説明

搬送システム

【課題】液晶基板などの工程内搬送経路に、基板を載せたトレイを1枚ずつ搬送する枚葉搬送と、トレイを積層して搬送する積層搬送の双方が自在な区間を設け、処理装置側の状況に応じて、枚葉搬送と積層搬送とを切り換えることのできる搬送システムを提供する。
【解決手段】搬送システム2は、ワークを載置したトレイを段ばらしする段ばらし装置12、22と、前記トレイを積層する段積み装置14、24と、前記段ばらし装置12、22と段積み装置間でトレイを搬送し、処理装置4へワークを供給するコンベア19と、前記段ばらし装置12、22からコンベア19へ供給するトレイの積層枚数を変更することにより、搬送形態を変更するための制御手段34,36を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はトレイを用いた搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、液晶用のガラス基板やEL用の基板などの大形基板や半導体ウェハーなどのワークを、トレイに載せて搬送することを検討した。積層が容易でかつワークの出し入れも容易なトレイの構造を、出願人は特許文献1で提案した。またトレイを積層保管すると共に、積層したトレイを1枚ずつ取り出すことができ、さらに搬送されてきたトレイを段積みする、段積み/段ばらし兼用の装置を、出願人は特許文献2で提案した。
【0003】
出願人はその後、液晶パネルなどのワークの生産の立ち上げから工程が安定するまでの間などで、最適搬送形態が変化することに着目し、本発明に到った。
【特許文献1】特開2005−93585号公報
【特許文献2】特開2005−89048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、状況に応じて搬送形態を変更することにより、処理装置に適切なタイミングでワークを供給できるようにすることにある。
請求項3の発明での追加の課題は、処理装置側の状況に応じた最適な搬送形態でワークを搬送できるようにすることにある。
請求項4の発明での追加の課題は、積層搬送する際に、トレイの振動やコンベヤの負荷を軽減すると共に、処理装置側でのトレイの段ばらし時間に応じた搬送速度とすると共に、枚葉搬送する際には個々のトレイを高速で搬送できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の搬送システムは、ワークを載置したトレイを段ばらしする段ばらし装置と、前記トレイを積層する段積み装置と、前記段ばらし装置と段積み装置間でトレイを搬送し処理装置へワークを供給するコンベヤと、前記段ばらし装置からコンベヤへ供給するトレイの積層枚数を変更することにより、搬送形態を変更するための制御手段、とを設けたものである。搬送形態の変更範囲は積層搬送と1トレイずつの枚葉搬送との間に限らず、例えば積層枚数を12枚と6枚などのように変更しても良い。
【0006】
好ましくは、前記制御手段では、トレイを1枚ずつ搬送する枚葉搬送と、トレイを複数枚積層して搬送する積層搬送との間で、搬送形態を変更する。
また好ましくは、前記制御手段は、処理装置の運転状況に応じて搬送形態を変更する。
【0007】
好ましくは、処理装置側と前記コンベヤとの接続部にも別の段積み/段ばらし装置を設けると共に、前記コンベヤの搬送速度を積層枚数が多いと低速で、積層枚数が少ないと高速となるように変更する。この段積み/段ばらし装置は、コンベヤと処理装置の間に段積み/段ばらし兼用の装置を1台設けても良く、あるいは段ばらし装置と段積み装置とを別に設けても良い。
【発明の効果】
【0008】
この発明では、状況に応じて搬送形態を変更して、処理装置に適切なタイミングでワークを供給する。特に積層搬送と枚葉搬送とを切り換えると、積層搬送では処理装置側に多少のストックが生じるように大きな搬送単位で搬送でき、枚葉搬送では必要なワークのみを必要な時刻に搬送できる。積層枚数を変更することにより搬送形態を変更すると、この中間の効果が得られる。
【0009】
処理装置側には、
・ 処理速度が遅く搬送するワークが僅かでよい段階や、
・ 処理速度はやや速いが処理が不安定でバッファが必要な段階、
・ 処理速度も速く処理に必要な時間も安定しているのでバッファとして保有するトレイやワークを減らし、必要なワークのみを必要な時刻に供給することが重要な段階、
などの種々の状況がある。そこで処理装置側の状況に応じて搬送形態を変更し、最適な搬送形態で処理装置にワークを供給する。
【0010】
積層搬送では積層したトレイの振動やコンベヤの負荷が問題になり、また処理装置側では積層搬送されたトレイを段ばらししたり段積みすることが必要になる。そこで積層枚数が多いとコンベヤは低速で搬送し、積層枚数が少ないと高速で搬送して処理装置の要求に応えられるようにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0012】
図1〜図3に、実施例の搬送システム2を示す。図において4は処理装置で、液晶パネルやELパネルあるいは半導体などの処理装置で、搬送システム2は処理装置4に対して、液晶パネル用やEL用のガラス基板あるいは半導体ウェハーなどのワークを搬送する。複数の処理装置4で全体として1つの工程、即ちベイを構成し、6はスタッカークレーンで、工程間の長距離搬送を行う。8はその走行レールで、10はラックである。なお長距離搬送はスタッカークレーン6に限らず、長距離コンベヤなどで行っても良い。
【0013】
ラック10には段ばらし装置12と段積み装置14とを設け、段ばらし装置12でスタッカークレーン6から積層搬送されたトレイを所定の枚数に段ばらしして、工程内搬送コンベヤ16へと供給する。また工程内搬送コンベヤ16の終点には段積み装置14を設けて、枚葉搬送あるいは積層搬送されたトレイをさらに段積みし、スタッカークレーン6へと供給する。スタッカークレーン6が積層したトレイをカセットに収納して搬送する場合、段ばらし装置12はカセットからの取り出しと段ばらしとを行い、段積み装置14はカセットへの段積みを行う。
【0014】
工程内搬送コンベヤ16と処理装置4間のワークの搬送を説明する。工程内搬送コンベヤ16に例えば転換コンベヤ18等の切り出し装置を設けて、所要のトレイあるいはその積層体の搬送方向を転換し、コンベヤ19を介して処理装置4側の段ばらし装置22へ供給する。段ばらし装置22はトレイを積層して複数枚保管すると共に、そのうちの任意の所要のトレイを切り出して、ワーク取り出し装置26側へ供給する。取り出し装置26でトレイとワークとが分離され、2段コンベヤ32によりトレイとワークとが上下別々に搬送され、ロードポート28でワークが処理装置4に出し入れされ、載置装置30で空のトレイに、処理装置4から搬出されたトレイを載置する。そして段積み装置24でトレイを段積みし、積層搬送時には、トレイの積層順序を制御して次の搬送先が共通のトレイをまとめて積層する。
【0015】
図1でハッチングを付したコンベヤ16,19はトレイの搬送形態を変更自在な区間で、トレイの搬送形態は1枚ずつ搬送するものを枚葉搬送、積層して搬送するものを積層搬送という。段ばらし装置22と段積み装置24間は枚葉搬送に固定である。なお搬送形態の切換は、積層搬送と枚葉搬送との間に限らず、積層搬送において積層枚数を例えば12枚と6枚などに換えてもよい。またトレイの搬送形態を変更する区間は、コンベヤ16,19に限らず、例えばスタッカークレーン6上などにおいて搬送形態を変更しても良い。
【0016】
34は工程内搬送コントローラで、段ばらし装置12から段積み装置14までの工程内搬送を制御し、特に段ばらし装置12に対して枚葉搬送か積層搬送かの区別と、積層搬送の場合、積層するトレイの枚数を指定する。同様に枚葉搬送か積層搬送かの区別と、積層搬送の場合の積層枚数を、段ばらし装置22並びに段積み装置24,14へ指定する。またコントローラ34はコンベヤ16,19及び転換コンベヤ18に搬送速度を指定し、枚葉搬送で最も高速とし、積層枚数を増す毎に搬送速度を低下させる。
【0017】
工程内搬送コントローラ34は上位の物流コントローラ36から搬送指令を受け、枚葉搬送か積層搬送かの区別と積層搬送の際の積層枚数を物流コントローラ36から指示される。物流コントローラ36は図示しない生産コントローラなどから、処理装置へのワークの搬入要求と搬出要求とを受け取るので、ワークの搬送量を把握している。また各ワークにはIDが付加され、ID付きの搬送要求を受け取るので、処理装置にワークを搬入した後、搬出されるまでの処理時間が安定しているかどうかを把握している。言い換えると、処理装置4のトラブルなどによって、ワークの搬入から搬出までの処理時間が激しく変動するかどうかを監視している。また各処理装置4での時間当たりのワークの搬入量や搬出量も、物流コントローラ36に既知である。なおワークの搬入量と搬出量は、処理装置4内のバッファ量を除けば同じであり、時間当たりの搬入量や搬出量が著しく変動する場合、工程は不安定である。また搬入量や搬出量の変化が小さくなると工程は安定し、生産の成熟曲線での成熟期に入っている。
【0018】
そこで物流コントローラ36は、液晶パネル工場などの立ち上げ、品種の変更、処理装置の追加などによる工程の変更、などの状況に応じて、搬送形態を切り換える。具体的には工場の立ち上げ時や工程の変更時、品種の変更時などには搬送量が少ないので、枚葉搬送を原則とする。次に立ち上げ段階が終了して搬送量が増加すると、積層搬送へと変更する。この段階で工程は不安定であり、処理装置4のトラブルなどにより、後工程側の処理ができなくなる恐れがある。そこで各処理装置4に対してなるべく多くの在庫を持たせるため、積層搬送を選択する。積層搬送されたトレイは段ばらし装置22や段積み装置24により一時保管される。
【0019】
工程が安定し、各処理装置4での処理時間が予測可能になり、あるいは各処理装置4のスループットの時間的変動が小さくなると、積層搬送から例えば枚葉搬送に切り換え、あるいは積層搬送での積層枚数を小さくする。そしてこれに伴ってコンベヤ16,18,19の搬送速度を高くする。この段階では各処理装置4はスケジュール通りに処理できるので、在庫を増す必要はない。そこで各処理装置4へ供給されたワークを段ばらし装置22にストックせずに直ちにロードポート28側へ供給し、また処理済みのワークを段積み装置24で保管せずに直ちに搬出する。そしてロードポート28から処理済みのワークを搬出すると直ちに次のワークを搬入できるようにする。そこで工程が安定すると積層搬送から枚葉搬送に切り換え、この判断は例えば物流コントローラ36で行う。
【0020】
図2に、実施例で用いた段ばらし装置22を示すが、他の段ばらし装置12や段積み装置14,24も構造は同じである。40は昇降台で、ここではパンタグラフ機構を用いたものとし、42はチャックで、図には示さないが高さ方向に複数並列に設けて、複数の高さ位置でトレイ群46をチャックできるようにする。44はトレイで、これを複数積層したものをトレイ群46,48と呼び、トレイ群46は上側でチャック42により支持され、トレイ群48は昇降台40で支持されている。そしてトレイ群46の下部の高さ位置は、複数のチャック42を選択するかにより制御する。50,52は出退コンベヤで、例えば図2の上下方向に昇降して出退し、上昇時にトレイ44の周囲のフランジ底面を支持して搬送し、下降時にトレイ44から分離する。出退コンベヤ50,52は例えばローラコンベヤなどから成り、出退コンベヤ50は取り出し装置26側へトレイ44を搬送し、出退コンベヤ52はコンベヤ19との間でトレイ44を搬送する。
【0021】
段ばらし装置22は、積層されたトレイ群から、任意の高さ位置で任意の枚数のトレイを切り出すように段ばらしできる。段ばらしの際には例えば昇降台40を上昇させ、この間に出退コンベヤ50,52やチャック42を後退させて、トレイ群を1つにまとめる。次に昇降台40を下降させ、図2のトレイ群46をチャック42で支持する。段ばらし装置22から切り出すトレイの内で、最下層のトレイのフランジ底面へ出退コンベヤ50を上昇させて支持し、図2のトレイ群48を昇降台40と共に下降させる。このようにして任意の位置で任意の枚数のトレイを段ばらしできる。但し段ばらし装置22の場合、トレイを1枚ずつ段ばらしする。
【0022】
段ばらし装置22はまた、コンベヤ19から搬入されるトレイないしはトレイ群を、任意の高さ位置に段積みできる。例えば図2のトレイ群46とトレイ群48の間に新たなトレイを段積みする場合、昇降台40によりトレイ群46を上昇させ、所定の位置まで上昇した時にチャック42を前進させて支持する。次いでトレイ群48を昇降台40と共に下降させ、さらに出退コンベヤ52を上昇させて、コンベヤ19からトレイ44ないしはトレイ群を受け入れる。以上のように段ばらし装置22は、段ばらし装置12や段積み装置14,24としても使用できる。なお段ばらし装置22に図示しないIDリーダを設けて、ワークの裏面などに設けたIDを読み取ると、より正確なワークの搬送ができる。
【0023】
図3に搬送形態の制御を示す。液晶パネル工場の立ち上げや、新たな品種の生産の立ち上げでパイロット生産を行う場合、あるいは処理装置の組み替えなどにより工程が不安定な場合、一般に搬送量は少ない。そこでここでは枚葉搬送を行い、特に必要ではないがコンベヤなどの搬送速度を大にしておく。処理量が増加すると、搬送形態を積層搬送に切り換え、これに伴って搬送速度を小さくする。この時点では工程は未だ不安定で、各処理装置になるべく多くのバッファを持たせるため、積層搬送を行う。次いで工程が安定すると、各処理装置毎のバッファ量を少なくし、必要な処理装置に必要な時点でトレイを搬送できるように、枚葉搬送に切り換える。そしてこれに伴って搬送速度を大きくする。この後、処理装置の組み替えや新たな品種の立ち上げなどにより工程変更があると、立ち上げの処理に戻る。
【0024】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) 工程内搬送でのトレイの搬送形態を、積層搬送から枚葉搬送までの範囲で変更することにより、工程の立ち上げ時、生産量が増加しているが工程が未だ不安定な時期、工程の安定期の間で、処理装置側にとって最適な形態に切り換えることができる。
(2) 工程の安定期には枚葉搬送を、コンベヤを高速で駆動することにより行い、搬送過程での在庫を最小にして、必要な処理装置に必要な時点でトレイを搬送できる。
(3) 各処理装置への入口側に段ばらし装置を、出口側に段積み装置を配置することにより、積層搬送と枚葉搬送のいずれにも対応できる。また段ばらし装置や段積み装置は処理装置単位でのバッファとして動作する。
(4) 2段コンベヤを用いることにより、ワーク1枚分のロードポートしかない処理装置の場合でも、ロードポートからワークを搬出して2段コンベヤを通過した空トレイに載置装置でワークを載置し、取り出し装置で取り出したワークをロードポートへ搬入できる。
(5) 積層搬送を低速とすることにより、ワークの振動を抑制し、コンベヤの負荷を軽減し、かつ処理装置側の段ばらし装置や段積み装置に適切な作業時間を与えることができる。

【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例の搬送システムのレイアウトを示す平面図
【図2】実施例で用いた段積み/段ばらし装置の側面図
【図3】実施例での枚葉搬送と積層搬送との切換アルゴリズムを示すフローチャート
【符号の説明】
【0026】
2 搬送システム
4 処理装置
6 スタッカークレーン
8 走行レール
10 ラック
12,22 段ばらし装置
14,24 段積み装置
16 工程内搬送コンベヤ
18 転換コンベヤ
19 コンベヤ
26 ワーク取り出し装置
28 ロードポート
30 載置装置
32 2段コンベヤ
34 工程内搬送コントローラ
36 物流コントローラ
40 昇降台
42 チャック
44 トレイ
46,48 トレイ群
50,52 出退コンベヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを載置したトレイを段ばらしする段ばらし装置と、前記トレイを積層する段積み装置と、前記段ばらし装置と段積み装置間でトレイを搬送し処理装置へワークを供給するコンベヤと、
前記段ばらし装置からコンベヤへ供給するトレイの積層枚数を変更することにより、搬送形態を変更するための制御手段、とを設けた、搬送システム。
【請求項2】
前記制御手段では、トレイを1枚ずつ搬送する枚葉搬送と、トレイを複数枚積層して搬送する積層搬送との間で、搬送形態を変更することを特徴とする。請求項1の搬送システム。
【請求項3】
前記制御手段は、処理装置の運転状況に応じて搬送形態を変更することを特徴とする、請求項1または2の搬送システム。
【請求項4】
処理装置側と前記コンベヤとの接続部にも別の段積み/段ばらし装置を設けると共に、前記コンベヤの搬送速度を積層枚数が多いと低速で、積層枚数が少ないと高速となるように変更するようにしたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかの搬送システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−189147(P2007−189147A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7408(P2006−7408)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】