説明

搬送対象物の取り出しを検出する装置及び方法

【課題】搬送途中の搬送対象物の取り出しをなるべく検出できるようにする。
【解決手段】第一の検出手段11の検出結果により第一の位置K1を搬送対象物が通過したことがわかったときからの搬送対象物の移動距離X1と、第二の検出手段の検出結果により第二の位置K2を搬送対象物が通過したことがわかったときからの搬送対象物の移動距離X2とが算出され、第二の位置で搬送対象物の存在が検出されなくなった以降に、移動距離X1−移動距離X2の値と、第一の位置K1と第二の位置K2との間の距離L1とが比較され、移動距離X1−移動距離X2<距離L1の場合に、搬送対象物が引き抜かれたと判定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送対象物の取り出しを検出するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送対象物として、例えば、紙やCD−ROM等の印刷メディアがある。印刷装置に、
印刷メディアを検出するためのセンサ(以下、印刷メディアセンサ)を搭載することによ
り、印刷メディアの幅(搬送方向と直交する方向の長さ)を測定したり(例えば特許文献
1)、印刷メディアの搬送経路における所定位置に印刷メディアが存在するか否かを検出
したり(例えば特許文献2)する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−20274号公報
【特許文献2】特開平6−19640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、印刷メディアが搬送経路から引抜かれてしまうことがある。印刷メディアが
搬送経路のどこに存在していても、このような印刷メディアの引き抜きを検出できること
が好ましい。これは、例えば、複数の印刷メディアセンサを、印刷装置でサポートされて
いる印刷メディアの長さ(印刷メディアの搬送方向に沿った長さ)以下の間隔で搭載する
ことにより、可能になると考えられる。
【0005】
しかし、印刷装置の内部構造や、コストの問題等から、上記の方法を採ることが必ずし
もできるわけではない。この種の従来の印刷装置では、搬送経路の特定の場所から印刷メ
ディアが引抜かれた場合には、それを検出することができない。印刷メディアが引抜かれ
たことを検出できないと、以下に例示する問題が生じる。
【0006】
(1)印刷メディアが存在するものとして印刷が行われるので、印刷対象(例えば文字
或いは画像)が印刷メディアに印刷されなくても、その印刷対象が印刷されたものとして
印刷処理が終了する。
【0007】
(2)印刷メディアが存在するものとして印刷が続くので、搬送経路上に着色剤が付い
てしまう。また、ドットインパクト方式で印刷する印刷装置では、空打ちによってプラテ
ンが損傷してしまい得る。
【0008】
印刷メディアに限らず、搬送対象物の搬送途中での取り出しは、なるべく検出できた方
が好ましい。
【0009】
従って、本発明の一つの目的は、搬送途中の搬送対象物の取り出しをなるべく検出でき
るようにすることにある。
【0010】
本発明の更なる目的は、後述の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の構成を備える。
(1) 搬送対象物を第一の位置及び第二の位置を順次に通って少なくとも所定の位置ま
で搬送する装置であって、
搬送対象物が第一の位置に存在するか否かを検出する第一の検出手段と、
前記第一の位置を通過した又は通過中の前記搬送対象物が第二の位置に存在するか否か
を検出する第二の検出手段と、
前記第一の検出手段の検出結果により前記搬送対象物が前記第一の位置を通過したこと
がわかったときからの前記搬送対象物の第一の移動距離を算出する第一の算出手段と、
前記第二の検出手段の検出結果により前記搬送対象物が前記第二の位置を通過したこと
がわかったときからの前記搬送対象物の第二の移動距離を算出する第二の算出手段と、
前記第二の位置で前記搬送対象物の存在が検出されなくなった以降に、前記算出された
第一の移動距離と、前記算出された第二の移動距離とに基づいて、前記搬送対象物が少な
くとも前記第二の位置に存在していた時点で取り出されたか否かを判定する判定手段と、
を備える装置。
(2) 前記第一の算出手段は、前記搬送対象物が前記第一の検出手段により検出されな
くなってから前記搬送対象物の先端が前記所定の位置に到達するまでの間に前記搬送対象
物が移動した距離を前記第一の移動距離として算出し、
前記第二の算出手段は、前記搬送対象物が前記第二の検出手段により検出されなくなっ
てから前記搬送対象物の先端が前記所定の位置に到達するまでの間に前記搬送対象物が移
動した距離を前記第二の移動距離として算出し、
前記判定手段は、前記算出された第一の移動距離から前記算出された第二の移動距離を
引いた値と、前記第一の位置と前記第二の位置との位置間距離とを比較し、前記引いた値
が前記位置間距離よりも小さな値である場合に、前記搬送対象物が取り出されたと判定す
る、(1)記載の装置。
(3) 前記搬送対象物の搬送方向に沿った長さは、前記第二の位置と前記所定の位置と
の間の距離よりも短い長さであり、
前記判定手段は、前記搬送対象物の先端が前記所定の位置に到達したと推定されたとき
に、前記引いた値と前記位置間距離との比較を行う、(2)記載の装置。
(4) 前記特定の位置を通過した又は通過中の前記搬送対象物が第三の位置に存在する
か否かを検出する第三の検出手段と、
前記特定の位置を基準とした前記搬送対象物の移動距離である第三の移動距離を算出す
る第三の算出手段と、
前記算出された第三の移動距離に基づき前記搬送対象物が前記第三の位置に存在すると
判断されても前記第三の検出手段が前記搬送対象物を検出していなければ、前記搬送対象
物が取り出されたと判定する第二の判定手段とを更に備える(1)記載の装置。
(5) 前記特定の位置からの前記搬送対象物の移動距離である第三の移動距離を算出す
る第三の算出手段と、
前記算出された第三の移動距離と前記搬送対象物の搬送方向長さに基づき前記搬送対象
物が前記第二の位置に存在すると判断されても前記第二の検出手段で前記搬送対象物の存
在が検出されていなければ、前記搬送対象物が取り出されたと判定する第二の判定手段と
を更に備える(1)記載の装置。
(6) 前記搬送対象物の搬送方向長さは、前記第一の検出手段と前記第二の検出手段の
検出結果に基づき求められることを特徴とする(5)に記載の装置。
(7) 前記算出された第一の移動距離に基づき前記搬送対象物が前記第二の位置に存在
すると判断されても前記第二の検出手段で前記搬送対象物の存在が検出されていなければ
、前記搬送対象物が取り出されたと判定する第二の判定手段とを更に備える(1)記載の
装置。
(8) 前記第一の算出手段は、前記搬送対象物が前記第一の検出手段により検出されて
から検出されなくなるまでに前記搬送対象物が移動した距離を前記第一の移動距離として
算出し、
前記第二の算出手段は、前記搬送対象物が前記第二の検出手段により検出されてから検
出されなくなるまでに前記搬送対象物が移動した距離を前記第二の移動距離として算出し

前記判定手段は、前記算出された第一の移動距離よりも前記算出された第二の移動距離
の方が短い場合に、前記搬送対象物が取り出されたと判定する(1)記載の装置。
(9) 特定の位置を通過した又は通過中の搬送対象物が第一の位置に存在するか否かを
検出する第一の検出手段と、
前記特定の位置を基準とした前記搬送対象物の移動距離を算出する算出手段と、
前記算出された移動距離から前記搬送対象物が前記第一の位置に存在すると判断されて
も前記第一の検出手段で前記搬送対象物の存在が検出されていなければ、前記搬送対象物
が取り出されたと判定する判定手段とを備える装置。
(10) 前記搬送対象物が第二の位置に存在するか否かを検出する第二の検出手段を備
え、
前記判定手段は、前記算出された移動距離と前記搬送対象物の搬送方向長さに基づき前
記搬送対象物が前記第二の位置に存在すると判断されても、前記第二の検出手段で前記搬
送対象物の存在が検出されていなければ、前記搬送対象物が取り出されたと判定する(9
)記載の装置。
(11) 前記第一の検出手段は、前記第二の検出手段よりも搬送方向下流側に位置する
(8)に記載の装置。
(12) 前記第一の検出手段は、前記搬送対象物が前記所定の位置を通過後に前記用紙
の先端を検出する排出検出器であり、
前記第二の検出手段は、前記搬送対象物が前記所定の位置を通過後に前記用紙の後端を
検出するTOF検出器である(9)に記載の装置。
(13) 前記装置は、ホスト装置と通信可能に接続されており、
前記判定手段、前記第二の判定手段または前記第三の判定手段は、前記ホスト装置から
送信される引き抜き検出機能を有効にするか無効にするかを指示するコマンドに応じて、
前記搬送対象物が取り出されたかどうかの判定を実行することを特徴とする(1)〜(1
2)の何れか1項に記載の装置。
(14) 搬送対象物が第一の位置及び第二の位置を順次に通って少なくとも所定の位置
まで搬送される場合、
搬送対象物が第一の位置に存在するか否かを検出するステップと、
前記第一の位置を通過した又は通過中の前記搬送対象物が第二の位置に存在するか否か
を検出するステップと、
前記第一の位置を通過中の又は通過後の前記搬送対象物の移動距離である第一の移動距
離を算出するステップと、
前記第二の位置を通過中の又は通過後の前記搬送対象物の移動距離である第二の移動距
離を算出するステップと、
前記第二の位置で前記搬送対象物の存在が検出されなくなった場合に、前記算出された
第一の移動距離と、前記算出された第二の移動距離とに基づいて、前記搬送対象物が前記
第二の位置に存在している場合に取り出されたか否かを判定するステップとを有する方法

(15) 特定の位置まで搬送され前記特定の位置を通過した又は通過中の搬送対象物が
、ターゲットの位置に存在するか否かを検出するステップと、
前記特定の位置からの前記搬送対象物の移動距離である第一の移動距離を算出するステ
ップと、
前記算出された第一の移動距離に基づき前記搬送対象物が前記ターゲットの位置に存在
すると判断されても前記搬送対象物の存在が検出されていなければ、前記搬送対象物が取
り出されたと判定するステップとを有する方法。
(16) 前記特定の位置は、前記搬送対象物の頭出し位置であり、前記ターゲットの位
置は、前記搬送物の排出を検出する排出検出器の検出位置であることを特徴とする(15
)に記載の方法。
(17) 前記特定の位置及び前記ターゲットの位置は、前記搬送物の後端を検出するB
OF検出器の検出位置であることを特徴とする(15)に記載の方法。
【0012】
上述のような装置または方法を用いることで、搬送対象物が搬送途中で取り出されたと
しても、適切にその取り出しを判定し、搬送対象物が既に存在しないにも拘わらず、搬送
及びそれに伴う処理を行うといった不必要な処理を行うことなく、取り出しに基づく適切
な処理を継続することができる。
【0013】
「少なくとも第二の位置に存在している場合」とは、第二の位置だけに存在している場
合であっても良いし、第二の位置だけでなく第一の位置にも存在している場合であっても
良い。
【0014】
搬送対象物は、搬送される物体であればどのような物でも採用し得る。すなわち、搬送
対象物は、二次元の物体であっても三次元の物体であっても良い。
【0015】
また、第一の位置、第二の位置、及び所定の位置は、搬送対象物の搬送経路上の位置と
することができる。
【0016】
上記装置においては、搬送対象物を所定の位置まで搬送しても停止させることなく搬送
し続けても良いし、所定の位置まで搬送したら搬送対象物の一旦停止させ、その後に更な
る搬送を行っても良い。ここで、「所定の位置」とは、頭出しを行う場合であって、搬送
対象物の長さが頭出し位置と第二の位置間の距離以下の場合には、所定の位置を頭出し位
置にすることが好ましい。また、搬送対象物の長さが頭出し位置と第二の位置間の距離よ
りも長く、且つ頭出し位置に紙の先端がある場合であって、未だ搬送対象物が第二の位置
にかかっていて、その後、第二の位置にかかっているべき時に、紙が引き抜かれる場合は
、所定の位置を頭出し位置よりさらに下流の場所(頭出し位置と第三の検出位置との間の
仮想位置)に所定の位置を設けることが好ましい。
【0017】
また、「特定の位置」とは、頭出しを行う場合には、頭出し位置または頭出し位置より
さらに下流の場所であってもよい。ただし、特定の位置は、搬送対象物の検出を行うにあ
たっての単なる基準位置であるため、特定の位置の場所は特に制限されるものではなく、
任意の位置に設定することが可能である。
【0018】
「ターゲットの位置」は、前記所定の位置よりも搬送方向下流側又は上流側のどちら側
に有っても良い。ターゲットの位置が前記所定の位置よりも下流側にある場合、判定手段
は、例えば、前記搬送対象物の先端が前記ターゲットの位置に存在するか否かを判断する
ことができる。一方、ターゲットの位置が前記所定の位置よりも上流側にある場合、判定
手段は、例えば、前記搬送対象物の後端が前記ターゲットの位置に存在するか否かを判断
することができる。
【0019】
上述した装置の各手段は、ハードウェア、コンピュータプログラム、或いはそれらの組
み合わせによって実現することができる。また、各手段の処理は、一つの要素(例えば、
ハードウェア、コンピュータプログラム又はそれらの組み合わせ)によって行うこともで
きるし、複数の要素によって行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置の断面の概略であって、その印 刷装置の搬送経路に関わる部分を示す。
【図2】図2は、本実施形態に係る印刷装置の制御系のブロック図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る印刷装置の搬送経路8の説明図である。
【図4】図4は、搬送経路上を用紙3が順方向に進んでいく様子を示す。
【図5】図5は、用紙3が第二の用紙検出器14で検出されている状態で用紙3が引 き抜かれた場合にそれを検出するための処理流れを示す。
【図6】図6は、符号Cの状態で用紙3が引き抜かれた場合の説明図。
【図7】図7は、印刷開始後に行われる監視処理の流れを示す。
【図8】図8は、印刷開始後に行われる引き抜き判定処理の流れの一例を示す。
【図9】図9は、印刷開始後に行われる引き抜き判定処理における用紙3と搬送経路 の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置の断面の概略であって、その印刷装置の搬
送経路に関わる部分を示す。
印刷装置(例えば、小切手の両面に印刷を行う小切手処理装置)の内部には、用紙(例
えば、小切手等の単票用紙)3の挿入口から排出口に至る搬送経路8が形成されている。
搬送経路8は、例えば、挿入口の側(換言すれば、上流側)が水平搬送経路8aとされ、
排出口の側(換言すれば、下流側)の部分が垂直搬送経路8bとされ、これらの間に、円
弧状の湾曲搬送経路8cが介在することにより、連続した搬送経路8が実現されている。
【0022】
このような搬送経路8に沿って、上流側から下流側にかけて、順に、第一の用紙検出器
11、MICRヘッド(磁気ヘッド)12、第1送りローラ対13、第二の用紙検出器1
4、用紙位置決め部材15、裏印字ヘッド16、第2送りローラ対17、表印字ヘッド1
8、第三の用紙検出器19及びイメージスキャナ20が配置されている。イメージスキャ
ナ20の読取面20aには、用紙3をスキャナ読取面20aに押し付けながら搬送するた
めのスキャナ送りローラ21が、そのスキャナ読取面20aに対向した位置に配置されて
いる。
【0023】
第一の用紙検出器11は、例えば、透過型のフォトセンサであり、第二の用紙検出器1
4及び第三の用紙検出器19は、例えば、反射型のフォトセンサであり、いずれの検出器
11、14及び19も、搬送経路8の各位置で用紙3の有無を非接触で検出する。各用紙
検出器11、14及び19は、この例に限らず、どのような種類のセンサであっても良い
。具体的には、第一の用紙検出器11は、用紙の後端を検出するBOF検出器であり、第
二の用紙検出器12は、用紙の先端を検出するTOF検出器であり、第三の用紙検出器1
9は搬送経路8の出口近傍に設けられた用紙排出検出器である。なお、第二の用紙検出器
14は、第三の用紙検出器19との関係で言えば、用紙の後端を検出する後端検出器とし
て機能する。
【0024】
用紙位置決め部材15は、挿入口から挿入された用紙3を、後述する頭出し位置よりも
上流側における所定の位置で一旦停止させるためのものである。用紙位置決め部材15は
、例えば、ソレノイド等のアクチュエータ駆動に応じて、搬送経路8内に突出した作動位
置と、搬送経路8から退避した退避位置との間を移動するように構成される。別の言い方
をすれば、用紙位置決め部材15は、上記所定の位置から用紙3が下流側に進まないよう
にするための用紙ストッパである。
【0025】
第1送りローラ対13は、搬送経路8の水平搬送経路8aを挟んで対向する一対のロー
ラからなり、少なくとも一方のローラを駆動することによって、用紙3を、上流側から下
流側への方向(以下、順方向)に搬送可能であると共に、これとは反対方向である逆方向
にも搬送可能である。これは、第2送りローラ対17についても同様である。
【0026】
MICRヘッド12は、用紙3の表面に記録された磁気インク文字を読み取るためのも
のである。MICRヘッド12の読み取りデータに基づいて用紙3の有効・無効を判断す
ることができる。
【0027】
表印字ヘッド18は、用紙3の表面に、印刷対象(例えば、小切手に記録するための支
払い先、日付、金額等の表書き事項)を印刷するためのものである。表印字ヘッド18は
、例えば、キャリッジに搭載されたシリアル式の印字ヘッドであり、用紙3の幅方向(換
言すれば、主走査方向)に移動しながら、1又は複数行ずつのドットマトリックス印字を
実現することができる。なお、本実施形態では、表印字ヘッド18として、インクリボン
上のインクを用紙3に転写するドットインパクト方式の印字ヘッドを採用しているが、他
の方式の印字ヘッドを採用しても良い。
【0028】
裏印字ヘッド16は、用紙3の裏面に、印刷対象(例えば、買い物客の認証番号、日付
、使用金額等の店側として必要な裏書き事項)を印字するためのものである。裏印字ヘッ
ド16は、例えば、シャトル式のものであって、用紙3の幅方向に所定間隔で複数のヘッ
ドを備え、該間隔幅内でのヘッド移動によって1又は複数列のドットマトリックス印字を
実現することができる。なお、本実施形態では、裏印字ヘッド16として、インクリボン
上のインクを用紙3に転写するドットインパクト方式の印字ヘッドを採用しているが、他
の方式の印字ヘッドを採用しても良い。
【0029】
イメージスキャナ20は、印字された用紙3の表面をスキャンするためのもので、スキ
ャンされた画像データは、圧縮処理された後(圧縮処理は行われなくてもよい)、この印
刷装置に接続された図示しないホストコンピュータに送信された後に保存され、電子決済
に使用される。
【0030】
図2は、本実施形態に係る印刷装置の制御系のブロック図である。
【0031】
印刷装置は、制御装置60を備えている。制御装置60には、前述した第一の用紙検出
器11、MICRヘッド12、第二の用紙検出器14、裏印字ヘッド16、表印字ヘッド
18、第三の用紙検出器19及びイメージスキャナ20に加えて、第1送りローラ対13
および第2送りローラ対17を駆動することにより用紙3を搬送させる搬送モータ51や
、用紙位置決め部材15を搬送経路8上に出したり搬送経路8から退避させたりする用紙
位置決め部材駆動部(例えばアクチュエータ)54等が接続されている。
【0032】
制御装置60は、用紙位置カウンタ81や、制御部(例えばCPU)82や、記憶域(
例えば、不揮発性又は揮発性の書き換え可能なメモリ)83等を備えている。用紙位置カ
ウンタ81は、搬送モータ51の駆動結果(例えば、搬送モータ51の駆動時間長、又は
、ロータリーエンコーダ等の出力)に基づいてカウント値を更新する(具体的には、例え
ば、順方向の場合にはカウント値を増やしていき、逆方向の場合にはカウント値を減らし
ていく)。制御部82は、用紙位置カウンタ81のカウント値と、各用紙検出器11、1
4及び19からの出力とに基づいて、用紙3の搬送経路8における位置(以下、用紙位置
)を計算し、計算された用紙位置を記憶域83に書き込むことができる。
【0033】
以上が、本実施形態に係る印刷装置の概要である。以下、本実施形態の主要な部分につ
いて詳細に説明する。
【0034】
図3は、本実施形態に係る印刷装置の搬送経路8の説明図である。
【0035】
この図3は、搬送経路8をその表側から裏側へと見た場合の様子を表したものである。
従って、イメージとしては、図3上(つまり紙面上)に用紙3が乗り、図3の上空(つま
り紙面上空)を、表印字ヘッド13が、用紙3の搬送方向(ここでは順方向)と直交する
主走査方向に沿って往復移動しつつ、用紙3に印刷をしていくことになる。
【0036】
この搬送経路8には、論理的に分割された複数の区間、例えば、主走査方向と平行な論
理的な複数のラインK1、K2、K3によって分割された3つの区間91、92及び93
がある。第一の区間91は、第一の用紙検出器11に対向した位置を含んだラインである
第一の用紙検出ラインK1と、第二の用紙検出器14に対向した位置を含んだラインであ
る第二の用紙検出ラインK2との間に存在する部分である。第二の区間92は、前述した
第二の用紙検出ラインK2と、用紙頭出し位置を含んだラインである用紙頭出しラインT
との間に存在する部分である。第三の区間93は、前述した頭出しラインTと、第三の用
紙検出器19に対向した位置を含んだラインである第三の用紙検出ラインK3との間に存
在する部分である。なお、第一の用紙検出ラインK1に関する位置情報(例えば、搬送方
向におけるK1の座標)、第二の用紙検出ラインK2に関する位置情報、第三の用紙検出
ラインK3に関する位置情報、頭出しラインTに関する位置情報、後述する用紙位置決め
ラインWに関する位置情報、後述する長さL1及びL2の値は、例えば、記憶域83に記
録されており、制御部82が、それらの情報や値を適宜参照することができる。
【0037】
用紙3は、挿入口に挿された場合、制御部82による制御により、この搬送経路8上を
、図4に示す流れで、頭出しラインTまで搬送される。
【0038】
制御装置60は、用紙挿入前に(例えば第一の用紙検出器11で用紙3が検出される前
に)、位置決め部材15を搬送経路8上に出しておく。オペレータは、用紙3を挿入する

【0039】
第一の用紙検出器11及び第二の用紙検出器14の両方で紙有りが検出された場合に、

制御部82は、用紙3が挿入されたと判断し、第一のローラ対13をクランプし(つまり
閉じた状態にし)、位置決め部材15を搬送経路8から退避させる。
【0040】
すなわち、オペレータが、用紙3の進入が止まるまで用紙3を搬送方向下流側へ挿入す
ることにより、図4の符号(B)の状態になる。
【0041】
この状態から、用紙3の搬送がスタートする。
【0042】
制御部82は、搬送モータ51を駆動し、用紙3の先端を、位置決めラインWから用紙
頭出しラインTまで進める(図4の符号C〜E)。用紙3の先端が、用紙頭出しラインT
上に位置した場合に、例えばそこで用紙3を一旦停止させ、そこをスタートラインとして
、表印字ヘッド18を用いた印刷を開始することができる。
【0043】
図4の流れにおいて、用紙3の先端が第一の用紙検出ラインK1を通過した場合、制御
部82は、第一の用紙検出器11からの信号から、第一の用紙検出ラインK1上は紙無し
から紙有りになったことを検出する。また、用紙3の後端が第一の用紙検出ラインK1を
通過した場合、制御部82は、第一の用紙検出器11からの信号から、第一の用紙検出ラ
インK1上は紙有りから紙無しになったことを検出する。このことは、他の用紙検出ライ
ンK2及びK3についても同様である。
【0044】
この実施形態に係る印刷装置でサポートされている用紙3の長さPは幾つかあるが、そ
の中には、図4に示すように、第二の区間92の長さL2(例えば88.3mm)未満の
もの(例えば68mm)がある。
【0045】
この場合、例えば、制御部82は、第一の用紙検出器11で紙有りを検出した後、搬送
モータ51をしばらく駆動しても(例えば、所定量又は所定時間駆動しても)、第二の用
紙検出器14で紙有りを検出できない場合、用紙3が引き抜かれたと判断することができ
る。
【0046】
また、例えば、制御部82は、第一の用紙検出器11と第二の用紙検出器14の両方か
ら同時に(例えば実質的に同時に)、紙無しを表す信号を受信した場合には、用紙3が引
き抜かれたと判断する。これにより、図4の符号Bの状態、第一の用紙検出器11及び第
二の用紙検出器14の両方で紙有りを検出している状態で、用紙3が引き抜かれた場合に
は、それを検出することができる。
【0047】
以上のように、この実施形態では、用紙3の長さPがL2未満であっても、図4の符号
Bの状態で用紙3が引き抜かれた場合には、印刷を始める前に、それを検出することがで
き、故に、用紙3が存在しないにも関わらずに印刷が行われてしまうことを未然に防ぐこ
とができる。
【0048】
しかし、上記のように、用紙3の長さPがL2未満の場合、従来の技術では、図4の符
号Cの状態、すなわち、用紙3が第二の用紙検出器14でのみ検出されている状態、換言
すれば、用紙3の先端が第二の区間92に存在し用紙3の後端が第一の区間91に存在す
る状態で、用紙3が引き抜かれた場合には、それを検出することができない。従来の技術
では、用紙3が搬送の途中で引き抜かれたのか、それとも、順方向への搬送によって、用
紙3の後端が第二の用紙検出ラインK2を通過したのかがわからないからである。
【0049】
そこで、本実施形態では、以下に説明する処理流れにより、用紙3が第二の用紙検出器
14でのみ検出されている状態で、用紙3が引き抜かれた場合には、それを検出すること
ができる。
【0050】
図5は、用紙3が第二の用紙検出器14で検出されている状態で用紙3が引き抜かれた
場合にそれを検出するための処理流れを示す。以下、この図5と図4とを参照して、その
処理流れを説明する。
【0051】
制御部82は、用紙3の挿入待ち状態において(S1)、オペレータによって用紙3が
挿入されたことを検出した場合には(S2)、挿入された用紙3を頭出しラインTまで搬
送する(S3)。
【0052】
このS3の際、制御部82は、第一の用紙検出器11で紙有りから紙無しになってから
(換言すれば、用紙3の後端が第一の用紙検出ラインK1を通過してから)、用紙3の先
端を所定位置(この実施形態では、頭出しラインT)まで進めた場合の、用紙3が進んだ
第一の距離X1を算出し、算出された第一の距離X1を、記憶域83に書き込む。用紙3
の先端を頭出しラインTまで進めたかどうかは、用紙位置決めラインWからの用紙位置カ
ウンタ81のカウント値の更新分(増加分)から、判別することができる。また、第一の
距離X1は、紙無しを表す信号を第一の用紙検出器11から受信してからの用紙位置カウ
ンタ81のカウント値の更新分(増加分)から、算出することができる。
【0053】
また、S3の際、制御部82は、第二の用紙検出器14で紙有りから紙無しになってか
ら(換言すれば、用紙3の後端が第二の用紙検出ラインK2を通過してから)、用紙3の
先端を頭出しラインTまで進めた場合の、用紙3の進んだ第二の距離X2を算出し、算出
された第二の距離X2を、記憶域83に書き込む。第二の距離X2は、紙無しを表す信号
を第二の用紙検出器14から受信してからの用紙位置カウンタ81のカウント値の更新分
(増加分)から、算出することができる。
【0054】
制御部82は、用紙3の先端を頭出しラインTまで進めた場合、第二の用紙検出器14
から紙無しを検出した場合には(S4でYES)、第一の距離X1と第二の距離X2との
差分と、第一の区間91の長さL1(例えば、記憶域83に記憶されている値)とを比較
する(S5)。
【0055】
ここで、符号Cの状態で用紙3が引き抜かれることなく用紙3の先端が頭出しラインT
まで搬送された場合には、図4に示すように、X1−X2の値はL1と等しくなる。従っ
て、制御部82は、S5の比較の結果として、X1−X2=L1という結果を得た場合に
は、用紙3の引き抜きは無いと判定し(S6)、挿入処理(用紙3の先端を頭出しライン
Tに位置させて印刷を開始できる状態にする処理)を終了することができる。
【0056】
一方、図6に示すように、もし、符号Cの状態で用紙3が引き抜かれてしまったならば
、X1−X2の値は、L1よりも小さな値となる。従って、制御部82は、S5の比較の
結果として、X1−X2<L1という結果を得た場合には、用紙3の引き抜きがあったと
判定し(S7)、所定の処理として、例えば、用紙排出処理を行い(S8)、再度挿入待
ち(S1)を行う。
【0057】
以上が、用紙3の引き抜きを検出するための処理流れである。この処理により、従来よ
りも、用紙3の引き抜きを検出できるケースが多くなる。なお、上記の処理流れにおいて
、用紙の先端を頭出しラインTに位置させた場合に、第二の用紙検出器14から紙有りを
意味する信号を受信した場合には(S4でNO)、L2以上の長さである用紙3が存在す
ることを意味するので、図5に示すように、用紙3の引き抜き無しと判定することができ
る(S6)。
【0058】
用紙3の先端が頭出しラインTに位置し、用紙3の引き抜きは無いと判定された後は、

用紙3を頭出しラインTから紙送りしつつ用紙3に対する印刷を開始することができる。
その際、制御部82は、図7の監視処理を定期的に(又は不定期的に)行うことで、印刷
開始後に用紙3が引き抜かれたかどうかを判定することができる。
【0059】
図7は、印刷開始後に行われる監視処理の流れを示す。
【0060】
制御部82は、例えば定期的に割り込みを行い、第二の用紙検出器14と第三の用紙検
出器19の少なくとも一方から受信する信号を監視する(S11)。その結果、制御部8
2は、同一の用紙検出器14及び/又は19から、N回(N≧1、好ましくはN≧2)連
続して、同一の検出結果(紙有り又は紙無し)を表す信号を受信した場合には、その検出
結果を確定し(例えばその検出結果を記憶域83に書き)(S12)、引き抜き判定処理
を実行する(S13)。
【0061】
ここで、N≧2が好ましい理由としては、例えば、1度限りの検出により紙有りまたは
紙無しを検出すると、ノイズ等の外乱の影響により誤った状態検出が行われる場合がある
ため、検出の信頼性が低くなってしまう可能性がある。しかしながら、本実施形態では、
好ましくは同一の検出結果を少なくとも2回連続して受けた場合にその検出結果が確定さ
れるので、第二及び第三の用紙検出器14及び19の精度が低くても(例えば、前述のよ
うに、透過型ではなく反射型のフォトセンサであっても)、例えば、ノイズ等による外乱
の影響による瞬間的な検出ミスを排除し、正確な検出結果を得ることができる。
【0062】
図8は、検出結果の確定後に実行される引き抜き判定処理の流れの一例を示す。
【0063】
引き抜き判定処理では、制御部82は、まず引き抜き検出フラグをリセット(1または
0→0に書き換え)する(S13−1)。引き抜き検出フラグは、例えば、記憶域83に
存在する。
【0064】
次に、制御部82は、スリップ印字が可能かどうか判断する(S13−2)が、S13
−2では、頭出しラインTに用紙3の先端がセットされると印字可能となり(S13−2
でYES)、第三の用紙検出器19の検出結果を参照して紙無しかどうか確認する(S1
3−3)。一方、S13−2において印字可能でなければ(S13−2でNo)、この時
点で引き抜き判定処理を終了する。
【0065】
制御部82は、S13−3において、第三の用紙検出器19の検出結果として紙有りが
確定していれば(S13−3でNo)、S13―6の処理に進む。
一方、制御部82は、S13−3において、第三の用紙検出器19の検出結果として紙
無しが確定していれば(S13−3でYES)、カウントしている紙送り量を基に用紙3
が第三の用紙検出器19にかかっているかどうか(第三の用紙検出器19に用紙3が検出
されるべきかどうか。用紙3の先端が第三の用紙検出器19の検出位置を超えていれば検
出される。)を推定する(S13−4)。
【0066】
ここで、紙送り量及びその位置関係については、第三の用紙検出ラインK3の位置と、
第一又は第二の用紙検出器11又は14で紙有り(又は紙無し)が検出された後の紙送り
結果(例えば、紙送り距離又は紙送り時間長)から、調べることもできるし、第三の用紙
検出ラインK3の位置と、用紙3の引き抜きを検出することなく印刷が開始された場合の
頭出しラインTからの紙送り結果(例えば、紙送り距離又は紙送り時間長)から、調べる
こともできる。
【0067】
S13−4の結果、用紙3が第三の用紙検出器19にかかっているはずであれば(換言
すれば、用紙3の先端が第三の用紙検出ラインK3又はそれよりも順方向の下流側に位置
するはずであれば)、S13−3での判断と照らし合わせると、第三の用紙検出器19に
より用紙3が検出されるべきであるにも拘わらず実際には検出されていないこととなる。
したがって、この状態は用紙3が引き抜かれたと考えられ、制御部82は、リセットされ
ていた引き抜き検出フラグをセット(0→1に書き換え)する(S13−5)。
【0068】
一方、S13−4の結果、用紙3が第三の用紙検出器19にかかっていないはずである
場合、S13−3での判断における第三の用紙検出器19により検出されていないことと
整合性がとれるため、この段階では用紙3が存在していると考えられ、S13―6に進む

【0069】
次に、制御部82は、第二の用紙検出器14の検出結果を参照する(S13−6)。S
13−6において、第二の用紙検出器14の検出結果として紙有りが確定していれば(S
13−6でNo)、S13―9の処理に進む。
【0070】
一方、制御部82は、第二の用紙検出器14の検出結果として紙無しが確定していれば
(S13−6でYES)、カウントしている紙送り量を基に用紙3が第二の用紙検出器1
4にかかっているかどうか(第二の用紙検出器14に用紙が検出されるべきかどうか。用
紙3の後端が第二の用紙検出器14の検出位置を超えていれば検出されない。)を推定す
る(S13−7)。
【0071】
ここでも、紙送り量及びその位置関係は、第二の用紙検出ラインK2の位置と、第一の
用紙検出器11で紙無しが検出された後の紙送り距離と第一の用紙検出ラインK1と第二
の用紙検出ラインK2の距離とを比較することにより、調べることができる。また、ホス
トコンピュータからの通知により、制御部82が用紙の搬送方向長さを把握できる場合に
は、用紙3の搬送方向長さと頭出し位置の関係及び頭出し位置からの用紙3の搬送量に基
づき、第二の用紙検出ラインK2を用紙3の後端が通過するタイミングを求め、このタイ
ミングの前後で用紙3が検出されるべきかどうか判断してもよい。また、用紙3の長さが
不明な場合でも、第一の用紙検出器11による用紙3の後端検出、第二の用紙検出器14
による用紙3の先端検出及び用紙3の紙送り量を基に用紙3の搬送方向長さを制御部82
が求めるようにしてもよい。
【0072】
S13−7の結果、用紙3の後端が第二の用紙検出器14にかかっているはずであれば
(換言すれば、用紙3の後端が第二の用紙検出ラインK2又はそれよりも順方向の上流側
に位置するはずであれば)、S13−6での判断と照らし合わせると、第二の用紙検出器
14により検出されるべきであるにも拘わらず実際には検出されていないこととなる。し
たがって、この状態は用紙3が引き抜かれたと考えられ、制御部82は、リセットされて
いた引き抜き検出フラグをセット(0→1に書き換え)する(S13−8)。
【0073】
一方、S13−7の結果、用紙3の後端が第二の用紙検出器14にかかっていないはず
である場合、S13−6での判断における第二の用紙検出器14により検出されていない
ことと整合性がとれるため、この段階では用紙3が存在していると考えられ、S13―9
に進む。
【0074】
その後、制御部82は、引き抜き検出フラグがセット(1に設定)されているかどうか
を判断する(S13−9)。ここで引き抜き検出フラグがセットされていれば、制御部8
2は現時点で用紙3が引き抜かれていると判断し、引き抜き検出情報の設定を行う(S1
3−10)。設定される引き抜き検出情報としては、例えば、引き抜きが行われたことを
表す情報や、どの印刷ジョブの印刷の際に引き抜きが行われたかを表す情報を含んだもの
である。即ち、本実施形態では、引き抜き検出フラグをチェックし、S13−3,S13
−4,S13−6,S13−7の判断の結果、何らかの変化により引き抜き検出フラグが
セットされている状態になると、S13−9において引き抜きが行われたと判断される。
【0075】
制御部82は、例えば、引き抜き検出情報を設定することなく印刷を終了した場合には
、印刷終了を表すステータスを、印刷装置に接続されているホストコンピュータ(図示せ
ず)に送信することができる。ホストコンピュータは、印刷装置に送信した印刷データを
、メモリ等の所定の記憶域に保存しておき、印刷終了を表すステータスを受信した場合に
、その保存してある印刷データ(印刷が正常に行われた印刷データ)を記憶域から削除す
ることができる。
【0076】
一方、例えば、制御部82は、S13−10で引き抜き検出情報を設定した場合、印字
停止や、所定の情報(例えば、「印刷失敗」というステータス、或いは、引き抜きにより
印刷が正常に完了していない印刷データの再送指示)の送信等を行うことができる。ホス
トコンピュータは、例えば、その印刷装置から所定の情報を受信した場合には、引き抜き
により印刷が正常に完了していない印刷データ(上記所定の記憶域で保存されている印刷
データ)を、印刷装置に再送することができる。ホストコンピュータは、パーソナルコン
ピュータ或いはデジタルカメラ等の種々の装置を採用することができる。また、印刷デー
タは、色変換処理やハーフトーニング処理等の特定の処理が施されたデータであっても良
いし、そのような特定の処理が施されていないデータ(例えば、JPEG画像ファイル)
であっても良い。
【0077】
上述した実施形態によれば、用紙3が第二の用紙検出器14でのみ検出されている状態
で用紙3が引き抜かれても、図4乃至図6を参照して説明した処理により、印刷開始前の
その引き抜きを検出することができる。また、印刷開始後に用紙3が引き抜かれた場合に
は、図7及び図8を参照して説明した処理により、それを検出して、印刷を停止すること
ができる。すなわち、印刷開始前も開始後も、上記の処理により、用紙検出器によって検
出される位置が、表印字ヘッド18によって印字される位置(以下、印字位置)の順方向
上流側且つ近傍に無くても、用紙3が引き抜かれた場合にはそれを検出できるので、用紙
3が存在しないにも関わらずに印刷が行われてしまうことを減らすことができる。
【0078】
ところで、上述した実施形態の一つの変形例では、図4乃至図6に記載の方法とは別の
方法で、用紙3が第二の用紙検出器14でのみ検出されている状態で用紙3が引き抜かれ
たことを検出することができる。この変形例では、用紙3は、第二の用紙検出ラインK2
を超えた用紙位置決めラインWまで一気に挿入されるのではなく、第一の用紙検出ライン
K1よりも上流側から下流側へと搬送されるものとする。
【0079】
まず、制御部82は、第一の用紙検出器11から紙有りを意味する信号を受信してから
紙無しを意味する信号を受信するまでに用紙3の移動した距離、すなわち、用紙3の先端
が第一の用紙検出ラインK1を通過してから用紙3の後端が第一の用紙検出ラインK1を
通過するまでに用紙3の移動した距離、つまり、用紙3の長さPを算出する。第一の用紙
検出器11と第二の用紙検出器14との両方で用紙3の存在が検出されている状態で、用
紙3が引き抜かれた場合には、第一の用紙検出器11と第二の用紙検出器14との両方で
同時に(実質的に同時に)紙無しが検出されるので、用紙3の引き抜きを検出することが
できる。また、第一の用紙検出器11と第二の用紙検出器14との両方で用紙3の存在が
検出されている状態で、用紙3が引き抜かれることなく、用紙3の後端が第一の用紙検出
ラインK1を超えたのであれば、第一の用紙検出器11では紙無しが検出されるが、第二
の用紙検出器14では、紙有りのままである。この場合に、制御部82は、第一の用紙検
出器11で初めに紙有りが検出されてから、第二の用紙検出器14で紙有りが検出されて
いるが第一の用紙検出器11で紙無しが検出されるまでに用紙3の移動した距離Pを算出
する。
【0080】
また、制御部82は、第二の用紙検出器14から紙有りを意味する信号を受信してから
紙無しを意味する信号を受信するまでに用紙3の移動した距離Zを算出する。距離Zの算
出値は、例えば、搬送モータ51の駆動結果に応じて更新することができる。
【0081】
制御部82は、所定のタイミングで、算出された用紙3の長さPと、算出された距離Z
とを比較する。その所定のタイミングは、例えば、用紙3の先端が頭出しラインTに位置
したと判断された時点であっても良いし、第二の用紙検出器14から紙無しを意味する信
号を受信した時点であっても良い。
【0082】
その比較の結果、制御部82は、P=Zであれば、用紙3が引き抜かれることなく第二
の用紙検出ラインK2を通過したと判定することができ、P>Zであれば、用紙3が第二
の用紙検出ラインK2を通過中に引き抜かれたと判定することができる。
【0083】
以上、本発明の好適な実施形態及び変形例を説明したが、これらは本発明の説明のため
の例示であって、本発明の範囲をこれらの実施形態及び変形例にのみ限定する趣旨ではな
い。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。すなわち、上述した引き
抜き判定の方法は、印刷装置に限らず、搬送対象物の搬送を検出するための種々の技術に
適用することができる。
【0084】
例えば、上述した実施形態又は変形例で説明した、用紙3が引き抜かれたことを検出す
る機能(以下、引き抜き検出機能)を、印刷装置内部で有効にするか無効にするかを、印
刷装置の操作部(図示せず)から設定することができても良いし、印刷装置に印刷データ
を送信するホスト装置(図示せず、例えばパーソナルコンピュータ)からコマンドで設定
することができてもよい。後者の場合、ホスト装置から印刷装置に引き抜き検出機能を有
効にするか無効にするかを指示するコマンドが送信され、引き抜き検出機能が有効にされ
た場合には、印刷装置は、前述した引き抜き検出機能に基づく処理を行うことができる。
一方、そのコマンドによって、引き抜き検出機能が無効にされた場合には、印刷装置は、
前述した処理を行わない、すなわち、用紙3が引き抜かれたことを検出しないようにする
ことができる。また、引き抜き検出機能が有効になっている場合に、用紙3が引き抜かれ
たことを検出した場合には、印刷装置は、用紙3が引き抜かれたというステータスをホス
ト装置に送信することができる。
【符号の説明】
【0085】
11…第一の用紙検出器 12…MICRヘッド(磁気ヘッド) 13…第1送りローラ
対 14…第二の用紙検出器 15…用紙位置決め部材 16…裏印字ヘッド 17…第
2送りローラ対 18…表印字ヘッド 19…第三の用紙検出器 20…イメージスキャ
ナ 51…搬送モータ 60…制御装置 81…用紙位置カウンタ 82…制御部 83
…記憶域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物を第一の位置及び第二の位置を順次に通って少なくとも所定の位置まで搬送
する装置であって、
搬送対象物が第一の位置に存在するか否かを検出する第一の検出手段と、
前記第一の位置を通過した又は通過中の前記搬送対象物が第二の位置に存在するか否か
を検出する第二の検出手段と、
前記第一の検出手段の検出結果により前記搬送対象物が前記第一の位置を通過したこと
がわかったときからの前記搬送対象物の第一の移動距離を算出する第一の算出手段と、
前記第二の検出手段の検出結果により前記搬送対象物が前記第二の位置を通過したこと
がわかったときからの前記搬送対象物の第二の移動距離を算出する第二の算出手段と、
前記第二の位置で前記搬送対象物の存在が検出されなくなった以降に、前記算出された
第一の移動距離と、前記算出された第二の移動距離とに基づいて、前記搬送対象物が少な
くとも前記第二の位置に存在していた時点で取り出されたか否かを判定する判定手段と、
を備える装置。
【請求項2】
前記第一の算出手段は、前記搬送対象物が前記第一の検出手段により検出されなくなっ
てから前記搬送対象物の先端が前記所定の位置に到達するまでの間に前記搬送対象物が移
動した距離を前記第一の移動距離として算出し、
前記第二の算出手段は、前記搬送対象物が前記第二の検出手段により検出されなくなっ
てから前記搬送対象物の先端が前記所定の位置に到達するまでの間に前記搬送対象物が移
動した距離を前記第二の移動距離として算出し、
前記判定手段は、前記算出された第一の移動距離から前記算出された第二の移動距離を
引いた値と、前記第一の位置と前記第二の位置との位置間距離とを比較し、前記引いた値
が前記位置間距離よりも小さな値である場合に、前記搬送対象物が取り出されたと判定す
る、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記搬送対象物の搬送方向に沿った長さは、前記第二の位置と前記所定の位置との間の
距離よりも短い長さであり、
前記判定手段は、前記搬送対象物の先端が前記所定の位置に到達したと推定されたとき
に、前記引いた値と前記位置間距離との比較を行う、請求項2記載の装置。
【請求項4】
特定の位置を通過した又は通過中の前記搬送対象物が第三の位置に存在するか否かを検
出する第三の検出手段と、
前記特定の位置を基準とした前記搬送対象物の移動距離である第三の移動距離を算出す
る第三の算出手段と、
前記算出された第三の移動距離に基づき前記搬送対象物が前記第三の位置に存在すると
判断されても前記第三の検出手段が前記搬送対象物を検出していなければ、前記搬送対象
物が取り出されたと判定する第二の判定手段とを更に備える請求項1記載の装置。
【請求項5】
特定の位置からの前記搬送対象物の移動距離である第三の移動距離を算出する第三の算
出手段と、
前記算出された第三の移動距離と前記搬送対象物の搬送方向長さに基づき前記搬送対象
物が前記第二の位置に存在すると判断されても前記第二の検出手段で前記搬送対象物の存
在が検出されていなければ、前記搬送対象物が取り出されたと判定する第二の判定手段と
を更に備える請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記搬送対象物の搬送方向長さは、前記第一の検出手段と前記第二の検出手段の検出結
果に基づき求められることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記算出された第一の移動距離に基づき前記搬送対象物が前記第二の位置に存在すると
判断されても前記第二の検出手段で前記搬送対象物の存在が検出されていなければ、前記
搬送対象物が取り出されたと判定する第二の判定手段とを更に備える請求項1記載の装置

【請求項8】
前記第一の算出手段は、前記搬送対象物が前記第一の検出手段により検出されてから検
出されなくなるまでに前記搬送対象物が移動した距離を前記第一の移動距離として算出し

前記第二の算出手段は、前記搬送対象物が前記第二の検出手段により検出されてから検
出されなくなるまでに前記搬送対象物が移動した距離を前記第二の移動距離として算出し

前記判定手段は、前記算出された第一の移動距離よりも前記算出された第二の移動距離
の方が短い場合に、前記搬送対象物が取り出されたと判定する請求項1記載の装置。
【請求項9】
特定の位置を通過した又は通過中の搬送対象物が第一の位置に存在するか否かを検出す
る第一の検出手段と、
前記特定の位置を基準とした前記搬送対象物の移動距離を算出する算出手段と、
前記算出された移動距離から前記搬送対象物が前記第一の位置に存在すると判断されて
も前記第一の検出手段で前記搬送対象物の存在が検出されていなければ、前記搬送対象物
が取り出されたと判定する判定手段とを備える装置。
【請求項10】
前記特定の位置を通過した又は通過中の前記搬送対象物が第二の位置に存在するか否か
を検出する第二の検出手段を備え、
前記判定手段は、前記算出された移動距離と前記搬送対象物の搬送方向長さに基づき前
記搬送対象物が前記第二の位置に存在すると判断されても、前記第二の検出手段で前記搬
送対象物の存在が検出されていなければ、前記搬送対象物が取り出されたと判定する請求
項9記載の装置。
【請求項11】
前記第一の検出手段は、前記第二の検出手段よりも搬送方向下流側に位置する請求項8
に記載の装置。
【請求項12】
前記第一の検出手段は、前記搬送対象物が前記所定の位置を通過後に前記搬送対象物の
先端を検出する排出検出器であり、
前記第二の検出手段は、前記搬送対象物が前記所定の位置を通過後に前記搬送対象物の
後端を検出するTOF検出器である請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記装置は、ホスト装置と通信可能に接続されており、
前記判定手段または前記第二の判定手段は、前記ホスト装置から送信される引き抜き検
出機能を有効にするか無効にするかを指示するコマンドに応じて、前記搬送対象物が取り
出されたかどうかの判定を実行することを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載
の装置。
【請求項14】
搬送対象物が第一の位置及び第二の位置を順次に通って少なくとも所定の位置まで搬送
される場合、
搬送対象物が第一の位置に存在するか否かを検出するステップと、
前記第一の位置を通過した又は通過中の前記搬送対象物が第二の位置に存在するか否か
を検出するステップと、
前記第一の位置を通過中の又は通過後の前記搬送対象物の移動距離である第一の移動距
離を算出するステップと、
前記第二の位置を通過中の又は通過後の前記搬送対象物の移動距離である第二の移動距
離を算出するステップと、
前記第二の位置で前記搬送対象物の存在が検出されなくなった場合に、前記算出された
第一の移動距離と、前記算出された第二の移動距離とに基づいて、前記搬送対象物が前記
第二の位置に存在している場合に取り出されたか否かを判定するステップとを有する方法

【請求項15】
特定の位置まで搬送され前記特定の位置を通過した又は通過中の搬送対象物が、ターゲ
ットの位置に存在するか否かを検出するステップと、
前記特定の位置からの前記搬送対象物の移動距離である第一の移動距離を算出するステ
ップと、
前記算出された第一の移動距離に基づき前記搬送対象物が前記ターゲットの位置に存在
すると判断されても前記搬送対象物の存在が検出されていなければ、前記搬送対象物が取
り出されたと判定するステップとを有する方法。
【請求項16】
前記特定の位置は、前記搬送対象物の頭出し位置であり、前記ターゲットの位置は、前
記搬送物の排出を検出する排出検出器の検出位置であることを特徴とする請求項15に記
載の方法。
【請求項17】
前記特定の位置及び前記ターゲットの位置は、前記搬送物の後端を検出するBOF検出
器の検出位置であることを特徴とする請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−126716(P2011−126716A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9146(P2011−9146)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【分割の表示】特願2006−5708(P2006−5708)の分割
【原出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】