説明

携帯型データ担体

上面(14)に接点レイアウト(28)を備え、かつ下面(16)に上記接点レイアウトに接続された半導体回路(20)を備えたフィルム担体(10)から出発する、携帯型データ担体(100)を製造する方法が提案されている。このように提供されたフィルム担体(10)は、射出成形金型(30)内に入れられ、ここで、携帯型データ担体の外寸に関する標準仕様に対応した外側輪郭を有する成形体(40)が半導体回路(20)の周りの上記下面(16)上に形成される射出成形工程が実施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型データ担体の製造および当該データ担体に関するものである。特に本発明は、従来のSIMカードの標準寸法よりも小さい外寸を有するチップカードの製造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
請求項1のおいて書きに記載された方法は特許文献1から知られている。ここには、射出成形技術を用いたチップカードのためのICモジュールの製造方法が記載されている。その方法によれば、上面に接点レイアウトを備え下面にこの接点レイアウトに対応する接触面を備えた担体フィルムは、上記接触面に接続された半導体回路を有する。この半導体回路は次に射出成形用金型内で成形体に成形される。この成形体は次に担体フィルムから打ち抜かれてICモジュールを形成し、このICモジュールは次にチップカードに取り付けられる。この公知の方法は、先ずチップモジュールを製作し、次いで用意されたカード体内に取り付けるという構想に基づいている。
【0003】
この構想はチップカードの一般的な製造方法であり、例えば非特許文献1に記載されている。この文献には、中でもチップカードのためのカード体を製造するための射出成形技術が詳細に説明されている。予め製作されたチップモジュールをヘッドに固定した可動ダイが、双方の成形用金型の半型によって囲われた成形キャビティ内にチップモジュールが突出するように配置される射出成形法が「インモールド・テクニック」と名付けて記載されている。チップモジュールを備えた成形キャビティには次に、横に配置された射出通路を通じて射出封止材料が充填される。その結果、チップモジュールを埋め込んだ射出成形されたカード体が得られる。
【0004】
さらに特許文献2には、射出成形技術を用いることによって特に小型のSIMモジュールを製作する方法が開示されている。それによると、担体フィルム上に二次元の配列で配置された複数のチップモジュールが射出成形用金型内に入れられ、複数のチップモジュールを備えたバーを形成するようにオーバーモールドが行われる。バー内に保持された複数のチップモジュールは、次に所望の形態のデータ担体を生成するように裁断される。この方法は、好ましい射出成形製造法を、製造すべきデータ担体に関する造型における大きな自由度と結びつける。ただし、この種のデータ担体の製造法では一般的でない中間製品の取扱いを必要とし、使用される機械および道具に相応した適合を前提とする。
【0005】
ETSI(ヨーロッパ通信標準協会)は、電子機器の微小化の進展を考慮して、SIMカードに関する標準に比べてさらに寸法が小さくなっている、以後「ミニ・プラグイン」と呼ばれるチップカードのための新しい標準を検討している。
【特許文献1】独国特許公開第30 29 667 号明細書
【特許文献2】米国特許第6,575,375号明細書
【非特許文献1】“Vom Plastik zur Chipkarte” Y.Haghiri & T.Tarantino 著、 Hanser出版、ミュンヘン、1999年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、特に寸法が極めて小さいチップカードの製造を可能にする携帯型データ担体を製造するための簡単な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、請求項1の特徴部分に記載された方法によって解決される。本発明の方法は、極めて小型の携帯型データ担体が、個々のモジュールを製造する中間ステップなしに得られるという利点を有する。この製造方法は、モジュールキャビティのフライス加工も、モジュールをカード体に接続するための貼合せ工程も、植込み装置内での埋込み工程も必要としない。適合する機械は省略され、製造を経済的にする。本発明の方法は、公知の「インモールド・テクニック」に基づいて都合よく実現させることができる。完成したデータ担体がフィルム担体上に直接的に生成されるので、さらなる取扱いが容易になる。特に、データ担体は、なおもフィルム担体上にありながらコード化されかつ記入がなされる。コード化は通常のチップ機能テスタを用いて行なうことができる。完成したデータ担体は、ロール形態で購入者に渡され、購入者がばらばらに裁断することもできる。本発明の方法は、携帯型データ担体の外寸に関する標準仕様に従う外形を備えた携帯型データ担体の製造に適している。特に本発明の方法は、現在検討されている、チップカードに関するミニ・プラグイン標準に従うデータ担体の製造に適している。
【0008】
この方法で製造された携帯型データ担体は、半導体回路が携帯型データ担体の体内に直接埋め込まれているので、特に構造的に高い強度を備えている点に特徴がある。このことは、二つの独立した部品間の接続強度の問題を解消し、したがってこのような接続が遮断される可能性を無くす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の製造方法のための出発材料は、ロール状態にすることが可能なプラスチック系の担体材料からなり、かつ処理時における支持搬送のためのパーフォレーション12を両側に備えたフィルム担体10である。このフィルム担体10は厚さdを有し、フィルム担体10の材料は、一方では成形可能な封止材料に対して良好な接合関係を形成し、他方では完成した携帯型データ担体のカバー層の性質を有するように選択される。フィルム担体10の上面には、図1に示されているように、フィルム担体10上に形成された複数の個々の接点面26を備えた接点レイアウト28が設けられている。接点レイアウト28は、ISO7816によるチップカードの標準的レイアウトに対応する。フィルム担体10の下側16には、半導体回路20を接続するために、その上に形成された接点レイアウト28の接点面26に対応する接触面24が設けられ、これら接触面24は、適当な両面間接続端子を通じて接点面26に接続されている。フィルム担体10をロール状態にする場合には、多数の接点レイアウト28が間隔pを隔ててフィルム担体10上に配置される。しかしながら、この方法は、それぞれ1個のみの接点レイアウト28を形成したフィルム担体10にも同様に実施可能である。
【0010】
フィルム担体10の下面には、半導体回路20が接続され、いずれの場合も接触面24に電気的に接続されている。半導体回路20はチップカードのための「チップ」、すなわち、ウエーファの処理によって作成された集積回路であり、一般にコンピュータのすべての特性を備えている。チップの製造ならびに、接点レイアウト、接触面およびチップを施すことによる担体フィルムの提供については、専門家の間で知られており、例えば、前述の非特許文献1または“Handbuch der Chipkarten” W.Rankl,W.Effing 著、Hanser出版、第4版に詳細に記載されている。処理ステップの実施、ならびに集積回路の構造および機能に関する詳細は、適当な文献、特に上述の文献を参照されたい。
【0011】
図2に示されているような、半導体回路20を備えたフィルム担体10には、次に射出成形処理が施される。このため、半導体回路20を備えたフィルム担体10は、図3に示されているように、射出成形用金型30のキャビティ36内に配置される。ロール上に実施される射出成形処理に関しては、フィルム担体10上に隣接する二つの半導体回路20間の間隔pは、フィルム担体10上の射出成形用金型30の長手方向外寸よりも少なくとも長くなっている。
【0012】
射出成形用金型30は、二つの金型の半型32,34からなり、下側半型34はフィルム担体10の接点レイアウト28を備えた上面に密接して基台として作用する。上側半型32は、キャビティ36、接触面24を備えた半導体回路20および例えばボンディングワイヤの形態で存在するさらなる接続手段を残しながら、フィルム担体10の下側に接する。上側半型32には射出通路42が適当な位置に周知の態様で形成されており、この射出通路42を通じて封止材料44がキャビティ36内に射出される。
【0013】
上側半型32によって囲まれたキャビティ36は、完成した携帯型データ担体に要求される最終的外形を有し、場合によっては、フィルム担体10の厚さd分だけ高さを減らす修正がなされる。最終的な形態は、新しい Mini-Plug-In-Format としてETSIにより現在検討されている(未決定)標準寸法を備えたものに形成することができ、図5は、このような携帯型データ担体100の可能性のある外形を示す平面図である。金型の半型32,34は、完成した携帯型データ担体100に適用される標準によって規定された位置に接点レイアウト28が配置されるように、接点レイアウト28に対して正確に位置決めされる。キャビティ36の内側の高さgは、完成したデータ担体100に関して望まれる最終的な高さhに対応する。
【0014】
成形工程自体においては、封止材料が射出通路42を通じてキャビティ36内に導入され、キャビティが完全に充填される。次に金型の半型32,34が除去される。次いでデータ担体100の外形を備えた完成した成形体40がフィルム担体10に誕生する。
【0015】
このようにして完成された携帯型データ担体100は次に個別化される。このため、半導体回路20を埋め込んだ成形体40は、検査・個人化装置50に運ばれる。この装置は特に、接点面26に当る接触ピン52を備えた読取り/書込み装置を有して、フィルム担体10の反対側に配置された半導体回路20に対しデータリンクを形成する。このデータリンクを通じて半導体回路20は通常の方法で検査され、次に、例えば連番が書き込まれることによって個人化データを備える。
【0016】
検査されかつ個別化された携帯型データ担体100は、次に記入ステーションに供給され、ここで、例えばレーザーを用いて、もしくはインクジェットプリンタを用いた印刷によって記入がなされまたは記号が付される。
【0017】
データ個別化ステップおよびその後の記入ステップはロール上で、すなわち、成形体40がフィルム担体10に連結されているときに都合良く行なわれる。ここではパーフォレーション12により、フィルム担体10の単純な動きが可能になる。
【0018】
個別化されたデータ担体100は次にばらばらに分離される。適当な工具60、例えば打抜きパンチを用いて、成形体40の外側にあるフィルム担体10の部分が除去される。成形体40に連結されているフィルム担体10の部分は成形体40上に残って、完成した携帯型データ担体100のカバー層となる。パンチングの代わりに、裁断により、レーザーを用いることにより、または化学的分離手段によって、フィルム担体10の除去を行なってもよい。
【0019】
上記分離ステップは、より早い時期に、すなわち記入ステップに先立って、または個人化装置内における個別化ステップに先立って行なってもよい。次にさらなる処理ステップが例えば「トレー」内で、すなわちデータ担体100が1個ずつ容れられた凹部を備えた盆内で行なわれる。
【0020】
分離の後、完成したデータ担体100は、直ちに図5に平面図で示されているような形になる。外側輪郭102は、特定の場合に適用される関連する標準によって規定された角104が落された幾何学的特徴を有する。接点レイアウト28を備えた携帯型データ担体100のカバー層は、フィルム担体10の材料によって形成されている。
【0021】
分離された携帯型データ担体100には、必要に応じてさらなる処理ステップが施される。例えば、携帯型データ担体100の分離後に、最終的な個人化が行なわれ、この目的のために携帯型データ担体100は個人化装置50に初めてまたは再び供給される。
【0022】
もしデータ担体の製造に関して従来のモジュール取付け技法が用いられた場合には、機械的に不安定な余分な壁厚を備えた壁が接点レイアウト28と外形輪郭102との間に残るものであるが、提案された方法は、製造されるべき携帯型データ担体100の接点レイアウト28が携帯型データ担体100自体の底面積に類似したサイズを有している場合に特に適している。しかしながら、この方法は、公知のモジュール取付け技法が代わりに用いられた場合においても、基本的には適用可能である。
【0023】
上述の実施の形態は、基本的な発明思想を残しながらさらなる変形の実施が可能である。したがって、金型30が3部品以上を備えたものであっても、あるいは複数の射出成形金型30が同一フィルム担体上で同時に使用されることも可能である。一方、ロール上においても、製造されるデータ担体に対しさらなる処理ステップを施すことも可能である。例えば、成形体40に機械的後処理を施すことも可能であり、あるいは機械的負荷テストも施される。データ担体の分離を購入者が行なうためには、例えばデータ担体の外側輪郭に沿った破断線を設けることによる分離ための準備対策がなされたロール上の複数のデータ担体が購入者に渡される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】接点レイアウトを備えたフィルム担体の上方から見た平面図
【図2】図1に示されたフィルム担体の縦断面図
【図3】射出成形型に配置された、接点レイアウトおよび半導体モジュールを備えたフィルム担体の一部分の縦断面図
【図4】フィルム担体上に形成された成形体を示す図
【図5】携帯型データ担体の接点レイアウト側から見た平面図
【符号の説明】
【0025】
10 フィルム担体
20 半導体回路
24 接触面
26 接点面
28 接点レイアウト
30 射出成形用金型
36 キャビティ
40 成形体
100 データ担体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面(14)に形成された接点レイアウト(28)と下面(16)に形成された接触面(24)とを備えたフィルム担体(10)を提供するステップと、
前記下面(16)に半導体回路(20)を配置し、かつ該半導体回路(20)の接点を前記接触面(24)に接続するステップとを含む携帯型データ担体の製造方法において、
携帯型データ担体の外寸に関する標準仕様に対応する外形(102)を有する成形体(40)を前記半導体回路(20)の周りに形成する射出成形工程を実行するさらなるステップを含むことを特徴とする携帯型データ担体の製造方法。
【請求項2】
前記フィルム担体(10)上に下降して携帯型データ担体の外寸に関する標準仕様の規定に対応する形状を有するキャビティ(36)を取り囲む上側半型(32)を前記射出成形工程のために使用することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記成形体(40)の形成後に、前記半導体回路(20)を配置した前記フィルム担体(10)を個人化装置(50)に供給し、該個人化装置において前記半導体回路(20)の個人化を行なうことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記成形体(40)の形成後に、前記半導体回路(20)が配置された前記フィルム担体(10)を記入ステーションに供給し、該記入ステーションにおいて、前記成形体(40)および/または該成形体(40)に連結された前記フィルム担体(10)に記号および/または文字数字を記入することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記成形体(40)に連結された前記フィルム担体(10)の一部分を残りのフィルム担体(10)から分離することによって、前記携帯型データ担体(100)を別々にすることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
接点レイアウトを備えたカバー層を有し、前記カバー層がその下面に配置された、前記接点レイアウトに接続された半導体回路を備えてなる携帯型データ担体において、
前記半導体回路(20)は、前記カバー層(10)の下面(16)上に形成されかつ携帯型データ担体の外寸に関する標準仕様の規定に対応する形状を有する成形体(40)内に埋め込まれていることを特徴とする携帯型データ担体。
【請求項7】
前記成形体(40)の高さ(g)は、前記カバー層(10)の厚さ(d)分だけ減算した、携帯型データ担体の高さに関する標準仕様の規定に対応することを特徴とする請求項6記載の携帯型データ担体。
【請求項8】
前記カバー層(10)は、前記接点レイアウト(28)を製造するために提供されたフィルム担体(10)から裁断されたものからなり、該フィルム担体は巻いた状態にすることが可能でかつ搬送用パーフォレーション(12)を備えていることを特徴とする請求項6記載の携帯型データ担体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−502059(P2008−502059A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−526276(P2007−526276)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006104
【国際公開番号】WO2005/122072
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(596007511)ギーゼッケ ウント デフリエント ゲーエムベーハー (47)
【氏名又は名称原語表記】Giesecke & Devrient GmbH
【Fターム(参考)】