説明

携帯型電子機器

【課題】 表示部側筐体に操作部側筐体がその間に介在されたスライドユニットを介してスライド可能に取り付けられた携帯電話において、より一層薄型化することができるようにする。
【解決手段】 表示部側筐体1内に設けられた回路基板と操作部側筐体11内に設けられた回路基板とは、両筐体1、12間に設けられたフレキシブル配線板21を介して電気的に接続されている。スライドユニットは、表示部側筐体1の上面に設けられたベース板金32と、ベース板金32の上面に設けられたレール板金33と、操作部側筐体11の下面に設けられ、且つ、レール板金33にスライド可能に取り付けられたスライダー板金とを有する。レール板金33にはフレキシブル配線板逃げ用貫通孔37が設けられている。そして、フレキシブル配線板21の一部をフレキシブル配線板逃げ用貫通孔37内に収容することにより、より一層薄型化することができる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は携帯電話等の携帯型電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、従来の携帯電話には、例えば特許文献1に記載のように、上面の手前側に操作部を有する操作部側筐体の上側に、上面に表示部を有する表示部側筐体が相対的にスライド可能に設けられ、操作部側筐体の上側に表示部側筐体が完全に重ね合わされた閉状態と、表示部側筐体に対して操作部側筐体を手前側にスライドさせて操作部側筐体の操作部を露出させた開状態とのいずれかに選択的に切り替えることができるようにしたものがある。
【0003】
この従来の携帯電話では、表示部側筐体に対して操作部側筐体をスライド可能とするため、操作部側筐体の上面に設けられたスライドベース板金に、表示部側筐体の下面に設けられたスライドレール板金が相対的にスライド可能に取り付けられている。また、操作部側筐体内に設けられた操作部側回路基板と表示部側筐体内に設けられた表示部側回路基板とはフレキシブル配線板を介して電気的に接続されている。そして、スライドレール板金の所定の方向の両端部を下面側に向かって折り曲げ、この折り曲げにより形成されたスライドレール板金の下面側空間にフレキシブル配線板の一部を収容することにより、携帯電話の薄型化を図るようにしている(特許文献1の第25段落参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−131544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の携帯電話では、スライドレール板金の下面側空間にフレキシブル配線板の一部を収容することにより、薄型化を図ることができるが、その薄型化に限界があるという問題がある。
【0006】
そこで、この発明は、より一層薄型化することができる携帯型電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る携帯型電子機器は、一の筐体に他の筐体がその間に介在されたスライドユニットを介してスライド可能に取り付けられ、前記一の筐体内に設けられた回路基板と前記他の筐体内に設けられた回路基板とが前記両筐体間に設けられたフレキシブル配線板を介して電気的に接続された携帯型電子機器において、前記スライドユニットを構成する少なくとも一つの部品に前記フレキシブル配線板の一部が収容されるフレキシブル配線板逃げ用貫通孔が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、より一層薄型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の一実施形態としての携帯電話の一部を分解した状態における概略側面図。
【図2】スライドユニットの斜視図。
【図3】スライドユニットの分解斜視図。
【図4】スライドユニットおよび表示部側筐体の部分の分解斜視図。
【図5】図4に示すものの組立てた状態における一部の断面図。
【図6】スライダー板金のスライド動作を説明するために示す側面図。
【図7】スライドユニットにおいてスライダー板金を閉位置に位置させた状態における斜視図。
【図8】図7に示すスライドユニットにフレキシブル配線板の一端部を取り付けた状態における斜視図。
【図9】表示部側筐体に対して操作部側筐体を完全に重ね合わせた閉状態における概略断面図。
【図10】図8の一部の拡大断面図。
【図11】表示部側筐体に対して操作部側筐体を引き出した開状態における概略断面図。
【図12】図10の一部の拡大断面図。
【図13】この発明の他の実施形態としての携帯電話の一部の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1はこの発明の一実施形態としての携帯電話の一部を分解した状態における概略側面図を示す。この携帯電話は、表示部側筐体1、操作部側筐体11、フレキシブル配線板21、スライドユニット31等を備えている。表示部側筐体1は、内部に表示部側回路基板2を有し、下面に液晶表示パネル等からなる表示部(図示せず)を有し、左端部にレシーバ(図示せず)を有している。操作部側筐体11は、内部に操作部側回路基板12を有し、右側下面に複数のキーからなる操作部(図示せず)を有し、右端部にマイク(図示せず)を有している。
【0011】
フレキシブル配線板21の一端部は、後述の如く、表示部側回路基板2の右端部上面に電気的に接続されている。フレキシブル配線板21の他端部は、後述の如く、操作部側回路基板12の左端部下面に電気的に接続されている。なお、図1では、フレキシブル配線板21とスライドユニット31とが交差しているように図示しているが、これは図示の都合上であり、後述の如く、実際には交差していない。
【0012】
次に、図2はスライドユニット31の斜視図を示し、図3はスライドユニット31の分解斜視図を示す。スライドユニット31は、ベース板金32、レール板金33、スライダー板金34、バネ35等を備えている。ベース板金32の手前側の所定の箇所にはスリット36が設けられている。レール板金33の中央部の所定の箇所には方形状のフレキシブル配線板逃げ用貫通孔37が設けられている。レール板金33の左右両側にはほぼL字形状のレール38(図5参照)が設けられている。スライダー板金34はほぼH字形状であり、その中央部にはスリット39が設けられている。スライダー板金34の左右両側にはほぼU字形状のガイド部40(図5参照)が設けられている。
【0013】
そして、レール板金33はベース板金32の上面にスポット溶接等により固定されている。スライダー板金34は、そのガイド部40がレール板金33のレール38の外側にスライド可能に取り付けられていることにより(図5参照)、レール板金33の上側にスライド可能に取り付けられている。バネ35の一端部は、レール板金33の上面の所定の箇所に設けられたピン41に取り付けられている。バネ35の他端部は、スライダー板金34の下面の所定の箇所に設けられたピン42に取り付けられている。
【0014】
次に、図4はスライドユニット31および表示部側筐体1の部分の分解斜視図を示し、図5は図4に示すものの組立てた状態における一部の断面図を示す。スライドユニット31のベース板金32は、表示部側筐体1の内壁面に設けられた段差3に防水機能を兼ねた方形枠状の両面接着テープ4を介して貼り付けられている。ベース板金32は強度を確保するためと、表示部側筐体1への固定のためのものである。ここで、図5に示すように、スライダー板金34のガイド部の外面には樹脂膜43に一体形成されている。
【0015】
次に、図1および図3を参照して説明すると、スライダー板金34は、スライダー板金34の所定の4箇所に設けられたボス44に挿通されたネジ(図示せず)が操作部側筐体筐体11の図1において右端部下面にねじ込まれることにより、操作部側筐体筐体11の図1において右端部下面に取り付けられている。
【0016】
次に、図6はスライダー板金34のスライド動作を説明するために示す側面図である。スライダー板金34は、図6において実線で示す開位置(表示部側筐体1に対して操作部側筐体11を引き出した開状態に対応する位置)と、図6において一点鎖線で示す閉位置(表示部側筐体1に対して操作部側筐体11を完全に重ね合わせた閉状態に対応する位置)との間で、レール板金33に対してスライド可能となっている。この場合、図3に示すバネ35に蓄えられる力は、スライダー板金34が開位置および閉位置にあるとき最小となり、スライダー板金34が開位置と閉位置との中間位置にあるとき最大となる。
【0017】
次に、図7はスライドユニット31においてスライダー板金34を閉位置に位置させた状態における斜視図を示し、図8は図7に示すスライドユニット31にフレキシブル配線板21の一端部を取り付けた状態における斜視図を示す。フレキシブル配線板21の一端部22および他端部23はその間の中間部24よりも幅広となっている。フレキシブル配線板21の一端部22は、図3に示すベース板金32の上面においてスリット36の近傍に両面接着テープ25(図1参照)を介して貼り付けられている。また、フレキシブル配線板21の一端部22は、図3に示すベース板金32のスリット36を介して露出された中継フレキシブル配線板(図示せず)の先端部に圧着されている。この場合の中継フレキシブル配線板の基端部は図1に示す表示部側回路基板2に接続されている。
【0018】
フレキシブル配線板21の他端部23は、図1に示す操作部側筐体11の右側下面に両面接着テープ26を介して貼り付けられている。また、フレキシブル配線板21の他端部22は、図3に示すスライダー板金34のスリット39を介して露出された中継フレキシブル配線板(図示せず)の先端部に圧着されている。この場合の中継フレキシブル配線板の基端部は図1に示す操作部側回路基板12に接続されている。この状態では、フレキシブル配線板21の中間部24の一部はレール板金33のフレキシブル配線板逃げ用貫通孔37に対応する部分に配置されている。
【0019】
次に、図9は表示部側筐体1に対して操作部側筐体11を完全に重ね合わせた閉状態における概略断面図を示し、図10は図9の一部の拡大断面図を示す。この閉状態では、図9に示すように、フレキシブル配線板21の中間部24は、一端部22から左側に延びて180°折り曲げられ(以下、第1の折り曲げ部27という)、第1の折り曲げ部27から右側に延びて180°折り曲げられ(以下、第2の折り曲げ部28という)、第2の折り曲げ部28から左側に延びて他端部23に接続されている。また、図10に示すように、フレキシブル配線板21の中間部24の第1の折り曲げ部27の近傍の一部は、ベース板金32の上面に設けられたレール板金33のフレキシブル配線板逃げ用貫通孔37内に収容されている。ここで、フレキシブル配線板21の中間部24に第1、第2の折り曲げ部27、28を設けているのは、フレキシブル配線板24に余長部分を持たせるためである。
【0020】
次に、図11は表示部側筐体1に対して操作部側筐体11を引き出した開状態における概略断面図を示し、図12は図11の一部の拡大断面図を示す。この閉状態では、図11に示すように、フレキシブル配線板21の中間部24の第1、第2の折り曲げ部27、28は、操作部側筐体11の引き出しに応じて、図9に示す各位置よりもそれぞれ右側に所定の距離だけ移動している。また、図12に示すように、フレキシブル配線板21の中間部24の第1の折り曲げ部27の近傍の一部はレール板金33のフレキシブル配線板逃げ用貫通孔37内に収容されている。
【0021】
以上のように、この携帯電話では、図10に示すように、表示部側筐体1に対して操作部側筐体11を完全に重ね合わせた閉状態、図12に示すように、表示部側筐体1に対して操作部側筐体11を引き出した開状態、さらには閉状態から開状態への移行中および開状態から閉状態への移行中において、フレキシブル配線板21の中間部24の第1の折り曲げ部27の近傍の一部はレール板金33のフレキシブル配線板逃げ用貫通孔37内に収容されている。
【0022】
ところで、図10に示す閉状態から図12に示す開状態に移行するときおよびその逆に移行するとき、フレキシブル配線板21の中間部24はその第1、第2の折り曲げ部27、28の各位置を変位させながら移動するため、中間部24のスムーズな移動の確保や破損防止等を考慮すると、両筐体1、11間にある程度の空間を設ける必要がある。上記実施形態では、フレキシブル配線板21の中間部24の第1の折り曲げ部27の近傍の一部をレール板金33のフレキシブル配線板逃げ用貫通孔37内に収容することができるので、その分、上記空間を狭くすることができ、ひいては薄型化することができる。
【0023】
また、レール板金33にフレキシブル配線板逃げ用貫通孔37を設けているので、レール板金33が軽くなり、軽量化を図ることができる。この場合、フレキシブル配線板逃げ用貫通孔37はレール板金33とフレキシブル配線板21の中間部24とが干渉する領域にのみ設けると、フレキシブル配線板逃げ用貫通孔37に起因するレール板金33の強度低下を最小限とすることができる。
【0024】
次に、図13はこの発明の他の実施形態としての携帯電話の一部の斜視図を示す。この携帯電話において、図7に示すものと大きく異なる点は、ベース板金32において、レール板金33に設けられたフレキシブル配線板逃げ用貫通孔37の位置と同じ位置に同じ形状のフレキシブル配線板逃げ用貫通孔51を設けた点である。この場合、フレキシブル配線板逃げ用貫通孔51の周囲におけるベース板金32の下面は方形枠状の両面接着テープ52を介して、図4に示す表示部側筐体1の内部底面に貼り付けられる。両面接着テープ52は、フレキシブル配線板逃げ用貫通孔37、51の部分を防水、防塵するためのものである。
【0025】
このようにした場合には、フレキシブル配線板21の中間部24の第1の折り曲げ部27の近傍の一部をレール板金37およびベース板金32のフレキシブル配線板逃げ用貫通孔37、51内に収容することにより、より一層の薄型化および軽量化を図ることができる。
【0026】
なお、この発明は、携帯電話に限らず、PHS(Personal Handyphone System)、PDA(Personal Data Assistance, Personal Digital Assistance:個人向け携帯型情報通信機器)等の携帯端末機器等の電子機器にも適用することができる。
【0027】
以下、この発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0028】
(付記1)
付記1の発明は、一の筐体に他の筐体がその間に介在されたスライドユニットを介してスライド可能に取り付けられ、前記一の筐体内に設けられた回路基板と前記他の筐体内に設けられた回路基板とが前記両筐体間に設けられたフレキシブル配線板を介して電気的に接続された携帯型電子機器において、前記スライドユニットを構成する少なくとも一つの部品に前記フレキシブル配線板の一部が収容されるフレキシブル配線板逃げ用貫通孔が設けられていることを特徴とする携帯型電子機器である。
【0029】
(付記2)
付記2の発明は、前記スライドユニットは、前記一の筐体に取り付けられた一の板金と、前記他の筐体に取り付けられ、且つ、前記一の板金にスライド可能に取り付けられた他の板金とを有し、前記フレキシブル配線板逃げ用貫通孔は前記一の板金に設けられていることを特徴とする付記1に記載の携帯型電子機器である。
【0030】
(付記3)
付記3の発明は、前記一の板金は前記一の筐体に取り付けられたベース板金に取り付けられたレール板金からなり、前記他の板金は前記他の筐体に取り付けられたスライダー板金からなることを特徴とする付記1または2に記載の携帯型電子機器である。
【0031】
(付記4)
付記4の発明は、前記ベース板金に前記フレキシブル配線板逃げ用貫通孔と同様のフレキシブル配線板逃げ用貫通孔が設けられていることを特徴とする付記3に記載の携帯型電子機器である。
【符号の説明】
【0032】
1 表示部側筐体
2 表示部側回路基板
11 操作部側筐体
12 操作部側回路基板
21 フレキシブル配線板
31 スライダユニット
32 ベース板金
33 レール板金
34 スライダー板金
35 バネ
37、51 フレキシブル配線板逃げ用貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の筐体に他の筐体がその間に介在されたスライドユニットを介してスライド可能に取り付けられ、前記一の筐体内に設けられた回路基板と前記他の筐体内に設けられた回路基板とが前記両筐体間に設けられたフレキシブル配線板を介して電気的に接続された携帯型電子機器において、前記スライドユニットを構成する少なくとも一つの部品に前記フレキシブル配線板の一部が収容されるフレキシブル配線板逃げ用貫通孔が設けられていることを特徴とする携帯型電子機器。
【請求項2】
前記スライドユニットは、前記一の筐体に取り付けられた一の板金と、前記他の筐体に取り付けられ、且つ、前記一の板金にスライド可能に取り付けられた他の板金とを有し、前記フレキシブル配線板逃げ用貫通孔は前記一の板金に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の携帯型電子機器。
【請求項3】
前記一の板金は前記一の筐体に取り付けられたベース板金に取り付けられたレール板金からなり、前記他の板金は前記他の筐体に取り付けられたスライダー板金からなることを特徴とする請求項1または2に記載の携帯型電子機器。
【請求項4】
前記ベース板金に前記フレキシブル配線板逃げ用貫通孔と同様のフレキシブル配線板逃げ用貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の携帯型電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−8905(P2013−8905A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141703(P2011−141703)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】