説明

携帯端末装置およびその製造方法

【課題】新たに衝撃吸収材などを設置することなく、落下の衝撃からLCDモジュールを防護することにある。
【解決手段】第一のケース(可動フロントケース26)と第二のケース(可動リアケース28)とを係合して筐体(6)を構成する。第一のケースと第二のケースとの係合部分を止水するとともに、LCDモジュールに対する衝撃を吸収する緩衝部材(ガスケット30)を、第一のケース(可動フロントケース26)または第二のケース(可動リアケース28)とLCDモジュール(10)との間に配置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LCD(Liquid Crystal Display)モジュールを備える携帯電話機などの携帯端末装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などの携帯端末装置では、画像などを表示するLCDモジュールが搭載されている。このLCDモジュールは樹脂ケース内に位置決めされ、樹脂ケースで覆う保持構造が取られている。
【0003】
下記特許文献1には、LCDモジュールの周囲をケース部材で包囲し、このケース部材内にパッキン(ガスケット)を設置することが記載されている(特許文献1の図7)。開示された構造ではパッキンとLCDモジュールとの間にケース部材が介挿されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−130582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の携帯電話機について図22を参照する。図22はLCDモジュールを搭載した筐体を示している。この携帯電話機200では、図22に示すように、筐体202の上面にタッチパネル204が搭載されている。筐体202は、図23に示すように、フロントケース206とリアケース208とで構成され、タッチパネル204はフロントケース206にインサート成形された金属枠210に固定されている。このタッチパネル204の背面側に設置されたLCDモジュール212は薄い金属板で形成されたホルダに合体している。ホルダはLCDモジュール212を固定するための部材であり、このホルダがリアケース208に貫通させた固定ねじによりフロントケース206に固定されている。つまり、LCDモジュール212はホルダを介してフロントケース206およびリアケース208に固定されており、LCDモジュール212の側面がフロントケース206で包囲されている。
【0006】
フロントケース206とリアケース208との間は、図24に示すように、両者の接合部に跨がって設置されたガスケット214で止水されている。このガスケット214はフロントケース206に形成されたガスケット収納部216に収納され、ガスケット214の突出部分をリアケース208の上面に当て、圧潰させている。このため、LCDモジュール212の側面には、ガスケット収納部216の外壁つまり、フロントケース206の内壁面が対向している。
【0007】
このような携帯電話機200を落下させると、落下の衝撃がフロントケース206からLCDモジュール212の側面に加わる。LCDモジュール212に加わった衝撃が液晶ガラスの許容限度を超えると、液晶ガラスが破損するおそれがある。
【0008】
このような落下などの衝撃からLCDモジュールを防護するには、衝撃吸収のための部材を設置すればよいが、斯かる部材を設置すれば、装置ケースや装置の小型化が妨げられる。
【0009】
そこで、本開示の携帯端末装置およびその製造方法の目的は、上記課題に鑑み、新たに衝撃吸収材などを設置することなく、落下の衝撃からLCDモジュールを防護することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本開示の携帯端末装置およびその製造方法は、第一のケースと第二のケースとを係合して筐体を構成する。第一のケースと第二のケースとの係合部分を止水するとともに、LCDモジュールに対する衝撃を吸収する緩衝部材を、第一のケースまたは第二のケースとLCDモジュールとの間に配置している。
【発明の効果】
【0011】
本開示の携帯端末装置またはその製造方法によれば次のいずれかの効果が得られる。
【0012】
(1) 第一および第二のケースの間を止水するとともに、衝撃を吸収する緩衝部材をケースとLCDモジュールとの間に配置し、LCDモジュールの側面に加わる衝撃を吸収でき、落下などの衝撃からLCDモジュールを防護できる。
【0013】
(2) 落下による液晶ガラスの破損を防止できる。
【0014】
(3) 携帯端末装置の小型化とともに、部品点数を増加することなく耐衝撃性を高め、携帯端末装置の信頼性を高めることができる。
【0015】
そして、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面及び各実施の形態を参照することにより、一層明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施の形態に係る携帯電話機を示す斜視図である。
【図2】携帯電話機を示す分解斜視図である。
【図3】携帯電話機を示す分解斜視図である。
【図4】可動フロントケースの内部を示す図である。
【図5】可動フロントケースの内部を示す図である。
【図6】止水構造および衝撃吸収構造を示す図である。
【図7】可動筐体を示す平面図である。
【図8】図7の VIII −VIII線に沿って切断した断面図である。
【図9】可動フロントケースおよび可動リアケースを示す拡大断面図である。
【図10】可動フロントケースの成形工程の一例を示すフローチャートである。
【図11】インサート成形される金属枠を示す斜視図である。
【図12】可動フロントケースを示す斜視図である。
【図13】ガスケットを一体化成形した可動フロントケースを示す斜視図である。
【図14】可動フロントケースの成形を示す図である。
【図15】携帯電話機の組立工程の一例を示すフローチャートである。
【図16】LCDモジュールの設置前後を示す図である。
【図17】可動リアケースの合体前後を示す図である。
【図18】タッチパネルの取付け前後を示す図である。
【図19】第2の実施の形態に係るLCDモジュール設置前後を示す図である。
【図20】可動フロントケースの合体前後を示す図である。
【図21】第3の実施の形態に係るガスケットの取付け構造を示す図である。
【図22】従来の携帯電話機の筐体を示す図である。
【図23】図22の XXIII−XXIII 線に沿って切断した携帯電話機の可動筐体部を示す断面図である。
【図24】ガスケット設置部分を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1の実施の形態〕
【0018】
第1の実施の形態の携帯電話機について、図1を参照する。図1は携帯電話機の一例を示している。図1に示す構成は一例であって、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。
【0019】
図1に示す携帯電話機2は、本開示の携帯端末装置およびその製造方法の一例である。この携帯電話機2には、第1の筐体4と第2の筐体6とが備えられ、筐体4、6の間にはたとえば、摺動機構や回転機構が備えられている。筐体4を固定側すなわち、固定筐体とすれば、筐体6は摺動機構により携帯電話機2の長手方向(縦方向)に摺動させることができ、既述の回転機構により横方向に回転させることができる。
【0020】
筐体6には上からタッチパネル8が設置されているとともに、その背面側にはLCDモジュール10(図2)などの部材が設置されている。LCDモジュール10は、画像などを表示する表示装置である。筐体6に被せられた枠部材12は、筐体6の側面を覆う周壁部14と、筐体6の上面の一部を覆うカバー部16、18と、タッチパネル8を露出させる窓部20とを備える。各カバー部16、18は周壁部14を幅方向に橋絡して周壁部14を補強するとともに、筐体6に固定される。カバー部16には集音してマイクロフォンに音を導く集音孔22が形成されている。また、カバー部18にはレシーバ(スピーカ)の音を放音する放音孔24が形成されている。
【0021】
この携帯電話機2の各部材について、図2および図3を参照する。図2および図3は携帯電話機2の筐体6を分解して示している。
【0022】
筐体6は、図2および図3に示すように、第一のケースとして可動フロントケース26と、第二のケースとして可動リアケース28とを備えている。可動フロントケース26と可動リアケース28はたとえば、PC(ポリカーボネート)、ABS樹脂などの合成樹脂で成形された成形体である。これら可動フロントケース26と可動リアケース28は係合されて既述の筐体6が構成される。可動フロントケース26には、LCDモジュール10の表示画面を露出させるための窓部29が形成されている。この窓部29は既述の窓部20の内側に設定される。
【0023】
可動フロントケース26にはガスケット30が設置される。このガスケット30で包囲された止水領域32の内部には既述のLCDモジュール10、LCDモジュールホルダ34(以下単に「ホルダ34」と称する。)、回路基板36などが設置される。
【0024】
ガスケット30は、可動フロントケース26に設置され、可動フロントケース26と可動リアケース28との間に既述の止水領域32を形成する。このガスケット30は、緩衝部材の一例であり、弾性を備える止水材料としてたとえば、止水用エラストマーで形成された環状の成形体である。つまり、緩衝部材としてのガスケット30は、可動フロントケース26と可動リアケース28との係合部分を止水するとともに、衝撃を受けた際に衝撃を吸収し、LCDモジュール10に対する衝撃を緩衝しまたは抑止する。
【0025】
ホルダ34はステンレスなどの金属板で形成され、LCDモジュール10の背面に設置されてLCDモジュール10と合体している。このホルダ34にはLCDモジュール10の角部のそれぞれに固定部38が形成されている。各固定部38は固定ねじ40を貫通させる貫通孔42を備えている。同様に、可動フロントケース26には固定ねじ40を取り付ける固定ねじ部44が形成され、可動リアケース28には貫通孔46が形成されている。各固定ねじ40は可動リアケース28の貫通孔46およびホルダ34の固定部38の貫通孔42を通して可動フロントケース26の固定ねじ部44に取り付けられる。これにより、LCDモジュール10を合体したホルダ34が可動リアケース28と可動フロントケース26に挟み込まれて可動フロントケース26に固定される。
【0026】
LCDモジュール10とホルダ34とを分解すると、図3に示すように、LCDモジュール10には、長手方向の側面に複数の係合爪48が形成されている。各係合爪48を係合させる係合凹部50がホルダ34に形成されている。ホルダ34にはLCDモジュール10の背面に設置される本体部52からLCDモジュール10の側面に立ち上がる立壁54が形成され、係合凹部50は立壁54および本体部52の一部を切り欠いて形成されている。LCDモジュール10の係合爪48はこの係合凹部50に挿入されて係合する。つまり、LCDモジュール10は側面部を立壁54間に挟み込まれ、LCDモジュール10の係合爪48がホルダ34側の係合凹部50に挿入されて係合し、ホルダ34と結合し、一体化される。
【0027】
この携帯電話機2の可動フロントケース26およびその内部について、図4および図5を参照する。図4および図5は可動フロントケース26内のガスケット30の配置を示している。
【0028】
図4に示すように、可動フロントケース26にはLCDモジュール10を合体したホルダ34およびLCDモジュール10が設置されている。可動フロントケース26の周壁内にはガスケット30が配置され、ガスケット30で包囲された止水領域32が形成されている。ホルダ34の長手方向の側面と可動フロントケース26の周壁部との間にはガスケット30が配置され、止水領域32を構成している。
【0029】
図4に示す可動フロントケース26からホルダ34を外すと、図5に示すように、LCDモジュール10が露出する。LCDモジュール10の長手方向の側面領域56A、56Bと可動フロントケース26の周壁部との間にはガスケット30が配置されている。これにより、落下時など、可動フロントケース26に加わる衝撃はガスケット30に吸収され、衝撃からLCDモジュール10を防護することができる。つまり、ガスケット30は、止水手段であるとともに衝撃吸収手段を構成する。
【0030】
このガスケット30を用いた止水構造および衝撃吸収構造について、図6を参照する。図6は、可動フロントケース26、可動リアケース28およびガスケット30を分解して示している。
【0031】
この実施の形態では、ガスケット30は、可動フロントケース26と一体に成形されるが、説明のため、図6では可動フロントケース26から分離して示している。
【0032】
可動フロントケース26には金属枠58がインサート成形されて補強されている。この可動フロントケース26には周壁部60と、ガスケット設置部62と、係合凹部64と、係合突部66と、当接部68とが一体成形によって形成されている。
【0033】
周壁部60は可動フロントケース26の周壁を構成する。ガスケット設置部62は、ガスケット30を設置する部分であり、ガスケット30と密着する。この実施の形態では、ガスケット設置部62に湾曲面部を備えている。
【0034】
可動リアケース28には、止水面部70と、係合突部72と、係合凹部74と、載置面部76とを備えている。止水面部70は金属枠58の上面と平行な平坦面であり、可動フロントケース26に設置されたガスケット30の先端部が当接される。係合突部72は既述の係合凹部64に嵌め込まれ、係合凹部74には可動フロントケース26の係合突部66が嵌め込まれる。載置面部76には当接部68が載置される。これにより、可動フロントケース26と可動リアケース28が係合される。
【0035】
ガスケット30には、接合面部78と、受力部80と、圧潰部82とを備えている。接合面部78はガスケット設置部62の断面形状に合致する断面形状を備えている。受力部80は、落下時などにLCDモジュール10およびホルダ34からの衝撃力を受け止める部分である。この受力部80は衝撃力を受け止める平坦面と、衝撃力を吸収できる十分な厚さWを備えている。圧潰部82は、接合面部78側の面部を放物面に形成して先端側の厚みが受力部80より薄く形成されている。可動フロントケース26と可動リアケース28との既述の係合により、圧潰部82は止水面70に当たって圧潰し、可動フロントケース26と可動リアケース28との間を止水する。これにより、既述の止水領域32が筐体内に形成される。
【0036】
可動リアケース28には背面には筐体4と係合するレール部84が設置されている。このレール部84には、接着テープ86によって背面カバー88が固定されている。この背面カバー88の係合突部90が可動リアケース28の係合凹部92に挿入されている。これにより背面カバー88と可動リアケース28とが固定されている。
【0037】
斯かる部材により、筐体6には、止水構造および衝撃吸収構造が構成される。したがって、筐体6の止水領域32を形成するガスケット30により、落下時などの衝撃からLCDモジュール10を防護することができる。
【0038】
この筐体6について、図7、図8および図9を参照する。図7は図8および図9の断面箇所を示している。図8および図9は各部の断面を示している。
【0039】
この筐体6では、図7に示すように、ガスケット30によって衝撃吸収を行っているので、可動フロントケース26のケース幅の増加はなく、窓部20の幅が大きくとられ、狭縁幅となっている。つまり、タッチパネル8の幅が大きくとられるとともに、LCDモジュール10の表示幅も大きく設定されている。
【0040】
図8は図7のVIII−VIII線断面を示し、図9の(A)はこれを拡大して示している。この筐体6では、可動フロントケース26と可動リアケース28とが係合され、可動フロントケース26に設置されたガスケット30により、可動フロントケース26と可動リアケース28との間が止水されている。この止水構造に加え、可動フロントケース26とLCDモジュール10との間にはガスケット30が設置され、衝撃吸収構造が構成されている。これにより、LCDモジュール10を衝撃から防護することができる。
【0041】
可動フロントケース26の金属枠58の上面には、止水部材である接着テープ86によりタッチパネル8が取り付けられている。可動フロントケース26の窓部20側が止水されている。つまり、止水領域32は、既述のガスケット30による止水と、接着テープ86による止水と、可動フロントケース26および可動リアケース28の持つ止水機能を含んで構成されている。したがって、この携帯電話機2では、緩衝部材であるガスケット30を用いることにより、落下時などの衝撃からLCDモジュール10を防護することができる。
【0042】
また、ガスケット30と、ホルダ34に固定されたLCDモジュール10の側面との間には図9の(B)に示すように、空隙94が設けられている。この空隙94の間隔Dにより、LCDモジュール10に対し、落下時などの衝撃が緩衝されまたは抑止される。斯かる構成に代え、ガスケット30とLCDモジュール10の側面とを密着させる構成としてもよい。
【0043】
この可動フロントケース26の成形について、図10を参照する。図10は可動フロントケースの成形工程の一例を示している。
【0044】
図10に示す成形工程は、本開示の携帯端末装置の製造方法の一例である。この成形工程では、金属枠58の成形を行い(ステップS11)、その金属枠58を用いて可動フロントケース26の一次成形を行い(ステップS12)、つぎに、可動フロントケース26の二次成形を行う(ステップS13)。
【0045】
この金属枠58のインサート成形について、図11、図12および図13を参照する。図11、図12および図13は金属枠58、成形途上の可動フロントケースおよび最終成形品質である可動フロントケース26を示している。
【0046】
金属枠58の成形では金属板としてたとえば、ステンレス板により、図11に示すように、金属枠58を成形する。可動フロントケース26の一次成形には金属枠58を用いて、図12に示すように、PC(ポリカーボネート)とABS樹脂によりインサート成形を行う。この成形において、各固定ねじ部44には固形ねじ40(図3)と螺合するナットのインサート成形を行う。可動フロントケース26の二次成形では、一次成形で得られた可動フロントケース26にガスケット30の一体成形を行う。これにより、図13に示すように、ガスケット30を接合した可動フロントケース26が得られる。
【0047】
この可動フロントケース26の一次成形および二次成形について、図14を参照する。図14は一次成形および二次成形を示している。
【0048】
可動フロントケース26の一次成形は金属枠58のインサート成形であり、この成形により可動フロントケース26の原形を成形する。この成形には、図14の(A)に示すように、可動フロントケース26の原形を成形する成形型96が用いられる。この成形型96のキャビティ98には、可動フロントケース26の原形部100と、金属枠58の保持部102とを備えている。
【0049】
このような成形型96のキャビティ98に図14の(B)に示すように、溶融している成形樹脂104として既述のPC(ポリカーボネート)、ABS樹脂を注入する。これにより、成形型96のキャビティ98の形状に成形された可動フロントケース26が得られ、この可動フロントケース26には金属枠58がインサート成形される。
【0050】
可動フロントケース26の二次成形はガスケット30の一体成形であり、可動フロントケース26のガスケット設置部62にガスケット30を成形する。この成形には、図14の(C)に示すように、可動フロントケース26のガスケット設置部62を成形面の一部に用いた成形型106が用いられる。この成形型106にはガスケット設置部62を成形面の一部とするキャビティ108を備えている。このキャビティ108に止水用エラストマー110を注入すれば、キャビティ108の形状を持つガスケット30が成形される。これにより、ガスケット設置部62にガスケット30が一体化された可動フロントケース26が得られる。
【0051】
この可動フロントケース26を用いた携帯電話機2の組立て工程について、図15を参照する。図15は携帯電話機2の組立て工程を示している。
【0052】
図15に示す組立て工程は本開示の携帯端末装置の製造方法の一例である。この成形工程では、可動フロントケース26にLCDモジュール10の取付けを行い(ステップS21)、可動フロントケース26と可動リアケース28とを係合し(ステップS22)、タッチパネル8の取付けを行う(ステップS23)。
【0053】
この携帯電話機2の組立て工程について、図16、図17および図18を参照する。図16ないし図18は、可動フロントケース26に対するLCDモジュール10の取付けからタッチパネル8の取付けの各工程を示している。
【0054】
ステップS21(図15)では、図16の(A)に示すように、可動フロントケース26と、LCDモジュール10を合体したホルダ34とが位置決めされ、図16の(B)に示すように、可動フロントケース26にホルダ34が取り付けられる。ホルダ34は可動フロントケース26にあるガスケット30の包囲空間内に設置される。これにより、ガスケット30が可動フロントケース26の内壁部とLCDモジュール10の側面との間に配置される。
【0055】
ステップS22(図15)では、図17の(A)に示すように、LCDモジュール10が取り付けられた可動フロントケース26と、可動リアケース28が位置決めされ、図17の(B)に示すように、可動フロントケース26と可動リアケース28とが係合され、筐体6が構成される。ガスケット30が可動リアケース28の止水面部70に圧接されて圧潰する。これにより、可動フロントケース26と可動リアケース28の係合部分がガスケット30によって止水状態となる。
【0056】
ステップS23(図15)では、図18の(A)に示すように、可動フロントケース26に枠部材12を取り付けた後、筐体6とタッチパネル8が位置決めされ、図18の(B)に示すように、タッチパネル8が取り付けられる。タッチパネル8には止水テープである接着テープ86が取り付けられ、この接着テープ86により可動フロントケース26の金属枠58の上面に固定され、止水される。これにより、筐体6の内部空間には、既述のガスケット30と接着テープ86により気密性が維持され、既述の止水領域32が形成される。
【0057】
以上述べたとおり、この実施の形態によれば、つぎのような効果が得られる。
【0058】
(1) 可動フロントケース26とLCDモジュール10との間には弾性体である止水用エラストマーによって形成されたガスケット30が設置されているので、落下などの衝撃からLCDモジュール10を防護できる。つまり、落下時などの衝撃が可動フロントケース26に伝わっても、その衝撃がガスケット30が持つ弾性により吸収され、LCDモジュール10に伝わる衝撃を大幅に緩和できる。この結果、落下などの衝撃からLCDモジュール10の液晶ガラスを防護でき、液晶ガラスの破損を防止できる。
【0059】
(2) ガスケット30で衝撃吸収を行っているので、その分だけ可動フロントケース26の周壁部60(図6)の厚みを低減できる。たとえば、ケース肉厚(周壁部60)の1枚分程度を削減できる。これにより、携帯電話機2の装置幅サイズを縮小でき、携帯電話機2の小型化、軽量化を図ることができる。
【0060】
〔第2の実施の形態〕
【0061】
第1の実施の形態では、可動フロントケース26側にLCDモジュール10の取付けを先行させたが、LCDモジュール10の可動リアケース28側への取付けを先行させてもよい。この携帯電話機2の組立工程について、図19および図20を参照する。図19および図20は携帯電話機2の組立工程の一例を示している。
【0062】
この実施の形態では、図19の(A)に示すように、LCDモジュール10を合体したホルダ34と、可動リアケース28が位置決めされ、図19の(B)に示すように、可動リアケース28にホルダ34が取り付けられる。
【0063】
そして、図20の(A)に示すように、可動フロントケース26と、LCDモジュール10が取り付けられた可動リアケース28が位置決めされ、図20の(B)に示すように、可動フロントケース26と可動リアケース28とが係合され、筐体6が構成される。この場合、筐体6には、LCDモジュール10が設置され、可動フロントケース26とLCDモジュール10の間にはガスケット30が配置されている。
【0064】
このような組立て工程によっても、第1の実施の形態と同様の携帯電話機2を構成することができる。
【0065】
〔第3の実施の形態〕
【0066】
第1の実施の形態では、可動リアケース28の止水面部70を平坦面としたが、この実施の形態ではガスケット30の挿入部が形成されている。この実施の形態について、図21を参照する。
【0067】
図21の(A)に示すように、可動リアケース28の止水面部70にはガスケット挿入部112が形成されている。このガスケット挿入部112はたとえば、断面U字形の溝部である。このようなガスケット挿入部112を備えれば、図21の(B)に示すように、ガスケット30をガスケット挿入部112に挿入することができる。これにより、可動フロントケース26と可動リアケース28とを係合させると、ガスケット挿入部112内にガスケット30が挿入され、ガスケット挿入部112内で圧潰させることができる。斯かる構成では、ガスケット30と可動リアケース28との密着面積を拡大でき、止水領域32の止水機能をより高めることができる。
【0068】
〔他の実施の形態〕
【0069】
(1) 上記実施の形態ではいわゆるスイング携帯について例示したが、これに限定されない。本開示の携帯端末装置には、折畳みや開閉可能な携帯電話機2が含まれる。
【0070】
(2) 上記実施の形態では、可動フロントケース26を一次成形し、二次成形でガスケット30を成形する方法を例示したが、ガスケット30を先行して成形し、これを用いて可動フロントケース26を成形してもよい。また、可動フロントケース26とガスケット30とを同時に成形してもよい。
【0071】
(3) 上記実施の形態では、可動フロントケース26側にガスケット30を設置したが、可動リアケース28側にガスケット30を設置してもよい。
【0072】
(4) 上記実施の形態では、携帯電話機2を例示したが、これに限定されない。本開示の携帯端末装置には、止水機能を持つパーソナルコンピュータ、携帯情報端末機(PDA:Personal Digital Assistant)、電子ゲーム機器、ディジタルスチールカメラなどの電子機器が包含される。
【0073】
次に、以上述べた実施例を含む実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。以下の付記に本発明が限定されるものではない。
【0074】
(付記1) 第一のケースと第二のケースとを係合して構成され、LCDモジュールが設置された筐体と、
前記第一のケースまたは前記第二のケースと前記LCDモジュールとの間に配置され、前記第一のケースと前記第二のケースとの係合部分を止水するとともに、前記LCDモジュールに対する衝撃を吸収する緩衝部材と
を備えることを特徴とする携帯端末装置。
【0075】
(付記2) 前記緩衝部材は、前記第一のケースまたは前記第二のケースに設置され、対向する前記第二のケースまたは前記第一のケースの止水面部で圧潰されていることを特徴とする付記1に記載の携帯端末装置。
【0076】
(付記3) 前記緩衝部材は、前記第一のケースまたは前記第二のケースと一体化成形されていることを特徴とする付記1または2に記載の携帯端末装置。
【0077】
(付記4) 前記緩衝部材と前記LCDモジュールの側面との間に空隙を備えたことを特徴とする付記1ないし3のいずれかに記載の携帯端末装置。
【0078】
(付記5) 前記緩衝部材は、前記LCDモジュールの側面との対向する平坦面を備えることを特徴とする付記1ないし4のいずれかに記載の携帯端末装置。
【0079】
(付記6) 前記緩衝部材は止水用エラストマーであることを特徴とする付記1ないし5のいずれかに記載の携帯端末装置。
【0080】
(付記7) 第一のケースと第二のケースとを係合して筐体を構成し、前記第一のケースと前記第二のケースとの係合部分を止水するとともに、LCDモジュールに対する衝撃を吸収する緩衝部材を、前記第一のケースまたは前記第二のケースと前記LCDモジュールとの間に配置する、
ことを特徴とする携帯端末装置の製造方法。
【0081】
(付記8) さらに、前記第一のケースまたは前記第二のケースと前記緩衝部材とを一体化成形することを特徴とする付記6に記載の携帯端末装置の製造方法。
【0082】
以上説明したように、携帯端末装置およびその製造方法の最も好ましい実施の形態等について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0083】
2 携帯電話機
6 筐体
10 LCDモジュール
22 集音孔
24 放音孔
26 可動フロントケース
28 可動リアケース
30 ガスケット(緩衝部材)
32 止水領域
34 ホルダ
36 回路基板
38 固定部
40 固定ねじ
42 貫通孔
44 固定ねじ部
46 貫通孔
48 係合爪
50 係合凹部
52 本体部
54 立壁
56A 側面領域
56B 側面領域
58 金属枠
60 周壁部
62 ガスケット設置部
64 係合凹部
66 係合突部
68 当接部
70 止水面部
72 係合突部
74 係合凹部
76 載置面部
78 接合面部
80 受力部
82 圧潰部
84 レール部
86 接着テープ
88 背面カバー
90 係合突部
92 係合凹部
94 空隙
96 成形型
104 成形樹脂
106 成形型
108 キャビティ
110 止水用エラストマー
112 ガスケット挿入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のケースと第二のケースとを係合して構成され、LCDモジュールが設置された筐体と、
前記第一のケースまたは前記第二のケースと前記LCDモジュールとの間に配置され、前記第一のケースと前記第二のケースとの係合部分を止水するとともに、前記LCDモジュールに対する衝撃を吸収する緩衝部材と、
を備えることを特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】
前記緩衝部材は、前記第一のケースまたは前記第二のケースに設置され、対向する前記第二のケースまたは前記第一のケースの止水面部で圧潰されていることを特徴とする請求項1に記載の携帯端末装置。
【請求項3】
前記緩衝部材は、前記第一のケースまたは前記第二のケースと一体化成形されていることを特徴とする請求項1または2に記載の携帯端末装置。
【請求項4】
前記緩衝部材と前記LCDモジュールの側面との間に空隙を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の携帯端末装置。
【請求項5】
第一のケースと第二のケースとを係合して筐体を構成し、
前記第一のケースと前記第二のケースとの係合部分を止水するとともに、LCDモジュールに対する衝撃を吸収する緩衝部材を、前記第一のケースまたは前記第二のケースと前記LCDモジュールとの間に配置する、
ことを特徴とする携帯端末装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−212773(P2012−212773A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77405(P2011−77405)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】