摩擦ダンパーおよび減衰方法
【課題】単純な構造で製造コストが安価な摩擦ダンパーおよび減衰方法を提供する。
【解決手段】第1部材111に取り付けられた筒体2と、第2部材112に取り付けられ、筒体2内に軸方向に移動可能に挿入されたピストン3と、筒体2を一端側から閉塞すると共にピストン3が挿通する挿通孔221が形成されたスリットダイヤフラム22と、筒体2を他端側から閉塞する拘束ダイヤフラム21と、拘束ダイヤフラム21と上記スリットダイヤフラム22との間に充填され固化した充填材5と、ピストン3に設けられ充填材5に係合し、かつ上記第1部材111と上記第2部材112とを相対変位させる力により上記係合する充填材5を壊し粒状化させて体積膨張させるための係合部6と、ピストン3における上記筒体2内の挿入部分に設けられ、体積膨張に反発する筒体2から充填材5が押し付けられる摩擦面4とを備えたものである。
【解決手段】第1部材111に取り付けられた筒体2と、第2部材112に取り付けられ、筒体2内に軸方向に移動可能に挿入されたピストン3と、筒体2を一端側から閉塞すると共にピストン3が挿通する挿通孔221が形成されたスリットダイヤフラム22と、筒体2を他端側から閉塞する拘束ダイヤフラム21と、拘束ダイヤフラム21と上記スリットダイヤフラム22との間に充填され固化した充填材5と、ピストン3に設けられ充填材5に係合し、かつ上記第1部材111と上記第2部材112とを相対変位させる力により上記係合する充填材5を壊し粒状化させて体積膨張させるための係合部6と、ピストン3における上記筒体2内の挿入部分に設けられ、体積膨張に反発する筒体2から充填材5が押し付けられる摩擦面4とを備えたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材が互いに相対変位したときの変位エネルギーを摩擦により吸収するための摩擦ダンパーおよび減衰方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁やビルなどの建築物において、制振効果を高めるためにダンパーを設けることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そのようなダンパーとしては、例えば、構造材料(一般的に鋼材)を降伏させることでダンパー効果を得る降伏型ダンパーや、ゴムの水平方向のひずみでダンパー効果を得る粘性型ダンパーが知られている。
【0004】
粘性型ダンパーは、ゴムから形成され高価であるため、橋梁の支点部などの重要部位くらいにしか使用されておらず、耐震ダンパーとしては、降伏型ダンパーが一般的に用いられている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−190148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の降伏型ダンパーには、以下のような問題があった。
【0007】
降伏型ダンパーは、鋼材を剪断変形させ降伏させることでエネルギーを吸収するものであるが、鋼材を座屈させずに降伏させためには座屈拘束を行う必要があり、構造が複雑となってしまう。
【0008】
さらに、構造が複雑となる結果、製造コストが高額となってしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、単純な構造で製造コストが安価な摩擦ダンパーおよび減衰方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、第1部材と第2部材との間に設けられ、それら第1部材と第2部材とが相対変位したときに、その相対変位を減衰させるための摩擦ダンパーにおいて、上記第1部材に取り付けられた筒体と、上記第2部材に取り付けられ、上記筒体内に軸方向に移動可能に挿入されたピストンと、上記筒体を一端側から閉塞すると共に上記ピストンが挿通する挿通孔が形成されたスリットダイヤフラムと、上記筒体を他端側から閉塞する拘束ダイヤフラムと、上記筒体内における上記拘束ダイヤフラムと上記スリットダイヤフラムとの間に充填され固化した充填材と、上記ピストンに設けられて上記固化した充填材に係合し、かつ上記第1部材と上記第2部材とを相対変位させる力により上記係合する充填材を壊し粒状化させて体積膨張させるための係合部と、上記ピストンにおける上記筒体内の挿入部分に設けられ、上記体積膨張に反発する上記筒体から上記充填材が押し付けられる摩擦面とを備えたものである。
【0011】
好ましくは、上記係合部が、上記ピストンに形成されたジベル孔からなり、該ジベル孔内に充填された上記充填材がピン部を形成し、それらピン部と上記ジベル孔とが係合するものである。
【0012】
好ましくは、上記充填材が、コンクリートである。
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、第1部材と第2部材との間に設けられ、それら第1部材と第2部材とが相対変位したときに、その相対変位を減衰させるための摩擦ダンパーにおいて、上記第1部材に取り付けられた筒体と、上記第2部材に取り付けられ、上記筒体内に軸方向に移動可能に挿入されたピストンと、上記筒体を一端側から閉塞すると共に上記ピストンが挿通する挿通孔が形成されたスリットダイヤフラムと、上記筒体を他端側から閉塞する拘束ダイヤフラムと、上記筒体内における上記拘束ダイヤフラムと上記スリットダイヤフラムとの間に充填され締固められた粒状体と、上記ピストンに設けられて上記締固められた粒状体に係合し、かつ上記第1部材と上記第2部材との相対変位により上記係合する粒状体を崩して体積膨張させるための係合部と、上記ピストンにおける上記筒体内の挿入部分に形成され、上記体積膨張に反発する上記筒体から上記粒状体が押し付けられる摩擦面とを備えたものである。
【0014】
好ましくは、上記係合部が、上記ピストンに形成されたジベル孔からなり、該ジベル孔内にて締固められた上記粒状体がピン部を形成し、それらピン部と上記ジベル孔とが係合するものである。
【0015】
好ましくは、上記筒体内に、上記拘束ダイヤフラムに近接させて、上記ピストンを上記軸方向に案内するガイドダイヤフラムが設けられたものである。
【0016】
好ましくは、上記ピストンの上記係合部が、軸方向に沿って間隔を隔てて複数形成されたものである。
【0017】
好ましくは、上記ピストンは、断面十字状に形成され、互いに直交する4つのフランジを有し、上記係合部が、上記ピストンの各フランジに各々形成されたものである。
【0018】
上記目的を達成するために本発明は、第1部材と第2部材とが相対変位したときに、その相対変位を摩擦力により減衰させる方法において、上記第1部材に筒体を取り付け、上記第2部材にピストンを取り付け、該ピストンを上記筒体内に軸方向に移動可能に挿入し、上記筒体を、いずれか一端側で上記ピストンが挿通可能なように両端側から閉塞し、該筒体内に充填材を充填して固化させ、上記ピストンに上記固化した充填材に係合する係合部を設け、上記第1部材と上記第2部材とを相対変位させる力が所定の初動耐力に達したときに、上記係合部により該係合部に係合する充填材を壊し粒状化させて体積膨張させ、該体積膨張に反発する上記筒体により、上記充填材を、上記ピストンにおける上記筒体内の挿入部分に押し付けて摩擦力を付与するものである。
【0019】
上記目的を達成するために本発明は、第1部材と第2部材との相対変位を摩擦力により減衰させる方法において、上記第1部材に筒体を取り付け、
上記第2部材にピストンを取り付け、該ピストンを上記筒体内に軸方向に移動可能に挿入し、上記筒体を、いずれか一端側で上記ピストンが挿通可能なように両端側から閉塞し、該筒体内に粒状体を充填して締固め、上記ピストンに上記締固められた粒状体に係合する係合部を設け、上記第1部材と上記第2部材とが相対変位したときに、上記係合部により該係合部に係合する粒状体を崩して体積膨張させ、該体積膨張に反発する上記筒体により、上記粒状体を、上記ピストンにおける上記筒体内の挿入部分に押し付けて摩擦力を付与するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、摩擦ダンパーの構造を単純にでき、製造コストを安価にできるという優れた効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
[第1の実施形態]
本実施形態の摩擦ダンパーは、例えば、橋梁などの構造物に適用される。
【0022】
まず、図12に基づき、摩擦ダンパーが対象とする橋梁を説明する。
【0023】
橋梁100は、トラス橋であり、複数の鋼製トラス部材101−104を組み合わせて構成される。その橋梁100は、橋軸方向に延びる下弦材101および上弦材102と、それら下弦材101と上弦材102との間に設けられた鉛直材103および斜材104とを備える。
【0024】
図例では、下弦材101が、橋軸方向に複数に分割して構成される。それら分割された下弦材111、112の間には、該下弦材111、112同士が軸方向に互いに相対変位(移動)したときの変位エネルギーを吸収すべく、本実施形態の摩擦ダンパー1が設けられる。以下の説明において、分割された下弦材111、112の一方(図12において左側)を第1部材111、他方(図12において右側)を第2部材112という。
【0025】
次に、図1から図7に基づき本実施形態の摩擦ダンパー1の概略構造を説明する。
【0026】
図1に示すように、摩擦ダンパー1は、第1部材111と第2部材112との間に設けられ、それら第1部材111と第2部材112とが相対変位したときに、その相対変位を減衰させるものである。
【0027】
本実施形態の摩擦ダンパー1は、第1部材111に取り付けられた筒体2と、第2部材112に取り付けられ筒体2内に軸方向に移動可能に挿入されたピストン3と、筒体2を一端側(第2部材側、図1では右端側)からを閉塞すると共にピストン3が挿通する挿通孔221が形成されたスリットダイヤフラム22と、筒体2を他端側(第1部材側、図1では左端側)からを閉塞する拘束ダイヤフラム(以下、端部拘束ダイヤフラムという)21と、筒体2内における端部拘束ダイヤフラム21とスリットダイヤフラム22との間に充填され固化した充填材をなすコンクリート5と、ピストン3に設けられて固化したコンクリート5に係合し、かつ第1部材111と第2部材112とを相対変位させる力により係合するコンクリート(ピン部)51を壊し粒状化させて体積膨張させるための係合部をなすジベル孔6と、ピストン3における筒体2内の挿入部分に設けられ、体積膨張に反発する筒体2からコンクリート5が押し付けられる摩擦面4とを備える。
【0028】
図1および図2に示すように、筒体2は、円筒形状を有し断面円形で軸方向に延びる。筒体2は、例えば、鋼管などから形成される。筒体2は、軸方向を、第1部材111と第2部材112との相対変位の変位方向(下弦材101の軸方向)に一致させて配置される。
【0029】
その筒体2内には、コンクリート5を充填するための充填室S(図2参照)が設けられる。
【0030】
充填室Sは、端部拘束ダイヤフラム21とスリットダイヤフラム22と、それらダイヤフラム21、22間の筒体2の内周面(壁面)とにより区画形成される。その充填室Sには、コンクリート5(生コンクリート)を注入、充填するための図示しない注入孔と空気抜き孔とが各々形成される。
【0031】
また、詳しくは後述するが、これら端部拘束ダイヤフラム21とスリットダイヤフラム22とは、コンクリート5の体積膨張を誘発すべくコンクリート5を軸方向両端側から各々拘束する。
【0032】
端部拘束ダイヤフラム21は、筒体2の一端(図1の左端)から軸方向内側(図1の右側)に所定間隔を隔てて設けられる。
【0033】
図3に示すように、端部拘束ダイヤフラム21は、筒体2の内径とほぼ同じ外径を有する円板状に形成され、筒体2の内周面に溶接などにて接合される。
【0034】
端部拘束ダイヤフラム21には、筒体2と第1部材111とを接合するための部材連結部23が形成される。その部材連結部23は、端部拘束ダイヤフラム21から軸方向外側(図1の左側)に延び筒体2から突出する。
【0035】
図例の部材連結部23は、断面十字状に形成され、互いに直交する4つのフランジ231を有する。各フランジ231の筒体側(図1の右側)の端部が、筒体2の内周面に接合され、第1部材側(図1の左側)の端部が、添接板235を介して第1部材111にボルト接合される。
【0036】
スリットダイヤフラム22は、上記端部拘束ダイヤフラム21と同様に、筒体2の他端(図1の右端)から軸方向内側(図1の左側)に所定間隔を隔てて設けられる。
【0037】
図4に示すように、スリットダイヤフラム22は、筒体2の内径とほぼ同じ外径を有する円板状に形成され、筒体2の内周面に溶接などにて接合される。
【0038】
スリットダイヤフラム22には、ピストン3が挿通する挿通孔221が形成される。挿通孔221は、ピストン3の断面形状に相似な形状に形成され、図例では、十字状に形成される。挿通孔221は、ピストン3よりも僅かに大きく形成され、ピストン3を筒体2の軸方向に移動可能、かつ回転不能に案内をする。
【0039】
図1に戻り、筒体2内には、ピストン3を軸方向に案内するガイドダイヤフラム24が設けられる。
【0040】
ガイドダイヤフラム24は、端部拘束ダイヤフラム21とスリットダイヤフラム22との間(充填室S内)に配置される。ここで、ガイドダイヤフラム24は、スリットダイヤフラム22と共にピストン3を案内、支持することから、支持バランスを保つために、本実施形態のガイドダイヤフラム24は、端部拘束ダイヤフラム21に近接させて配置される。
【0041】
図5に示すように、ガイドダイヤフラム24は、筒体2の内径とほぼ同じ外径を有する円板状に形成され、筒体2の内周面に溶接などにて固定される。
【0042】
ガイドダイヤフラム24には、ピストン3が挿通するガイド孔241と、ガイドダイヤフラム24を軸方向に貫通する連通孔242とが形成される。
【0043】
ガイド孔241は、ガイドダイヤフラム24の中央に形成された矩形(図例ではほぼ正方形)の中央部243と、その中央部243の角部から径方向に延び後述するピストン3のフランジ31の先端部を案内する複数(図例では4つ)のガイド部244とからなる。
【0044】
連通孔242は、複数(図例では4つ)形成され、同心円状に周方向に間隔を隔てて配置される。
【0045】
これらガイド孔241の中央部243と連通孔242とは、ガイドダイヤフラム24の軸方向両側の充填室Sを連通し、充填室Sにコンクリート5(生コンクリート)を充填する際に生コンクリートが通る通路をなす。
【0046】
図1および図6に示すように、ピストン3は、筒体2の軸方向に沿って延び、一端が筒体2内の端部拘束ダイヤフラム21の近傍まで挿入され、他端が筒体2から突出して第2部材112に接合される。図例では、ピストン3の第2部材側の端部が、部材連結部23と同様に、添接板32を介して第2部材112にボルト接合される。
【0047】
図7に示すように、本実施形態のピストン3は、断面十字形で軸方向に延び、互いに直交する4つのフランジ31を有する。ピストン3は、例えば、鋼板などを組み合わせて形成される。
【0048】
ピストン3のフランジ31の表面および裏面は、筒体2の軸方向(ピストン3の長手方向)に沿って延びる。それら表面および裏面における充填室S内に収容された領域が、ピストン3の軸方向の移動に伴い筒体2内のコンクリート5に摺動する摩擦面4をなす。
【0049】
ピストン3のフランジ31には、筒体2内のコンクリート5と係合するジベル孔6が形成され、そのジベル孔6によりピストン3が筒体2内に係止される。
【0050】
具体的には、ジベル孔6内に充填されて固化したコンクリート5が、柱状のピン部51を形成し、そのピン部51とジベル孔6とが係合する。それらピン部51とジベル孔6との係合により、ピストン3の軸方向の移動が規制される。
【0051】
つまり、ピストン3のフランジ31と筒体2内のコンクリート5とは、所謂孔あき鋼板ジベルと同様の構造を備え、互いに接合される。なお、詳しくは後述するが、本実施形態の摩擦ダンパー1は、ダンパーとしての機能を有する点で、孔あき鋼板ジベルと大きく異なる。
【0052】
ジベル孔6は、軸方向に沿って間隔を隔てて複数(図例では、フランジ31ごとに4つずつ)形成される。各ジベル孔6は、フランジ31の摩擦面4に対して垂直に断面円形に形成される。
【0053】
次に、本実施形態の減衰方法を説明する。
【0054】
本実施形態の減衰方法は、第1部材111と第2部材112とが相対変位したときに、その相対変位を摩擦力により減衰させるものである。
【0055】
その減衰方法では、まず、第1部材111に筒体2を取り付け、第2部材112にピストン3を取り付け、ピストン3を筒体2内に軸方向に移動可能に挿入し、筒体2を、いずれか一端側でピストン3が挿通可能なように両端側から閉塞し、筒体2内にコンクリート5を充填して固化させ、ピストン3に固化したコンクリート5(ピン部51)に係合するジベル孔6を設けて摩擦ダンパー1を構成する。
【0056】
次に、第1部材111と上記第2部材112とを相対変位させる力が所定の初動耐力に達したときに、ジベル孔6によりジベル孔6に係合するピン部51を壊し粒状化させて体積膨張させ、該体積膨張に反発する筒体2により、コンクリート5(粒状化したピン部51)を、ピストン3の摩擦面4(筒体2内の挿入部分)に押し付けて摩擦力を付与する。
【0057】
以下、図1および図12に基づき詳述する。
【0058】
図12に示すように、本実施形態の摩擦ダンパー1は、トラス橋100の下弦材101に介設されており、通常時は、トラス橋100にかかる荷重を直接受ける構造材(1次部材)として働き、地震などによる大きな荷重(初動耐力)がかかるときに、ダンパーとして働く。
【0059】
すなわち、下弦材101に荷重(圧縮荷重または引張荷重)がかかると、その荷重は、摩擦ダンパー1に伝達され摩擦ダンパー1の筒体2とピストン3とを軸方向に移動(相対変位)させるように作用する。
【0060】
通常時、例えばトラス橋100の自重(死荷重)や車両の通行などによる活荷重などの設計許容範囲の荷重(許容荷重)がかかる場合には、その許容荷重によりピストン3と筒体2とが軸方向に相対移動しようとするが、ピストン3のジベル孔6と筒体2のピン部51とが係合することから、その係合によりピストン3および筒体2の軸方向の移動が規制される。
【0061】
このように通常時には、摩擦ダンパー1は他のトラス部材101−104などと同様に剛性を有する構造材として働く。
【0062】
一方、地震などにより、摩擦ダンパー1に過度の引張荷重がかかると、ピン部51が壊れて、そのピン部51によるピストン3の拘束がなくなり、ピストン3が筒体2に対し軸方向外側に(図1において右側に)移動する。すなわち、ピストン3と筒体2とが相対移動する。
【0063】
このピストン3が移動する際に、本実施形態では、ピストン3の摩擦面4にコンクリート5からの軸方向内側向きに(図1において左向きに)摩擦力が付与されピストン3の移動エネルギーが減衰される。
【0064】
より具体的には、摩擦ダンパー1に設計許容範囲を超える引張荷重がかかると、その引張荷重が、ピストン3のジベル孔6を介して、ピン部51をなすコンクリート5に剪断力として作用し、ピン部51のコンクリート5が砕け壊れる。
【0065】
ピン部51のコンクリート5が砕け壊れると、そのコンクリート5のダイレイタンシーがピストン3のジベル孔6近傍にて生じ、ピン部51およびジベル孔6近傍のコンクリート5が粒状化し、ジベル孔6近傍におけるコンクリート5の体積が膨張する。
【0066】
その体積膨張による膨張力が、筒体2に対して筒体2を径方向外側に拡径するように作用する。その膨張力を受けた筒体2は、自身の剛性(弾性)により膨張力に反発して、コンクリート5を径方向内側に押圧し、そのコンクリート5を介してピストン3を締め付ける。
【0067】
この締め付けにより、ジベル孔6近傍のコンクリート5がピストン3の摩擦面4に押し付けられる。また、粒状化したコンクリート5は、筒体2により径方向外側への膨張が規制されるため、ピストン3の摩擦面4に押し付けられる。
【0068】
これより、ピストン3の摩擦面4が筒体2内のコンクリート5と摺動する際に、摩擦面4の摩擦抵抗が増大して強い摩擦力が発生し、相対移動のエネルギーが吸収される。
【0069】
ここで、上述したように本実施形態の摩擦ダンパー1は、ピン部51が壊れるほどの大きな引張荷重がかかることで、ダンパーとして機能する。この摩擦ダンパー1が、ダンパーとして機能し始める荷重を初動耐力という。
【0070】
すなわち、ピン部51は、摩擦ダンパー1にかかる荷重が初動耐力以下のときに、ピストン3のジベル孔6に係合してピストン3を係止し、荷重が初動耐力に達し超えたときに、破壊されてピストン3の係止を解除する。
【0071】
初動耐力は、摩擦ダンパー1に設けられたピン部51の合計強度により決まり、例えば、ピン部51(ジベル孔6)の数や大きさ(径)、コンクリート5の材質や結合強度などにより設定される。初動耐力は、ジベル孔6の数が多いほど、また径が大きいほど、大きな値に設定される。
【0072】
また、摩擦ダンパー1の摩擦力は、ピストン3の形状(摩擦面4の面積)やジベル孔6の数などにより設定される。摩擦力は、摩擦面4の面積が広いほど、ジベル孔6の数が多いほど大きな値に設定される。なお、ピストン3の形状が同一の場合、ジベル孔6が多いほど摩擦面4の面積は小さくなるが、コンクリート5が体積膨張する箇所も増えるので、結果として摩擦力は大きくなる。
【0073】
次に、図8に基づき本実施形態の摩擦ダンパー1の特性について説明する。
【0074】
図8は、摩擦ダンパー1の荷重−伸び曲線図であり、縦軸が荷重(引張荷重)、横軸が伸びである。図8において符号P0は、初動耐力を示す。
【0075】
図8に示すように、荷重Pが初動耐力P0以下のときには、荷重Pと伸びδとが比例関係にあり、この領域では摩擦ダンパー1は弾性的な挙動を示す。
【0076】
一方、荷重Pが、初動耐力P0に達すると、荷重Pが初動耐力P0で一定となり伸びδのみが増加する。この領域では摩擦ダンパー1はダンパーとしての挙動を示す。
【0077】
以上のように本実施形態の摩擦ダンパー1は、筒体2と摩擦面4を有するピストン3とコンクリート5とで主に構成されるので、構造が単純であり、安価に製造することができる。
【0078】
さらに、本実施形態では、筒体2を鋼管から形成し、ピストン3を孔あき鋼板から形成し、充填材にコンクリート5を用いたので一般的な材料で製造することができ、これによっても、摩擦ダンパー1を安価に製造することができる。
【0079】
また、筒体2とピストン3とを、コンクリート5と孔あき鋼板とによる所謂孔あき鋼板ジベル構造で接合したので、摩擦ダンパー1の初動耐力を大きく設定することができる。
【0080】
その初動耐力が、ピストン3のジベル孔6の数や大きさにより設定できるので、初動耐力の設定を容易に行うことができる。
【0081】
[第2の実施形態]
次に、図9に基づき第2の実施形態を説明する。本実施形態は、上述の第1の実施形態とは、筒体2内に締固められた粒状体が充填される点で異なり、その他は実質的に同じである。したがって、上述の第1の実施形態と同一の要素については、図中同一符号を付すに止め、詳細な説明は省略する。
【0082】
本実施形態の摩擦ダンパー1は、初動耐力がほぼ0であり、例えば、構造物を支持する1次部材に付帯的に設けられ、その1次部材が設計許容範囲を超えて変形したときにその変形を抑制する2次部材として用いられる。
【0083】
図9に示すように、摩擦ダンパー1は、第1部材111に取り付けられた筒体2と、第2部材112に取り付けられ、筒体2内に軸方向に移動可能に挿入されたピストン3と、筒体2を一端側から閉塞すると共にピストン3が挿通する挿通孔221が形成されたスリットダイヤフラム22と、筒体2を他端側から閉塞する端部拘束ダイヤフラム21と、筒体2内における端部拘束ダイヤフラム21とスリットダイヤフラム22との間に充填され締固められた粒状体8と、ピストン3に設けられて締固められた粒状体8に係合し、かつ第1部材111と上記第2部材112との相対変位により係合する粒状体8を崩して体積膨張させるための係合部をなすジベル孔6と、ピストン3における筒体2内の挿入部分に形成され、体積膨張に反発する筒体2から上記粒状体8が押し付けられる摩擦面4とを備えたものである。
【0084】
ここで、筒体2内に充填される粒状体8としては、例えば、砂や鉄球・ベアリングボールなどが考えられる。
【0085】
また、粒状体8の締固めは、粒状体8間の間隙が最小となるように粒状体8を配置すればよく、様々なものが考えられる。例えば、粒状体8を締固める方法としては、粒状体8を筒体2内に充填した後に粒状体8を突き固めるものや、或いは、粒状体8の充填後に筒体2を振動させるものなどが考えられる。
【0086】
本実施形態では、ジベル孔6内にて締固められた粒状体8がピン部81を形成し、そのピン部81とジベル孔6とが係合する。
【0087】
次に、本実施形態の減衰方法を説明する。
【0088】
本実施形態では、ピン部81をなす粒状体8が互いに結合されていないことから、摩擦ダンパー1は初動耐力がほぼ0に設定される。
【0089】
そのため、ピストン3と筒体2とに引張荷重がかかると、ピストン3は筒体2の軸方向に沿って筒体2から離間する方向に(軸方向外側に)移動する。
【0090】
ピストン3が移動すると、ピストン3のジベル孔6によりピン部81および周辺の粒状体8が崩れ、そのジベル孔6周辺にてダイレイタンシーが生じて、ピン部81および周辺の粒状体8が体積膨張する。
【0091】
つまり、粒状体8の配置が、締固めた状態から乱れることで、粒状体8間の間隙が締固めた状態に比べて大きくなり、粒状体8の全体の体積が膨張する。
【0092】
その体積膨張による膨張力が、筒体2に対して筒体2を径方向外側に拡径するように作用する。膨張力を受けた筒体2は、自身の剛性(弾性)により体積膨張の膨張力に反発して、粒状体8を径方向内側に押圧し、その粒状体8を介してピストン3を締め付ける。
【0093】
この締め付けにより、ジベル孔6近傍の粒状体8がピストン3の摩擦面4に押し付けられ、ピストン3と筒体2とが相対移動する際に、ピストン3の摩擦面4の摩擦抵抗が増大して強い摩擦力が付与され、相対移動のエネルギーが吸収される。
【0094】
本実施形態でも、上述の第1の実施形態と同様に、単純な構造および安価な製造コストという効果が得られ、さらに、コンクリート5を使用しないことから第1の実施形態に比べてより安価に製造することができる。
【0095】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、様々な変形例や応用例が考えられるものである。
【0096】
例えば、上述の実施形態では、ピストン3の係合部をジベル孔6としたが、これに限定されず、係合部は、ピストン3と筒体2とが相対移動したときに、充填材を壊して粒状化させる形状、あるいは締固めた粒状体を崩す形状であればよく、様々なものが可能である。係合部としては、例えば、図10に示すように、ピストン3から突出する凸部61(スタッドボルトなど)が考えられる。
【0097】
また、ピストンは、断面十字状のものに限定されず、様々なものが可能である。例えば、図11に示すように、ピストン33を断面H字状に形成し、そのフランジ331およびウェブ332に係合部をなすジベル孔6を形成するようにしてもよい。また、ピストンを円筒状に形成し、その円筒面に係合部をなすジベル孔を形成することも考えられる。
【0098】
充填材は、コンクリート5の他に、モルタル・エポキシ樹脂などが考えられる。
【0099】
摩擦ダンパーをトラス橋に以外のものに使用してよく、例えば、ビルなど建築物に用いることも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る摩擦ダンパーの概略断面図である。
【図2】図2は、本実施形態の筒体の概略断面図である。
【図3】図3は、図2のIII−III線断面図である。
【図4】図4は、図2のIV−IV線断面図である。
【図5】図5は、図2のV−V線断面図である。
【図6】図6は、本実施形態のピストンの概略側面図である。
【図7】図7は、図1のVII−VII線断面図である。
【図8】図8は、本実施形態の摩擦ダンパーにおける荷重と伸びの関係を説明するための図である。
【図9】図9は、他の実施形態に係る摩擦ダンパーの概略断面図である。
【図10】図10は、本発明の変形例に係るピストンの断面図である。
【図11】図11は、本発明の他の変形例に係るピストンの断面図である。
【図12】図12は、本実施形態の摩擦ダンパーが適用される橋梁の概略側面図である。
【符号の説明】
【0101】
1 摩擦ダンパー
2 筒体
3 ピストン
4 摩擦面
5 コンクリート(充填材)
6 ジベル孔(係合部)
21 端部拘束ダイヤフラム(拘束ダイヤフラム)
22 スリットダイヤフラム
111 第1部材
112 第2部材
221 挿通孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材が互いに相対変位したときの変位エネルギーを摩擦により吸収するための摩擦ダンパーおよび減衰方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁やビルなどの建築物において、制振効果を高めるためにダンパーを設けることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そのようなダンパーとしては、例えば、構造材料(一般的に鋼材)を降伏させることでダンパー効果を得る降伏型ダンパーや、ゴムの水平方向のひずみでダンパー効果を得る粘性型ダンパーが知られている。
【0004】
粘性型ダンパーは、ゴムから形成され高価であるため、橋梁の支点部などの重要部位くらいにしか使用されておらず、耐震ダンパーとしては、降伏型ダンパーが一般的に用いられている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−190148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の降伏型ダンパーには、以下のような問題があった。
【0007】
降伏型ダンパーは、鋼材を剪断変形させ降伏させることでエネルギーを吸収するものであるが、鋼材を座屈させずに降伏させためには座屈拘束を行う必要があり、構造が複雑となってしまう。
【0008】
さらに、構造が複雑となる結果、製造コストが高額となってしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、単純な構造で製造コストが安価な摩擦ダンパーおよび減衰方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、第1部材と第2部材との間に設けられ、それら第1部材と第2部材とが相対変位したときに、その相対変位を減衰させるための摩擦ダンパーにおいて、上記第1部材に取り付けられた筒体と、上記第2部材に取り付けられ、上記筒体内に軸方向に移動可能に挿入されたピストンと、上記筒体を一端側から閉塞すると共に上記ピストンが挿通する挿通孔が形成されたスリットダイヤフラムと、上記筒体を他端側から閉塞する拘束ダイヤフラムと、上記筒体内における上記拘束ダイヤフラムと上記スリットダイヤフラムとの間に充填され固化した充填材と、上記ピストンに設けられて上記固化した充填材に係合し、かつ上記第1部材と上記第2部材とを相対変位させる力により上記係合する充填材を壊し粒状化させて体積膨張させるための係合部と、上記ピストンにおける上記筒体内の挿入部分に設けられ、上記体積膨張に反発する上記筒体から上記充填材が押し付けられる摩擦面とを備えたものである。
【0011】
好ましくは、上記係合部が、上記ピストンに形成されたジベル孔からなり、該ジベル孔内に充填された上記充填材がピン部を形成し、それらピン部と上記ジベル孔とが係合するものである。
【0012】
好ましくは、上記充填材が、コンクリートである。
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、第1部材と第2部材との間に設けられ、それら第1部材と第2部材とが相対変位したときに、その相対変位を減衰させるための摩擦ダンパーにおいて、上記第1部材に取り付けられた筒体と、上記第2部材に取り付けられ、上記筒体内に軸方向に移動可能に挿入されたピストンと、上記筒体を一端側から閉塞すると共に上記ピストンが挿通する挿通孔が形成されたスリットダイヤフラムと、上記筒体を他端側から閉塞する拘束ダイヤフラムと、上記筒体内における上記拘束ダイヤフラムと上記スリットダイヤフラムとの間に充填され締固められた粒状体と、上記ピストンに設けられて上記締固められた粒状体に係合し、かつ上記第1部材と上記第2部材との相対変位により上記係合する粒状体を崩して体積膨張させるための係合部と、上記ピストンにおける上記筒体内の挿入部分に形成され、上記体積膨張に反発する上記筒体から上記粒状体が押し付けられる摩擦面とを備えたものである。
【0014】
好ましくは、上記係合部が、上記ピストンに形成されたジベル孔からなり、該ジベル孔内にて締固められた上記粒状体がピン部を形成し、それらピン部と上記ジベル孔とが係合するものである。
【0015】
好ましくは、上記筒体内に、上記拘束ダイヤフラムに近接させて、上記ピストンを上記軸方向に案内するガイドダイヤフラムが設けられたものである。
【0016】
好ましくは、上記ピストンの上記係合部が、軸方向に沿って間隔を隔てて複数形成されたものである。
【0017】
好ましくは、上記ピストンは、断面十字状に形成され、互いに直交する4つのフランジを有し、上記係合部が、上記ピストンの各フランジに各々形成されたものである。
【0018】
上記目的を達成するために本発明は、第1部材と第2部材とが相対変位したときに、その相対変位を摩擦力により減衰させる方法において、上記第1部材に筒体を取り付け、上記第2部材にピストンを取り付け、該ピストンを上記筒体内に軸方向に移動可能に挿入し、上記筒体を、いずれか一端側で上記ピストンが挿通可能なように両端側から閉塞し、該筒体内に充填材を充填して固化させ、上記ピストンに上記固化した充填材に係合する係合部を設け、上記第1部材と上記第2部材とを相対変位させる力が所定の初動耐力に達したときに、上記係合部により該係合部に係合する充填材を壊し粒状化させて体積膨張させ、該体積膨張に反発する上記筒体により、上記充填材を、上記ピストンにおける上記筒体内の挿入部分に押し付けて摩擦力を付与するものである。
【0019】
上記目的を達成するために本発明は、第1部材と第2部材との相対変位を摩擦力により減衰させる方法において、上記第1部材に筒体を取り付け、
上記第2部材にピストンを取り付け、該ピストンを上記筒体内に軸方向に移動可能に挿入し、上記筒体を、いずれか一端側で上記ピストンが挿通可能なように両端側から閉塞し、該筒体内に粒状体を充填して締固め、上記ピストンに上記締固められた粒状体に係合する係合部を設け、上記第1部材と上記第2部材とが相対変位したときに、上記係合部により該係合部に係合する粒状体を崩して体積膨張させ、該体積膨張に反発する上記筒体により、上記粒状体を、上記ピストンにおける上記筒体内の挿入部分に押し付けて摩擦力を付与するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、摩擦ダンパーの構造を単純にでき、製造コストを安価にできるという優れた効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
[第1の実施形態]
本実施形態の摩擦ダンパーは、例えば、橋梁などの構造物に適用される。
【0022】
まず、図12に基づき、摩擦ダンパーが対象とする橋梁を説明する。
【0023】
橋梁100は、トラス橋であり、複数の鋼製トラス部材101−104を組み合わせて構成される。その橋梁100は、橋軸方向に延びる下弦材101および上弦材102と、それら下弦材101と上弦材102との間に設けられた鉛直材103および斜材104とを備える。
【0024】
図例では、下弦材101が、橋軸方向に複数に分割して構成される。それら分割された下弦材111、112の間には、該下弦材111、112同士が軸方向に互いに相対変位(移動)したときの変位エネルギーを吸収すべく、本実施形態の摩擦ダンパー1が設けられる。以下の説明において、分割された下弦材111、112の一方(図12において左側)を第1部材111、他方(図12において右側)を第2部材112という。
【0025】
次に、図1から図7に基づき本実施形態の摩擦ダンパー1の概略構造を説明する。
【0026】
図1に示すように、摩擦ダンパー1は、第1部材111と第2部材112との間に設けられ、それら第1部材111と第2部材112とが相対変位したときに、その相対変位を減衰させるものである。
【0027】
本実施形態の摩擦ダンパー1は、第1部材111に取り付けられた筒体2と、第2部材112に取り付けられ筒体2内に軸方向に移動可能に挿入されたピストン3と、筒体2を一端側(第2部材側、図1では右端側)からを閉塞すると共にピストン3が挿通する挿通孔221が形成されたスリットダイヤフラム22と、筒体2を他端側(第1部材側、図1では左端側)からを閉塞する拘束ダイヤフラム(以下、端部拘束ダイヤフラムという)21と、筒体2内における端部拘束ダイヤフラム21とスリットダイヤフラム22との間に充填され固化した充填材をなすコンクリート5と、ピストン3に設けられて固化したコンクリート5に係合し、かつ第1部材111と第2部材112とを相対変位させる力により係合するコンクリート(ピン部)51を壊し粒状化させて体積膨張させるための係合部をなすジベル孔6と、ピストン3における筒体2内の挿入部分に設けられ、体積膨張に反発する筒体2からコンクリート5が押し付けられる摩擦面4とを備える。
【0028】
図1および図2に示すように、筒体2は、円筒形状を有し断面円形で軸方向に延びる。筒体2は、例えば、鋼管などから形成される。筒体2は、軸方向を、第1部材111と第2部材112との相対変位の変位方向(下弦材101の軸方向)に一致させて配置される。
【0029】
その筒体2内には、コンクリート5を充填するための充填室S(図2参照)が設けられる。
【0030】
充填室Sは、端部拘束ダイヤフラム21とスリットダイヤフラム22と、それらダイヤフラム21、22間の筒体2の内周面(壁面)とにより区画形成される。その充填室Sには、コンクリート5(生コンクリート)を注入、充填するための図示しない注入孔と空気抜き孔とが各々形成される。
【0031】
また、詳しくは後述するが、これら端部拘束ダイヤフラム21とスリットダイヤフラム22とは、コンクリート5の体積膨張を誘発すべくコンクリート5を軸方向両端側から各々拘束する。
【0032】
端部拘束ダイヤフラム21は、筒体2の一端(図1の左端)から軸方向内側(図1の右側)に所定間隔を隔てて設けられる。
【0033】
図3に示すように、端部拘束ダイヤフラム21は、筒体2の内径とほぼ同じ外径を有する円板状に形成され、筒体2の内周面に溶接などにて接合される。
【0034】
端部拘束ダイヤフラム21には、筒体2と第1部材111とを接合するための部材連結部23が形成される。その部材連結部23は、端部拘束ダイヤフラム21から軸方向外側(図1の左側)に延び筒体2から突出する。
【0035】
図例の部材連結部23は、断面十字状に形成され、互いに直交する4つのフランジ231を有する。各フランジ231の筒体側(図1の右側)の端部が、筒体2の内周面に接合され、第1部材側(図1の左側)の端部が、添接板235を介して第1部材111にボルト接合される。
【0036】
スリットダイヤフラム22は、上記端部拘束ダイヤフラム21と同様に、筒体2の他端(図1の右端)から軸方向内側(図1の左側)に所定間隔を隔てて設けられる。
【0037】
図4に示すように、スリットダイヤフラム22は、筒体2の内径とほぼ同じ外径を有する円板状に形成され、筒体2の内周面に溶接などにて接合される。
【0038】
スリットダイヤフラム22には、ピストン3が挿通する挿通孔221が形成される。挿通孔221は、ピストン3の断面形状に相似な形状に形成され、図例では、十字状に形成される。挿通孔221は、ピストン3よりも僅かに大きく形成され、ピストン3を筒体2の軸方向に移動可能、かつ回転不能に案内をする。
【0039】
図1に戻り、筒体2内には、ピストン3を軸方向に案内するガイドダイヤフラム24が設けられる。
【0040】
ガイドダイヤフラム24は、端部拘束ダイヤフラム21とスリットダイヤフラム22との間(充填室S内)に配置される。ここで、ガイドダイヤフラム24は、スリットダイヤフラム22と共にピストン3を案内、支持することから、支持バランスを保つために、本実施形態のガイドダイヤフラム24は、端部拘束ダイヤフラム21に近接させて配置される。
【0041】
図5に示すように、ガイドダイヤフラム24は、筒体2の内径とほぼ同じ外径を有する円板状に形成され、筒体2の内周面に溶接などにて固定される。
【0042】
ガイドダイヤフラム24には、ピストン3が挿通するガイド孔241と、ガイドダイヤフラム24を軸方向に貫通する連通孔242とが形成される。
【0043】
ガイド孔241は、ガイドダイヤフラム24の中央に形成された矩形(図例ではほぼ正方形)の中央部243と、その中央部243の角部から径方向に延び後述するピストン3のフランジ31の先端部を案内する複数(図例では4つ)のガイド部244とからなる。
【0044】
連通孔242は、複数(図例では4つ)形成され、同心円状に周方向に間隔を隔てて配置される。
【0045】
これらガイド孔241の中央部243と連通孔242とは、ガイドダイヤフラム24の軸方向両側の充填室Sを連通し、充填室Sにコンクリート5(生コンクリート)を充填する際に生コンクリートが通る通路をなす。
【0046】
図1および図6に示すように、ピストン3は、筒体2の軸方向に沿って延び、一端が筒体2内の端部拘束ダイヤフラム21の近傍まで挿入され、他端が筒体2から突出して第2部材112に接合される。図例では、ピストン3の第2部材側の端部が、部材連結部23と同様に、添接板32を介して第2部材112にボルト接合される。
【0047】
図7に示すように、本実施形態のピストン3は、断面十字形で軸方向に延び、互いに直交する4つのフランジ31を有する。ピストン3は、例えば、鋼板などを組み合わせて形成される。
【0048】
ピストン3のフランジ31の表面および裏面は、筒体2の軸方向(ピストン3の長手方向)に沿って延びる。それら表面および裏面における充填室S内に収容された領域が、ピストン3の軸方向の移動に伴い筒体2内のコンクリート5に摺動する摩擦面4をなす。
【0049】
ピストン3のフランジ31には、筒体2内のコンクリート5と係合するジベル孔6が形成され、そのジベル孔6によりピストン3が筒体2内に係止される。
【0050】
具体的には、ジベル孔6内に充填されて固化したコンクリート5が、柱状のピン部51を形成し、そのピン部51とジベル孔6とが係合する。それらピン部51とジベル孔6との係合により、ピストン3の軸方向の移動が規制される。
【0051】
つまり、ピストン3のフランジ31と筒体2内のコンクリート5とは、所謂孔あき鋼板ジベルと同様の構造を備え、互いに接合される。なお、詳しくは後述するが、本実施形態の摩擦ダンパー1は、ダンパーとしての機能を有する点で、孔あき鋼板ジベルと大きく異なる。
【0052】
ジベル孔6は、軸方向に沿って間隔を隔てて複数(図例では、フランジ31ごとに4つずつ)形成される。各ジベル孔6は、フランジ31の摩擦面4に対して垂直に断面円形に形成される。
【0053】
次に、本実施形態の減衰方法を説明する。
【0054】
本実施形態の減衰方法は、第1部材111と第2部材112とが相対変位したときに、その相対変位を摩擦力により減衰させるものである。
【0055】
その減衰方法では、まず、第1部材111に筒体2を取り付け、第2部材112にピストン3を取り付け、ピストン3を筒体2内に軸方向に移動可能に挿入し、筒体2を、いずれか一端側でピストン3が挿通可能なように両端側から閉塞し、筒体2内にコンクリート5を充填して固化させ、ピストン3に固化したコンクリート5(ピン部51)に係合するジベル孔6を設けて摩擦ダンパー1を構成する。
【0056】
次に、第1部材111と上記第2部材112とを相対変位させる力が所定の初動耐力に達したときに、ジベル孔6によりジベル孔6に係合するピン部51を壊し粒状化させて体積膨張させ、該体積膨張に反発する筒体2により、コンクリート5(粒状化したピン部51)を、ピストン3の摩擦面4(筒体2内の挿入部分)に押し付けて摩擦力を付与する。
【0057】
以下、図1および図12に基づき詳述する。
【0058】
図12に示すように、本実施形態の摩擦ダンパー1は、トラス橋100の下弦材101に介設されており、通常時は、トラス橋100にかかる荷重を直接受ける構造材(1次部材)として働き、地震などによる大きな荷重(初動耐力)がかかるときに、ダンパーとして働く。
【0059】
すなわち、下弦材101に荷重(圧縮荷重または引張荷重)がかかると、その荷重は、摩擦ダンパー1に伝達され摩擦ダンパー1の筒体2とピストン3とを軸方向に移動(相対変位)させるように作用する。
【0060】
通常時、例えばトラス橋100の自重(死荷重)や車両の通行などによる活荷重などの設計許容範囲の荷重(許容荷重)がかかる場合には、その許容荷重によりピストン3と筒体2とが軸方向に相対移動しようとするが、ピストン3のジベル孔6と筒体2のピン部51とが係合することから、その係合によりピストン3および筒体2の軸方向の移動が規制される。
【0061】
このように通常時には、摩擦ダンパー1は他のトラス部材101−104などと同様に剛性を有する構造材として働く。
【0062】
一方、地震などにより、摩擦ダンパー1に過度の引張荷重がかかると、ピン部51が壊れて、そのピン部51によるピストン3の拘束がなくなり、ピストン3が筒体2に対し軸方向外側に(図1において右側に)移動する。すなわち、ピストン3と筒体2とが相対移動する。
【0063】
このピストン3が移動する際に、本実施形態では、ピストン3の摩擦面4にコンクリート5からの軸方向内側向きに(図1において左向きに)摩擦力が付与されピストン3の移動エネルギーが減衰される。
【0064】
より具体的には、摩擦ダンパー1に設計許容範囲を超える引張荷重がかかると、その引張荷重が、ピストン3のジベル孔6を介して、ピン部51をなすコンクリート5に剪断力として作用し、ピン部51のコンクリート5が砕け壊れる。
【0065】
ピン部51のコンクリート5が砕け壊れると、そのコンクリート5のダイレイタンシーがピストン3のジベル孔6近傍にて生じ、ピン部51およびジベル孔6近傍のコンクリート5が粒状化し、ジベル孔6近傍におけるコンクリート5の体積が膨張する。
【0066】
その体積膨張による膨張力が、筒体2に対して筒体2を径方向外側に拡径するように作用する。その膨張力を受けた筒体2は、自身の剛性(弾性)により膨張力に反発して、コンクリート5を径方向内側に押圧し、そのコンクリート5を介してピストン3を締め付ける。
【0067】
この締め付けにより、ジベル孔6近傍のコンクリート5がピストン3の摩擦面4に押し付けられる。また、粒状化したコンクリート5は、筒体2により径方向外側への膨張が規制されるため、ピストン3の摩擦面4に押し付けられる。
【0068】
これより、ピストン3の摩擦面4が筒体2内のコンクリート5と摺動する際に、摩擦面4の摩擦抵抗が増大して強い摩擦力が発生し、相対移動のエネルギーが吸収される。
【0069】
ここで、上述したように本実施形態の摩擦ダンパー1は、ピン部51が壊れるほどの大きな引張荷重がかかることで、ダンパーとして機能する。この摩擦ダンパー1が、ダンパーとして機能し始める荷重を初動耐力という。
【0070】
すなわち、ピン部51は、摩擦ダンパー1にかかる荷重が初動耐力以下のときに、ピストン3のジベル孔6に係合してピストン3を係止し、荷重が初動耐力に達し超えたときに、破壊されてピストン3の係止を解除する。
【0071】
初動耐力は、摩擦ダンパー1に設けられたピン部51の合計強度により決まり、例えば、ピン部51(ジベル孔6)の数や大きさ(径)、コンクリート5の材質や結合強度などにより設定される。初動耐力は、ジベル孔6の数が多いほど、また径が大きいほど、大きな値に設定される。
【0072】
また、摩擦ダンパー1の摩擦力は、ピストン3の形状(摩擦面4の面積)やジベル孔6の数などにより設定される。摩擦力は、摩擦面4の面積が広いほど、ジベル孔6の数が多いほど大きな値に設定される。なお、ピストン3の形状が同一の場合、ジベル孔6が多いほど摩擦面4の面積は小さくなるが、コンクリート5が体積膨張する箇所も増えるので、結果として摩擦力は大きくなる。
【0073】
次に、図8に基づき本実施形態の摩擦ダンパー1の特性について説明する。
【0074】
図8は、摩擦ダンパー1の荷重−伸び曲線図であり、縦軸が荷重(引張荷重)、横軸が伸びである。図8において符号P0は、初動耐力を示す。
【0075】
図8に示すように、荷重Pが初動耐力P0以下のときには、荷重Pと伸びδとが比例関係にあり、この領域では摩擦ダンパー1は弾性的な挙動を示す。
【0076】
一方、荷重Pが、初動耐力P0に達すると、荷重Pが初動耐力P0で一定となり伸びδのみが増加する。この領域では摩擦ダンパー1はダンパーとしての挙動を示す。
【0077】
以上のように本実施形態の摩擦ダンパー1は、筒体2と摩擦面4を有するピストン3とコンクリート5とで主に構成されるので、構造が単純であり、安価に製造することができる。
【0078】
さらに、本実施形態では、筒体2を鋼管から形成し、ピストン3を孔あき鋼板から形成し、充填材にコンクリート5を用いたので一般的な材料で製造することができ、これによっても、摩擦ダンパー1を安価に製造することができる。
【0079】
また、筒体2とピストン3とを、コンクリート5と孔あき鋼板とによる所謂孔あき鋼板ジベル構造で接合したので、摩擦ダンパー1の初動耐力を大きく設定することができる。
【0080】
その初動耐力が、ピストン3のジベル孔6の数や大きさにより設定できるので、初動耐力の設定を容易に行うことができる。
【0081】
[第2の実施形態]
次に、図9に基づき第2の実施形態を説明する。本実施形態は、上述の第1の実施形態とは、筒体2内に締固められた粒状体が充填される点で異なり、その他は実質的に同じである。したがって、上述の第1の実施形態と同一の要素については、図中同一符号を付すに止め、詳細な説明は省略する。
【0082】
本実施形態の摩擦ダンパー1は、初動耐力がほぼ0であり、例えば、構造物を支持する1次部材に付帯的に設けられ、その1次部材が設計許容範囲を超えて変形したときにその変形を抑制する2次部材として用いられる。
【0083】
図9に示すように、摩擦ダンパー1は、第1部材111に取り付けられた筒体2と、第2部材112に取り付けられ、筒体2内に軸方向に移動可能に挿入されたピストン3と、筒体2を一端側から閉塞すると共にピストン3が挿通する挿通孔221が形成されたスリットダイヤフラム22と、筒体2を他端側から閉塞する端部拘束ダイヤフラム21と、筒体2内における端部拘束ダイヤフラム21とスリットダイヤフラム22との間に充填され締固められた粒状体8と、ピストン3に設けられて締固められた粒状体8に係合し、かつ第1部材111と上記第2部材112との相対変位により係合する粒状体8を崩して体積膨張させるための係合部をなすジベル孔6と、ピストン3における筒体2内の挿入部分に形成され、体積膨張に反発する筒体2から上記粒状体8が押し付けられる摩擦面4とを備えたものである。
【0084】
ここで、筒体2内に充填される粒状体8としては、例えば、砂や鉄球・ベアリングボールなどが考えられる。
【0085】
また、粒状体8の締固めは、粒状体8間の間隙が最小となるように粒状体8を配置すればよく、様々なものが考えられる。例えば、粒状体8を締固める方法としては、粒状体8を筒体2内に充填した後に粒状体8を突き固めるものや、或いは、粒状体8の充填後に筒体2を振動させるものなどが考えられる。
【0086】
本実施形態では、ジベル孔6内にて締固められた粒状体8がピン部81を形成し、そのピン部81とジベル孔6とが係合する。
【0087】
次に、本実施形態の減衰方法を説明する。
【0088】
本実施形態では、ピン部81をなす粒状体8が互いに結合されていないことから、摩擦ダンパー1は初動耐力がほぼ0に設定される。
【0089】
そのため、ピストン3と筒体2とに引張荷重がかかると、ピストン3は筒体2の軸方向に沿って筒体2から離間する方向に(軸方向外側に)移動する。
【0090】
ピストン3が移動すると、ピストン3のジベル孔6によりピン部81および周辺の粒状体8が崩れ、そのジベル孔6周辺にてダイレイタンシーが生じて、ピン部81および周辺の粒状体8が体積膨張する。
【0091】
つまり、粒状体8の配置が、締固めた状態から乱れることで、粒状体8間の間隙が締固めた状態に比べて大きくなり、粒状体8の全体の体積が膨張する。
【0092】
その体積膨張による膨張力が、筒体2に対して筒体2を径方向外側に拡径するように作用する。膨張力を受けた筒体2は、自身の剛性(弾性)により体積膨張の膨張力に反発して、粒状体8を径方向内側に押圧し、その粒状体8を介してピストン3を締め付ける。
【0093】
この締め付けにより、ジベル孔6近傍の粒状体8がピストン3の摩擦面4に押し付けられ、ピストン3と筒体2とが相対移動する際に、ピストン3の摩擦面4の摩擦抵抗が増大して強い摩擦力が付与され、相対移動のエネルギーが吸収される。
【0094】
本実施形態でも、上述の第1の実施形態と同様に、単純な構造および安価な製造コストという効果が得られ、さらに、コンクリート5を使用しないことから第1の実施形態に比べてより安価に製造することができる。
【0095】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、様々な変形例や応用例が考えられるものである。
【0096】
例えば、上述の実施形態では、ピストン3の係合部をジベル孔6としたが、これに限定されず、係合部は、ピストン3と筒体2とが相対移動したときに、充填材を壊して粒状化させる形状、あるいは締固めた粒状体を崩す形状であればよく、様々なものが可能である。係合部としては、例えば、図10に示すように、ピストン3から突出する凸部61(スタッドボルトなど)が考えられる。
【0097】
また、ピストンは、断面十字状のものに限定されず、様々なものが可能である。例えば、図11に示すように、ピストン33を断面H字状に形成し、そのフランジ331およびウェブ332に係合部をなすジベル孔6を形成するようにしてもよい。また、ピストンを円筒状に形成し、その円筒面に係合部をなすジベル孔を形成することも考えられる。
【0098】
充填材は、コンクリート5の他に、モルタル・エポキシ樹脂などが考えられる。
【0099】
摩擦ダンパーをトラス橋に以外のものに使用してよく、例えば、ビルなど建築物に用いることも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る摩擦ダンパーの概略断面図である。
【図2】図2は、本実施形態の筒体の概略断面図である。
【図3】図3は、図2のIII−III線断面図である。
【図4】図4は、図2のIV−IV線断面図である。
【図5】図5は、図2のV−V線断面図である。
【図6】図6は、本実施形態のピストンの概略側面図である。
【図7】図7は、図1のVII−VII線断面図である。
【図8】図8は、本実施形態の摩擦ダンパーにおける荷重と伸びの関係を説明するための図である。
【図9】図9は、他の実施形態に係る摩擦ダンパーの概略断面図である。
【図10】図10は、本発明の変形例に係るピストンの断面図である。
【図11】図11は、本発明の他の変形例に係るピストンの断面図である。
【図12】図12は、本実施形態の摩擦ダンパーが適用される橋梁の概略側面図である。
【符号の説明】
【0101】
1 摩擦ダンパー
2 筒体
3 ピストン
4 摩擦面
5 コンクリート(充填材)
6 ジベル孔(係合部)
21 端部拘束ダイヤフラム(拘束ダイヤフラム)
22 スリットダイヤフラム
111 第1部材
112 第2部材
221 挿通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材との間に設けられ、それら第1部材と第2部材とが相対変位したときに、その相対変位を減衰させるための摩擦ダンパーにおいて、
上記第1部材に取り付けられた筒体と、
上記第2部材に取り付けられ、上記筒体内に軸方向に移動可能に挿入されたピストンと、
上記筒体を一端側から閉塞すると共に上記ピストンが挿通する挿通孔が形成されたスリットダイヤフラムと、
上記筒体を他端側から閉塞する拘束ダイヤフラムと、
上記筒体内における上記拘束ダイヤフラムと上記スリットダイヤフラムとの間に充填され固化した充填材と、
上記ピストンに設けられて上記固化した充填材に係合し、かつ上記第1部材と上記第2部材とを相対変位させる力により上記係合する充填材を壊し粒状化させて体積膨張させるための係合部と、
上記ピストンにおける上記筒体内の挿入部分に設けられ、上記体積膨張に反発する上記筒体から上記充填材が押し付けられる摩擦面とを備えたことを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項2】
上記係合部が、上記ピストンに形成されたジベル孔からなり、該ジベル孔内に充填された上記充填材がピン部を形成し、それらピン部と上記ジベル孔とが係合する請求項1記載の摩擦ダンパー。
【請求項3】
上記充填材が、コンクリートである請求項1または2記載の摩擦ダンパー。
【請求項4】
第1部材と第2部材との間に設けられ、それら第1部材と第2部材とが相対変位したときに、その相対変位を減衰させるための摩擦ダンパーにおいて、
上記第1部材に取り付けられた筒体と、
上記第2部材に取り付けられ、上記筒体内に軸方向に移動可能に挿入されたピストンと、
上記筒体を一端側から閉塞すると共に上記ピストンが挿通する挿通孔が形成されたスリットダイヤフラムと、
上記筒体を他端側から閉塞する拘束ダイヤフラムと、
上記筒体内における上記拘束ダイヤフラムと上記スリットダイヤフラムとの間に充填され締固められた粒状体と、
上記ピストンに設けられて上記締固められた粒状体に係合し、かつ上記第1部材と上記第2部材との相対変位により上記係合する粒状体を崩して体積膨張させるための係合部と、
上記ピストンにおける上記筒体内の挿入部分に形成され、上記体積膨張に反発する上記筒体から上記粒状体が押し付けられる摩擦面とを備えたことを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項5】
上記係合部が、上記ピストンに形成されたジベル孔からなり、該ジベル孔内にて締固められた上記粒状体がピン部を形成し、それらピン部と上記ジベル孔とが係合する請求項4記載の摩擦ダンパー。
【請求項6】
上記筒体内に、上記拘束ダイヤフラムに近接させて、上記ピストンを上記軸方向に案内するガイドダイヤフラムが設けられた請求項1から5いずれかに記載の摩擦ダンパー。
【請求項7】
上記ピストンの上記係合部が、軸方向に沿って間隔を隔てて複数形成された請求項1から6いずれかに記載の摩擦ダンパー。
【請求項8】
上記ピストンは、断面十字状に形成され、互いに直交する4つのフランジを有し、上記係合部が、上記ピストンの各フランジに各々形成された請求項1から7いずれかに記載の摩擦ダンパー。
【請求項9】
第1部材と第2部材とが相対変位したときに、その相対変位を摩擦力により減衰させる方法において、
上記第1部材に筒体を取り付け、
上記第2部材にピストンを取り付け、該ピストンを上記筒体内に軸方向に移動可能に挿入し、
上記筒体を、いずれか一端側で上記ピストンが挿通可能なように両端側から閉塞し、該筒体内に充填材を充填して固化させ、
上記ピストンに上記固化した充填材に係合する係合部を設け、
上記第1部材と上記第2部材とを相対変位させる力が所定の初動耐力に達したときに、上記係合部により該係合部に係合する充填材を壊し粒状化させて体積膨張させ、該体積膨張に反発する上記筒体により、上記充填材を、上記ピストンにおける上記筒体内の挿入部分に押し付けて摩擦力を付与することを特徴とする減衰方法。
【請求項10】
第1部材と第2部材との相対変位を摩擦力により減衰させる方法において、
上記第1部材に筒体を取り付け、
上記第2部材にピストンを取り付け、該ピストンを上記筒体内に軸方向に移動可能に挿入し、
上記筒体を、いずれか一端側で上記ピストンが挿通可能なように両端側から閉塞し、該筒体内に粒状体を充填して締固め、
上記ピストンに上記締固められた粒状体に係合する係合部を設け、
上記第1部材と上記第2部材とが相対変位したときに、上記係合部により該係合部に係合する粒状体を崩して体積膨張させ、該体積膨張に反発する上記筒体により、上記粒状体を、上記ピストンにおける上記筒体内の挿入部分に押し付けて摩擦力を付与することを特徴とする減衰方法。
【請求項1】
第1部材と第2部材との間に設けられ、それら第1部材と第2部材とが相対変位したときに、その相対変位を減衰させるための摩擦ダンパーにおいて、
上記第1部材に取り付けられた筒体と、
上記第2部材に取り付けられ、上記筒体内に軸方向に移動可能に挿入されたピストンと、
上記筒体を一端側から閉塞すると共に上記ピストンが挿通する挿通孔が形成されたスリットダイヤフラムと、
上記筒体を他端側から閉塞する拘束ダイヤフラムと、
上記筒体内における上記拘束ダイヤフラムと上記スリットダイヤフラムとの間に充填され固化した充填材と、
上記ピストンに設けられて上記固化した充填材に係合し、かつ上記第1部材と上記第2部材とを相対変位させる力により上記係合する充填材を壊し粒状化させて体積膨張させるための係合部と、
上記ピストンにおける上記筒体内の挿入部分に設けられ、上記体積膨張に反発する上記筒体から上記充填材が押し付けられる摩擦面とを備えたことを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項2】
上記係合部が、上記ピストンに形成されたジベル孔からなり、該ジベル孔内に充填された上記充填材がピン部を形成し、それらピン部と上記ジベル孔とが係合する請求項1記載の摩擦ダンパー。
【請求項3】
上記充填材が、コンクリートである請求項1または2記載の摩擦ダンパー。
【請求項4】
第1部材と第2部材との間に設けられ、それら第1部材と第2部材とが相対変位したときに、その相対変位を減衰させるための摩擦ダンパーにおいて、
上記第1部材に取り付けられた筒体と、
上記第2部材に取り付けられ、上記筒体内に軸方向に移動可能に挿入されたピストンと、
上記筒体を一端側から閉塞すると共に上記ピストンが挿通する挿通孔が形成されたスリットダイヤフラムと、
上記筒体を他端側から閉塞する拘束ダイヤフラムと、
上記筒体内における上記拘束ダイヤフラムと上記スリットダイヤフラムとの間に充填され締固められた粒状体と、
上記ピストンに設けられて上記締固められた粒状体に係合し、かつ上記第1部材と上記第2部材との相対変位により上記係合する粒状体を崩して体積膨張させるための係合部と、
上記ピストンにおける上記筒体内の挿入部分に形成され、上記体積膨張に反発する上記筒体から上記粒状体が押し付けられる摩擦面とを備えたことを特徴とする摩擦ダンパー。
【請求項5】
上記係合部が、上記ピストンに形成されたジベル孔からなり、該ジベル孔内にて締固められた上記粒状体がピン部を形成し、それらピン部と上記ジベル孔とが係合する請求項4記載の摩擦ダンパー。
【請求項6】
上記筒体内に、上記拘束ダイヤフラムに近接させて、上記ピストンを上記軸方向に案内するガイドダイヤフラムが設けられた請求項1から5いずれかに記載の摩擦ダンパー。
【請求項7】
上記ピストンの上記係合部が、軸方向に沿って間隔を隔てて複数形成された請求項1から6いずれかに記載の摩擦ダンパー。
【請求項8】
上記ピストンは、断面十字状に形成され、互いに直交する4つのフランジを有し、上記係合部が、上記ピストンの各フランジに各々形成された請求項1から7いずれかに記載の摩擦ダンパー。
【請求項9】
第1部材と第2部材とが相対変位したときに、その相対変位を摩擦力により減衰させる方法において、
上記第1部材に筒体を取り付け、
上記第2部材にピストンを取り付け、該ピストンを上記筒体内に軸方向に移動可能に挿入し、
上記筒体を、いずれか一端側で上記ピストンが挿通可能なように両端側から閉塞し、該筒体内に充填材を充填して固化させ、
上記ピストンに上記固化した充填材に係合する係合部を設け、
上記第1部材と上記第2部材とを相対変位させる力が所定の初動耐力に達したときに、上記係合部により該係合部に係合する充填材を壊し粒状化させて体積膨張させ、該体積膨張に反発する上記筒体により、上記充填材を、上記ピストンにおける上記筒体内の挿入部分に押し付けて摩擦力を付与することを特徴とする減衰方法。
【請求項10】
第1部材と第2部材との相対変位を摩擦力により減衰させる方法において、
上記第1部材に筒体を取り付け、
上記第2部材にピストンを取り付け、該ピストンを上記筒体内に軸方向に移動可能に挿入し、
上記筒体を、いずれか一端側で上記ピストンが挿通可能なように両端側から閉塞し、該筒体内に粒状体を充填して締固め、
上記ピストンに上記締固められた粒状体に係合する係合部を設け、
上記第1部材と上記第2部材とが相対変位したときに、上記係合部により該係合部に係合する粒状体を崩して体積膨張させ、該体積膨張に反発する上記筒体により、上記粒状体を、上記ピストンにおける上記筒体内の挿入部分に押し付けて摩擦力を付与することを特徴とする減衰方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−180331(P2009−180331A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21168(P2008−21168)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
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