説明

撮像装置、プリント装置及びプリントシステム

【課題】ハイライト部及びシャドー部の再現と、主要被写体の明度再現とを両立させることができるプリントシステムを提供する。
【解決手段】主要被写体が最適露光量になる測光値EVevを算出するとともに(ステップS16)、撮影シーンの輝度中心をラチチュード中心に略一致させる測光値EVcontを算出し(ステップS24)、測光値EVcontに基づいて撮像した画像とともに、主要被写体を適正な明るさに補正するための測光値EVevを含む露光情報を記録する(ステップS38)。前記記録した画像に基づく印画時には前記露光情報を読み出し、この露光情報に基づいて主要被写体が適正な明るさになるように画像の階調補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置、プリント装置及びプリントシステムに係り、特に撮像装置で撮像した画像を、その撮像装置に適用されるプリント装置で印画する際の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被写体のシャドー部からハイライト部までの輝度情報を取得し、その後、取得した輝度情報の最大/最小輝度に基づいて最小から最大までの輝度情報の全てを所定の階調(8ビット)で記録できるように階調変換して記録するデジタルカメラが提案されている(特許文献1)。また、特許文献1には、階調変換条件等を画像データとともに記録し、再生時に階調変換条件を参照して画像を再生することにより、背景等を必要により再現したり、その再現を抑制することが記載されている。
【0003】
また、画像中に階調つぶれが起こりやすい領域が存在する場合に、その領域の情報を用いてダイナミックレンジを設定し、この設定したダイナミックレンジを用いて画像のコントラスト補正を行う画像処理装置が提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開平11−196291号公報
【特許文献2】特開2003−169231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のデジタルカメラは、シャドー部からハイライト部までを所定のビット数( 8ビット)の画像データとなるように階調変換して記録することができ、これにより略全ての被写体輝度情報を記録することができ、また、階調変換条件等を画像データとともに記録することにより、再生時に階調変換条件を参照して画像を再生することができるが、主要被写体の明度が最適になるように自動的に再生することができないという問題がある。
【0005】
また、特許文献1には、最大基準輝度と主要画像部の輝度とに基づいて画像の階調を変更(即ち、主要画像部がハイライト部側、又はシャドー部側にあるかに応じてシャドー部側、又はハイライト部側のみを部分的に階調変換)し、これにより主要画像部の再現濃度のバラツキを小さくする記載があるが、この場合にも主要被写体を基準にして露光制御していないため、主要被写体の明度再現を最適に行うことができないという問題がある。
【0006】
同様に、特許文献2にも主要被写体の明度再現に関する記載がなく、特許文献2に記載の画像処理装置は、主要被写体の明度が最適になるように自動的に再生することができないという問題がある。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ハイライト部及びシャドー部の再現と、主要被写体の明度再現とを両立させることができる撮像装置、プリント装置及びプリントシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために請求項1に係る撮像装置は、主要被写体が最適露光量になる第1の露光値を算出する第1の露光値算出手段と、撮影シーンの輝度中心をラチチュード中心に略一致させる第2の露光値を算出する第2の露光値算出手段と、前記第2の露光値に基づいて撮像した画像とともに、前記主要被写体を適正な明るさに補正するための前記第1の露光値を含む露光情報を記録する記録手段と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
即ち、前記第2の露光値に基づいて被写体を撮像することにより、撮像装置のラチチュードを有効に利用することができ、また、撮像した画像とともに露光情報(主要被写体を適正な明るさに補正するための前記第1の露光値を含む露光情報)を記録するようにしているため、この露光情報を利用して主要被写体の明度再現が最適になるように再生することができる。
【0010】
請求項2に示すように請求項1に記載の撮像装置において、前記撮像した画像の輝度レンジが所定のラチチュードを超える場合には、前記ラチチュード内に収まるように前記画像のコントラストを圧縮するコントラスト圧縮手段を更に備え、前記記録手段は、前記コントラスト圧縮手段によってコントラスト圧縮された画像とともに、前記コントラスト圧縮の程度を示すコントラスト圧縮情報を記録することを特徴としている。これにより、広ダイナミックレンジの被写体を撮像した場合でもハイライト部からシャドー部にわたって全ての画像情報を記録することができ、また、再生時にコントラスト圧縮情報を利用して元の広ダイナミックレンジの画像に伸張することができる。
【0011】
請求項3に示すように請求項2に記載の撮像装置において、前記コントラスト圧縮手段は、前記画像の輝度レンジのハイライト部及びシャドー部のみを圧縮することを特徴としている。これにより、前記コントラスト圧縮時に画像の中間調の階調情報が失われずに済み、画像の再現性が向上する。
【0012】
請求項4に示すように請求項1に記載の撮像装置において、前記撮像した画像の輝度レンジが所定のラチチュードよりも小さい場合には、前記ラチチュードを超えないように前記画像のコントラストを負に圧縮するコントラスト圧縮手段を更に備え、前記記録手段は、前記コントラスト圧縮手段によってコントラスト圧縮された画像とともに、前記コントラスト圧縮の程度を示すコントラスト圧縮情報を記録することを特徴としている。これにより、撮像装置のラチチュードを有効に利用することができる。
【0013】
請求項5に示すように請求項1乃至4のいずれかに記載の撮像装置において、前記記録手段によって記録された画像及び露光情報を読み出す読出手段と、前記読み出した画像及び露光情報に基づいて前記主要被写体が適正な明るさになるように補正する階調補正手段と、前記階調補正手段によって補正された画像を表示する表示手段とを更に備えたことを特徴としている。これにより、画像とともに記録された露光情報を利用して主要被写体の明度再現が最適になるように階調補正して画像を表示することができる。
【0014】
請求項6に係るプリントシステムは、請求項1乃至4のいずれかに記載の撮像装置と、前記記録手段に記録された画像及び露光情報を入力する入力手段と、前記入力した画像及び露光情報に基づいて前記主要被写体が適正な明るさになるように補正する階調補正手段と、前記階調補正手段によって補正された画像に基づいて印画媒体に画像を印画するプリント手段とを備えたプリント装置と、から構成されている。
【0015】
このプリントシステムを構成するプリント装置は、前記撮像装置によって記録された画像及び露光情報を入力し、入力画像から印画用の画像を生成する際に、画像と同時に入力した露光情報を利用して主要被写体の明度再現が最適になるように画像の階調を補正し、補正後の画像を基に印画媒体に画像を印画するようにしている。これにより、主要被写体の明度が最適になるように印画媒体に画像が印画される。尚、入力した画像は、ハイライト部からシャドー部にわたって全ての画像情報を含むため、ハイライト部の飛びの発生やシャドー部のつぶれの発生のない印画画像が得られる。
【0016】
請求項7に係るプリントシステムは、請求項2乃至4のいずれかに記載の撮像装置と、前記記録手段に記録された画像、露光情報及びコントラスト圧縮情報を入力する入力手段と、前記入力した画像を前記入力したコントラスト圧縮情報に基づいて伸張するコントラスト伸張手段と、前記伸張した画像及び前記露光情報に基づいて前記主要被写体が適正な明るさになるように補正する階調補正手段と、前記階調補正手段によって補正された画像に基づいて印画媒体に画像を印画するプリント手段とを備えたプリント装置と、から構成されている。
【0017】
即ち、上記プリントシステムを構成するプリント装置は、請求項6に記載のプリント装置に比べて更にコントラスト伸張手段を備え、前記入力手段によりコントラスト圧縮情報を入力した場合には、このコントラスト圧縮情報を利用して入力した画像を元の広ダイナミックレンジの画像に伸張するようにしている。
【0018】
請求項8に係るプリント装置は、請求項6又は7に記載のプリントシステムを構成するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、撮影シーンの輝度中心をラチチュード中心に略一致させる第2の露光値に基づいて被写体を撮像し、この撮像した画像とともに、主要被写体を適正な明るさに補正するための主要被写体の露光値(第1の露光値)を含む露光情報を記録するようにしたため、前記記録した画像と露光情報とに基づいてハイライト部及びシャドー部の再現と、主要被写体の明度再現とを両立させた画像再生又は印画出力ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下添付図面に従って本発明に係る撮像装置、プリント装置及びプリントシステムの好ましい実施の形態について詳説する。
【0021】
図1は本発明に係る撮像装置の内部構成の実施の形態を示すブロック図である。
【0022】
同図に示す撮像装置10は、被写体の静止画像または動画像を電子的に撮像するデジタルカメラであり、撮像部(撮像手段)として、撮影レンズ及び絞り等を含む光学系11と、撮像素子であるCCD12とを備えている。光学系11には、この光学系内に設けられた絞りを変位させるアイリス用モータを駆動するアイリスモータドライバ18と、フォーカシングレンズを変位させるオートフォーカス(AF)用モータを駆動するAFモータドライバ19とが接続されている。
【0023】
CCD12の出力側には、CDSアナログデコーダ13、ホワイトバランスアンプ14、γ補正回路15、点順次化回路16、A/Dコンバータ17が設けられ、CCD12による撮像信号の各種処理がなされてデジタルの画像信号が出力されるようになっている。また、ホワイトバランスアンプ14には、電子ボリューム(EVR)22が接続され、このホワイトバランスアンプ14の利得が制御されるようになっている。A/Dコンバータ17の出力はメモリコントローラ20を介してメインメモリ21に伝送され、撮像された被写体の画像データがメインメモリ21に記憶されるようになっている。
【0024】
また、明るさ調整手段23、コントラスト調整手段24、レリーズスイッチ25、及び電源ボタン、撮影モード選択ダイヤル、撮影/再生モード選択スイッチ、バックスイッチ、メニュー/OKスイッチ、マルチファンクションの十字キー等の操作手段26、コントラスト最適化手段27、マルチパターン測光手段28、主要被写体に対するAE(Automatic Exposure、自動露光)条件決定手段29、及び最適コントラストに対するAE条件決定手段30が設けられている。そして、装置各部の制御を行う制御手段として中央処理装置(CPU)31が設けられ、前記アイリスモータドライバ18、AFモータドライバ19、電子ボリューム22、明るさ調整手段23、コントラスト調整手段24、レリーズスイッチ25、操作手段26、コントラスト最適化手段27、マルチパターン測光手段28、主要被写体に対するAE条件決定手段29、最適コントラストに対するAE条件決定手段30、及びデータバス32に接続されている。
【0025】
前記コントラスト最適化手段27は、主要被写体の明るさを基準にしてAE制御した場合に、ハイライト及びシャドーがラチチュード内に収まるか否かを判定し、ラチチュード内に収まらない場合には、最適コントラストに対するAE条件決定手段30によりAE条件を決定させ、また、この決定されたAE条件によりAE制御した場合に、ハイライト及びシャドーがラチチュード内に収まらないときには、更にコントラスト調整手段24を介してコントラスト圧縮係数を決定させる。
【0026】
マルチパターン測光手段28は、メインメモリ21に記憶された1画面分の画像データを例えば8×8の64の領域に分割し、これらの分割領域ごとに測光値EV(Exposure Value)値を求める。主要被写体に対するAE条件決定手段29は、主要被写体が属する分割領域の測光値EVevを求める。尚、主要被写体が属する分割領域は、撮影者が液晶モニタ上で指定したり、人物の顔を認識して自動的に指定することができる。
【0027】
最適コントラストに対するAE条件決定手段30は、最適コントラストに対する測光値EVcontを求める。ここで、測光値EVcontは、前記マルチパターン測光手段28により求めた64個の分割領域ごとの測光値EVのうちの最大測光値EVmax と最小測光値EVmin との中間値をいう。
【0028】
明るさ調整手段23は、前記測光値EVcontがラチチュード中心に略一致するように露出補正値を出力する。また、コントラスト調整手段24は、ハイライトとシャドーがラチチュード端からやや内側になるようにするコントラスト圧縮係数を求める。また、標準コントラストと前記コントラスト圧縮係数とから、CONT(=標準コントラスト×コントラスト圧縮係数)を求める。
【0029】
また、データバス32には、前記CPU31、メモリコントローラ20、メインメモリ21、コントラスト最適化手段27、及びマルチパターン測光手段28とともに、圧縮伸張部33、MPEGエンコーダ&デコーダ34、YC信号作成部35、外部メモリインターフェイス38、通信インターフェイス40、LCDドライバ42、オーディオ入出力手段44が接続されている。
【0030】
圧縮伸張部33は、JPEG方式等による画像データの圧縮処理及び伸長処理を行うものである。MPEGエンコーダ&デコーダ34は、MPEG方式の動画像データへの符号化及びMPEG圧縮符号化された動画像データの復号化を行うものである。YC信号作成部35は、NTSC方式の映像信号を生成するための輝度信号Yと色差信号R−Y,B−Yとを分離生成するものである。YC信号作成部35の後段には、輝度信号Yと色差信号R−Y,B−Yの比を4:4:4から4:2:2に変換する色変換部36と、NTSC方式の映像信号を生成出力するNTSCエンコーダ37とが設けられている。
【0031】
尚、上記の圧縮伸張部33、MPEGエンコーダ&デコーダ34、YC信号作成部35、色変換部36、NTSCエンコーダ37は、専用の信号処理回路で構成してもよいし、CPU31においてソフトウェアの処理により行うものやDSP等の信号処理回路において機能を持たせたものなどで構成することも可能である。
【0032】
LCDドライバ42には液晶モニタ(LCD)43が接続され、撮影しようとしている被写体のスルー動画や撮影後の記録画像、及び各種状態表示や設定画面などがLCD43の画面上に表示されるようになっている。前記オーディオ入出力手段44にはスピーカ45、及びマイク46が接続され、撮影時などにおける各種動作音が再生出力されるととにも、動画撮影時の音声信号が入力される。
【0033】
このように構成された撮像装置10において、被写体の像は光学系11によってCCD12の撮像面上に結像されて光電変換される。CCD12から出力される撮像信号は、CDSアナログデコーダ13で相関2重サンプリングを行ってノイズ成分をキャンセルした後、ホワイトバランスアンプ14でカラー画像信号のホワイトレベルが調整される。そして、γ補正回路15でγ補正が行われ、点順次化回路16を経てA/Dコンバータ17でA/D変換されてデジタルの画像データとして出力される。このデジタル画像データは、メモリコントローラ20を介してメインメモリ21に格納される。
【0034】
前記デジタル画像データは、撮影中の被写体画像としてLCD43の画面上に表示される。撮影者はこの被写体画像を見ながら、レリーズスイッチ25を押圧してオンすることによって、被写体の静止画像または動画像を撮影する。撮影後の画像データは、圧縮伸張部33で圧縮処理されたり、MPEGエンコーダ&デコーダ34でMPEG圧縮符号化されて、外部メモリインターフェイス38を介して外部の記録メディア39、あるいは通信インターフェイス40を介してパソコン等の外部機器41に送られ、撮影画像が記録される。また、撮影した画像データは、YC信号作成部35、色変換部36、NTSCエンコーダ37を経てNTSC映像信号に変換されてビデオ出力される。
【0035】
次に、上記構成の撮像装置10による自動露光制御を含む撮影動作について、図2のフローチャートを参照しながら以下に詳しく説明する。
【0036】
図2において、まず、CPU31は、コントラスト圧縮係数=1.0に設定し(ステップS10)、その後、スイッチS1が押されたか否かを判別する(ステップS12)。尚、シャッターボタンは、半押し時にONしてフォーカスロック、測光等の撮影準備を行わせるスイッチS1と、全押し時にONして画像の取り込みを行わせるスイッチS2とを有しており、CPU31は、スイッチS1が押されると、以下の撮影準備を行う。
【0037】
即ち、CPU31は、コントラストAFによるフォーカシングを行う(ステップS14)。コントラストAFによるフォーカシング動作は、まず、AFモータドライバ19を介してフォーカスレンズを至近から無限遠に対応する範囲にわたって移動させ、この間の画像データを取り込んで各レンズ位置における画像データの高周波成分の積算値(AF評価値)を算出する。そして、AF評価値が最大となるレンズ位置を算出し、そのレンズ位置にフォーカスレンズを移動させる。
【0038】
フォーカシングが終了すると、マルチパターン測光手段28は、1画面分の画像データに基づいて64分割領域ごとに測光値EVを求め、主要被写体に対するAE条件決定手段29は、主要被写体が属する分割領域の測光値EVを求め、この測光値EV=EVevとして、EVevを内部メモリに一時記憶する(ステップS16、S18)。また、EVcont=EVevとして、EVcontを内部メモリに一時記憶する(ステップS20)。
【0039】
次に、コントラスト最適化手段27により画像の輝度レンジのハイライトとシャドーがラチチュード内に収まるか否かを判別する(ステップS22)。輝度レンジのハイライトとシャドーがラチチュード内に収まる場合には、ステップS32に飛び、コントラスト圧縮係数を内部メモリに記憶する。この場合に記憶されるコントラスト圧縮係数は、ステップS10で初期設定された1.0である。
【0040】
一方、輝度レンジのハイライトとシャドーがラチチュード内に収まらない場合には、最適コントラストに対するAE条件決定手段30は、ハイライトとシャドーがラチチュード中点から等距離になるようにする測光値EVcont、即ち、前記マルチパターン測光手段28により求めた64個の分割領域ごとの測光値EVのうちの最大測光値EVmax と最小測光値EVmin との中間の測光値EVcont(=(EVmax +EVmin )/2))を求める(ステップS24)。このようにして求めた最適コントラストに対する測光値EVcontにより、ステップS20で記憶した測光値EVcontを更新する(ステップS26)。
【0041】
例えば、黒バックで主要被写体を撮影する場合、図3(A)に示すように主要被写体の明るさ(1) (測光値EVev)は、ハイライト側にある。従って、主要被写体の測光値EVevに基づいてAE制御すると、図3(B)に示すようにシャドーがラチチュード内に収まらず黒つぶれが発生する。
【0042】
同様に、逆光で主要被写体を撮影する場合、図4(A)に示すように主要被写体の明るさ(1) (測光値EVev)は、シャドー側にある。従って、主要被写体の測光値EVevに基づいてAE制御すると、図4(B)に示すようにハイライトがラチチュード内に収まらず白飛びが発生する。
【0043】
従って、ハイライトとシャドーがラチチュードに収まらない場合には、ステップS24で求めた測光値EVcontに基づいてAE制御すべく測光値EVcontを記憶する。尚、測光値EVcontに基づいてAE制御すると、図3に示すシーンの場合には、主要被写体はΔEV(=EVev−EVcont)だけ明るくなり( 図3(C))、図4に示すシーンの場合には、主要被写体はΔEV(=EVcont−EVev)だけ暗くなる( 図4(C))。
【0044】
図2に戻って、測光値EVcontに基づいてAE制御する場合に、画像の輝度レンジのハイライトとシャドーがラチチュード内に収まるか否かを判別する(ステップS28)。輝度レンジのハイライトとシャドーがラチチュード内に収まる場合には、ステップS32に飛ぶ。
【0045】
一方、輝度レンジのハイライトとシャドーがラチチュード内に収まらない場合には、コントラスト調整手段24は、ハイライトとシャドーがラチチュード端からやや内側になるようにするコントラスト圧縮係数を求める(ステップS30)。
【0046】
図5は逆光で高コントラストの場合に関して示しており、同図(A)はハイライトとシャドーがラチチュード内に収まらない様子を示している。また、同図(B)はラチチュード内に収まるようにコントラスト圧縮した場合に関して示している。
【0047】
前記ステップS30では、標準コントラストと前記コントラスト圧縮係数とから、CONT(=標準コントラスト×コントラスト圧縮係数)を求めている。このようにして求めたコントラスト圧縮係数は、内部メモリに記憶される(ステップS32)。
【0048】
その後、CPU31は、スイッチS2が押されたか否かを判別し(ステップS34)、スイッチS2が押されると、EVev又はEVcontと、ステップS30で求めたCONTとに基づいて撮影EV値を決定し、この撮影EV値から求められるシャッタースピードと絞り値によりCCD12での電荷蓄積時間(電子シャッター)を制御するとともに、光学系11内に設けられた絞りを制御して撮像(露光)する(ステップS36)。
【0049】
そして、EVev、EVcont、撮影で採用したEV値、及びコントラスト圧縮係数を埋め込んだ撮影画像データを作成し、外部メモリ39に保存する(ステップS38)。尚、EVev、EVcont、撮影で採用したEV値、及びコントラスト圧縮係数などの露光情報は、画像ファイルのヘッダーなどに書き込むことができる。
【0050】
また、図6に示すようにハイライトとシャドーがラチチュード内に収まらない場合(同図(A))に、コントラスト圧縮を行って8ビット(256)のラチチュード内に収める際に、シャドー部を0〜30にコントラスト圧縮し、ハイライト部を225〜255にコントラスト圧縮し、中間調はコントラスト圧縮しないようにしてもよい(図6(B),(C)参照)。
【0051】
図7は本発明に係るプリント装置の内部構成の実施の形態を示すブロック図である。
【0052】
同図に示すプリント装置50は、店頭などに設置され、一般ユーザによって利用されるもので、特に上記撮像装置10により撮像された画像を印画するのに適したものである。
【0053】
プリント装置50内のCPU51は、バス52を介してメモリーコントローラ53、記録メディア・リーダ/ライタ55、プリント手段56、コントラスト伸張手段57、コントラスト圧縮手段58、明るさレベルシフト手段59、RAW現像エンジン64、及びRGB/YMC(K)変換手段65と接続されている。
【0054】
また、CPU51には、タッチパネル60と、ディスプレイ63を駆動するためのディスプレイドライバ61と、課金手段62とが接続されている。
【0055】
各種のデジタルカメラの記録メディアに記録された画像データは、記録メディア・リーダ/ライタ55によって読み取られ、メモリーコントローラ53を介して作業用メモリ54に一時記憶される。
【0056】
コントラスト伸張手段57、及びコントラスト圧縮手段58は、画像データとともに読み出されたコントラスト圧縮係数の逆数を画像データに掛けてコントラストを伸張、又は圧縮する。明るさレベルシフト手段59は、主要被写体の明るさが最適値になるように画像データのレベルをシフトするもので、主要被写体の測光値EVevから撮影で撮影したEV値を減算した値だけシフトする。尚、画像データのレベルを一律にシフトする場合に限らず、シャドー部やハイライト部の画像データは、シャドー端、ハイライト端になるにしたがってシフト量を徐々に小さくするようにしてもよい。
【0057】
タッチパネル60は、ディスプレイ63上に配置され、ディスプレイ63に表示された画像から印画する画像をタッチして選択したり、印画枚数の指定などを行うための入力手段として機能する。課金手段62は、前記印画枚数等に応じて、例えばコインマシンによる現金の徴収、及び釣り銭処理を行う。
【0058】
RAW現像エンジン64は、記録メディアから読み取った画像データが、RAWデータ(CCD等の撮像素子から出力された未処理の画像データ)の場合に、そのRAWデータに対してリニアマトリクス処理、ホワイトバランス処理、同時化処理等を行ってディスプレイ63等に出力できるデータを生成する。
【0059】
RGB/YMC(K)変換手段65は、各種の画像処理が施されたR、G、BデータをY、M、C、(K)(イエロー、マゼンタ、シアン、(ブラック))データに変換し、この変換したY、M、C、(K)データをプリント手段56に出力する。
【0060】
プリント手段56は、例えば、印画方式としてTA(サーモオートクローム)方式を採用したもので、C、M、Yの各発色層を有するカラー印画紙(以下、「TAペーパー」という)自体を熱で発色させ、所定の波長の光の照射で定着するものであり、TAペーパーを搬送する手段、サーマルヘッド、定着ランプ等を有している。カラー画像をTAペーパーに印画する場合には、まずTAペーパーを搬送するとともにYデータによってサーマルヘッドを制御し、TAペーパーのイエロー層を発色させ、続いて定着ランプによってイエローの発色を定着させる。TAペーパーのマゼンタ層及びシアン層の発色もMデータ、Cデータに基づいて同様に行われ、これによりTAペーパーにカラー画像を印画する。尚、この実施の形態のプリント手段56は、TAプリンタであるが、これに限らず、本発明は他の感熱プリンタやインクジェットプリンタ等の他の形式のプリンタにも適用できる。
【0061】
次に、上記構成のプリント装置50による印画動作について、図8のフローチャートを参照しながら以下に詳しく説明する。
【0062】
図8において、まず、記録メディア・リーダ/ライタ55に装填された記録メディアから画像データを読み取り、メモリーコントローラ53を介して作業用メモリ54に一時記憶する(ステップS50)。CPU51は、前記読み込んだ画像データが”コントラスト最適化”プリントデータか否かを判別し(ステップS52)、通常のプリントデータの場合にはステップS54に進み、”コントラスト最適化”プリントデータの場合にはステップS60に飛ぶ。尚、図1で説明した撮像装置10によって記録された画像データの場合(画像ファイルのヘッダーにEVev、EVcont、撮影で採用したEV値、及びコントラスト圧縮係数が埋め込まれている場合)には、”コントラスト最適化”プリントデータとして判別する。
【0063】
ステップS54では、プリントデータのコントラストが一定値未満か否かを判別し、コントラスト<一定値の場合には、ステップS56に進み、コントラスト≧一定値の場合には、ステップS58に飛ぶ。ステップS56では、コントラスト伸張手段57によりコントラストが一定値になるように画像データのコントラストが伸張処理される。
【0064】
ステップS58では、RGB/YMC(K)変換手段65によりR、G、Bデータが印画用のY、M、C、(K)データに変換され、プリント手段56に出力される。プリント手段56は、入力するY、M、C、(K)データに基づいて印画紙に画像を印画する(ステップS76)。
【0065】
一方、前記読み込んだ画像データが”コントラスト最適化”プリントデータと判別されると、その画像データに対応して記録されたEVev、EVcont、撮影で採用したEV値、及びコントラスト圧縮係数を読み込む(ステップS60)。
【0066】
コントラスト伸張手段57は、前記読み込んだコントラスト圧縮係数の逆数を画像データに掛けてコントラストを伸張する(ステップS62)。
【0067】
続いて、明るさレベルシフト手段59により、主要被写体の測光値EVevから撮影で撮影したEV値を減算した値だけ画像データの明度を平行移動させ、主要被写体の明るさが最適値になるように補正する(ステップS64)。
【0068】
その後、補正後の画像データのハイライト側がダイナミックレンジをオーバーしているか否かを判別し(ステップS66)、オーバーしている場合には主要被写体よりも明るい画像データをダイナミックレンジに収まるように圧縮する(ステップS68)。同様に、補正後の画像データのシャドー側がダイナミックレンジをオーバーしているか否かを判別し(ステップS70)、オーバーしている場合には主要被写体よりも暗い画像データをダイナミックレンジに収まるように圧縮する(ステップS72)。
【0069】
このようにして階調補正したR、G、Bデータは、RGB/YMC(K)変換手段65により印画用のY、M、C、(K)データに変換され(ステップS74)、プリント手段56に出力される。プリント手段56は、入力するY、M、C、(K)データに基づいて印画紙に画像を印画する(ステップS76)。
【0070】
図9は図3(C)に示す画像データを印画時に階調変換する場合の階調変換特性を示すグラフである。
【0071】
図3(C)に示す画像データは、前述したように主要被写体がΔEV(=EVev−EVcont)だけ明るくなるが、図9に示すように前記ΔEVだけ暗くなるように階調補正してプリント出力することにより、主要被写体の明るさが最適になるように補正することができる。尚、撮像装置10のLCD43に画像データを出力する場合にも同様な階調補正を行う。
【0072】
図10は図4(C)に示す画像データを印画時に階調変換する場合の階調変換特性を示すグラフである。
【0073】
図4(C)に示す画像データは、前述したように主要被写体がΔEV(=EVev−EVcont)だけ暗くなるが、図10に示すように前記ΔEVだけ明るくなるように階調補正してプリント出力することにより、主要被写体の明るさが最適になるように補正することができる。
【0074】
図11(A)はシャドー部及びハイライト部がコントラスト圧縮された画像データを示している(図6(C)参照)。
【0075】
シャドー部及びハイライト部がコントラスト圧縮された画像データは、印画時にコントラスト圧縮係数(この場合には、シャドー部及びハイライト部に対してそれぞれ設定されたコントラスト圧縮係数)に基づいてシャドー部及びハイライト部がコントラスト伸張される。図11(B)はコントラスト伸張された画像データを示す。
【0076】
コントラスト伸張された画像データは、続いて図11(D)に示すように主要被写体の明るさが最適になるように階調補正される。図11(D)では主要被写体が明るくなるように画像データをシフトさせている。尚、シャドー側及びハイライト側の画像データほど、シフト量を少なくしている(図10参照)。
【0077】
そして、ダイナミックレンジをオーバーしているハイライト側の画像データ(この例では、225以上の画像データ)は、225から255に収まるようにコントラスト圧縮され、また、ダイナミックレンジをオーバーしているシャドー側の画像データ(この例では、30以下の画像データ)は、0から30に収まるようにコントラスト圧縮される(図11(E)参照)。
【0078】
図12はコントラスト圧縮された画像データから階調補正された印画時に画像データを作成する他の実施の形態を示すグラフである。
【0079】
図12において、一点鎖線で示したコントラスト圧縮された画像データの階調は、コントラスト圧縮係数に基づいてコントラスト伸張されて点線で示すダイナミックレンジの階調となる。例えば、コントラスト圧縮された画像データが8ビットの階調を有する場合、コントラスト圧縮係数を使用して10ビットの階調を有する画像データに伸張される。
【0080】
続いて、画像データとともに記憶されたEVev、EVcontにより、主要被写体の明るさがΔEV(=EVev−EVcont)だけシフトするように階調補正する。図12中の実線は、階調補正後の入出力特性を示している。
【0081】
この実線で示した画像データをプリント手段に出力してもよいし、前述したようにシャドー部及びハイライト部をコントラスト圧縮して8ビットのデータに補正してからプリント手段に出力してもよい。
【0082】
尚、この実施の形態では、画像データとともに、主要被写体の測光値EVev、マルチパターン測光した各分割領域ごとの測光値EVのうちの最大測光値EVmax と最小測光値EVmin との中間の測光値EVcontを記憶するようにしたが、これに限らず、例えば、測光値EVcontの代わりに最大測光値EVmax 及び最小測光値EVmin を記憶するようにしてもよく、要は主要被写体の明るさを最適な明るさに補正するために必要な露光情報を記憶していればよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は本発明に係る撮像装置の内部構成の実施の形態を示すブロック図である。
【図2】図2は上記撮像装置による自動露光制御を含む撮影動作を説明するために用いたフローチャートである。
【図3】図3は黒バックで主要被写体を撮影する場合のAE制御を示す図である。
【図4】図4は逆光で主要被写体を撮影する場合のAE制御を示す図である。
【図5】図5はコントラスト圧縮を説明するために用いた図である。
【図6】図6はシャドー部とハイライト部とをコントラスト圧縮する場合を説明するために用いた図である。
【図7】図7は本発明に係るプリント装置の内部構成の実施の形態を示すブロック図である。
【図8】図8は上記プリント装置による印画動作を説明するために用いたフローチャートである。
【図9】図9は図3(C)に示す画像データを印画時に階調変換する場合の階調変換特性を示すグラフである。
【図10】図10は図4(C)に示す画像データを印画時に階調変換する場合の階調変換特性を示すグラフである。
【図11】図11はシャドー部及びハイライト部がコントラスト圧縮された画像データから印画用の画像データを作成する場合の階調変換の様子を示す図である。
【図12】図12はコントラスト圧縮された画像データから階調補正された印画時に画像データを作成する他の実施の形態を示すグラフである。
【符号の説明】
【0084】
10…撮像装置、11…光学系、12…CCD、23…明るさ調整手段、24…コントラスト調整手段、25…レリーズスイッチ、27…コントラスト最適化手段、28…マルチパターン測光手段、29…主要被写体に対するAE条件決定手段、30…最適コントラストに対するAE条件決定手段、31、51…中央処理装置(CPU)、39…記録メディア、43…液晶モニタ(LCD)、55…記録メディア・リーダ/ ライタ、56…プリント手段、57…コントラスト伸張手段、58…コントラスト圧縮手段、59…明るさレベルシフト手段、65…RGB/YMC(K)変換手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要被写体が最適露光量になる第1の露光値を算出する第1の露光値算出手段と、
撮影シーンの輝度中心をラチチュード中心に略一致させる第2の露光値を算出する第2の露光値算出手段と、
前記第2の露光値に基づいて撮像した画像とともに、前記主要被写体を適正な明るさに補正するための前記第1の露光値を含む露光情報を記録する記録手段と、
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮像した画像の輝度レンジが所定のラチチュードを超える場合には、前記ラチチュード内に収まるように前記画像のコントラストを圧縮するコントラスト圧縮手段を更に備え、前記記録手段は、前記コントラスト圧縮手段によってコントラスト圧縮された画像とともに、前記コントラスト圧縮の程度を示すコントラスト圧縮情報を記録することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記コントラスト圧縮手段は、前記画像の輝度レンジのハイライト部及びシャドー部のみを圧縮することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮像した画像の輝度レンジが所定のラチチュードよりも小さい場合には、前記ラチチュードを超えないように前記画像のコントラストを負に圧縮するコントラスト圧縮手段を更に備え、前記記録手段は、前記コントラスト圧縮手段によってコントラスト圧縮された画像とともに、前記コントラスト圧縮の程度を示すコントラスト圧縮情報を記録することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記記録手段によって記録された画像及び露光情報を読み出す読出手段と、前記読み出した画像及び露光情報に基づいて前記主要被写体が適正な明るさになるように補正する階調補正手段と、前記階調補正手段によって補正された画像を表示する表示手段とを更に備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の撮像装置と、
前記記録手段に記録された画像及び露光情報を入力する入力手段と、前記入力した画像及び露光情報に基づいて前記主要被写体が適正な明るさになるように補正する階調補正手段と、前記階調補正手段によって補正された画像に基づいて印画媒体に画像を印画するプリント手段とを備えたプリント装置と、
から構成されてなるプリントシステム。
【請求項7】
請求項2乃至4のいずれかに記載の撮像装置と、
前記記録手段に記録された画像、露光情報及びコントラスト圧縮情報を入力する入力手段と、前記入力した画像を前記入力したコントラスト圧縮情報に基づいて伸張するコントラスト伸張手段と、前記伸張した画像及び前記露光情報に基づいて前記主要被写体が適正な明るさになるように補正する階調補正手段と、前記階調補正手段によって補正された画像に基づいて印画媒体に画像を印画するプリント手段とを備えたプリント装置と、
から構成されてなるプリントシステム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のプリントシステムを構成するプリント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−140588(P2006−140588A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−326365(P2004−326365)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】