説明

携帯無線端末

【課題】携帯電話機に実装されている電話機能以外の拡張機能を利用することにより、周囲騒音レベルを推定して通話中の受話音量を自動調節する。
【解決手段】通話中、データ処理装置1はカメラ32を起動し、カメラ32からの画像データを一定タイミング毎に取り込む。データ処理装置1はカメラ32から取り込んだ画像データの、前後2枚の画像データを比較して両者の輝度の不一致点をカウントし、不一致点の数をキーにして、予め設定記憶部21に登録した音量制御データを読み出して音量調節部41を制御し、レシーバー42からの音量を自動調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機能を有する携帯無線端末に関し、特に通話中の受話音量を自動制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年多くの人が所有している携帯電話機能を有する携帯無線端末による電話通信は、基地局との無線通信が可能なエリアであればいつでも何処でも容易に発着信ができるという大きな利点があり、そのため、携帯電話の利用シーンについては、屋外での使用や走行中の自動車内あるいは歩きながらの使用が十分に考えられる。そのような環境においては、周囲の雑音や、走行あるいは移動することによる風切り音などにより、受話音のSN比が低下するために受話音量の調節等を行う必要がある。
【0003】
受話音量の調節手段としては、キー操作によりボリューム調節を実施するのが一般的であるが、周囲雑音に応じてその都度キー操作により手動でボリューム調整するのは面倒であり、実際には、周囲雑音に関係なく最初に設定した受話音量のままで通話が行われているのが実情である。
【0004】
このような問題の解消手段として、特許文献1では、電話機に送話用のマイクロフォンとは別にバックグランドノイズ測定用のマイクロフォンを設け、このバックグランドノイズ測定用のマイクロフォンによって測定される周囲の騒音レベルに応じて、電話機の受話音量を自動調節する技術が提案されている。
【0005】
また特許文献2では、自動車に搭載されている車速センサや加速度センサの出力を監視することで当該自動車の車室内の騒音の状態を推定し、この車速センサや加速度センサを騒音センサとしても利用することにより、車速センサや加速度センサによって測定される車速や加速度に応じて、電話機の受話音量を自動調節する技術が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開平4−40142号公報
【特許文献2】特開平7−321729号公報
【特許文献3】特開2004−120688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜2に記載の発明によれば、周囲の騒音レベルあるいは車速や加速度から推定される騒音レベルに応じて、電話機の受話音量を自動調節することができるが、特許文献1に記載の発明では、周囲の騒音レベルを測定するために専用のマイクロフォンを別途設けなければならないという問題がある。また、特許文献2に記載の発明では、予め車載されている車速センサや加速度センサを騒音センサとしても利用しているので、騒音レベル測定用マイクロフォンを別に追加する必要はないが、車載の車速センサや加速度センサと電話機とを接続して、車速センサや加速度センサによって測定される車速や加速度の情報を電話機内部に取り込むための外部接続手段を必要とし、そのため構成が複雑となるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、最近の携帯電話機に多く実装されている電話機能以外の拡張機能を利用することにより、低コストで周囲騒音レベルを推定して通話中の受話音量を自動調節する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
最近の携帯電話機は、電話機能以外に、カメラ機能やGPS(Global Positioning System)機能などを搭載した多機能機種が増えており、機能拡張が進んできている。本発明はこの点に着目し、通話中の携帯電話機の移動状態を、これらの携帯電話機能以外の拡張機能を利用して検出する手段を設けるとともに、該検出された当該携帯電話機の移動状態から騒音レベルを推定して、当該携帯電話機で通話中の受話音量を自動制御することを特徴としている。
【0010】
具体的には、本発明の携帯電話機能を有する携帯無線端末は、通話中に、前記携帯無線端末に備えられた前記携帯電話機能以外の拡張機能を用いて当該端末の移動状態を検出する移動検出手段と、前記移動検出手段により検出される当該端末の移動状態と対応付けて予め設定された受話音量レベル制御情報を記憶する記憶手段と、前記移動検出手段により検出された当該端末の移動状態に基づいて前記記憶手段から読み出した前記受話音量レベル制御情報により、前記通話中の受話音量を制御する受話音量制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、携帯電話機等の携帯無線端末が備えている電話機能以外の拡張機能を利用して、通話中の受話音量を自動調節する手段を構成しているので、通話中の受話音量を自動調節することのみに用いるための専用の構成、あるいは、通話中の受話音量を自動調節するために他の装置から制御情報を取得するための構成を追加する必要がないので、構成の簡略化と低コストで受話音量自動調節手段を実現することができる。
【0012】
また、通話中の受話音量を自動調節するための条件設定を記憶する記憶装置をそなえ、受話音量自動調節条件を推定して設定可能にしているので、ユーザーが環境条件に対応する受話音量を任意に定義することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の第1の実施形態を示す携帯電話機の主に本発明と関連する部分を抽出した要部ブロック図であり、プログラム制御により動作するデータ処理装置1と、音量設定条件を記憶する記憶装置2と、入力装置3と、音声出力装置としての出力装置4と、無線部5を含んでいる。
【0014】
データ処理装置1は、記憶装置2に格納されている制御プログラムに従って、この携帯電話機が備えている各種機能を実行するための制御を行うが、本実施形態と直接関係する制御として、入力装置3のカメラ32から通話中に撮影されている周囲の画像情報を取り込み、この画像情報から通話中のユーザー状況(移動しながら通話を行っているか)を判定し、この判定結果に基づいて出力装置4の音量調節部41を制御してレシーバー42からの音量を変化させる機能を備えている。
【0015】
記憶装置2は、データ処理装置1がこの携帯電話機に備えられている各種機能を実行するための制御プログラムや、電話帳等の各種データを記憶しているが、本実施形態と直接関係する情報として、データ処理装置1が通話中にカメラ32を起動して周囲の画像情報を取得し、該画像情報に基づいてレシーバー42から出力される通話中の受話音量を制御するためのプログラムを記憶するとともに、ユーザーが設定した音量制御の設定条件を記憶するための設定記憶部21を有している。
【0016】
入力装置3は、操作部としてのキーボード31および拡張機能としてのカメラ32を備えており、本実施形態では、このカメラ32で撮影された画像情報が、装置のゆれを検出するための情報としてデータ処理装置1へ出力される。出力装置4は、データ処理装置1からの制御信号を受けて通話中の音量を調節するための音量調節部41と音声出力装置としてのレシーバー42を備えている。無線装置5は、無線部51とアンテナ52から構成され、基地局との間で無線通信を行う既知の構成を有しているが、本発明とは直接関係しないので、その詳細な構成は省略する。
【0017】
図2は、本実施形態の動作を示すフローチャートである。以下、図1および図2を参照して本実施形態の動作について詳細に説明する。
【0018】
カメラ32からの信号は、データ処理装置1に入力される。ここに入力される信号はカメラ32の構成によってYUVやRGB等のいくつかの方式が考えられる。データ処理装置1では、カメラ32から入力された画像データから、特徴点を抽出する。特徴点としては、たとえば画像データから得られる輝度分布を用いることができる。
【0019】
人が歩いているような状態または乗り物等による移動においては、カメラ32にて撮影される画像は大きく変化するものである。よって、周期的にカメラ32から画像データを入力し、そこで得られた2枚以上の画像データを比較することにより、特徴点に変化が発生しているか否かを検出し、その変化状況に応じて、ユーザーの携帯電話機利用環境を判定する。
【0020】
なお、ここでいう特徴点としては、前述の輝度分布となるが、比較データをさらに単純化するために、記憶装置2に輝度データの閾値を保存しておき、明るさのレベルを単純化してもよい。単純化するレベルは、データ処理装置1の処理速度や、音量調節のきめ細かさ(段階)により、任意に設定可能なものとする。
【0021】
特徴点の変化の検出は、画像データに不一致点が多い(たとえば、有効画素数のうち50%以上が不一致をおこしている)ことを検出することにより、ユーザー(通話中の携帯電話機)は移動状態にあると定義する。有効画素数についても、データ処理装置1の処理速度や、動き検出のきめ細かさ(段階)により、任意に設定されるものとする。
【0022】
データ処理装置1にてカメラ32から入力された画像データを比較した結果、この携帯無線端末により通話中のユーザーが移動状態にあると判定された場合、データ処理装置1は、設定記憶部21より移動状態に対応したボリューム設定値を読み込む。そして読み込まれたボリューム設定値に基づき音量調節部41を制御し、レシーバー42からの受話音声の出力レベルを変更する。
【0023】
次に具体例を用いて本実施形態の動作を説明する。
【0024】
通話中、カメラ32からの画像データはデータ処理装置1に入力される(ステップS2)。データ処理装置1は入力された画像データから特徴点を抽出する(ステップS3)。一例として、あるタイミングで得られた画像データ(明るさデータ)が図3−aで表されるものとし、次のタイミングで得られた画像データ(明るさデータ)は図3−bで表されるものとする。
【0025】
データ処理装置1は2枚の画像データ(図3−aと図3−b)を比較し、輝度の不一致点をカウントする(ステップS4)。上記の例では有効画素9つのうち、6箇所が異なっている(約67%の不一致点)。データ処理装置1は、不一致しているデータ量をキーにして設定記憶部21より変更すべき音量データを読み出す(ステップS5)。本実施例では、設定記憶部21には、例えば不一致点が50%を超える場合、音量を1.5倍にするというデータが保持されているものとする。
【0026】
データ処理装置1は、設定記憶部21より読み出した音量制御データにより音量調節部41を制御して、レシーバー42からの音量を自動調節する(ステップS6)。なお、設定記憶部21に保存されている音量データは、不一致点が80%の場合は、移動速度が速いとして音量を2倍にし、不一致点が50%の場合は音量を1.5倍にするなど、不一致点の閾値を複数保持することにより、よりきめの細かい制御を行うこともできる。
【0027】
図4は、本発明の第2の実施形態を示す携帯電話機の主に本発明と関連する部分を抽出した要部ブロック図である。
【0028】
本実施形態の基本的構成は第1の実施形態と同様であるが、入力装置3として自己の位置情報を得るためのGPS33を有しており、この拡張機能からユーザーの動きを検出できるように構成を変更している。なお、図4において、カメラ32の有無はこの実施形態の場合、機能上差が現れないのでなくてもよい。
【0029】
図4において、入力装置3のキーボード31、カメラ32やGPS33からの情報はデータ処理装置1に入力される。データ処理装置1は、入力されたGPS33のデータから、ユーザーが現在停止中か移動中であるかを検出する。検出された条件をキーとして設定記憶部21に保存されている情報を読み出す。その読み出された情報により音量調節部41を制御し、レシーバー42からの音量を変化させる。
【0030】
図5は、本実施形態の動作を示すフローチャートである。以下、図4および図5を参照して本実施形態の動作について詳細に説明する。
【0031】
通話中、GPS33は、GPS衛星からの電波を受信し、現在位置のデータを所定の周期で取得する。データ処理装置1は、GPS32から現在位置のデータを入力すると(ステップS2)、ユーザーが移動状態にあるか否かを検出するために、データ処理装置1はGPS33より、現在位置の更新データを入力する(ステップS3)。得られた2つの情報から、ユーザーが移動状態にあるか否かを位置データの変化から割り出す(ステップS4)。
【0032】
データ処理装置1にてデータを比較した結果、ユーザーが移動状態にあると定義された場合、データ処理装置1は、設定記憶部21から移動状態に対応するボリューム設定値を読み込む(ステップS5)。読み込まれたボリューム設定値に基づき音量調節部41を制御し、レシーバー42からの音声出力レベルを変更する(ステップS6)。
【0033】
通常GPSにおいては、少なくとも3つ以上のGPS衛星からの電波を受信していないと位置情報を割り出すことができず、また、位置情報の精度は、一般的にGPS衛星からの情報により左右されるが、本発明の場合、ユーザーが移動状態にあるか否かが判定できれば、受話音声出力レベルを制御することが可能である。
【0034】
従って、本実施形態の場合、GPSにより必ずしもユーザーの正確な座標を割り出す必要はなく、最低限、ユーザーが移動状態にあることが検出できればよい。そこで、データ処理装置1におけるGPSによるユーザー移動状態の定義は、受信しているGPS衛星の数が変化したときユーザーが移動状態であると定義することにより、受話音声出力レベルを制御する構成であってもかまわない。
【0035】
なお上記の実施形態では、携帯電話機の拡張機能として搭載されたカメラ機能、あるいはGPS受信機能を、通話中の当該端末の移動状態を検出する移動検出手段として利用(兼用)しているが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、携帯無線端末に備えられた携帯電話機能以外の拡張機能の中で当該携帯電話機の移動状態を検知可能な適宜の手段を移動検出手段として利用(兼用)することができる。
【0036】
例えば、特許文献3には、携帯電話機に加速度センサを搭載し、この加速度センサによって検知された加速度の変化に基づいてユーザーが歩行した歩数を計測する機能を携帯電話機に付加する技術が記載されているが、この加速度センサによって検出される加速度の変化を、通話中の当該端末の移動状態を検出する移動検出手段に利用して本発明を実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す携帯電話機の要部ブロック図である。
【図2】第1の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態の動作の具体例を説明するための図である。
【図4】本発明の第2の実施形態を示す携帯電話機の要部ブロック図である。
【図5】第2の実施形態の動作を示すフローチャート
【符号の説明】
【0038】
1 データ処理装置
2 記憶装置
3 入力装置
4 出力装置
5 無線装置
21 設定記憶部
31 キーボード
32 カメラ
33 GPS受信部
41 音量調節部
42 レシーバー
51 無線部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯電話機能を有する携帯無線端末において、
通話中に、前記携帯無線端末に備えられた前記携帯電話機能以外の拡張機能を用いて当該端末の移動状態を検出する移動検出手段と、
前記移動検出手段により検出される当該端末の移動状態と対応付けて予め設定された受話音量レベル制御情報を記憶する記憶手段と、
前記移動検出手段により検出された当該端末の移動状態に基づいて前記記憶手段から読み出した前記受話音量レベル制御情報により、前記通話中の受話音量を制御する受話音量制御手段と、
を備えていることを特徴とする携帯無線端末。
【請求項2】
前記携帯無線端末は前記携帯電話機能以外の拡張機能としてカメラ機能を備えており、
前記移動検出手段は、前記通話中に前記カメラ機能により撮影される画像情報から当該端末の移動状態を検出することを特徴とする請求項1に記載の携帯無線端末。
【請求項3】
前記移動検出手段は、前記通話中に前記カメラ機能により周期的に撮影される複数の画像間の画像データの相違から当該端末の移動状態を検出することを特徴とする請求項2に記載の携帯無線端末。
【請求項4】
前記携帯無線端末は前記携帯電話機能以外の拡張機能としてGPS受信機能を備えており、
前記移動検出手段は、前記通話中に前記GPS受信機能により得られる情報から当該端末の移動状態を検出することを特徴とする請求項1に記載の携帯無線端末。
【請求項5】
前記GPS受信機能により得られる情報は、当該端末の位置情報であることを特徴とする請求項4に記載の携帯無線端末。
【請求項6】
前記GPS受信機能により得られる情報は、該GPS受信機で受信している衛星の数の変化情報であることを特徴とする請求項4に記載の携帯無線端末。
【請求項7】
前記携帯無線端末は前記携帯電話機能以外の拡張機能として加速度センサを備えており、
前記移動検出手段は、前記通話中に前記加速度センサによって検出される加速度の変化から当該端末の移動状態を検出することを特徴とする請求項1に記載の携帯無線端末。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−5025(P2008−5025A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170159(P2006−170159)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】