説明

携帯用蓄電装置

【課題】何処でバッテリの残容量が0に近付いても、バッテリへ応急的に充電することが可能な携帯用蓄電装置の提供。
【解決手段】走行用モータ14に給電する二次電池12と、二次電池12に外部電源から充電する為の充電回路10,11,R1とを備えた車両の充電回路10,11,R1に接続され、二次電池12に充電する為の携帯用蓄電装置1。外部電源(図示せず)からの電力を蓄電する為の蓄電器4と、外部電源に接続する為の接続回路2,9と、その接続した外部電源からの電力を蓄電器4に充電する為の第2充電回路3,R2と、蓄電器4からの電力を逆変換する逆変換回路6と、充電回路10,11,R1に接続する為の第2接続回路7,8aとを備え、逆変換回路6が逆変換した電力を、第2接続回路7,8a及び充電回路10,11,R1を通じて二次電池12に充電する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用モータと、走行用モータに給電するバッテリ(二次電池)と、バッテリに外部電源から充電する為の充電回路とを備えた車両の充電回路に接続され、バッテリに充電する為の携帯用蓄電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
走行用モータと、走行用モータへ電力を供給する為のバッテリ(二次電池)とを備えた電気自動車では、最近、バッテリへ充電する際に、バッテリに商用電源をコネクタにより接続して充電できるように構成された車両が普及し始めている。このような車両では、バッテリの電圧は、高い方が走行用モータを駆動するのに効率が良いので、数百Vとすることが多く、車両側に商用電源を昇圧して整流する為の回路を備えている。また、劣化防止の為、出力電圧値が0V近くになる迄バッテリを放電させることはなく、満充電時の出力電圧値を100%として、出力電圧値が数十%の状態(残容量0)で放電を止めている。
【0003】
特許文献1には、自動車自身のダイナモを発電手段とし、これによって得られた電力を情報機器及び自動車の駆動のそれぞれの条件に見合った分配比率として、それぞれの電力供給対象に電力を供給可能とした自動車における給電設備が開示されている。自動車の自身の走行駆動及び情報機器の動作のそれぞれが電力不足を伴うことなく確保できるようにし、更に蓄電手段及びソーラ電源等を利用することにより、電力不足の解消と電力の分配とが好適に行えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−123849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気自動車では、バッテリの残容量が0に近づくと、エンジン駆動車の燃料切れと同様に、走行不能となり、車載機器も作動しなくなって、バッテリが充電されない限り、何もできなくなるという問題がある。
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、何処でバッテリの残容量が0に近付いても、バッテリへ応急的に充電することが可能な携帯用蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係る携帯用蓄電装置は、走行用モータと、該走行用モータに給電する二次電池と、該二次電池に外部電源から充電する為の充電回路とを備えた車両の該充電回路に接続され、前記二次電池に充電する為の携帯用蓄電装置であって、外部電源からの電力を蓄電する為の蓄電器と、該外部電源に接続する為の接続回路と、該接続回路が接続した外部電源からの電力を前記蓄電器に充電する為の第2充電回路と、該蓄電器からの電力を逆変換する逆変換回路と、前記充電回路に接続する為の第2接続回路とを備え、前記逆変換回路が逆変換した電力を、前記第2接続回路及び充電回路を通じて前記二次電池に充電するように構成してあることを特徴とする。
【0007】
この携帯用蓄電装置では、二次電池が走行用モータに給電し、充電回路が二次電池に外部電源から充電する車両のその充電回路に接続され、二次電池に充電する。蓄電器が、外部電源からの電力を蓄電し、接続回路が、外部電源に接続し、第2充電回路が、接続回路が接続した外部電源からの電力を蓄電器に充電する。逆変換回路が、蓄電器からの電力を逆変換し、第2接続回路が、充電回路に接続し、逆変換回路が逆変換した電力を、第2接続回路及び充電回路を通じて二次電池に充電する。
【0008】
第2発明に係る携帯用蓄電装置は、前記第2充電回路は、前記接続回路が接続した外部電源からの電力を順変換する順変換回路と、該順変換回路が順変換した電力の電流を制限する限流抵抗とを備えることを特徴とする。
【0009】
この携帯用蓄電装置では、第2充電回路は、順変換回路が、接続回路が接続した外部電源からの電力を順変換し、限流抵抗が、順変換回路が順変換した電力の電流を制限する。
【0010】
第3発明に係る携帯用蓄電装置は、前記蓄電器及び逆変換回路間に接続されたスイッチを更に備え、該スイッチは外部から操作されるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
この携帯用蓄電装置では、蓄電器及び逆変換回路間に接続されたスイッチが、外部から操作され、逆変換回路をオン又はオフにする。
【0012】
第4発明に係る携帯用蓄電装置は、前記第2充電回路の入力電圧値を検出する入力電圧検出器と、前記逆変換回路の出力電圧値を検出する出力電圧検出器と、前記入力電圧検出器及び出力電圧検出器がそれぞれ検出した電圧値に基づき、被充電中又は充電中であることを表示する表示部とを更に備えることを特徴とする。
【0013】
この携帯用蓄電装置では、入力電圧検出器が、第2充電回路の入力電圧値を検出し、出力電圧検出器が、逆変換回路の出力電圧値を検出する。表示部は、入力電圧検出器及び出力電圧検出器がそれぞれ検出した電圧値に基づき、被充電中又は充電中であることを表示する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る携帯用蓄電装置によれば、何処でバッテリの残容量が0に近づいても、バッテリへ応急的に充電することが可能な携帯用蓄電装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る携帯用蓄電装置の実施の形態の要部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る携帯用蓄電装置の被充電時の接続状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき説明する。
図1は、本発明に係る携帯用蓄電装置の実施の形態の要部構成を示すブロック図である。
この携帯用蓄電装置1は、被充電時には、図示しない商用電源(100V又は200VAC、外部電源)に接続された差込プラグ(接続回路)2及び電気コード9を通じて入力された電力が、整流回路(順変換回路)3で整流され、限流抵抗R2を通じてバッテリ(蓄電器)4に充電される。バッテリ4は、ニッケル水素電池又はリチウムイオン二次電池等で構成されている。
【0017】
バッテリ4に蓄電されている電力は、充電時には、スイッチ5を通じて、インバータ(逆変換回路)6に与えられて交流電力(100V又は200V)に変換された後、電気コード7を通じて出力される。電気コード7の先端部はコネクタ(第2接続回路)8aが設けられており、充電時には、車両の外壁に設けられたコネクタ8bに接合される。
【0018】
スイッチ5は、携帯用蓄電装置1の筺体に設けられた図示しない操作ボタンが操作されることにより、オン又はオフに設定される。
整流回路3への入力電圧及びインバータ6の出力電圧がそれぞれ制御部31へ与えられる。制御部31は、マイクロコンピュータを内蔵しており、与えられたこれらの電圧を自身の電源電圧に変換すると共に、これらの電圧値を、内蔵する電圧検出器31a,31bで検出する。
制御部31は、電圧検出器(入力電圧検出器)31aで検出した整流回路3への入力電圧値が所定電圧値より高いときは、表示部32に被充電中であることを表示させる。制御部31は、電圧検出器(出力電圧検出器)31bで検出したインバータ6の出力電圧値が所定電圧値より高いときは、表示部32に充電中であることを表示させる。
【0019】
電気コード7のコネクタ8aが接合すべきコネクタ8bが設けられた車両側では、コネクタ8bを通じて与えられた交流電力が、昇圧回路10で昇圧された後、整流回路11で整流され、限流抵抗R1を通じて走行用バッテリ(二次電池)12に充電される。
走行用バッテリ12に蓄電されている電力は、駆動回路13に与えられ、駆動回路13は、与えられた電力により走行用モータ14を駆動させる。
【0020】
また、走行用バッテリ12に蓄電されている電力は、DCDCコンバータ16により降圧されて補機バッテリ15に充電される。補機バッテリ15に蓄電されている電力は、電力線21により、アクセサリスイッチ22を通じて、車両に搭載された負荷26〜28に与えられる。また、補機バッテリ15に蓄電されている電力は、電力線21により、直接、負荷26〜28のECU(Electronic Control Unit)23〜25及び電源制御回路17に与えられている。
電源制御回路17及びECU23〜25は、信号線20により相互接続されている。
【0021】
電源制御回路17は、補機バッテリ15の出力電圧値を、内蔵する電圧検出器19で検出すると共に、その電圧を降圧して電源電圧として使用する。電源制御回路17は、また、走行用バッテリ12の出力電圧値を、内蔵する電圧検出器18で検出する。
電源制御回路17は、検出した補機バッテリ15及び走行用バッテリ12の各出力電圧値に基づき、DCDCコンバータ16を駆動制御する。電源制御回路17は、検出した走行用バッテリ12の出力電圧値が所定電圧値より低くなると、走行用バッテリ12の残容量が僅かであることを、表示部33に表示させる。
【0022】
図2は、本発明に係る携帯用蓄電装置の被充電時の接続状態を示す説明図である。
この携帯用蓄電装置1は、被充電時には、差込プラグ2が、家屋等に設けられた商用電源30のコンセント29に差込まれ、差込プラグ2及び電気コード9を通じて、商用電源30からの電力が与えられる。与えられた電力は、整流回路3で整流され、限流抵抗R2を通じてバッテリ4に充電される。
尚、整流回路3を携帯用蓄電装置1と別体にして、整流回路3が整流した電力を携帯用蓄電装置1が受けるようにすることも可能である。
【0023】
このような構成の携帯用蓄電装置1では、予め、家屋内に設けられた商用電源30のコンセント29に、差込プラグ2を差込んでバッテリ4に充電しておく。コンセント29に差込プラグ2が差込まれると、整流回路3が商用電源30からの電力を整流し、限流抵抗R2を通じて、バッテリ4へ充電し始める。この際、スイッチ5は、操作ボタンによりオフにされている。
【0024】
一方、整流回路3への入力電圧が制御部31へ与えられ、制御部31は、この電圧を自身の電源電圧に変換(降圧、整流)すると共に、この電圧値を、電圧検出器31aで検出する。制御部31は、電圧検出器31aで検出した入力電圧値が所定電圧値より高いときは、表示部32に被充電中であることを表示させる。被充電中であることは、コンセント29に差込プラグ2が差込まれている間表示される。
バッテリ4は、商用電源30のピーク電圧値付近まで充電されると、それ以上は充電されない。
【0025】
車両側の走行用バッテリ12の残容量が少なくなると、その出力電圧値が低下し始める。電源制御部17の電圧検出器18が検出した走行用バッテリ12の出力電圧値が所定電圧値より低くなると、電源制御部17は、表示部33に走行用バッテリ12の残容量が僅かであることを表示させる。
ユーザは、この表示を見て、携帯用蓄電装置1により走行用バッテリ12への充電を行う。
【0026】
電気コード7のコネクタ8aが、車両側のコネクタ8bに接合され、操作ボタンによりスイッチ5がオンにされると、インバータ6にバッテリ4からの電力が与えられる。インバータ6は、作動し始めて、直流電力を交流電力に変換して車両側の昇圧回路10に与える。
車両側の昇圧回路10は与えられた交流電力を昇圧し、昇圧された交流電力は、整流回路11で整流され、限流抵抗R1を通じて走行用バッテリ12に充電される。
【0027】
一方、携帯用蓄電装置1側では、インバータ6が直流電力を交流電力に変換し始めると、変換した交流電圧が制御部31へ与えられる。制御部31は、この交流電圧を自身の電源電圧に変換(降圧、整流)すると共に、この交流電圧値を、電圧検出器31aで検出する。制御部31は、電圧検出器31aで検出した交流電圧値が所定電圧値より高いときは、表示部32に充電中であることを表示させる。
【0028】
また、車両側では、電源制御部17が、電圧検出器18で検出した走行用バッテリ12の出力電圧値を監視しており、出力電圧値が所定電圧値より高くなると、表示部33での走行用バッテリ12の残容量僅かの表示を停止させる。
ユーザは、この表示の停止を見て、携帯用蓄電装置1による走行用バッテリ12への充電を停止する為の目安とする。
尚、携帯用蓄電装置1の筺体に、インバータ6からの交流電圧を出力するコンセントを設けておけば、家庭用のコンセントと同様に使用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 携帯用蓄電装置
2 差込プラグ(接続回路)
3 整流回路(第2充電回路、順変換回路)
4 バッテリ(蓄電器)
5 スイッチ
6 インバータ(逆変換回路)
7,9 電気コード
8a コネクタ(第2接続回路)
8b コネクタ
10昇圧回路(充電回路)
11 整流回路(充電回路)
12 走行用バッテリ(二次電池)
14 走行用モータ
17 電源制御回路
18,19 電圧検出器
29 コンセント
30 商用電源(外部電源)
31 制御部
31,32 表示部
31a 電圧検出器(入力電圧検出器)
31b 電圧検出器(出力電圧検出器)
R1,R2 限流抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用モータと、該走行用モータに給電する二次電池と、該二次電池に外部電源から充電する為の充電回路とを備えた車両の該充電回路に接続され、前記二次電池に充電する為の携帯用蓄電装置であって、
外部電源からの電力を蓄電する為の蓄電器と、該外部電源に接続する為の接続回路と、該接続回路が接続した外部電源からの電力を前記蓄電器に充電する為の第2充電回路と、該蓄電器からの電力を逆変換する逆変換回路と、前記充電回路に接続する為の第2接続回路とを備え、前記逆変換回路が逆変換した電力を、前記第2接続回路及び充電回路を通じて前記二次電池に充電するように構成してあることを特徴とする携帯用蓄電装置。
【請求項2】
前記第2充電回路は、前記接続回路が接続した外部電源からの電力を順変換する順変換回路と、該順変換回路が順変換した電力の電流を制限する限流抵抗とを備える請求項1記載の携帯用蓄電装置。
【請求項3】
前記蓄電器及び逆変換回路間に接続されたスイッチを更に備え、該スイッチは外部から操作されるように構成されている請求項1又は2記載の携帯用蓄電装置。
【請求項4】
前記第2充電回路の入力電圧値を検出する入力電圧検出器と、前記逆変換回路の出力電圧値を検出する出力電圧検出器と、前記入力電圧検出器及び出力電圧検出器がそれぞれ検出した電圧値に基づき、被充電中又は充電中であることを表示する表示部とを更に備える請求項1乃至3の何れか1項に記載の携帯用蓄電装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−244653(P2011−244653A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116476(P2010−116476)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】