説明

搬送システム

【課題】被搬送物が正常に載置されないことを抑制する。
【解決手段】被搬送物を懸垂状態で搬送する場合、被搬送物を載置ポートへと降下させる際に揺れが生じやすい。そこで、被搬送物を把持した把持部を降下させ(S2)、載置ポート上に被搬送物が載置されると、把持部の降下を停止する(S3)。載置ポート側からのL_REQ信号がオン状態である、つまり、被搬送物が正常に載置されていないと判定した場合(S4、NO)、その状態が所定の時間保持されたとき(S10、YES)には、リトライ動作を実行する。すなわち、把持部を一旦上昇させ(S11、S12)、その後再び把持部を降下させる(S2、S3)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送台車に被搬送物を搬送させる搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種の物品を搬送する搬送システムにおいて、搬送台車等に被搬送物を搬送させるものがある。特許文献1においては、レールに沿って走行する走行体が、被搬送物を支持する支持体と、その支持体を支持する昇降体とを有している。昇降体は、吊り索によって走行体に吊下げられており、走行体は、吊り索を繰り出したり巻き上げたりすることによって、昇降体を昇降させる。被搬送物を搬送する際には、走行体は、被搬送物を支持体に支持させた状態で、載置位置の上方に移動する。そして、吊り索を繰り出して昇降体を降下させ、被搬送物を載置位置に載置する。その後、支持体から被搬送物を開放し、吊り索を巻き上げて昇降体を定位置に戻す。
【0003】
【特許文献1】特開2003−238070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1によると、昇降体は吊り索によって走行体に吊り下げられているので、降下する際に振り子のように揺れることがある。このような揺れは、例えば、搬送システムが設置されている場所に生じた気流や、走行体が停止するときの慣性、吊り索の繰り出し動作に伴う振動によって発生する。このような場合には、被搬送物は所定の載置位置に正常に載置されないことがあり、載置位置のずれが大きい場合には、一旦搬送を停止する必要が生じるおそれもある。この場合、搬送工程が円滑に実行されなくなる。
【0005】
本発明の目的は、被搬送物が正常に載置されないことが抑制された搬送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の搬送システムは、被搬送物を懸垂しながら昇降させる搬送台車と、前記被搬送物が載置される載置ポートと、前記被搬送物が前記載置ポートの上方に配置される位置まで前記搬送台車を移動させる移動機構と、前記被搬送物が前記載置ポートの上方に配置された後に、前記被搬送物を降下させて前記載置ポートに載置するように、前記搬送台車を制御する載置制御手段と、前記載置ポート上の所定領域内に前記被搬送物が載置されているか否かを検出する検出手段とを備えている。そして、前記載置制御手段が、前記検出手段からの検出結果に基づいて、前記被搬送物が前記所定領域内に正常に載置されたか否かを判定する載置判定手段を有し、前記被搬送物が前記所定領域内に正常に載置されていないと前記載置判定手段が判定した場合に、前記被搬送物を一旦上昇させた後に、再び前記被搬送物を降下させて前記載置ポートに載置する再実施動作を前記搬送台車に実行させる。
【0007】
本発明のように被搬送物を懸垂した状態で昇降させる場合には、振り子状の揺れによって載置ずれが生じることがある。これに対して、本発明は、載置ポート上の所定領域内に被搬送物が正常に載置されていないと判定されると、再度被搬送物を載置しなおす。ここで、2度目に載置する際には、1度目の載置のときより揺れが小さくなっていると考えられるので、被搬送物が正常に載置されやすい。このように、本発明によると、被搬送物を最終的に正常に載置しやすくなる。
【0008】
また、本発明においては、前記再実施動作を所定の回数連続して実行しても前記被搬送物が前記所定領域内に正常に載置されていないと前記載置判定手段が判定した場合に所定の警告動作を実行する警告手段をさらに備えていることが好ましい。本発明によると、例えば被搬送物を載置する動作を1度だけ実行し、正常に載置できない場合にはすぐに警告を発する場合と比べて、警告を発する頻度を抑制することができる。このため、搬送工程をより円滑に進めることができる。
【0009】
また、本発明においては、前記被搬送物が前記所定領域内に正常に載置されていないと前記載置判定手段が判定した場合に前記再実施動作を前記搬送台車に連続して実行させる回数が、最大で3回であることが好ましい。これによると、被搬送物を載置する回数を適度な回数に抑制することができる。
【0010】
また、本発明は、前記搬送台車が、前記被搬送物を把持する把持部と、前記把持部を吊り下げる吊り下げ部材と、前記吊り下げ部材を引き上げたり繰り出したりして前記把持部を昇降する昇降部とを有している場合に適用されてもよい。このような構成であると、吊り下げ部材の形状、材質等に応じて把持部が振り子状に揺れやすくなるおそれがある。したがって、かかる構成に本発明が適用されることの意義が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の好適な一実施形態である搬送システム1について説明する。図1は、搬送システム1の概略構成図である。
【0012】
搬送システム1は、例えば半導体基板の製造工場等に設置され、被搬送物となる種々の荷を工場内で搬送するためのものである。工場内には種々の製造装置が設置されている。本実施形態には、製造装置310、320及び340が設けられている。また、荷を保管する保管装置330が設けられている。これらの装置310〜340は、搬送システム1から荷を受け取る載置ポート311〜341をそれぞれ有している。載置ポート311〜341には、搬送システム1が搬送した荷が載置される。
【0013】
搬送システム1は、軌道100、及び、軌道100上を走行する搬送台車200を有している。軌道100は、工場の天井付近において、載置ポート311〜341の上方を通過する経路に沿って敷設されている。搬送台車200は荷を支持しつつ軌道100に沿って走行し、載置ポート311〜341間で荷を搬送する。また、搬送システム1は、運行制御装置410及び電源装置420を有している。運行制御装置410は、各搬送台車200の運行を監視すると共にその運行を制御する。電源装置420は、軌道100内に敷設された後述の給電線131及び132に電力を供給する。運行制御装置410には、エラー報知部411(警告手段)が接続されている。エラー報知部411は、警報器や警告メッセージを表示するディスプレイ装置を有している。運行制御装置410は、搬送システム1にトラブルが発生した場合に、エラー報知部411を制御してトラブルの発生やその内容をオペレータに対して報知させる。
【0014】
以下、軌道100、搬送台車200及び製造装置310等の構成について図2を参照しつつ説明する。図2は、図1のII−II線断面図である。
【0015】
本実施形態においては、搬送台車200が搬送する荷としてフープ(FOUP;Front Opening Unified Pod)Fが想定されている。フープFは、フランジ部Fa及び本体部Fbから構成されている。フランジ部Faは、後述のとおり搬送台車200の把持部244によって把持される部分である。本体部Fb内には、複数の半導体基板が収容される。本体部Fbの下面には、複数の位置合わせ穴Fcが形成されている。
【0016】
一方で、載置ポート311上には位置合わせ板312が固定されている。位置合わせ板312の上面には複数の位置合わせピン312aが固定されている。各位置合わせピン312aは、位置合わせ穴Fcにちょうど嵌まり込むような形状に形成されている。また、これらの位置合わせピン312aは、フープF側の位置合わせ穴Fcと水平方向に関して同様の位置関係を有するように固定されている。これによって、位置合わせ穴Fcと位置合わせピン312aとは、フープFを位置合わせ板312上に載置する際に、互いに嵌め合わせることができるように構成されている。位置合わせ穴Fcと位置合わせピン312aとが嵌まり合うようにフープFを位置合わせ板312上に載置することにより、水平方向に関して載置ポート311上の所定の載置領域314内に配置されるように、フープFを位置合わせして載置することができる。
【0017】
また、位置合わせ板312の上面には、在荷センサ313(検出手段)が固定されている。在荷センサ313は、位置合わせ穴Fcと位置合わせピン312aとが互いに嵌り合う正常な載置領域314内にフープFが載置されているか否かを検出する。例えば、在荷センサ313は、いわゆる反射型の光センサによって構成されており、水平方向に射出した光をフープFの側面によって反射させ、その反射光を検出することによって、正常な載置領域314にフープFが載置されているか否かを検出するように構成されていてもよい。フープFが正常に載置されている場合には、鉛直方向に沿った側面によって光が水平に反射するため、光センサの検出部に戻ってくる。一方で、フープFの下面が位置合わせピン312aに引っかかるなどして側面が斜めになっている場合には、光センサからの光がフープFの側面や底面によって水平方向から傾斜した方向に反射し、光センサによって検出されなくなる。これらの現象を利用することで、フープFが正常に載置されたか否かを検出することができる。また、在荷センサ313は複数のセンサで構成し、複数のセンサが全てフープFの載置を確認したとき、フープFが正常に載置されたと判断するようにしてもよい。製造装置300は、搬送台車200からのフープFの載置を誘導する制御部315を有しており、在荷センサ313の検出結果は制御部315に送信される。制御部315は、後述のように、移載制御部251と光通信等を介して各種の制御信号をやり取りする。制御部315は、在荷センサ313の検出結果を示す制御信号を移載制御部251へと送信する。
【0018】
軌道100は、固定部材110を介して天井に固定されている。軌道100は、その長さ方向に直交する方向に関して概略的に長方形の断面形状を有しており、長さ方向に関して異なる位置においても同様の断面形状を有している。軌道100の内部には中空の空間が形成されており、かかる中空の空間は、軌道100内の底面102dに形成された開口101に連通している。軌道100内の天井面102aには永久磁石120が固定されている。永久磁石120は、後述のリニアモータ走行方式の二次側機構として機能する。軌道100の内側面102b及び102cには、それぞれ給電線131及び132が、支持部131a及び132aを介して固定されている。給電線131及び132は、軌道100の長さ方向に沿って敷設されており、後述のEコア225及び226と位置関係が所定の関係となるように配置されている。電源装置420によって給電線131及び132に電流が流れると、給電線131及び132の周囲に磁界が発生する。また、軌道100の内側面102b及び102cには、ガイド部材141及び142がそれぞれ固定されている。
【0019】
搬送台車200は走行機構220を有している。搬送台車200は中心フレーム210を有しており、走行機構220はかかる中心フレーム210に支持されている。走行機構220は、軌道100内の空間に配置されており、走行車輪231、ガイドローラ232及び233を有している。走行車輪231は、中心フレーム210に回転可能に支持されており、搬送台車200全体を軌道100内の底面102d上で支持している。搬送台車200が軌道100に沿って移動すると、これに従動して走行車輪231も回転する。ガイドローラ232及び233は、それぞれ中心フレーム210に回転可能に支持されている。ガイドローラ232及び233は、軌道100の内側面102b及び102cに固定されたガイド部材141及び142によってガイドされつつ、搬送台車200が軌道100に沿って移動するのに従動して回転する。
【0020】
本実施形態において搬送台車200の走行方式には、いわゆるリニアモータ方式が採用されている。走行機構220は、リニアモータ走行方式の一次側機構として、中心フレーム210の上端に固定された鉄心221を有している。鉄心221は、軌道100側の永久磁石120に鉛直方向に関して対向している。中心フレーム210内には、鉄心221のコイルに電流を流すリニアモータ駆動回路(不図示)が設けられている。このリニアモータ駆動回路は、鉄心221のコイルに流す電流を、永久磁石120と鉄心221との磁気的相互作用で搬送台車200が軌道100に沿って移動するように制御する。
【0021】
走行機構220は、さらに、上記のリニアモータ駆動回路に供給する電流を給電線131及び132から受給するためのEコア225及び226を有している。Eコア225及び226は、電気鉄板などの磁性材料からなり、図2に示すようにE型の形状を有する部材である。Eコア225及び226にはピックアップコイル(不図示)が巻かれている。これらのピックアップコイルは、搬送台車200が軌道100に沿って移動する際に給電線131及び132から発生する磁界中を通過すると共に、その際に誘導起電力が生じるようにEコア225及び226に巻かれている。そして、このピックアップコイルに発生した起電力は、リニアモータ駆動回路に供給される。
【0022】
以上の走行機構220及び軌道100によって、搬送台車200は軌道100に沿って載置ポート311〜341の上方の位置へと移動することができる。つまり、これらの構成は、搬送台車200を載置ポート311〜341の上方へと移動させる本発明の移動機構として機能している。運行制御装置410は、所定の搬送プログラムに従って載置ポート311〜341間でフープFを搬送するように、搬送台車200の運行を制御する。搬送台車200は、運行制御装置410からの制御指令に従って軌道100上を走行する。
【0023】
また、搬送台車200は、把持機構240を有している。把持機構240は、位置調整部241、昇降部242及び把持部244を有している。把持部244はフィンガ部244aを有しており、フィンガ部244aは、フープFのフランジ部Faを把持したり開放したりすることができる。把持部244の下面には在荷センサ245が設置されている。在荷センサ245は、フィンガ部244aが把持しているフープFが載置ポート上に載置されたか否かを検出する。例えば、フープFが載置ポート上に載置されると、フープFのフランジ部Faがフィンガ部244aから浮き上がる。この現象を利用して、フランジ部Faと在荷センサ245との間の距離がある値より小さくなった場合に、フープFが載置ポート上に載置されたと検出するように、在荷センサ245が構成されていてもよい。在荷センサ245の検出結果は、後述の移載制御部251に送信される。
【0024】
把持部244は、吊り下げベルト243によって昇降部242に吊り下げられている。吊り下げベルト243の上端は昇降部242内の巻き取り機構242aに固定されており、かかる巻き取り機構242aは、吊り下げベルト243を巻き取ったり繰り出したりする。昇降部242は、巻き取り機構に吊り下げベルト243を巻き取らせることにより、把持部244を上昇させる。また、昇降部242は、巻き取り機構に昇降吊り下げベルト243を繰り出させることにより、把持部244を降下させる。昇降部242は、位置調整部241によって支持されている。位置調整部241は、昇降部242を水平方向に移動させる移動機構241aを内部に有しており、これによって昇降部242の水平位置を調整する。位置調整部241は、中心フレーム210の下端に固定されている。
【0025】
また、搬送システム1には、搬送台車200を制御してフープFを載置ポート311等へ積み下ろしさせる移載制御部251が設けられている(載置制御手段)。移載制御部251は、汎用のプロセッサ回路等のハードウェアと、これらを移載制御部251として機能させるプログラムデータ等のソフトウェアとから構成されている。なお、ハードウェアの一部又は全部が、あらかじめ移載制御部251専用のハードウェアとして構築されていてもよい。移載制御部251は運行制御装置410の内部に構築されていてもよいし、運行制御装置410とは独立に構成されていてもよい。例えば、各搬送台車200に搭載されていてもよい。
【0026】
例えば、移載制御部251は、搬送台車200にフープFを載置ポート311へ荷下ろしさせる荷下ろし動作を以下のように制御する。まず、運行制御装置410の制御に従って、搬送台車200は、搬送元のいずれかの載置ポートからフープFを受け取り、載置ポート311の上方へと移動する。そして、載置ポート311の上方に到達すると停止する。ここで、搬送台車200が停止した位置によっては、把持部244が把持したフープFの水平位置と、載置ポート311上の載置領域314とがずれている場合がある。
【0027】
そこで、移載制御部251は、位置調整部241を制御して、昇降部242の水平位置を、フープFの直下に載置領域314が配置されるように調整する。そして、昇降部242を制御して、把持部244を降下させ、載置ポート311上にフープFを載置させる。ここで、位置調整部241による昇降部242の水平位置の調整は、昇降部242が把持部244を降下させている期間中に実行されてもよいし、昇降部242が把持部244の降下を開始する前に実行されてもよい。なお、位置調整部241が位置調整の際に昇降部242を水平移動させる方向と移動量とは、搬送システム1の設置時等にあらかじめ設定される。
【0028】
載置ポート311上にフープFが載置されると、在荷センサ245がフープFの載置を検出する。移載制御部251は、在荷センサ245の検出結果に基づいて、フープFが載置ポート311上に載置されたと判定すると、昇降部242に把持部244の降下を停止させる。さらに、移載制御部251は、在荷センサ313の検出結果に基づいて、載置ポート311上の正常な載置領域314にフープFが載置されたか否かを判定する。フープFが正常に載置されたと判定すると、移載制御部251は、昇降部242に把持部244を上昇させる。そして、把持部244が昇降部242内の所定の位置まで上昇すると、昇降部242に把持部244の上昇を停止させる。
【0029】
以上の荷下ろし動作において、フープFが載置ポート311上に載置されたと在荷センサ245が検出したにも関わらず、フープFが載置ポート311上に正常に載置されていないと在荷センサ313が検出する場合がある。このような状況は、本実施形態の搬送台車200のようにフープF等の荷を懸垂状態で昇降する場合に生じやすい。つまり、搬送台車200は、把持機構240を、中心フレーム210によって下方に吊り下げている。したがって、搬送台車200は、走行車輪231と軌道100との当接箇所を支点にして、図2の白抜き矢印の方向に沿って振り子状に揺れやすい。また、把持機構240自体の構成においても、昇降部242は位置調整部241に吊り下げられている。さらに、把持部244も吊り下げベルト243によって昇降部242に吊り下げられており、吊り下げベルト243の上端を中心に、把持部244が振り子のように揺れやすい。
【0030】
上記のような揺れは、例えば、搬送システム1が設置されている場所に生じた気流や、搬送台車200が停止するときの慣性、昇降部242が吊り下げベルト243を繰り出す際に生じる振動によって発生する。このような揺れが発生すると、位置調整部241が昇降部242の水平位置を調整しても、フープFが載置ポート311上の載置領域314に正常に載置されないことがある。
【0031】
このような問題を解決するため、本実施形態は以下のように構成されている。図3は、移載制御部251が実行する荷下ろし動作の各制御工程を示している。以下の制御工程は、搬送台車200が製造装置310の載置ポート311にフープFを荷下ろしする場合を示している。本実施形態において、移載制御部251が実行する制御工程は、いわゆるSEMI(Semiconductor Equipment and Materials International)スタンダードにおいて定義されている、E84通信シーケンスに従って実行される。つまり、E84通信シーケンスに準拠した制御信号をやり取りすることによって移載制御部251及び製造装置310間でインターロックを実行させることが想定されている。
【0032】
搬送台車200が載置ポート311の上方に到着すると、移載制御部251は荷下ろし動作の制御処理を開始する。まず、移載制御部251は、E84通信シーケンスに準拠した初期シーケンスを実行する(S1)。移載制御部251は、かかる初期シーケンスにおいて、製造装置310への各種の制御信号を初期設定したり各種タイマを開始したりする制御等を実行する。製造装置310においても、移載制御部251からの制御信号に基づいて初期シーケンスが実行される。例えば、製造装置310は、かかる初期シーケンスにおいて、後述のL_REQ信号をオン状態に設定したり、TP3タイマの測定を開始したりする。
【0033】
次に、移載制御部251は昇降部242に、把持部244の降下を開始させる(S2)。そして、移載制御部251は、在荷センサ245の検出結果に基づいて、把持部244の降下を昇降部242に停止させる(S3)。ここで、移載制御部251は、S1の初期シーケンスにおいて開始したタイマを参照して、フープFが載置ポート311上に載置されたとの在荷センサ245による検出のタイミングを取得する。かかるタイミングは、後述のS10において用いられる。
【0034】
次に、移載制御部251は、製造装置310からのL_REQ信号がオフ状態であるか否かを判定する(S4)。L_REQ信号は、E84通信シーケンスに準拠した信号である。製造装置310は、E84通信シーケンスに従って、フープFの正常な載置を在荷センサ313が検出するまで、L_REQ信号をオン状態に保持する。つまり、L_REQ信号がオン状態になっている場合には、未だフープFが載置ポート311上の載置領域314に正常に載置されていないことになる。また、L_REQ信号がオフ状態になった場合には、フープFが載置ポート311上の載置領域314に正常に載置されたこととなる。すなわち、移載制御部251は、製造装置310からのL_REQ信号がオフ状態であるか否かを判定することによって、フープFが正常に載置されたか否かを判定している(載置判定手段)。
【0035】
製造装置310からのL_REQ信号がオフ状態であると判定すると(S4、YES)、移載制御部251は、フープFが正常に載置されたものとして、把持部244にフープFを開放させる(S5)。次に、移載制御部251は昇降部242に、把持部244の上昇を開始させる(S6)。そして、把持部244が所定の位置まで上昇すると、移載制御部251は昇降部242に把持部244の上昇を停止させる(S7)。その後、移載制御部251は、E84通信シーケンスに準拠した終了シーケンスを実行する(S8)。かかる終了シーケンスにおいては、移載制御部251は、製造装置310への各種の制御信号をオフ状態にしたりタイマを停止したりといった制御を実行する。そして、移載制御部251は、荷下ろし動作の制御処理を終了する。この場合、搬送システム1は、荷下ろし処理が正常に終了したものとして処理する。
【0036】
一方で、S4においてL_REQ信号がオン状態であると判定すると(S4、NO)、移載制御部251は、後述のリトライ動作を連続して所定の回数実行したか否かを判定する(S9)。リトライ動作を実行した回数が所定の回数に達していないと判定すると(S9、NO)、移載制御部251は、S3において取得したタイミングと、S1において開始したタイマとを参照する。そして、載置ポート311上にフープFが載置されたと検出されてから所定の時間が経過したか否かを判定する(S10)。所定の時間が経過したと判定すると(S10、YES)、移載制御部251は、フープFが載置ポート311上に正常に載置されなかったものとして、把持部244を一旦上昇させ、その後再び降下させるリトライ動作(再実施動作)を以下のように実行する。
【0037】
なお、S10において所定の時間が経過したか否かを判定するのは以下の理由による。つまり、フープFが載置されたのを在荷センサ245が検出してからフープFが正常に載置されたのを在荷センサ313が検出するまでにいくらか時間がかかる場合がある。例えば、フープFが載置領域314から少しだけずれており、位置合わせピン312aと位置合わせ穴Fcとが互いに滑りながらゆっくりと嵌まり合うなどの場合である。このような場合に時間をおかず、すぐにフープFが正常に載置されていないと判定すると、不要なリトライ動作を実行することとなる。かかる事態を防ぐためである。
【0038】
S11において、移載制御部251は、昇降部242に把持部244を一旦上昇させる。そして、把持部244が所定の位置まで上昇すると、S12において昇降部242に把持部244の上昇を停止させる。そして、移載制御部251は、S2及びS3の処理を再び実行し、把持部244を再び降下させる。かかるS11、S12、S2及びS3の一連の処理が、1回のリトライ動作の制御処理である。ここで、S12において把持部244を停止させる位置は、フープFの下面が位置合わせピン312aの先端から離隔すると共に、位置合わせピン312aの先端からあまり離隔し過ぎない位置であることが好ましい。把持部244をあまり上昇させすぎると、把持部244を一旦上昇させたりもう1度載置ポート311上に載置したりするのに要する時間が長くなるからである。
【0039】
一方、S9において、リトライ動作をすでに所定の回数だけ実行したと判定すると(S9、YES)、移載制御部251は、製造装置310からの制御信号に従って、製造装置310においてTP3タイムアウトが検出されたか否かを判定する(S13)。
【0040】
上述のように、製造装置310は、初期シーケンスにおいてTP3タイマの測定を開始している。TP3タイマはE84通信シーケンスに準拠したタイマである。そして、TP3タイマが示す時間があらかじめ設定されたTP3タイムアウト時間になると、製造装置310は、E84通信シーケンスに準拠したHO_AVBL信号又はES信号をオフ状態にする。したがって、移載制御部251は、製造装置310からのHO_AVBL信号又はES信号がオフ状態になったか否かに基づいて、TP3タイムアウトが検出されたか否かを判定する。TP3タイムアウトが検出されていないと判定すると(S13、NO)、移載制御部251はS4からの処理に戻る。TP3タイムアウトが検出されたと判定すると(S13、YES)、移載制御部251は、載置ポート311上でフープFの載置異常が発生したことを運行制御装置410に通知する。運行制御装置410は、かかる通知に基づいてエラー報知部411にフープFの載置異常をオペレータに対して報知させる。
【0041】
以下、本実施形態の搬送システム1による荷下ろし動作の実施例について説明する。本実施例は、図3のS9において判定されるリトライ動作の所定回数を3回に、S10において判定されるフープFの載置検出からの所定時間を10秒に、S13において検出されるTP3タイムアウトの設定時間を1分にした場合を示している。なお、以下の小カッコ内の記号は、図3のフローチャートに沿った処理の流れを示している。
【0042】
[実施例1]
図3のS11及びS12のリトライ動作によってフープFが載置ポート311に正常に載置された場合の処理の流れの一例を示す。
【0043】
[1]初期シーケンスが実行される(S1)。[2]把持部244が降下し、フープFが載置ポート311上に載置される(S2〜S3)。[3]フープFが載置ポート311上に載置されてから10秒が経過しても、L_REQ信号がオフ状態にならないため、把持部244が一旦上昇される(S4、NO→S9、NO→S10、YES→S11〜S12)。[4]把持部244が再び降下する(S2)。[5]L_REQ信号がオフ状態になったため、フープFが開放される(S4、YES→S5)。[6]把持部が所定の位置まで上昇される(S6〜S7)。[7]終了シーケンスが実行される(S8)。
【0044】
[実施例2]
リトライ動作を3回繰り返しても、フープFが載置ポート311に正常に載置されない場合の処理の流れの一例を示す。
【0045】
[1]初期シーケンスが実行される(S1)。[2]把持部244が降下し、フープFが載置ポート311上に載置される(S2〜S3)。[3]フープFが載置ポート311上に載置されてから10秒が経過しても、L_REQ信号がオフ状態にならないため、把持部244が一旦上昇される(S4、NO→S9、NO→S10、YES→S11〜S12)。
【0046】
[4]把持部244が降下して、フープFが載置ポート311上に再び載置される(S2〜S3)。[5]フープFが載置ポート311上に再び載置されてから10秒が経過しても、L_REQ信号がオフ状態にならないため、把持部244が一旦上昇される(S4、NO→S9、NO→S10、YES→S11〜S12)。[6]把持部244が降下して、フープFの載置ポート311上への3回目の載置がなされる(S2〜S3)。
【0047】
[7]フープFが載置ポート311上に3回目に載置されてから10秒が経過しても、L_REQ信号がオフ状態にならないため、把持部244が一旦上昇される(S4、NO→S9、NO→S10、YES→S11〜S12)。[8]把持部244が降下して、フープFの載置ポート311上への4回目の載置がなされる(S2〜S3)。[9]フープFが載置ポート311上に4回目に載置されてから10秒が経過してもL_REQ信号がオフ状態にならないが、リトライ動作が3回すでに実行されたため、そのままの状態でL_REQ信号の待機がなされる(S4、NO→S9、YES→S13、NO→S4)。[10]初期シーケンスから1分間経過したため、TP3タイムアウトが検出される(S4、NO→S9、YES→S13、YES)。[11]載置ポート311への載置異常が報知される(S14)。
【0048】
以下の表1は、本実施形態の搬送システム1による種々の載置ポートへの荷下ろしを複数回実行した場合の結果を示している。ここで、リトライ動作の回数などの各種の条件は、上記の実施例に示すものと同様である。表1において救済率は、フープFが1回だけでは正常に載置されなかった場合の数に対して、その直後のリトライ動作によって、1回目のリトライ動作で正常に載置された場合の数の割合、2回目までのリトライ動作で正常に載置された場合の数の割合、及び、3回目までのリトライ動作で正常に載置された場合の数の割合をそれぞれ示している。
【0049】
【表1】

【0050】
表1に示されるように、フープFが載置ポートに正常に載置されなかったとしても、リトライ動作を実行することによって、1回のリトライ動作で7割が正常に載置しなおされている。また、リトライ動作を3回までに制限しても、最終的には9割が正常に載置しなおされている。したがって、リトライ動作を3回に制限することにより、ほぼ完全にフープFを正常に載置しなおすことができると共に、リトライ動作の回数を適切な回数に制限することが可能となっている。
【0051】
<変形例>
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された範囲の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0052】
例えば、上述の実施形態においては、吊り下げベルトを用いて把持部244を吊り下げているが、吊り索等の他の手段を用いて把持部244が吊り下げられていてもよい。また、吊り下げ部材を用いて把持部244が吊り下げられている構造が採用されていなくても、搬送台車全体として被搬送物を懸垂する構成であれば揺れが生じやすくなる。したがって、本発明が適用されることで、被搬送物が最終的に正常に載置されない事態を抑制することができる。
【0053】
また、上述の実施形態においては、載置ポート311側のみならず、把持部244にも在荷センサ245が設けられているが、把持部244に在荷センサ245が設けられていなくてもよい。つまり、載置ポート311側の在荷センサ313の検出結果のみに基づいて、所定の時間内に在荷センサ313が正常な載置を検出しなければ、フープFが正常に載置されなかったと判定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係る搬送システムの平面図である。
【図2】図1の搬送システムのII−II線断面図である。
【図3】図2の移載制御部が実行する制御処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
311-341 載置ポート
1 搬送システム
200 搬送台車
240 把持機構
241 位置調整部
242 昇降部
243 吊り下げベルト
244 把持部
251 移載制御部
313 在荷センサ
314 載置領域
411 エラー報知部
F フープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を懸垂しながら昇降させる搬送台車と、
前記被搬送物が載置される載置ポートと、
前記被搬送物が前記載置ポートの上方に配置される位置まで前記搬送台車を移動させる移動機構と、
前記被搬送物が前記載置ポートの上方に配置された後に、前記被搬送物を降下させて前記載置ポートに載置するように、前記搬送台車を制御する載置制御手段と、
前記載置ポート上の所定領域内に前記被搬送物が載置されているか否かを検出する検出手段とを備えており、
前記載置制御手段が、
前記検出手段からの検出結果に基づいて、前記被搬送物が前記所定領域内に正常に載置されたか否かを判定する載置判定手段を有し、
前記被搬送物が前記所定領域内に正常に載置されていないと前記載置判定手段が判定した場合に、前記被搬送物を一旦上昇させた後に、再び前記被搬送物を降下させて前記載置ポートに載置する再実施動作を前記搬送台車に実行させることを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
前記再実施動作を所定の回数連続して実行しても前記被搬送物が前記所定領域内に正常に載置されていないと前記載置判定手段が判定した場合に所定の警告動作を実行する警告手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記被搬送物が前記所定領域内に正常に載置されていないと前記載置判定手段が判定した場合に前記再実施動作を前記搬送台車に連続して実行させる回数が、最大で3回であることを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記搬送台車が、
前記被搬送物を把持する把持部と、
前記把持部を吊り下げる吊り下げ部材と、
前記吊り下げ部材を引き上げたり繰り出したりして前記把持部を昇降する昇降部とを有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−130023(P2009−130023A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−301478(P2007−301478)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【出願人】(302059274)アシスト テクノロジーズ ジャパン株式会社 (146)
【Fターム(参考)】