説明

撮像レンズおよび撮像装置、ならびに携帯端末機器

【課題】全長の短縮化と共に高い結像性能を実現できるようにした撮像レンズ、およびその撮像レンズを搭載して高解像の撮像信号を得ることができる撮像装置ならびに携帯端末機器を提供する。
【解決手段】物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズG1と、負の屈折力を有する第2レンズG2と、正の屈折力を有する第3レンズG3と、物体側の面が光軸近傍において凹面または平面であり、負の屈折力を有する第4レンズG4とを備え、かつ以下の条件式を満足する。R3は第2レンズG2の物体側の面の近軸曲率半径、R4は第2レンズG2の像側の面の近軸曲率半径とする。
0.3<|(R4+R3)/(R4−R3)|<1.5 ……(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子上に被写体の光学像を結像させる撮像レンズ、およびその撮像レンズを搭載して撮影を行うデジタルスチルカメラ等の撮像装置、ならびにカメラ付き携帯電話機や情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistance)等の携帯端末機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータの一般家庭等への普及に伴い、撮影した風景や人物像等の画像情報をパーソナルコンピュータに入力することができるデジタルスチルカメラが急速に普及している。また、携帯電話に画像入力用のカメラモジュールが搭載されることも多くなっている。このような撮像機能を有する機器には、CCDやCMOSなどの撮像素子が用いられている。近年、これらの撮像素子のコンパクト化が進み、撮像機器全体ならびにそれに搭載される撮像レンズにも、コンパクト性が要求されている。また同時に、撮像素子の高画素化も進んでおり、撮像レンズの高解像、高性能化が要求されている。
【0003】
特許文献1ないし6には、3枚あるいは4枚のレンズで構成された撮像レンズが開示されている。これらの文献に記載されているように、特に4枚構成の撮像レンズとしては、物体側から順に、正、負、正、正のパワー配置とした構成や、正、負、正、負のパワー配置とした構成が知られている。このような4枚構成の撮像レンズの場合、最も撮像側のレンズは、近軸(光軸近傍)において物体側の面が凸形状であることが多い。一方で、特許文献2の実施例5,9には、正、負、正、負のパワー配置で、最も撮像側のレンズの光軸近傍における物体側の面形状が凹である構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3424030号公報
【特許文献2】特開2007−017984号公報
【特許文献3】特開2007−122007号公報
【特許文献4】特開2007−219079号公報
【特許文献5】特開2008−268946号公報
【特許文献6】特開2009−020182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように近年の撮像素子は、小型化および高画素化が進んでいる。特に携帯用カメラモジュールの撮像レンズには従来、コスト面とコンパクト性が主に要求されていたが、最近では携帯用カメラモジュールにおいても撮像素子の高画素化が進む傾向にあり、性能面に対する要求も高くなってきている。このため、コスト面、性能面、およびコンパクト性を総合的に考慮した多種多様なレンズの開発が望まれており、性能面ではデジタルカメラへの搭載をも視野に入れた、ローコストで高性能な撮像レンズの開発が望まれている。上記各特許文献記載のレンズでは、例えば結像性能とコンパクト性との両立という点で不十分なところがある。また、特許文献2には様々な種類の4枚構成の撮像レンズが開示されているが、個々の構成例について十分に最適化条件が検討されているとは言い難い。
なお、本願発明は、特許文献6に記載の発明の利用発明である。特許文献6に記載の撮像レンズについてより一層の小型化と性能のバランスを考慮した結果、本願発明の課題を解決することができた。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、全長の短縮化と共に高い結像性能を実現できるようにした撮像レンズ、およびその撮像レンズを搭載して高解像の撮像信号を得ることができる撮像装置ならびに携帯端末機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による撮像レンズは、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズと、負の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、物体側の面が光軸近傍において凹面または平面であり、光軸近傍において負の屈折力を有する第4レンズとからなる。
そして、以下の条件式を満足している。ただし、R3は第2レンズの物体側の面の近軸曲率半径、R4は第2レンズの像側の面の近軸曲率半径とする。
0.3<|(R4+R3)/(R4−R3)|<1.5 ……(1)
【0008】
本発明による撮像レンズでは、全体として4枚というレンズ構成において、各レンズの構成の最適化を図ったことで、全長の短縮化に有利であると共に高い結像性能のレンズ系が得られる。特に条件式(1)を満足して第2レンズの構成の最適化が図られている。本発明の撮像レンズでは、最も撮像側のレンズ(第4レンズ)の光軸近傍における物体側の面形状を凹面または平面としながらも、全長の短縮化と結像性能に有利な構成されている。
そして、さらに、次の好ましい構成を適宜採用して満足することで、全長の短縮化を図りつつ、より高性能化を図りやすくなる。
【0009】
本発明による撮像レンズは、以下の条件式を少なくとも1つ満足することが好ましい。
0.3<|f4/f|<0.80 ……(2)
0.4<f1/f<1.1 ……(3)
0.2<f3/f<1.6 ……(4)
0.5<|f2/f|<2.0 ……(5)
20<ν1−ν2 ……(6)
ただし、fは全体の焦点距離、f1は第1レンズの焦点距離、f2は第2レンズの焦点距離、f3は第3レンズの焦点距離、f4は第4レンズの焦点距離とする。ν1は第1レンズのd線に対するアッベ数、ν2は第2レンズのd線に対するアッベ数とする。
【0010】
また、本発明による撮像レンズにおいて、絞りは、第1レンズにおける像側の面頂点位置よりも物体側に配置されていることが好ましい。
【0011】
本発明による撮像レンズにおいて、第1レンズ、第2レンズ、第3レンズ、および第4レンズはすべて、両面が非球面形状であることが好ましい。
【0012】
特に、第4レンズの像側の面は、光軸近傍において凹形状であり、周辺に向かうに従い負の屈折力が光軸近傍に比べて弱くなる領域を有するものであることが好ましい。
【0013】
本発明による撮像装置は、本発明による撮像レンズと、この撮像レンズによって形成された光学像に応じた撮像信号を出力する撮像素子とを備えたものである。
【0014】
本発明による携帯端末機器は、本発明による撮像装置と、その撮像装置によって撮像された画像を表示する表示手段とを備えたものである。
【0015】
本発明による撮像装置または携帯端末機器では、本発明の撮像レンズによって得られた高解像の光学像に基づいて高解像の撮像信号が得られる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の撮像レンズによれば、全体として4枚というレンズ構成において、各レンズの形状等を適切に最適化するようにしたので、全長の短縮化と共に高い結像性能を実現できる。
【0017】
また、本発明の撮像装置または携帯端末機器によれば、上記本発明の高い結像性能を有する撮像レンズによって形成された光学像に応じた撮像信号を出力するようにしたので、高解像の撮影画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態に係る撮像レンズの第1の構成例を示すものであり、数値実施例1に対応するレンズ断面図である。
【図2】撮像レンズの第2の構成例を示すものであり、数値実施例2に対応するレンズ断面図である。
【図3】撮像レンズの第3の構成例を示すものであり、数値実施例3に対応するレンズ断面図である。
【図4】撮像レンズの第4の構成例を示すものであり、数値実施例4に対応するレンズ断面図である。
【図5】撮像レンズの第5の構成例を示すものであり、数値実施例5に対応するレンズ断面図である。
【図6】撮像レンズの第6の構成例を示すものであり、数値実施例6に対応するレンズ断面図である。
【図7】撮像レンズの第7の構成例を示すものであり、数値実施例7に対応するレンズ断面図である。
【図8】撮像レンズの第8の構成例を示すものであり、数値実施例8に対応するレンズ断面図である。
【図9】撮像レンズの第9の構成例を示すものであり、数値実施例9に対応するレンズ断面図である。
【図10】撮像レンズの第10の構成例を示すものであり、数値実施例10に対応するレンズ断面図である。
【図11】撮像レンズの第11の構成例を示すものであり、数値実施例11に対応するレンズ断面図である。
【図12】実施例1に係る撮像レンズの諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)はディストーションを示す。
【図13】実施例2に係る撮像レンズの諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)はディストーションを示す。
【図14】実施例3に係る撮像レンズの諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)はディストーションを示す。
【図15】実施例4に係る撮像レンズの諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)はディストーションを示す。
【図16】実施例5に係る撮像レンズの諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)はディストーションを示す。
【図17】実施例6に係る撮像レンズの諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)はディストーションを示す。
【図18】実施例7に係る撮像レンズの諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)はディストーションを示す。
【図19】実施例8に係る撮像レンズの諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)はディストーションを示す。
【図20】実施例9に係る撮像レンズの諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)はディストーションを示す。
【図21】実施例10に係る撮像レンズの諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)はディストーションを示す。
【図22】実施例11に係る撮像レンズの諸収差を示す収差図であり、(A)は球面収差、(B)は非点収差、(C)はディストーションを示す。
【図23】本発明の一実施の形態に係る撮像装置としてのカメラモジュールの一構成例を示す斜視図である。
【図24】本発明の一実施の形態に係る携帯端末機器としてのカメラ付き携帯電話機の一構成例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[レンズ構成]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る撮像レンズの第1の構成例を示している。この構成例は、後述の第1の数値実施例のレンズ構成に対応している。同様にして、後述の第2ないし第11の数値実施例のレンズ構成に対応する第2ないし第11の構成例の断面構成を、図2〜図11に示す。図1〜図11において、符号Riは、最も物体側のレンズ要素の面を1番目(絞りStを0番目)として、像側(結像側)に向かうに従い順次増加するようにして符号を付したi番目の面の曲率半径を示す。符号Diは、i番目の面とi+1番目の面との光軸Z1上の面間隔を示す。
【0020】
本実施の形態に係る撮像レンズは、光軸Z1に沿って、物体側から順に、絞りStと、第1レンズG1と、第2レンズG2と、第3レンズG3と、第4レンズG4とを備えている。
【0021】
絞りStは、光学的な開口絞りであり、光軸Z1上において、第1レンズG1における像側の面頂点位置よりも物体側に配置されることにより、レンズ系の最も物体側に配置されていることが好ましい。ここで、「最も物体側」とは、例えば図3の構成例のように光軸Z1上において第1レンズG1の物体側の面頂点位置に絞りStが配置される場合のほか、その他の構成例のように第1レンズG1の物体側の面頂点位置と像側の面頂点位置との間に絞りStが配置される場合をも含む意味である。絞りStは好ましくは、より物体側、例えば、光軸上において、第1レンズG1における物体側の面頂点位置と、第1レンズG1における物体側の面の端縁位置E(図1参照)との間に配置すると良い。
【0022】
この撮像レンズの結像面Simgには、CCD等の撮像素子が配置される。第4レンズG4と撮像素子との間には、レンズを装着するカメラ側の構成に応じて、種々の光学部材CGが配置されていても良い。例えば撮像面保護用のカバーガラスや赤外線カットフィルタなどの平板状の光学部材が配置されていても良い。この場合、光学部材CGとして例えば平板状のカバーガラスに、赤外線カットフィルタやNDフィルタ等のフィルタ効果のあるコートが施されたものを使用しても良い。また、この撮像レンズにおいて、第1レンズG1ないし第4レンズG4のすべて、または少なくとも1つのレンズ面に赤外線カットフィルタやNDフィルタ等のフィルタ効果のあるコートや、反射防止のコートが施されていても良い。
【0023】
第1レンズG1は、正の屈折力を有している。第1レンズG1は、光軸近傍において両凸形状であることが好ましい。
【0024】
第2レンズG2は、負の屈折力を有している。第2レンズG2は、光軸近傍において、両凹形状(例えば図1の構成例)、物体側が平面の平凹形状(例えば図3の構成例)、または物体側に凸面を向けたメニスカス形状(例えば図4の構成例)などのレンズで構成することができる。
【0025】
第3レンズG3は、光軸近傍において像側の面が凸面で正の屈折力を有している。第3レンズG3の物体側の面は、例えば光軸近傍において凹面とされている。
【0026】
第4レンズG4は、物体側の面が光軸近傍において凹面(例えば図1、図2の構成例)または平面(例えば図3、図4の構成例)であり、光軸近傍において負の屈折力を有している。
【0027】
第1レンズG1、第2レンズG2、第3レンズG3、および第4レンズG4のそれぞれにおいて、少なくとも1面は非球面を含んでいることが好ましい。特に、第4レンズG4の像側の面は、光軸近傍において凹形状で、周辺に向かうに従い負の屈折力が光軸近傍に比べて弱くなる領域を有していることが好ましい。また、第4レンズG4の像側の面は、有効径内で変曲点を有する非球面形状であることが好ましい。また、第4レンズG4の像側の面は、有効径内において、光軸中心以外で極点を有する非球面形状であることが好ましい。具体的には例えば、第4レンズG4の像側の面は、光軸近傍では像側に凹形状で、周辺部では像側に凸形状となるような非球面とされていることが好ましい。
【0028】
ここで、特に非球面形状とする場合、第2レンズG2、第3レンズG3および第4レンズG4は、第1レンズG1と比べて複雑な形状になりやすく、また形状も大きくなりやすい。このため、第2レンズG2、第3レンズG3および第4レンズG4は、加工性や製造コストの点ですべて樹脂材料により構成されることが好ましい。第1レンズG1も製造コストを重視する場合には樹脂材料で構成することが好ましい。ただし、高性能化を図るために第1レンズG1をガラス材料で構成しても良い。
【0029】
この撮像レンズは、以下の条件式(1)を満足することが好ましい。ただし、R3は第2レンズG2の物体側の面の近軸曲率半径、R4は第2レンズG2の像側の面の近軸曲率半径とする。
0.3<|(R4+R3)/(R4−R3)|<1.5 ……(1)
【0030】
また、以下の条件を適宜選択的に満足することが好ましい。ただし、fは全体の焦点距離、f1は第1レンズG1の焦点距離、f2は第2レンズG2の焦点距離、f3は第3レンズG3の焦点距離、f4は第4レンズG4の焦点距離とする。ν1は第1レンズG1のd線に対するアッベ数、ν2は第2レンズG2のd線に対するアッベ数とする。
0.3<|f4/f|<0.80 ……(2)
0.4<f1/f<1.1 ……(3)
0.2<f3/f<1.6 ……(4)
0.5<|f2/f|<2.0 ……(5)
20<ν1−ν2 ……(6)
【0031】
[撮像装置への適用例]
図24(A),(B)は、本実施の形態に係る携帯端末機器の一例として、カメラ付き携帯電話機を示している。また図23は、本実施の形態に係る撮像装置としてのカメラモジュールの一構成例を示している。図24(A),(B)に示したカメラ付き携帯電話機は、上部筐体2Aと下部筐体2Bとを備え、両者が図24(A)の矢印方向に回動自在に構成されている。下部筐体2Bには、操作キー21などが設けられている。上部筐体2Aには、カメラ部1(図24(B))および表示部(表示手段)22(図24(A))などが設けられている。表示部22は、LCD(液晶パネル)やEL(Electro-Luminescence)パネルなどの表示パネルによって構成されている。表示部22は、折りたたみ時に内面となる側に配置されている。この表示部22には、電話機能に関する各種メニュー表示のほか、カメラ部1によって撮影された画像などを表示することが可能となっている。カメラ部1は、例えば上部筐体2Aの裏面側に配置されている。ただし、カメラ部1を設ける位置は、これに限定されない。
【0032】
カメラ部1は、例えば図23に示したようなカメラモジュールを有している。このカメラモジュールは、図23に示したように、撮像レンズ20が収納される鏡筒3と、鏡筒3を支持する支持基板4と、支持基板4上において撮像レンズ20の結像面に対応する位置に設けられた撮像素子(図示せず)とを備えている。このカメラモジュールはまた、支持基板4上の撮像素子に電気的に接続されたフレキシブル基板5と、フレキシブル基板5に電気的に接続されると共に、電話機本体側の信号処理回路に接続可能に構成された外部接続端子6とを備えている。これらの構成要素は、一体的に構成されている。
【0033】
カメラ部1では、撮像レンズ20によって形成された光学像が撮像素子によって電気的な撮像信号に変換され、その撮像信号が、機器本体側の信号処理回路に出力される。このようなカメラ付き携帯電話機における撮像レンズ20として、本実施の形態に係る撮像レンズを用いることで、収差補正の十分なされた高解像の撮像信号が得られる。電話機本体側では、その撮像信号に基づいて高解像の画像を生成することができる。
【0034】
なお、本実施の形態に係る撮像レンズは、CCDやCMOS等の撮像素子を用いた各種撮像装置または携帯端末機器に適用可能である。本実施の形態に係る撮像装置または携帯端末機器は、カメラ付き携帯電話機に限らず、例えばデジタルスチルカメラやPDA等であっても良い。
【0035】
[作用・効果]
次に、以上のように構成された撮像レンズの作用および効果を説明する。
本実施の形態に係る撮像レンズでは、全体として4枚のレンズ構成において、各レンズのパワー配置を、物体側から順に正、負、正、負とし、各レンズの面形状を適切に設定すると共に、所定の条件式を満足することにより、全長の短縮化に有利であると共に高い結像性能を得るのに有利となる。特にこの撮像レンズでは、最も撮像側のレンズ(第4レンズG4)の光軸近傍における物体側の面形状を凹面または平面としながらも、全長の短縮化と結像性能に有利な構成されている。また、第4レンズG4が、負の屈折力を有していることにより、バックフォーカスの確保に有利となる。仮に、第4レンズG4の正の屈折力が強過ぎると、十分なバックフォーカスの確保が困難となる。
【0036】
また、この撮像レンズでは、第1レンズG1、第2レンズG2、第3レンズG3および第4レンズG4のそれぞれが、少なくとも1面に非球面を用いることで、収差性能の維持により有利となる。特に、第4レンズG4では、第1レンズG1、第2レンズG2、および第3レンズG3に比べて、画角ごとに光束が分離される。このため、撮像素子に最も近い最終レンズ面である第4レンズG4の像側の面を、光軸近傍において像側に凹形状で周辺部において像側に凸形状となるようにすることで、画角ごとの収差補正が適切になされ、光束の撮像素子への入射角度が一定の角度以下に制御される。従って、結像面全域における光量むらを軽減することができると共に、像面湾曲や歪曲収差等の補正に有利となる。
【0037】
一般に、撮像レンズ系では、テレセントリック性、すなわち、撮像素子への主光線の入射角度が光軸に対して平行に近く(撮像面における入射角度が撮像面の法線に対してゼロに近く)なることが好ましい。このテレセントリック性を確保するためには、絞りStはできるだけ物体側に配置されることが好ましい。一方で、絞りStが第1レンズG1の物体側のレンズ面からさらに物体側方向に離れた位置に配置されると、その分(絞りStと最も物体側のレンズ面との距離)が光路長として加算されてしまうため、全体構成のコンパクト化の面で不利となる。従って、絞りStを、光軸Z1上において第1レンズG1の物体側のレンズ面頂点位置と同じ位置に配置するか、または第1レンズG1の物体側の面頂点位置と像側の面頂点位置との間に配置することにより、全長の短縮化を図りつつ、テレセントリック性を確保することができる。テレセントリック性の確保をより重視する場合には、光軸上において、第1レンズG1における物体側の面頂点位置と、第1レンズG1における物体側の面の端縁位置E(図1参照)との間に絞りStを配置すれば良い、
【0038】
上記条件式(1)は、第2レンズG2の形状および屈折力に関する。条件式(1)の上限を上回ると第2レンズG2の屈折力が弱くなりすぎ、全長の短縮化に不利となる。条件式(1)の下限を下回ると第2レンズG2の屈折力が強くなりすぎ、収差補正が困難になる。
全長を短くしつつ、より高い結像性能を得るためには、条件式(1)の数値範囲は、
0.35<|(R4+R3)/(R4−R3)|<1.45 ……(1−1)
であることが望ましい。
さらに良い性能を得るためには、
0.6<|(R4+R3)/(R4−R3)|<1.1 ……(1−2)
であることが望ましい。
【0039】
上記条件式(2)は、第4レンズG4の焦点距離f4に関するもので、この数値範囲を上回り第4レンズG4の屈折力が小さくなると全長の短縮化が困難となる。下回ると第4レンズG4の屈折力が強くなり、それを打ち消すために第3レンズG3の屈折力も強くしなければならないため軸外性能が劣化する。
より良好な性能を得るために、条件式(2)の数値範囲は以下の範囲であることがより好ましい。
0.35<|f4/f|<0.70 ……(2−1)
さらに良い性能を得るためには、
0.4<|f4/f|<0.70 ……(2−2)
であることが望ましい。
【0040】
上記条件式(3)は、第1レンズG1の焦点距離f1に関するもので、この数値範囲を下回ると第1レンズG1の屈折力が強くなり過ぎ球面収差の増加を招くとともにバックフォーカスの確保が困難になる。上回ると全長の短縮化が困難となり、像面湾曲および非点収差等の補正が困難になる。
より良好な性能を得るために、条件式(3)の数値範囲は以下の範囲であることがより好ましい。
0.45<f1/f<1.0 ……(3−1)
さらに良い性能を得るためには、
0.5<f1/f<0.9 ……(3−2)
であることが望ましい。
【0041】
上記条件式(4)は、第3レンズG3の焦点距離f3に関するもので、この数値範囲を下回って第3レンズG3の正の屈折力を強くすぎると性能が劣化し、バックフォーカスの確保も難しくなる。上回ると正の屈折力が弱くなり過ぎて、十分な収差補正が困難となる。
より良好な性能を得るために、条件式(4)の数値範囲は以下の範囲であることがより好ましい。
0.3<f3/f<1.5 ……(4−1)
さらに良い性能を得るためには、
0.35<f3/f<1.1 ……(4−2)
であることが望ましい。
【0042】
上記条件式(5)は、第2レンズG2の焦点距離f2に関するもので、この数値範囲を下回ると第2レンズG2の屈折力−が強くなり過ぎて収差が増大する。上回ると屈折力が小さくなり過ぎ、像面湾曲および非点収差等の補正が困難になる。
より良好な性能を得るために、条件式(5)の数値範囲は以下の範囲であることがより好ましい。
0.8<|f2/f|<1.9 ……(5−1)
さらに良い性能を得るためには、
0.9<|f2/f|<1.8 ……(5−2)
であることが望ましい。
【0043】
上記条件式(6)は、第1レンズG1および第2レンズG2の分散を規定するものであり、この数値範囲を満足することにより軸上色収差の低減を図ることができる。
より良好な性能を得るために、条件式(6)の数値範囲は以下の範囲であることがより好ましい。
25<ν1−ν2<40 ……(6−1)
さらに良い性能を得るためには、
28<ν1−ν2<32 ……(6−2)
であることが望ましい。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態に係る撮像レンズによれば、全長の短縮化と共に高い結像性能を実現できる。また、本実施の形態に係る撮像装置または携帯端末機器によれば、全長の短縮化と共に高い結像性能を有する撮像レンズによって形成された光学像に応じた撮像信号を出力するようにしたので、装置または機器全体としての小型化を図れる。また、高解像の撮像信号を得て、その撮像信号に基づいて高解像の撮影画像を得ることができる。
【実施例】
【0045】
次に、本実施の形態に係る撮像レンズの具体的な数値実施例について説明する。以下では、複数の数値実施例を部分的にまとめて説明する。
【0046】
[数値実施例1]
[表1],[表2]は、図1に示した撮像レンズの構成に対応する具体的なレンズデータを示している。特に[表1]にはその基本的なレンズデータを示し、[表2]には非球面のデータを示す。[表1]に示したレンズデータにおける面番号Siの欄には、実施例1に係る撮像レンズについて、最も物体側の構成要素の面を1番目として、像側に向かうに従い順次増加するようにして符号を付したi番目(i=1〜10)の面の番号を示している。曲率半径Riの欄には、図1において付した符号Riに対応させて、物体側からi番目の面の曲率半径の値(mm)を示す。面間隔Diの欄についても、同様に物体側からi番目の面Siとi+1番目の面Si+1との光軸上の間隔(mm)を示す。Ndjおよびνdjの欄には、物体側からj番目の光学要素のd線(587.6nm)に対する屈折率およびアッベ数の値を示す。[表1]の欄外には、諸データとして、全系の焦点距離f(mm)、Fナンバー(FNo.)の値を示す。
【0047】
この実施例1に係る撮像レンズは、第1レンズG1ないし第4レンズG4の両面がすべて非球面形状となっている。[表1]の基本レンズデータでは、非球面の曲率半径については、光軸近傍の曲率半径の数値を示している。
【0048】
[表3]には実施例1に係る撮像レンズにおける非球面データを示す。非球面データとして示した数値において、記号“E”は、その次に続く数値が10を底とした“べき指数”であることを示し、その10を底とした指数関数で表される数値が“E”の前の数値に乗算されることを示す。例えば、「1.0E−02」であれば、「1.0×10-2」であることを示す。
【0049】
非球面データとしては、以下の式(A)によって表される非球面形状の式における各係数Ai,Kの値を記す。Zは、より詳しくは、光軸から高さhの位置にある非球面上の点から、非球面の頂点の接平面(光軸に垂直な平面)に下ろした垂線の長さ(mm)を示す。
【0050】
Z=C・h2/{1+(1−K・C2・h21/2}+ΣAi・hi ……(A)
ただし、
Z:非球面の深さ(mm)
h:光軸からレンズ面までの距離(高さ)(mm)
K:離心率
C:近軸曲率=1/R
(R:近軸曲率半径)
ΣAi・hi:i=3〜nとしたときのAi・hiの総和(n=3以上の整数)
i:第i次の非球面係数
【0051】
実施例1に係る撮像レンズの非球面は、上記非球面式(A)に基づき、非球面係数AnについてはA3〜A10までの次数を有効に用いて表している。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
[数値実施例2〜11]
以上の数値実施例1と同様にして、図2に示した撮像レンズの構成に対応する具体的なレンズデータを数値実施例2として、[表3],[表4]に示す。同様にして、図3〜図11に示した各撮像レンズの構成に対応する具体的なレンズデータを数値実施例3〜11として、[表5]〜[表22]に示す。これらの実施例2〜11では、実施例1の撮像レンズと同様、第1レンズG1ないし第4レンズG4の両面がすべて非球面形状となっている。
【0055】
【表3】

【0056】
【表4】

【0057】
【表5】

【0058】
【表6】

【0059】
【表7】

【0060】
【表8】

【0061】
【表9】

【0062】
【表10】

【0063】
【表11】

【0064】
【表12】

【0065】
【表13】

【0066】
【表14】

【0067】
【表15】

【0068】
【表16】

【0069】
【表17】

【0070】
【表18】

【0071】
【表19】

【0072】
【表20】

【0073】
【表21】

【0074】
【表22】

【0075】
[各実施例のその他の数値データ]
[表23]には、上述の各条件式に関する値を、各実施例についてまとめたものを示す。[表23]から分かるように、各条件式について、各実施例の値がその数値範囲内となっている。
【0076】
【表23】

【0077】
[収差性能]
図12(A)〜(C)はそれぞれ、数値実施例1に係る撮像レンズにおける球面収差、非点収差、およびディストーション(歪曲収差)を示している。各収差図には、d線(587.6nm)を基準波長とした収差を示す。球面収差図には、g線(波長435.8nm),C線(波長656.3nm)についての収差も示す。非点収差図において、実線はサジタル方向、破線はタンジェンシャル方向の収差を示す。FNO.はF値、ωは半画角を示す。
【0078】
同様に、数値実施例2に係る撮像レンズについての諸収差を図13(A)〜(C)に示す。同様にして、数値実施例3〜11に係る撮像レンズについての諸収差を図14〜図22の(A)〜(C)に示す。
【0079】
以上の各数値データおよび各収差図から分かるように、各実施例について、全長の短縮化と共に高い結像性能が実現されている。
【0080】
なお、本発明は、上記実施の形態および各実施例に限定されず種々の変形実施が可能である。例えば、各レンズ成分の曲率半径、面間隔および屈折率の値などは、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得る。
【符号の説明】
【0081】
CG…光学部材、G1…第1レンズ、G2…第2レンズ、G3…第3レンズ、G4…第4レンズ、St…開口絞り、Ri…物体側から第i番目のレンズ面の曲率半径、Di…物体側から第i番目と第i+1番目のレンズ面との面間隔、Z1…光軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、
正の屈折力を有する第1レンズと、
負の屈折力を有する第2レンズと、
正の屈折力を有する第3レンズと、
物体側の面が光軸近傍において凹面または平面であり、光軸近傍において負の屈折力を有する第4レンズと
を備え、
かつ以下の条件式を満足するように構成されている
ことを特徴とする撮像レンズ。
0.3<|(R4+R3)/(R4−R3)|<1.5 ……(1)
ただし、
R3:第2レンズの物体側の面の近軸曲率半径
R4:第2レンズの像側の面の近軸曲率半径
とする。
【請求項2】
さらに以下の条件式を満足する
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
0.3<|f4/f|<0.80 ……(2)
ただし、
f:全体の焦点距離
f4:第4レンズの焦点距離
とする。
【請求項3】
さらに以下の条件式を満足する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の撮像レンズ。
0.4<f1/f<1.1 ……(3)
ただし、
f1:第1レンズの焦点距離
とする。
【請求項4】
さらに以下の条件式を満足する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
0.2<f3/f<1.6 ……(4)
ただし、
f3:第3レンズの焦点距離
とする。
【請求項5】
さらに以下の条件式を満足する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
0.5<|f2/f|<2.0 ……(5)
ただし、
f2:第2レンズの焦点距離
とする。
【請求項6】
さらに以下の条件式を満足する
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
20<ν1−ν2 ……(6)
ただし、
ν1:第1レンズのd線に対するアッベ数
ν2:第2レンズのd線に対するアッベ数
とする。
【請求項7】
光軸上において、前記第1レンズにおける像側の面頂点位置よりも物体側に絞りが配置されている
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項8】
前記第4レンズの像側の面は、光軸近傍において凹形状であり、周辺に向かうに従い負の屈折力が光軸近傍に比べて弱くなる領域を有する
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の撮像レンズ。
【請求項9】
前記第4レンズの像側の面は、有効径内で変曲点を有する非球面形状である
ことを特徴とする請求項8に記載の撮像レンズ。
【請求項10】
前記第4レンズの像側の面は、有効径内において、光軸中心以外で極点を有する非球面形状である
ことを特徴とする請求項8に記載の撮像レンズ。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の撮像レンズと、
前記撮像レンズによって形成された光学像に応じた撮像信号を出力する撮像素子と
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項12】
請求項11に記載の撮像装置と、
前記撮像装置によって撮像された画像を表示する表示手段と
を備えたことを特徴とする携帯端末機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−232449(P2011−232449A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101150(P2010−101150)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】