説明

携帯電話システム、該システムに用いられる加入者データ設定方法及び加入者データ設定制御プログラム

【課題】
無線基地局を介して携帯電話機と通信を行う在圏移動通信交換局で保持されている加入者データに不具合が生じた場合に、携帯電話機からの操作により不具合を解消する。
【解決手段】VMCC(在圏移動通信交換局)23の加入者データ記憶部23bに記憶されている加入者データBに不具合が発生して携帯電話機21が“圏外”表示や発着信不能などの状態になった場合でも、同携帯電話機21の使用者の操作により、同携帯電話機21からVMCC23へ加入者データリセット要求が出力され、同VMCC23で同加入者データリセット要求により、該当する加入者データBが除去された後、SCP24から携帯電話機21に対応する加入者データAがダウンロードされる。このため、オペレータを通すことなく、加入者データBが即座に復旧し、携帯電話システムのサービス性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯電話システム、該システムに用いられる加入者データ設定方法及び加入者データ設定制御プログラムに係り、特に、無線基地局を介して携帯電話機と通信を行う在圏移動通信交換局で保持されている加入者データに、何らかの要因により不具合が生じることにより発着信不能などの状態になる場合に用いて好適な携帯電話システム、該システムに用いられる加入者データ設定方法及び加入者データ設定制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話システムでは、携帯電話機が、無線基地局、在圏移動通信交換局、及び関門移動通信交換局を介して通常の電話回線に接続される。携帯電話機が使用する無線電波の周波数チャネルには限りがあるため、混信を起こさないようにする必要がある。そのため、1つの無線基地局の出力を小さくして受け持つ範囲(ゾーン)を小さくし、離れたゾーン同士で同一の周波数チャネルを用い、同じ周波数チャネルを繰り返し使用する多数の小ゾーンが構成されている。また、携帯電話機は、いろいろな場所へ移動するため、サービス制御局や在圏移動通信交換局などで現在の位置のゾーンや電波の受信状態が常時把握されている。このため、携帯電話機の呼出しの際には、最も良い状態で受信できる無線基地局から呼び出される。また、携帯電話機は、通話中に隣のゾーンに移動しても、新しいゾーンで使用可能なチャネルに自動的に切り換えられため、通話がとぎれないようになっている。
【0003】
この種の携帯電話システムは、従来では、たとえば図3に示すように、携帯電話機(Mobile Station、MS)11と、無線基地局(Base Station、BS)12,13と、在圏移動通信交換局(Visit Mobile Control Center 、VMCC)14,15と、関門移動通信交換局(Gateway Mobile Control Center 、GMCC)16と、サービス制御局(Service Control Point 、SCP)17とから構成されている。携帯電話機11は、無線電波Wにより無線基地局12に無線接続する。無線基地局12は、受け持ちの小ゾーンZ1内で所定の周波数の無線電波Wを用いて携帯電話機11と通信を行う。小ゾーンZ1は、無線基地局12から放射される無線電波Wが届く領域である。同様に、無線基地局13も、受け持ちの小ゾーンZ2内で所定の周波数の電波を用いて図示しない携帯電話機と通信を行う。小ゾーンZ2は、無線基地局13から放射される電波が届く領域である。
【0004】
VMCC14は、受け持ちの位置登録エリアSA内で無線基地局12,13の受け持ちの小ゾーンZ1,Z2に在圏する携帯電話機の位置を常時把握して登録すると共に、たとえば無線基地局12を介して携帯電話機11と通信を行う。位置登録エリアSAは、VMCC14によってコントロールされる領域である。同様に、VMCC15も、受け持ちの位置登録エリアSB内で無線基地局の受け持ちの小ゾーンに在圏する携帯電話機の位置を常時把握して登録すると共に、同無線基地局を介して携帯電話機と通信を行う。位置登録エリアSBは、VMCC15によってコントロールされる領域である。携帯電話機11の位置が位置登録エリアSAから外れて位置登録エリアSBに移動した場合、同携帯電話機11は同位置登録エリアSBで位置登録される。GMCC16は、受け持ちのVMCC14,15を一般電話回線網NWに接続する。SCP17は、VMCC14,15の受け持ちの位置登録エリアSA,SB内の各無線基地局(BS)の受け持ちの小ゾーンに在圏する各携帯電話機の位置情報を含む加入者に関する情報を加入者データとして管理する。
【0005】
図4は、図3中の携帯電話機11、無線基地局12、VMCC14及びSCP17の要部を示す図である。
SCP17は、HLR(Home Location Register、ホームロケーションレジスタ)17aを有している。HLR17aは、呼処理部17bと、加入者データ原本記憶部17cとを有している。加入者データ原本記憶部17cは、加入者データの原本を加入者データAとして記憶する。呼処理部17bは、加入者データ原本記憶部17cに対して、加入者データAの書込み又は読出しを行う。VMCC14は、呼処理部14aと、加入者データ記憶部14bとを有している。加入者データ記憶部14bは、HLR17aの加入者データ原本記憶部17cから読み出された加入者データAをダウンロードして加入者データBとして記憶する。呼処理部14aは、加入者データ記憶部14bに対して、加入者データBの書込み又は読出しを行う。
【0006】
この携帯電話システムでは、携帯電話機11がVMCC14の管理しているエリアに在圏している場合、同VMCC14は、HLR17aの加入者データ原本記憶部17cに保持されている加入者データAをダウンロードして加入者データ記憶部14bに加入者データBとして保持している。そして、携帯電話機11が位置登録又は発着信などの動作をする場合、加入者データ記憶部14bに保持されている加入者データBを参照する。このとき、何らかの要因により、加入者データBに不具合(たとえば、データの誤操作など)が発生し、携帯電話機11が「圏外」表示や発着信不能などの状態になることがある。この場合、ユーザは、携帯電話会社のサービス部門や最寄の携帯電話機販売店に連絡し、オペレータの手を介することにより、加入者データBの不具合を解消する必要がある。
【0007】
上記の携帯電話システムの他、従来、この種の技術としては、たとえば、次のような文献に記載されるものがあった。
特許文献1に記載された分散処理型サービス制御局のリソース初期設定方法では、交換機で特定のネットワーク呼の処理が継続不可能となった場合、初期設定すべき呼に対応した対話に対して初期設定要求信号が、対話ID及びプロセサIDが付加されてサービス制御局に送信される。複数のうちの1つのサービス制御用プロセサが通信制御用プロセサにより選択され、設定要求信号を受信すると、管理しているリソースを抽出し、初期化処理の結果の応答信号を同通信制御用プロセサに返送する。この通信制御用プロセサは、初期設定要求信号に対する応答信号を交換機に返送する。
【0008】
特許文献2に記載されたサービス特番案内サービスシステムでは、交換機により、HLR(加入者データ管理システム)から携帯端末に対応するサービス契約情報やサービス契約に対応する音源装置の識別番号を取り込むと共に、識別番号に基づいて音源装置からのサービス特番案内の情報を携帯端末に送信する。
【0009】
特許文献3に記載された電子交換装置では、加入者及びトランクが収容された通話路ネットワークと、加入者及びトランクに関わる加入者データ及び局データを加入者データ/局データ記憶用RAMに記憶する。又、加入者データ/局データ記憶用RAMに記憶される加入者データ/局データの初期値を初期値記憶用ROMに記憶しておく。これらの加入者データ/局データ記憶用RAM及び初期値記憶用ROMにはCPUが接続され、データの記憶及び読取り制御が行われる。加入者データ/局データ記憶用RAMを強制的に初期化するには、データリセットスイッチを押下する。すると、リセット回路及びデータリセット回路が動作し、ROMに設けられている初期化転送プログラムが起動する。これにより、加入者データ/局データ記憶用RAMが強制的に初期化される。
【特許文献1】特開2000−50324号公報(要約書、図1)
【特許文献2】特開2000−278409号公報(要約書、図1)
【特許文献3】特開平7−99675号公報(第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の携帯電話システムでは、次のような問題点があった。
すなわち、図4の携帯電話システムでは、在圏移動通信交換局(VMCC)14で管理されている加入者データBについては、携帯電話機11のユーザが操作できることはなく、全て局側のオペレータの手に委ねられている。このため、加入者データBに不具合が発生した場合、復旧のためには、ユーザが携帯電話会社のサービス部門や最寄の携帯電話機販売店に連絡し、オペレータが加入者データのクリアを行う必要があるため、手続きが煩雑になり、また、復旧までに時間を要するため、サービス性が著しく低下するという問題点がある。
【0011】
また、特許文献1に記載されたリソース初期設定方法は、交換機から初期設定要求信号を受信した後のサービス制御局内の処理についての発明であり、この発明とは、主旨が異なっている。
【0012】
特許文献2に記載されたサービスシステムは、サービス特番情報を携帯端末に送信する発明であり、この発明とは、主旨が異なっている。
【0013】
特許文献3に記載された電子交換装置は、交換装置において機能追加などでデータを初期設定する場合の発明であり、この発明とは、主旨が異なっている。
【0014】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、在圏移動通信交換局(VMCC)に保持されている加入者データに不具合が発生した場合でも、容易に復旧させることのできる携帯電話システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、複数の携帯電話機と、受け持ちの小ゾーン内で前記各携帯電話機と通信を行う複数の無線基地局と、前記各携帯電話機の位置情報を含む加入者に関する情報を加入者データとして管理するサービス制御局と、受け持ちの位置登録エリア内で前記各無線基地局の受け持ちの小ゾーンに在圏する前記各携帯電話機の位置する小ゾーンを常時把握して登録すると共に、前記サービス制御局から前記各携帯電話機に対応する前記加入者データをダウンロードして保持し、前記加入者データに基づいて前記各無線基地局を介して任意の前記携帯電話機と通信を行う複数の在圏移動通信交換局と、受け持ちの前記各在圏移動通信交換局を一般電話回線網に接続する関門移動通信交換局とを備えてなる携帯電話システムに係り、前記各携帯電話機は、当該携帯電話機の使用者の操作により、前記在圏移動通信交換局に保持されている前記加入者データをリセットするための加入者データリセット要求を出力する加入者データリセット手段が設けられ、前記各在圏移動通信交換局は、前記加入者データリセット要求により、該当する前記加入者データが除去された後、再び前記サービス制御局から当該携帯電話機に対応する前記加入者データをダウンロードする加入者データダウンロード手段が設けられていることを特徴としている。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の携帯電話システムに係り、前記サービス制御局は、前記加入者データを保持するホームロケーションレジスタを備えてなることを特徴としている。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の携帯電話システムに係り、前記ホームロケーションレジスタは、前記加入者データの原本を記憶する加入者データ原本記憶部と、該加入者データ原本記憶部に対して、前記加入者データの書込み又は読出しを行う呼処理部とを備えてなることを特徴としている。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の携帯電話システムに係り、前記在圏移動通信交換局の加入者データダウンロード手段は、前記ホームロケーションレジスタの前記加入者データ原本記憶部から読み出された加入者データを記憶する加入者データ記憶部と、前記加入者データリセット要求により、前記加入者データ記憶部から該当する前記加入者データを除去した後、再び前記サービス制御局の前記加入者データ原本記憶部から当該携帯電話機に対応する前記加入者データをダウンロードして前記加入者データ記憶部に書き込む呼処理部とを備えてなることを特徴としている。
【0019】
請求項5記載の発明は、加入者データ設定方法に係り、複数の携帯電話機と、受け持ちの小ゾーン内で前記各携帯電話機と通信を行う複数の無線基地局と、前記各携帯電話機の位置情報を含む加入者に関する情報を加入者データとして管理するサービス制御局と、受け持ちの位置登録エリア内で前記各無線基地局の受け持ちの小ゾーンに在圏する前記各携帯電話機の位置する小ゾーンを常時把握して登録すると共に、前記サービス制御局から前記各携帯電話機に対応する前記加入者データをダウンロードして保持し、前記加入者データに基づいて前記各無線基地局を介して任意の前記携帯電話機と通信を行う複数の在圏移動通信交換局と、受け持ちの前記各在圏移動通信交換局を一般電話回線網に接続する関門移動通信交換局とを備えてなる携帯電話システムに用いられ、前記各携帯電話機が、当該携帯電話機の使用者の操作により、前記在圏移動通信交換局に保持されている前記加入者データをリセットするための加入者データリセット要求を出力し、前記各在圏移動通信交換局が、前記加入者データ除去要求により該当する前記加入者データを除去した後、再び前記サービス制御局から当該携帯電話機に対応する前記加入者データをダウンロードすることを特徴としている。
【0020】
請求項6記載の発明は、加入者データ設定制御プログラムに係り、コンピュータに請求項1乃至4のうちのいずれか一に記載の携帯電話システムを制御させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
この発明の構成によれば、VMCC(在圏移動通信交換局)に保持されている加入者データに不具合が発生した場合、携帯電話機の使用者の操作により、同携帯電話機からVMCCへ加入者データリセット要求を出力し、同VMCCで同加入者データリセット要求により、該当する加入者データを除去した後、SCP(サービス制御局)から携帯電話機に対応する加入者データをダウンロードするので、オペレータを通すことなく、加入者データが即座に復旧し、携帯電話システムのサービス性を向上できる。
【0022】
又、VMCCの加入者データ記憶部に記憶されている加入者データに不具合が発生した場合、携帯電話機の使用者の操作により、同携帯電話機からVMCCへ加入者データリセット要求が出力され、同VMCCで同加入者データリセット要求により、該当する加入者データが除去された後、SCPに設けられているホームロケーションレジスタの加入者データ原本記憶部から携帯電話機に対応する加入者データがダウンロードされるので、オペレータを通すことなく、加入者データが即座に復旧し、携帯電話システムのサービス性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
在圏移動通信交換局に保持されている加入者データに不具合が発生した場合、携帯電話機の使用者の操作により、同携帯電話機から同在圏移動通信交換局へ加入者データリセット要求を出力し、同在圏移動通信交換局で同加入者データリセット要求により、該当する加入者データを除去した後、サービス制御局から携帯電話機に対応する加入者データをダウンロードする携帯電話システムを提供する。
【実施例】
【0024】
図1は、この発明の実施例である携帯電話システムの要部の電気的構成を示すブロック図である。
この例の携帯電話システムは、同図に示すように、携帯電話機21と、無線基地局22と、在圏移動通信交換局(VMCC)23と、サービス制御局(SCP)24とから構成されている。携帯電話機21は、無線電波Wにより最も近くにある無線基地局22に無線接続する。また、携帯電話機21は、自機の位置(どこの小ゾーンにいるかを示す)を知らせるために位置登録用信号を周期的に無線基地局22に送信している。
【0025】
特に、この実施例では、携帯電話機21は、同携帯電話機21全体を制御するCPU(中央処理装置)21a及び同CPU21aを動作させるための加入者データ設定制御プログラムが記録されたROM(リード・オンリ・メモリ)21bを有し、使用者の操作により、VMCC23に保持されている加入者データをリセットするための加入者データリセット要求を示すパラメータを位置登録用信号に設定して無線基地局22に送信する。無線基地局22は、従来の図3中の無線基地局12と同様に、受け持ちの小ゾーン内で所定の周波数の無線電波Wを用いて携帯電話機21と通信を行う。小ゾーンは、無線基地局22から放射される無線電波Wが届く領域である。
【0026】
VMCC23は、受け持ちの位置登録エリア内で無線基地局22の受け持ちの小ゾーンに在圏する携帯電話機21の位置を常時把握して登録すると共に、無線基地局22を介して携帯電話機21と通信を行う。位置登録エリアは、VMCC23によってコントロールされる領域である。又、VMCC23は、図3中の関門移動通信交換局16と同様の図示しない関門移動通信交換局(GMCC)に接続され、同GMCCは、受け持ちのVMCCを一般電話回線網に接続する。
【0027】
特に、この実施例では、VMCC23は、呼処理部23aと、加入者データ記憶部23bと、CPU23cと、ROM23dとを備えている。加入者データ記憶部23bは、HLR24aの加入者データ原本記憶部24cから読み出された加入者データAをダウンロードして加入者データBとして記憶する。呼処理部23aは、信号の送受信、受信した信号の分析、及び加入者データの制御などを行い、特に、この実施例では、携帯電話機21からの加入者データリセット要求により加入者データ記憶部23bから該当する加入者データを除去した後、再びサービス制御局(SCP)24の加入者データ原本記憶部24cから当該携帯電話機に対応する加入者データAをダウンロードして加入者データ記憶部23bに書き込む。CPU23cは、VMCC23全体を制御し、ROM23dは、同CPU23cを動作させるための加入者データ設定制御プログラムが記録されている。
【0028】
サービス制御局(SCP)24は、携帯電話機の加入者全員の加入者データを保持し、各加入者が契約しているサービスの内容や、携帯電話機の現在の位置情報などを管理し、たとえば、VMCC23の受け持ちの位置登録エリア内の無線基地局22の受け持ちの小ゾーンに在圏する携帯電話機21の位置情報を含む加入者に関する情報を加入者データとして管理する。特に、この実施例では、SCP24は、HLR(Home Location Register、ホームロケーションレジスタ)24aを有している。HLR24aは、呼処理部24bと、加入者データ原本記憶部24cとを有している。加入者データ原本記憶部24cは、加入者データの原本を加入者データAとして記憶する。呼処理部24bは、加入者データ原本記憶部24cに対して、加入者データAの書込み又は読出しを行い、たとえば、VMCC23からの位置登録要求により該当する加入者の位置情報を更新した後、加入者データを同VMCC23に送信する。
【0029】
図2は、図1中の在圏移動通信交換局23の呼処理部23bの動作を説明するフローチャートである。
この図を参照して、この例の携帯電話システムに用いられる加入者データ設定方法の処理内容について説明する。
この携帯電話システムでは、携帯電話機21の使用者の操作により、同携帯電話機21から無線基地局22を経てVMCC23へ加入者データリセット要求が出力される。VMCC23では、携帯電話機21からの加入者データリセット要求により該当する加入者データBが除去された後、SCP24から携帯電話機21に対応する加入者データAがダウンロードされる。
【0030】
すなわち、携帯電話機21がVMCC23の受け持ちの無線基地局22の受け持ちの小ゾーンに位置し、同携帯電話機21の加入者データが同VMCC23が加入者データBとして保持されているものとする。加入者データBは、HLR24aの加入者データAをダウンロードしたものであり、内容が一致しているが、加入者データBに何らかの要因により不具合(たとえば、呼処理部23aによる加入者データの誤操作など)が発生し、同HLR24aに保持されている加入者データAと不一致になったとする。このとき、携帯電話機21から発信すると、呼処理部23aが加入者データBを参照し、制御しようとするが、データに不具合が生じているため、データ異常が検出され、発信不能などの状態になる。又、携帯電話機21への着信も、不能となる。また、携帯電話機21からの周期的な位置登録についても、データ異常を検出し、“圏外”表示などの状態となる。
【0031】
この状態になった場合、携帯電話機21の使用者が同携帯電話機21のメニュー操作により“加入者データリセット”を選択する。すると、携帯電話機21では、位置登録用信号に加入者データリセットを示すパラメータが既存のパラメータで未使用のエリアに設定され、同信号が無線基地局22に対して送信される。この後、携帯電話機21では、加入者データリセット完了信号(位置登録完了を示す信号)を待つ状態となる。無線基地局22は、加入者データリセットを示すパラメータが設定された位置登録用信号を受信すると、通常の位置登録用信号の受信と同様に、VMCC23に転送する。
【0032】
VMCC23では、無線基地局22より上記パラメータが設定された位置登録用信号を受信すると、呼処理部23aで信号の分析が行われる。この場合、図2に示すように、呼処理部23aでは、受信した信号の分析が行われ(ステップA1)、同信号が位置登録用信号以外の場合は、同信号に対応した処理が行われる。受信した信号が位置登録用信号であれば、加入者データリセットを示すパラメータが信号上に設定されているか否かの判定が行われ(ステップA2)、設定されていない場合は、通常の位置登録用信号受信時の処理が行われる。
【0033】
一方、受信した位置登録用信号が加入者データリセットを示す場合、同位置登録用信号に設定されている加入者識別番号に基づいて加入者データの検索が行われる(ステップA3)。加入者データが検索された場合、該当する加入者データBのクリア(除去)処理が行われ(ステップA4)、検索されなかった場合は、加入者データ検索NG(不能)を示す信号が携帯電話機21に送信される。加入者データBがクリアされた後、新たに加入者データを設定するために、位置登録要求信号がHLR24aに送信される(ステップA5)。この位置登録要求信号は、通常の位置登録時に送信される信号と同様のものである。位置登録要求信号がHLR24aで受信され、加入者データAの位置情報が更新された後、同HLR24aからの位置登録応答信号がVMCC23で受信されると共に加入者データAが同VMCC23にダウンロードされる(ステップA6)。このときのHLR24aの動作は、通常の位置登録要求信号受信時の動作と同様である。
【0034】
HLR24aからの位置登録応答信号がVMCC23で受信されると、加入者データAが正常にダウンロードされたか否かの判定が行われ(ステップA7)、ダウンロードされなかった場合は、上記ステップA3にて検索NGとなった場合と同様の動作が行われる。加入者データAが正常にダウンロードされた場合、ダウンロードされたデータが新たに加入者データBとして保持され(ステップA8)、加入者データリセット完了を示す信号が携帯電話機21に送信される(ステップA9)。携帯電話機21では、同信号をVMCC23より受信すると、加入者データリセットが行われたか否かが判定され、それぞれその旨を示すメッセージが表示画面に表示される。以上の処理により、携帯電話機21によるVMCC23の加入者データBのリセットが完了する。
【0035】
以上のように、この実施例では、VMCC23の加入者データ記憶部23bに記憶されている加入者データBに不具合が発生した場合、携帯電話機21の使用者の操作により、同携帯電話機21からVMCC23へ加入者データリセット要求が出力され、同VMCC23で同加入者データリセット要求により、該当する加入者データBが除去された後、SCP24に設けられているHLR24aの加入者データ原本記憶部24cから携帯電話機21に対応する加入者データAがダウンロードされるので、オペレータを通すことなく、加入者データBが即座に復旧し、携帯電話システムのサービス性が向上する。
【0036】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、具体的な構成は同実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても、この発明に含まれる。
たとえば、上記実施例では、加入者データリセット要求を示すパラメータを位置登録用信号に設定して無線基地局22に送信するようになっているが、発信用の信号や他の信号、又は新規に定義される信号に設定して送信するようにしても良い。また、実施例では、加入者データリセットを示すパラメータが既存のパラメータで未使用のエリアに設定されるようになっているが、既存のパラメータに限らず、他のパラメータ又は新規に定義されるパラメータのエリアに設定するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明は、携帯電話機の他、たとえば、PHS(Personal Handyphone System)、航空機電話、船舶電話などの移動体通信全般に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の実施例である携帯電話システムの要部の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】図1中の在圏移動通信交換局23の呼処理部23bの動作を説明するフローチャートである。
【図3】従来の携帯電話システムの構成図である。
【図4】図3中の携帯電話機11、無線基地局12、VMCC14及びSCP17の要部を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
16 関門移動通信交換局
21 携帯電話機
21a CPU(中央処理装置、加入者データリセット手段の一部)
21b ROM(リード・オンリ・メモリ、加入者データリセット手段の一部)
22 無線基地局
23 在圏移動通信交換局(VMCC)
23a 呼処理部(加入者データダウンロード手段の一部)
23b 加入者データ記憶部(加入者データダウンロード手段の一部)
23c CPU(中央処理装置、加入者データダウンロード手段の一部)
23d ROM(リード・オンリ・メモリ、加入者データダウンロード手段の一部)
24 サービス制御局(SCP)
24a HLR(Home Location Register、ホームロケーションレジスタ)
24b 呼処理部
24c 加入者データ原本記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の携帯電話機と、
受け持ちの小ゾーン内で前記各携帯電話機と通信を行う複数の無線基地局と、
前記各携帯電話機の位置情報を含む加入者に関する情報を加入者データとして管理するサービス制御局と、
受け持ちの位置登録エリア内で前記各無線基地局の受け持ちの小ゾーンに在圏する前記各携帯電話機の位置する小ゾーンを常時把握して登録すると共に、前記サービス制御局から前記各携帯電話機に対応する前記加入者データをダウンロードして保持し、前記加入者データに基づいて前記各無線基地局を介して任意の前記携帯電話機と通信を行う複数の在圏移動通信交換局と、
受け持ちの前記各在圏移動通信交換局を一般電話回線網に接続する関門移動通信交換局とを備えてなる携帯電話システムであって、
前記各携帯電話機は、
当該携帯電話機の使用者の操作により、前記在圏移動通信交換局に保持されている前記加入者データをリセットするための加入者データリセット要求を出力する加入者データリセット手段が設けられ、
前記各在圏移動通信交換局は、
前記加入者データリセット要求により、該当する前記加入者データが除去された後、再び前記サービス制御局から当該携帯電話機に対応する前記加入者データをダウンロードする加入者データダウンロード手段が設けられていることを特徴とする携帯電話システム。
【請求項2】
前記サービス制御局は、
前記加入者データを保持するホームロケーションレジスタを備えてなることを特徴とする請求項1記載の携帯電話システム。
【請求項3】
前記ホームロケーションレジスタは、
前記加入者データの原本を記憶する加入者データ原本記憶部と、
該加入者データ原本記憶部に対して、前記加入者データの書込み又は読出しを行う呼処理部とを備えてなることを特徴とする請求項2記載の携帯電話システム。
【請求項4】
前記在圏移動通信交換局の加入者データダウンロード手段は、
前記ホームロケーションレジスタの前記加入者データ原本記憶部から読み出された加入者データを記憶する加入者データ記憶部と、
前記加入者データリセット要求により、前記加入者データ記憶部から該当する前記加入者データを除去した後、再び前記サービス制御局の前記加入者データ原本記憶部から当該携帯電話機に対応する前記加入者データをダウンロードして前記加入者データ記憶部に書き込む呼処理部とを備えてなることを特徴とする請求項3記載の携帯電話システム。
【請求項5】
複数の携帯電話機と、
受け持ちの小ゾーン内で前記各携帯電話機と通信を行う複数の無線基地局と、
前記各携帯電話機の位置情報を含む加入者に関する情報を加入者データとして管理するサービス制御局と、
受け持ちの位置登録エリア内で前記各無線基地局の受け持ちの小ゾーンに在圏する前記各携帯電話機の位置する小ゾーンを常時把握して登録すると共に、前記サービス制御局から前記各携帯電話機に対応する前記加入者データをダウンロードして保持し、前記加入者データに基づいて前記各無線基地局を介して任意の前記携帯電話機と通信を行う複数の在圏移動通信交換局と、
受け持ちの前記各在圏移動通信交換局を一般電話回線網に接続する関門移動通信交換局とを備えてなる携帯電話システムに用いられ、
前記各携帯電話機が、当該携帯電話機の使用者の操作により、前記在圏移動通信交換局に保持されている前記加入者データをリセットするための加入者データリセット要求を出力し、
前記各在圏移動通信交換局が、前記加入者データリセット要求により、該当する前記加入者データを除去した後、再び前記サービス制御局から当該携帯電話機に対応する前記加入者データをダウンロードすることを特徴とする加入者データ設定方法。
【請求項6】
コンピュータに請求項1乃至4のうちのいずれか一に記載の携帯電話システムを制御させるための加入者データ設定制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−109167(P2006−109167A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−294128(P2004−294128)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000232254)日本電気通信システム株式会社 (586)
【Fターム(参考)】