C)により得られる穀物パフの粉砕物が、長径1.18mm未満の含有量が50質量%以下、長径1.18mm〜5.6mmの含有量が50質量%以上であることを特徴とする請求項8記載の揚げ物用衣材の製造方法。
【請求項10】
工程(A)に用いる揚げ物用衣材原料が、調味料を含む請求項1〜9のいずれかに記載の揚げ物用衣材の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法により得られた、揚げ物用衣材。
【請求項12】
中種と、該中種を被覆した請求項11記載の揚げ物用衣材とを含むことを特徴とする油ちょう前の揚げ物食品。
【請求項13】
請求項12記載の油ちょう前の揚げ物食品を油ちょうした揚げ物食品。

【公開番号】特開2012−39896(P2012−39896A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181669(P2010−181669)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(505126610)株式会社ニチレイフーズ (71)
【Fターム(参考)】