説明

撥水性、耐塵埃付着性に優れたアルミニウム塗装材

【課題】比較的容易な方法で、撥水性が高く、特定のカーボンブラックを添加した被膜にすることにより、撥水性も可能であり、埃を付着しにくくなるアルミニウム塗装材を提供する。
【解決手段】(A)フッ素系及びシリコーン系からなる撥水性樹脂とB)乾燥塗膜重量の1〜20wt%のカーボンブラックとからなる、乾燥塗膜重量が0.1〜20g/mであり、表面抵抗値が10〜10Ωである撥水性塗膜をアルミニウム表面に形成する。カーボンブラックが、DBP吸収量が60〜120cm/100g、窒素吸着比表面積が50〜400m/g、平均粒径0.012〜0.040μmであるのが好ましく、乾燥塗膜の表面粗度が、0.2〜2.0μmであることも好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム材又はアルミニウム合金材の表面に撥水性、耐塵埃付着性に優れた撥水性被膜を形成したアルミニウム塗装材に関する。
【背景技術】
【0002】
撥水性アルミニウム樹脂被覆材は様々な用途で提案されているが、本明細書においては空調機を例に挙げてその熱交換器のフィン材の場合について述べることとする。
【0003】
最近の空調機用熱交換器は、軽量化のために、熱効率の向上とコンパクト化が要求され、フィン間隔をでき得る限り狭くする設計が取り入れられてきた。空調機用熱交換器は、冷房運転中に空気中の水分がアルミニウムフィンの表面に凝縮水となって付着する。金属材料の表面は、一般に親水性に乏しいため、この凝縮水はフィン表面に半円形もしくはフィン間にブリッジ状になって存在することになる。これはフィン間の空気の流れを妨げ、通風抵抗を増大させ、熱交換効率を著しく低下させる原因となっていた。熱交換器の熱効率を向上させるには、フィン表面の凝縮水を迅速に排除することが必要である。
【0004】
この解決法として、(1)アルミニウム合金フィン表面に高親水性被膜を形成し、凝縮水を薄い水膜として流下せしめる、(2)アルミニウム合金フィン表面に撥水性被膜を形成し、凝縮水を表面に付着させないようにする、ことが考えられる。
【0005】
高親水性被膜を付与する方法としては、カルボキシメチルセルロースとポリエチレングリコールを含有する組成物を塗布し、親水性の被膜を形成させる方法(特許文献1)などが提案されている。
【0006】
しかしながら、室内機では、親水性被膜にて満足することは出来たが、冬季の室外機では結霧水が氷結して霜となり、暖房性能を低下させるという問題点があったことから、撥水性被膜の提案があったが、まだ満足するものではなかった。
【0007】
その他シリコーン系あるいはフッ素系撥水被膜に無機充填材を含有させたもの(特許文献2及び3)、電着塗料にシリカまたはチタニアを葡萄の房状にして含有させた撥水被膜があるが(特許文献4)、特許文献2及び3の技術では撥水被膜中の粒子が脱落しやすく、特許文献4の技術では十分な撥水性がなかったり、製法が複雑である問題がある。
【特許文献1】特開2000−028291号公報
【特許文献2】特開平3−244680号公報
【特許文献3】特開平5−222339号公報
【特許文献4】特開2003−238947号公報
【0008】
また、空調機(エアコン)の室内機の空気吸入口側には、吸い込む空気に含まれている埃やゴミなどを除去するためのエアフィルタが設けられているが、小さな埃等は、そのまま熱交換器に送り込まれ、空調機の運転が長時間に渡ると、熱交換器の表面に埃などが堆積し、空気調和機の能力低下などにより空調に支障をきたし、また、埃などにより菌類が繁殖したり、不快な臭いを発生することにもなるため、エアフィルタを適宜清掃する必要がある。
【0009】
熱交換器を清掃するにあたって、多くの場合、洗浄剤あるいは水で洗浄するようにしているが、壁掛け式の場合、室内機は高所に設置されているために、例えば脚立などを用いなければならず、煩わしいだけでなく、転倒するなどの危険性もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明者らは、従来技術における問題点に鑑み、比較的容易な方法で、撥水性が高く、特定のカーボンブラックを添加した被膜にすることにより、撥水性も可能であり、埃を付着しにくくなるアルミニウム塗装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記の目的を達成するためになされたもので、具体的には、請求項1記載の通り、アルミニウム又はアルミニウム合金の基材と、当該基材の少なくとも一つの面に形成した撥水性塗膜とを備えたアルミニウム塗装板であって、
前記撥水性塗膜が、
(A)フッ素系及びシリコーン系からなる撥水性樹脂 と
(B)乾燥塗膜重量の1〜20wt%の カーボンブラック
とからなり、乾燥塗膜重量が0.1〜20g/mであり、表面抵抗値が10〜10Ωであることを特徴とする、撥水性、耐塵埃付着性に優れたアルミニウム塗装材である。
【0012】
また、請求項2に記載の通り、カーボンブラックが、DBP吸収量が60〜120cm/100g、窒素吸着比表面積が50〜400m/g、平均粒径0.012〜0.040μmであることが好ましい。
【0013】
また、請求項3記載のように、乾燥塗膜の表面粗度が、算術平均粗さRaで0.2〜2.0μmであることも好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の金属塗装材は撥水性が高く、空調機用熱交換器運転時に付着する凝縮水を排除することができ、また、被膜表面の表面抵抗値が低いため、埃等の付着を抑えることができることができる。従って、これを用いて製造したプレコートアルミニウムフィン材を用いた例えば熱交換器は、長期に亘って優れた熱交換効率を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
アルミニウム塗装材
本発明に係るアルミニウム塗装材は、アルミニウム又はアルミニウム合金の基材と、当該基材の少なくとも一方の面に形成した撥水性被膜とを備える。
【0016】
A.アルミニウム基材
本発明で用いる基材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材である。以下において、アルミニウム及びアルミニウム合金からなる基材を、単に「アルミニウム材」と記す。なお、アルミニウム以外の金属を基材に用いることもできる。
【0017】
更に、アルミニウム材に耐食性下地被膜を形成したものも用いることができる。耐食性下地被膜としては、化成処理被膜、耐食性有機被膜、陽極酸化被膜、ベーマイト被膜等が挙げられ、いずれの耐食性下地被膜を用いてもよい。耐食性、密着性、経済性の観点から、化成処理被膜と有機耐食性被膜を用いるのが好ましい。
【0018】
化成処被膜としては、クロム系、ジルコニウム系、チタン系の化成処理被膜が用いられるが、耐食性、被膜密着性の観点からクロム系の化成処理被膜が好ましい。化成処理被膜の形成方法としては、塗布型、電解型、反応型の化成処理方法等が用いられるが、いずれの方法を用いてもよい。乾燥温度も任意である。上記化成処理被膜の形成方法のうち、成形性、被膜密着性、耐食性に優れた塗布型クロメート法によるのが好ましい。この場合の塗布量はCr元素換算で2〜50mg/mである。塗布量がCr元素換算で2mg/m未満では、十分な耐食性と被膜密着性が得られない。また、50mg/mを超えても耐食性や被膜密着性の効果が飽和し経済性に欠ける。好ましい塗布量はCr元素換算で5〜15mg/mである。
【0019】
また、耐食性有機被膜としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂から成る被膜が用いられるが、その上に形成される樹脂被膜の撥水性を損なわない限り、いずれの樹脂被膜も用いることができる。耐食性有機被膜の形成量は、0.1〜10g/m、好ましくは0.5〜5g/mである。0.1g/m未満では十分な耐食性が得られず、10g/m超えても効果が飽和し不経済となる。
【0020】
B.撥水性被膜
本発明の撥水性被膜は、撥水性樹脂成分として一般的な撥水性被膜を処理することで構わない。その中でも、撥水性処理としては、フッ素系、シリコーン系のものが、撥水性、密着性とも良好であるので、好ましい。 本発明のアルミニウム材面に撥水性被膜を形成するには、アルミニウム材表面又はアルミニウム材表面に形成した耐食性下地被膜表面に、撥水性被膜用の液状の被膜組成物を塗装(塗布)しこれを焼付けることが好ましい。
本発明では、それぞれの被膜成分を含んだ被膜組成物を用いることができる。
【0021】
・撥水性樹脂
本発明においては、これらのアルミニウム材表面をフッ素系樹脂及びシリコーン系樹脂でコーティングする。ここで用いられるフッ素系樹脂としては、フッ素 原子を含むものであれば特に限定されないが、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。
シリコーン系塗料としては、アルキルアルコキシシラン樹脂、シランシロキサン樹脂等がある。
【0022】
・カーボンブラック
本発明においては、撥水性被膜中にカーボンブラックを含有させることにより、表面抵抗を低減させる効果を発揮される。更に、カーボンブラックは、微細な粒状の形態をとっているため、撥水性被膜中に含有すると被膜表面の凹凸が大きくなり、見かけの表面積が増大することにより水の接触角が増大し、撥水性が更に向上することができる。
【0023】
本発明に用いるカーボンブラックは公知の方法によって製造することができ、その製造方法に特に制限はないが、例えば、チャンネル法、ローラー法、ファーネス法等によって製造される。また、本発明におけるカーボンブラックの特性に適合する限りにおいて、製造したカーボンブラックに公知の酸化反応等の更なる処理を施してもよい。
【0024】
本発明のカーボンブラックのうち、以下に示すカーボンブラックが好適に使用される。カーボンブラックの一次粒子径としては、0.012〜0.040μmが好ましい。更に、このような一次粒子径を有するものであって、60〜120cm/100gのDBP吸油量と、50〜400m/gの窒素吸着比表面積とを有するものが好適に用いられる。
【0025】
カーボンブラックの一次粒子径は、カーボンブラックの分散性に強く影響する。0.012μm未満であると工業製造上困難である。一方、一次粒子径が0.040μmを超えると、上記被膜中でのカーボンブラックが充分に分散せず、被膜の表面抵抗を低下することできない。なお、一次粒子径は、顕微鏡法等の公知方法によって測定される。
【0026】
カーボンブラックのDBP吸油量も表面抵抗に強く影響しており、更に撥水性被膜の場合はこの特性を受けやすくなる。DBP吸油量が、60〜120cm/100g、好ましくは70〜100cm/100gのものが用いられる。ここで、DBP吸油量とは、JIS K6221 A法に従って、100gのカーボンブラックが吸収するDBP(フタル酸ジブチル)の吸収量を容量(cm)で表わしたものである。DBP吸油量が60cm/100g未満では、カーボンブラック凝集体の発達度合いが低下し過ぎる。その結果、被膜の表面抵抗を低減させるには、多量のカーボンブラックを添加しなければならず、不経済となる。一方、DBP吸油量が120cm/100gを超えると、カーボンブラック凝集体の発達度合いが増大する。その結果、撥水性被膜中にて凝集体となり、これまた被膜の表面抵抗が大きくなり、十分な効果が得られない。
【0027】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積も表面抵抗に強く影響している。窒素吸着比表面積は50〜400m/g、好ましくは70〜150m/gのものが用いられる。ここで、窒素吸着比表面積とは、JIS K6221の方法に従って、1gのカーボンブラックに吸着される窒素ガスを吸着した量を表し、カーボンブラックの表面積(m)の指標とされるものである。窒素吸着比表面積が50m/g未満では、十分な表面抵抗を保持することができない。一方、窒素吸着比表面積が400m/gでは、表面抵抗が飽和して不経済となる。カーボンブラックの窒素吸着量は、一般に公知な方法によって測定され、例えばBET吸着法が好適に用いられる。
【0028】
本発明で使用されるカーボンブラックは、上記の範囲の、平均粒径、DBP吸収量、窒素吸着比表面積、いずれも合わせもつものが好ましく用いられる。
【0029】
カーボンブラックは、撥水性被膜中に1〜20wt%、好ましくは3〜10wt%の割合で含有される。カーボンブラック量が1wt%では表面抵抗を低減させる効果が得られない。一方、カーボンブラック量が20wt%を超えると、アルミニウム塗装板を成形する際にカーボンブラックが撥水性被膜から脱落することがある。
【0030】
なお、上記のカーボンブラックには、各種の表面処理されたカーボンブラックも含まれる。
【0031】
・その他添加物
本発明の撥水性被膜には、必要に応じて、タンニン酸、没食子酸、フイチン酸、ホスフィン酸等の防錆剤;ポリアルコールのアルキルエステル類、ポリエチレンオキサイド縮合物等のレベリング剤;相溶性を損なわない範囲で添加されるポリアクリルアミド、ポリビニルアセトアミド等の充填剤;フタロシアニン化合物等の着色剤;アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩系等の界面活性剤の添加物を含有することができる。
【0032】
・被膜の形成
本発明のアルミニウム材面に撥水性被膜を形成するには、アルミニウム材表面又はアルミニウム材表面に形成した耐食性下地被膜表面に、撥水性被膜用の液状の被膜組成物を塗装(塗布)しこれを焼付ける。
【0033】
このような被膜組成物は、前記被膜構成成分及び必要に応じた上記添加剤を、溶媒に溶解、分散させて調製される。このような溶媒には、各成分を溶解又は分散できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、水等の水性溶媒、アセトン等のケトン系溶剤、エタノール等のアルコール系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールアルキルエーテル系溶剤;ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコールアルキルエーテル系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル系溶剤、及びエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の一連のグリコールアルキルエーテル系溶剤のエステル化物等が挙げられ、その中でも、環境面からも、水性溶媒が好ましく、水が特に好ましい。
【0034】
被膜組成物の塗布方法としては、ロールコーター法、ロールスクイズ法、ケミコーター法、エアナイフ法、浸漬法、スプレー法、静電塗装法等の方法が用いられ、被膜の均一性に優れ、生産性が良好なロールコーター法が好ましい。ロールコーター法としては、塗布量管理が容易なグラビアロール方式や、厚塗りに適したナチュラルコート方式や、塗布面に美的外観を付与するのに適したリバースコート方式等を採用することができる。また、被膜の乾燥には一般的な加熱法、誘電加熱法等が用いられる。
【0035】
形成する被膜の表面抵抗値によって、埃などが付着することを防止することを目的としている。大気中に漂っている埃などは、静電気などにより電荷を帯びていることが知られていることから、絶縁体であった塗装材表面に付着しやすくなってしまう。そこで、本発明では、カーボンブラックを添加することにより、表面抵抗を下げ、埃等の付着を防止することができる。そこで、カーボンブラックを添加した被膜の表面抵抗値が、10〜10Ωにすることにより、埃等の付着を抑制する効果が見られる。表面抵抗値が10Ω未満では、表面抵抗値を低くするため、カーボンブラックを多量に添加する必要となり、不経済となる。一方、表面抵抗値が10Ωを超えると、静電気を帯びた埃等が被膜表面に付着しやすくなり、充分な効果が得られない。
【0036】
乾燥塗膜重量は、0.1〜20g/m、好ましくは0.5〜10g/m、とする必要がある。被膜量さが0.1g/m未満では、所望の撥水性が得られず、20g/mより厚いとこれら撥水性が飽和して不経済となる。
【0037】
更に、撥水性を向上するには、以下に述べるような表面粗度によって規定できることがわかった。すなわち、この発明を構成する被膜は、算術平均粗さ(Ra)が0.2〜2.0μmを満足する表面粗度を有することが必要である。算術平均粗さ(Ra)が0.2未満では単位面積当りの表面積を十分に確保できなく、撥水性を満足することはできなくなるからである。また、算術平均粗さ(Ra)が2.0μmを超えると、撥水性という観点からは問題とならないが、製造時や使用時における摩擦等によって脱落しやすくなる。このように被膜の表面粗度にするには、撥水性被膜中に含有させるカーボンブラックの粒径、添加量及び撥水性被膜の被膜量を、適宜組み合わせることが必要である。
【0038】
このようにして作製されるアルミニウム塗装材は、成形加工を施すことにより、所望の製品が作製される。このようなアルミニウム塗装材は、例えば空調機用熱交換器のフィン材として好適に用いられるが、空調機用熱交換器に限定されるものではない。
【実施例1】
【0039】
以下、発明例及び比較例に基づいて本発明の好適な実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0040】
発明例1〜9及び比較例1〜8
アルミニウム材表面には、撥水性被膜を以下のようにして形成した。アルミニウム合金板(1100−H24材、0.100mm厚さ)を弱アルカリ脱脂し、水洗した後に乾燥した。次いで、このように処理したアルミニウム合金板表面に、塗布型クロメート(日本ペイント社製SAT427)を塗布し、180℃で10秒間焼付けし、金属クロム換算にて、クロム付着量が10mg/mの塗布型クロメート系の化成被膜を下地被膜として形成した。次に、このアルミニウム合金板に、表1に示す各撥水性被膜用組成物をロールコーターにて塗布し、到達板表面温度(PMT)80℃で20秒間焼付けしてアルミニウム塗装板を得た。
【0041】
表1に示すように、樹脂成分として、フッ素系樹脂として、フルロテクノロジ社製フロロサーフFS−3030TH−2.0(フルロテクノロジ社製)、シリコーン系樹脂としてKR-400(信越化学社製)、カーボンブラックとして、カーボンブラックA,B,C,D(東海カーボン社製)の撥水性被膜用の組成物を用いた。
【0042】
表面抵抗
得られた供試材について、被膜の表面抵抗値を表面抵抗測定器で測定した。
【0043】
表面粗度
得られた供試材について、触針式粗度計を用い、算術平均粗さRaを測定した。
【0044】
このようにして得られたアルミニウム塗装材について撥水性、埃付着性、密着性を後述の方法で測定した。結果を、表1にあわせて示す。
【0045】
撥水性
ゴニオメーターで純水の接触角を測定した。表1中の記号の意味は以下の通りであり、◎、○を、性能を満足する合格とした。

◎ :接触角が130°以上
○ :接触角が100°以上、130未満
△ :接触角が80゜以上、100゜未満
× :接触角が80°未満
【0046】
耐塵埃付着性
得られた供試材を室内に20日間吊るし、埃 が付着する程度を下記基準で目視評価した。
○を、性能を満足する合格とした。
○ :塵埃の付着が殆ど見られない。
△ :塵埃の付着が若干見られる。
× :塵埃の付着が多く見える。
【0047】
密着性
JIS H4001に従った付着性試験を行い、碁盤目におけるテープ剥離後の残存個数を測定した。○を、性能を満足する合格とした。
○:塗膜残存率 100%
×:塗膜残存率 100%未満
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示すように発明例1〜7はいずれも、撥水性、耐塵埃付着性、密着性が良好である。その中でも、発明例1〜3、6〜7は、カーボンブラックの物性が範囲内であったため、優れた表面抵抗及び撥水性を有していた。
【0050】
これに対し、比較例1は、撥水性樹脂だけのものについては、表面抵抗が高すぎたため、埃の付着が激しかった。比較例2は、撥水性樹脂にエポキシ系樹脂を用いたため、撥水性を満足することは出来なかった。比較例3は、カーボンブラックの添加量が少なすぎたため、表面抵抗があがり、耐塵埃付着性を満足することはできなかった。比較例4は、カーボンブラックの添加量が多かったため、密着性を満足することはできなかった。比較例5は、カーボンブラックの添加量が範囲内であったが、表面抵抗が範囲外となったため、耐塵埃付着性を満足することはできなかった。比較例6は、被膜量が薄すぎたため、撥水性を満足することはできなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム又はアルミニウム合金の基材と、当該基材の少なくとも一つの面に形成した撥水性塗膜とを備えたアルミニウム塗装板であって、
前記撥水性塗膜が、
(A)フッ素系及びシリコーン系からなる撥水性樹脂 と
(B)乾燥塗膜重量の1〜20wt%の カーボンブラック
とからなり、
乾燥塗膜重量が0.1〜20g/mであり、表面抵抗値が10〜10Ωであることを特徴とする、撥水性、耐塵埃付着性に優れたアルミニウム塗装材。
【請求項2】
カーボンブラックが、DBP吸収量が60〜120cm/100g、窒素吸着比表面積が50〜400m/g、平均粒径0.012〜0.040μmであることを特徴とする請求項1記載の撥水性、耐塵埃付着性に優れたアルミニウム塗装材。
【請求項3】
乾燥塗膜の表面粗度が算術平均粗さRaで0.2〜2.0μmであることを特徴とする請求項1、2記載の撥水性、耐塵埃付着性に優れたアルミニウム塗装材。

【公開番号】特開2010−42617(P2010−42617A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208798(P2008−208798)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(000107538)古河スカイ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】