説明

撮像装置、ならびに、その制御方法および制御プログラム

【課題】旋回型の撮像装置において、不正な撮像範囲の変更があった場合、その旨を報知できるようにする。
【解決手段】監視カメラユニットでは、オートパン動作中であれば、等速制御中に検出される角速度の値が、オートパン動作で予想される角速度の値に対して閾値以上大きくなった場合または閾値以上小さくなった場合には、異常報知がなされる。つまり、等速制御中に、鏡筒に対して外部から力が加えられたり、鏡筒を移動させる機構の不具合により円滑な移動が阻害されることによって、当該鏡筒の正常な等速移動が妨害された場合、ステップS60で角速度についての差が大きくなったとして、ステップS120で異常報知がなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関し、特に、旋回型撮像装置、ならびに、その制御方法および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、撮像装置が出力する画像を監視のために用いる技術が種々利用されている。なお、このような撮像装置では、撮像装置のカメラが設置される場所に監視員が配置される必要がないため、当該カメラに力が加えられること等による、不正な撮像範囲の変更への対策が必要とされる場合がある。
【0003】
この点について、特許文献1(特開2000−285328号公報)では、ジャイロセンサを用いた技術が開示されている。具体的には、撮像範囲を固定されたカメラの本体にジャイロセンサを取付け、当該ジャイロセンサの出力値に変化が発生したときに、不正に撮像範囲を変更されたことを検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−285328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、撮像範囲をより広いものとするために、撮像装置の鏡筒を旋回させながら、または、鏡筒を旋回させて複数のポジションで一定時間ずつ撮影することにより、監視を行なう技術が利用されている。
【0006】
このような技術に係る撮像装置に上記対策に係る従来技術を適用しようとすると、ジャイロセンサの出力値が、撮像装置本来の旋回動作によるものであるのか、不正な撮像範囲の変更によるものであるのか、区別することが困難な場合があった。したがって、従来の技術が旋回型の撮像装置にそのまま適用されても、不正な撮像範囲の変更を検出することができなかった。
【0007】
本発明は、係る実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、の撮像装置において、不正な撮像範囲の変更があった場合、その旨を報知できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従った撮像装置は、被写体を撮像する撮像部と、撮像部の移動態様を制御する移動制御部と、撮像部の移動態様を検出する検出部と、検出部によって検出される移動態様と、移動制御部による移動制御に従って撮像部が移動されたときに検出されるべき移動態様とが異なる場合に異常を報知する報知部とを備えている。
【0009】
また、本発明の撮像装置では、検出部は、撮像部の移動態様として、撮像部の動きの量を検出し、報知部は、検出部が検出した動きの量と、移動制御部による移動制御に従って撮像部が移動されるべき動きの量との差が予め定められた閾値を超えた場合に、異常を報知することが好ましい。
【0010】
また、本発明の撮像装置では、検出部は、動きの量として撮像部の角速度を検出することが好ましい。
【0011】
また、本発明の撮像装置では、移動制御部は、撮像部を、複数の固定状態の間を断続的に移動させ、報知部は、移動制御部が撮像部を第1の固定状態から第2の固定状態に変更させるように移動させている期間中は、検出部が検出する角速度が特定の値よりも低い場合に、異常を報知することが好ましい。
【0012】
また、本発明の撮像装置では、報知部は、移動制御部が撮像部を第1の固定状態から第2の固定状態に変更させるように移動させている期間中は、検出部が検出する角速度の回転方向が、移動制御部による制御に基づく回転方向と異なるか否かを判断し、異なると判断した場合に異常を報知することが好ましい。
【0013】
本発明に従った撮像装置の制御方法は、被写体を撮像する撮像部を備えた撮像装置の制御方法であって、撮像部の移動態様を制御するステップと、撮像部の移動態様を検出するステップと、検出された移動態様と、移動態様の制御に従って撮像部が移動されたときに検出されるべき移動態様とを比較するステップと、検出された移動態様と検出されるべき移動態様とが異なる場合に異常を報知するステップとを備えている。
【0014】
本発明に従った制御プログラムは、被写体を撮像する撮像部を備えた撮像装置に実行させる制御プログラムであって、コンピュータに、撮像部の移動態様を制御するステップと、撮像部の移動態様を検出するステップと、検出された移動態様と、移動態様の制御に従って撮像部が移動されたときに検出されるべき移動態様とを比較するステップと、検出された移動態様と検出されるべき移動態様とが異なる場合に異常を報知するステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、旋回型の撮像装置において、外部から力が加えられることによる不正な撮像範囲の変更があった場合、そのことを異常として報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の撮像装置の第1の実施の形態のブロック図である。
【図2】図1を、図1中の矢印A方向から見た平面図である。
【図3】図1を、図1中の矢印B方向から見た側面図である。
【図4】図1のジョイスティックに対する操作態様を説明するための図である。
【図5】図1の監視カメラユニットの中央制御部において実行される異常報知処理のフローチャートである。
【図6】本発明の撮像装置の第2の実施の形態のブロック図である。
【図7】図6の撮像装置において実行される異常報知処理のフローチャートである。
【図8】図7の異常報知処理における動きベクトルの算出を説明するための図である。
【図9】図7の異常報知処理における動きベクトルの算出を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図において、同じ機能を奏する要素については、同一の参照符号を付し、その説明は繰返さない。
【0018】
[第1の実施の形態]
(1.全体構成)
図1は、本発明の撮像装置の第1の実施の形態である監視カメラユニット1を示すブロック図である。図2は、図1を矢印A方向から見た平面図である。図3は、図1を矢印B方向から見た側面図である。
【0019】
図1〜図3を参照して、監視カメラユニット1は、広範囲に亘って監視できるように、レンズとCCD(Charge-Coupled Device)素子を有する鏡筒3を水平方向に旋回させるパン機構と、垂直方向に旋回させるチルト機構を具えている。
【0020】
監視カメラユニット1では、被写体の光学像は、レンズを介してCCD素子に取り込まれ、鏡筒3から映像信号として映像信号処理回路40へ出力される。以下、被写体の光学像がCCD素子に取り込まれることを撮像と定義する。なお、本実施例では、被写体に存在する主要被写体を監視対象6とする。
【0021】
図1において、鏡筒3は、アーム30の下端部にチルト方向に回動可能に支持されて、チルトモータ31により回転される。アーム30の上端部は、水平面内を360度回転する回転板32に支持される。該回転板32は、スリップ機構33を介して、天井に固定される台座34に取り付けられている。台座34には、パンモータ35が固定されている。該パンモータ35に繋がったパンギア36が回転板32に噛合することにより、回転板32はパン方向に回転する。
【0022】
鏡筒3は、ズーム動作等を制御するカメラ制御部21に接続される。チルトモータ31は、該モータ31の回転速度、加速度を制御するチルトモータ制御部22に接続される。パンモータ35は、該モータ35の回転速度、加速度を制御するパンモータ制御部23に接続される。
【0023】
カメラ制御部21、チルトモータ制御部22、パンモータ制御部23は、マイクロコンピュータである中央制御部2に接続されている。中央制御部2は、操作キー51やジョイスティック50を具えたコントローラ5に接続される。鏡筒3から出力される映像信号は、映像信号処理回路40にて画像処理されて、表示器4に画像として映し出される。
【0024】
なお、監視カメラユニット1が記録装置(図示略)をさらに備え、鏡筒3から出力される映像信号に対して圧縮処理等を施し、圧縮映像データとして当該記録装置において連続的に記録されても良い。
【0025】
コントローラ5のユーザである監視者は、操作キー51やジョイスティック50を操作して、中央制御部2に信号を送る。中央制御部2は、信号の内容を解析して、カメラ制御部21、チルトモータ制御部22、パンモータ制御部23を制御し、撮影を開始する。
【0026】
鏡筒3から出力される映像信号は、映像信号処理回路40にてノイズ等が除去されて、表示器4画に画像として映し出される。監視者は、表示器4の画像を見て、操作キー51やジョイスティック50を操作する。パンモータ35、チルトモータ31が回転して、鏡筒3を、例えば人である監視対象6に向ける。また、必要に応じて、カメラ制御部21を制御して、監視対象6のズーム画像を得る。
【0027】
ジョイスティック50は、図4に示すように、起立姿勢から、数段階の傾き位置K1、K2、K3で示される姿勢を取ることができる。起立姿勢からの傾き角が大きいほど、パンモータ35、チルトモータ31の速度が速くなる。例えば、図4において、ジョイスティック50がK3の位置にあるときに最もパンモータ35、チルトモータ31の速度が速い。ジョイスティック50が傾き位置を保っているときは、パンモータ35、チルトモータ31は一定速度で回転し、ジョイスティック50をK1からK3に向けて倒すと、パンモータ35、チルトモータ31は加速度が増して速く回転する。逆に、K3からK1に向けて戻すと、モータ31およびモータ35は減速する。尚、ジョイスティック50の傾きが3段階であるのは、例示であって、これに限定されない。
【0028】
監視カメラユニット1は、たとえば天井等に取付けられる。したがって、鏡筒3が図3に実線で示すように、天井に対して真下を向いた位置(以下、「真下位置」と呼ぶ)を基準として、左右両方向に90度チルト方向に旋回できる。鏡筒3が真下位置から左向きに傾いた場合を想定すると、鏡筒3は、鏡筒3の左側下端Cが上となった位置にて被写体の光学像を捉える。しかし、チルトモータ31の回転により、鏡筒3が時計方向に旋回して、真下位置から右向きに傾くと、鏡筒3は、鏡筒3の左側下端Cが下となった位置にて被写体の光学像を捉える。
【0029】
なお、鏡筒3が時計方向に旋回して真下位置に達すると、鏡筒3を該真下位置にて一旦停止させ、パンモータ35を回転させて、鏡筒3を水平面内にて180度回転させてもよい。この後、チルトモータ31を回転させて、鏡筒3を真下位置から右向きに旋回させる。また、鏡筒3を該真下位置にて一旦停止させて、鏡筒3から出力される映像信号を電気的に処理して、上下を合わせた画像を形成するものもある。なお、中央制御部2は、鏡筒3が真下位置に達したことを、位置センサ(図示せず)等の検出出力により認識できる。
【0030】
鏡筒3には、角速度センサ11,12が配設されている。角速度センサ11および角速度センサ12は、たとえばジャイロセンサによって構成され、監視カメラユニット1での画ブレ補正におけるブレの検出にも利用される。角速度センサ11は、垂直方向に沿った軸回りの回転方向(図1中の回転方向α)における角速度を検出する。角速度センサ12は、水平方向に沿った軸回りの回転方向(図1中の回転方向β)における角速度を検出する。回転方向αは、パン方向の旋回の回転方向である。回転方向βは、チルト方向の旋回の回転方向である。
【0031】
監視カメラユニット1では、角速度センサ11,12から出力される角速度情報を用いてレンズを動かすことによって、画ブレ補正がなされる。なお、後述するオートパン動作やオートシーケンス動作中は、このような画ブレ補正の機能は停止されて、角速度センサ11,12は異常報知処理のために利用される。
【0032】
中央制御部2は、記憶装置2Aに記録されたプログラム(または、監視カメラユニット1本体に対して着脱可能な記録媒体に記録されたプログラム)を実行することにより、監視カメラユニット1の各要素の動作を全体的に制御する。
【0033】
(2.オートモード動作)
監視カメラユニット1は、自動的に鏡筒3を旋回させることによりその撮像範囲を変化させる、オートモード動作を実行できる。なお、オートモード動作には、撮像範囲を予め定められた経路に沿って等速に変化させるオートパン動作と、一定時間ごとに撮像範囲を複数のポジションの間で変更させるシーケンス動作が含まれる。以下、各動作が実現される際に監視カメラユニット1内で実行される処理内容を説明する。
【0034】
(2−1.オートパン動作)
本実施の形態では、オートパン動作の一例として、鏡筒3が予め定められた2つのポジションの間を等速で移動する場合を説明する。
【0035】
監視カメラユニット1では、予め上記2つのポジションに対応する鏡筒3のパン方向およびチルト方向の角度が、たとえば記憶装置2Aに記録されている。2つのポジションについての情報は、予め登録されていても良いし、ユーザから操作キー51等を介して入力された情報が記憶装置2Aに登録されても良い。
【0036】
また、監視カメラユニット1では、等速移動させる際の速度も、記憶装置2Aに記録されている。当該速度は、予め登録されていても良いし、ユーザから操作キー51等を介して入力されたものが記録されても良い。
【0037】
オートパン動作の実行指示を受け付けると、中央制御部2は、記憶装置2Aに記録されたプログラムを実行することにより、上記2つのポジションを結ぶ最短経路を算出する。そして、中央制御部2は、パンモータ制御部23および/またはチルトモータ制御部23に適宜指示を出力することによりパンモータ35および/またはチルトモータ31を駆動させて、当該経路に沿って鏡筒3を旋回させる。これにより、鏡筒3は、たとえば、上記2つのポジションの中の一方のポジションから他方のポジションに等速移動し、当該他方のポジションで所定時間停止し、他方のポジションから一方のポジションに等速移動し、一方のポジションで所定時間停止し、一方のポジションから他方のポジションに等速移動する、という動作を繰り返す。この間、映像信号処理回路40が、継続的に鏡筒3から出力される映像信号を受付け、当該信号を処理することにより、表示器4に当該映像信号に基づく画像が映し出される。
【0038】
なお、以上の説明では、オートパン動作では、鏡筒3が2点間を移動する動作を説明したが、オートパン動作におけるポジションの数はこれに限られず、3点以上の点の間を等速移動するように構成されても良い。この場合、中央制御部2は、各ポジションを順に最短で結ぶ経路を算出し、当該経路に沿って鏡筒3を移動させる。
【0039】
(2−2.シーケンス動作)
本実施の形態では、シーケンス動作の一例として、鏡筒3が複数のポジション間を予め定められた順番で移動する場合の動作を説明する。
【0040】
監視カメラユニット1では、複数のポジションに対応する鏡筒3のパン方向およびチルト方向の角度および鏡筒3が移動する複数のポジションの移動のための順序が、予め、たとえば記憶装置2Aに記録されている。複数のポジションについての情報は、予め登録されていても良いし、ユーザから操作キー51やジョイスティック50等を介して入力された情報が記憶装置2Aに登録されても良い。
【0041】
シーケンス動作の実行指示を受け付けると、中央制御部2は、記憶装置2Aに記録されたプログラムを実行することにより、上記複数のポジションの中の第1のポジションについての情報を記憶装置2Aから読み込み、鏡筒3を、当該第1のポジションに位置させる。
【0042】
監視カメラユニット1では、中央制御部2は、パンモータ制御部23および/またはチルトモータ制御部33に適宜指示を出力することによりパンモータ35および/またはチルトモータ31を駆動させて、鏡筒3を移動させる。
【0043】
そして、シーケンス動作では、中央制御部2は、第1のポジションに位置させた後、一定時間鏡筒3をそのポジションで静止させる。その後、中央制御部2は、鏡筒3を第2のポジションに比較的高速で移動させ、一定時間静止させる。その後、中央制御部2は、鏡筒3を第3のポジションに比較的高速で移動させ、一定時間静止させる。このように、中央制御部2は、鏡筒3を、上記複数のポジションのそれぞれで一定時間静止させるように、当該複数のポジションを順に移動させる。そして、最後のポジションまで移動させると、再度第1のポジションから順に移動させる。
【0044】
シーケンス動作では、映像信号処理回路40が、鏡筒3から出力される映像信号を受付けて当該信号を処理することにより、表示器4に当該映像信号に基づく画像が表示される。なお、映像信号処理回路40は、鏡筒3から出力される映像信号を、継続的に、または、鏡筒3が静止状態とされているときにのみ、処理する。
【0045】
(3.異常報知処理)
監視カメラユニット1では、中央制御部2は、オートモード動作のための処理と並行して異常報知処理を実行している。監視カメラユニット1は、異常報知処理により、鏡筒3に不正な力や機構の不具合等により鏡筒3に対する移動制御が阻害された場合、そのことを報知できる。以下、異常報知処理の内容を、当該処理のフローチャートである図5を参照して説明する。なお、中央制御部2は、異常報知処理の実行指示を入力されたとき、または、オートモード動作を開始するときに、異常報知処理を開始する。
【0046】
図5を参照して、中央制御部2は、まずステップS10で、オートモード動作の種別を取得し、ステップS20へ処理を進める。種別とは、「オートパン動作」「シーケンス動作」等をいう。
【0047】
ステップS20では、中央制御部2は、ステップS10で取得した種別がオートパン動作であるか否かを判断し、そうであると判断するとステップS30へ、そうではない(つまり、取得した種別がシーケンス動作)であると判断するとステップS70へ、それぞれ処理を進める。
【0048】
ステップS30では、中央制御部2は、その時点でのモータ制御情報を取得する。ステップS30で取得されるモータ制御情報とは、パンモータ35およびチルトモータ31に対する駆動制御の態様を表す情報であり、たとえば、上記したオートパン動作における、鏡筒3をポジション間で等速移動させる制御中であるか、停止させる制御中であるか、といった情報である。その後、中央制御部2は、ステップS40へ処理を進める。
【0049】
ステップS40では、中央制御部2は、ステップS30で取得したモータ制御情報が鏡筒3を等速移動させるもの(等速制御)であるか否かを判断し、そうであると判断するとステップS50へ処理を進め、そうではないと判断するとステップS30へ処理を戻す。
【0050】
ステップS50では、中央制御部2は、角速度センサ11,12の検出出力(ジャイロセンサ情報)を取得して、ステップS60へ処理を進める。本実施の形態では、角速度センサ11,12の検出出力が、単位時間あたりの、鏡筒3の動きの量に相当する。
【0051】
ステップS60では、中央制御部2は、ステップS50で取得した角速度センサ11および/または角速度センサ12の検出出力である角速度の値と想定される角速度の値(想定値)との差が記憶装置2Aにおいて登録されている閾値以上であるか否かを判断し、閾値以上であると判断するとステップS120へ処理を進め、閾値未満であると判断するとステップS30へ処理を戻す。
【0052】
閾値とは、記憶装置2Aに登録されているものとする。また、想定される角速度の値とは、等速制御による鏡筒3の移動に対応した角速度の値である。中央制御部2は、オートパン制御に関して記憶装置2Aに登録されている等速移動させる速度と算出した経路とに基づいて、等速制御による鏡筒3の移動に対応した角速度の値を算出する。本実施の形態では、等速制御による鏡筒3の移動に対応した角速度の値が、単位時間当たりで鏡筒3が移動する角度であり、単位時あたりの、中央制御部2によるオートパン制御に基づく鏡筒3の動きの量に相当する。
【0053】
一方、ステップS70では、中央制御部2は、その時点でのモータ制御情報を取得する。ステップS70で取得されるモータ制御情報とは、パンモータ35およびチルトモータ31に対する駆動制御の態様を表す情報であり、たとえば、上記したシーケンス動作における、鏡筒3をポジション間を移動させている制御中であるか、静止させている制御中であるか、といった情報である。その後、中央制御部2は、ステップS80へ処理を進める。
【0054】
ステップS80では、中央制御部2は、ステップS70で取得したモータ制御情報が鏡筒3をポジション間で移動させるもの(旋回制御)であるか否かを判断し、そうであると判断するとステップS90へ処理を進め、そうではないと判断するとステップS70へ処理を戻す。
【0055】
ステップS90では、中央制御部2は、角速度センサ11,12の検出出力(ジャイロセンサ情報)を取得して、ステップS100へ処理を進める。
【0056】
ステップS100では、中央制御部2は、ステップS90で取得した角速度センサ11および/または角速度センサ12の検出出力である角速度の値が0であるか否かを判断し、0であると判断するとステップS120へ処理を進め、0ではないと判断するとステップS110へ処理を進める。
【0057】
ステップS110では、中央制御部2は、ステップS90で取得した角速度センサ11および/または角速度センサ12の検出出力である角速度の方向が、旋回制御によって予測される方向と異なるか否かを判断し、異なると判断するとステップS120へ処理を進め、同じであると判断するとステップS30へ処理を戻す。
【0058】
ここで、方向が異なるとは、旋回制御によって予測される方向とセンサの出力による角速度の値が記憶装置2Aに登録された閾値(ステップS60における閾値と同一であっても良いし異なるものであっても良い)以上差があることを言う。
【0059】
ステップS120では、中央制御部2は、異常を報知する処理を実行して、異常検出処理を終了する。なお、異常を報知する処理とは、たとえば表示器4に異常を報知するメッセージを表示したり、監視カメラユニット1に備えられたスピーカ(図示略)を介して異常を報知する音声を出力したりすることが挙げられる。
【0060】
以上説明した異常検出処理では、オートパン動作中であれば、等速制御中に角速度センサ11および/または角速度センサ12によって検出される角速度の値が、オートパン動作で予想される角速度の値に対して閾値以上大きくなった場合または閾値以上小さくなった場合には、異常報知がなされる(ステップS60でYES判断時のステップS120における処理)。つまり、等速制御中に、鏡筒3に対して外部から力が加えられたり、鏡筒3を移動させる機構の不具合により円滑な移動が阻害されることによって、当該鏡筒3の正常な等速移動が妨害された場合、ステップS60で角速度の値の差が大きくなったとして、ステップS120で異常報知がなされる。
【0061】
以上説明した本実施の形態では、鏡筒3により被写体を撮像する撮像部が構成され、そして、動きの量である角速度の値を検出する角速度センサ11,12により、撮像部の移動態様を検出する検出部が構成される。
【0062】
ここで、監視カメラユニット1では、鏡筒3の正常な移動が妨害されたことを認識されれば良いため、ステップS50で取得されステップS60で比較される角速度の値は、角速度センサ11と角速度センサ12のいずれか一方とされても良い。
【0063】
また、以上説明した異常検出処理では、シーケンス動作中であれば、旋回制御中に、鏡筒3の旋回制御が阻止された(ステップS100でYES)、または、鏡筒3が異なる方向に旋回された(ステップS110でYES)場合など、撮像部について検出されるべき移動態様と角速度センサ11,12が出力する角速度の値に対応する移動態様(撮像部の実際の移動態様)とが異なる場合には、異常報知がなされる(ステップS120)。つまり、旋回制御中に、鏡筒3に対して外部から力が加えられたり鏡筒3の移動機構の不具合が生じたことにより、鏡筒3が旋回しなかった場合や(ステップS100でYES)、鏡筒3が本来の旋回制御に基づく旋回とは異なる態様で旋回した場合には(ステップS110でYES)、ステップS120で異常報知がなされる。
【0064】
本実施の形態では、シーケンス動作では、角速度の値が0であるか否か、または、回転方向が異なるかどうかという、オートパン動作における判断(ステップS60)よりも比較的容易な判断によって異常報知を行なうか否かが決定されている。これは、シーケンス動作における旋回制御の実行される期間が、オートパン動作における等速制御が実行される期間よりも極めて短いことが想定される、というシーケンス動作の特徴に対応するべく、より短時間で異常報知の要否を判断するためである。
【0065】
なお、ステップS100では、ステップS90で取得した角速度の値が0である場合にのみステップS120に処理が進められたが、当該角速度の値が記憶装置2Aに登録された閾値(ステップS60,S110における閾値と同一であっても良いし異なるものであっても良い)以下であればステップS120に処理が進められるように処理が変更されても良い。
【0066】
また、以上説明した異常報知処理では、オートパン動作における等速制御以外の期間やシーケンス動作における旋回制御以外の期間では、異常報知のための判断(ステップS60,ステップS100,S111)が実行されないが、本実施の形態はこれに限定されない。このような期間であっても、つまり、鏡筒3が静止しているべき期間であっても、角速度センサ11,12の検出出力である角速度の値が所定の閾値を超える場合、つまり、鏡筒3が移動している場合には、異常が報知されるようにされても良い。
【0067】
[第2の実施の形態]
(1.全体構成)
本発明の撮像装置の第2の実施の形態である監視カメラユニット1のブロック図を、図6に示す。本実施の形態の監視カメラユニット1では、第1の実施の形態において角速度センサ11,12で鏡筒3の動きの量を検出していたのに対して、鏡筒3から出力される映像信号に基づいて当該動きの量が映像信号処理回路40によって検出される。このことから、図6に示されるように、本実施の形態の監視カメラユニット1は、角速度センサ11,12を備えていない。なお、本実施の形態の監視カメラユニット1のこれ以外の構成は、図1に示した第1の実施の形態の監視カメラユニット1と同様とすることができる。
【0068】
(2.異常検出処理)
図7は、本実施の形態の監視カメラユニット1において実行される異常報知処理のフローチャートである。
【0069】
なお、本実施の形態の監視カメラユニット1は、オートモード動作として、オートパン動作のみを実行するものとする。そして、異常報知処理は、当該オートパン動作と並行して実行される。
【0070】
図7を参照して、異常報知処理では、中央制御部2は、ステップSA10で、モータ制御情報を取得して、ステップSA20へ処理を進める。ステップSA10で取得されるモータ制御情報とは、上記したオートパン動作における、鏡筒3をポジション間で等速移動させる制御中であるか、停止させる制御中であるか、といった情報である。
【0071】
ステップSA20では、中央制御部2は、映像信号処理回路40に、鏡筒3から出力される映像信号に基づく画像についての動きベクトルを算出させて、ステップSA30に処理を進める。本実施の形態における動きベクトルの作成について説明する。
【0072】
ステップSA20では、鏡筒3の鏡筒3から出力される映像信号に基づく画像について、所定時間前の画像と現時点での画像とを用いて、動きベクトルが算出される。
【0073】
具体的には、映像信号処理回路40は、たとえば、図8に示すような、画像IM内の5つの位置にある領域MD_1〜MD_5について、2つの成分(たとえば、垂直方向と水平方向)の動きベクトルを算出し、その平均を算出することにより、動きベクトルが作成される。
【0074】
また、動きベクトルの算出にあたっては、上記領域MD_1〜MD_5について算出された各ベクトルは、領域に写ると予想される内容に応じて重み付けをされても良い。ベクトルの重み付けについて説明する。
【0075】
たとえば、所定時間前の鏡筒3から出力される映像信号に基づく画像を図9(A)の画像IM01とし、現時点での鏡筒3から出力される映像信号に基づく画像を図9(B)の画像IM02とした場合、図8に示した領域MD_1,MD_2,MD_4,MD_5のそれぞれの動きベクトルは、図9(B)中のベクトルV1,V2,V4,V5と表される。なお、画像IM01中の領域EX1の内容は、画像IM02中の領域EX1と示すように画像内の位置が変化している。画像IM02内の、画像IM01中の領域EX1と同じ位置には、領域EX2で示す内容が写っている。
【0076】
図9(A),図9(B)の画像IM01,IM02では、図8の領域MD_1,MD_3,MD_4において、被写体(図9(A),図9(B)内の家や山)の中心が顕著に移動と考えられる。そして、オートパン動作では、鏡筒3は決められた経路上を往復するので、鏡筒3に捉えられる被写体の内容およびその位置は、想定できる。したがって、動きベクトルの算出では、鏡筒3から出力される映像信号に基づく画像を複数の領域に分けてベクトルの算出が行なわれる場合、被写体の中心の移動が顕著に見られる領域(図9に示した例では、領域MD_1,MD_3,MD_4)において算出されるベクトルの重み付けが高くなるように、重み付けをして算出されることが好ましい。
【0077】
図7に戻って、ステップSA30では、中央制御部2は、ステップSA10で取得したモータ制御情報が等速移動制御中であるか否かを判断し、そうであると判断するとステップSA40へ、そうではないと判断するとステップSA50へ、それぞれ処理を進める。
【0078】
図7に戻って、ステップSA40では、中央制御部2は、ステップSA20で算出された動きベクトルと基準ベクトルとの差として算出されるベクトルの大きさが第1の閾値以上であるか否かを判断し、そうであると判断するとステップSA60へ処理を進め、そうではないと判断するとステップSA10へ処理を戻す。
【0079】
ここで、基準ベクトルとは、オートパン動作における等速制御によって予想される、所定時間内の鏡筒3から出力される映像信号に基づく画像の変化によって算出されるべき動きベクトルである。基準ベクトルは、オートパン動作における、鏡筒3が撮像の対象となる場所の画像と鏡筒3の移動速度に基づいて、予め算出することもできるし、ステップSA40の実行時に中央制御部2が算出することもできる。また、第1の閾値とは、基本的に0とされるが、異常報知処理における制御にある程度の余裕を持たせるために0以外の値とすることもできる。
【0080】
ステップSA50では、中央制御部2は、ステップSA20で算出された動きベクトルの大きさが第2の閾値以上であるか否かを判断し、そうであると判断するとステップSA60へ処理を進め、そうではないと判断するとステップSA10へ処理を戻す。
【0081】
ステップSA10の処理が実行されるとき、鏡筒3は静止しているものと推定される。よって、第2の閾値は、基本的に0とされる。ただし、異常報知処理における制御にある程度の余裕を持たせるため、0以外の値とされても良い。
【0082】
ステップSA60では、中央制御部2は、異常を報知する処理を実行して、異常検出処理を終了する。なお、異常を報知する処理とは、たとえば表示器4に異常を報知するメッセージを表示したり、監視カメラユニット1に備えられたスピーカ(図示略)を介して異常を報知する音声を出力したりすることが挙げられる。
【0083】
以上説明した異常報知処理では、鏡筒3の動きの量が、鏡筒3によって撮影される画像から算出された動きベクトルに基づいて異常の有無が判断される。具体的には、動きベクトルの大きさが、その時点で鏡筒3について予測されるベクトル(たとえば、ステップSA40の基準ベクトル)の大きさと差がある(または、第1の閾値以上の差がある)場合、鏡筒3の移動態様がオートパン動作に基づく制御と異なるとして、異常が報知される。
【0084】
本実施の形態では、動きの量である動きベクトルを算出する映像信号処理回路40により、鏡筒3の動きの量を検出する検出部が構成される。なお、動きの量である動きベクトルの算出は、中央制御部2が行なっても良い。
【0085】
[その他の変形例について]
以上説明した各実施の形態では、撮像素子としてCCDが採用されているが、これに限定されず、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)など他の種類の素子が採用されても良い。
【0086】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、各実施の形態で説明された技術的思想は、単独で実施されても良いし、可能な限り組み合わされて実施されることも意図される。
【0087】
つまり、たとえば、鏡筒の動きの量として、第1の実施の形態では角速度の値が検出され、第2の実施の形態では動きベクトルが算出されたが、本発明に係る撮像装置は、双方の動きの量を検出できるように構成され、ユーザの入力等によっていずれを採用するかを選択されるように構成されても良い。本発明に係る撮像装置は、鏡筒の実際の動きの量と移動制御に基づいて予想される動きの量とを比較し、差があれば(または、差が大きければ)、異常を報知する。
【符号の説明】
【0088】
1 監視カメラユニット、2 中央制御部、2A 記憶装置、3 鏡筒、4 表示器、5 コントローラ、6 監視対象、11,12 角速度センサ、21 カメラ制御部、22 チルトモータ制御部、23 パンモータ制御部、30 アーム、31 チルトモータ、32 回転板、33 スリップ機構、34 台座、35 パンモータ、36 パンギア、40 映像信号処理回路、50 ジョイスティック、51 操作キー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像する撮像部と、
前記撮像部の移動態様を制御する移動制御部と、
前記撮像部の移動態様を検出する検出部と、
前記検出部によって検出される移動態様と、前記移動制御部による移動制御に従って前記撮像部が移動されたときに検出されるべき移動態様とが異なる場合に異常を報知する報知部とを備えた、撮像装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記撮像部の移動態様として、前記撮像部の動きの量を検出し、
前記報知部は、前記検出部が検出した動きの量と、前記移動制御部による移動制御に従って前記撮像部が移動されるべき動きの量との差が予め定められた閾値を超えた場合に、異常を報知する、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記動きの量として前記撮像部の角速度を検出する、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記移動制御部は、前記撮像部を、複数の固定状態の間を断続的に移動させ、
前記報知部は、前記移動制御部が前記撮像部を第1の固定状態から第2の固定状態に変更させるように移動させている期間中は、前記検出部が検出する角速度が特定の値よりも低い場合に、異常を報知する、請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記報知部は、前記移動制御部が前記撮像部を第1の固定状態から第2の固定状態に変更させるように移動させている期間中は、前記検出部が検出する角速度の回転方向が、前記移動制御部による制御に基づく回転方向と異なるか否かを判断し、異なると判断した場合に異常を報知する、請求項3または請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
被写体を撮像する撮像部を備えた撮像装置の制御方法であって、
前記撮像部の移動態様を制御するステップと、
前記撮像部の移動態様を検出するステップと、
前記検出された移動態様と、前記移動態様の制御に従って前記撮像部が移動されたときに検出されるべき移動態様とを比較するステップと、
前記検出された移動態様と前記検出されるべき移動態様とが異なる場合に異常を報知するステップとを備えた、撮像装置の制御方法。
【請求項7】
被写体を撮像する撮像部を備えた撮像装置に実行させる制御プログラムであって、
コンピュータに、
前記撮像部の移動態様を制御するステップと、
前記撮像部の移動態様を検出するステップと、
前記検出された移動態様と、前記移動態様の制御に従って前記撮像部が移動されたときに検出されるべき移動態様とを比較するステップと、
前記検出された移動態様と前記検出されるべき移動態様とが異なる場合に異常を報知するステップとを実行させる、制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−155461(P2011−155461A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15336(P2010−15336)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】