携帯機器
【課題】2軸ヒンジ装置を介して2基の筐体を連結した携帯機器であって、順移行及び逆移行のいずれの場合も、同一の途中形態を辿る携帯機器を提供する。
【解決手段】第1の筐体2、第2の筐体3及び連結部材6a,6bを備え、第1の筐体2は第1のヒンジ5a,5bを介して連結部材6a,6bに回転自在に連結され、前記第2の筐体は第2のヒンジ7a,7bを介して連結部材6a,6b材に回転自在に連結され、第1のヒンジ5a,5bの始端側回転阻止トルクは第2のヒンジ7a,7bの始端側回転阻止トルクよりも小さく設定され、第1のヒンジ5a,5bの終端側回転阻止トルクは第2のヒンジ7a,7bの終端側回転阻止トルクよりも大きく設定されている。
【解決手段】第1の筐体2、第2の筐体3及び連結部材6a,6bを備え、第1の筐体2は第1のヒンジ5a,5bを介して連結部材6a,6bに回転自在に連結され、前記第2の筐体は第2のヒンジ7a,7bを介して連結部材6a,6b材に回転自在に連結され、第1のヒンジ5a,5bの始端側回転阻止トルクは第2のヒンジ7a,7bの始端側回転阻止トルクよりも小さく設定され、第1のヒンジ5a,5bの終端側回転阻止トルクは第2のヒンジ7a,7bの終端側回転阻止トルクよりも大きく設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2基の筐体を2軸ヒンジ装置を介して連結した携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒンジ装置を介して第1の筐体と第2の筐体を互いに回動自在に連結した携帯機器、例えば、いわゆるノートブック型パーソナルコンピュータ、携帯電話、その他の携帯情報機器が知られている。ヒンジ装置を介して第1の筐体と第2の筐体を連結しているので、使用時にはヒンジ装置を開いて、第1の筐体と第2の筐体を展開し、不使用(携帯)時にはヒンジ装置を閉じて、第1の筐体と第2の筐体が上下に重なるように折り畳むことができる。
【0003】
また、いわゆる2軸ヒンジ装置を介して第1の筐体と第2の筐体を連結した携帯機器も知られている(例えば、特許文献1〜3)。
【0004】
2軸ヒンジ装置は、連結部材と、連結部材の一方端に設けられた第1のヒンジ軸と、連結部材の他方端に設けられた第2のヒンジ軸を備えて構成され、第1のヒンジ軸と第2のヒンジ軸は互いに平行に配置される。携帯機器の第1の筐体は第1のヒンジ軸を介して2軸ヒンジ装置に連結され、第2の筐体は第2のヒンジ軸を介して2軸ヒンジ装置に連結され、それぞれ、2軸ヒンジ装置に対して相対的に回動する。
【0005】
このような2軸ヒンジ装置を用いると、筐体の回動角度を拡大することができる。例えば、第1及び第2の筐体のある表面を腹面と呼び、腹面の裏側の表面を背面と呼ぶことにすると、第1及び第2の筐体の腹面を互いに接触させた形態から、第1及び第2の筐体を互いに展開させた形態を経由して、第1及び第2の筐体の背面を互いに接触させた形態まで、携帯機器の形態を自由に変更することができる(特許文献1(図9,10)、特許文献2(図1,4,5))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−118633号公報
【特許文献2】特開2002−171324号公報
【特許文献3】実開平02−134316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような2軸ヒンジ装置を介して第1の筐体と第2の筐体を連結した携帯機器では、第1及び第2のヒンジ軸の回動順序が一定に定まらないという問題があった。例えば、第1の筐体を第2の筐体の上に折り重ねた形態(特許文献1の図1)から、第1の筐体を持ち上げて、第1の筐体を第2の筐体に対して回動させるときに、第1の筐体が連結部材に対して回動するか、連結部材が第2の筐体に対して回動するかが定まらない。このため、第1の筐体を開閉回動させる毎に連結部材と第1の筐体との回動順序が変わってしまい、使用者に違和感を抱かせるという問題があった。
【0008】
もっとも、特許文献3に開示されたような抵抗力付与機構を第2のヒンジ軸に備えて、第2のヒンジ軸の回動抵抗トルクを、第1のヒンジ軸の回動抵抗トルクよりも大きくなるように構成すれば、第1のヒンジ軸が先に回動して、その後に第2のヒンジ軸が回動するように回動順序を定めることができる。例えば、図8(a)に示すように、携帯電話端末81が、第1の筐体2を第2の筐体3の上に折り重ねた形態(以下「原形態」という)にある時に、第1の筐体2が2軸ヒンジ装置4を中心にして時計回りに回動するように第1の筐体2に力を加えると、回動抵抗トルクの小さい第1のヒンジ軸5が先に回動する。そのため、図8(b)に示すように、第1の筐体2は、2軸ヒンジ装置4の連結部材6に対して時計回りに回動する。そして第1の筐体2は第1のヒンジ軸5の回動範囲の終端(ここでは、図8(a)に示した位置から180°)に到達して連結部材6に対する回動を停止する(図8(c))。第1のヒンジ軸5は、それ以上回動しないから、第1の筐体2に更に力を加えると、回動抵抗トルクの大きい第2のヒンジ軸7が回動する。そのため、連結部材6が第2の筐体3に対して時計回りに回動する。そのため、携帯電話端末81は、図8(d)及び(e)に示すような形態を経て、最終的には、図8(f)に示すような形態に移行する。すなわち、第1の筐体2が第2の筐体3の下に折り重ねられた形態(以下「反転形態」という)に移行する。
【0009】
携帯電話端末81を反転形態(図8(f))から原形態(図8(a))に戻す場合は、第1の筐体2が2軸ヒンジ装置4を中心にして反時計回りに回動するように第1の筐体2に力を加える。この場合も、第1のヒンジ軸5の回動抵抗トルクは、第2のヒンジ軸7の回動抵抗トルクに比べて小さいから、第1のヒンジ軸5が先に回動する。そのため、図8(g)及び(h)に示すように、第1の筐体2は、連結部材6に対して反時計回りに回動する。この間、連結部材6は第2の筐体3に対して回動しない。そして第1の筐体2が第1のヒンジ軸5の回動範囲の終端に到達して連結部材6に対する回動を停止する(図8(i))と、第2のヒンジ軸7が回転し、連結部材6が第2の筐体3に対して反時計回りに回動して(図8(j))原形態(図9(a))に戻る。
【0010】
さて、図8(b)〜(e)は、携帯電話端末81を原形態(図8(a))から反転形態(図8(f))に移行する途中の形態を示している。また、図8(g)〜(j)は、反転形態(図8(f))から原形態(図8(a))に戻す場合(以下、「逆移行」という)の途中の形態を示している。ここで、図8(b)と(j)、(c)と(i)、(d)と(h)、及び(e)と(g)をそれぞれ比較すれば分かるように、携帯電話端末81は、順移行と逆移行においての途中の形態が異なる。
【0011】
このような順移行と逆移行での途中形態の相違は、使用者に違和感を抱かせるので望ましくない。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、2軸ヒンジ装置を介して2基の筐体を連結した携帯機器であって、順移行及び逆移行のいずれの場合も、同一の途中形態を辿る携帯機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点に係る携帯機器は、第1の筐体、第2の筐体及び連結部材を備え、前記第1の筐体は第1のヒンジを介して前記連結部材に回転自在に連結され、前記第2の筐体は第2のヒンジを介して前記連結部材に回転自在に連結され、前記第1のヒンジ及び前記第2のヒンジの回転軸を平行に配置して構成された携帯機器において、前記第1のヒンジは、第1の始端から第1の終端の間で回転するとともに、前記第1の始端において前記第1のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第1の始端から前記第1の終端に向かう回動を阻止する第1の始端側回転阻止手段と、前記第1の終端において前記第1のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第1の終端から前記第1の始端に向かう回動を阻止する第1の終端側回転阻止手段を有し、前記第2のヒンジは、第2の始端から第2の終端の間で回転するとともに、前記第2の始端において前記第2のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第2の始端から前記第2の終端に向かう回動を阻止する第2の始端側回転阻止手段と、前記第2の終端において前記第2のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第2の終端から前記第2の始端に向かう回動を阻止する第2の終端側回転阻止手段を有し、前記第1の始端側回転阻止手段の回転阻止トルクは前記第2の始端側回転阻止手段の回転阻止トルクよりも小さく設定され、前記第1の終端側回転阻止手段の回転阻止トルクは前記第2の終端側回転阻止手段の回転阻止トルクよりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の観点に係る携帯機器は、第1の筐体、第2の筐体及び連結部材を備え、前記第1の筐体は第1のヒンジを介して前記連結部材に回転自在に連結され、前記第2の筐体は第2のヒンジを介して前記連結部材に回転自在に連結され、前記第1のヒンジ及び前記第2のヒンジの回転軸を平行に配置して構成された携帯機器において、前記第1のヒンジは、第1の始端から第1の終端の間で回転するとともに、前記第1の始端において前記第1のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第1の始端から前記第1の終端に向かう回動を阻止する第1の始端側回転阻止手段と、前記第1の終端において前記第1のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第1の終端から前記第1の始端に向かう回動を阻止する第1の終端側回転阻止手段を有し、前記第2のヒンジは、第2の始端から第2の終端の間で回転するとともに、前記第2の始端において前記第2のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第2の始端から前記第2の終端に向かう回動を阻止する第2の始端側回転阻止手段と、前記第2の終端において前記第2のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第2の終端から前記第2の始端に向かう回動を阻止する第2の終端側回転阻止手段を有し、前記第1の始端側回転阻止手段の回転阻止トルクは前記第2の始端側回転阻止手段の回転阻止トルクよりも大きく設定され、前記第1の終端側回転阻止手段の回転阻止トルクは前記第2の終端側回転阻止手段の回転阻止トルクよりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0015】
前記第1の筐体は、前記第1のヒンジが前記第1の終端から前記第1の始端に向って回動して前記第1の始端に達すると、前記連結部材と当接して、前記第1のヒンジの以後の回動を規制するように構成されるとともに、前記第2の筐体は、前記第2のヒンジが前記第2の始端から前記第2の終端に向って回動して前記第2の終端に達すると、前記連結部材と当接して、前記第2のヒンジの以後の回動を規制するように構成されていてもよい。
【0016】
前記第1のヒンジの回転範囲を前記第1の始端から前記第1の終端の間に規制する第1の回転規制手段と、前記第2のヒンジの回転範囲を前記第2の始端から前記第2の終端の間に規制する第2の回転規制手段を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の携帯機器によれば、2軸ヒンジ装置を介して2基の筐体を連結した携帯機器であって、順移行及び逆移行のいずれの場合も、同一の途中形態を辿ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す携帯電話端末の外形図であり、(a)は斜視図であり、(b)は(a)のA方向から見た立面図である。
【図2】ヒンジ軸の断面図である。
【図3】筐体側円板の平面図である。
【図4】連結部材体側円板の平面図である。
【図5】第1球体用溝の概念的な断面図である。
【図6】連結部材体側円板の作用を示す説明図である。
【図7】携帯電話端末の作用を示す説明図である。
【図8】従来技術の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1に示した携帯電話端末1は本発明に係る携帯機器の1例であり、2軸ヒンジ装置4a,4bを介して、第1の筐体2と第2の筐体3を連結して構成されていて、第1の筐体2および第2の筐体3は2軸ヒンジ装置4a,4bに対して自在に回動する(図1(a)参照)。
【0021】
また、図1(b)に示すように、2軸ヒンジ装置4aは、第1のヒンジ軸5a、連結部材6a及び第2のヒンジ軸7aから、2軸ヒンジ装置4bは、第1のヒンジ軸5b、連結部材6b及び第2のヒンジ軸7bから、それぞれ構成されている。第1のヒンジ軸5a,5bは連結部材6a,6bの一方の端に配置されて、第1の筐体2を連結部材6a,6bに回動自在に連結している。第2のヒンジ軸7a,7bは連結部材6a,6bの他方の端に配置されて、第2の筐体3を連結部材6a,6bに回動自在に連結している。また、第1のヒンジ軸5aと第1のヒンジ軸5b、第2のヒンジ軸7aと第2のヒンジ軸7bは、それぞれ互いに同軸に配置され、第1のヒンジ軸5a,5bと第2のヒンジ軸7a,7bは互いに平行に配置されている。
【0022】
また、図1(b)から明らかなように、2軸ヒンジ装置4a,4bは携帯電話端末1の左右の端部に左右対称に配置されている。また、2軸ヒンジ装置4a,4bを構成する第1のヒンジ軸5a,5b、連結部材6a,6b及び第2のヒンジ軸7a,7bの形状及び構造も、左右対称である。つまり、第1のヒンジ軸5b、連結部材6b及び第2のヒンジ軸7bの形状及び構造は、携帯電話端末1の中心平面(図1(b)においてAA’で示される平面)について、第1のヒンジ軸5a、連結部材6a及び第2のヒンジ軸7aの形状及び構造に対して鏡像の関係にある。そこで、以下では、2軸ヒンジ装置4a、すなわち、第1のヒンジ軸5a、連結部材6a及び第2のヒンジ軸7aの形状及び構造について説明する。
【0023】
図2は、2軸ヒンジ装置4aの第1のヒンジ軸5a(図2(a))及び第2のヒンジ軸7a(図2(b))の構成を示す断面図である。図2から明らかなように、第1のヒンジ軸5a及び第2のヒンジ軸7aは、基本的に同一の構成を備える。そこで、以下では第1のヒンジ軸5aの構成要素には50番台の符号を、第2のヒンジ軸7aの構成要素には70番台の符号を、それぞれ付し、共通する構成要素には符号の一の桁に同一の数字を付して示す。つまり、符号「5X」および「7Y」を付された構成要素は同一の構成及び機能を備え、「5X」は第1のヒンジ軸5aの構成要素であり、「7X」は第2のヒンジ軸7aの構成要素であることを示す。
【0024】
第1のヒンジ軸5a及び第2のヒンジ軸7aは、それぞれ、筐体側軸筒51,71と連結部材体側軸筒52,72を備える。筐体側軸筒51は第1の筐体2に,筐体側軸筒71は第2の筐体3に、それぞれ固定される。また、連結部材体側軸筒52,72はいずれも連結部材6aに固定される。
【0025】
筐体側軸筒51,71の内部には、筐体側円板53,73が嵌め込まれている。筐体側円板53,73の端面には溝53a,73aが形成されて、リブ筐体側軸筒51,71の底部に形成されたリブ51a,71aと係合している。そのため、筐体側円板53,73は筐体側軸筒51,71に対する回転が拘束される。
【0026】
また、連結部材体側軸筒52,72の内部には、それぞれ、連結部材体側円板54,74が嵌め込まれている。連結部材体側円板54,74の外縁には、ガイド溝54a,74aが形成されて、連結部材体側軸筒52,72の内面に形成されたガイドリブ52a,72aに係合している。そのため、連結部材体側円板53,73は連結部材体側軸筒52,72の長さ方向に自在に進退するが、連結部材体側軸筒52,72に対する回転は拘束される。
【0027】
連結部材体側円板54,74の背面側にはスプリング55,75が備えられている。また、スプリング55,75の背後には、ロッド56,76があって、ロッド56,76の後端のフランジ56a,76aはスプリング55,75を支承し、ロッド56,76の先端は、スプリング55,75、連結部材体側円板54,74、及び筐体側円板53,73を通って、筐体側軸筒51,71に螺合固定される。このように構成されているので、連結部材体側円板54,74はスプリング55,75によって押圧されて、筐体側円板53,73に向かう方向に付勢される。
【0028】
筐体側円板53,73と連結部材体側円板54,74の間には、第1球体57a,77a及び第2球体57b,77bが挟持されている。また、第1球体57a,77aは筐体側円板53,73に形成された第1球体用溝53b,73bと連結部材体側円板54,74に形成された第1球体用溝54b,74bに案内されて転動する。同様に、第2球体57b,77bは筐体側円板53,73に形成された第2球体用溝53c,73cと連結部材体側円板54,74に形成された第2球体用溝54c,74cに案内されて転動する。
【0029】
ここで、図2(a)と図2(b)を比較して、第1球体57aと第2球体57bの相互の間隔と、第1球体77aと第2球体77bの相互の間隔が異なることに注意されたい。第1球体57a,77aと第2球体57b,77bの間隔は、第1のヒンジ軸5aあるいは第2のヒンジ軸7aを回転させると、次段落以降に示す機構によって変化する。
【0030】
図3は筐体側円板53を連結部材体側軸筒52から見た平面図である。図3から明らかなように、筐体側円板53の第1及び第2球体用溝53b,53cは、筐体側円板53の半径方向に直線的に延びている。したがって、第1及び第2球体57a,57bは第1及び第2球体用溝53b,53cに案内されて、筐体側円板53の半径方向に転動する。筐体側円板73を連結部材体側軸筒72から見た平面形もこれと同様である。したがって、第1及び第2球体77a,77bは第1及び第2球体用溝73b,73cに案内されて、筐体側円板73の半径方向に転動する。
【0031】
図4は連結部材体側円板54を筐体側軸筒51から見た平面図である。図4から明らかなように、連結部材体側円板54の第1及び第2球体用溝54b,54cは、半円状の円弧を描いている。また、第1及び第2球体用溝54b,54cは該円弧の向きが互いに逆向きである。また、第1及び第2球体用溝54b,54cは互いに半径方向にずれている。つまり、第1及び第2球体用溝54b,54cは、巴型のパターンを描いている。また、第1及び球体用溝54b,54cの両端には、凹所54d〜54gが形成されている。
【0032】
したがって、筐体側円板53を連結部材体側円板54に対して回転させると、第1球体57aは、凹所54dから凹所54eの間を第1球体用溝54bに案内されて、円弧状の軌跡を描いて転動する。また、第2球体57bは、凹所54fから凹所54gの間を第2球体用溝54cに案内されて、円弧状の軌跡を描いて転動する。
【0033】
連結部材体側円板74を筐体側軸筒71から見た平面形も連結部材体側円板54のそれと同様である。したがって、筐体側円板73を連結部材体側円板74に対して回転させると、第1球体77aは、第1球体用溝74bに案内されて、円弧状の軌跡を描いて転動する。また、第2球体77bは、第2球体用溝74cに案内されて、円弧状の軌跡を描いて転動する。
【0034】
図5は連結部材体側円板54の凹所54dから第1球体用溝54bを通って凹所54dに至る経路を示す概念的な断面図であり、図5(a)は全体を示し、図5(b)は凹所54dの拡大図である。図5から明らかなように凹所54dおよび凹所54dは、第1球体用溝54bの底面に対して陥没している。したがって、第1球体57aを、凹所54dから凹所54eまで移動させる場合は、第1球体57aを凹所54dから持ち上げて(凹所54dから脱出させて)、第1球体用溝54bに載せる操作が必要になる。
【0035】
この時、つまり、第1球体57aが凹所54dと第1球体用溝54bの境界のエッジを乗り越える時に、第1球体57aが該エッジから受ける反力Rの水平方向の分力Rh(図5(b)参照)が第1球体57aの凹所54dからの脱出を阻止する力(以下「脱出阻止力F」と呼ぶ)として作用する。また、脱出阻止力Fは第1球体57aと凹所54dの形状および寸法によって決まり、凹所54dの連結部材体側円板54に対する位置によっては変わらない。
【0036】
さて、図6(a)に示すように、第1球体57aが凹所54dにあって、第2球体57bが凹所54gにある場合に、筐体側軸側円板53を反時計回りに回す時に、第1及び第2球体57a,57bには、脱出阻止力Fが互いに逆方方向に作用する。この脱出阻止力Fの対によって筐体側軸側円板53に作用するモーメントMccwは式(1)で表される。
【0037】
Mccw=F*Dccw (1)
【0038】
ここで、Dccwは脱出阻止力Fの対の作用線間の距離、すなわち、凹所54dと凹所54gの間隔である。
【0039】
同様に、図6(b)に示すように、第1球体57aが凹所54eにあって、第2球体57bが凹所54fにある場合に、筐体側軸側円板53を時計回りに回す時に、第1及び第2球体57a,57bには、脱出阻止力Fが互いに逆方方向に作用する。この脱出阻止力Fの対によって筐体側軸側円板53に作用するモーメントMcwは式(2)で表される。
【0040】
Mcw=F*Dcw (2)
【0041】
ここで、Dcwは脱出阻止力Fの対の作用線間の距離、すなわち、凹所54eと凹所54fの間隔である。
【0042】
図6から明らかなように、Dccw<Dcwだから、式(1)と式(2)から式(3)が導かれる。
【0043】
Mccw<Mcw (3)
【0044】
モーメントMcwは、第1のヒンジ軸5aの回動範囲の一方の終端において、筐体側軸筒51を他方の終端に向けて回動させるときに、その回動を阻止する回動阻止トルクとして作用する。また、モーメントMccwは、第1のヒンジ軸5aの回動範囲の他方の終端において、筐体側軸筒51を一方の終端に向けて回動させるときに、その回動を阻止する回動阻止トルクとして作用する。
【0045】
つまり、式(3)は、第1のヒンジ軸5aの回動範囲の両端における回動阻止トルクの大小を示している。言い替えれば、第1のヒンジ軸5aの回動阻止トルクは、その回転方向によって異なること、正転、逆転あるいは時計回り、反時計回りによって異なることを示している。
【0046】
同様に、第2のヒンジ軸7aの回動阻止トルクも、その回転方向によって異なる。正転、逆転あるいは時計回り、反時計回りによって異なる。第1のヒンジ軸5b、第2のヒンジ軸7bについても同様である。
【0047】
最後に、携帯電話端末1の作用について説明する。図7(a)に示すように、携帯電話端末1が原形態にある時、つまり、第1の筐体2を第2の筐体3の上に折り重ねた形態を取る時に、第1のヒンジ軸5aの連結部材体側円板54において、第1球体57aは凹所54dに、第2球体57bは凹所54gにそれぞれ嵌合している。また、第2のヒンジ軸7aの連結部材体側円板74において、第1球体77aは凹所74eに、第2球体77bは凹所74fに嵌合している。なお、図7は連結部材体側円板54,74を図6とは反対側、つまり連結部材6a側から見ているので、第1及び第2球体用溝54b,54c,74b,74cの形状は左右が逆に描かれている。また、以下の説明において、「時計回り」、「反時計回り」は、図7の視点を基準にして使用する。
【0048】
さて、原形態において、第1のヒンジ軸5a及び第2の第1のヒンジ軸7aは、上記のような状態にあるから、第1のヒンジ軸5aの回動阻止トルクは第2のヒンジ軸7aの回動阻止トルクより大きい。そのため、第1の筐体2を第2の筐体3から持ち上げると、第1の筐体2は第1のヒンジ軸5a回りに時計回りに回転して図7(b)に示すような形態を取る。すなわち、第1球体57aは凹所54dから引き上げられて第1球体用溝54b上を転動する。また、第2球体57bは凹所54gから引き上げられて第2球体用溝54c上を転動する。この時、第2のヒンジ軸7aは動かないから、第2のヒンジ軸7aの第1及び第2球体77a,77bは凹所74e,74fに嵌合したままである。
【0049】
第1の筐体2を、第1のヒンジ軸5a回りに時計回りにさらに回転させると、第1のヒンジ軸5aの回動範囲の終端に到達する。すなわち、図7(c)に示すように、第1の筐体2は原形態から第1のヒンジ軸5a回りに180°回動して、第1のヒンジ軸5aの第1及び第2球体57a,57bは凹所54f,54eに嵌合する。また、この時、第1の筐体2は連結部材6aに当接、干渉して回動を停止する。
【0050】
第1の筐体2の第1のヒンジ軸5a回りの回動が停止した後、第1の筐体2を2軸ヒンジ装置4a回りに時計回りにさらに回転させると、第1の筐体2は第2のヒンジ軸7a回りに回転を始める。すなわち、図7(d)に示すように、第2のヒンジ軸7aの第1及び第2球体77a,77bは凹所74e,74fから引き上げられて、第1及び第2球体用溝74b,74c上を転動する。
【0051】
第1の筐体2を第2のヒンジ軸7a回りに時計回りにさらに転動させると、第1の筐体2は第2の筐体の下に重なる。すなわち、携帯電話端末1は反転形態を取る。この時、図7(e)に示すように、第2のヒンジ軸7aの第1及び第2球体77a,77bは凹所74d,74gに嵌合する。また、この時、連結部材6aは、第2の筐体3に当接、干渉して回動を停止する。
【0052】
さて、携帯電話端末1を反転形態から原形態に戻すときは、図7(a)ないし図7(e)に示した形態を逆順に辿る。すなわち、反転形態においては、原形態とは逆に、第2のヒンジ軸7aの回動阻止トルクが第1のヒンジ軸75aの回動阻止トルクより大きいから、反転形態(図7(e))において、第1の筐体2を下方に引き下げると、第1の筐体2は第2のヒンジ軸7a回りに反時計回りに回転して、図7(d)に示した形態を経て、図7(c)に示した形態に移行する。その後、第1の筐体2は第1のヒンジ軸5a回りに反時計回りに回転して、図7(b)に示した形態を経て、原形態(図7(a))に戻る。
【0053】
以上説明したように、携帯電話端末1は原形態から反転形態への移行(順移行)、反転形態から原形態への移行(逆移行)の何れにおいても、同一の途中形態を辿るので、使用者に違和感を与えることがない。
【0054】
すなわち、原形態においては、第1のヒンジ5a,5bの回転阻止トルクが、第2のヒンジ7a,7bの回転阻止トルクよりも小さく設定されているので、順移行の場合は、第1のヒンジ5a,5bが先行して回動し、第1のヒンジ5a,5bが回動の終端に到達すると、第2のヒンジ7a,7bが回動する。また反転形態においては、第1のヒンジ5a,5bの回転阻止トルクが、第2のヒンジ7a,7bの回転阻止トルクよりも大きく設定されているので、第2のヒンジ7a,7bが先行して回動し、その後、第1のヒンジ5a,5bが回動する。
【0055】
また、第1のヒンジ5a,5b及び第2のヒンジ7a,7bの回動範囲は、それぞれ第1球体用溝54b,74b及び第2球体用溝54c、74cによって規制されているので、所望の範囲で形態を変更することができる。
【0056】
また、第1のヒンジ5a,5bあるいは第2のヒンジ7a,7bが回動の終端に達すると、第1の筐体2あるいは第2の筐体3が連結部材6aに当接、干渉して停止する。そのため、第1のヒンジ5a,5b及び第2のヒンジ7a,7bに過大なストレスが負荷されないので、耐久性が向上する。
【0057】
なお、上記の実施形態の説明は、本発明の実施形態の例示であって、本発明の技術的範囲は上記説明によって限定されない。本発明は特許請求の範囲に記載された技術的思想の限りにおいて、応用、変形あるいは改良して実施することができる。
【0058】
例えば、上記説明では、2組の2軸ヒンジ装置4a,4bを備えて、第1及び第2の筐体2,3を両持ち支持する例を示したが、2軸ヒンジ装置は1組であっても、3組以上であってもよい。
【0059】
また、筐体側軸筒51と連結部材体側軸筒52の構成あるいは機能を逆にしてもよい。すなわち、連結部材体側円板54、スプリング55、ロッド56あるいは、これらと同一の機能を有する要素を筐体側に取り付けてもよい。
【0060】
また、上記説明では、筐体側軸筒51と筐体側円板53を別部品としたが、これらを一体に成形してもよい。
【0061】
また、上記説明では、第1及び第2球体用溝54b,54c,74b,74cの平面形を円弧にしたが、第1及び第2球体用溝54b,54c,74b,74cの平面形は円弧には限られない。各種の曲線を選択することができる。
【0062】
また、上記説明では、第1球体用溝54bの両端に設けた凹所54d,54eの形状を同じにして、両者の脱出阻止力Fを同じにしたが、凹所54d,54eの形状を変えて、回動阻止トルクを大きくしたい端部(凹所54e)の脱出阻止力Fが他方(凹所54d)より大きくなるようにしてもよい。
【0063】
また、原形態においては、第2のヒンジ7a,7bの回転阻止トルクが、第1のヒンジ5a,5bの回転阻止トルクよりも小さくなるように構成して、反転形態においては、第1のヒンジ5a,5bの回転阻止トルクが、第2のヒンジ7a,7bの回転阻止トルクよりも小さくなるように構成してもよい。この場合、順移行の場合は、第2のヒンジ7a,7bが先行して回動し、逆移行の場合は、第1のヒンジ5a,5bが先行して回動するが、この場合も、順移行、逆移行の何れにおいても、同一の途中形態を辿るので、使用者に違和感を与えることがない。
【0064】
上記実施の形態においては、携帯電話端末を例にして、この発明に係る携帯機器を説明したが、この発明は、携帯電話端末に限定されず、ヒンジ装置を介して複数の筐体を互いに回動自在に連結した構成を有するならば、いわゆるノートブック型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Data Assistances)、電子ブック、その他の任意の携帯機器に適用可能である。
【0065】
また、2以上のヒンジ装置を使用して、3つの以上の筐体を連結することも可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…携帯電話端末、2…第1の筐体、3…第2の筐体、4,4a,4b…2軸ヒンジ装置、5,5a,5b…第1のヒンジ軸、6,6a,6b…連結部材、7,7a,7b…第2のヒンジ軸、51,71…筐体側軸筒、52,72…連結部材体側軸筒、53,73…筐体側円板、53b,73b…第1球体用溝、53c、73c…第2球体用溝、54,74…連結部材体側円板、54b,74b…第1球体用溝、54c、74c…第2球体用溝、54d,54e,54f,54g…凹所、74d,74e,74f,74g…凹所、54c、74c…第2球体用溝、55,75…スプリング、56,76…ロッド、57a,77a…第1球体、57b,77b…第2球体、81…携帯電話端末
【技術分野】
【0001】
本発明は、2基の筐体を2軸ヒンジ装置を介して連結した携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒンジ装置を介して第1の筐体と第2の筐体を互いに回動自在に連結した携帯機器、例えば、いわゆるノートブック型パーソナルコンピュータ、携帯電話、その他の携帯情報機器が知られている。ヒンジ装置を介して第1の筐体と第2の筐体を連結しているので、使用時にはヒンジ装置を開いて、第1の筐体と第2の筐体を展開し、不使用(携帯)時にはヒンジ装置を閉じて、第1の筐体と第2の筐体が上下に重なるように折り畳むことができる。
【0003】
また、いわゆる2軸ヒンジ装置を介して第1の筐体と第2の筐体を連結した携帯機器も知られている(例えば、特許文献1〜3)。
【0004】
2軸ヒンジ装置は、連結部材と、連結部材の一方端に設けられた第1のヒンジ軸と、連結部材の他方端に設けられた第2のヒンジ軸を備えて構成され、第1のヒンジ軸と第2のヒンジ軸は互いに平行に配置される。携帯機器の第1の筐体は第1のヒンジ軸を介して2軸ヒンジ装置に連結され、第2の筐体は第2のヒンジ軸を介して2軸ヒンジ装置に連結され、それぞれ、2軸ヒンジ装置に対して相対的に回動する。
【0005】
このような2軸ヒンジ装置を用いると、筐体の回動角度を拡大することができる。例えば、第1及び第2の筐体のある表面を腹面と呼び、腹面の裏側の表面を背面と呼ぶことにすると、第1及び第2の筐体の腹面を互いに接触させた形態から、第1及び第2の筐体を互いに展開させた形態を経由して、第1及び第2の筐体の背面を互いに接触させた形態まで、携帯機器の形態を自由に変更することができる(特許文献1(図9,10)、特許文献2(図1,4,5))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−118633号公報
【特許文献2】特開2002−171324号公報
【特許文献3】実開平02−134316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような2軸ヒンジ装置を介して第1の筐体と第2の筐体を連結した携帯機器では、第1及び第2のヒンジ軸の回動順序が一定に定まらないという問題があった。例えば、第1の筐体を第2の筐体の上に折り重ねた形態(特許文献1の図1)から、第1の筐体を持ち上げて、第1の筐体を第2の筐体に対して回動させるときに、第1の筐体が連結部材に対して回動するか、連結部材が第2の筐体に対して回動するかが定まらない。このため、第1の筐体を開閉回動させる毎に連結部材と第1の筐体との回動順序が変わってしまい、使用者に違和感を抱かせるという問題があった。
【0008】
もっとも、特許文献3に開示されたような抵抗力付与機構を第2のヒンジ軸に備えて、第2のヒンジ軸の回動抵抗トルクを、第1のヒンジ軸の回動抵抗トルクよりも大きくなるように構成すれば、第1のヒンジ軸が先に回動して、その後に第2のヒンジ軸が回動するように回動順序を定めることができる。例えば、図8(a)に示すように、携帯電話端末81が、第1の筐体2を第2の筐体3の上に折り重ねた形態(以下「原形態」という)にある時に、第1の筐体2が2軸ヒンジ装置4を中心にして時計回りに回動するように第1の筐体2に力を加えると、回動抵抗トルクの小さい第1のヒンジ軸5が先に回動する。そのため、図8(b)に示すように、第1の筐体2は、2軸ヒンジ装置4の連結部材6に対して時計回りに回動する。そして第1の筐体2は第1のヒンジ軸5の回動範囲の終端(ここでは、図8(a)に示した位置から180°)に到達して連結部材6に対する回動を停止する(図8(c))。第1のヒンジ軸5は、それ以上回動しないから、第1の筐体2に更に力を加えると、回動抵抗トルクの大きい第2のヒンジ軸7が回動する。そのため、連結部材6が第2の筐体3に対して時計回りに回動する。そのため、携帯電話端末81は、図8(d)及び(e)に示すような形態を経て、最終的には、図8(f)に示すような形態に移行する。すなわち、第1の筐体2が第2の筐体3の下に折り重ねられた形態(以下「反転形態」という)に移行する。
【0009】
携帯電話端末81を反転形態(図8(f))から原形態(図8(a))に戻す場合は、第1の筐体2が2軸ヒンジ装置4を中心にして反時計回りに回動するように第1の筐体2に力を加える。この場合も、第1のヒンジ軸5の回動抵抗トルクは、第2のヒンジ軸7の回動抵抗トルクに比べて小さいから、第1のヒンジ軸5が先に回動する。そのため、図8(g)及び(h)に示すように、第1の筐体2は、連結部材6に対して反時計回りに回動する。この間、連結部材6は第2の筐体3に対して回動しない。そして第1の筐体2が第1のヒンジ軸5の回動範囲の終端に到達して連結部材6に対する回動を停止する(図8(i))と、第2のヒンジ軸7が回転し、連結部材6が第2の筐体3に対して反時計回りに回動して(図8(j))原形態(図9(a))に戻る。
【0010】
さて、図8(b)〜(e)は、携帯電話端末81を原形態(図8(a))から反転形態(図8(f))に移行する途中の形態を示している。また、図8(g)〜(j)は、反転形態(図8(f))から原形態(図8(a))に戻す場合(以下、「逆移行」という)の途中の形態を示している。ここで、図8(b)と(j)、(c)と(i)、(d)と(h)、及び(e)と(g)をそれぞれ比較すれば分かるように、携帯電話端末81は、順移行と逆移行においての途中の形態が異なる。
【0011】
このような順移行と逆移行での途中形態の相違は、使用者に違和感を抱かせるので望ましくない。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、2軸ヒンジ装置を介して2基の筐体を連結した携帯機器であって、順移行及び逆移行のいずれの場合も、同一の途中形態を辿る携帯機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点に係る携帯機器は、第1の筐体、第2の筐体及び連結部材を備え、前記第1の筐体は第1のヒンジを介して前記連結部材に回転自在に連結され、前記第2の筐体は第2のヒンジを介して前記連結部材に回転自在に連結され、前記第1のヒンジ及び前記第2のヒンジの回転軸を平行に配置して構成された携帯機器において、前記第1のヒンジは、第1の始端から第1の終端の間で回転するとともに、前記第1の始端において前記第1のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第1の始端から前記第1の終端に向かう回動を阻止する第1の始端側回転阻止手段と、前記第1の終端において前記第1のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第1の終端から前記第1の始端に向かう回動を阻止する第1の終端側回転阻止手段を有し、前記第2のヒンジは、第2の始端から第2の終端の間で回転するとともに、前記第2の始端において前記第2のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第2の始端から前記第2の終端に向かう回動を阻止する第2の始端側回転阻止手段と、前記第2の終端において前記第2のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第2の終端から前記第2の始端に向かう回動を阻止する第2の終端側回転阻止手段を有し、前記第1の始端側回転阻止手段の回転阻止トルクは前記第2の始端側回転阻止手段の回転阻止トルクよりも小さく設定され、前記第1の終端側回転阻止手段の回転阻止トルクは前記第2の終端側回転阻止手段の回転阻止トルクよりも大きく設定されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の観点に係る携帯機器は、第1の筐体、第2の筐体及び連結部材を備え、前記第1の筐体は第1のヒンジを介して前記連結部材に回転自在に連結され、前記第2の筐体は第2のヒンジを介して前記連結部材に回転自在に連結され、前記第1のヒンジ及び前記第2のヒンジの回転軸を平行に配置して構成された携帯機器において、前記第1のヒンジは、第1の始端から第1の終端の間で回転するとともに、前記第1の始端において前記第1のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第1の始端から前記第1の終端に向かう回動を阻止する第1の始端側回転阻止手段と、前記第1の終端において前記第1のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第1の終端から前記第1の始端に向かう回動を阻止する第1の終端側回転阻止手段を有し、前記第2のヒンジは、第2の始端から第2の終端の間で回転するとともに、前記第2の始端において前記第2のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第2の始端から前記第2の終端に向かう回動を阻止する第2の始端側回転阻止手段と、前記第2の終端において前記第2のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第2の終端から前記第2の始端に向かう回動を阻止する第2の終端側回転阻止手段を有し、前記第1の始端側回転阻止手段の回転阻止トルクは前記第2の始端側回転阻止手段の回転阻止トルクよりも大きく設定され、前記第1の終端側回転阻止手段の回転阻止トルクは前記第2の終端側回転阻止手段の回転阻止トルクよりも小さく設定されていることを特徴とする。
【0015】
前記第1の筐体は、前記第1のヒンジが前記第1の終端から前記第1の始端に向って回動して前記第1の始端に達すると、前記連結部材と当接して、前記第1のヒンジの以後の回動を規制するように構成されるとともに、前記第2の筐体は、前記第2のヒンジが前記第2の始端から前記第2の終端に向って回動して前記第2の終端に達すると、前記連結部材と当接して、前記第2のヒンジの以後の回動を規制するように構成されていてもよい。
【0016】
前記第1のヒンジの回転範囲を前記第1の始端から前記第1の終端の間に規制する第1の回転規制手段と、前記第2のヒンジの回転範囲を前記第2の始端から前記第2の終端の間に規制する第2の回転規制手段を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の携帯機器によれば、2軸ヒンジ装置を介して2基の筐体を連結した携帯機器であって、順移行及び逆移行のいずれの場合も、同一の途中形態を辿ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す携帯電話端末の外形図であり、(a)は斜視図であり、(b)は(a)のA方向から見た立面図である。
【図2】ヒンジ軸の断面図である。
【図3】筐体側円板の平面図である。
【図4】連結部材体側円板の平面図である。
【図5】第1球体用溝の概念的な断面図である。
【図6】連結部材体側円板の作用を示す説明図である。
【図7】携帯電話端末の作用を示す説明図である。
【図8】従来技術の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1に示した携帯電話端末1は本発明に係る携帯機器の1例であり、2軸ヒンジ装置4a,4bを介して、第1の筐体2と第2の筐体3を連結して構成されていて、第1の筐体2および第2の筐体3は2軸ヒンジ装置4a,4bに対して自在に回動する(図1(a)参照)。
【0021】
また、図1(b)に示すように、2軸ヒンジ装置4aは、第1のヒンジ軸5a、連結部材6a及び第2のヒンジ軸7aから、2軸ヒンジ装置4bは、第1のヒンジ軸5b、連結部材6b及び第2のヒンジ軸7bから、それぞれ構成されている。第1のヒンジ軸5a,5bは連結部材6a,6bの一方の端に配置されて、第1の筐体2を連結部材6a,6bに回動自在に連結している。第2のヒンジ軸7a,7bは連結部材6a,6bの他方の端に配置されて、第2の筐体3を連結部材6a,6bに回動自在に連結している。また、第1のヒンジ軸5aと第1のヒンジ軸5b、第2のヒンジ軸7aと第2のヒンジ軸7bは、それぞれ互いに同軸に配置され、第1のヒンジ軸5a,5bと第2のヒンジ軸7a,7bは互いに平行に配置されている。
【0022】
また、図1(b)から明らかなように、2軸ヒンジ装置4a,4bは携帯電話端末1の左右の端部に左右対称に配置されている。また、2軸ヒンジ装置4a,4bを構成する第1のヒンジ軸5a,5b、連結部材6a,6b及び第2のヒンジ軸7a,7bの形状及び構造も、左右対称である。つまり、第1のヒンジ軸5b、連結部材6b及び第2のヒンジ軸7bの形状及び構造は、携帯電話端末1の中心平面(図1(b)においてAA’で示される平面)について、第1のヒンジ軸5a、連結部材6a及び第2のヒンジ軸7aの形状及び構造に対して鏡像の関係にある。そこで、以下では、2軸ヒンジ装置4a、すなわち、第1のヒンジ軸5a、連結部材6a及び第2のヒンジ軸7aの形状及び構造について説明する。
【0023】
図2は、2軸ヒンジ装置4aの第1のヒンジ軸5a(図2(a))及び第2のヒンジ軸7a(図2(b))の構成を示す断面図である。図2から明らかなように、第1のヒンジ軸5a及び第2のヒンジ軸7aは、基本的に同一の構成を備える。そこで、以下では第1のヒンジ軸5aの構成要素には50番台の符号を、第2のヒンジ軸7aの構成要素には70番台の符号を、それぞれ付し、共通する構成要素には符号の一の桁に同一の数字を付して示す。つまり、符号「5X」および「7Y」を付された構成要素は同一の構成及び機能を備え、「5X」は第1のヒンジ軸5aの構成要素であり、「7X」は第2のヒンジ軸7aの構成要素であることを示す。
【0024】
第1のヒンジ軸5a及び第2のヒンジ軸7aは、それぞれ、筐体側軸筒51,71と連結部材体側軸筒52,72を備える。筐体側軸筒51は第1の筐体2に,筐体側軸筒71は第2の筐体3に、それぞれ固定される。また、連結部材体側軸筒52,72はいずれも連結部材6aに固定される。
【0025】
筐体側軸筒51,71の内部には、筐体側円板53,73が嵌め込まれている。筐体側円板53,73の端面には溝53a,73aが形成されて、リブ筐体側軸筒51,71の底部に形成されたリブ51a,71aと係合している。そのため、筐体側円板53,73は筐体側軸筒51,71に対する回転が拘束される。
【0026】
また、連結部材体側軸筒52,72の内部には、それぞれ、連結部材体側円板54,74が嵌め込まれている。連結部材体側円板54,74の外縁には、ガイド溝54a,74aが形成されて、連結部材体側軸筒52,72の内面に形成されたガイドリブ52a,72aに係合している。そのため、連結部材体側円板53,73は連結部材体側軸筒52,72の長さ方向に自在に進退するが、連結部材体側軸筒52,72に対する回転は拘束される。
【0027】
連結部材体側円板54,74の背面側にはスプリング55,75が備えられている。また、スプリング55,75の背後には、ロッド56,76があって、ロッド56,76の後端のフランジ56a,76aはスプリング55,75を支承し、ロッド56,76の先端は、スプリング55,75、連結部材体側円板54,74、及び筐体側円板53,73を通って、筐体側軸筒51,71に螺合固定される。このように構成されているので、連結部材体側円板54,74はスプリング55,75によって押圧されて、筐体側円板53,73に向かう方向に付勢される。
【0028】
筐体側円板53,73と連結部材体側円板54,74の間には、第1球体57a,77a及び第2球体57b,77bが挟持されている。また、第1球体57a,77aは筐体側円板53,73に形成された第1球体用溝53b,73bと連結部材体側円板54,74に形成された第1球体用溝54b,74bに案内されて転動する。同様に、第2球体57b,77bは筐体側円板53,73に形成された第2球体用溝53c,73cと連結部材体側円板54,74に形成された第2球体用溝54c,74cに案内されて転動する。
【0029】
ここで、図2(a)と図2(b)を比較して、第1球体57aと第2球体57bの相互の間隔と、第1球体77aと第2球体77bの相互の間隔が異なることに注意されたい。第1球体57a,77aと第2球体57b,77bの間隔は、第1のヒンジ軸5aあるいは第2のヒンジ軸7aを回転させると、次段落以降に示す機構によって変化する。
【0030】
図3は筐体側円板53を連結部材体側軸筒52から見た平面図である。図3から明らかなように、筐体側円板53の第1及び第2球体用溝53b,53cは、筐体側円板53の半径方向に直線的に延びている。したがって、第1及び第2球体57a,57bは第1及び第2球体用溝53b,53cに案内されて、筐体側円板53の半径方向に転動する。筐体側円板73を連結部材体側軸筒72から見た平面形もこれと同様である。したがって、第1及び第2球体77a,77bは第1及び第2球体用溝73b,73cに案内されて、筐体側円板73の半径方向に転動する。
【0031】
図4は連結部材体側円板54を筐体側軸筒51から見た平面図である。図4から明らかなように、連結部材体側円板54の第1及び第2球体用溝54b,54cは、半円状の円弧を描いている。また、第1及び第2球体用溝54b,54cは該円弧の向きが互いに逆向きである。また、第1及び第2球体用溝54b,54cは互いに半径方向にずれている。つまり、第1及び第2球体用溝54b,54cは、巴型のパターンを描いている。また、第1及び球体用溝54b,54cの両端には、凹所54d〜54gが形成されている。
【0032】
したがって、筐体側円板53を連結部材体側円板54に対して回転させると、第1球体57aは、凹所54dから凹所54eの間を第1球体用溝54bに案内されて、円弧状の軌跡を描いて転動する。また、第2球体57bは、凹所54fから凹所54gの間を第2球体用溝54cに案内されて、円弧状の軌跡を描いて転動する。
【0033】
連結部材体側円板74を筐体側軸筒71から見た平面形も連結部材体側円板54のそれと同様である。したがって、筐体側円板73を連結部材体側円板74に対して回転させると、第1球体77aは、第1球体用溝74bに案内されて、円弧状の軌跡を描いて転動する。また、第2球体77bは、第2球体用溝74cに案内されて、円弧状の軌跡を描いて転動する。
【0034】
図5は連結部材体側円板54の凹所54dから第1球体用溝54bを通って凹所54dに至る経路を示す概念的な断面図であり、図5(a)は全体を示し、図5(b)は凹所54dの拡大図である。図5から明らかなように凹所54dおよび凹所54dは、第1球体用溝54bの底面に対して陥没している。したがって、第1球体57aを、凹所54dから凹所54eまで移動させる場合は、第1球体57aを凹所54dから持ち上げて(凹所54dから脱出させて)、第1球体用溝54bに載せる操作が必要になる。
【0035】
この時、つまり、第1球体57aが凹所54dと第1球体用溝54bの境界のエッジを乗り越える時に、第1球体57aが該エッジから受ける反力Rの水平方向の分力Rh(図5(b)参照)が第1球体57aの凹所54dからの脱出を阻止する力(以下「脱出阻止力F」と呼ぶ)として作用する。また、脱出阻止力Fは第1球体57aと凹所54dの形状および寸法によって決まり、凹所54dの連結部材体側円板54に対する位置によっては変わらない。
【0036】
さて、図6(a)に示すように、第1球体57aが凹所54dにあって、第2球体57bが凹所54gにある場合に、筐体側軸側円板53を反時計回りに回す時に、第1及び第2球体57a,57bには、脱出阻止力Fが互いに逆方方向に作用する。この脱出阻止力Fの対によって筐体側軸側円板53に作用するモーメントMccwは式(1)で表される。
【0037】
Mccw=F*Dccw (1)
【0038】
ここで、Dccwは脱出阻止力Fの対の作用線間の距離、すなわち、凹所54dと凹所54gの間隔である。
【0039】
同様に、図6(b)に示すように、第1球体57aが凹所54eにあって、第2球体57bが凹所54fにある場合に、筐体側軸側円板53を時計回りに回す時に、第1及び第2球体57a,57bには、脱出阻止力Fが互いに逆方方向に作用する。この脱出阻止力Fの対によって筐体側軸側円板53に作用するモーメントMcwは式(2)で表される。
【0040】
Mcw=F*Dcw (2)
【0041】
ここで、Dcwは脱出阻止力Fの対の作用線間の距離、すなわち、凹所54eと凹所54fの間隔である。
【0042】
図6から明らかなように、Dccw<Dcwだから、式(1)と式(2)から式(3)が導かれる。
【0043】
Mccw<Mcw (3)
【0044】
モーメントMcwは、第1のヒンジ軸5aの回動範囲の一方の終端において、筐体側軸筒51を他方の終端に向けて回動させるときに、その回動を阻止する回動阻止トルクとして作用する。また、モーメントMccwは、第1のヒンジ軸5aの回動範囲の他方の終端において、筐体側軸筒51を一方の終端に向けて回動させるときに、その回動を阻止する回動阻止トルクとして作用する。
【0045】
つまり、式(3)は、第1のヒンジ軸5aの回動範囲の両端における回動阻止トルクの大小を示している。言い替えれば、第1のヒンジ軸5aの回動阻止トルクは、その回転方向によって異なること、正転、逆転あるいは時計回り、反時計回りによって異なることを示している。
【0046】
同様に、第2のヒンジ軸7aの回動阻止トルクも、その回転方向によって異なる。正転、逆転あるいは時計回り、反時計回りによって異なる。第1のヒンジ軸5b、第2のヒンジ軸7bについても同様である。
【0047】
最後に、携帯電話端末1の作用について説明する。図7(a)に示すように、携帯電話端末1が原形態にある時、つまり、第1の筐体2を第2の筐体3の上に折り重ねた形態を取る時に、第1のヒンジ軸5aの連結部材体側円板54において、第1球体57aは凹所54dに、第2球体57bは凹所54gにそれぞれ嵌合している。また、第2のヒンジ軸7aの連結部材体側円板74において、第1球体77aは凹所74eに、第2球体77bは凹所74fに嵌合している。なお、図7は連結部材体側円板54,74を図6とは反対側、つまり連結部材6a側から見ているので、第1及び第2球体用溝54b,54c,74b,74cの形状は左右が逆に描かれている。また、以下の説明において、「時計回り」、「反時計回り」は、図7の視点を基準にして使用する。
【0048】
さて、原形態において、第1のヒンジ軸5a及び第2の第1のヒンジ軸7aは、上記のような状態にあるから、第1のヒンジ軸5aの回動阻止トルクは第2のヒンジ軸7aの回動阻止トルクより大きい。そのため、第1の筐体2を第2の筐体3から持ち上げると、第1の筐体2は第1のヒンジ軸5a回りに時計回りに回転して図7(b)に示すような形態を取る。すなわち、第1球体57aは凹所54dから引き上げられて第1球体用溝54b上を転動する。また、第2球体57bは凹所54gから引き上げられて第2球体用溝54c上を転動する。この時、第2のヒンジ軸7aは動かないから、第2のヒンジ軸7aの第1及び第2球体77a,77bは凹所74e,74fに嵌合したままである。
【0049】
第1の筐体2を、第1のヒンジ軸5a回りに時計回りにさらに回転させると、第1のヒンジ軸5aの回動範囲の終端に到達する。すなわち、図7(c)に示すように、第1の筐体2は原形態から第1のヒンジ軸5a回りに180°回動して、第1のヒンジ軸5aの第1及び第2球体57a,57bは凹所54f,54eに嵌合する。また、この時、第1の筐体2は連結部材6aに当接、干渉して回動を停止する。
【0050】
第1の筐体2の第1のヒンジ軸5a回りの回動が停止した後、第1の筐体2を2軸ヒンジ装置4a回りに時計回りにさらに回転させると、第1の筐体2は第2のヒンジ軸7a回りに回転を始める。すなわち、図7(d)に示すように、第2のヒンジ軸7aの第1及び第2球体77a,77bは凹所74e,74fから引き上げられて、第1及び第2球体用溝74b,74c上を転動する。
【0051】
第1の筐体2を第2のヒンジ軸7a回りに時計回りにさらに転動させると、第1の筐体2は第2の筐体の下に重なる。すなわち、携帯電話端末1は反転形態を取る。この時、図7(e)に示すように、第2のヒンジ軸7aの第1及び第2球体77a,77bは凹所74d,74gに嵌合する。また、この時、連結部材6aは、第2の筐体3に当接、干渉して回動を停止する。
【0052】
さて、携帯電話端末1を反転形態から原形態に戻すときは、図7(a)ないし図7(e)に示した形態を逆順に辿る。すなわち、反転形態においては、原形態とは逆に、第2のヒンジ軸7aの回動阻止トルクが第1のヒンジ軸75aの回動阻止トルクより大きいから、反転形態(図7(e))において、第1の筐体2を下方に引き下げると、第1の筐体2は第2のヒンジ軸7a回りに反時計回りに回転して、図7(d)に示した形態を経て、図7(c)に示した形態に移行する。その後、第1の筐体2は第1のヒンジ軸5a回りに反時計回りに回転して、図7(b)に示した形態を経て、原形態(図7(a))に戻る。
【0053】
以上説明したように、携帯電話端末1は原形態から反転形態への移行(順移行)、反転形態から原形態への移行(逆移行)の何れにおいても、同一の途中形態を辿るので、使用者に違和感を与えることがない。
【0054】
すなわち、原形態においては、第1のヒンジ5a,5bの回転阻止トルクが、第2のヒンジ7a,7bの回転阻止トルクよりも小さく設定されているので、順移行の場合は、第1のヒンジ5a,5bが先行して回動し、第1のヒンジ5a,5bが回動の終端に到達すると、第2のヒンジ7a,7bが回動する。また反転形態においては、第1のヒンジ5a,5bの回転阻止トルクが、第2のヒンジ7a,7bの回転阻止トルクよりも大きく設定されているので、第2のヒンジ7a,7bが先行して回動し、その後、第1のヒンジ5a,5bが回動する。
【0055】
また、第1のヒンジ5a,5b及び第2のヒンジ7a,7bの回動範囲は、それぞれ第1球体用溝54b,74b及び第2球体用溝54c、74cによって規制されているので、所望の範囲で形態を変更することができる。
【0056】
また、第1のヒンジ5a,5bあるいは第2のヒンジ7a,7bが回動の終端に達すると、第1の筐体2あるいは第2の筐体3が連結部材6aに当接、干渉して停止する。そのため、第1のヒンジ5a,5b及び第2のヒンジ7a,7bに過大なストレスが負荷されないので、耐久性が向上する。
【0057】
なお、上記の実施形態の説明は、本発明の実施形態の例示であって、本発明の技術的範囲は上記説明によって限定されない。本発明は特許請求の範囲に記載された技術的思想の限りにおいて、応用、変形あるいは改良して実施することができる。
【0058】
例えば、上記説明では、2組の2軸ヒンジ装置4a,4bを備えて、第1及び第2の筐体2,3を両持ち支持する例を示したが、2軸ヒンジ装置は1組であっても、3組以上であってもよい。
【0059】
また、筐体側軸筒51と連結部材体側軸筒52の構成あるいは機能を逆にしてもよい。すなわち、連結部材体側円板54、スプリング55、ロッド56あるいは、これらと同一の機能を有する要素を筐体側に取り付けてもよい。
【0060】
また、上記説明では、筐体側軸筒51と筐体側円板53を別部品としたが、これらを一体に成形してもよい。
【0061】
また、上記説明では、第1及び第2球体用溝54b,54c,74b,74cの平面形を円弧にしたが、第1及び第2球体用溝54b,54c,74b,74cの平面形は円弧には限られない。各種の曲線を選択することができる。
【0062】
また、上記説明では、第1球体用溝54bの両端に設けた凹所54d,54eの形状を同じにして、両者の脱出阻止力Fを同じにしたが、凹所54d,54eの形状を変えて、回動阻止トルクを大きくしたい端部(凹所54e)の脱出阻止力Fが他方(凹所54d)より大きくなるようにしてもよい。
【0063】
また、原形態においては、第2のヒンジ7a,7bの回転阻止トルクが、第1のヒンジ5a,5bの回転阻止トルクよりも小さくなるように構成して、反転形態においては、第1のヒンジ5a,5bの回転阻止トルクが、第2のヒンジ7a,7bの回転阻止トルクよりも小さくなるように構成してもよい。この場合、順移行の場合は、第2のヒンジ7a,7bが先行して回動し、逆移行の場合は、第1のヒンジ5a,5bが先行して回動するが、この場合も、順移行、逆移行の何れにおいても、同一の途中形態を辿るので、使用者に違和感を与えることがない。
【0064】
上記実施の形態においては、携帯電話端末を例にして、この発明に係る携帯機器を説明したが、この発明は、携帯電話端末に限定されず、ヒンジ装置を介して複数の筐体を互いに回動自在に連結した構成を有するならば、いわゆるノートブック型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Data Assistances)、電子ブック、その他の任意の携帯機器に適用可能である。
【0065】
また、2以上のヒンジ装置を使用して、3つの以上の筐体を連結することも可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…携帯電話端末、2…第1の筐体、3…第2の筐体、4,4a,4b…2軸ヒンジ装置、5,5a,5b…第1のヒンジ軸、6,6a,6b…連結部材、7,7a,7b…第2のヒンジ軸、51,71…筐体側軸筒、52,72…連結部材体側軸筒、53,73…筐体側円板、53b,73b…第1球体用溝、53c、73c…第2球体用溝、54,74…連結部材体側円板、54b,74b…第1球体用溝、54c、74c…第2球体用溝、54d,54e,54f,54g…凹所、74d,74e,74f,74g…凹所、54c、74c…第2球体用溝、55,75…スプリング、56,76…ロッド、57a,77a…第1球体、57b,77b…第2球体、81…携帯電話端末
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の筐体、第2の筐体及び連結部材を備え、
前記第1の筐体は第1のヒンジを介して前記連結部材に回転自在に連結され、
前記第2の筐体は第2のヒンジを介して前記連結部材に回転自在に連結され、
前記第1のヒンジ及び前記第2のヒンジの回転軸を平行に配置して構成された携帯機器において、
前記第1のヒンジは、第1の始端から第1の終端の間で回転するとともに、前記第1の始端において前記第1のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第1の始端から前記第1の終端に向かう回動を阻止する第1の始端側回転阻止手段と、前記第1の終端において前記第1のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第1の終端から前記第1の始端に向かう回動を阻止する第1の終端側回転阻止手段を有し、
前記第2のヒンジは、第2の始端から第2の終端の間で回転するとともに、前記第2の始端において前記第2のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第2の始端から前記第2の終端に向かう回動を阻止する第2の始端側回転阻止手段と、前記第2の終端において前記第2のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第2の終端から前記第2の始端に向かう回動を阻止する第2の終端側回転阻止手段を有し、
前記第1の始端側回転阻止手段の回転阻止トルクは前記第2の始端側回転阻止手段の回転阻止トルクよりも小さく設定され、
前記第1の終端側回転阻止手段の回転阻止トルクは前記第2の終端側回転阻止手段の回転阻止トルクよりも大きく設定されている
ことを特徴とする携帯機器。
【請求項2】
第1の筐体、第2の筐体及び連結部材を備え、
前記第1の筐体は第1のヒンジを介して前記連結部材に回転自在に連結され、
前記第2の筐体は第2のヒンジを介して前記連結部材に回転自在に連結され、
前記第1のヒンジ及び前記第2のヒンジの回転軸を平行に配置して構成された携帯機器において、
前記第1のヒンジは、第1の始端から第1の終端の間で回転するとともに、前記第1の始端において前記第1のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第1の始端から前記第1の終端に向かう回動を阻止する第1の始端側回転阻止手段と、前記第1の終端において前記第1のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第1の終端から前記第1の始端に向かう回動を阻止する第1の終端側回転阻止手段を有し、
前記第2のヒンジは、第2の始端から第2の終端の間で回転するとともに、前記第2の始端において前記第2のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第2の始端から前記第2の終端に向かう回動を阻止する第2の始端側回転阻止手段と、前記第2の終端において前記第2のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第2の終端から前記第2の始端に向かう回動を阻止する第2の終端側回転阻止手段を有し、
前記第1の始端側回転阻止手段の回転阻止トルクは前記第2の始端側回転阻止手段の回転阻止トルクよりも大きく設定され、
前記第1の終端側回転阻止手段の回転阻止トルクは前記第2の終端側回転阻止手段の回転阻止トルクよりも小さく設定されている
ことを特徴とする携帯機器。
【請求項3】
前記第1の筐体は、前記第1のヒンジが前記第1の終端から前記第1の始端に向って回動して前記第1の始端に達すると、前記連結部材と当接して、前記第1のヒンジの以後の回動を規制するように構成されるとともに、
前記第2の筐体は、前記第2のヒンジが前記第2の始端から前記第2の終端に向って回動して前記第2の終端に達すると、前記連結部材と当接して、前記第2のヒンジの以後の回動を規制するように構成されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の携帯機器。
【請求項4】
前記第1のヒンジの回転範囲を前記第1の始端から前記第1の終端の間に規制する第1の回転規制手段と、
前記第2のヒンジの回転範囲を前記第2の始端から前記第2の終端の間に規制する第2の回転規制手段を備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の携帯機器。
【請求項1】
第1の筐体、第2の筐体及び連結部材を備え、
前記第1の筐体は第1のヒンジを介して前記連結部材に回転自在に連結され、
前記第2の筐体は第2のヒンジを介して前記連結部材に回転自在に連結され、
前記第1のヒンジ及び前記第2のヒンジの回転軸を平行に配置して構成された携帯機器において、
前記第1のヒンジは、第1の始端から第1の終端の間で回転するとともに、前記第1の始端において前記第1のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第1の始端から前記第1の終端に向かう回動を阻止する第1の始端側回転阻止手段と、前記第1の終端において前記第1のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第1の終端から前記第1の始端に向かう回動を阻止する第1の終端側回転阻止手段を有し、
前記第2のヒンジは、第2の始端から第2の終端の間で回転するとともに、前記第2の始端において前記第2のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第2の始端から前記第2の終端に向かう回動を阻止する第2の始端側回転阻止手段と、前記第2の終端において前記第2のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第2の終端から前記第2の始端に向かう回動を阻止する第2の終端側回転阻止手段を有し、
前記第1の始端側回転阻止手段の回転阻止トルクは前記第2の始端側回転阻止手段の回転阻止トルクよりも小さく設定され、
前記第1の終端側回転阻止手段の回転阻止トルクは前記第2の終端側回転阻止手段の回転阻止トルクよりも大きく設定されている
ことを特徴とする携帯機器。
【請求項2】
第1の筐体、第2の筐体及び連結部材を備え、
前記第1の筐体は第1のヒンジを介して前記連結部材に回転自在に連結され、
前記第2の筐体は第2のヒンジを介して前記連結部材に回転自在に連結され、
前記第1のヒンジ及び前記第2のヒンジの回転軸を平行に配置して構成された携帯機器において、
前記第1のヒンジは、第1の始端から第1の終端の間で回転するとともに、前記第1の始端において前記第1のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第1の始端から前記第1の終端に向かう回動を阻止する第1の始端側回転阻止手段と、前記第1の終端において前記第1のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第1の終端から前記第1の始端に向かう回動を阻止する第1の終端側回転阻止手段を有し、
前記第2のヒンジは、第2の始端から第2の終端の間で回転するとともに、前記第2の始端において前記第2のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第2の始端から前記第2の終端に向かう回動を阻止する第2の始端側回転阻止手段と、前記第2の終端において前記第2のヒンジに所定の回転阻止トルクを加えて前記第2の終端から前記第2の始端に向かう回動を阻止する第2の終端側回転阻止手段を有し、
前記第1の始端側回転阻止手段の回転阻止トルクは前記第2の始端側回転阻止手段の回転阻止トルクよりも大きく設定され、
前記第1の終端側回転阻止手段の回転阻止トルクは前記第2の終端側回転阻止手段の回転阻止トルクよりも小さく設定されている
ことを特徴とする携帯機器。
【請求項3】
前記第1の筐体は、前記第1のヒンジが前記第1の終端から前記第1の始端に向って回動して前記第1の始端に達すると、前記連結部材と当接して、前記第1のヒンジの以後の回動を規制するように構成されるとともに、
前記第2の筐体は、前記第2のヒンジが前記第2の始端から前記第2の終端に向って回動して前記第2の終端に達すると、前記連結部材と当接して、前記第2のヒンジの以後の回動を規制するように構成されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の携帯機器。
【請求項4】
前記第1のヒンジの回転範囲を前記第1の始端から前記第1の終端の間に規制する第1の回転規制手段と、
前記第2のヒンジの回転範囲を前記第2の始端から前記第2の終端の間に規制する第2の回転規制手段を備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の携帯機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2011−220397(P2011−220397A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88195(P2010−88195)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】
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