説明

携帯端末着信制御システム、携帯端末、及び制御装置

【課題】運転者の携帯端末のみを選択的かつ自動的に着信制限することができるシステムを提供すること。
【解決手段】無線基地局と無線通信可能な第1無線通信部7と、自動車2の運転状況を監視する制御装置3と無線通信可能な第2無線通信部11と、制御装置3からの情報に応じて、着信を音又は光若しくは振動で所有者に知らせる着信設定と、着信があっても所有者に知らせない着信制限設定との間を自動的に変更する処理部4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末の着信を制御する携帯端末着信制御システム、携帯端末、及び制御装置に関し、特に、自動車運転中の携帯端末の着信を制御する携帯端末着信制御システム、携帯端末、及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の携帯端末の着信を知らせる音、光、振動は、自動車運転中の運転手にとって、運転への集中を乱す一要因となり危険な側面を持つ。そのため、従来の携帯端末では、着信があっても音、声、または振動を発せず、電話をかけてきた相手には、携帯端末の所有者が運転中であるため用件を残すように促すメッセージを流し、かつ、用件を記録する着信制限機能を持つものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−317809号公報
【特許文献2】特開平11−168549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような着信制限機能は、携帯端末の所有者が自動車を運転する前に、予め着信制限機能を有効にするために入力装置(操作部)を使って設定しなければならない。また、携帯電話機の所有者が運転を終えた後に着信制限機能の設定を入力装置を使って解除しなければならず、解除し忘れて自動車を運転していないときに大事な着信を逃す可能性がある。なお、このような着信制限機能の設定、及びその解除を自動的に行うものがあるが(例えば、特許文献1、2参照)、運転者の携帯端末だけでなく、助手席に座る所有者の携帯端末も着信制限され、不都合を生ずるおそれがある。
【0005】
本発明の主な課題は、運転者の携帯端末のみを選択的かつ自動的に着信制限することができる携帯端末着信制御システム、携帯端末、及び制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の視点においては、携帯端末において、無線基地局と無線通信可能な第1無線通信部と、自動車の運転状況を監視する制御装置と無線通信可能な第2無線通信部と、前記制御装置からの情報に応じて、着信を音又は光若しくは振動で所有者に知らせる着信設定と、着信があっても所有者に知らせない着信制限設定との間を自動的に変更する処理部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の前記携帯端末において、識別情報を記憶する記憶部を備え、前記処理部は、前記制御装置から運転中であることを知らせる運転中情報を受信することにより、前記運転中情報に含まれる識別情報と、前記記憶部に記憶された前記識別情報とを比較することにより、一致しているときに前記着信設定から前記着信制限設定へ自動的に変更することが好ましい。
【0008】
本発明の前記携帯端末において、所定の情報を記憶する他の記憶部を備え、前記処理部は、前記着信制限設定になっている時に、電話をかけてきた相手に対して、前記携帯端末の所有者が電話に出られない状態であることを通知するとともに、用件があれば録音することができることを通知し、前記他の記憶部は、前記録音の履歴を記憶することが好ましい。
【0009】
本発明の前記携帯端末において、前記処理部は、時間を計測するタイマを備え、前記処理部は、前記制御装置から運転を一時的に停止したことを知らせる運転一時停止情報を受信することにより前記タイマの動作を開始し、前記タイマの動作を開始してから所定時間内に前記制御装置から前記運転中情報をしないときに前記着信制限設定から前記着信設定へ自動的に変更することが好ましい。
【0010】
本発明の前記携帯端末において、前記処理部は、前記制御装置から運転を終了したことを知らせる運転終了情報を受信することにより前記着信制限設定から前記着信設定へ自動的に変更することが好ましい。
【0011】
本発明の前記携帯端末において、前記処理部は、前記着信制限設定から前記着信設定へ自動的に変更した後に、前記着信制限設定のときに着信を受信していたことを音又は光若しくは振動で報知するように処理することが好ましい。
【0012】
本発明の前記携帯端末において、前記処理部は、前記着信制限設定にしているときに着信があったときに、前記制御装置に対して着信があったことを知らせる着信情報を送信するように処理することが好ましい。
【0013】
本発明の第2の視点においては、制御装置において、自動車のエンジンの始動・停止を検出するエンジン始動停止センサと、携帯端末と無線通信可能な無線通信部と、少なくとも前記エンジン始動停止センサからの情報に応じて、前記携帯端末に対して着信があっても所有者に知らせない着信制限設定を制御するための情報を送信するように制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の前記携帯端末において、識別情報を記憶する記憶部を備え、前記制御部は、前記携帯端末に対して情報を送信する際に、当該情報に前記識別情報を含めて送信するように制御することが好ましい。
【0015】
本発明の前記携帯端末において、前記自動車のハンドルにかかる圧力を検出するハンドル圧力センサを備え、前記制御部は、前記ハンドル圧力センサからの情報を含む情報に応じて、前記携帯端末に対して前記着信制限設定を制御するための情報を送信するように制御することが好ましい。
【0016】
本発明の前記携帯端末において、前記制御部は、前記エンジンが始動した後、前記ハンドルに圧力がかかったときに、前記携帯端末に対して運転中であることを知らせる運転中情報を送信するように制御することが好ましい。
【0017】
本発明の前記携帯端末において、前記制御部は、前記運転中情報を送信した後、前記ハンドルの圧力がなくなったときに、前記携帯端末に対して運転を一時的に停止したことを知らせる運転一時停止情報を送信するように制御することが好ましい。
【0018】
本発明の前記携帯端末において、前記自動車のサイドブレーキが設定されているか解除されているかを検出するサイドブレーキセンサを備え、前記制御部は、前記サイドブレーキセンサからの情報を含む情報に応じて、前記携帯端末に対して前記着信制限設定を制御するための情報を送信するように制御することが好ましい。
【0019】
本発明の前記携帯端末において、前記制御部は、前記エンジンが始動した後、少なくとも前記サイドブレーキが解除されたときに、前記携帯端末に対して運転中であることを知らせる運転中情報を送信するように制御することが好ましい。
【0020】
本発明の前記携帯端末において、前記制御部は、前記運転中情報を送信した後、少なくとも前記サイドブレーキが設定されたときに、前記携帯端末に対して運転を一時的に停止したことを知らせる運転一時停止情報を送信するように制御することが好ましい。
【0021】
本発明の前記携帯端末において、前記制御部は、前記エンジンが停止したときに、前記携帯端末に対して運転が終了したことを知らせる運転終了情報を送信するように制御することが好ましい。
【0022】
本発明の前記携帯端末において、前記制御部は、前記携帯端末から着信があったことを知らせる着信情報を受信すると、着信に係る表示を要求する着信表示要求情報を前記自動車の表示部に対して送信するように制御することが好ましい。
【0023】
本発明の第3の視点においては、自動車の運転状況を監視する制御装置と、前記制御装置によって着信が制御される携帯端末と、を備えた携帯端末着信制御システムであって、前記携帯端末は、無線基地局と無線通信可能な第1無線通信部と、前記制御装置と無線通信可能な第2無線通信部と、前記制御装置からの情報に応じて、着信を音又は光若しくは振動で所有者に知らせる着信設定と、着信があっても所有者に知らせない着信制限設定との間を自動的に変更する処理部と、を備え、前記制御装置は、前記自動車のエンジンの始動・停止を検出するエンジン始動停止センサと、前記携帯端末と無線通信可能な無線通信部と、少なくとも前記エンジン始動停止センサからの情報に応じて、前記携帯端末に対して前記着信制限設定を制御するための情報を送信するように制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、着信設定と着信制限設定とを自動的に変更することができる。また、携帯端末と制御装置との間は、無線通信で情報交換を行うため、煩わしいケーブル接続が不要である。さらに、制御装置から送信される情報に識別情報を含ませることで、同じ機能を持つ助手席に座る所有者の携帯端末には、制御装置から送信される情報は無効であり、助手席に座る所有者の携帯端末が誤作動することがない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1に係る携帯端末着信制御システムの構成を模式的に示したブロック図である。
【図2】本発明の実施例1に係る携帯端末着信制御システムの動作の一例を模式的に示したフローチャート図である。
【図3】本発明の実施例2に係る携帯端末着信制御システムの構成を模式的に示したブロック図である。
【図4】本発明の実施例3に係る携帯端末着信制御システムの構成を模式的に示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態1に係る携帯端末着信制御システムでは、無線基地局と無線通信可能な第1無線通信部(図1の7)と、自動車(図1の2)の運転状況を監視する制御装置(図1の3)と無線通信可能な第2無線通信部(図1の11)と、前記制御装置からの情報に応じて、着信を音又は光若しくは振動で所有者に知らせる着信設定と、着信があっても所有者に知らせない着信制限設定との間を自動的に変更する処理部(図1の4)と、を備える。
【0027】
本発明の実施形態2に係る制御装置では、自動車(図1の2)のエンジン(図1の23)の始動・停止を検出するエンジン始動停止センサ(図1の24)と、携帯端末(図1の1)と無線通信可能な無線通信部(図1の27)と、少なくとも前記エンジン始動停止センサからの情報に応じて、前記携帯端末に対して着信があっても所有者に知らせない着信制限設定を制御するための情報を送信するように制御する制御部(図1の31)と、を備える。
【0028】
本発明の実施形態3に係る携帯端末着信制御システムでは、自動車(図1の2)の運転状況を監視する制御装置(図1の3)と、前記制御装置によって着信が制御される携帯端末(図1の1)と、を備え、前記携帯端末は、無線基地局と無線通信可能な第1無線通信部(図1の7)と、前記制御装置と無線通信可能な第2無線通信部(図1の11)と、前記制御装置からの情報に応じて、着信を音又は光若しくは振動で所有者に知らせる着信設定と、着信があっても所有者に知らせない着信制限設定との間を自動的に変更する処理部(図1の4)と、を備え、前記制御装置は、前記自動車のエンジン(図1の23)の始動・停止を検出するエンジン始動停止センサ(図1の24)と、前記携帯端末と無線通信可能な無線通信部(図1の27)と、少なくとも前記エンジン始動停止センサからの情報に応じて、前記携帯端末に対して前記着信制限設定を制御するための情報を送信するように制御する制御部(図1の31)と、を備えることを特徴とする。
【0029】
なお、本出願において図面参照符号を付している場合は、それらは、専ら理解を助けるためのものであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。
【実施例1】
【0030】
本発明の実施例1に係る携帯端末着信制御システムについて図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る携帯端末着信制御システムの構成を模式的に示したブロック図である。
【0031】
携帯端末着信制御システムは、自動車2を運転する際に当該自動車2の所有者の携帯端末1の着信を制御するシステムである。携帯端末着信制御システムは、携帯端末1と、自動車2の搭載される携帯端末制御装置3と、を有する。
【0032】
携帯端末1は、通信機能(電話機能、データ送受信機能)を有する携帯可能な端末であり、例えば、携帯電話機、携帯情報端末を用いることができる。携帯端末1は、着信を音や光、振動で所有者に知らせる機能を有する。携帯端末1は、近距離無線通信機能によって、自動車2の携帯端末制御装置3と送受信ができる。携帯端末1は、メインプロセッサ4と、タイマ5と、ベースバンド部6と、無線部7と、アンテナ8と、揮発性メモリ9と、不揮発性メモリ10と、近距離無線通信部11と、アンテナ12と、メイン表示部13と、サブ表示部14と、入力装置15と、スピーカ16と、レシーバ17と、マイク18と、オーディオ制御部19と、バイブレータ20と、電源21と、電源制御部22と、を有する。
【0033】
メインプロセッサ4は、プログラムに基づいて携帯端末1内部の各機能ブロックを制御する。メインプロセッサ4は、時間を計測するタイマ5を搭載している。
【0034】
ベースバンド部6は、信号の変復調を行う。ベースバンド部6は、メインプロセッサ4、無線部7、及び揮発性メモリ9と電気的に接続されている。
【0035】
無線部7は、アンテナ8を介して基地局(図示せず)と電波を通じて送信、受信を行う。無線部7は、ベースバンド部6と電気的に接続されている。
【0036】
揮発性メモリ9は、一時的にプログラムやデータを記憶するためのメモリである。揮発性メモリ9は、電源を切ると記憶情報が失われてしまう。揮発性メモリ9は、メインプロセッサ4及びベースバンド部6と電気的に接続されている。
【0037】
不揮発性メモリ10は、電源を切っても記憶情報は保持されるメモリである。不揮発性メモリ10は、プログラムや不揮発データを記憶する。不揮発性メモリ10には、携帯端末1の所有者情報(識別情報)も記憶されている。不揮発性メモリ10は、メインプロセッサ4と電気的に接続されている。
【0038】
近距離無線通信部11は、同じ規格の通信方式を有する携帯端末制御装置3内の近距離無線通信部27と通信を行うための装置である。近距離無線通信部11は、専用のアンテナ12を経由してデータの送信、受信を行う。近距離無線通信部11は、メインプロセッサ4と電気的に接続されている。
【0039】
メイン表示部13は、大容量の文字や静止画、動画を表示する装置である。メイン表示部13は、メインプロセッサ4と電気的に接続されている。
【0040】
サブ表示部14は、小容量の文字や静止画、動画を表示する装置である。サブ表示部14には、点灯、点滅するLEDも含めることができる。サブ表示部14は、メインプロセッサ4と電気的に接続されている。なお、サブ表示部14は、携帯端末1にとって必須の装置ではなく、なくてもよい。
【0041】
入力装置15は、例えば、ボタンやキーパッド、タッチパネルによって、携帯端末1に所有者からの命令、操作を入力する装置である。入力装置15は、メインプロセッサ4と電気的に接続されている。
【0042】
スピーカ16は、着信通知音や音楽を鳴らすための装置である。スピーカ16は、オーディオ制御部19と電気的に接続されている。
【0043】
レシーバ17は、音声を出力する装置である。レシーバ17は、オーディオ制御部19と電気的に接続されている。
【0044】
マイク18は、音声を入力する装置である。マイク18は、オーディオ制御部19と電気的に接続されている。
【0045】
オーディオ制御部19は、スピーカ16、レシーバ17、及びマイク18を用いて入出力するアナログ情報をデジタル情報に変換してメインプロセッサ4と入出力する装置である。
【0046】
バイブレータ20は、着信を携帯電話機の振動で所有者に知らせるための装置である。バイブレータ20は、メインプロセッサ4と電気的に接続されている。
【0047】
電源21は、バッテリやACアダプタの電力を出力する装置である。電源21は、電源制御部22に電気的に接続されている。
【0048】
電源制御部22は、電源21を介して得られる電力を安定した状態で携帯端末1の各機能ブロックに供給する装置である。
【0049】
携帯端末制御装置3は、自動車2の運転者の運転状況に応じて携帯端末1の着信を制御する装置である。携帯端末制御装置3は、自動車2の運転状況を監視する。携帯端末制御装置3は、自動車2に着脱自在に搭載することができる。携帯端末制御装置3は、センサ(例えば、エンジン始動停止センサ24、ハンドル圧力センサ26)によって自動車2の所有者が運転中であるか否かを判断でき、その情報を近距離無線通信機能によって携帯端末1と送受信ができる。携帯端末制御装置3は、予め自動車2に搭載し、電力を自動車2の電源部(図示せず)から供給されている。携帯端末制御装置3は、エンジン始動停止センサ24と、ハンドル圧力センサ26と、近距離無線通信部27と、アンテナ28と、揮発性メモリ29と、不揮発性メモリ30と、制御部31と、を有する。
【0050】
エンジン始動停止センサ24は、自動車2のエンジン23の始動・停止を認識するためのセンサであり、自動車2が運転中であるか否かを判別するためのものである。エンジン始動停止センサ24は、制御部31と電気的に接続されている。
【0051】
ハンドル圧力センサ26は、運転手がハンドル25を握っているか否かを確認するためのセンサであり、自動車2が運転中であるか否かを判別するためのものである。ハンドル圧力センサ26は、制御部31と電気的に接続されている。
【0052】
近距離無線通信部27は、同じ規格の通信方式を有する携帯端末1内の近距離無線通信部11と通信を行うための装置である。近距離無線通信部27は、専用のアンテナ28を経由してデータの送信、受信を行う。近距離無線通信部27は、制御部31と電気的に接続されている。
【0053】
揮発性メモリ29は、一時的に情報を保持するためのメモリである。揮発性メモリ29は、電源を切ると記憶情報が失われてしまう。揮発性メモリ29は、制御部31と電気的に接続されている。
【0054】
不揮発性メモリ30は、電源を切っても記憶情報は保持されるメモリである。不揮発性メモリ30は、プログラムや不揮発データを記憶する。不揮発性メモリ30には、自動車2の所有者情報(識別情報;不揮発性メモリ10で記憶された所有者情報と同じもの)も記憶されている。不揮発性メモリ30は、制御部31と電気的に接続されている。
【0055】
制御部31は、プログラムに基づいて携帯端末制御装置3内部の各機能ブロックを制御する。制御部31は、エンジン停止始動センサ24及びハンドル圧力センサ26が出力する自動車2の状態を示すデータを解読し、近距離無線通信部27及びアンテナ28から携帯端末1に自動車2の状態をデータとして送信するように制御する。
【0056】
以上、詳細に実施例1の構成を述べたが、図1の自動車2は、当業者にとってよく知られており、また本発明とは直接関係しないので、その詳細な構成は省略する。
【0057】
次に、本発明の実施例1に係る携帯端末着信制御システムの動作について図面を用いて説明する。図2は、本発明の実施例1に係る携帯端末着信制御システムの動作の一例を模式的に示したフローチャート図である。
【0058】
前提として、携帯端末1、携帯端末制御装置3に内蔵されている不揮発性メモリ10、30には、携帯端末1の所有者と自動車2の所有者が同一人物であることを識別するための所有者情報が予めそれぞれに記憶されているものとする。なお、携帯端末1及び携帯端末制御装置3の詳細な構成部については、図1を参照されたい。
【0059】
まず、携帯端末制御装置3は、エンジン23が始動したか否かを判断する(ステップA1)。ここで、エンジン23が始動したか否かは、エンジン始動停止センサ24によって検出されるか否かによって判断される。エンジン23が始動すると、エンジン始動停止センサ24から制御部31にエンジン始動情報が送られ、制御部31がエンジン始動情報を揮発性メモリ29に保持させる。なお、エンジン始動情報は、エンジンが始動していることを知らせるための情報である。エンジン23が始動していない場合(ステップA1のNO)、ステップA1に戻る。
【0060】
エンジン23が始動した場合(ステップA1のYES)、携帯端末制御装置3は、自動車2の運転者(所有者)がハンドル25を握ったか否かを判断する(ステップA2)。ここで、ハンドル25を握ったか否かは、ハンドル圧力センサ26によって圧力が検出されるか否かによって判断され、ハンドル25が握られると、ハンドル圧力センサ26から制御部31にハンドル握り情報が送られ、制御部31は、揮発性メモリ29に保持しているエンジン始動情報と、ハンドル握り情報と、に基づいて、所有者が自動車2を運転中であると判断することになる。なお、ハンドル握り情報は、ハンドルが握られていることを知らせるための情報である。ハンドル25を握っていない場合(ステップA2のNO)、ステップA2に戻る。
【0061】
ハンドル25を握っている場合(ステップA2のYES)、携帯端末制御装置3は、携帯端末1に対して運転中であることを知らせる運転中情報を送信する(ステップA3)。ステップA3では、制御部31は、近距離無線通信部27のアンテナ28から運転中情報を送信する。なお、運転中情報には、不揮発性メモリ30に記憶されている所有者情報が含まれている。
【0062】
ステップA3の後、携帯端末1は、携帯端末制御装置3からの運転中情報(所有者情報を含む)を受信すると、運転中情報における所有者情報と、携帯端末1自身が記憶している所有者情報とが一致するか否かを判断する(ステップA4)。ステップA4では、携帯端末1におけるメインプロセッサ4は、携帯端末制御装置3から送信された運転中情報を受信すると、その運転中情報に含まれる所有者情報が携帯端末1の不揮発性メモリ10に記憶された所有者情報と一致するか否かを判断する。所有者情報が一致しない場合(ステップA4のNO)、最初に戻り、携帯端末1は、携帯端末制御装置3からの運転中情報を待ち受ける状態となる。
【0063】
所有者情報が一致した場合(ステップA4のYES)、携帯端末1は、自動車2の運転中と認識し、着信を知らせる着信設定から着信(音や光、振動)を知らせない着信制限設定へ自動的に変更する(ステップA5)。ステップA5では、携帯端末1におけるメインプロセッサ4が、着信設定から着信制限設定へ自動的に変更する。なお、携帯端末1が通話中の場合、携帯端末1は、通話を強制的に切断するとともに、通話相手に対して携帯端末1の所有者が自動車2の運転中のため電話対応できないこと、用件は録音可能であることを予め録音されたメッセージで伝える。
【0064】
ステップA5の後、携帯端末1は、着信制限設定に基づいて動作する(ステップA6)。例えば、着信制限設定状態の時に着信があったとき、携帯端末1は、電話をかけてきた相手に対して、携帯端末1所有者が自動車2の運転中のため電話対応できないこと、用件は録音可能であることを予め録音されたメッセージで伝える。このとき、携帯端末1は、用件のあるなしに関わらず、着信があったことを不揮発性メモリ10に記憶し、かつ、用件の吹込みがある場合は、不揮発性メモリ10に用件を記憶する。なお、着信がメールのようなデータの場合は、着信があっても音や光、振動で知らせない以外は、着信を音や光、振動で知らせる設定時と同じである。
【0065】
ステップA3の後、携帯端末制御装置3は、自動車2の所有者がハンドル25を離したか否かを判断する(ステップA7)。ステップA7では、自動車2の所有者が、エンジン始動中にハンドル25から手を離したとき、携帯端末制御装置3のハンドル圧力センサ26は、ハンドル25が圧力解除されたことを知らせる圧力解除情報を制御部31に出力する。ハンドル25を離していない場合(ステップA7のNO)、ステップA7に戻る。
【0066】
ハンドル25を離した場合(ステップA7のYES)、携帯端末制御装置3は、運転を一時的に停止したことを知らせる運転一時停止情報を携帯端末1に対して送信する(ステップA8)。ステップA8では、制御部31は、エンジン23は始動中(回転中)だがハンドル25が圧力解除の状態を運転一時停止状態と判断し、近距離無線通信部27のアンテナ28から運転一時停止情報を送信する。
【0067】
ステップA8の後、携帯端末1は、携帯端末制御装置3からの運転一時停止情報を受信すると、タイマ5の動作を開始する(ステップA9)。ステップA9では、携帯端末1のメインプロセッサ4が、携帯端末制御装置3から送信される運転一時停止情報を受信すると、タイマ5動作を開始する。
【0068】
ステップA9の後、携帯端末1は、タイマ5の動作を開始してから所定時間内(タイマ5の値が予め設定された値に到達する前)に、携帯端末制御装置3から運転中情報を受信したか否かを判断する(ステップA10)。なお、図2では記載されていないが、ステップA9とステップA10の間において、所定時間内に携帯端末制御装置3から運転中情報を受信した場合(ステップA10のYES)、ステップA6に戻り、着信制限設定を維持する。一方、所定時間内に携帯端末制御装置3から運転中情報を受信しなかった場合(ステップA10のNO)、ステップA13に進む。
【0069】
ステップ8の後、携帯端末制御装置3は、エンジン23が停止したか否かを判断する(ステップA11)。エンジン23が停止していない場合(ステップA11のNO)、ステップA11に戻る。
【0070】
エンジン23が停止している場合(ステップA11のYES)、携帯端末制御装置3は、自動車2の運転が終了したことを知らせる運転終了情報を携帯端末1に対して送信する(ステップA12)。ステップA12では、エンジン23の停止を検出したエンジン始動停止センサ24は、エンジン停止情報を制御部31に出力する。そして、制御部31は、ハンドル25に圧力が加わっているか否かに関わらず、エンジン停止情報を認識することにより、自動車2の運転が終了と判断し、近距離無線通信部27のアンテナ28から運転終了情報を送信することになる。
【0071】
所定時間内に携帯端末制御装置3から運転中情報を受信しなかった場合(ステップA10のNO)、又は、携帯端末制御装置3から送信(ステップA12)された運転終了情報を受信すると、携帯端末1は、着信制限設定から着信設定に自動的に変更すると同時に、タイマ値を初期化する(ステップA13)。
【0072】
ステップA13の後、携帯端末1は、着信制限設定状態(運転中)のときに着信を受信していたか否かを判断する(ステップA14)。着信制限設定状態のときに着信を受信していない場合(ステップA14のNO)、最初に戻り、携帯端末制御装置3からの運転中情報を待ち受ける状態となる。
【0073】
着信制限設定状態のときに着信を受信していた場合(ステップA14のYES)、携帯端末1は、音、光、振動で所有者に着信したことを報知し(ステップA15)、その後、最初に戻り、携帯端末制御装置3からの運転中情報を待ち受ける状態となる。
【0074】
なお、着信があっても直ぐに所有者に知らせず、電話をかけてきた相手には保留を促すメッセージと共に情報を保存する設定状態で自動車2に搭載した携帯端末1では、この動作は適用しない。
【0075】
実施例1によれば、着信設定と着信制限設定とを自動的に変更すると共に、着信の履歴も自動的に残すことができる。また、携帯端末1と携帯端末制御装置3との間は、無線通信で情報交換を行うため、煩わしいケーブル接続が不要である。さらに、携帯端末制御装置3から送信される運転中情報には、所有者情報も含まれていることから、同じ機能を持つ助手席に座る所有者の携帯端末には、携帯端末制御装置3から送信される運転中情報は無効であり、助手席に座る所有者の携帯端末が誤作動することがない。
【実施例2】
【0076】
本発明の実施例2に係る携帯端末着信制御システムについて図面を用いて説明する。図3は、本発明の実施例2に係る携帯端末着信制御システムの構成を模式的に示したブロック図である。
【0077】
実施例2は、実施例1の変形例であり、携帯端末制御装置3を自動車2における表示部32と電気的に接続したものである。表示部32は、自動車2の速度やエンジン回転数、燃料残量を表示するディスプレイに相当する。携帯端末1が運転中状態で着信した場合、携帯端末1は、着信があったことを知らせる着信情報を携帯端末制御装置3に対して送信する。携帯端末制御装置3は、携帯端末からの着信情報を受信すると、着信に係る表示を要求する着信表示要求情報を自動車2の表示部32に対して送信する。その他の構成、動作は、実施例1と同様である。
【0078】
実施例2によれば、実施例1と同様な効果を奏するとともに、自動車運転中の所有者は、自動車の表示部32を見ることは、自動車運転の妨げにならない行為であることから、安全に着信を確認することができる。
【実施例3】
【0079】
本発明の実施例3に係る携帯端末着信制御システムについて図面を用いて説明する。図4は、本発明の実施例3に係る携帯端末着信制御システムの構成を模式的に示したブロック図である。
【0080】
実施例3は、実施例1の変形例であり、自動車2が運転中であるか否かを判別する手段として、ハンドル(図1の25)及びハンドル圧力センサ(図1の26)を用いる代わりに、サイドブレーキ33及びサイドブレーキセンサ34を用いたものである。サイドブレーキセンサ34は、自動車2のサイドブレーキ33が設定されているか解除されているかを検出するセンサである。なお、図示していないが、ハンドル圧力センサ(図1の26)とサイドブレーキセンサ34の両方を使って運転中か否かを判別することもできる。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0081】
実施例3によれば、実施例1と同様な効果を奏するとともに、自動車2が運転中であるか否かを判別にサイドブレーキ33及びサイドブレーキセンサ34を用いることで、より安全性を向上させることができる。
【0082】
なお、本発明の全開示(請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲及び図面を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0083】
1 携帯端末
2 自動車
3 携帯端末制御装置
4 メインプロセッサ(処理部)
5 タイマ
6 ベースバンド部
7 無線部(第1無線通信部)
8 アンテナ
9 揮発性メモリ(記憶部)
10 不揮発性メモリ(他の記憶部)
11 近距離無線通信部(第2無線通信部)
12 アンテナ
13 メイン表示部
14 サブ表示部
15 入力装置
16 スピーカ
17 レシーバ
18 マイク
19 オーディオ制御部
20 バイブレータ
21 電源
22 電源制御部
23 エンジン
24 エンジン始動停止センサ
25 ハンドル
26 ハンドル圧力センサ
27 近距離無線通信部(無線通信部)
28 アンテナ
29 揮発性メモリ
30 不揮発性メモリ
31 制御部
32 表示部
33 サイドブレーキ
34 サイドブレーキセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線基地局と無線通信可能な第1無線通信部と、
自動車の運転状況を監視する制御装置と無線通信可能な第2無線通信部と、
前記制御装置からの情報に応じて、着信を音又は光若しくは振動で所有者に知らせる着信設定と、着信があっても所有者に知らせない着信制限設定との間を自動的に変更する処理部と、
を備えることを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
識別情報を記憶する記憶部を備え、
前記処理部は、前記制御装置から運転中であることを知らせる運転中情報を受信することにより、前記運転中情報に含まれる識別情報と、前記記憶部に記憶された前記識別情報とを比較することにより、一致しているときに前記着信設定から前記着信制限設定へ自動的に変更することを特徴とする請求項1記載の携帯端末。
【請求項3】
所定の情報を記憶する他の記憶部を備え、
前記処理部は、前記着信制限設定になっている時に、電話をかけてきた相手に対して、前記携帯端末の所有者が電話に出られない状態であることを通知するとともに、用件があれば録音することができることを通知し、
前記他の記憶部は、前記録音の履歴を記憶することを特徴とする請求項1又は2記載の携帯端末。
【請求項4】
前記処理部は、前記制御装置から運転を終了したことを知らせる運転終了情報を受信することにより前記着信制限設定から前記着信設定へ自動的に変更することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記処理部は、前記着信制限設定から前記着信設定へ自動的に変更した後に、前記着信制限設定のときに着信を受信していたことを音又は光若しくは振動で報知するように処理することを特徴とする請求項4記載の携帯端末。
【請求項6】
自動車のエンジンの始動・停止を検出するエンジン始動停止センサと、
携帯端末と無線通信可能な無線通信部と、
少なくとも前記エンジン始動停止センサからの情報に応じて、前記携帯端末に対して着信があっても所有者に知らせない着信制限設定を制御するための情報を送信するように制御する制御部と、
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項7】
識別情報を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記携帯端末に対して情報を送信する際に、当該情報に前記識別情報を含めて送信するように制御することを特徴とする請求項6記載の制御装置。
【請求項8】
前記自動車のハンドルにかかる圧力を検出するハンドル圧力センサを備え、
前記制御部は、前記ハンドル圧力センサからの情報を含む情報に応じて、前記携帯端末に対して前記着信制限設定を制御するための情報を送信するように制御することを特徴とする請求項6又は7記載の制御装置。
【請求項9】
前記自動車のサイドブレーキが設定されているか解除されているかを検出するサイドブレーキセンサを備え、
前記制御部は、前記サイドブレーキセンサからの情報を含む情報に応じて、前記携帯端末に対して前記着信制限設定を制御するための情報を送信するように制御することを特徴とする請求項6乃至9のいずれか一に記載の制御装置。
【請求項10】
自動車の運転状況を監視する制御装置と、前記制御装置によって着信が制御される携帯端末と、を備えた携帯端末着信制御システムであって、
前記携帯端末は、
無線基地局と無線通信可能な第1無線通信部と、
前記制御装置と無線通信可能な第2無線通信部と、
前記制御装置からの情報に応じて、着信を音又は光若しくは振動で所有者に知らせる着信設定と、着信があっても所有者に知らせない着信制限設定との間を自動的に変更する処理部と、
を備え、
前記制御装置は、
前記自動車のエンジンの始動・停止を検出するエンジン始動停止センサと、
前記携帯端末と無線通信可能な無線通信部と、
少なくとも前記エンジン始動停止センサからの情報に応じて、前記携帯端末に対して前記着信制限設定を制御するための情報を送信するように制御する制御部と、
を備えることを特徴とする携帯端末着信制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−119812(P2012−119812A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266017(P2010−266017)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】