説明

携帯無線機

【課題】回転2軸構造を採用した折畳み式の携帯無線機において、通常閉じ状態と反転閉じ状態の2つの閉じ状態で安定したアンテナ性能を確保できるとともに、機器本体の薄型化及び小型化が図れる携帯無線機を提供する。
【解決手段】第3筐体12の液晶表示器15がある側の第1の面が第1筐体10と向かい合う通常閉じ状態において、給電部17a及びアンテナ素子17の一部と第1地導体である第1回路基板13との間に第2地導体16を配置し、第3筐体12の第1の面と反対の第2の面が第1筐体10と向かい合う反転閉じ状態において、第1地導体である第1回路基板13と第2地導体16との間に給電部17a及びアンテナ素子17の一部を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等の携帯無線機に関し、特に回転2軸構造を持つ折畳み式の携帯無線機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話には、セルラ通信用の無線システムの他に、GPS(Global Positioning System)、WLAN(Wireless LAN)、Bluetooth(登録商標)などの比帯域の比較的狭い無線システムが搭載されるようになってきている。また、複数の無線システムを搭載することで、アンテナ素子も複数個搭載されるようになってきている。
【0003】
また、近年の携帯電話には、待ち受け時では“通常閉じ状態”、通話時では“開き状態”、ワンセグ視聴やタッチパネル操作等の液晶画面が見える状態で閉じる“ビューワ閉じ状態”の3つの状態をとる回転2軸構造(“スィーベル構造”とも呼ばれる)を有したものもある。なお、本明細書では、“ビューワ閉じ状態”のことを“反転閉じ状態”と呼ぶこととする。すなわち、2つの閉じ状態のうち一方を、“通常閉じ状態”と呼び、他方を“反転閉じ状態”と呼ぶ。
【0004】
図12は、回転2軸構造を採用した従来の折畳み式の携帯無線機100の外観を示す斜視図である。同図の(a)は通常閉じ状態、(b)は開き状態、(c)は反転閉じ状態をそれぞれ示す。図12の(b)に示すように、回転2軸構造を採用した携帯無線機100は、3つの筐体(第1筐体101、第2筐体102、第3筐体103)からなる。第1筐体101と第2筐体102の連結部には第1ヒンジ(図示略)が設けられており、この第1ヒンジによって第1筐体101と第2筐体102が開閉自在に連結される。第2筐体102と第3筐体103の連結部には第2ヒンジ(図示略)が設けられており、この第2ヒンジによって第2筐体102と第3筐体103が回動自在に連結される。第3筐体103には液晶表示器105が設けられている。なお、液晶表示器105の大画面化に伴い、第3筐体103内には強度を確保するための補強用金属板金(図示略)が設けられる場合がある。
【0005】
上述した回転2軸構造を採用した携帯電話では、通常閉じ状態と反転閉じ状態の2つの閉じ状態で均一なアンテナ性能を確保できることが望まれている。この要望を実現したものとして、例えば特許文献1、2に記載された携帯無線装置がある。特許文献1に記載された携帯無線装置は、回動する第3筐体内の液晶表示器側と該液晶表示器に対向する内壁面側のそれぞれにアンテナ素子を配置している。このようにすることで、2つの閉じ状態のそれぞれにおいて、一方のアンテナ素子が第1筐体側に接近しても、他方のアンテナ素子が第1筐体から離れるので、アンテナ性能の劣化を低く抑えることができる。
【0006】
他方、特許文献2に記載された携帯無線装置は、第1筐体にアンテナ素子を設けるとともに、該アンテナ素子の両端それぞれに給電回路を設ける一方、第2筐体(上述した第3筐体に相当)に導電性部品を設け、2つの閉じ状態のそれぞれにおいて、アンテナ素子と導電性部品が接近する状態で、導電性部品がアンテナ素子の給電回路側となるように、給電回路の切り替えを行う。このようにすることで、2つの閉じ状態でアンテナ性能の均一化が図れる。
【0007】
なお、携帯電話の小型化、薄型化及び大画面化は継続して行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−019808号公報
【特許文献2】特開2007−049215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、回転2軸構造を採用した従来の折畳み式の携帯無線機では、装置の薄型化に伴い、通常閉じ状態と反転閉じ状態で、アンテナ素子から周辺構造物までの必要距離の確保が困難である。また、液晶表示器の大画面化に伴う補強用金属板金の拡大により、アンテナ素子と補強用金属板金との間で必要とする距離の確保と、装置の薄型化に伴う補強用金属板金とアンテナ給電部との間の距離の確保が困難である。
【0010】
また、特許文献1に記載された携帯無線装置においては、装置本体の薄型化を図ると、2つのアンテナ素子のうち一方のアンテナ素子と第1筐体との距離と、他方のアンテナ素子と第1筐体との距離との差分が小さくなり、アンテナ性能劣化を低減することが困難になる。また、2つのアンテナ素子を必要とするので、そのための空間を確保しなればならず、小型化に限界がある。
【0011】
また、特許文献2に記載された携帯無線機においては、上記同様に装置本体の薄型化を図るとアンテナ素子が導電性部品に接近するため、アンテナ性能が劣化してしまう。また、切替回路を設けるため、その分、回路基板の面積が大きくなり、小型化に限界がある。
【0012】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、回転2軸構造を採用した折畳み式の携帯無線機において、通常閉じ状態と反転閉じ状態の2つの閉じ状態で安定したアンテナ性能を確保できるとともに、機器本体の薄型化及び小型化が図れる携帯無線機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の携帯無線機は、第1筐体と、第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体とを開閉自在に連結する第1ヒンジと、第3筐体と、前記第2筐体と前記第3筐体とを回動自在に連結する第2ヒンジと、前記第1筐体に設けられ、第1地導体として機能する第1回路基板と、前記第3筐体に設けられた第2回路基板と、前記第2回路基板の一方の面に給電部が接続されたアンテナ素子と、前記第2回路基板の他方の面に構成された第2地導体と、前記第1回路基板と前記第2回路基板とを電気的に接続する信号ケーブルと、を備え、前記第3筐体の第1の面が前記第1筐体と向かい合う通常閉じ状態において、前記給電部及び前記アンテナ素子の一部と前記第1地導体との間に前記第2地導体が配置され、前記第3筐体の前記第1の面と反対の第2の面が前記第1筐体と向かい合う反転閉じ状態において、前記第1地導体と前記第2地導体との間に前記給電部及び前記アンテナ素子の一部が配置される。
【0014】
上記構成によれば、通常閉じ状態においては、第2地導体が給電部及びアンテナ素子の一部と第1地導体との間に配置され、反転閉じ状態においては、給電部及びアンテナ素子の一部が第1地導体と第2地導体との間に配置される。したがって、給電部とアンテナ素子の一部と第2地導体の間隔は、通常閉じ状態と反転閉じ状態の2つの状態で一定となり、給電部とアンテナ素子の一部に電流が集中し、2つの閉じ状態におけるアンテナ素子から第1筺体と第1回路基板との間隔変化によるインピーダンス変化を抑えることができ、通常閉じ状態と反転閉じ状態の2つの閉じ状態で安定したアンテナ性能を確保できる。また、給電部及びアンテナ素子の一部と第2回路基板との間隔を縮小することにより、アンテナ性能は改善することから、第2回路基板の薄型化が可能となり、機器本体の薄型化及び小型化が図れる。
【0015】
上記構成において、前記アンテナ素子は、平板状であることを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、給電部とアンテナ素子の一部と第2地導体との重なる面積が増え、給電部とアンテナ素子の一部に電流が更に集中するため、インピーダンスの変化を更に抑制し、2つの閉じ状態で更に安定したアンテナ性能を確保できる。
【0017】
上記構成において、前記アンテナ素子のうち、通常閉じ状態において前記第1地導体と前記第2地導体との間に配置されていない前記アンテナ素子の一部が、通常閉じ状態と反転閉じ状態の2つの閉じ状態において、前記第1回路基板と正面視で重なるように配置されていることを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、アンテナ素子と前記第1回路基板が併走し、正面視で重なる箇所のアンテナ素子の電流が減少しても、第2地導体及び第1地導体の電流が増加するため、アンテナ性能の劣化を抑制することが可能である。
【0019】
上記構成において、前記アンテナ素子は、前記第2回路基板と直交する平板状の直交部を有し、前記直交部前記第1回路基板との間隔が通常閉じ状態及び反転閉じ状態で略同一であることを特徴とする。
【0020】
上記構成によれば、アンテナ素子の一部分を第2回路基板と直交する平板状の直交部とし、アンテナ素子と第1回路基板との重なり面積を極小とすることにより、アンテナ素子に及ぼす第1回路基板の影響を低減することが可能となる。また、該直交部と第1回路基板との間隔が通常閉じ状態及び反転閉じ状態で略同一となるようにしたので、2つの閉じ状態で安定したアンテナ性能を確保することが可能となる。
【0021】
上記構成において、前記第2回路基板は、通常閉じ状態及び反転閉じ状態で前記第1回路基板との間隔が略同一になるように配置されたことを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、第1回路基板と第2回路基板の電流は通常閉じ状態と反転閉じ状態で略同一となるため、2つの閉じ状態で安定したアンテナ性能を確保することが可能となる。
【0023】
上記構成において、前記第2回路基板と電気的に接続され、前記第2回路基板とは別の導電性部材を第2地導体として設けたことを特徴とする。
【0024】
上記構成によれば、専用の第2地導体を設けたので、例えば液晶表示装置の破壊防止の補強板を拡大することが可能となり、強度確保を容易に行うことが可能となる。また、第2地導体の大きさに依存して、第2回路基板と第2地導体に流れる電流を変化させ、アンテナ性能の改善を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、回転2軸構造を採用した折畳み式の携帯無線機において、通常閉じ状態と反転閉じ状態の2つの閉じ状態で安定したアンテナ性能を確保できるとともに、機器本体の薄型化及び小型化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態1に係る携帯無線機の外観を示す斜視図
【図2】図1の携帯無線機を通常閉じ状態としたときの内部構造を示す図であり、(a)は正面視した場合の内部構造を示す正面透視図、(b)は側面視した場合の内部構造を示す図
【図3】図1の携帯無線機を反転閉じ状態としたときの内部構造を示す図であり、(a)は正面視した場合の内部構造を示す正面透視図、(b)は側面視した場合の内部構造を示す図
【図4】図1の携帯無線機のアンテナ素子の外観を示す斜視図
【図5】図1の携帯無線機を通常閉じ状態にしたときのアンテナ素子の配設部分を拡大した図
【図6】図1の携帯無線機を反転閉じ状態にしたときのアンテナ素子の配設部分を拡大した図
【図7】図1の携帯無線機におけるアンテナ素子の給電部と第2地導体との間隔を変更したときのアンテナ効率の測定結果を示すグラフ
【図8】図1の携帯無線機におけるアンテナ素子の給電部と第2地導体との間隔を変更したときのインピーダンス特性を示す図
【図9】シミュレーション解析によるアンテナ素子の給電部と第2地導体との間隔を変更したときの効率計算結果を示すグラフ
【図10】シミュレーション解析による通常閉じ状態の電流分布密度を示す図
【図11】シミュレーション解析による反転閉じ状態の電流分布密度を示す図
【図12】回転2軸構造を採用した従来の折畳み式の携帯無線機の外観を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る携帯無線機の外観を示す斜視図である。同図において、本実施の形態の携帯無線機1は、回転2軸構造を採用した折畳み式の携帯電話機であり、第1筐体10、第2筐体11及び第3筐体12の3つの筐体からなり、“通常閉じ状態”、“開き状態”、“反転閉じ状態”の3つの状態をとることができるものである。
【0029】
第1筐体10と第2筐体11が第1ヒンジ20によって開閉自在に連結され、第2筐体11と第3筐体12が第2ヒンジ(回転2軸ヒンジ)21によって回動自在に連結されている。第1ヒンジ20は第1筐体10と第2筐体11との間に設けられており、第2ヒンジ21は第2筐体11と第3筐体12との間に設けられている。第3筐体12には液晶表示器15が設けられており、第3筐体10には図示せぬアンテナ素子が設けられている。
【0030】
また、第1筐体10には第1回路基板13が設けられており、第3筐体12には第2回路基板14が設けられている。本実施の形態では、第1回路基板13を第1地導体として利用するようにしている。第1地導体の詳細は後述する。第1回路基板13と第2回路基板14は信号ケーブル30で接続されている。信号ケーブル30には主に細線同軸ケーブル群が用いられる。なお、細線同軸ケーブル群は複数の細い直径の同軸ケーブルを円柱状に配置し、それをテープなどで束ねたものである。
【0031】
図2は、本実施の形態の携帯無線機1を“通常閉じ状態”としたときの内部構造を示す図であり、(a)は正面視した場合の内部構造を示す正面透視図、(b)は側面視した場合の内部構造を示す図である。特に(b)の場合は(a)の図面に向かって右側から見た内部構造を示す図である。
【0032】
図3は、本実施の形態の携帯無線機1を“反転閉じ状態”としたときの内部構造を示す図であり、(a)は正面視した場合の内部構造を示す正面透視図、(b)は側面視した場合の内部構造を示す図である。特に(b)の場合は(a)の図面に向かって右側から見た内部構造を示す図である。
【0033】
図2及び図3において、第3筐体12には、前述した第2回路基板14及び液晶表示器15の他に、第2回路基板14よりも大きな平板状の第2地導体16と、アンテナ素子17とが設けられている。第2地導体16には導電性の良い平板状の金属板が用いられる。第2地導体16は、短手方向の長さが第3筐体12の短手方向の長さよりも短く、かつ第2回路基板14の短手方向の長さより長くなっており、また長手方向の長さが第3筐体12の長手方向の長さよりも短く、かつ第2回路基板14の長手方向の長さより長くなっている。第2地導体16は、第2回路基板14上に積層配置され、第2回路基板14のグランドと電気的に接続される。なお、第2地導体16は、必ずしも第2回路基板14上に積層する必要はなく、第2回路基板14に隣接配置でもよい。また、第2地導体16を液晶表示器15に配置する補強板で構成し、この補強板をアンテナ素子17とアンテナ素子17の給電部17aの裏面に配置することも可能である。このようにすることで、アンテナ性能と液晶表示器の破壊防止という機構強度の両立が可能である。詳細は後述する。
【0034】
アンテナ素子17は、第2回路基板14の第2地導体16が接続された面と反対側面の上端左隅部分(図2では、図面に向かって下端左隅部分)に配置されている。アンテナ素子17は、給電部17a、併走部17b、非併走部17c及び直交部17dの連続する4つの部分から構成されている。給電部17aは、第2回路基板14に実装された無線回路(図示略)に接続される。
【0035】
アンテナ素子17の給電部17aと併走部17bは、図2(b)及び図3(b)のy方向で、第2地導体16と併行になる部分であり、図2(a)及び図3(a)に示すとおり、正面から投影すると、第2地導体と第1地導体に重なるように配置する。また、アンテナ素子17の非併走部17cは、図2(b)及び図3(b)のy方向で、第2地導体16と非併行になる部分であり、図2(a)及び図3(a)に示すとおり、正面から投影すると、第2地導体とは重ならず、第1地導体とは重なるように配置する。ここで、第2地導体16の先端が、併走部17bから非併走部17cに変る境目に位置するので、この境目の位置より先には第2地導体16が無いため、当該位置から直交部17dまでの間が非併走部17cとなる。
【0036】
アンテナ素子17の直交部17dは、給電部17a、併走部17b及び非併走部17cまでの部分に対して直角に折れ曲がった部分であり、第2回路基板14の先端中央部に向かう方向に湾曲する形状となっている。アンテナ素子17は、携帯無線機1の通常閉じ状態では、図2の(a)に示すように、同図に向かって左側に位置し、携帯無線機1の反転閉じ状態では、第3筐体12が180度回転することになるので、図3の(a)に示すように、同図に向かって右側に位置する。
【0037】
図4は、アンテナ素子17の外観を示す斜視図である。同図(a)と(b)はアンテナ素子17の見方を180度違えたものである。同図に示すように、アンテナ素子17は、給電部17aと併走部17bが段差を経て繋がっており、併走部17bと非併走部17cが同一面で構成される。また、非併走部17cと直交部17dが90度の角度で繋がっている。直交部17dは3箇所で段階的に折れ曲がっている。
【0038】
図2、図3、図4より、給電部17a、併走部17b、非併走部17cは、第2回路基板14、第2地導体16、第1回路基板13の平面部と平行になるよう配置し、直交部17dは直交するように配置している。
【0039】
図5は、通常閉じ状態にある携帯無線機1のアンテナ素子17の配設部分を拡大した図である。図5における各寸法を以下に列記する。なお、“λ”は、設計周波数における波長を示し、本実施の形態ではGPS(Global Positioning System)で使用される1.5GHz帯としている。
【0040】
Da:給電部17aと第2地導体16との間隔 0.002λ
Db1:併走部17bと第2地導体16との間隔 0.006λ
Dc:非併走部17cと第1回路基板13との間隔 0.037λ
Dd:直交部17dと第1回路基板13との間隔 0.022λ
Dg:第2地導体16と第1回路基板13との間隔 0.029λ
La:給電部17aの長さ 0.015λ
Lb:併走部17bの長さ 0.020λ
Lc:非併走部17cの長さ 0.007λ
Wa:給電部17aの幅 0.015λ
Wb:併走部17bの幅 0.010λ
Wc:非併走部17cの幅 0.010λ
Wd:直交部17dの幅 0.015λ
【0041】
アンテナ素子17の給電部17aは、幅Wa=0.015λ、長さLa=0.015λである。給電部17aと第2地導体16との間隔Daは、第2回路基板14の厚みに相当する。
【0042】
図6は、反転閉じ状態にある携帯無線機1のアンテナ素子17の配設部分を拡大した図である。図6における各寸法を以下に列記する。
【0043】
Da:給電部17aと第2地導体16との間隔 0.002λ
Db1:併走部17bと第2地導体16との間隔 0.006λ
Dc:非併走部17cと第1回路基板13との間隔 0.018λ
Dd:直交部17dと第1回路基板13との間隔 0.018λ
Dg:第2地導体16と第1回路基板13との間隔 0.031λ
La:給電部17aの長さ 0.015λ
Lb:併走部17bの長さ 0.020λ
Lc:非併走部17cの長さ 0.007λ
Wa:給電部17aの幅 0.015λ
Wb:併走部17bの幅 0.010λ
Wc:非併走部17cの幅 0.010λ
Wd:直交部17dの幅 0.015λ
【0044】
図7は、給電部17aと第2地導体16との間隔Daすなわち第2回路基板14の厚みを変更したときのアンテナ効率の測定結果を示すグラフである。このとき、携帯無線機1の通常閉じ状態における前記各寸法は次のようになる。
Db1:0.006λ
Dc: 0.037λ
Dd: 0.022λ
Dg: 0.029λ
La: 0.015λ
Lb: 0.020λ
Lc: 0.007λ
Wa: 0.015λ
Wb: 0.010λ
Wc: 0.010λ
Wd: 0.015λ
【0045】
また、携帯無線機1の反転閉じ状態における前記各寸法は次のようになる。
Db1:0.006λ
Dc: 0.018λ
Dd: 0.018λ
Dg: 0.031λ
La: 0.015λ
Lb: 0.020λ
Lc: 0.007λ
Wa: 0.015λ
Wb: 0.010λ
Wc: 0.010λ
Wd: 0.015λ
【0046】
携帯無線機1の通常閉じ状態において、非併走部17cと第1回路基板13との間隔Dcは、0.037λであり、このとき間隔Daを0.002λから0.001λに小さくすると、効率は0.6dBの改善が見られる。一方、反転閉じ状態において、間隔Dcは、0.0018λであり、通常閉じ状態に比べ小さくなっているが、このとき、間隔Daを0.002λから0.001λに小さくすると、効率は約1.5dBの改善が得られる。間隔Dcが小さく、間隔Daが小さいほど効率の改善が得られる。
【0047】
図8に上記測定時のインピーダンス特性を示す。図8の上段が、給電部17aと第2地導体16との間隔Daを0.0025λとした場合、下段が、間隔Daを0.0010λに縮小した場合であり、左側から順に、通常閉じ状態、反転閉じ状態、開き状態におけるインピーダンスを示している。▼マークは1.58GHzにおけるインピーダンスである。
【0048】
図8において、通常閉じ状態と反転閉じ状態のインピーダンス波形の軌跡を比較すると、間隔Daが0.0025λにおいては、波形は異なるが、間隔Daを0.0010λに縮小すると、略同一のインピーダンス波形が得られている。このことから、間隔Daを縮小すると、通常閉じ状態と反転閉じ状態のインピーダンス変動が少ないことは明らかである。
【0049】
図9に4つのモデルをシミュレーション解析したときの、効率計算結果を示す。
また、給電部17aと第2地導体16との間隔Daを0.002λとした場合の、4つの解析モデルと電流分布密度を図10、図11に示す。なお、特に記載のない箇所における解析モデルは前述の寸法と略同じであるが、周波数は2.5GHz帯としている。
図10は通常閉じ状態であり、図11は反転閉じ状態である。4つの解析モデルについて、図10と図11を用いて説明する。
【0050】
図10及び図11に記載する(1)、(2)、(3)、(4)はそれぞれの解析モデルを示している。なお、図10と図11は通常閉じ状態と反転閉じ状態の違いのみである。
解析モデル(1)はアンテナ素子17と第2回路基板14のみで構成されており、アンテナ素子を阻害する障害物がない理想状態である。
解析モデル(2)は上記解析モデル(1)に、第1回路基板13と信号ケーブル30を追加しており、給電部17aと併走部17bは正面視の投影で第2回路基板14及び第2地導体とは重なっていない。
解析モデル(3)は上記解析モデル(2)に対して、給電部17aと併走部17bと正面視の投影でグランドが重なるように第2回路基板14のグランド部分を拡張しており、拡張部分の幅はアンテナ素子幅と同じである。
解析モデル(4)は上記解析モデル(1)に対して、第2回路基板とは別の金属版を第2地導体として追加したものであり、実測モデルと同じである。
【0051】
図9において、通常閉じ状態の効率計算結果を実線で示し、反転閉じ状態の効率計算結果を破線で示す。解析モデル(1)、(2)、(3)、(4)をそれぞれ□マーク、×マーク、△マーク、○マークで示す。
【0052】
図9から、解析モデル(1)は障害物の影響を受けないことから、間隔Daによる効率変化はわずかである。解析モデル(2)は、第1回路基板の影響により、解析モデル(1)から0.4dBの劣化が発生するが、間隔Daによる効率変化は0.1dB程度であり、わずかである。解析モデル(3)は、本発明の構成であり、解析モデル(2)に対して、間隔Daを0.007λ以下にすると、0.5dB以上の改善効果が得られている。解析モデル(4)は、本発明の実施の形態であり、間隔Daを約0.003λとすると、4つの解析モデルの中で最良の効率が得られることがわかる。また、前述の実測データと同じ構成であり、解析結果と実測データは間隔Daを縮小するほど効率は改善しており、実測データを裏付ける結果が得られている。
【0053】
次に図10について説明する。なお、間隔Daは0.003λである。
解析モデル(1)、(2)では、アンテナ素子に電流が集中するが、解析モデル(3)、(4)では、給電部17aと併走部17bに正面視の投影で重なっている第2地導体周辺のグランド電流が増加する。また、第2地導体及び信号ケーブル30の電流が増加し、第2地導体及び信号ケーブルのグランドからの放射の増加により、効率が改善する。
【0054】
図11は反転閉じ状態の電流分布である。間隔Daは同じく0.003λである。
図10の通常閉じ状態とほぼ同じ傾向がみられ、第2地導体からの放射の増加により、効率が改善する。
【0055】
本実施の形態の携帯無線機1では、アンテナ素子17の給電部17aと第2地導体16との間隔Daを縮めることで、通常閉じ状態の性能劣化を起こさずに反転閉じ状態の性能を改善することが可能である。これにより、第2回路基板14の薄型化が可能となる。
【0056】
また、本実施の形態の携帯無線機1は、通常閉じ状態においては、第2地導体16が給電部17a及びアンテナ素子17の一部と第1地導体である第1回路基板13との間に配置され、反転閉じ状態においては、給電部17a及びアンテナ素子17の一部が第1地導体である第1回路基板13と第2地導体16との間に配置される。したがって、給電部17aとアンテナ素子17の一部と第2地導体16の間隔は、通常閉じ状態と反転閉じ状態の2つの状態で一定となり、給電部17aとアンテナ素子17の一部に電流が集中し、2つの閉じ状態におけるアンテナ素子17から第1筺体10と第1回路基板13との間隔変化によるインピーダンス変化を抑えることができ、通常閉じ状態と反転閉じ状態の2つの閉じ状態で安定したアンテナ性能を確保できる。また、給電部17a及びアンテナ素子17の一部と第2回路基板14との間隔を縮小することにより、アンテナ性能は改善することから、第2回路基板14の薄型化が可能となり、機器本体の薄型化及び小型化が図れる。
【0057】
このように本実施の形態に係る携帯無線機1によれば、第3筐体12に設けられた第2回路基板14と、第2回路基板14の一方の面に給電部17aが接続されたアンテナ素子17と、第2回路基板14の他方の面に接続された第2地導体16と、第1回路基板13と第2回路基板14とを電気的に接続する信号ケーブル30と、を備え、通常閉じ状態において、第2地導体16を給電部17a及びアンテナ素子17の一部と第1地導体である第1回路基板13との間に配置し、反転閉じ状態において、給電部17a及びアンテナ素子17の一部が第1地導体である第1回路基板13と第2地導体16との間に配置するので、通常閉じ状態と反転閉じ状態の2つの閉じ状態で安定したアンテナ性能を確保できる。また、給電部17a及びアンテナ素子17の一部と第1回路基板13との間隔が、通常閉じ状態及び反転閉じ状態の2つの閉じ状態で略同一になるので、機器本体の薄型化及び小型化が図れる。
【0058】
なお、上記実施の形態では、第1回路基板13そのものを第1地導体としたが、第1回路基板13とは別の導電性部材を第1地導体として設けて、第1回路基板13と電気的に接続するようにしてもよい。このようにしても、第1回路基板13そのものを第1地導体とした場合と同様に、通常閉じ状態と反転閉じ状態の2つの閉じ状態で安定したアンテナ性能を確保できる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、通常閉じ状態と反転閉じ状態の2つの閉じ状態で安定したアンテナ性能を確保できるとともに、機器本体の薄型化及び小型化が図れるといった効果を有し、回転2軸構造を採用した折畳み式の携帯電話等の携帯無線機への適用が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 携帯無線機
10 第1筐体
11 第2筐体
12 第3筐体
13 第1回路基板
14 第2回路基板
15 液晶表示器
16 第2地導体
17 アンテナ素子
17a 給電部
17b 併走部
17c 非併走部
17d 直交部
20 第1ヒンジ
21 第2ヒンジ
30 信号ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体と、
第2筐体と、
前記第1筐体と前記第2筐体とを開閉自在に連結する第1ヒンジと、
第3筐体と、
前記第2筐体と前記第3筐体とを回動自在に連結する第2ヒンジと、
前記第1筐体に設けられ、第1地導体として機能する第1回路基板と、
前記第3筐体に設けられた第2回路基板と、
前記第2回路基板の一方の面に給電部が接続されたアンテナ素子と、
前記第2回路基板の他方の面に構成された第2地導体と、
前記第1回路基板と前記第2回路基板とを電気的に接続する信号ケーブルと、を備え、
前記第3筐体の第1の面が前記第1筐体と向かい合う通常閉じ状態において、前記給電部及び前記アンテナ素子の一部と前記第1地導体との間に前記第2地導体が配置され、
前記第3筐体の前記第1の面と反対の第2の面が前記第1筐体と向かい合う反転閉じ状態において、前記第1地導体と前記第2地導体との間に前記給電部及び前記アンテナ素子の一部が配置される携帯無線機。
【請求項2】
前記アンテナ素子は、平板状である請求項1に記載の携帯無線機。
【請求項3】
前記アンテナ素子のうち、通常閉じ状態において前記第1地導体と前記第2地導体との間に配置されていない前記アンテナ素子の一部が、通常閉じ状態と反転閉じ状態の2つの閉じ状態において、前記第1回路基板と正面視で重なるように配置されている請求項1又は請求項2に記載の携帯無線機。
【請求項4】
前記アンテナ素子は、前記第2回路基板と直交する平板状の直交部を有し、前記直交部と前記第1回路基板との間隔が通常閉じ状態及び反転閉じ状態で略同一である請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の携帯無線機。
【請求項5】
前記第2回路基板は、通常閉じ状態及び反転閉じ状態で前記第1回路基板との間隔が略同一になるように配置された請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の携帯無線機。
【請求項6】
前記第2回路基板と電気的に接続され、前記第2回路基板とは別の導電性部材を第2地導体として設けた請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の携帯無線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−19297(P2012−19297A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154343(P2010−154343)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】