説明

携帯型情報機器

【課題】折り畳み式の携帯型情報機器における筐体間の高速伝送を可能とする携帯型情報機器を提供することを目的とする。
【解決手段】第1の筐体1と第2の筐体4とを開閉可能に結合するヒンジ部10に積分球14を設け、第1の筐体1の第1の光電変換器16と第2の筐体4の第2の光電変換器15とを、ヒンジ部10に設けた積分球14に対向させて配置して光伝送を行う。これにより、携帯型情報機器の薄型化と共に高速信号伝送における電磁干渉を生じない機器を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機やノートブックパソコン等の携帯型情報機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型情報機器においては、手軽に持ち運びができるために小型、薄型が重要な要件となっており、携帯電話機やノートブック型のパーソナルコンピュータ等においては、筐体を折り畳んで小さくし携帯性を高める構成が一般的となっている。
【0003】
近年、この種の携帯型情報機器においては、多機能化、高性能化等の進展が目ざましく、例えば、携帯電話機ではメガピクセルのカメラの搭載やディスプレイの高精細化、大型化あるいはテレビ機能の搭載等が進んでいる。そのため、携帯型情報機器内での信号伝送速度はますます高速化している。
【0004】
折り畳み式の携帯電話機等においては、一般に入力操作部分や制御部を内蔵した本体部と、ディスプレイ等の表示手段やカメラ等を備えた蓋部とがヒンジ部で結合された構成を採用している。従来、本体部と蓋部の信号伝送は数十本以上の同軸線を媒体として電気信号で行われている。
【0005】
しかしながら、携帯型情報機器に必要とされる信号伝送速度はますます高速化され、ヒンジ部のスペースは限定されているため設計上同軸線の本数を増やすことにも限界がある。そのため、伝送する信号の速度に制限が生じている。また、ヒンジ部の同軸線とアンテナとの間で電磁干渉が発生し、通話品質や通話の信頼性が劣化するという課題を有している。
【0006】
このような課題に対して、本体部と蓋部との間の信号伝送を、光配線を介して行うという提案がされている。例えば、特許文献1では、本体部と蓋部との間の信号伝送を光ファイバを用いて行う。
【0007】
一方、光配線にフィルム状光導波路を用いてボード間を接続する例として特許文献2や特許文献3に開示されたものがある。特許文献2には、プリント基板から取り出した複数の並列信号をそのまま複数の光信号に変換し、信号数と同数のフィルム状光導波路列を通して伝送する構成が開示されている。特許文献3には、ポリイミドフィルム上に光導波路のコア部とクラッド層および電気配線を形成し、フレキシブルな電気・光配線フィルムを構成し、これを用いて信号伝送を行う構成が開示されている。
【特許文献1】特開2003−244295号公報
【特許文献2】特開平01−166629号公報
【特許文献3】特開平06−222230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2や特許文献3においては、フィルム状光導波路がフレキシブルであることを利用して高さや位置の異なるボード間を接続することに主眼が置かれており、フィルム状光導波路を極端に屈曲したり、極端に折り畳むことは想定されていない。そのうえ、ベースフィルムとフィルム状光導波路との総厚は大きく、そのような厚みを有する構成では、小さい曲げ半径で屈曲させると光の伝送損失が生じてしまう。
【0009】
特許文献1には、光ファイバを用いる例が開示されている。光ファイバとしてガラス製であるものはそもそも屈曲させることができない。プラスチック製の光ファイバは柔軟性のあるものの、径が太いためにヒンジ部で小さい曲げ半径で屈曲させると光の閉じ込めができなくなる。そのため、プラスチック製の光ファイバでは、折り畳んで閉じた場合や折り畳み途中の状態では高速伝送ができず、携帯型情報機器を使用する上で大きな制約を受ける。
【0010】
このような課題を解決するためには、光ファイバを光伝送損失の少ない大きな曲げ半径で屈曲させることが考えられる。しかしながら、その構成では、ヒンジ部を大きくして光ファイバの折り畳み部分を大きくする必要があり、携帯型情報機器としては携帯性に支障を生じてしまう。
【0011】
本発明は、以上のような従来の課題を解決した光伝送損失の少ない携帯型情報機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、第1の電気回路部品を備える第1の筐体と、第2の電気回路部品を備える第2の筐体と、前記第1の筐体と前記第2の筐体とを開閉自在に連結するヒンジ部と、前記第1の電気回路部品と前記第2の電気回路部品とを、光通信可能に接続する光接続部とを備える。前記光接続部は、前記第1の電気回路部品から出力される電気信号を光信号に変換するとともに、前記第1の電気回路部品に入力される光信号を電気信号に変換する第1の光電変換器と、前記第2の電気回路部品から出力される電気信号を光信号に変換するとともに、前記第2の電気回路部品に入力される光信号を電気信号に変換する第2の光電変換器と、積分球とを備える。
【0013】
前記積分球は、球形の内反射面と、前記第1、第2の光電変換器それぞれに対応して設けられて前記内反射面上で互いに離間して配置された入出射窓とを備え、一つの入出射窓から前記内反射面に入力される前記光信号を当該内反射面で集光させて他の入出射窓から出力するものである。
【0014】
そして、前記積分球を前記ヒンジ部に設け、前記第1の光電変換器を、前記一つの入出射窓に対向させて前記第1の筐体に設け、前記第2の光電変換器を、前記他の入出射窓に対向させて前記第2の筐体に設ける。
【0015】
これにより、小さなヒンジ部を介して第1、第2の筐体を屈曲させても光信号を損失なく高速伝送することが可能となる。
【0016】
また、前記積分球を、前記ヒンジ部を構成する第1の筐体端部に設け、さらに、前記第2の光電変換器と前記他の入出射窓とを、前記ヒンジ部が有する前記第1の筐体に対する回転軸の回転軸心上に設ける構成としてもよい。この構成により、積分球に対して回転する第2の筐体に設けた第2の光電変換器も見掛け上同じ位置に固定配置されたものとなり、積分球に余分な加工を施す必要がなく構成の簡素化がはかられる。
【0017】
また、前記ヒンジ部は前記第1の筐体に対する回転軸を有し、前記第2の光電変換器と前記他の入出射窓とを、前記回転軸の回転軸心からずれた位置に設ける構成としてもよい。この場合、前記他の入出射窓の形状を、前記第2の筐体の開閉動作に伴う前記第2の光電変換器の回転軌跡を覆う形状とすればよい。そうすれば、折り畳み途中でも光信号の送受信を確実に行えるものとすることができる。
【0018】
また、前記第2の筐体の開閉動作には段階的に開閉停止位置が設定されており、前記他の入出射窓を、前記開閉停止位置に応じる前記第2の光電変換器の回転軌跡上の位置に対向して設けてもよい。この構成により、前記他の入出射窓の形状を、前記第2の筐体の開閉動作に伴う前記第2の光電変換器の回転軌跡を覆う形状とする構成に比較して積分球の機械的な強度を高め信頼性の高いものとすることができる。
【0019】
前記ヒンジ部は前記第1の筐体に対する回転軸と、前記第2の筐体に対する回転軸とを有する形状としてもよい。この場合、さらに、前記ヒンジ部は、前記第1の筐体に対してその平面に沿った一方向またはその一方向に直交する他方向とのうちの一方に沿って回転する第1の回転体と、前記第1の回転体に対してその平面に沿った一方向またはその一方向に直交する他方向とのうちの他方に沿って回転する第2の回転体とを有し、前記第2の筐体を前記第2の回転体に回転一体に取り付け、前記積分球を前記第1の回転体に設けるのがよい。この構成により、二軸回転動作を行うヒンジ部に積分球を組み込むことで、光伝送損失のない光伝送構成を実現できる。
【0020】
この場合、前記第2の光電変換器と前記他の入出射窓とを、前記第2の回転体の回転軸心上に設けるのがよい。この構成により、スリット等の入出射窓といった余分な加工を積分球に施す必要がなく簡単な構成とすることができる。
【0021】
また、前記第2の光電変換器と前記他の入出射窓とを、前記第2の回転体の回転軸心からずれた位置に設ける構成としてもよい。この構成により、第2光電変換器の配置位置を任意に選択することが可能となる。この場合、前記他の入出射窓の形状を、前記第2の筐体の開閉動作に伴う前記第2の光電変換器の回転軌跡を沿う形状とすればよい。そうすれば、第1の筐体と第2の筐体とを回転動作や開閉動作させても確実に光信号の高速伝送が可能となる。同様に、前記第2の筐体の開閉動作には段階的に開閉停止位置が設定されており、前記他の入出射窓を、前記開閉停止位置に応じる前記第2の光電変換器の回転軌跡上の位置に対向して設ければよい。そうすれば、同様の作用効果が得られるうえに、積分球に対する加工が少なくなり、その分、機械的強度が高まる。
【0022】
また、積分球は、第1の回転体に内蔵されるように設ける構成としてもよい。この構成により、積分球の保護が行え、組み立ても容易となる。
【0023】
また、前記積分球を前記ヒンジ部により覆う構成としてもよい。この構成により、入出射窓をヒンジ部で塞いで光信号の漏れを防止することができる。
【0024】
また、前記第1の光電変換器と前記第2の光電変換器とをそれぞれ複数個設けてもよい。この構成により、光信号の伝送を同時に送受信したり、伝送量を多くしたりできる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の携帯型情報機器によれば、積分球をヒンジ部に配置することにより第1の筐体と第2の筐体との間で折り畳みが行われる構成であっても光信号の伝送を高速で行うことができ、しかも光伝送損失の少ないものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態における携帯型情報機器の一例として開閉できる折り畳み式の携帯電話機の斜視図を示している。図2はその要部の分解斜視図である。図3は第1の実施の形態における積分球と光電変換器との構造をさらに詳細に説明するための斜視図である。
【0028】
第1の筐体1には、スクロールキー5やダイヤルキーを含む複数の操作キー6からなる入力操作部7やマイクロホン8、さらには内部には各種信号を制御する制御装置からなる第1の電気回路部品が収納され、かつ、第1の筐体1の一部には出し入れ可能なアンテナ9が設けられている。第2の筐体4には、内側に画像や電話操作時の文字情報等を表示する液晶や有機EL等からなる表示器2および音声を出すスピーカ3、さらにはカメラ等からなる第2の電気回路部品が設けられている。
【0029】
第1の筐体1と第2の筐体4とは、ヒンジ部10で回転可能に連結されており、折り畳み可能に構成されている。このヒンジ部10は第1の筐体1の一端に一体に設けた第1のヒンジ片12と第2の筐体4の一端面に一体に形成した第2のヒンジ片11とを備えており、これらヒンジ片12、11は互いに交互に噛み合うことで一直線上に配置され、さらにその中心部に回転軸13が連通されている。これにより、第1、第2の筐体1、4は、その一端において互いに回転自在に連結されており、第1の筐体1に対して第2の筐体4が開閉できる構成となっている。
【0030】
第1のヒンジ片12の一部には積分球14が組み込まれている。積分球14は図3(a)に示すように、空洞を有する球形をしており、空洞の内壁には拡散反射率の高い白色塗料を塗布した内反射面14aを有している。積分球14は、図3(a)、図3(b)に示すように、互いに離間して配置された一対の入出射窓17、18を備えており、一方の入出射窓17(18)から入った光信号は内反射面14aで拡散反射を繰り返し積分球14内の拡散密度を均一にして、それを他方の入出射窓18(17)に出射するという機能を有している。積分球14を介して光信号の伝送を行えば伝送損失を最小限に抑えることができる。なお、積分球14は第2の筐体4の第2のヒンジ片11に組み込まれていてもよい。
【0031】
積分球14の一方の入出射窓17に対応する位置に第1の筐体1の第1の光電変換器16が対向配置され、他方の入出射窓18に対応する位置に第2の筐体4の第2の光電変換器15が対向配置されている。
【0032】
第1の光電変換器16は、第1の電気回路部品(第1の筐体側部品)から出力される電気信号を光信号に変換して、第2の電気回路部品(第2の筐体側部品)に向けて出力するするとともに、第1の電気回路部品に向けて、第2の回路部品から出力される光信号を電気信号に変換して、第1の電気回路部品に供給する。
【0033】
第2の光電変換器15は、第2の電気回路部品(第2の筐体側部品)から出力される電気信号を光信号に変換して、第1の電気回路部品(第1の筐体側部品)に向けて出力するするとともに、第2の電気回路部品に向けて、第1の回路部品から出力される光信号を電気信号に変換して、第2の電気回路部品に供給する。
【0034】
第1、第2の光電変換器16、15は、受光部(入射する光信号を受信して電気信号に変えるもの)または発光部(電気信号を光信号に変換して出射するもの)であっても受光部と発光部とが一体に設けられた構成であってもよい。ここでいう発光部とは、レーザー、LED、VCSEL等の発光素子であってもよく、また発光素子に接続された光ファイバであってもよい。また受光部とは、フォトダイオード等の受光素子そのものであっても受光素子に接続された光ファイバであってもよい。
【0035】
積分球14の集光原理について説明する。積分球(ウルブリヒト球とも言う)は、光を集め球内拡散反射面(内反射面)により空間的に積分し内壁全面を均一光にする機能を有する。光を集める構成としては、積分球14の内部に光源を配置する構成と、外部より積分球14の開口部(入出射窓17、18)に光を導入する構成がある。本発明では、後者の集光構成を採用している。いずれにしても積分球14は、集めた光を内反射面14aで拡散反射を繰り返すことで均一な強度分布を得ることができる。積分球14の大きさに比較し、出射口(入出射窓17、18)が十分小さければこの出射口面も他の場所と同様、光源の強度に比例した均一強度分布になる。この原理に基づき受光素子により、全光束光量値Φもしくはエネルギー値を測定することが出来る。放射強度E(W・m- 2)を計測した場合、放射強度Eは、次の(1)式により求められる。
E=Φρ{4πR2(1−ρ)}-1 …(1)
ρ:内反射面の拡散反射率
積分球14は、内反射面14a全面が均一光になっていれば良く、そのため、積分球14は、必ずしも完全球でなくともよく、光を拡散反射により積分する球であればよい。完全球でない場合、(1)式の4πR2のところが変わるだけで本質的には、完全球でなくとも良いといえる。
【0036】
信号伝送のためには、まずは、(1)で定義できるEの変化を信号手段として用いる方法が考えられる。この場合、ある時間におけるEの値を計測し、その変化を信号として読み取ることでその変化量を信号として伝送することになる。したがって、電気の信号伝達で電圧変化や電流変化を行い、それに同期してEを変化させて受光素子で読み取ることになる。つまり、この場合の信号伝送は、光電変換器同士の直接的な光信号のやり取りではなく、積分球内での拡散反射を利用した間接的な光信号のやり取りである。すなわち、このことは、それぞれの光電変換器を積分球に対して任意の位置に設置しても通信が可能であることを意味している。ただし、筐体の折り曲げや回転といった動きに対しては、適正な場所に光電変換器が設置されていなければ、光電変換が出来なくなるので、それを考慮して設置する必要がある。
【0037】
電圧の変化や電流の変化が一定となる時間が必要となるように、上記通信方式においては、光の反射角度による光路差というよりもEの変化が一定となる時間が必要となる。例えば1Gbpsのデジタル信号だと1パルスの時間は1nsecとなるが、光の速度が 3×10E11 mmとして、10mm進むのに要する時間は33psecであり、1nsecの時間があれば光信号は、300mmを走ることが出来る。すると、積分球14が数mm程度の大きさならば光強度の状態変化のために要する時間(緩和時間)はデジタル信号よりも十分小さいと考えられる。したがって、積分球14での多重反射によりエネルギーの状態が変化するために要する時間は、1nsecに比べて十分小さく、その時間遅れは通信速度に比べて全く問題にならない。この場合、専用の信号形態や専用の駆動回路が必要となる可能性がある。しかしながら、時間差による信号乱れは特には生じないと考えられる。
【0038】
積分球14と第1、第2の光電変換器16、15とは、光接続部を構成する。次に積分球14と第1、第2の光電変換器16、15との間の位置関係について、図3に示す概略構成図に従ってさらに詳細に説明する。
【0039】
図3(a)、(b)に示すものは、ヒンジ部10の回転軸心13aを通過する位置にある積分球14の直径両端位置に、入出射窓18、17が設けられるとともに、このように配置された入出射窓18、17と同軸で対向するように、第1、第2の光電変換器15、16それぞれが配置される。これにより、入出射窓18、17と第1、第2の光電変換器16、15とは、回転軸心13a上において互いに対向して配置されることになる。図3(b)に示す第2のヒンジ片11は積分球14と内側の辺部で接触し、筐体1、4の開閉時には接触部がすべって回転する構造となっている。
【0040】
この構成によると、第1の筐体1に対して第2の筐体4が相対回転したとしても、第1、第2の光電変換器16、15は、回転軸心13aに対して同軸回転するだけであって、回転時において両第1、第2の光電変換器16、15と入出射窓18、17とは同軸に対向する位置関係を維持する。なお、この説明においては、次のことを前提にしている。すなわち、積分球14は、一方の筐体(例えば、第1の筐体1)に固定的に装着されており、第1の筐体1に対して第2の筐体4が相対回転する際、第1の筐体1に設けられた積分球14は回転せずに、入出射窓18、17も回転軸心13a周りに回転しない。一方、そのとき、図1に示した第2の筐体4に設けられた第2の光電変換器15は、積分球14に対して相対回転する。以上のことを説明の前提にしている。
【0041】
以上のことから、第1の筐体1に対して第2の筐体4が相対回転する際、相対回転する筐体(ここでは例として第2の筐体4)に設けられた第2の光電変換器15は、筐体の開閉操作によって連動回転するものの、その回転は、回転軸心13a周りの自転動作となる。そのため、第1、第2の筐体1、4の回転操作時であっても、第1の光電変換器16と第2の光電変換器15との間の積分球14を介した光伝送は可能となる。
【0042】
この構成では、入/出射窓17、18に対する加工を全く行う必要がなく、その分も加工の簡素化がはかられることになる。
【0043】
なお、上述した第1の実施の形態の構成では、第1の光電変換器16と第2の光電変換器15とのいずれもヒンジ部10の回転軸心13a上に設ける構成とした。これは、第1、第2の光電変換器16、15の回転を、回転軸心13a周りの自転動作とするために採用した構成である。しかしながら、積分球14が載置される筐体に設けられる光電変換器(ここでは例として第1の筐体1に設けられる第1の光電変換器16)は、その構造上、積分球14(対向する入出射窓)に対して相対回転しない。そのため、積分球14が取り付けられる筐体に設けられる光電変換器(例えば、第1の光電変換器16)は、積分球14に対していずれの相対位置であっても(回転軸心13a以外であっても)積分球14の内反射面14a上に存在し、第2の光電変換器15との光通信は可能となる。したがって、第1の光電変換器16に対向する積分球14の表面位置に入出射窓17を設けておけば、第1の光電変換器16と入出射窓17とは常時対向することになる。また、前述したように、積分球14が取り付けられる筐体に設けられる光電変換器、入出射窓(本実施形態で第1の光電変換器16、入出射窓17)は、必ずしも回転軸心13a上に設ける必要はなく、それぞれの光の光軸がずれていても、全く問題がない。
【0044】
次に、図4(a)〜図4(c)に示す構成について説明する。この構成は、積分球14に対して相対回転する筐体(本実施形態では第2の筐体4)側の光電変換器(以下、回転側光電変換器といい、本実施形態では第2の光電変換器15が相当する)は、回転軸心13aからずれた位置に設けられている。この場合、回転側光電変換器(第2の光電変換器15)は、第1、第2の筐体1、4の開閉動作に伴って積分球14に沿って反復移動(回転軸心13aを回転中心にして反復回動)する。
【0045】
そこで、図4(a)〜図4(c)に示す構成では、回転側光電変換器に対向する入出射窓として、スリット状入出射窓19を設ける。スリット状入出射窓19とは、回転側光電変換器(第2の光電変換器15)の移動軌跡を覆う開口を有する形状となる。
【0046】
回転軸心13aからずれた位置に回転側光電変換器(第2の光電変換器15)を設けることにより、携帯型情報機器を設計する上で、回転側光電変換器(第2の光電変換器15)の配置位置を任意に選択することができる。さらには、このような回転側光電変換器の配置構成において、スリット状入出射窓19を設けることで、第1、第2の筐体1、4の開閉動作中においても光信号の伝送が中断されることなく行うことができる。
【0047】
なお、積分球14を固定する側の筐体(本実施形態では、第1の筐体1)に設けられる光電変換器(以下、固定側光電変換器といい、本実施形態では第1の光電変換器16)とそれに対向する入出射窓(本実施形態では入出射窓17)とは、互いに対向する位置に設けられるものの、その配置位置は、回転軸心13a上を含む任意の位置とされる。これは、前述したように、固定側光電変換器とそれに対向する入出射窓とは、第1、第2の筐体1、4の開閉動作によってもその位置を変更しないために、これらの部材を任意の位置に設けても、互いに対向する関係を常時維持できるためである。なお、図4(a)、(c)は、第2の光電変換器16)とそれに対向する入出射窓(本実施形態では入出射窓17)との配置位置は、回転軸心13aからずれた位置としており、図4(b)では、前記配置位置は、回転軸心13a上に配置している。
【0048】
なお、第1の筐体1と第2の筐体4との開閉動作中に光信号の伝送を行う必要のない場合には、図5(a)、(b)に示すように構成してもよい。すなわち、この場合、回転側光電変換器に対向する入出射窓として、スリット状入出射窓19ではなく、回転側光電変換器の移動軌跡に沿って不連続に設けられる回転側光電変換器の停止位置に対向するように、複数の単孔状入出射窓20、21を設ける。ここでいう回転側光電変換器の停止位置とは、例えば、第1、第2の筐体1、4を折り畳んだ状態において回転側光電変換器が移動後に停止する位置と、完全に開いた状態において回転側光電変換器が移動後に停止する位置とをいう。また、回転途中に停止位置を設けてもよい。単孔状入出射窓20、21は、スリット状入出射窓19を設ける構成に比較して、積分球14の機械的な強度を高めたり、光の漏れを低減したりすることができる。
【0049】
図5(a)、(b)では、光電変換器16および入出射窓17は、回転軸心13aからずれた位置に設置している。
【0050】
スリット状入出射窓19や単孔状入出射窓20、21を積分球14に設ける場合、積分球14内に入射された光信号がスリット状入出射窓19や単孔状入出射窓20、21の開口部位から外部に漏れ出さないように第1のヒンジ片11または第2のヒンジ片12によって積分球14の周囲を被うように構成することが望ましい。
【0051】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について、図6〜図10を参照して説明する。図6は、本発明の第2の実施の形態における携帯型情報機器の斜視図であり、図7は、第2の実施の形態における携帯型情報機器の分解斜視図である。また、図8は第2の実施の形態における携帯型情報機器の動作状態を示す斜視図である。また、図9は、ヒンジ部30の要部を拡大して示す分解斜視図である。
【0052】
第2の実施の形態は、第1の実施の形態と同様に携帯型情報機器として折り畳み式携帯電話機を例としたものであり、基本的には第1の実施の形態と同じ構成であるが、異なる点はヒンジ部30の構成にある。
【0053】
第2の実施の形態のヒンジ部30は、第1の筐体1に対して第2の筐体4が水平方向と垂直方向とに回転可能な構成になっている。その構成の一例としては、図9に示すように第1の筐体1の一端部には第1のヒンジ片24が設けられ、この第1のヒンジ片24には、第1の筐体1と第2の筐体4とを開閉する第1の回転体22が組み込まれる。第1の回転体22は、第1の筐体1に対してその平面方向の一つに沿った回転軸(以下、垂直回転軸という)22aを有する。第1の回転体22は、垂直回転軸22aと直交する回転軸(以下、水平回転軸という)23aを有する第2の回転体23が回転可能に組み込まれている。第2の回転体23には、第2の筐体4の一端部が回転一体に結合されている。
【0054】
なお、上記説明においては、垂直回転体22に対して水平回転体23が回転可能に組み込まれた構成として説明した。しかしながら、垂直回転体22と水平回転体23とを一体あるいは回転しないように組み立て、第1の筐体1を垂直回転体22に対して、その垂直回転軸22aに沿って回転可能に結合し、第2の筐体4を水平回転体23に対してその水平回転軸23aに沿って回転可能に結合してもよい。さらには、第2の筐体4に水平回転体23を取り付け、第1の筐体1に垂直回転体22を取り付けるといった取り付け構造を逆にしてもよい。
【0055】
積分球14は、垂直回転体22または水平回転体23のいずれか一方(本実施形態では、垂直回転体22)に組み込まれている。この積分球14の入/出射窓18、17にはそれぞれ第1、第2の光電変換器16、15が対向配置される。積分球14を固定する回転体(本実施形態では、垂直回転体22)が取り付けられる筐体(本実施形態の説明では、第1の筐体1)に設けられる光電変換器(本実施形態では、第1の光電変換器16)は、その回転体の回転軸(本実施形態では垂直回転軸22a)上に限らず、積分球14に対して任意の位置に配置される。このとき、図示はしないが、当該光電変換器(本実施形態では第1の光電変換器16)に対向する入出射窓(入出射窓17が相当する)は、当該光電変換器の位置に応じてその対向位置に配置される。
【0056】
一方、積分球14が配置されていない回転体(本実施形態では、水平回転体23)が取り付けられる筐体(本実施形態の説明では、第2の筐体4)に設けられる光電変換器(本実施形態では、第2の光電変換器15)は、その回転体の回転軸(本実施形態では水平回転軸23a)上に配置される。このとき、図示はしないが、当該光電変換器(本実施形態では第2の光電変換器15)に対向する入出射窓(入出射窓18が相当する)は、当該光電変換器の位置に応じてその対向位置に配置される。
【0057】
以上の構成とすることにより、第1の筐体1と第2の筐体4とがどのような回転動作や開閉動作をしても積分球14に対する第1、第2の光電変換器16、15の相対位置は動くことがない。
【0058】
なお、図10に示すように、積分球14が配置されていない回転体(本実施形態では、水平回転体23)が取り付けられる筐体(本実施形態の説明では、第2の筐体4)に設けられる光電変換器(本実施形態では、第2の光電変換器15)をその回転体の回転軸(本実施形態では水平回転軸23a)からずれた位置に配置してもよい。このとき、図示はしないが、当該光電変換器(本実施形態では第1の光電変換器15)に対向する入出射窓(入出射窓18が相当する)は、当該光電変換器の位置に応じてその対向位置に配置される。
【0059】
このような光電変換器の配置構成を採用する場合には、回転体の回転軸(本実施形態では水平回転軸23a)からずれた位置に配置する光電変換器(本実施形態では、第2の光電変換器15)に対向する入出射窓として、図4(a)に示すスリット状入出射窓19や図5(a)に示す単孔状入出射窓20、21を設ければよい。
【0060】
なお、積分球14は、垂直回転体22または水平回転体23に必要な部分だけ表出するようにインサート成型等の方法によってヒンジ部30内に内蔵するのがよい。そうすれば、積分球14を物理的に保護するうえで有利となる。
【0061】
さらに、ヒンジ部30の表面に露出する積分球14の部位は、積分球14が設けられていない回転体(本実施形態では、水平回転体23)によって被う構成としてもよい。そうすれば、図4、図5に示すようなスリット状入出射窓19や単孔状入出射窓20、21を設けた場合でも光信号が外部に漏れることを阻止し伝送損失を少なくすることができる。
【0062】
以上説明した第1の実施の形態と第2の実施の形態はいずれも携帯電話機を例としたものであるが、図11に示すようにノートブック型のパーソナルコンピュータにも応用することができる。すなわち、表示器2等を有する第1の筐体1と入力操作部7等を有する第2の筐体4とを開閉可能に結合するヒンジ部40に積分球14を設けて、この積分球14と第1、第2の光電変換器とを介して光信号の伝送を行う構成とすることにより、伝送損失が少なく高速伝送を可能とすることができる。
【0063】
また、パーソナルコンピュータに限らず、携帯型端末機やゲーム機等にも応用できる。
【0064】
さらに、積分球14に対して、第1の筐体1または第2の筐体4のそれぞれに複数個の光電変換器を設けて種々な情報を並行して伝送したり、一度に大量の情報を伝送するようにすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の携帯型情報機器は、折り畳み式の第1の筐体と第2の筐体間の光信号を高速に伝送でき、多機能性と薄型化の両立に必要な携帯型情報機器に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施の形態における携帯型情報機器の斜視図。
【図2】第1の実施の形態における携帯型情報機器の要部の分解斜視図。
【図3】(a)、(b)とも第1の実施の形態における積分球と光電変換器との構造の第1の構成を示す概略構成図。
【図4】(a)、(b)、(c)とも第1の実施の形態における積分球と光電変換器との構造の第2の構成を示す概略構成図。
【図5】(a)、(b)とも第1の実施の形態における積分球と光電変換器との構造の第3の構成を示す概略構成図。
【図6】本発明の第2の実施の形態における携帯型情報機器の斜視図。
【図7】第2の実施の形態における携帯型情報機器の分解斜視図。
【図8】第2の実施の形態における携帯型情報機器の動作状態を示す斜視図。
【図9】第2の実施の形態における積分球と光電変換器との構造の第1の構成を示す概略構成図。
【図10】第2の実施の形態における積分球と光電変換器との構造の第2の構成を示す概略構成図。
【図11】本発明の実施の形態の他の例における携帯型情報機器の斜視図
【符号の説明】
【0067】
1 第1の筐体 2 表示器
3 スピーカ 4 第2の筐体
5 スクロールキー 6 操作キー
7 入力操作部 8 マイクロホン
9 アンテナ 10 ヒンジ部
11 第1のヒンジ片 12 第2のヒンジ片
13 回転軸 14 積分球
15 第2の光電変換器 16 第1の光電変換器
17 入/出射窓 18 出/入射窓
19 スリット状入出射窓 20、21 単孔状入出射窓
22 垂直回転体 23 水平回転体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電気回路部品を備える第1の筐体と、
第2の電気回路部品を備える第2の筐体と、
前記第1の筐体と前記第2の筐体とを開閉自在に連結するヒンジ部と、
前記第1の電気回路部品と前記第2の電気回路部品とを、光通信可能に接続する光接続部と、
を備え、
前記光接続部は、
前記第1の電気回路部品から出力される電気信号を光信号に変換するとともに、前記第1の電気回路部品に入力される光信号を電気信号に変換する第1の光電変換器と、
前記第2の電気回路部品から出力される電気信号を光信号に変換するとともに、前記第2の電気回路部品に入力される光信号を電気信号に変換する第2の光電変換器と、
積分球と、
を備え、
前記積分球は、球形の内反射面と、前記第1、第2の光電変換器それぞれに対応して設けられて前記内反射面上で互いに離間して配置された入出射窓とを備え、一つの入出射窓から前記内反射面に入力される前記光信号を当該内反射面で集光させて他の入出射窓から出力するものであり、
前記積分球を前記ヒンジ部に設け、前記第1の光電変換器を、前記一つの入出射窓に対向させて前記第1の筐体に設け、前記第2の光電変換器を、前記他の入出射窓に対向させて前記第2の筐体に設ける、
ことを特徴とする携帯型情報機器。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯型情報機器において、
前記積分球を、前記ヒンジ部を構成する第1の筐体端部に設ける、
ことを特徴とする携帯型情報機器。
【請求項3】
請求項2に記載の携帯型情報機器において、
前記ヒンジ部は前記第1の筐体に対する回転軸を有し、前記第2の光電変換器と前記他の入出射窓とを、前記回転軸の回転軸心上に設ける、
ことを特徴とする携帯型情報機器。
【請求項4】
請求項2に記載の携帯型情報機器において、
前記ヒンジ部は前記第1の筐体に対する回転軸を有し、前記第2の光電変換器と前記他の入出射窓とを、前記回転軸の回転軸心からずれた位置に設ける、
ことを特徴とする携帯型情報機器。
【請求項5】
請求項4に記載の携帯型情報機器において、
前記他の入出射窓の形状を、前記第2の筐体の開閉動作に伴う前記第2の光電変換器の回転軌跡に沿う形状とする、
ことを特徴とする携帯型情報機器。
【請求項6】
請求項4に記載の携帯型情報機器において、
前記第2の筐体の開閉動作には段階的に開閉停止位置が設定されており、
前記他の入出射窓を、前記開閉停止位置に応じる前記第2の光電変換器の回転軌跡上の位置に対向して設ける、
ことを特徴とする携帯型情報機器。
【請求項7】
請求項1に記載の携帯型情報機器において、
前記ヒンジ部は前記第1の筐体に対する回転軸と、前記第2の筐体に対する回転軸とを有する、
ことを特徴とする携帯型情報機器。
【請求項8】
請求項7に記載の携帯型情報機器において、
前記ヒンジ部は、前記第1の筐体に対してその平面に沿った一方向またはその一方向に直交する他方向とのうちの一方に沿って回転可能に前記第1の筐体に連結された第1の回転体と、前記第1の回転体に対してその平面に沿った一方向またはその一方向に直交する他方向とのうちの他方に沿って回転する第2の回転体とを有し、
前記第2の筐体を前記第2の回転体に回転一体に取り付け、
前記積分球を前記第1の回転体に設ける、
ことを特徴とする携帯型情報機器。
【請求項9】
請求項8に記載の携帯型情報機器において、
前記第2の光電変換器と前記他の入出射窓とを、前記第2の回転体の回転軸心上に設ける、
ことを特徴とする携帯型情報機器。
【請求項10】
請求項8に記載の携帯型情報機器において、
前記第2の光電変換器と前記他の入出射窓とを、前記第2の回転体の回転軸心からずれた位置に設ける、
ことを特徴とする携帯型情報機器。
【請求項11】
請求項10に記載の携帯型情報機器において、
前記他の入出射窓の形状を、前記第2の筐体の開閉動作に伴う前記第2の光電変換器の回転軌跡に沿う形状とする、
ことを特徴とする携帯型情報機器。
【請求項12】
請求項10に記載の携帯型情報機器において、
前記第2の筐体の開閉動作には段階的に開閉停止位置が設定されており、
前記他の入出射窓を、前記開閉停止位置に応じる前記第2の光電変換器の回転軌跡上の位置に対向して設ける、
ことを特徴とする携帯型情報機器。
【請求項13】
請求項8に記載の携帯型情報機器において、
前記積分球を前記第1の回転体に内蔵する、
ことを特徴とする携帯型情報機器。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかに記載の携帯型情報機器において、
前記積分球を前記ヒンジ部により覆う、
ことを特徴とする携帯型情報機器。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれかに記載の携帯型情報機器において、
前記第1の光電変換器と前記第2の光電変換器とをそれぞれ複数個設ける、
ことを特徴とする携帯型情報機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−13692(P2006−13692A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185048(P2004−185048)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】