説明

搬送ガイド装置及び画像形成装置

【課題】通紙による搬送ガイド部材の表面電位の上昇を抑え、転写部から定着部にかけて記録材が搬送される際の画像の乱れを防止することができる搬送ガイド装置を提供する。
【解決手段】転写部で記録材に転写されたトナー像を定着部で定着して画像を形成する画像形成装置に備えられ、トナー像転写後の記録材の搬送をガイドして定着部の定着ニップに記録材を搬送する搬送ガイド装置30において、少なくとも1つ以上の搬送ガイド部材31を有し、搬送ガイド部材31に超音波振動を与えて表面の摩擦係数を低減させる超音波発生装置50を設置した。搬送ガイド部材に超音波振動を発生させると振動している表面は摩擦係数が著しく低下するため、記録材と搬送ガイド部材が搬送中に接触しても接触圧としては小さくなり、摩擦帯電が生じにくく表面電位が上昇しにくくなるので、転写後から定着前にかけて記録材が搬送される際の画像の乱れを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの機能を有する複合機等の電子写真方式の画像形成装置に関し、より詳しくは、トナー像の記録材への転写部から定着部に至る間に配設される搬送ガイド装置と、その搬送ガイド装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、電子写真プロセスを経て像担持体(感光体あるいは中間転写体)上に形成したトナー像を転写部で転写装置により紙等の記録材(定型の普通紙、葉書、厚紙、薄紙、OHPシート等)に転写するが、転写後はトナー像が記録材に静電的に付着した状態で定着部の定着装置に搬送され、定着装置によってトナー像は記録材に固着する。そのため転写部−定着部間には搬送ガイド部材が少なくとも1つは存在しており、記録材が定着ニップに到達するように設置されている。転写後の記録材が搬送部材を介して搬送されている最中は搬送ガイド部材の表面電位と記録材上のトナー電荷に大きな差が生じるとトナー像の乱れが発生することがあるため、搬送ガイド部材表面には中抵抗あるいは高抵抗の材質が用いられている。
【0003】
また、特許文献1(特開2009−237522号公報)には、近年の転写紙種類の増加による画像乱れの発生を防止し、飛散したトナーに伴う転写紙の汚れ等の異常画像を防止することを目的として、表面が中抵抗又は絶縁性部分である転写出口ガイド部材と、該転写出口ガイド部材の表面から突出して転写紙の搬送を案内する回転リブと、を備える転写装置の転写紙搬送ガイド板において、前記回転リブの少なくとも転写紙と接触する部位は導電性で構成されかつ抵抗体を介して接地されている構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の搬送ガイド部材は表面材質の抵抗を高くしているため、記録材と搬送ガイド部材との接触による摩擦帯電で通紙枚数毎に搬送ガイド部材の表面電位が上昇してしまうことがある。表面電位の上昇については記録材と搬送ガイド部材表面の摩擦係数や電気抵抗値、転写電流値や除電方式によって様々であるが、表面電位の上昇に伴い、やがて記録材上のトナー像の乱れが発生してしまうという問題があった。また前述の特許文献1に記載の従来技術においても、搬送ガイド部材の表面電位の上昇という問題は解消できていない。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、搬送ガイド部材に超音波振動を与えて記録材との摩擦係数を低減することによって、通紙による表面電位の上昇を抑えることができ、転写部から定着部にかけて記録材が搬送される際の画像の乱れを防止することができる搬送ガイド装置と、その搬送ガイド装置を備え、画像の乱れによる異常画像の発生を防止することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明では以下のような解決手段を採っている。
本発明の第1の解決手段は、像担持体に形成したトナー像を転写部で記録材に転写し、該記録材に転写されたトナー像を定着部で定着して画像を形成する画像形成装置に備えられ、トナー像転写後の前記記録材の搬送をガイドして前記定着部の定着ニップに記録材を搬送する搬送ガイド装置において、少なくとも1つ以上の搬送ガイド部材を有し、前記搬送ガイド部材に超音波振動を与えて表面の摩擦係数を低減させる超音波発生装置を設置したことを特徴とする(請求項1)。
【0007】
本発明の第2の解決手段は、第1の解決手段の搬送ガイド装置において、前記超音波発生装置により、前記搬送ガイド部材に超音波振動の定在波を発生することを特徴とする(請求項2)。
また本発明の第3の解決手段は、第2の解決手段の搬送ガイド装置において、前記定在波の位相が変更可能であることを特徴とする(請求項3)。
【0008】
本発明の第4の解決手段は、第3の解決手段の搬送ガイド装置において、前記搬送ガイド部材が搬送方向において領域が区切られていることを特徴とする(請求項4)。
また本発明の第5の解決手段は、第4の解決手段の搬送ガイド装置において、前記搬送ガイド部材の隣合う領域の定在波が同位相にならないことを特徴とする(請求項5)。
【0009】
本発明の第6の解決手段は、第5の解決手段の搬送ガイド装置において、搬送経路の位置に応じて前記超音波発生装置の振動出力を制御することを特徴とする(請求項6)。
また本発明の第7の解決手段は、第5の解決手段の搬送ガイド装置において、前記記録材の種類に応じて前記超音波発生装置の振動出力を制御することを特徴とする(請求項7)。
【0010】
本発明の第8の解決手段は、第6又は第7の解決手段の搬送ガイド装置において、前記搬送ガイド部材の通紙面の表面電位を測定する表面電位測定装置を有し、前記超音波発生装置の振動出力を前記表面電位測定装置による表面電位の測定結果をもとに制御することを特徴とする(請求項8)。
また本発明の第9の解決手段は、第1〜第8のいずれか一つの解決手段の搬送ガイド装置において、前記搬送ガイド部材を、転写部−定着部間の記録材搬送経路の全てに配置することを特徴とする(請求項9)。
【0011】
本発明の第10の解決手段は、像担持体に形成したトナー像を転写部で記録材に転写し、該記録材に転写されたトナー像を定着部で定着して画像を得る画像形成装置において、前記転写部と前記定着部の間の記録材搬送経路に、第1〜第9のいずれか一つの解決手段の搬送ガイド装置を備えたことを特徴とする(請求項10)。
【発明の効果】
【0012】
第1の解決手段の搬送ガイド装置では、少なくとも1つ以上の搬送ガイド部材を有し、前記搬送ガイド部材に超音波振動を与えて表面の摩擦係数を低減させる超音波発生装置を設置したことにより、搬送ガイド部材に超音波振動を発生させると振動している表面は摩擦係数が著しく低下するため、記録材と搬送ガイド部材が搬送中に接触しても接触圧としては小さくなり、摩擦帯電が生じにくく、表面電位が上昇しにくくなるので、転写後から定着前にかけて記録材が搬送される際の画像の乱れを防止することができる。
【0013】
第2の解決手段の搬送ガイド装置では、第1の解決手段の効果に加え、超音波発生装置により、搬送ガイド部材に超音波振動の定在波を発生することにより、定在波の足の位置で記録材と接触するため、必ず同じ位置で接触することになり、1枚毎に記録材の挙動が異なって搬送品質にばらつきをもたらすということがないという効果が得られる。
また、第3の解決手段の搬送ガイド装置では、第2の解決手段の効果に加え、定在波の位相が変更可能であることにより、定在波によって同じ位置で記録材と接触するため、定在波の足の位置を変えて表面電位の局所的な上昇を防ぐことができるという効果が得られる。
【0014】
第4の解決手段の搬送ガイド装置では、第3の解決手段の効果に加え、搬送ガイド部材が搬送方向において領域が区切られていることにより、搬送ガイド部材の通紙面の表面積が大きい場合、定在波の振幅が搬送方向において一様にならない可能性があり、接触圧ムラが生じることがあるが、これを防ぐことができるという効果が得られる。
また、第5の解決手段の搬送ガイド装置では、第4の解決手段の効果に加え、搬送ガイド部材の隣合う領域の定在波が同位相にならないことにより、定在波の足の位置を搬送方向においてずらしてやることで搬送中の記録材が波打ち形状になることを防ぐという効果が得られる。
【0015】
第6の解決手段の搬送ガイド装置では、第5の解決手段の効果に加え、搬送経路の位置に応じて超音波発生装置の振動出力を制御することにより、搬送レイアウトによっては記録材と搬送ガイド部材が強く接触する箇所とそうでない箇所に分かれることもあるので、強く接触する領域は振動出力を上げることによって搬送経路内における表面電位の差を抑えることができるという効果が得られる。
また、第7の解決手段の搬送ガイド装置では、第5の解決手段の効果に加え、記録材の種類に応じて超音波発生装置の振動出力を制御することにより、厚紙では搬送ガイド部材との接触圧が高いため、振動出力を高く設定して表面電位の上昇を抑えたり、薄紙のときは振動出力を下げて紙をばたつかせないようにするというように、記録材の種類による接触圧のばらつきを抑えることができるという効果が得られる。
【0016】
第8の解決手段の搬送ガイド装置では、第6又は第7の解決手段の効果に加え、搬送ガイド部材の通紙面の表面電位を測定する表面電位測定装置を有し、超音波発生装置の振動出力を表面電位測定装置による表面電位の測定結果をもとに制御することにより、搬送中の画像の乱れに直結する搬送ガイド部材の表面電位を検知することで適切な振動出力を制御することができるという効果が得られる。
また、第9の解決手段の搬送ガイド装置では、第1〜第8のいずれか一つの解決手段の効果に加え、搬送ガイド部材を、転写部−定着部間の記録材搬送経路の全てに配置することにより、転写部−定着部間における搬送ガイド部材の表面電位上昇による画像の乱れを防ぐことができるという効果が得られる。
【0017】
第10の解決手段の画像形成装置では、転写部と定着部の間の記録材搬送経路に、第1〜第9のいずれか一つの解決手段の搬送ガイド装置を備えたことにより、画像の乱れによる異常画像の発生を防止することができ、高品質な画像形成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例を示す図であって、タンデム型中間転写方式の画像形成装置の構成例について説明する図である。
【図2】本発明の一実施例を示す図であって、搬送ガイド部材に超音波発生装置を設置した搬送ガイド装置の構成例について説明する図である。
【図3】搬送ガイド部材に超音波振動の定在波を発生させた場合の実施例について説明する図である。
【図4】搬送ガイド部材に発生させた定在波の位相を変化させる場合の実施例について説明する図である。
【図5】搬送ガイド部材が搬送方向において領域毎に区切られている場合の実施例について説明する図である。
【図6】搬送ガイド部材の表面電位を測定して振動出力を制御する場合の実施例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明は、画像形成装置における転写後から定着前にかけて設置されている搬送ガイド部材において、通紙毎に記録材との摩擦帯電で搬送ガイド部材の表面電位が上昇してしまい、記録材に転写された画像に乱れが発生するという課題に対して、それを解決するための以下の特徴を有する。
本発明では、像担持体(感光体または中間転写体)に形成したトナー像を転写部で記録材に転写し、該記録材に転写されたトナー像を定着部で定着して画像を形成する画像形成装置に備えられ、トナー像転写後の前記記録材の搬送をガイドして前記定着部の定着ニップに記録材を搬送する搬送ガイド装置において、少なくとも1つ以上の搬送ガイド部材を有し、前記搬送ガイド部材に超音波振動を与えて表面の摩擦係数を低減させる超音波発生装置を設置した構成としたものである。
すなわち本発明の搬送ガイド装置では、超音波発生装置を設置して搬送ガイド部材に超音波振動を発生させると、振動している表面は摩擦係数が著しく低下するため、記録材と搬送ガイド部材が搬送中に接触しても接触圧としては小さくなり、摩擦帯電が生じにくく、表面電位が上昇しにくくなることが特徴になっている。
上記の本発明の特徴について、以下、図示の実施例に基づいて詳細に解説する。
【実施例】
【0020】
図1は、本発明の一実施例を示す図であって、タンデム型中間転写方式の画像形成装置の構成例について説明する図である。
図1に示す画像形成装置は、中間転写体に沿って複数の画像形成手段を配置したカラープリンタの一例であるが、画像形成装置本体の排紙トレイ40の上方に画像読取部(スキャナ)を設置すればカラー複写機の構成となり、さらに外部回線(電話回線、光回線)との通信機能を付加すればファクシミリとして使用することができ、さらにローカルエリアネットワーク(LAN)とも接続すれば、プリンタ、複写機、ファクシミリ、スキャナの機能を有するカラー複合機の構成となる。
【0021】
図1において、画像形成装置本体には、中央に、像担持体である無端ベルト状の中間転写体6が設けられている。この中間転写体6は、多層構造となっておりベース層を例えば伸びの少ないフッ素樹脂やPVDシート、ポリイミド系樹脂で作り、表面をフッ素系樹脂等の平滑性のよいコート層で被ってある。そして、中間転写体6は支持ローラ15、16、18、19に掛け回して図中反時計回りに回転搬送可能とする。図中左側の支持ローラ19の更に左側には、画像転写後に中間転写体6上に残留する残留トナーを除去する中間転写体クリーニング装置7を設けている。また支持ローラ16と支持ローラ18間に張り渡した中間転写体6上には、その搬送方向に沿って、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(B)の4つの画像形成手段を横に並べて配置し、タンデム画像形成装置を構成している。そのタンデム画像形成装置の下には、さらに露光装置5が設けられている。
【0022】
上記の4つの画像形成手段は、現像に用いるトナーの色が異なるが構成は同じであり、像担持体であるドラム状の感光体1(1Y,1C,1M,1B)と、その周囲に配設された帯電装置2、現像装置3、一次転写装置(例えば一次転写ローラ)17、感光体クリーニング装置4等を備えている。
各画像形成手段では、画像形成動作が開始されると、各感光体1が帯電装置2により帯電され、露光装置(例えばレーザ光源と光偏向器と走査結像光学系等からなる光走査方式の露光装置、あるいはLEDアレイとレンズアレイ等を組み合わせた露光装置等)からの画像データに応じた露光により感光体上に静電潜像が形成される。各感光体上の静電潜像は現像装置3の現像剤のトナー(イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(B)の各色のトナー)により現像されて可視像化され、該可視像(各色のトナー像)は、一次転写ローラ17により中間転写体6に重ね合わせて一次転写される。トナー像転写後の各感光体1は感光体クリーニング装置4で残留トナーを除去され、再度の画像形成に備える。
【0023】
一方、中間転写体6の図中右側の支持ローラ15の対向側には、二次転写装置を備えている。図示の例では、二次転写装置は二次転写ローラ8と該二次転写ローラ8を中間転写体方向に加圧する加圧部材9とから構成されており、画像形成装置本体の下部に設けた給紙バンク21から搬送されてきた記録材Pに中間転写体6上のトナー像を二次転写する。
二次転写装置の上には、記録材上の転写画像を定着する定着装置10を設けている。定着装置10は、内部に加熱源を有する定着ローラ12に加圧ローラ13を押し当てて構成する。
上述した二次転写装置の二次転写ローラ8には、画像転写後の記録材を定着装置10の定着ニップへと搬送する搬送機能も備えている。さらに、二次転写ローラ8と定着ニップの間には、複数の搬送ガイド部材31、11を備える搬送ガイド装置30が設置されており、二次転写装置の二次転写ローラ8により中間転写体6からトナー像が転写された記録材は、二次転写ローラの回転により搬送され、搬送ガイド部材31及び11を介して定着装置10の定着ニップに搬送される。
【0024】
以上のような構成の画像形成装置において、不図示の操作部(操作パネル)のスタートスイッチが押されると、画像形成動作が開始され、不図示の駆動モータで支持ローラ15、16、19の1つが回転駆動して他の4つの支持ローラを従動回転させ、中間転写体6が回転搬送する。同時に個々の画像形成手段では、感光体1Y,1C,1M,1Bを回転させて上述した画像形成を行い、それぞれイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(B)の単色画像を形成する。そして中間転写体6の搬送とともに、それらの単色画像を順次転写して中間転写体6上に合成カラー画像を形成する。
【0025】
一方、上記の画像形成動作にタイミングを合わせて、給紙バンク21に多段に備える給紙カセット22(図では、サイズの異なる記録材(B5,A4,B4,A3等の定型の記録紙)を収容した給紙カセット22が上下に2段設置されている)の1つを選択して、選択された給紙カセット22の給紙ローラ23を回転し、記録材Pを繰り出し、分離ローラ24で1枚ずつ分離して給紙路25に入れ、搬送ローラ26で搬送して画像形成装置本体内の給紙路27に導き、レジストローラ28に突き当てて止める。そして、中間転写体6上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ28を回転し、中間転写体6と二次転写装置の二次転写ローラ8との間の転写部に記録材Pを送り込み、二次転写装置で静電転写して記録材上にカラー画像を記録する。画像転写後の記録材Pは、二次転写装置の二次転写ローラ8の回転により搬送され、搬送ガイド装置30の搬送ガイド部材31、11を介して定着部の定着装置10へと送り込まれ、定着装置10の定着ローラ12と加圧ローラ13とが圧接する定着ニップで熱と圧力とを加えて転写画像を記録材Pに定着した後、排出ローラ39で排出し、排紙トレイ40上にスタックする。
【0026】
一方、画像転写後の中間転写体6は、中間転写体クリーニング装置7で、画像転写後に中間転写体6上に残留した残留トナーを除去し、タンデム画像形成装置による再度の画像形成に備える。
【0027】
次に、図1に示すような構成の画像形成装置に装備される搬送ガイド装置の実施例を説明する。
図2は、本発明の一実施例を示す図であって、搬送ガイド部材に超音波発生装置を設置した搬送ガイド装置の構成例について説明する図である。
図示の例では、二次転写装置の転写部の出口側に配設されている搬送ガイド部材31に対して超音波発生装置50により超音波振動させる場合の構成例を示しているが、超音波発生装置50は搬送ガイド部材31の通紙面の裏側に設置する。また、超音波振動を搬送ガイド部材31の通紙面表面に発生させるために、超音波発生装置50は搬送ガイド部材31と接着また締結されている必要がある。
【0028】
超音波発生装置50の超音波発生源としては、PZTなどの圧電素子51が用いられ、この圧電素子51を2枚の電極板52で挟み、超音波領域の周波数で交流電圧を印加すると圧電素子51が超音波振動するというものである。圧電素子51は極性方向53を有しており、その方向にプラス(+)の直流電圧を印加すると圧電素子51が伸び、マイナス(−)の直流電圧を印加すると圧電素子51が縮むというものである。超音波振動自体は振動周期が短く、振動・振幅が非常に小さいため、搬送ガイド部材31と超音波発生装置50を組み合わせた部材の共振周波数が超音波領域の駆動周波数となるように材質や大きさ、形状を決定する必要がある。また、搬送ガイド部材31の固体ばらつきや環境変動による剛性の変化等によって共振周波数が変動する場合もあるため、超音波発生装置50に具備する交流電圧印加装置V1には周波数調整機能が備わっている。
【0029】
図3は、搬送ガイド部材に超音波振動の定在波を発生させた場合の実施例について説明する図である。
超音波発生装置50の超音波発生源となる圧電素子51を軸方向に対して複数個に分け、隣り合う圧電素子51の極性方向53が互いに逆向きになるように配置することで交流電圧の印加とともに搬送ガイド部材31表面に定在波を発生させることができる。但し、搬送ガイド部材31と超音波発生装置50を組み合わせた部材において、狙いの波数となる振動モードの共振周波数が超音波領域に存在する必要がある。
【0030】
搬送ガイド部材31に超音波振動の定在波が発生している場合、節の位置は振動せず、足の位置54で振動振幅が最大となるため、搬送ガイド部材31は主に足の位置54で記録材Pと接触することになる。そのため記録材Pは必ず同じ位置で搬送ガイド部材31と接触することになり、通紙毎に搬送中の記録材Pの挙動が変化することが少なくなる。
【0031】
このように、本実施例では、搬送ガイド部材31に超音波振動の定在波を発生することにより、定在波の足の位置54で記録材Pと接触するため、必ず同じ位置で接触することになり、1枚毎に記録材の挙動が異なって搬送品質にばらつきをもたらすということがない。
【0032】
また、定在波の波の方向については、図示の例では軸方向に定在波を発生させているが、搬送方向に定在波を発生させてもよい。但し、定在波の位相が変更可能であるとし、定在波の位相を変化させる場合には、搬送ガイド部材31と記録材が接触する位置が搬送方向で変わってくるため、記録材の挙動(記録材のたるみ方など)のばらつきが発生する恐れがある。
【0033】
図4は、搬送ガイド部材に発生させた定在波の位相を変化させる場合の実施例について説明する図である。
搬送ガイド部材31に定在波を発生させた場合、記録材Pは定在波の足の位置54でばかり接触するため、摩擦係数が低下しているとはいえ、通紙を繰り返すうちにやがて搬送ガイド部材31の表面電位が上昇してしまう恐れがある。そこで、定期的に定在波の位相を変化させて、記録材Pが搬送ガイド部材31の特定の位置でしか接触しなくならないようにする。
【0034】
定在波の位相を変化させるために必要な構成として、図示の例では、超音波発生装置50は、逆極性同士で隣接する圧電素子51に対してずらしたい位相分だけ軸方向にずらした圧電素子51をもう一組設置しておき、位相変化の際には、切り替えスイッチ等で前者の圧電素子から後者の圧電素子に切り替えて、交流電圧印加装置V1で交流電圧を印加することで、定在波の足の位置54が変化し、記録材Pとの接触点が変化する。
【0035】
このように、本実施例では、定在波の位相が変更可能であることにより、定在波によって同じ位置で記録材と接触するため、定在波の足の位置54を変えて表面電位の局所的な上昇を防ぐものである。
【0036】
図5は、搬送ガイド部材が搬送方向において領域毎に区切られている場合の実施例について説明する図である。
図5(a)の例では、搬送ガイド部材を搬送方向において幾つかの領域に分けており、搬送方向上流側から搬送ガイド部材31、32、33としている。この場合、圧電素子51を小さくすることができるといったメリットもある。
【0037】
そもそも搬送方向において一様の定在波を発生させた場合、薄紙などコシの弱い記録材Pが通紙された場合に、定在波の形状にならってしまい、軸方向に波打った状態で記録材が定着に搬送される恐れがある。
そこで、図5(a)に示すように、搬送方向において搬送ガイド部材を複数の領域に区切り、搬送ガイド部材31、32、33とし、同図(b)の波形図に示すように、特に隣り合うガイド部材とは定在波の位相が同じにならないようにすることで前述の問題を解決することができる。なお、この場合には、それぞれの区切られた搬送ガイド部材31、32、33について交流電圧印加装置(交流電源)V1、V2、V3を有する必要がある。
【0038】
このように、本実施例では、搬送ガイド部材31、32、33の隣合う領域の定在波が同位相にならないことにより、定在波の足の位置を搬送方向においてずらしてやることで搬送中の記録材が波打ち形状になることを防ぐことができる。
【0039】
なお、上記の構成の場合、特に記録材が強く接触する搬送レイアウトについては、強く接触する領域で超音波発生装置50の振動出力を大きくしたり、ほとんど接触しないところは振動出力を小さくするといった制御を設ける。具体的にはそれぞれの領域の超音波発生装置50に交流電圧を印加する交流電圧印加装置(交流電源)V1、V2、V3について、それぞれ個別の電圧設定ができるようにしておく。これによって搬送ガイド部材31、32、33の局所的な表面電位の上昇を抑えることができ、消費電力の無駄な浪費も防ぐことができる。
【0040】
このように、本実施例では、搬送経路の位置に応じて超音波発生装置50の振動出力を制御することにより、搬送レイアウトによっては記録材と搬送ガイド部材が強く接触する箇所とそうでない箇所に分かれることもあるので、強く接触する領域は振動出力を上げることによって搬送経路内における表面電位の差を抑えることができる。
【0041】
また、本実施例では、厚紙や薄紙など通紙される記録材の紙種情報に応じて交流電圧印加装置(交流電源)V1、V2、V3を制御して超音波発生装置50の振動出力を制御する機能を設ける。これによって様々な種類の記録材を通紙された場合でも適切な接触圧で搬送ガイド部材31から33と接触させ、表面電位の上昇が予測できなくなるということを防ぐことができる。
すなわち、本実施例では、記録材の種類に応じて超音波発生装置50の振動出力を制御することにより、厚紙では搬送ガイド部材との接触圧が高いため、振動出力を高く設定して表面電位の上昇を抑えたり、薄紙のときは振動出力を下げて紙をばたつかせないようにするというように、記録材の種類による接触圧のばらつきを抑えることができる。
【0042】
図6は、搬送ガイド部材の表面電位を測定して振動出力を制御する場合の実施例について説明する図である。
図6に示すように、搬送ガイド部材31の表面電位を測定する検知部材61を搬送ガイド部材31の通紙面に接触して設け、表面電位測定装置60で定期的に搬送ガイド部材31の通紙面の表面電位を測定して記憶装置62(通常、画像形成装置の制御部に設けられた記憶装置が併用されるが、別途に不揮発性RAM等のメモリを設けてもよい)に情報を蓄えておくことで、前述した振動出力制御の精度を上げることができる。
【0043】
このように、本実施例では、搬送ガイド部材31の通紙面の表面電位を測定する表面電位測定装置60を有し、超音波発生装置50の振動出力を表面電位測定装置60による表面電位の測定結果をもとに制御することにより、搬送中の画像の乱れに直結する搬送ガイド部材表面電位を検知することで適切な振動出力を制御することができる。
【0044】
なお、上記の実施例では、二次転写装置の転写部の出口側に配設されている搬送ガイド部材31に対して超音波発生装置50により超音波振動させる場合の構成例を説明したが、超音波発生装置50は、定着装置10に近い側の搬送ガイド部材11に設置してもよく、さらには、転写部−定着部間の記録材搬送経路の全ての搬送ガイド部材31、11に超音波発生装置50を配置することにより、転写部−定着部間における搬送ガイド部材31、11の表面電位上昇による画像の乱れを防ぐことができる。
【0045】
図1に示した本実施例の画像形成装置では、転写部と定着部の間の記録材搬送経路に、上記の各実施例の搬送ガイド装置30を備えたことにより、画像の乱れによる異常画像の発生を防止することができ、高品質な画像形成を行うことができる。
【符号の説明】
【0046】
1(1Y,1C,1M,1B):感光体(像担持体)
2:帯電装置
3:現像装置
4:感光体クリーニング装置
5:露光装置
6:中間転写体(像担持体)
7:中間転写体クリーニング装置
8:二次転写ローラ(二次転写装置)
9:加圧部材
10:定着装置
11:搬送ガイド部材
12:定着ローラ
13:加圧ローラ
15、16、18,19:支持ローラ
17:一次転写ローラ(一次転写装置)
21:給紙バンク
22:給紙カセット
23:給紙ローラ
24:分離ローラ
26:搬送ローラ
28:レジストローラ
30:搬送ガイド装置
31、32、33:超音波発生装置を設置した搬送ガイド部材
39:排紙ローラ
40:排紙トレイ
50:超音波発生装置
51:圧電素子
P:記録材
V1、V2、V3:交流電圧印加装置(交流電源)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】特開2009−237522号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に形成したトナー像を転写部で記録材に転写し、該記録材に転写されたトナー像を定着部で定着して画像を形成する画像形成装置に備えられ、トナー像転写後の前記記録材の搬送をガイドして前記定着部の定着ニップに記録材を搬送する搬送ガイド装置において、
少なくとも1つ以上の搬送ガイド部材を有し、前記搬送ガイド部材に超音波振動を与えて表面の摩擦係数を低減させる超音波発生装置を設置したことを特徴とする搬送ガイド装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送ガイド装置において、
前記超音波発生装置により、前記搬送ガイド部材に超音波振動の定在波を発生することを特徴とする搬送ガイド装置。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送ガイド装置において、
前記定在波の位相が変更可能であることを特徴とする搬送ガイド装置。
【請求項4】
請求項3に記載の搬送ガイド装置において、
前記搬送ガイド部材が搬送方向において領域が区切られていることを特徴とする搬送ガイド装置。
【請求項5】
請求項4に記載の搬送ガイド装置において、
前記搬送ガイド部材の隣合う領域の定在波が同位相にならないことを特徴とする搬送ガイド装置。
【請求項6】
請求項5に記載の搬送ガイド装置において、
搬送経路の位置に応じて前記超音波発生装置の振動出力を制御することを特徴とする搬送ガイド装置。
【請求項7】
請求項5に記載の搬送ガイド装置において、
前記記録材の種類に応じて前記超音波発生装置の振動出力を制御することを特徴とする搬送ガイド装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の搬送ガイド装置において、
前記搬送ガイド部材の通紙面の表面電位を測定する表面電位測定装置を有し、前記超音波発生装置の振動出力を前記表面電位測定装置による表面電位の測定結果をもとに制御することを特徴とする搬送ガイド装置。
【請求項9】
請求1〜8のいずれか一つに記載の搬送ガイド装置において、
前記搬送ガイド部材を、転写部−定着部間の記録材搬送経路の全てに配置することを特徴とする搬送ガイド装置。
【請求項10】
像担持体に形成したトナー像を転写部で記録材に転写し、該記録材に転写されたトナー像を定着部で定着して画像を得る画像形成装置において、
前記転写部と前記定着部の間の記録材搬送経路に、請求項1〜9のいずれか一つに記載の搬送ガイド装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−103527(P2012−103527A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252494(P2010−252494)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】