説明

携帯機器

【課題】スライドがアシストされるスライド式の携帯機器において、スライドがアシストされる範囲をスライド方向毎に個別に設定できる携帯機器を提供することを課題とする。
【解決手段】携帯電話は、本体部10、表示部20、付勢部材50、表示部20側に固定され本体部10に対してスライド可能に連結され付勢部材50により押圧されるスライダ40と、を備えている。スライダ40は、切替部材60a、60bが固定されている。切替部材60aは、スライド範囲の始端P1から終端P2へのスライドの際に付勢部材50に押圧される被押圧部61a、終端P2から始端P1へのスライドの際に付勢部材50に押圧される被押圧部62a、を有している。被押圧部61a、62a上の押圧位置の移動に伴って、付勢部材50によりスライダ40が押される方向が始端P1側から終端P2側へと切り替わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
スライド可能に連結された第1及び第2筺体を備えた携帯機器が知られている(特許文献1参照)。このような携帯機器は、第1又は第2筺体をスライド方向に押出すことによりスライドをアシストする付勢部材と、この付勢部材により押される方向をスライドの位置に応じて切り替える機構とを備えている。例えば、第2筺体をスライド範囲の始端から終端へとスライドさせる場合には、付勢部材により始端側に押された状態からスライドの途中で終端側に押された状態へと切り替わる。このようにしてスライドがアシストされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−49650号公報
【特許文献2】特開2008−196525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、始端から終端へのスライド、終端から始端へのスライドの何れの場合も、付勢部材によりスライドがアシストされる方向は、単一の機構を用いて切り替えている。このため、始端から終端へのスライド時には、第2筺体を終端側へと押出そうとする付勢部材の付勢力がスライドのアシストとして作用する。しかしながら、終端から始端へのスライド時には、第2筺体を終端側へと押出そうとする付勢部材の付勢力はスライドの抵抗となる。このように、付勢部材の付勢力がスライドのアシストとして作用するか又は抵抗として作用するかは、スライド方向による。即ち、付勢部材の付勢力がアシストとして作用する場合と、抵抗として作用する場合とは表裏一体の関係である。
【0005】
従って、始端から終端へのスライド時で第2筺体が終端側へ押される範囲を設定すると、始端側へと押される範囲のみならず、終端から始端へとスライド時での終端側へと付勢される範囲と始端側へと押される範囲が定まることになる。このように、第2筺体のスライドがアシストされる範囲を、スライド方向に応じて個別に設定することはできない。
【0006】
本発明は、スライドがアシストされるスライド式の携帯機器において、スライドがアシストされる範囲をスライド方向毎に個別に設定できる携帯機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示の携帯機器は、第1及び第2筺体と、付勢部材と、前記第2筺体側に固定され、前記第1筐体に対してスライド可能に連結され、前記付勢部材により押圧されるスライダと、を備え、前記スライダは、スライド範囲の始端から終端へのスライドの際に前記付勢部材に押圧される第1被押圧部、前記終端から前記始端へのスライドの際に前記付勢部材に押圧される第2被押圧部、前記付勢部材により押圧される押圧位置を前記第1被押圧部から前記第2被押圧部へ案内する第1案内部、前記押圧位置を前記第2被押圧部から前記第1被押圧部へ案内する第2案内部、を有し、前記第1被押圧部上の前記押圧位置の移動に伴って、前記付勢部材により前記スライダが押される方向が前記始端側から前記終端側へと切り替わり、前記第2被押圧部上の前記押圧位置の移動に伴って、前記付勢部材により前記スライダが押される方向が前記終端側から前記始端側へと切り替わる。
【発明の効果】
【0008】
スライドがアシストされる範囲をスライド方向毎に個別に設定できる携帯機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1A〜Eは、実施例1の携帯電話機のスライドの説明図。
【図2】図2A〜Eは、実施例1の携帯電話機とは異なる構造を有した携帯電話機のスライドについて説明図。
【図3】図3は、全閉状態の携帯電話機の分解斜視図。
【図4】図4は、全開状態の携帯電話機の分解斜視図。
【図5】図5は、全閉状態での携帯電話の透視図。
【図6】図6A〜Dは、スライド時の押圧機構、切替部材の説明図。
【図7】図7A、Bは、スライド時の押圧機構、切替部材の説明図。
【図8】図8A〜Dは、案内面の説明図。
【図9】図9は、実施例2の携帯電話機の斜視図。
【図10】図10A、Bは、案内部材の説明図。
【図11】図11は、実施例3の携帯電話機の斜視図。
【図12】図12A、Bは、実施例3の携帯電話機の透視図。
【図13】図13A、Bは、実施例4の携帯電話機の説明図。
【図14】図14Aは、実施例4の携帯電話機の構造の説明図、図14Bは、実施例3の携帯電話機の構造の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、複数の実施形態について説明する。なお、携帯機器は例えば携帯電話機である。
【実施例1】
【0011】
図1A〜Eは、実施例1の携帯電話機のスライドの説明図である。
図1Aは、後述する全閉状態、図1Bは、全閉状態から全開状態への移行途中の状態、図1Cは、全開状態、図1Dは、全開状態から全閉状態への移行途中の状態、図1Eは、全閉状態を示している。
【0012】
実施例1の携帯電話機は、本体部(第1筐体)10、本体部10に対して直線状にスライド可能に連結された表示部(第2筺体)20を含む。表示部20の前面には、常に露出状態にあるディスプレイ22が設けられている。図1Cに例示するように、本体部10には、全開状態において露出されるテンキー12、ファンクションキー14が設けられている。本体部10、表示部20の間には、詳しくは後述するが、スライドを補助する機構が設けられている。この機構には、本体部10と表示部20との間に介在して、スライドをアシストする付勢部材が設けられている。尚、図1A〜Eに例示するように、スライド範囲をLとし、スライド範囲Lの始端をP1、終端をP2とする。
【0013】
図1Aは、本体部10と表示部20とが互いに重なった全閉状態を示している。全閉状態から、表示部20が本体部10に対して上方に押されると、表示部20が本体部10上をスライドし、図1Bに例示するように表示部20により隠蔽されていたテンキー12が露出し始める。全閉状態から図1Bの状態の間では、付勢部材は表示部20を始端P1へ戻そうとする。この範囲をLa1とする。図1Bから更に表示部20を押すと、付勢部材は表示部20を終端P2へ押出そうとする。この付勢部材の押出そうとする力により表示部20は、図1Cの全開状態へと移行する。即ち、ユーザは、付勢部材の付勢力に拮抗して範囲La1だけ表示部20をスライドさせれば、その後は付勢部材により表示部20の終端P2側への押出がアシストされる。付勢部材により表示部20が終端P2側へと押される範囲La2は、スライド範囲Lの全体の半分を超えた長さである。即ち、範囲La2は、範囲La1よりも長い。
【0014】
全開状態から表示部20が本体部10に対して下方に押されると、図1Dに例示するようにファンクションキー14は表示部20により隠蔽され始める。全開状態から図1Dの状態の間では、付勢部材は表示部20を終端P2へ戻そうとする。この範囲をLb1とする。更に表示部20が押されると、付勢部材は表示部20を始端P1へ押出そうとする。この付勢部材の押出そうとする力により表示部20は、図1Eに例示するように全閉状態へ移行する。即ち、ユーザは、付勢部材の付勢力に拮抗して範囲Lb1だけ表示部20をスライドさせれば、その後は付勢部材により表示部20は始端P1側へとの押出がアシストされる。付勢部材により表示部20が始端P1側へと押される範囲Lb2は、スライド範囲Lの全体の半分を超えた長さである。即ち、範囲Lb2は、範囲Lb1よりも長い。
【0015】
以上のように、全閉状態から全開状態に移行する場合であっても、全開状態から全閉状態に移行する場合であっても、ユーザは付勢部材の付勢力に拮抗して僅かな距離だけ表示部20を押出せばよい。このように、実施例1の携帯電話機は操作性が向上している。特に、スライド範囲が大きい携帯電話機において操作性が向上する。
【0016】
次に、実施例1の携帯電話機とは異なる構造を有した携帯電話機のスライドについて説明する。図2A〜Eは、実施例1の携帯電話機とは異なる構造を有した携帯電話機のスライドについての説明図である。尚、スライド範囲Lについては同じである。
【0017】
図2Aの全閉状態から図2Bに示した状態まで、付勢部材は表示部20xを始端P1に戻そうとする。付勢部材により表示部20xが始端P1側へ付勢される範囲は、スライド範囲Lの全体の半分である。図2Bの状態から更に表示部20xが終端P2へ押されると、付勢部材は表示部20xを終端P2側へと押出そうとする。この付勢部材の付勢力によって表示部20xは、図2Cに例示する全開状態へと移行する。全開状態から図1Dの状態へと移行する際に、付勢部材は表示部20xを終端P2へと戻そうとする。付勢部材により表示部20xが終端P2側へ付勢される範囲は、スライド範囲Lの全体の半分である。図2Dの状態から更に表示部20xが始端P1へ押されると、付勢部材は表示部20xを始端P1側へと押出そうとする。これにより、再び全閉状態となる。以上のように、付勢部材により表示部20xを押す方向が切り替わる境界点は、スライド範囲の略中間点となる。
【0018】
この理由は、付勢部材により表示部20xが押される方向を切り替えるための機構が、表示部20xを始端P1から終端P2へとスライドさせる場合、終端P2から始端P1へとスライドさせる場合、のいずれの場合も共通の機構を用いているからである。従って、例えば、付勢部材が表示部20xを終端P2側へと押出す範囲をスライド範囲L全体の半分を超えた範囲に設定したと仮定する。この場合、表示部20xを始端P1から終端P2へとスライドさせる際には、付勢部材により表示部のスライドがアシストされる範囲が長くなり、操作性が向上する。しかしながら、表示部20xを終端P2から始端P1へとスライドさせる際には、付勢部材の付勢力に拮抗して表示部20を長い範囲にわたって押す必要がある。従って、このような構造を有した携帯電話機においては、付勢部材により表示部20xが押される方向が切り替わる境界は、スライド範囲の略中間点に設定されている。
【0019】
しかしながら、上述したように実施例1の携帯電話機においては、付勢部材により表示部20が押される方向が切り替わる境界は、スライド範囲の略中間点ではない。しかも、スライド方向がいずれの場合であっても、付勢部材により表示部20が押出される範囲は、スライド全体の範囲の半分を超えている。以下に、実施例1の携帯電話機の構造について詳細に説明する。
【0020】
図3は、全閉状態の携帯電話機の分解斜視図、図4は、全開状態の携帯電話機の分解斜視図、図5は、全閉状態での携帯電話の透視図である。
本体部10と表示部20との間には、図3、4に例示するように、ベース板30、スライダ40、付勢部材50、切替部材60a、60b、押圧機構90が配置されている。ベース板30は、表示部20と対向する本体部10の前面側に固定されている。スライダ40は、本体部10と対向する表示部20の背面側に固定されている。ベース板30の左右の縁部には、ガイド部31が設けられている。スライダ40の左右の縁部には、レール部41が設けられている。ガイド部31とレール部41とは互いにスライド可能に係合する。これにより、本体部10と表示部20とは、所定範囲を直線状にスライド可能に連結される。また、スライダ40の、本体部10と対向する面には、切替部材60a、60b、ストッパ42、43が接着剤などにより固定されている。詳しくは後述する。
【0021】
本体部10と表示部20とは、フレキシブルプリント基板70により電気的に接続されている。スライダ40には、フレキシブルプリント基板70を逃すための切欠部47が設けられている。
【0022】
付勢部材50は、本体部10とスライダ40との間に配置されている。付勢部材50は、ベース板30上に配置されている。付勢部材50は、コイル部51、腕部53、55を含む。腕部53の端部は、本体部10側に連結されている。腕部55の端部は、後述するアーム96に連結されている。
【0023】
ベース板30上には押圧機構90が設けられている。ベース板30は本体部10に固定されているので、換言すれば、押圧機構90は本体部10側に設けられている。押圧機構90は、アーム92、96、ローラ98を含む。アーム92は、ベース板30に対して揺動可能に連結されている。アーム92は、ベース板30の表面上を揺動する。アーム92の先端にはアーム96が連結されている。アーム96は、本体部10又は表示部20の厚み方向に揺動可能にアーム92に連結されている。アーム96の先端にはローラ98が設けられている。ローラ98は、スライダ40のスライドに伴って、後述する被押圧部61a、62a、61b、62b上を移動する。アーム96には付勢部材50の腕部55の端部が連結されている。付勢部材50により、アーム96は切替部材60a又は切替部材60b側に付勢されている。切替部材60aは互いに連続した被押圧部61aと62aを有し、切替部材60bは互いに連続した被押圧部61bと62bを有している。これにより、ローラ98は、被押圧部61a、62a、61b、62bの何れかを押圧する。
【0024】
切替部材60a、60bは、接着剤などにより互いに固定されている。切替部材60a、60bは、それぞれ三角形の薄板状である。切替部材60a、60bは、携帯電話機の厚み方向に互いに重なっている。切替部材60aは、互いに連続した被押圧部61a、62aを有している。切替部材60bも同様に、互いに連続した被押圧部61b、62bを有している。ローラ98は、表示部20のスライドに伴って、被押圧部61a、62a、61b、62b上を移動する。被押圧部61a、62a、61b、62bは、それぞれローラ98と係合するように溝状に設けられている。被押圧部61a、62a、61b、62bは、それぞれ直線状であるが、直線状に限定されない。例えば被押圧部61などが曲線状の場合、スライド量とアシスト力の関係が非直線的に変化させることができる。これにより、アシスト力の変化パターンを変更することができる。
【0025】
図5に例示するように、スライド方向での被押圧部61a、62a、61b、62bの長さは、それぞれ上述した範囲La1、La2、Lb1、Lb2に相当する。
【0026】
次に、押圧機構90、切替部材60a、60bについて詳細に説明する。
図6A〜6D、図7A、7Bは、スライド時の押圧機構90、切替部材60a、60bの説明図である。図6Aに例示するように全閉状態においては、ローラ98は、被押圧部61a上を押圧する。また、全閉状態においては、ローラ98とストッパ43とが当接することによりローラ98が被押圧部61a又は被押圧部62bから離脱することを防止している。また、ローラ98とストッパ43とが当接によりスライド範囲の始端P1位置を規定している。表示部20をスライドさせると、表示部20のスライドに伴って切替部材60aも移動する。切替部材60aの移動により、ローラ98は被押圧部61a上を上るように移動する。ローラ98が被押圧部61a上にある間は、付勢部材50の付勢力により、切替部材60aは始端P1側に戻されるように力が作用する。被押圧部61aは、第1戻し領域に相当する。
【0027】
更に表示部20を終端P2側へスライドさせると、図6Bに例示するように、ローラ98は被押圧部61aと被押圧部62aとの境界点に到達する。尚、図6Bは図1Bに対応している。更に表示部20を終端P2側へスライドさせると、図6Cに例示するように、ローラ98は、被押圧部62a上を移動する。ローラ98が被押圧部62a上にある間は、付勢部材50の付勢力により、切替部材60aは終端P2側へ押し出されるように力が作用する。被押圧部62aは、第1押出し領域に相当する。この付勢部材50の付勢力により切替部材60aは終端P2側へ押出されて、図6Dに例示するように、ローラ98は被押圧部62aの先端にまで移動する。このようにして全閉状態から全開状態へと移行する。
【0028】
このように、被押圧部61aから被押圧部62aへの押圧位置の移動に伴って、付勢部材50によりスライダ40が押される方向が始端P1側から終端P2側へと切り替わる。また、被押圧部61a、62aの境界の位置は、被押圧部62aの先端よりも被押圧部61aの先端に近い。換言すれば、スライダ40のスライド方向での被押圧部62aの長さは被押圧部61aの長さよりも長い。よって、付勢部材50によって終端P2側への表示部20のスライドがアシストされる範囲La2を長くすることができる。
【0029】
尚、全開状態においては、ローラ98とストッパ42とが当接することによりローラ98が被押圧部62a、61bから離脱することを防止している。ローラ98とストッパ42との当接により、スライド範囲の終端P2位置が規定される。また、詳しくは後述するが被押圧部62aの先端に形成された案内面により、ローラ98は、被押圧部62a上から被押圧部61b上へと移動する。
【0030】
次に、全開状態から全閉状態への移行について説明する。図6Dの全開状態から表示部20を下方にスライドさせると、図7Aに例示するように、ローラ98は被押圧部61b上を上るように移動する。ローラ98が、被押圧部61b上にある間は、付勢部材50の付勢力により、切替部材60bは終端P2側へ戻されるように力が作用する。
【0031】
更に表示部20を始端P1側へスライドさせると、図7Bに例示するように、ローラ98は被押圧部62b上を移動する。ローラ98が被押圧部62b上にある間は、付勢部材50の付勢力により、切替部材60bは始端P1側へ押出されるように力が作用する。これにより、ローラ98は被押圧部62bの先端にまで移動し、図6Aに例示するように全閉状態となる。尚、被押圧部62bの先端にはローラ98を被押圧部62bから被押圧部61aへと案内する案内面が形成されている。詳しくは後述する。
【0032】
このように、被押圧部61bから被押圧部62bへと押圧位置の移動に伴って、付勢部材50によりスライダ40が押される方向が終端P2側から始端P1側へと切り替わる。また、被押圧部61b、62bの境界の位置は、被押圧部62bの先端よりも被押圧部61bの先端に近い。換言すれば、スライダ40のスライド方向での被押圧部62bの長さは被押圧部61bの長さよりも長い。よって、付勢部材50によって始端P1側への表示部20のスライドがアシストされる範囲Lb2を長くすることができる。
【0033】
以上のように、切替部材60a、60bは、付勢部材50により押されるスライダ40の方向を切り替える機能を有している。この切替部材60a、60bは、表示部20を始端P1から終端P2へスライドさせる場合と、終端P2から始端P1へとスライドする場合と、にそれぞれ対応して設けられている。スライド方向毎に、付勢部材50によりスライドがアシストされる範囲を設定することができる。
【0034】
次に、案内面について説明する。図8A〜Dは、案内面の説明図である。案内面65aは被押圧部62aの先端に形成されている。図8Aに例示するように、案内面65aは、垂直方向に対して傾斜している。また、ローラ98は、付勢部材50の付勢力により案内面65aを押圧する。これにより、ローラ98は案内面65aをスライドし、図8Bに例示するように、被押圧部62aから被押圧部61bへと移動する。また、案内面65bは被押圧部62bの先端に形成されている。図8Cに例示するように、案内面65bも傾斜している。ローラ98は付勢部材50の付勢力により案内面65bを押圧するため、ローラ98は案内面65bをスライドし、図8Dに例示するように被押圧部62bから被押圧部61aへと移動する。
【0035】
尚、範囲La1、Lb1は、同じではなくてもよく、同様に範囲La2、Lb2は、同じでなくてもよい。即ち、スライド方向毎に、付勢部材50によりそのスライドがアシストされる範囲を変更してもよい。具体的には、被押圧部61aと被押圧部62aとのスライド方向での長さの比と、被押圧部61bと被押圧部62bとのスライド方向での長さの比とを異なるように設計してもよい。これにより例えば、全閉状態から全開状態への移行の際に付勢力によりアシストされる範囲を、全開状態から全閉状態への移行の際に付勢力によりアシストされる範囲より長くしてもよい。
【実施例2】
【0036】
次に、実施例2の携帯電話機について説明する。図9は、実施例2の携帯電話機の斜視図である。尚、図9においては、表示部、スライダを省略してある。
図9に例示するように、実施例2の携帯電話機は、始端P1位置でアーム96と当接する案内部材44と、終端P2位置でアーム96と当接する案内部材45とを備えている。案内部材44、45は、不図示のスライダに固定されている。
【0037】
図10A、Bは、案内部材の説明図である。図10Aに例示するように、案内部材44は、案内面443、規定面441とを有している。案内面443は傾斜している。規定面441は垂直である。終端P2から始端P1へのスライドの際には、ローラ98は被押圧部62b上を移動する。ローラ98が被押圧部62bの先端にまで移動すると、アーム96は案内面443に当接して案内面443上をスライドし、規定面441に当接する。これにより、アーム96は、携帯電話機の厚み方向での揺動が案内される。よって、ローラ98は、被押圧部62bから被押圧部61aへと移動する。
【0038】
また、図10Bに例示するように、案内部材45は、規定面451、案内面453を有している。案内面453は傾斜している。規定面451は、垂直である。ローラ98が被押圧部62aの先端に移動すると、アーム96は案内面453に当接して案内面453上をスライドし、規定面451に当接する。これにより、ローラ98は、被押圧部62aから被押圧部61bへと移動する。
【実施例3】
【0039】
実施例3の携帯電話機について説明する。図11は、実施例3の携帯電話機の斜視図である。図11においては、表示部、スライダは省略してある。
押圧機構90bは、レール93、レール93にスライド可能に係合したスライド部材94、スライド部材94に対して揺動可能に支持されたアーム96、アーム96の先端に連結されたローラ98、を含む。レール93は、表示部のスライド方向に直交する方向に延びている。また、スライド部材94には、腕部55の先端が固定されている。これにより、スライド部材94は、付勢部材50により常に切替部材60a、60bに向けて付勢される。
【0040】
図12A、Bは、実施例3の携帯電話機の透視図である。図12Aは、全閉状態、図12Bは、全開状態での携帯電話機を示している。図12A、12Bに例示するように、表示部20のスライドに伴って、スライド部材94はレール93上をスライドする。これにより、ローラ98が切替部材60a又は60bを押圧した状態を維持できる。
【実施例4】
【0041】
実施例4の携帯電話機について説明する。
図13A、Bは、実施例4の携帯電話機の説明図である。図13Aは、実施例4の携帯電話機の一部分の構成を例示している。図13Bは、実施例4の携帯電話機の断面を例示している。図13Aにおいては、表示部20、スライダ40については省略してある。
【0042】
ベース板30cには、ガイド溝153が設けられている。ガイド溝153は、本体部10cの長手方向および、表示部20がスライドする方向と略直交する方向に延びている。ガイド溝153は、レール93と略平行である。ガイド溝153には、付勢部材50用のスライド部材154がスライド可能に係合している。即ち、スライド部材154は、本体部10cに対してスライド可能に設けられている。付勢部材50の腕部53は、スライド部材154に連結されている。詳細には、スライド部材154は、付勢部材50のスライド部材94、アーム96と連結された一方の端部と反対側の他方の端部と連結されている。スライド部材154上にコイル部51が配置される。スライド部材154には、従動ローラ158が設けられている。従動ローラ158は回転可能である。
【0043】
スライド部材154は、付勢部材50の付勢力によりスライダ40を押圧している。詳細には、図13Bに例示するように、付勢部材50の付勢力により従動ローラ158がスライダ40のレール部41を押圧し、レール部41の内側と接触している。従動ローラ158は、本体部10cに対するスライダ40のスライドに伴い回転する。スライダ40は表示部20に固定されているので、従動ローラ158は表示部20側に接触している。従って、スライド部材154は、付勢部材50の押圧により表示部20側を押圧している。従動ローラ158とレール部41とが接触しているときには、スライド部材154はガイド溝153の端部と接触していない。このため、付勢部材50の付勢力は、本体部10cに対して直接的には作用しない。
【0044】
図14Aは、実施例4の携帯電話機の構造の説明図である。図14Bは、実施例3の携帯電話機の構造の説明図である。図14A、Bは、各構造を模式的に示している。
図14Aに例示するように、スライド部材154は、本体部10cに対してスライド可能である。スライド部材154に設けられた従動ローラ158は、付勢部材50によりスライダ40のレール部41側に付勢される。また、アーム96は、付勢部材50により、切替部材60a、60b側に付勢される。このように、付勢部材50の一端はスライダ40の切替部材60a、60bを付勢し、付勢部材50の他端は、スライダ40のレール部41の内側を付勢している。
【0045】
一方、図14Bに例示するように、実施例3の携帯電話機においては、付勢部材50の一方の端部は本体部10bに直接連結され、付勢部材50の他方の端部はアーム96と連結している。アーム96は、付勢部材50の付勢力により表示部20側に設けられた切替部材60a、60bをスライド方向と略直交する方向に付勢している。即ち、実施例3の携帯電話機の付勢部材50は、本体部10bに対して表示部20をスライド方向と略直交する方向に付勢している。このため、図14Bに例示するように、表示部20は、付勢部材50により本体部10bに対して図14Bの左方向に常に付勢される。ガイド部31、レール部41間には、スライドを確保するためのクリアランスが設定されている。従って、図14Bに例示するように、付勢部材50の付勢力により、図14Bの左側にあるガイド部31とレール部41との間の摩擦力が増大する。これにより、本体部10b、表示部20のスライドが難しくなる恐れがある。
【0046】
実施例4の携帯電話機では、図14Aに例示したように、付勢部材50の付勢力は本体部10cに直接的に作用しない。従って、本体部10cに対して表示部20がスライド方向と略直交する方向に付勢されることはない。これにより、本体部10cに対する表示部20のスライドが容易となる。
【0047】
また、付勢部材50の腕部53がスライド部材154に連結されており、スライド部材154は本体部10c側に連結されている。このため、本体部10cに対して表示部20がスライドした場合であっても、付勢部材50を本体部10cの所定位置で保持することができる。これにより、本体部10cに対して表示部20がスライドした場合であっても、付勢部材50を所定の位置で保持しつつ切替部材60a、60bを押圧することができる。
【0048】
以上本発明の好ましい一実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0049】
携帯機器としては、携帯電話機に限定されない。例えば、PDAやノートパソコンのように、2つの筐体が直線状にスライド可能に連結された機器であればよい。スライダ40と切替部材60a、60bとが、例えば合成樹脂などにより一体に形成されていてもよい。
【0050】
実施例4の携帯電話機において、ストッパ42、43や案内部材44、45を設けてもよい。
【0051】
(付記1)
第1及び第2筺体と、
付勢部材と、
前記第2筺体側に固定され、前記第1筐体に対してスライド可能に連結され、前記付勢部材により押圧されるスライダと、を備え、
前記スライダは、スライド範囲の始端から終端へのスライドの際に前記付勢部材に押圧される第1被押圧部、前記終端から前記始端へのスライドの際に前記付勢部材に押圧される第2被押圧部、前記付勢部材により押圧される押圧位置を前記第1被押圧部から前記第2被押圧部へ案内する第1案内部、前記押圧位置を前記第2被押圧部から前記第1被押圧部へ案内する第2案内部、を有し、
前記第1被押圧部上の前記押圧位置の移動に伴って、前記付勢部材により前記スライダが押される方向が前記始端側から前記終端側へと切り替わり、
前記第2被押圧部上の前記押圧位置の移動に伴って、前記付勢部材により前記スライダが押される方向が前記終端側から前記始端側へと切り替わる、携帯機器。
(付記2)
前記第1被押圧部は、前記付勢部材の押圧により前記スライダを前記始端側へ戻そうとする第1戻し領域、前記付勢部材の押圧により前記スライダを前記終端側へ押出そうとする第1押出し領域、を有し、
前記第2被押圧部は、前記付勢部材の押圧により前記スライダを前記終端側へ戻そうとする第2戻し領域、前記付勢部材の押圧により前記スライダを前記始端側へ押出そうとする第2押出し領域、を有し、
前記スライダのスライド方向での前記第1押出し領域の長さは前記第1戻し領域の長さよりも長く、
前記スライダのスライド方向での前記第2押出し領域の長さは前記第2戻し領域の長さよりも長い、付記1の携帯機器。
(付記3)
前記付勢部材により前記スライダを押圧する押圧機構を備え、
前記押圧機構は、前記第1筺体の厚み方向に揺動可能に支持され前記付勢部材により付勢されたアーム、前記アームに連結され前記付勢部材の付勢力により前記第1又は第2被押圧部を押圧するローラ、を含む、付記1又は2の携帯機器。
(付記4)
前記第1及び第2被押圧部は、前記第1又は第2筐体の厚み方向に並んでいる、付記1乃至3の何れかの携帯機器。
(付記5)
前記アームは、前記第1筐体に揺動可能に支持され前記付勢部材により付勢される第1アーム、前記第1アームに前記第1筺体の厚み方向に揺動可能に支持され前記ローラが連結された第2アーム、を含む、付記3又は4の携帯機器。
(付記6)
前記押圧機構は、前記第1筐体に設けられたガイドレール、前記ガイドレール上をスライドするとともに前記付勢部材により付勢され前記アームを揺動可能に保持するスライド部材、を有している、付記3又は4の携帯機器。
(付記7)
前記付勢部材の前記アームと連結された一方の端部の反対側の他方の端部に連結され、前記第1筐体に対してスライド可能に設けられ、前記第2筺体のスライドを許容しつつ前記付勢部材の付勢力により前記第2筺体側を押圧する付勢部材用のスライド部材、を備えている付記6の携帯機器。
(付記8)
前記付勢部材用のスライド部材は、前記第2筐体を押圧し前記第2筺体のスライドに連動して回転する従動ローラを有している、付記7の携帯機器。
(付記9)
前記ローラと当接することにより前記第1又は第2被押圧部からの前記ローラの離脱を防止するストッパを備えている、付記1乃至8の何れかの携帯機器。
(付記10)
前記第1案内部は、前記第1被押圧部に設けられ前記付勢部材の付勢力により前記押圧位置を前記第2被押圧部へ案内する案内面を含む、付記1乃至9の何れかの携帯機器。
(付記11)
前記第1案内部は、前記スライダのスライドに伴って前記アームと当接して前記アームを案内することにより前記押圧位置を案内する案内部材を含む、付記1乃至10の何れかの携帯機器。
【符号の説明】
【0052】
10 本体部
20 表示部
30 ベース板
40 スライダ
50 付勢部材
60a、60b 切替部材
61a、62a、61b、62b 被押圧部
65a、65b 案内面
44、45 案内部材
90 押圧機構
92、96 アーム
94 スライド部材
98 ローラ
153 ガイド溝
154 スライド部材
158 従動ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2筺体と、
前記第1筐体側に固定された付勢部材と、
前記第2筺体側に固定され、前記第1筐体に対してスライド可能に連結され、前記付勢部材により押圧されるスライダと、を備え、
前記スライダは、スライド範囲の始端から終端へのスライドの際に前記付勢部材に押圧される第1被押圧部、前記終端から前記始端へのスライドの際に前記付勢部材に押圧される第2被押圧部、前記付勢部材により押圧される押圧位置を前記第1被押圧部から前記第2被押圧部へ案内する第1案内部、前記押圧位置を前記第2被押圧部から前記第1被押圧部へ案内する第2案内部、を有し、
前記第1被押圧部上の前記押圧位置の移動に伴って、前記付勢部材により前記スライダが押される方向が前記始端側から前記終端側へと切り替わり、
前記第2被押圧部上の前記押圧位置の移動に伴って、前記付勢部材により前記スライダが押される方向が前記終端側から前記始端側へと切り替わる、携帯機器。
【請求項2】
前記第1被押圧部は、前記付勢部材の押圧により前記スライダを前記始端側へ戻そうとする第1戻し領域、前記付勢部材の押圧により前記スライダを前記終端側へ押出そうとする第1押出し領域、を有し、
前記第2被押圧部は、前記付勢部材の押圧により前記スライダを前記終端側へ戻そうとする第2戻し領域、前記付勢部材の押圧により前記スライダを前記始端側へ押出そうとする第2押出し領域、を有し、
前記スライダのスライド方向での前記第1押出し領域の長さは前記第1戻し領域の長さよりも長く、
前記スライダのスライド方向での前記第2押出し領域の長さは前記第2戻し領域の長さよりも長い、請求項1の携帯機器。
【請求項3】
前記付勢部材により前記スライダを押圧する押圧機構を備え、
前記押圧機構は、前記第1筺体の厚み方向に揺動可能に支持され前記付勢部材により付勢されたアーム、前記アームに連結され前記付勢部材の付勢力により前記第1又は第2被押圧部を押圧するローラ、を含む、請求項1又は2の携帯機器。
【請求項4】
前記ローラと当接することにより前記第1又は第2被押圧部からの前記ローラの離脱を防止するストッパを備えている、請求項1乃至3の何れかの携帯機器。
【請求項5】
前記第1案内部は、前記スライダのスライドに伴って前記アームと当接して前記アームを案内することにより前記押圧位置を案内する案内部材を含む、請求項1乃至4の何れかの携帯機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−288248(P2010−288248A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214992(P2009−214992)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】