説明

携帯端末

【課題】導電部のさらなる有効活用を図ることができる携帯端末を提供すること。
【解決手段】携帯電話機は、操作ユニットに対する操作に応じて電気的な状態が変化するキースイッチと、キースイッチに接続され、キースイッチの電気的な状態の変化に基づいて操作ユニットへの操作を検出するCPUと、キースイッチに電気的に接続される給電部と、給電部に接続されると共に、キースイッチにより共振される信号を処理するRF回路部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部を有する携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、筐体と、筐体に設けられた操作部と、筐体に設けられ、操作部に対する操作に応じて電気的な状態が変化する導電部と、導電部に接続され、導電部の電気的な状態の変化に基づいて操作部への操作を検出する操作検出部と、を有する携帯端末が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−72204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような携帯端末では、導電部のさらなる有効活用が望まれていた。
【0005】
本発明は、導電部のさらなる有効活用を図ることができる携帯端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る携帯端末は、上記課題を解決するために、筐体と、前記筐体に設けられた操作部と、前記筐体に設けられ、前記操作部に対する操作に応じて電気的な状態が変化する導電部と、前記導電部に接続され、前記導電部の電気的な状態の変化に基づいて前記操作部への操作を検出する操作検出部と、前記導電部に接続される給電部と、前記給電部に接続されると共に、前記導電部により共振される信号を処理する信号処理部と、を備える。
【0007】
また、前記携帯端末は、前記導電部と接続され、高周波信号を遮断する高周波遮断部を備え、前記導電部における前記高周波遮断部と接続される側の端部から前記給電部と接続される側の端部までの経路長は、前記信号処理部により処理される信号の波長のn/4倍の長さであってもよい。
【0008】
また、前記操作検出部は、前記導電部の電気的な状態の変化に起因して生じる操作信号を検出することにより前記操作部に対する操作を検出し、前記高周波遮断部は、前記操作信号を通過可能に構成されてもよい。
【0009】
また、前記携帯端末は、前記導電部に接続され、特定の周波数帯の信号を遮断するフィルタをさらに備え、前記信号処理部は、前記給電部と前記フィルタとの間に形成される第1導電領域により共振される前記特定の周波数帯の信号および前記導電部における前記第1導電領域とは異なる領域である第2導電領域により共振される信号を処理可能に構成されてもよい。
【0010】
また、前記携帯端末は、前記信号処理部により処理される信号の経路に接続されるコンデンサを備えてもよい。
【0011】
また、前記携帯端末は、前記導電部に接続されるアンテナエレメントをさらに備え、前記給電部は、前記アンテナエレメントを介して前記導電部に接続され、前記信号処理部は、前記アンテナエレメントおよび前記導電部により共振される信号を処理してもよい。
【0012】
また、前記導電部と前記アンテナエレメントとは、容量的に接続されてもよい。
【0013】
また、前記携帯端末は、絶縁層が表層に形成され、前記導電部が導電パターンとして前記絶縁層よりも内側の層に形成される回路基板をさらに備え、前記導電部と前記アンテナエレメントとは、前記絶縁層を挟んで前記導電パターンと前記アンテナエレメントとを容量結合することにより容量的に接続されてもよい。
【0014】
また、前記アンテナエレメントは、弾性変形可能な弾性変形部をさらに備え、前記弾性変形部は、弾性変形した状態で前記絶縁層に当接してもよい。
【0015】
また、前記導電部は、前記操作部のキースイッチ、および/または前記信号処理部と前記キースイッチとを電気的に接続する信号線であってもよい。
【0016】
また、前記携帯端末は、前記信号線に接続される抵抗をさらに備え、前記高周波遮断部は、前記抵抗であってもよい。
【0017】
また、前記高周波遮断部は、前記導電部と前記操作検出部との間に設けられるインダクタであってもよい。
【0018】
また、前記操作部は、複数設けられ、前記導電部は、複数の前記操作部に対応して複数設けられ、複数の前記導電部は、それぞれがアンテナとして機能してもよい。
【0019】
また、前記携帯端末は、前記各導電部と前記給電部との接続を切り替える切替部をさらに備え、前記切替部は、複数の前記操作部のうち一の操作部が操作されると、操作された前記一の操作部に対応する一の導電部と異なる他の導電部と前記給電部とを選択的に接続してもよい。
【0020】
また、前記携帯端末は、複数の前記導電部が配置される回路基板と、前記回路基板における前記導電部の相対的な位置情報を記憶する記憶部と、をさらに備え、前記切替部は、複数の前記操作部のうち一の操作部が操作されると、前記位置情報に基づいて、操作された前記一の操作部に対応する一の導電部と異なる他の導電部と前記給電部とを選択的に接続してもよい。
【0021】
また、前記携帯端末は、複数の前記導電部が配置される回路基板と、前記筐体の傾斜角度を検出する傾斜角度検出部と、をさらに備え、前記切替部は、複数の前記操作部のうち一の操作部が操作されると、前記筐体の傾斜角度に基づいて、操作された前記一の操作部に対応する一の導電部と異なる他の導電部と前記給電部とを選択的に接続してもよい。
【0022】
また、前記携帯端末は、複数の前記導電部が配置される回路基板と、前記各操作部に対する対象物の近接状態を検出する近接状態検出部と、をさらに備え、前記切替部は、複数の前記操作部のうち一の操作部が操作されると、前記近接状態に基づいて、操作された前記一の操作部に対応する一の導電部と異なる他の導電部と前記給電部とを選択的に接続してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、導電部のさらなる有効活用を図ることができる携帯端末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の携帯端末の一実施形態に係る携帯電話機を前面側から視た図である。
【図2】携帯電話機の操作部近傍における部分分解斜視図である。
【図3】操作部、支持部材およびアンテナエレメントの構成を示す分解斜視図である。
【図4】キースイッチおよびアンテナエレメントに係る電気的な構成について示す図である。
【図5】キースイッチとアンテナエレメントとを電気的に接続するための他の構成例を示す図である。
【図6】キースイッチおよびアンテナエレメントに係る電気的な構成の変形例について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の携帯端末の好ましい一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の携帯端末の一実施形態に係る携帯電話機1を前面側から視た図である。本実施形態の携帯電話機1は、図1に示すように、ストレートタイプの携帯電話機1であり、その外形は、筐体2を主体として構成されている。
【0026】
筐体2は、図1に示すように、略直方体形状を有している。この筐体2は、カバーパネル21と、フロントケース22と、リアケース(図示せず)と、外部筐体としてのリアパネル(図示せず)と、バッテリカバー(図示せず)とを主体として構成される。
【0027】
筐体2の前面2aは、カバーパネル21およびフロントケース22を主体として構成されている。この筐体2の前面2aには、表示部30および操作ユニット40が設けられている。
【0028】
図2は、携帯電話機1の操作ユニット40近傍における部分分解斜視図である。
表示部30は、フロントケース22に設けられた開口(図示せず)に各種情報を表示させる液晶モジュール222が配置されて構成される。
【0029】
操作ユニット40は、フロントケース22の外面に複数の操作キー部材40aが露出されて構成される。複数の操作キー部材40aそれぞれには、所定の機能が割り当てられる(キー・アサイン)。携帯電話機1は、複数の操作キー部材40aが使用者により押圧されることで、これら複数の操作キー部材40aそれぞれに割り当てられている機能に応じた動作が実行される。操作ユニット40は、筐体2の長手方向における一方の端部である下端部側に形成される。
カバーパネル21は、透明部材により構成される。カバーパネル21は、フロントケース22の外面側において、液晶モジュール222が配置された開口を覆うように配置される。
【0030】
また、筐体2の前面2aには、携帯電話機1の使用時に通話の相手方の音声が出力される音声出力部26が形成される。音声出力部26は、筐体2の長手方向における他方の端部である上端部側に形成される。
【0031】
液晶モジュール222のリアケース側には、各種電子部品が実装されるメイン基板50が配置される。つまり、液晶モジュール222は、メイン基板50のフロントケース22側に配置される。
【0032】
操作ユニット40は、操作キー部材40a(操作部)と、キー基板40b(回路基板)とを含んで構成される。
操作キー部材40aは、上述したように複数の操作キー部材により構成される。
キー基板40bは、複数のキースイッチ40cを有する。複数のキースイッチ40cそれぞれは、各操作キー部材40aに対向する位置に配置される。キー基板40bに配置される複数のキースイッチ40cそれぞれは、例えば、椀状に湾曲して立体的に形成された金属板のメタルドームを有する構造になっている。メタルドームは、その椀状形状の頂点が押圧されると、キー基板40bの表面に形成(印刷)された電気回路に形成されるスイッチ電極40d(図4参照)に接触して電気的に導通するように構成される。
【0033】
操作ユニット40のリアケース側には、支持部材60および支持部材60に形成されたアンテナエレメント70が配置される。
【0034】
図3は、操作ユニット40、支持部材60およびアンテナエレメント70の構成を示す分解斜視図である。図3に示すように、複数のキースイッチ40cそれぞれには、複数の信号線(例えば、後述する図4に示す信号線L1,L2,L3)が接続されている。
【0035】
アンテナエレメント70は、板状の板金から構成され、支持部材60の側面および上面に形成されている。なお、本実施形態では、アンテナエレメント70は、板状の板金から構成されているが、他の導電性部材で構成されていてもよい。
【0036】
また、アンテナエレメント70は、エレメント70aと、エレメント70bと、エレメント70cを有する。
エレメント70aおよび70bは、支持部材60の側面に沿って形成される。
【0037】
エレメント70cは、支持部材60の上面に形成される。エレメント70cの一端側はエレメント70aの端部およびエレメント70bの端部と結合している。これにより、エレメント70a、エレメント70bおよびエレメント70cは、一体となったアンテナエレメント70として形成される。
【0038】
また、エレメント70cの他端側の先端部71は、弾性変形可能な板ばね形状を有している。先端部71は、弾性変形した状態でキー基板40bの表面(図3中の破線部分)と当接する。
【0039】
図4は、キースイッチ40cおよびアンテナエレメント70に係る電気的な構成について示す図である。
【0040】
図4に示すように、携帯電話機1は、導電部としてのキースイッチ40cと、アンテナエレメント70と、操作検出部としてのCPU81と、信号処理部としてのRF回路部82と、給電部83と、導電部としての信号線L1,L2,L3と、高周波遮断部としての抵抗R1およびR2と、コンデンサC1と、フィルタF1とを備える。なお、図4では、キースイッチ40cは、単一のキースイッチ40cについて示しているが、他の複数のキースイッチ40cも同様の構成を備えている。
【0041】
CPU81は、メイン基板50上に実装され、携帯電話機1全体の動作を制御する。CPU81は、信号線L1および信号線L2を介して、キースイッチ40cのスイッチ電極40dと接続される。
【0042】
CPU81は、キースイッチ40c、信号線L1、信号線L2および信号線L3の電気的な状態の変化に基づいて、操作ユニット40への操作を検出する。
【0043】
具体的には、スイッチ電極40dにおいて、操作キー部材40aが押圧された状態と、押圧されない状態とでは電位差が生じるため、CPU81は、この電位差に基づいて、操作キー部材40aへの操作を検出する。
すなわち、CPU81は、キースイッチ40c、信号線L1、信号線L2および信号線L3の電気的な状態の変化に起因して生じる操作信号を検出することにより操作キー部材40aに対する操作を検出する。
【0044】
RF回路部82(信号処理部)は、CPU81および給電部83に接続される。RF回路部82は、導電部としてのキースイッチ40c、スイッチ電極40d、信号線L1、信号線L2およびアンテナエレメント70により共振される高周波信号を処理する。
給電部83は、アンテナエレメント70の端部およびRF回路部82と接続される。
【0045】
アンテナエレメント70は、一端側がコンデンサC1および信号線L3を介して、信号線L1に接続される。また、アンテナエレメント70は、他端側が給電部83に接続される。
【0046】
信号線L1および信号線L2は、一端側がキースイッチ40cに接続され、他端側がCPU81に接続される。また、信号線L3は、一端側が信号線L1に接続され、他端側がコンデンサC1に接続される。
信号線L1、信号線L2および信号線L3は、導電性の部材で構成され、後述する操作信号および操作キー部材40a等の導電部材により共振される信号等を伝達する。
抵抗R1は、信号線L1に接続される。抵抗R2は、信号線L2に接続される。
抵抗R1およびR2は、キースイッチ40c、アンテナエレメント70、信号線L1、信号線L2および信号線L3により共振される高周波信号を遮断する。なお、本実施形態では、高周波遮断部として抵抗R1およびR2を用いているが、これに限らず、例えば、インダクタやビーズ等を高周波遮断部として用いてもよい。
【0047】
ここで、信号線L1における抵抗R1と接続される側の端部および信号線L2における抵抗R2と接続される側の端部から、給電部83と接続される側の端部までの経路長は、RF回路部82により処理される信号の波長のn/4倍の長さとなっている。なお、nは1以上の整数である(n=1,2,3,・・・)。
【0048】
すなわち、信号線L1および信号線L2には、給電部83までの信号の経路長がRF回路部82により処理される信号の波長のn/4倍の長さとなる位置に、高周波信号を遮断する抵抗R1および抵抗R2が接続される。
【0049】
スイッチ電極40dは、上述したように、キースイッチ40cにおけるメタルドームを構成している。スイッチ電極40dは、操作キー部材40aに対向して設けられる。信号線L1および信号線L2は、スイッチ電極40dからCPU81まで延びている。また、スイッチ電極40dの表面積は、信号線L1および信号線L2の表面積よりも大きくなっている。
【0050】
また、抵抗R1およびR2は、キースイッチ40c、スイッチ電極40d、信号線L1および信号線L2の電気的な状態の変化に起因して生じる操作信号を通過可能に構成される。
【0051】
フィルタF1は、信号線L3に接続され、特定の周波数帯の信号を遮断する素子で構成される。
そして、RF回路部82は、給電部83とフィルタF1との間に形成される第1導電領域A1により共振される特定の周波数帯の第1の信号、および第1導電領域A1とは異なる領域、(例えば、給電部83と信号線L1の端部との間の第2導電領域A2)により共振される第2の信号を処理可能に構成される。
【0052】
具体的には、フィルタF1として800MHz以上の周波数を遮断するローパスフィルタを信号線L3に接続する。この場合、キースイッチ40c、スイッチ電極40d、信号線L1、信号線L3およびアンテナエレメント70(図4中の破線部)は、例えば、使用周波数帯として800MHzで共振するアンテナとして動作する。さらに、アンテナエレメント70は、単独で、使用周波数帯として2GHzで共振するアンテナとして動作する。
【0053】
コンデンサC1は、RF回路部82により処理される信号の経路を構成する信号線L1、信号線L2又は信号線L3の少なくともいずれか一箇所に接続される。
【0054】
図5は、アンテナエレメント70と信号線L1、信号線L2又は信号線L3とを電気的に接続するための他の構成例を示す図である。
図5に示すように、キースイッチ40cとアンテナエレメント70とは、容量的に接続されている。
【0055】
図5のように、キー基板40b上には、アンテナエレメント70の先端部71と対向する位置に導電パターン90が形成される。導電パターン90は、例えば、銅箔で構成され、信号線L1、信号線L2および信号線L3を構成する。
【0056】
さらに、導電パターン90の上下には、絶縁層91が形成される。
つまり、キー基板40bには、絶縁層91が表層および裏層に形成され、導電パターン90が上下の絶縁層91の間に形成される。そして、表層に形成された絶縁層91の上にさらにキースイッチ40cが形成されている。キースイッチ40cは、導電パターン90から表層に向かって延びるスルーホール92に形成された導電体に接続される。
【0057】
よって、信号線L1、信号線L2又は信号線L3、ひいてはキースイッチ40cとアンテナエレメント70の先端部71とは、絶縁層91を挟んで導電パターン90とアンテナエレメント70とを容量結合することにより容量的に接続される。
また、図5に示すように、アンテナエレメント70の先端部71は、弾性変形した状態で絶縁層91に当接する。なお、アンテナエレメント70の先端部71は、信号線L1、信号線L2および信号線L3を介さず、キースイッチ40cおよびスイッチ電極40dに直接的に容量結合してもよい。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、携帯電話機1は、筐体2に設けられ、操作ユニット40に対する操作に応じて電気的な状態が変化するキースイッチ40cと、キースイッチ40cに信号線L1、信号線L2および信号線L3を介して接続され、キースイッチ40c、信号線L1、信号線L2および信号線L3の電気的な状態の変化に基づいて操作ユニット40への操作を検出するCPU81と、キースイッチ40cに電気的に接続される給電部83と、給電部83に接続されると共に、キースイッチ40c、信号線L1、信号線L2および信号線L3により共振される信号を処理するRF回路部82と、を有する。
【0059】
これにより、携帯電話機1は、導電部としてのキースイッチ40c、信号線L1、信号線L2および信号線L3をアンテナエレメントとして用いることができるため、導電部としてのキースイッチ40cの有効活用を図ることができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、信号線L1の抵抗R1と接続される側の端部および信号線L2の抵抗R2と接続される側の端部から、給電部83と接続されるアンテナエレメント70の端部までの経路長は、RF回路部82により処理される信号の波長のn/4倍の長さとなっている。
【0061】
これにより、携帯電話機1は、アンテナエレメントとしてのキースイッチ40cにより受信される信号を処理する効率を向上させることができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、スイッチ電極40dは、操作キー部材40aに対向して設けられ、信号線L1および信号線L2は、スイッチ電極40dからCPU81まで延びている。
【0063】
また、スイッチ電極40dは、キースイッチ40cを構成する部材である。
ここで、キースイッチ40cは、人体(ユーザの指)に近接するため、導電部としてキースイッチ40cのみを用いた場合には、人体からの影響により導電部のアンテナ特性が変化する可能性がある。
【0064】
本実施形態では、キースイッチ40cに比べて人体から離間する信号線L1および信号線L2を用いて信号の共振を行う構成としたため、人体に起因する影響を低減することができる。
【0065】
ここで、アンテナエレメント70からみると、キースイッチ40c、信号線L1および信号線L2は金属であるため、これらのキースイッチ40c、信号線L1および信号線L2によってアンテナエレメント70のアンテナ特性が変化する可能性がある。また、信号線L1および信号線L2のみをアンテナエレメント70と接続しても、キースイッチ40cのスイッチ電極40dの表面積が信号線L1および信号線L2よりも大きいため、スイッチ電極40dの影響によりアンテナエレメント70のアンテナ特性が変化するおそれがある。
【0066】
本実施形態では、導電部としてキースイッチ40c、信号線L1および信号線L2を用い、信号線L1および信号線L2に抵抗R1および抵抗R2を接続した。そのため、携帯電話機1は、アンテナエレメント70のアンテナ特性の劣化を抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、CPU81は、キースイッチ40cの電気的な状態の変化に起因して生じる操作信号を検出することにより操作ユニット40に対する操作を検出する。抵抗R1およびR2は、キースイッチ40cの電気的な状態の変化に起因して生じる操作信号を通過可能に構成される。
【0068】
これにより、携帯電話機1は、アンテナエレメントとしてのキースイッチ40cにより受信される信号を処理する効率を向上させつつ、キースイッチ40cに係る操作ユニット40の操作性が低下することを抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態によれば、携帯電話機1は、信号線L3に接続され、特定の周波数帯の信号を遮断するフィルタF1を備える。そして、RF回路部82は、給電部83とフィルタF1との間に形成される第1導電領域A1により共振される特定の周波数帯の第1の信号、および第1導電領域A1とは異なる領域である第2導電領域A2により共振される第2の信号を処理可能に構成される。
【0070】
これにより、携帯電話機1は、導電領域A1と導電領域A2とで異なる使用周波数帯の信号を処理可能となるため、2つの使用周波数帯に対応することが可能となる。なお、導電領域A2は、給電部83と信号線L1の端部との間に形成されていたが、これに限らない。すなわち、導電領域A2は、給電部83に接続される領域であって、キースイッチ40c、信号線L1、信号線L2、信号線L3およびアンテナエレメント70の少なくとも一つにより形成される領域であればよい。
【0071】
また、本実施形態によれば、携帯電話機1は、RF回路部82により処理される信号の経路を構成する信号線L1、信号線L2又は信号線L3に接続されるコンデンサC1を備える。
【0072】
ここで、操作キー部材40aが押圧されると、信号線L1には操作信号に係る直流電流が流れる。この直流電流がアンテナエレメント70を通じてRF回路部82に入力されると、直流電流によってRF回路部82の特性が変わる可能性がある。また、直流電流がメイン基板50におけるグランド(GND)電位と短絡する場合も考えられる。本実施形態に係る携帯電話機1においては、コンデンサC1が信号線L1、信号線L2又は信号線L3に接続されるため、操作信号に係る直流電流が遮断される。これにより、携帯電話機1は、操作信号に係る直流電流に起因するRF回路部82の特性が変わることを抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、給電部83は、アンテナエレメント70を介してキースイッチ40cに接続される。さらに、RF回路部82は、アンテナエレメント70およびキースイッチ40cにより共振される信号を処理する。
【0074】
これにより、キースイッチ40cをアンテナエレメント70の一部として動作させることができる。そのため、携帯電話機1は、アンテナエレメント全体の大きさを小さくして、アンテナエレメントの小型化を実現することができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、キースイッチ40cとアンテナエレメント70とは、容量的に接続されている。これにより、携帯電話機1は、キースイッチ40cとアンテナエレメント70とを接続するための構成を簡素化することができる。さらに、携帯電話機1は、キースイッチ40cとアンテナエレメント70とが容量的に接続されることにより、人体に起因する影響が低減される。したがって、携帯電話機1は、キースイッチ40cに係る操作ユニット40の操作性が低下することを抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態によれば、キースイッチ40cとアンテナエレメント70の先端部71とは、絶縁層91を挟んで導電パターン90とアンテナエレメント70とを容量結合することにより容量的に接続される。これにより、携帯電話機1は、キースイッチ40cとアンテナエレメント70とを接続するための構成を簡素化することができる。
【0077】
また、本実施形態によれば、アンテナエレメント70の先端部71は、弾性変形した状態で絶縁層91に当接する。これにより、携帯電話機1は、キースイッチ40cとアンテナエレメント70とを確実に容量結合させることができる。
【0078】
(変形例)
本実施形態に係る携帯電話機1は、図4に示した構成に限らず、図6に示すような構成を用いてもよい。図6は、キースイッチ42a,42bおよびアンテナエレメント70に係る電気的な構成の変形例について示す図である。
【0079】
図6に示すように、携帯電話機1は、導電部としてのキースイッチ42a,42bと、切替部としてのスイッチ43と、アンテナエレメント70と、操作検出部としてのCPU81と、信号処理部としてのRF回路部82と、給電部83と、記憶部としてのメモリ84と、傾斜角度検出部としての加速度センサ85と、近接状態検出部としての近接センサ86と、導電部としての信号線L1,L2,L3と、高周波遮断部としての抵抗R1,R2,R3およびR4と、コンデンサC1と、フィルタF1とを備える。また、図6において、図4に示す構成と同一の構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0080】
なお、図6に示すスイッチ電極41a,41b及びキースイッチ42a,42bは、図4に示すスイッチ電極40d及びキースイッチ40cと同一の構成である。実際には、キースイッチは、2つだけではなく3つ以上存在するが、図6では、説明の都合上、2つのキースイッチの場合について説明する。
【0081】
スイッチ43は、キースイッチ42aと接続される固定接点S1と、キースイッチ42bと接続される固定接点S2と、信号線L3と接続される可動接点S3と、を有する。スイッチ43は、CPU81の制御に従って、可動接点S3を固定接点S1又は固定接点S2のいずれかと選択的に接続させる。
【0082】
メモリ84は、キー基板40bにおけるキースイッチ42a,42bそれぞれの相対的な位置情報を記憶する。位置情報は、例えば、キースイッチ42a,42bそれぞれの相対的な位置関係を示したテーブルである。
【0083】
加速度センサ85は、例えば、3軸方向の加速度を検出可能である。加速度センサ85は、携帯電話機1の傾斜が変化する際に、その変化を加速度データとして検出している。そして、CPU81は、検出された加速度データに基づいて、3軸ごとの傾斜角度を求める所定の演算を行う。これにより、CPU81は、携帯電話機1がどの方向に向いているのかを把握する。
【0084】
近接センサ86は、例えば、フォトセンサ、赤外線センサ等で構成される。近接センサ86は、操作キー部材40aの近傍に複数配置される。CPU81は、近接センサ86により、どの操作キー部材40aに対象物(例えば、人体)が近づいたかを把握する。
【0085】
図6に示すようにキースイッチ42a,42bは、操作キー部材40aそれぞれに対応して複数個設けられる。そして、各キースイッチ42a,42bは、それぞれがアンテナとして機能する。
具体的には、CPU81は、キースイッチ42a,42bの一方に対応する操作キー部材40aが操作されると、キースイッチ42a,42bの他方と給電部83とをスイッチ43により接続する。これにより、キースイッチ42a,42bの他方は、アンテナとして機能する。
【0086】
このように、携帯電話機1は、操作されていないキースイッチ42a,42bの他方に給電する。すなわち、携帯電話機1は、操作されたキースイッチ42a,42bの一方に給電しない。このため、携帯電話機1は、キースイッチ42a,42bのいずれかにより共振される信号による人体への影響(SAR;Specific Absorption Rate)を低減できる。
【0087】
また、CPU81は、キースイッチ42a,42bのうち、受信する周波数の信号の強度が強い側にスイッチ43を切り替えてもよい。これにより、携帯電話機1は、キースイッチ42a,42bをダイバーシチアンテナとして機能させることができる。
【0088】
また、図6には図示しないが、図3に示すようにキースイッチ40cは、3個以上形成されている。CPU81は、キースイッチ40cのいずれか1つに対応する操作キー部材40aが操作されると、メモリ44に記憶された位置情報に基づいて、キースイッチ40cのいずれか1つから最も離れた位置に配置されたキースイッチ40cの1つと給電部83とをスイッチ43により接続する。
【0089】
例えば、図3において、キースイッチ40cは、キー基板40b上に格子状に配置されている。図1における複数の操作キー部材40aのうち、左下に配置される操作キー部材40a(「3」キー)が操作されると、当該操作キー部材40aに対応するキースイッチ40cの電気的な状態が変化する。CPU81は、この電気的な状態の変化を検出すると、図1において右上に配置される操作キー部材40a(「2」キー)に対応するキースイッチ40cと給電部83とをスイッチ43により接続する。これにより、右上に配置されるキースイッチ40cは、アンテナとして機能する。したがって、携帯電話機1は、キースイッチ40cにより共振される信号による人体への影響をより適切に低減できる。
【0090】
また、CPU81は、キースイッチ40cに対応する操作キー部材40aが操作されると、加速度センサ85により検出された筐体2の傾斜角度に基づいて、操作された操作キー部材40aに対応するキースイッチ40c以外のキースイッチ40cと給電部83とをスイッチ43により接続する。
【0091】
例えば、CPU81は、加速度センサ85により鉛直上向きを検出する。CPU81は、筐体2において鉛直上向きに配置されており、かつ操作されたキースイッチ40c以外のキースイッチ40cと給電部83とをスイッチ43により接続する。これにより、筐体2において鉛直上向きに配置されており、かつ操作されたキースイッチ40c以外のキースイッチ40cは、アンテナとして機能する。したがって、携帯電話機1は、キースイッチ40cにより共振される信号による人体への影響をより適切に低減できる。なお、筐体2において鉛直上向きに配置されるキースイッチ40cとは、筐体2の前面2aに配置されるキースイッチだけでなく、筐体2の側面や背面に配置されるキースイッチ(図示せず)も含む。
【0092】
又は、CPU81は、操作キー部材40aの近傍に配置された近接センサ86により検出された対象物(例えば、人体)の近接状態(対象物が近接しているか否か)に基づいて、対象物が近接している操作キー部材40aに対応するキースイッチ40c以外のキースイッチ40cと給電部83とをスイッチ43により接続する。
これにより、対象物が近接しているキースイッチ40c以外のキースイッチ40cは、アンテナとして機能する。したがって、携帯電話機1は、キースイッチ40cにより共振される信号による人体への影響をより適切に低減できる。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。例えば、上述した実施形態の変形例として、抵抗R1およびR2を配置する位置を調整することで、キースイッチ40cのみ、又はキースイッチ40c、信号線L1および信号線L2のいずれかを導電部として用いてもよい。
【0094】
例えば、信号線L1およびL2において、抵抗R1およびR2をスイッチ電極40dの直近に配置することでキースイッチ40cのみを導電部として用いることができる。また、信号線L1およびL2において、抵抗R1およびR2をスイッチ電極40dから離れた位置に配置することでキースイッチ40c、信号線L1および信号線L2を導電部として用いることができる。
【0095】
なお、本発明の携帯端末においては、抵抗R1、抵抗R2、フィルタF1、コンデンサC1、アンテナエレメント70は必須の構成要件ではなく、本発明の携帯端末は、上述したように、筐体2に設けられ、操作ユニット40に対する操作に応じて電気的な状態が変化するキースイッチ40cと、キースイッチ40cの電気的な状態の変化に基づいて操作ユニット40への操作を検出するCPU81と、キースイッチ40cに電気的に接続される給電部83と、給電部83に接続されると共に、キースイッチ40cにより共振される信号を処理するRF回路部82とを備えることにより実現されるものである。
【0096】
また、上述した実施形態において、携帯端末としての携帯電話機1について説明したが、これに限定されず、PHS(登録商標;Personal Handy phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)、ポータブルナビゲーション装置、パソコン、ノートパソコン、携帯ゲーム装置等であってもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 携帯電話機(携帯端末)
2 筐体
40 操作部
40b キースイッチ(導電部)
81 CPU(操作検出部)
82 RF回路部(信号処理部)
83 給電部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に設けられた操作部と、
前記筐体に設けられ、前記操作部に対する操作に応じて電気的な状態が変化する導電部と、
前記導電部に接続され、前記導電部の電気的な状態の変化に基づいて前記操作部への操作を検出する操作検出部と、
前記導電部に接続される給電部と、
前記給電部に接続されると共に、前記導電部により共振される信号を処理する信号処理部と、を備える携帯端末。
【請求項2】
前記導電部と接続され、高周波信号を遮断する高周波遮断部をさらに備え、
前記導電部における前記高周波遮断部と接続される側の端部から前記給電部と接続される側の端部までの経路長は、前記信号処理部により処理される信号の波長のn/4倍(n=1,2,3,・・・)の長さである、請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記操作検出部は、前記導電部の電気的な状態の変化に起因して生じる操作信号を検出することにより前記操作部に対する操作を検出し、
前記高周波遮断部は、前記操作信号を通過可能に構成される、請求項2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記導電部に接続され、特定の周波数帯の信号を遮断するフィルタをさらに備え
前記信号処理部は、前記給電部と前記フィルタとの間に形成される第1導電領域により共振される前記特定の周波数帯の信号および前記導電部における前記第1導電領域とは異なる領域である第2導電領域により共振される信号を処理可能に構成される、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記信号処理部により処理される信号の経路に接続されるコンデンサを備える、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の携帯端末。
【請求項6】
前記導電部に接続されるアンテナエレメントをさらに備え、
前記給電部は、前記アンテナエレメントを介して前記導電部に接続され、
前記信号処理部は、前記アンテナエレメントおよび前記導電部により共振される信号を処理する、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の携帯端末。
【請求項7】
前記導電部と前記アンテナエレメントとは、容量的に接続される、請求項6に記載の携帯端末。
【請求項8】
絶縁層が表層に形成され、前記導電部が導電パターンとして前記絶縁層よりも内側の層に形成される回路基板をさらに備え、
前記導電部と前記アンテナエレメントとは、前記絶縁層を挟んで前記導電パターンと前記アンテナエレメントとを容量結合することにより容量的に接続される、請求項7に記載の携帯端末。
【請求項9】
前記アンテナエレメントは、弾性変形可能な弾性変形部を備え、
前記弾性変形部は、弾性変形した状態で前記絶縁層に当接する、請求項8に記載の携帯端末。
【請求項10】
前記導電部は、前記操作部のキースイッチ、および/または前記信号処理部と前記キースイッチとを電気的に接続する信号線である、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の携帯端末。
【請求項11】
前記高周波遮断部は、前記導電部と前記操作検出部との間に設けられる抵抗である、請求項3に記載の携帯端末。
【請求項12】
前記高周波遮断部は、前記導電部と前記操作検出部との間に設けられるインダクタである、請求項3に記載の携帯端末。
【請求項13】
前記操作部は、複数設けられ、
前記導電部は、複数の前記操作部に対応して複数設けられ、
複数の前記導電部は、それぞれがアンテナとして機能する、請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の携帯端末。
【請求項14】
前記各導電部と前記給電部との接続を切り替える切替部をさらに備え、
前記切替部は、複数の前記操作部のうち一の操作部が操作されると、操作された前記一の操作部に対応する一の導電部と異なる他の導電部と前記給電部とを選択的に接続する、請求項13に記載の携帯端末。
【請求項15】
複数の前記導電部が配置される回路基板と、
前記回路基板における前記導電部の相対的な位置情報を記憶する記憶部と、をさらに備え、
前記切替部は、複数の前記操作部のうち一の操作部が操作されると、前記位置情報に基づいて、操作された前記一の操作部に対応する一の導電部と異なる他の導電部と前記給電部とを選択的に接続する、請求項14に記載の携帯端末。
【請求項16】
複数の前記導電部が配置される回路基板と、
前記筐体の傾斜角度を検出する傾斜角度検出部と、をさらに備え、
前記切替部は、複数の前記操作部のうち一の操作部が操作されると、前記筐体の傾斜角度に基づいて、操作された前記一の操作部に対応する一の導電部と異なる他の導電部と前記給電部とを選択的に接続する、請求項14に記載の携帯端末。
【請求項17】
複数の前記導電部が配置される回路基板と、
前記各操作部に対する対象物の近接状態を検出する近接状態検出部と、をさらに備え、
前記切替部は、複数の前記操作部のうち一の操作部が操作されると、前記近接状態に基づいて、操作された前記一の操作部に対応する一の導電部と異なる他の導電部と前記給電部とを選択的に接続する、請求項14に記載の携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−199852(P2011−199852A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35019(P2011−35019)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】