説明

携帯端末

【課題】外観を犠牲にすることなく、携帯端末の使用スタイルの変化による内蔵アンテナの周波数特性のずれを緩和する。
【解決手段】本体ユニット11の1つの面を表示ユニット21の1つの面が覆う第1スタイルと、本体ユニット11の1つの面の一部を露出する第2スタイルとの間で、表示ユニット21を本体ユニット11に対し可動可能に連結する連結機構部を有する携帯端末であって、アンテナ18を本体ユニット11に内蔵し、人体相当の誘電体28を表示ユニット21に内蔵し、連結機構部による第1スタイルから第2スタイルへの表示ユニット21の可動に伴い、第1スタイル時の誘電体28とアンテナ18との位置が離隔するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示ユニットと、操作部を有する本体ユニットと、前記本体ユニットの1つの面を前記表示ユニットの1つの面が覆う第1スタイルと、前記本体ユニットの前記1つの面の一部を露出する第2スタイルとの間で、前記表示ユニットを前記本体ユニットに対し可動可能に連結する連結機構部とを有する電波受信用のアンテナを内蔵する携帯端末に係り、より詳細には、本体形状変化の影響によるアンテナの周波数特性ずれの緩和を考慮した携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯電話機などの携帯端末に内蔵されている無線機器のアンテナは、人体によるブロッキングの影響を受けるため、利用環境によってアンテナの共振周波数や利得、指向特性が変化、劣化するという課題があった。そのため、このようなアンテナ特性の劣化等の課題を解決するための技術が従来から開示されている(例えば、特許文献1,2等参照)。
【0003】
特許文献1には、アンテナと誘電体(導電体)との位置関係に応じて、アンテナの電気長などの特性変化に作用する位置または作用しない位置に、アンテナの電気特性を補正する補正部材を配置するよう構成した携帯無線用アンテナが開示されている。より具体的には、携帯無線機筐体の内部に設けられた導電体または誘電体と、携帯無線機の筐体の少なくとも一つの表面とほぼ連続した面となる第1の状態及び携帯無線機の外形から突出する第2の状態をとることを可能にする可動機構を有し、内部にアンテナエレメントが収容されたアンテナ構成体と、アンテナ構成体が第1の状態にあるときにアンテナ構成体のアンテナ放射特性を補正する、筐体内部に設けられた補正部材とを備えた構成となっている。
【0004】
また、特許文献2には、アンテナ給電点付近に誘電体を配置して、アンテナと人体との見かけ上の距離を確保し、人体がアンテナに近づいたときの影響を緩和する携帯無線機が開示されている。
【特許文献1】特開平11−186824号公報
【特許文献2】特開2001−274717号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、図8に示すように、操作部12を含む本体ユニット11と表示ユニット21とが完全に重なりあった図8(a),(b)に示す状態(この状態を「第1スタイル」という。)と、本体ユニット11と表示ユニット21とが離隔された図8(c)に示す状態(この状態を「第2スタイル」という。)の2つの状態(スタイル)に変化可能に設けられた携帯端末(携帯電話機等)が商品化されている。
【0006】
これは、近年の携帯端末(携帯電話機等)の多機能化に伴うもので、例えば、第1スタイルでの通話機能(TV視聴も含む)、第2スタイルでの通信機能(メール送信等)の利用を想定し、個々の機能を利用する上で、利用者にとってより使い勝手の良いスタイルでの使用を実現するためである。
【0007】
上述した従来技術、特に特許文献2は、「引き出しタイプのアンテナ」に限定される技術である。従って、図8に示すような、利用者の利用の利便性を考慮して端末スタイルが変化するタイプの携帯端末(携帯電話機等)では、特許文献2に開示されているような「引き出しタイプのアンテナ」を採用することは困難であり、一般的にアンテナは内蔵型となっている。
【0008】
そして、内蔵型のアンテナでは、人体によるブロッキングの影響として、アンテナの周波数帯域に対する利得特性が安定的に維持できないといった課題が存在していた。
【0009】
ここで、図8に示す携帯端末の使用形態について説明する。ただし、ここでは右利きの人が使用する場合について説明する。
【0010】
本体ユニット11と表示ユニット21とが離隔された図8(c)に示す第2スタイルの状態(メール入力状態)では、一般的に本体ユニット11を左手で支え、右手で本体ユニット11の操作部12を操作する。すなわち、最も人体によるブロッキングの影響を受ける場所は、本体部11の左側部分である。
【0011】
一方、本体ユニット11と表示ユニット21とが完全に重なりあった図8(a)に示す第1スタイルの状態(電話使用時の状態)では、右手若しくは左手で本体ユニット11の下部分を支える。また、図8(b)に示すTV視聴時の第2スタイルの状態であれば、携帯端末を机等に置いて視聴する等、一般的に携帯端末自体を持たないで視聴する。すなわち、人体によるブロッキングの影響を最も受ける場所は、使用状態によって異なり、少なくとも手で持っているときは、本体ユニット11側も表示ユニット21側も影響を受け、持っていないときはどちらも影響を受けない。
【0012】
従って、アンテナを端末のどこに内蔵しても、端末を持っている場所(手の場所)がどこにあるかで、人体(手)のブロッキングの影響を受けるかどうかが決まり、安定した特性が得られない。
【0013】
そのため、従来は、安定した特性が得られない場合に、外観を犠牲にしてユニットの筐体サイズを大きくし、アンテナの空間を増大させて平均利得を上げるか、それとも、ユニットの筐体サイズを維持するために、アンテナの特性が劣化した状態でも通信できるように調整を行っていた。ただし、後者の場合には、整合回路の効率が悪くなる場合が多く、受信感度や送信電力への影響が懸念される。また、利得が高いアンテナと同等の出力が必要な場合には、送信機の出力を上げる等の対策が必要であるため電力消費が犠牲となるといった問題があった。
【0014】
本発明はかかる問題点を解決すべく創案されたもので、その目的は、外観を犠牲にすることなく、本体ユニットと表示ユニットとが完全に重なりあった第1スタイルの状態、及び本体ユニットと表示ユニットとが離隔された第2スタイルの状態といった、携帯端末の使用スタイルの変化による内蔵アンテナの周波数特性のずれを緩和させることのできる携帯端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明の携帯端末は、表示ユニットと、操作入力部を有する本体ユニットと、前記本体ユニットの1つの面を前記表示ユニットの1つの面が覆う第1スタイルと、前記本体ユニットの前記1つの面の一部を露出する第2スタイルとの間で、前記表示ユニットを前記本体ユニットに対し可動可能に連結する連結機構部とを有する携帯端末であって、人体相当の誘電体を前記表示ユニットまたは前記本体ユニットのいずれか一方に内蔵するとともに、電波受信用のアンテナを前記誘電体とは異なるユニットに内蔵し、前記連結機構部による前記第1スタイルから前記第2スタイルへの表示ユニットの可動に伴い、前記第1スタイル時の前記誘電体と前記アンテナとの位置が離隔するように設けられていることを特徴としている。
【0016】
すなわち、本発明は、少なくとも第2スタイルにおいては、表示ユニットと本体ユニットのいずれかは人体の影響を受けない(両ユニットとも手で持つことはない)という点を利用し、主に、人体(手)相当の誘電体を表示ユニットに内蔵し、アンテナを本体ユニットに内蔵する。そして、表示ユニットと本体ユニットが重なり合う第1スタイルの状態では、アンテナと誘電体とが接近するように、また、本体ユニットと表示ユニットとが離隔された第2スタイルの状態では、アンテナと誘電体とが離隔されるように、アンテナと誘電体とを配置することで問題を解決している。
【0017】
すなわち、アンテナの周波数特性を、当該アンテナと誘電体が接近した第1スタイルの状態で最良となるように調整する。その結果、誘電体がアンテナから離隔する第2スタイルでは、アンテナの周波数特性は周波数の高い方にずれるが、この状態で本体ユニットを手で持つと、この手が誘電体の代わりとなってアンテナの周波数特性は周波数の低い方にずれることになる。その結果、アンテナの周波数特性は第1スタイルのときと変わらない特性となる。すなわち、携帯端末の使用スタイルの変化に係わらず、アンテナ周波数特性の安定化を図ることが可能とる。
【0018】
なお、携帯端末の利用形態としては、必ずしも手で持って利用している場合だけではなく、また利用者によってどこを持つか分からない場合もあることから、誘電体を手動で可動可能(アンテナに対して、誘電体を離す方向、もしくは、近づける方向に可動可能)としておくべきである。
【0019】
そこで、本発明の携帯端末は、利用者が操作する手動操作部と、前記手動操作部の操作に応じて、前記誘電体と前記アンテナとの位置を離隔させる方向または近接させる方向に前記誘電体またはアンテナのいずれか一方を可動可能とする可動部とをさらに備えたことを特徴としている。これにより、利用者自身の判断で誘電体をアンテナから離隔したり接近させたりできるので、そのときの電波の受信状態に応じて、利用者自身が臨機応変に対応することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、携帯端末の使用スタイルの変化によるアンテナの周波数特性のずれを緩和させることができるので、各スタイルに応じたアンテナ整合が可能となり、平均的な利得の向上、整合回路の効率向上が図れるとともに、所定の出力を得るために必要な送信機の空中線送信電力を低く抑えることができる。従って、電池で駆動することが殆どである携帯端末環境において、使用時間の延長に直接結びつくため、非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
<実施形態1>
図1(a),(b)は、本発明の実施形態1に係る携帯端末を示す外観図である。携帯端末としては、携帯電話機、電子辞書、PDAなどの各種端末があるが、ここでは携帯電話機の構成を例に挙げて説明する。
【0023】
本実施形態1の携帯端末A1は、本体ユニットである第1筐体11と表示ユニットである第2筐体21とが、スライド機構部(連結機構部)31を介して一方向Xにスライド移動可能な構成となっている。また、第2筐体21は、第1筐体11の上面11aに形成された凹部12に嵌まり合うように配置されており、この凹部12の側面12aと、第2筐体21の対向する側面22aとの間にスライド機構部31が配置されている。すなわち、スライド機構部31は、凹部12の左側の側面12aと第2筐体21の対向する左側の側面22aとの間、及び凹部12の右側の側面12aと第2筐体21の対向する右側の側面22aとの間にそれぞれ配置されている。なお、スライド機構31については、携帯電話機等の分野では従来周知の機構構造であり、本願発明の要部ではないので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0024】
そして、第1筐体11の凹部表面12bを完全に覆うように第2筐体21が重なりあった状態の第1スタイル(同図(a)参照)と、第1筐体11の凹部表面12bの上部を除く全体を露出させるように一部が重なりあった状態の第2スタイル(同図(b)参照)との間で、第1筐体11と第2筐体21が互いにスライド移動可能となっている。
【0025】
また、第2筐体21の表面には、液晶パネル等を含む表示部23が配置されている。
【0026】
また、第1筐体11の凹部表面12bには、文字キーや数字キー等の機能キー13aを含む操作入力部13が配置されている。
【0027】
また、凹部12の左側の側面12aによって仕切られた第1筐体11の左側部分の筐体内には、データ通信用のアンテナ18がスライド方向Xに沿って配置されている。このアンテナ18の給電点18aは、第1筐体11内の上部位置となっている。また、第1筐体11の左側の上面11aにはイヤピース15が配置されており、右側の上面11aにはマイク16が配置されている。
【0028】
このような構成において、本実施形態1では、第1筐体21内に、人体(手)相当の誘電体28が配置されている。この誘電体28は、第1筐体21の左側の側面22aの近傍に配置されており、第2筐体21と第1筐体11とが重なり合う第1スタイルの状態では、図1(a)に示すように、アンテナ18と誘電体28とが接近するように配置されている。そして、第1筐体11に対して第2筐体21がX方向にスライド移動して離隔された第2スタイルの状態では、図1(b)に示すように、アンテナ18と誘電体28とが離隔されるように配置されている。
【0029】
ここで、本実施形態1では、アンテナ18の周波数特性を、当該アンテナ18と誘電体28が接近した第1スタイルの状態で最良となるように調整している。その結果、誘電体28がアンテナ18から離隔する第2スタイルでは、アンテナ18の周波数特性は周波数の高い方にずれるが、この状態で、図8(c)に示しように、第1筐体11のアンテナ近傍を手で持つと、この手が誘電体28の代わりとなってアンテナ18の周波数特性が周波数の低い方にずれることになる。その結果、アンテナ18の周波数特性は、第1スタイルのときと変わらない特性となる。これにより、携帯端末の使用スタイルの変化に係わらず、アンテナ18の周波数特性の安定化を図ることが可能となっている。
【0030】
<実施形態2>
図2は、本発明の実施形態2に係る携帯端末を示す外観図である。携帯端末としては、携帯電話機、電子辞書、PDAなどの各種端末があるが、ここでは携帯電話機の構成を例に挙げて説明する。
【0031】
本実施形態2の携帯端末A2は、本体ユニットである第1筐体41と表示ユニットである第2筐体51とが、回動機構部(連結機構部)61によって回動可能に設けられた構成となっている。また、第2筐体51は、第1筐体41の上面41aに形成された凹部42に嵌まり合うように配置されている。そして、第1筐体41の凹部42に配置された第2筐体51は、両筐体41,51の中央上部において両筐体41,51間に配置された回動機構部61によって、第1筐体41に対し矢符R方向に180度回動可能な構成となっている。そのため、第1筐体41の凹部42の内側面42aは、第2筐体51の各角部が接触しないように、回動機構部61の図示しない回転軸を中心とする円弧形状に形成されている。なお、回動機構部61については、携帯電話機等の分野では従来周知の機構構造であり、本願発明の要部ではないので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0032】
そして、第1筐体41の凹部表面42bを完全に覆うように第2筐体51が重なりあった第1スタイルの状態(同図(a)参照)と、第1筐体41の凹部表面42bの上部を除く全体を露出させるように一部が重なりあった第2スタイルの状態(同図(b)参照)との間で、第1筐体41と第2筐体51とが相互に180度回動可能となっている。
【0033】
また、第2筐体51の表面には、液晶パネル等を含む表示部53が配置されている。
【0034】
また、第1筐体41の凹部表面42bには、文字キーや数字キー等の機能キー43aを含む操作入力部43が配置されている。
【0035】
また、第1筐体41の左側部分の筐体内には、データ通信用のアンテナ48が配置されている。このアンテナ48の給電点48aは、第1筐体41内の上部位置となっている。また、第1筐体41の左側の上面41aにはイヤピース45が配置されており、右側の上面41aにはマイク46が配置されている。
【0036】
このような構成において、本実施形態2では、第2筐体51内に、人体(手)相当の誘電体58が配置されている。この誘電体58は、第2筐体51の左側の側面52aの近傍に配置されており、第2筐体51と第1筐体41とが重なり合う第1スタイルの状態では、図2(a)に示すように、アンテナ48と誘電体58とが接近するように配置されている。そして、第2筐体51が第1筐体41に対してR方向に180度回転移動した第2スタイルの状態では、図2(b)に示すように、アンテナ48と誘電体58とが離隔されるように配置されている。
【0037】
ここで、本実施形態2では、アンテナ48の周波数特性を、当該アンテナ48と誘電体58が接近した第1スタイルの状態で最良となるように調整している。その結果、誘電体58がアンテナ48から離隔する第2スタイルでは、アンテナ48の周波数特性は周波数の高い方にずれるが、この状態で、図8(c)に示しように、第1筐体41のアンテナ近傍を手で持つと、この手が誘電体58の代わりとなってアンテナ48の周波数特性が周波数の低い方にずれることになる。その結果、アンテナ48の周波数特性は、第1スタイルのときと変わらない特性となる。これにより、携帯端末の使用スタイルの変化に係わらず、アンテナ48の周波数特性の安定化を図ることが可能となっている。
【0038】
上記実施形態1,2では、第1スタイルの状態の場合、アンテナ18,48の近傍に誘電体28,58が常に位置している状態となっている。しかし、携帯端末の利用形態としては、必ずしも手で持って利用している場合だけではなく、また利用者によってどこを持つか分からない場合もあることから、誘電体を手動で可動可能(アンテナに対して、誘電体を離す方向、もしくは、近づける方向に可動可能)としておく方が便利である。従って、以下の実施形態では、誘電体を手動で可動可能とした実施形態について説明する。
【0039】
<実施形態3>
図3は、本発明の実施形態3に係る携帯端末A3の要部の構造を示す概略説明図である。
【0040】
本実施形態3の携帯端末A3は、上記実施形態1の携帯端末A1において、第2筐体21側に誘電体28の手動操作部71を設けたものである。手動操作部71は、略L字状に形成された回動板72を備えており、この回動板72のL字状の屈曲部分が支持軸73によって、第2筐体21内において水平回動可能に支持されている。そして、この回動板72の右方向(第2筐体21の中央部の方向)に延びる一方の端部に手動操作用の操作杆74が形成され、手前方向(図3では下方向)に延びる端部に誘電体28が取り付け固定されている。また、第2筐体21の表示部23を除く上面21aには、操作杆74を挿通させて露出させるための回動溝21bが形成されており、この回動溝21bは、上記支持軸73を中心として略90度の円弧状に形成されている。
【0041】
上記構成において、図3(a)に示す状態が、実施形態1の図1(a)に対応する位置である。すなわち、この状態でアンテナ18の周波数特性が最良となるように調整されている。そして、この状態から操作杆74を上方に90度回動させた図3(b)に示す状態が、実施形態1の図1(b)に示す状態に対応している。
【0042】
従って、例えば図3(a)に示す状態のまま第1筐体11の左側部分(アンテナ18近傍)を手でもって操作する場合には、アンテナ18の周波数特性が低い方向にずれることになるが、このとき利用者が操作杆74を図3(a)に示す状態から同図(b)に示す状態に操作杆74を操作することで、誘電体28がアンテナ18から離隔され、手が誘電体28の代わりとしてアンテナ18に接近することになる。すなわち、アンテナ18の周波数特性が最良の状態に維持されることになる。
【0043】
なお、手動操作部71は、回動溝21bの両端部の位置で軽く固定されるようにロック機構を有していてもよい。ロック機構としては、回動方向に対して直交する方向に形成された単純な突起と溝との係脱構造とすることができる。例えば、回動板72の下面に1個の突起を形成し、この回動板72の下面に対向する第2筐体21内の底面の2箇所に溝を形成して、操作杆74が図3(a)に示す位置と同図(b)に示す位置にあるときに、突起と各溝とが軽く係合するようにしておけばよい。これにより、操作杆74が不測に回動してしまうといった事態の発生を防止することが可能となる。
【0044】
なお、本実施形態3は、上記実施形態1の携帯端末A1に手動操作部71を適用した場合について説明しているが、上記実施形態A2の携帯端末A2に適用した場合も手動操作部71の構造は全く同じであるので、ここでは上記実施形態A2の携帯端末A2に適用した場合の説明を省略する。
【0045】
<実施形態4>
図4ないし図7は、本発明の実施形態4に係る携帯端末A4の構造を示す説明図である。
【0046】
本実施形態4の携帯端末A4は、上記実施形態1の携帯端末A1において、第1筐体11側に誘電体28と手動操作部81の両方を設けたものである。
【0047】
なお、図4(a)は携帯端末A4を上側から見た分解斜視図、同図(b)は底面側から見た分解斜視図、図5(a)は手動操作部81を組み立てた状態の斜視図、同図(b)は分解斜視図、図6は携帯端末A4の外観斜視図、図7(a)〜(d)は手動操作部81の動作状態を示す説明図である。ただし、図4では、第1筐体11は、表示部23等を除いた筐体の下半分(底面部分)のみを図示しており、第2筐体21は、底面部分を除いた筐体の上半分のみを図示している。
【0048】
手動操作部81は、第1アーム部材82、第2アーム部材83、スライド用ノブ84、及びねじりコイルばね85によって構成されている。
【0049】
第1アーム部材82は、平面視凸形状に形成された平板状の第1回動板86を備えており、この第1回動板86の突出部分に円柱形状の第1回動アーム87が垂直に立設されている。また、第1回動板86の一方の端部には、第1回動板86の回動中心となる軸挿通穴88が形成されており、他方の端部には誘電体28が取り付け固定されている。また、軸挿通穴88には、その周囲の同心円上に所定の角度(この例では45度の角度)を保って3個の係止用凹部89a〜89c(図5(b)参照)が形成されている。
【0050】
第2アーム部材83は、平板状の長尺板である第2回動板90を備えており、この第2回動板90の一方の端部には、第1回動板86と同様の軸挿通穴91が形成されている。また、第2回動板90の他方の端部には、円柱形状の第2回動アーム92が垂直に立設されている。また、軸挿通穴91の近傍には、上記係止用凹部89a〜89cのいずれかと係合する1個の係止用突起部93が形成されている。
【0051】
スライド用ノブ84は、長尺状のスライド板95の上面中央部に形成されており、スライド板95の下面には、スライド用ノブ84の位置を介して前後両側に、上記第1回動アーム87を両側から挟持するための一対の挟持片96,96が形成されている。
【0052】
ねじりコイルばね85は、中間部が巻回されているとともに、一方の端部も巻回されており、この端部に形成された巻回部85bが第2アーム部材83の第2回動アーム92に装着され、中間部の巻回部85aが後述する支持軸12fに挿通支持されるようになっている。
【0053】
一方、第1筐体11の凹部下面12eには、図4(b)に示すように、アンテナ18が配置される側の近傍(すなわち、左側の側面12aの近傍)に、手動操作部81を取り付けるための支持軸12fが突出形成されており、この支持軸12fを中心とする円弧形状の摺動溝12gが、第1筐体11の凹部12を貫通して形成されている。また、第1筐体11のアンテナ18を収納する左側部分の筐体上面11aには、第2筐体21のスライド方向Xに沿って縦長のスライド溝11gが開口されている。
【0054】
一方、第2筐体21の底面21eには、左側の側面22a近傍に、第2筐体21のスライド方向Xに沿って縦長の凹溝部21gが形成されている。
【0055】
上記構成において、手動操作部81は、図5に示すように、第1アーム部材82の第1回動板86の軸挿通穴88と、第2アーム部材83の第2回動板90の軸挿通穴91とを重ね合わせ、さらに、端部に形成された巻回部85bを第2アーム部材83の第2回動アーム92の根元まで装着した状態で、ねじりコイルばね85の中間部の巻回部85aを第2回動板90の軸挿通穴91に重ね合わせた状態で、第1筐体11の凹部下面12eに形成された支持軸12fに、巻回部85a、軸挿通穴91、及び軸挿通穴88を挿通し、回動可能に支持固定する。すなわち、図示は省略しているが、支持軸12fの先端部に径大の抜け止め部材を固着する等して、第1アーム部材82、第2アーム部材83及びねじりコイルばね85が支持軸12fから抜け落ちないように支持する。
【0056】
このとき、スライド用ノブ84のスライド板95は、一対の挟持片96,96によって第1回動アーム87を両側から挟持する形で、第1回動アーム87上に載置されており、この状態で、スライド用ノブ84が、第1筐体11の筐体上面11aに形成されたスライド溝11gに嵌まり合って筐体上面11aから若干突出するように配置されている(図6参照)。なお、図示は省略しているが、この状態でスライド板95がスライド溝11gに沿ってX方向に安定して往復移動可能となるように、スライド板95をスライド方向に保持するガイドレール等の案内手段を、第1筐体11の下面に設けておいてもよい。
【0057】
またこのとき、第2アーム部材83の第2回動アーム92は、第1筐体11の摺動溝12gを貫通して、第2筐体21の底面21eに形成された凹溝部21gに嵌まり込んだ状態となっている。
【0058】
図7(a)は、上記のように第1筐体11及び第2筐体21に連係して配置された手動操作部81の基本配置状態を示している。ただし、図7は動作状態の説明図であるため、破線で示したスライド溝11g及びスライド用ノブ84を除く他の構成部材を全て実線で示している。
【0059】
図7(a)は、第1筐体11の凹部表面を完全に覆うように第2筐体21が重なりあった第1スタイルの状態であり、この状態のとき、手動操作部81のスライド用ノブ84は、第1筐体11のスライド溝11gの上端部側に位置している。
【0060】
また、第2回動アーム92は、第1筐体11の摺動溝12gの下端部に位置しているとともに、第2筐体21の凹溝部21gの上端部に位置している。すなわち、摺動溝12gの下端部と凹溝部21gの上端部とによって挟持された状態となっている。
【0061】
また、ねじりコイルばね85の巻回部85bとは反対側の線材部分85cは、図示は省略しているが第1筐体11のフレーム部分に当接している。これにより、ねじりコイルばね85は、この線材部分85cを支点とし、中間部の巻回部85aを基点として、端部に形成された巻回部85cを広げる方向(すなわち、図7(a)中、矢符Y1方向)に付勢している。また、第2回動板90に形成された係止用突起部93は、第1回動板86に形成された3個の係止用凹部89a〜89cのうち、中央に位置している係止用凹部89bと係合している。
【0062】
これにより、第1回動板86は、支持軸12fから横方向に向かって配置されており、その先端部に取り付け固定された誘電体28がアンテナ18に最も接近した状態となっている。そして、本実施形態4では、この状態で、アンテナ18の周波数特性が最良となるように調整されている。
【0063】
そして、図7(a)に示す第1スタイルの状態から、図7(b)に示す第2スタイルの状態まで第2筐体21をX方向にスライド移動させると、そのスライド移動の過程(終盤)で、第2筐体21に形成された凹溝部21gの下端部が第2回動アーム92に当接し、ねじりコイルばね85の弾反力に対抗して当該第2回動アーム92を上方に押し上げるようにさらにスライド移動する。その結果、第2回動アーム92は、第1筐体11に形成された摺動溝12gの上端部に当接するまで摺動溝12g内を矢符Y2方向に摺動して停止し、摺動溝12gの上端部と凹溝部21gの下端部とで挟持された状態で保持される。このとき、第2回動アーム92のスライド移動に伴う第2回動板90の回動に連動して、第1回動板86も矢符Y2方向に略90度回動する。第2回動板90と第1回動板86とは、係止用突起部93と一つの係止用凹部89bとの係合力によってその係合状態が保持されているので、第2回動板90の回動に連動して第1回動板86も回動する。そして、この回動によって、誘電体28がアンテナ18から離隔することになる。
【0064】
次に、第1スタイルの状態及び第2スタイルの状態のときに、利用者がスライド用ノブ84を手動操作したときの手動操作部81の動作について説明する。
【0065】
図7(a)に示す第1スタイルの状態において、図7(c)に示すように利用者がスライド用ノブ84を下方にスライド移動させると、第2回動板90は、第2回動アーム92が摺動溝12gの下端部と凹溝部21gの上端部とによって挟持された状態となっているため、その状態(位置)を維持する。その結果、第2回動板90の係止用突起部93と第1回動板86の一つの係止用凹部89bとの係合が外れて、第1回動板86のみが矢符Y2方向に回動する。そして、スライド用ノブ84をスライド溝11gの下端部までスライド移動させると、第1回動板86が図7(a)に示す水平位置から図7(c)に示す垂直位置まで略90度回動し、この回動によって、誘電体28がアンテナ18から離隔することになる。このとき、第2回動板90の係止用突起部93が第1回動板86の一つの係止用凹部係合89aに係合するため、第1回動板86は図7(c)に示す状態に保持されることになる。
【0066】
なお、利用者がスライド用ノブ84を上方までスライド移動させると、上記と逆の動作によって第1回動板86のみが回動し、図7(a)に示す状態に復帰することになる。
【0067】
次に、図7(b)に示す第2スタイルの状態において、図7(d)に示すように利用者がスライド用ノブ84を上方にスライド移動させると、第2回動板90は第2回動アーム92が摺動溝12gの上端部と凹溝部21gの下端部とによって挟持された状態となっているため、その状態(位置)を維持する。その結果、第2回動板90の係止用突起部93と第1回動板86の一つの係止用凹部89bとの係合が外れて、第1回動板86のみが矢符Y1方向に回動する。そして、スライド用ノブ84をスライド溝11gの上端部までスライド移動させると、第1回動板86が図7(b)に示す垂直位置から図7(d)に示す水平位置まで略90度回動し、この回動によって、誘電体28がアンテナ18に接近することになる。このとき、第2回動板90の係止用突起部93が第1回動板86の一つの係止用凹部係合89cに係合するため、第1回動板86は図7(d)に示す状態に保持されることになる。
【0068】
なお、利用者がスライド用ノブ84を下方までスライド移動させると、上記と逆の動作によって第1回動板86のみが回動し、図7(b)に示す状態に復帰することになる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態1に係る携帯端末を示す外観図である。
【図2】本発明の実施形態2に係る携帯端末を示す外観図である。
【図3】本発明の実施形態3に係る携帯端末の要部の構造を示す概略説明図である。
【図4】本発明の実施形態4に係る携帯端末の構造を示す説明図であって、(a)は携帯端末を上側から見た分解斜視図、(b)は底面側から見た分解斜視図である。
【図5】(a)は手動操作部を組み立てた状態の斜視図、(b)は分解斜視図である。
【図6】本発明の実施形態4に係る携帯端末の外観斜視図である。
【図7】(a)〜(d)は手動操作部の動作状態を示す説明図である。
【図8】本体ユニットと表示ユニットとが完全に重なりあった状態と、本体ユニットと表示ユニットとが離隔された状態の2つの状態(スタイル)に変化可能な携帯端末の一般的な使用形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0070】
A1〜A4 携帯端末
11 第1筐体(本体ユニット)
11a 筐体上面
11g スライド溝
12 凹部
12a 凹部側面
12b 凹部表面
12e 凹部下面
12f 支持軸
12g 摺動溝
13 操作部
13a 機能キー
15 イヤピース
16 マイク
18 アンテナ
18a 給電点
21 第2筐体(表示ユニット)
21a 上面
21b 回動溝
21e 底面
21g 凹溝部
23 表示部
28 誘電体
31 スライド機構部(連結機構部)
61 回動機構部(連結機構部)
71 手動操作部(可動部)
72 回動板
73 支持軸
74 操作杆
81 手動操作部(可動部)
82 第1アーム部材
83 第2アーム部材
84 スライド用ノブ
85 ねじりコイルばね
86 第1回動板
87 第1回動アーム
88 軸挿通穴
89a〜89c 係止用凹部
90 第2回動板
91 軸挿通穴
92 第2回動アーム
93 係止用突起部
95 スライド板
96 挟持片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示ユニットと、操作入力部を有する本体ユニットと、前記本体ユニットの1つの面を前記表示ユニットの1つの面が覆う第1スタイルと、前記本体ユニットの前記1つの面の一部を露出する第2スタイルとの間で、前記表示ユニットを前記本体ユニットに対し可動可能に連結する連結機構部とを有する携帯端末であって、
人体相当の誘電体を前記表示ユニットまたは前記本体ユニットのいずれか一方に内蔵するとともに、電波受信用のアンテナを前記誘電体とは異なるユニットに内蔵し、前記連結機構部による前記第1スタイルから前記第2スタイルへの表示ユニットの可動に伴い、前記第1スタイル時の前記誘電体と前記アンテナとの位置が離隔するように設けられていることを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
請求項1記載の携帯端末において、
利用者が操作する手動操作部と、
前記手動操作部の操作に応じて、前記誘電体と前記アンテナとの位置を離隔させる方向または近接させる方向に前記誘電体またはアンテナのいずれか一方を可動可能とする可動部とをさらに備えたことを特徴とする携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−278173(P2009−278173A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124866(P2008−124866)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】