説明

撮像装置および撮像方法

【課題】フレームアウトによって生じるデータ欠落を防止する。
【解決手段】光学系10は、位相変調素子10aが挿入される。撮像素子2は、撮影表示領域の第1の撮像領域2aと、非撮影表示領域の第2の撮像領域2bとを有する。第2の撮像領域2bは、位相変調素子10aによって結像位置がシフトした、第1の撮像領域2aからはみ出した被写体像の部分を撮像する。画像処理部3は、第1の撮像領域2aおよび第2の撮像領域2bで撮像された被写体像の画像処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像撮影を行う撮像装置および撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
監視カメラ、計測、医用等の分野では、被写界の隅々までピントが合ってほしいという要望が多い。被写界深度を拡大(EDOF:Extension of Depth of Field)するには、F値(焦点距離/レンズ口径)を大きくすればよいので、簡単にはレンズ口径を小さくすればよい。しかし、レンズ口径を小さくすると、空間分解能が低下し、レンズを通過する光量が減少して像が暗くなってしまう。
【0003】
一方、近年になって、WFC(Wavefront Coding:波面のコード化)と呼ばれる技術が注目されている。WFCの具体例として、透過光の位相を変調させる位相変調素子と、デジタル化された画像データに対する画像処理技術の組み合わせが挙げられる。WFCは、空間分解能や透過光量を犠牲にせずに被写界深度を拡大する技術であり、レンズ口径を絞ることなく、被写界深度を拡大可能である。また、色収差などの影響も受けにくい結像光学系を実現でき、さらにいわゆる光学ズームレンズ機構が不要にできるので、レンズ枚数を低減し、機構や組み立て調整も簡便化することができる。
【0004】
図12はWFCの概要を説明するための図である。光学系10にはレンズ11〜13が含まれ、レンズ12とレンズ13との間にWFCが適用された位相変調素子10aが挿入されている。
【0005】
位相変調素子10aを挿入することで、レンズ11〜13のみを備えていた元の光学系の結像特性が変化し、位相変調素子10aを含む光学系10の状態で結像したアナログ画像(中間画像)が生成する。
【0006】
通常の光学系は、収差が十分に補正されるように光学設計されているので、余分な位相変調素子を挿入すると結像性能は低下し、中間画像は劣化画像となる。このとき、劣化の度合いが焦点はずれ量によって変化しないような位相変調素子を選ぶことができれば、光軸に沿って同じ劣化画像が並ぶ中間画像が得られる。
【0007】
位相変調素子10aは、劣化の度合いが焦点はずれ量によって変化の少ない位相分布を持っており、位相分布が以下の式(1)で表される3次位相変調素子である。αは定数、x、yは光軸方向の位置座標である。なお、3次の係数を持つ場合がEDOFの効果を高めることが知られている。
【0008】
φ(x,y)=α(x3+y3)・・・(1)
位相変調素子10aによって劣化した中間画像を後段の撮像素子20で撮像して、ディジタル画像化する。画像処理部30は、デコンボリューションフィルタ(逆フィルタ)によるディジタル画像処理を施して、劣化中間画像から劣化成分を除去して、高品質な最終画像を生成する。
【0009】
WFCでは、中間画像の劣化の度合いが焦点はずれ量によって変化が少なく、劣化度合いが既知となる。このため、逆フィルタ処理を簡易に行うことができ、焦点はずれ量によらず回折限界まで復元された鮮明な画像を得ることができる。
【0010】
従来技術として、WFCにより被写界深度を拡大して画像撮影を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1および非特許文献1)。また、画像復元用のフィルタの重心がずれている場合でも復元画像を生成する技術が提案されている(例えば、特許文献2)。さらに、逆フィルタのインパルス応答によるデータ補正を行って、画質劣化を抑制する技術が提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−235794号公報
【特許文献2】特開2007−267279号公報
【特許文献3】特開2004−24659号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】E. R. Dowski and W.T. Cathey, "Extended Depth of Field Through Wavefront Coding", Applied Optics, vol. 34, no 11, pp. 1859-1866, April, 1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
画像ボケのような画像劣化は、PSF(Point Spread Function:点像分布関数)で表現されることが多い。PSFは、光学系の点光源に対する応答を表すもので、理想的な点像が光学系を通過した場合に、点像がどの程度広がるかを表す関数である。
【0014】
例えば、光学系を通じて試料の1点をスクリーン上に映した場合、レンズの回折によって元の点と同じ大きさにはならず、ボケて広がったスポットが映し出される。このスポットがPSFによって生成された像であり、このとき映し出されたボケ画像は、元の画像情報にPSFを乗算(コンボリューション)した像となって現れる。
【0015】
また、PSFにしたがって広がった像を元の像に戻すためには、得られた像に対して逆操作、すなわちPSFによる割り算(PSFの逆行列演算)を行えばよい。
具体的には、逆フィルタリング(デコンボリューションフィルタリング)として、PSFをフーリエ変換した結像光学系の空間周波数伝達特性を表すOTF(Optical Transfer Function:光学伝達関数)で割り算することになる。
【0016】
ただし、OTFが非常に小さな空間周波数であったりする場合等は、ノイズが増幅されることになるので、適切な拘束条件または逆関数を選択して逆フィルタ処理を行うことになる。
【0017】
一方、位相変調素子を通過した後の、PSFで形状が広がった像(以下、単にPSFとも呼ぶ)の位置は、撮像面の中心から周辺側へシフトして結像されるといった現象が生じる。すなわち、位相変調素子を含まない通常の光学系を通過して映し出される、PSFの撮像面上の位置と、WFCの特性を持つ位相変調素子を含む光学系を通過して映し出される、PSFの撮像面上の位置とには、位置ずれが生じるということである。
【0018】
したがって、位相変調素子を含む光学系で被写体を撮影した場合、その被写体の像がフレーム(有効撮像領域)の端に位置しているようなときには、フレームアウトしてしまい、画像データが消失するといった問題があった。
【0019】
図13、図14はフレームアウト現象を説明するための図である。図13は、フレーム20aの左上端に、ある被写体の被写体像6aが位置し、右下端には、ある被写体の被写体像6bが位置している状態を示している。なお、図中の点線枠は、位相変調素子を含む光学系で撮影した場合における、被写体像6a、6bがシフトする領域を示すものとする。
【0020】
図14は、位相変調素子10aを含む光学系10で撮影した場合の被写体像6a、6bの位置を示している。被写体像6a、6bは、シフト領域へそれぞれシフトする(例えば、矢印方向にシフトしたとする)。
【0021】
この場合、被写体像6aは、フレーム20a内にあるので撮像されて、被写体像6aのデータは取得できる。しかし、被写体像6bの一部は、フレーム20a外へ出てしまうことになるので、被写体像6bのデータが欠落してしまう。
【0022】
すなわち、シフトした先にフレーム20aの撮像素子が存在しないので、その分のデータが消失してしまうということである。このようなデータが欠落した画像データを用いて画像処理して表示すれば、画像劣化が顕著になって現れることになる。
【0023】
上記のような問題に対して、シャッターを切る直前にフレーム20aの撮像素子をシフトさせるといった既存の手ぶれ補正機能で対策することも考えられるが、手ぶれ補正機能によってもデータが欠落することを完全に防止することは不可能である。
【0024】
図15は手ぶれ補正を行った際にもデータ欠落が生じる状態を示す図である。撮影の瞬間に手ぶれ補正機能によって、被写体像6a、6bがシフトする方向へ、フレーム20aの撮像素子自体がシフトする。
【0025】
この場合、被写体像6bは、手ぶれ補正によってシフトした後のフレーム20a−1内に収まるので、被写体像6bのデータは残るが、今度はファインダでは見えていた被写体像6aがフレーム20a−1外へ出てしまい、被写体像6aのデータ欠落が生じてしまうことになる。このように、手ぶれ補正機能によっても、データ欠落を防止することはできない。
【0026】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、フレームアウトによって生じるデータ欠落を防止して高品質な撮影を行う撮像装置を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、フレームアウトによって生じるデータ欠落を防止して高品質な撮影を行う撮像方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記課題を解決するために、撮像装置が提供される。この撮像装置は、位相変調素子を含む光学系と、光学系を通過した被写体像を撮像する撮像素子と、被写体像を画像処理する画像処理部とを備える。
【0028】
ここで、撮像素子は、撮影表示領域の第1の撮像領域と、非撮影表示領域の第2の撮像領域とを有し、画像処理部は、第1の撮像領域および第2の撮像領域で撮像された被写体像の画像処理を行う。
【発明の効果】
【0029】
データ欠落を防止して画像劣化を抑制し、高品質な撮影が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】撮像装置の構成例を示す図である。
【図2】位相分布関数を示す図である。
【図3】位相変調素子を含まない通常の光学系による光路を示す図である。
【図4】位相変調素子を含む光学系による光路を示す図である。
【図5】画角とY軸方向のシフト量との関係を示す図である。
【図6】画角とY軸方向のシフト量との関係を示す図である。
【図7】撮像領域を示す図である。
【図8】撮像領域を示す図である。
【図9】撮像装置の構成例を示す図である。
【図10】トリミング制御を説明するための図である。
【図11】撮像装置の動作を示すフローチャートである。
【図12】WFCの概要を説明するための図である。
【図13】フレームアウト現象を説明するための図である。
【図14】フレームアウト現象を説明するための図である。
【図15】手ぶれ補正を行った際にもデータ欠落が生じる状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は撮像装置の構成例を示す図である。撮像装置1は、光学系10、撮像素子2および画像処理部3を備える。
光学系10は、図示しない複数レンズを備えて被写体像を形成する。また、レンズの間には、位相変調素子10aが挿入される。位相変調素子10aは、焦点距離に応じて光学的伝達関数の変化を少なくする素子である。
【0032】
撮像素子2は、CCD(Charged Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどを使用でき、光学系10を通過した被写体像を撮像し、アナログ画像をディジタル画像化する。画像処理部3は、被写体像を画像処理する。
【0033】
ここで、撮像素子2は、撮影表示される第1の撮像領域(以下、有効撮像領域2aと呼ぶ)と、撮影表示されず、位相変調素子10aを通過することで結像位置がシフトして、有効撮像領域2aからはみ出した被写体像の部分を撮像する第2の撮像領域(以下、補正用撮像領域2bと呼ぶ)とを有する。画像処理部3は、有効撮像領域2aおよび補正用撮像領域2bで撮像された被写体像の画像処理を行う。
【0034】
次に撮像装置1の動作を説明する前に、位相変調素子10aを通過することによってPSFがシフトする理由と、画角とシフト量との関係について説明する。位相変調素子10aの通過後にPSFがシフトすることは、位相変調素子10aの形状に起因している。
【0035】
図2は位相分布関数を示す図である。上述の位相分布関数の式(1)は、位相変調素子10aの形状の厚さと考えることができるので、厚さをZとすれば、以下の式(1a)となる。したがって、図2は位相変調素子10aの表面形状を模式した図と見ることもできる。
【0036】
Z=α(X3+Y3)・・・(1a)
位相変調素子10aは、式(1a)のようにX軸およびY軸に対して形状変化を持たせた厚みを有することで入射光を位相変調させて出射する素子である。このため、素子の厚みの大きい箇所を通過する光路長と、厚みが小さい箇所を通過する光路長とに差が生じることになり、X軸およびY軸それぞれで結像位置がずれることによって、上述した位置ずれという現象が生じることになる。
【0037】
次に位置ずれがどの程度生じるかについて具体例で説明する。図3は位相変調素子10aを含まない通常の光学系による光路を示す図である。通常の光学系10−1は、レンズ11〜13を含み、これらレンズを通過した光が撮像素子2に結像される。光学系10−1による撮影条件として、焦点距離を6mm、F値=3.5、最大画角(半値)=26.5度とする。
【0038】
なお、F値は、レンズの焦点距離を有効口径で割った値であり、レンズの明るさを示す指標となる。また、画角とは、撮像素子2に映し出される範囲のことである。焦点距離が小さいほど広い画角を映し、焦点距離が大きいほど狭い画角を映すことになる。したがって、焦点距離を変えれば、映したい範囲を選択できる。
【0039】
図4は位相変調素子10aを含む光学系10による光路を示す図である。光学系10は、レンズ11〜13および位相変調素子10aを含む。レンズ12とレンズ13との間に位相変調素子10aが挿入され、図3と同じ撮影条件において、光学系10を通過した光が撮像素子2に結像される。
【0040】
図3と図4を比較すると、位相変調素子10aを含む光学系10の場合、結像位置がY軸上でシフトしていることがわかる。なお、図4ではY軸のみのシフトを示しているが、X軸に対しても同様に結像位置がシフトすることになる。
【0041】
図5、図6は画角とY軸方向のシフト量との関係を示す図である。横軸が画角(degree)、縦軸がシフト量(mm)である。また、実線が通常の光学系10−1のシフト量を示し、点線が位相変調素子10aを含む光学系10のシフト量を示している。なお、図6は図5の円内の状態を拡大して図示したものである。
【0042】
画角26.5deg.では90μmの差が生じている。このように、画角が大きくなるほど、Y軸方向のシフト量は大きくなっている。すなわち、位置ずれ現象は、画角が大きくなるほど位置ずれが大きくなって顕著に現れることがわかる。
【0043】
次に撮像装置1の撮像領域および動作について以降説明する。図7は撮像領域を示す図である。撮像素子2には、有効撮像領域2aに対して、さらに補正用撮像領域2bが設けられている。有効撮像領域2aは、被写体の撮影に使われ、ユーザに対してファインダ表示される通常の撮像領域である。
【0044】
補正用撮像領域2bは、被写体の実際の撮影には使われず、ファインダ表示はされずに、有効撮像領域2aからはみ出した被写体像を撮像して、画像再生補正の計算に使用するための領域である。
【0045】
このため、被写体像の縦横方向のシフト量に対応した面積が設けられる。このシフト量、すなわち面積は、位相変調素子10aが持つ関数(上述の式(1a))によって決定することができ、この関数から必要量を算出することが可能である。
【0046】
ここで、位相変調素子10aを含む光学系10で被写体を撮影した場合、被写体像5a、5bがそれぞれ矢印方向にシフトしたとする。この場合、被写体像5aは、シフトした先でも有効撮像領域2a内にあって撮像されるために、画像処理部3では、被写体像5aのデータを取得することが可能である。
【0047】
また、被写体像5bについては、有効撮像領域2a外へはみ出してしまうことになるが、被写体像5bが撮像されるように補正用撮像領域2bが設けられているので、補正用撮像領域2b上に被写体像5bが存在することになる。
【0048】
したがって、被写体像5bのデータが欠落することはなく、画像処理部3では、被写体像5bのデータを取得することが可能である。このようにして、画像処理部3は、有効撮像領域2aおよび補正用撮像領域2bで撮像された被写体像の画像データを取得して画像処理を行うことになる。
【0049】
図8は撮像領域を示す図である。図7では、位相変調素子10aを通過することで結像位置がシフトする方向に対して、有効撮像領域2aからはみ出した被写体像の部分を撮像できる箇所に補正用撮像領域2bを設けた。
【0050】
これに対し、図8の場合、手ぶれ補正が行われることによって、有効撮像領域2aから外へはみ出してしまう被写体像の部分を撮像する領域にも補正用撮像領域を設ける。すなわち、図に示すように有効撮像領域2aの四方に補正用撮像領域2b−1を設けることになる。これにより、手ぶれ補正によってフレームアウトする被写体像のデータも取得することが可能になる。
【0051】
以上説明したように、撮像装置1は、有効撮像領域2aと、位相変調素子10aを通過することで結像位置がシフトして、有効撮像領域2aからはみ出した被写体像の部分を撮像する補正用撮像領域2bとを有し、有効撮像領域2aおよび補正用撮像領域2bで撮像された被写体像の画像処理を行う構成とした。このような構成により、フレームアウトによって生じるデータ欠落を防止することができ、画像劣化を抑制した高品質な撮影が可能になる。
【0052】
なお、補正用撮像領域2bは、撮像素子2が元々有しているブランキングエリアとは異なるものである。ブランキングエリアは、撮像素子端部の数列分(ピッチによるが数μm〜十数μm幅)しかないために面積が十分でなく、基本的にX方向、Y方向のどちらか片方しか設けられない。また、撮像には使用されず、暗電流補正などを行うための予備領域である。したがって、ブランキングエリアを上述したような特徴を持つ補正用撮像領域2bに使用することは不向きである。
【0053】
次に撮像装置1が有するテスト撮影部について説明する。図9は撮像装置の構成例を示す図である。撮像装置1aは、光学系10、撮像素子2、画像処理部3およびテスト撮影部4を備える。光学系10、撮像素子2および画像処理部3については上述したので、テスト撮影部4について説明する。
【0054】
テスト撮影部4は、光学系10を介して擬似的な点光源(PSF)のテスト撮影を行い、テスト撮影された点光源の位置ずれ量を測定して測定値を出力する。ここで、補正用撮像領域2b分の撮像素子拡張量は、上述したような関数からほぼ決定するが、実際には素子変更や製造・取り付けの誤差等も考慮することになる。
【0055】
したがって、より高精度にデータ欠落による画像劣化を抑制するためには、テスト撮影部4によって、例えば、絞りがほぼ閉じて、ゲイン最大、露出最大というような条件のもとで、擬似点光源撮影を行い、点光源の位置ずれ量を測定して測定値を出力する。そして、この測定値を逆変換処理時の補正係数として使用する。このようにテスト撮影部4を設けて、実際に位置ずれを測定することにより、個別の製品それぞれに対して、データ欠落による画像劣化を効率よく抑制することが可能になる。
【0056】
なお、テスト撮影部4では、横方向(X軸方向)、縦方向(Y軸方向)の点光源の位置ずれ量だけでなく、高さ方向(Z軸方向)に対する回転量も測定することにより、より高精度に位置ずれを測定することが可能になる。
【0057】
次にトリミング制御について説明する。図10はトリミング制御を説明するための図である。撮像装置1では、位相変調素子10aを通過することによって起こる点像の位置ずれ現象によって生じるデータ欠落を防止するために、有効撮像領域2aをずらすのではなく、有効撮像領域2aに対して、補正用撮像領域2bをあらたに撮像領域として付け加えた。
【0058】
この場合、被写体像がシフトする方向とは対角方向にある領域では、有効撮像領域2a上のデータがシフトすることによって、データが存在しない領域(データ無領域)r1が現れる(図中の黒領域)。
【0059】
このようなデータ無領域r1が存在すると、撮影後に縦横比率が変化して、プリントアウトや外部モニタ表示する場合に悪影響が出て画像劣化が生じるおそれがある。このため、画像処理部3では、被写体像の画像処理後には、データ無領域r1を自動的にトリミング(切り出し)する制御を行う。これにより、プリントアウトや外部モニタ表示時に生じるおそれのある画像劣化を抑制することが可能になる。
【0060】
図11は撮像装置1の動作を示すフローチャートである。
〔S1〕有効撮像領域2aをファインダ表示する。
〔S2〕被写体の撮影が行われる。
【0061】
〔S3〕被写体像は、有効撮像領域2aで撮像される以外に、位相変調素子10aによって被写体像がシフトして、有効撮像領域2aからはみ出した場合は、そのはみ出し部分は、補正用撮像領域2bによって撮像される。
【0062】
〔S4〕画像処理部3は、位相変調素子10aの位相分布関数や手ぶれ補正分のシフト量を加味して、補正用撮像領域2b内のどこまではみ出しているか(どこまでデータが分散しているか)を認識する。
【0063】
〔S5〕画像処理部3は、有効撮像領域2aの全領域で撮像されたデータと、補正用撮像領域2bで撮像されたデータとを取得して、バッファリングする。
〔S6〕画像処理部3は、バッファリングされた画像データの逆フィルタ処理(逆変換処理)を行う。
【0064】
〔S7〕画像処理部3は、トリミング制御を行う。
〔S8〕画像処理部3は、逆フィルタ処理およびトリミング後の画像データをフレーム表示する。
【0065】
(付記1) 位相変調素子を含む光学系と、
前記光学系を通過した被写体像を撮像する撮像素子と、
前記被写体像を画像処理する画像処理部と、
を備え、
前記撮像素子は、撮影表示領域の第1の撮像領域と、非撮影表示領域の第2の撮像領域とを有し、
前記画像処理部は、前記第1の撮像領域および前記第2の撮像領域で撮像された前記被写体像の画像処理を行う、
ことを特徴とする撮像装置。
【0066】
(付記2) 前記撮像素子の前記第2の撮像領域は、前記位相変調素子によって結像位置がシフトした、前記第1の撮像領域からはみ出した前記被写体像の部分を撮像する領域であることを特徴とする付記1記載の撮像装置。
【0067】
(付記3) 前記撮像素子の前記第2の撮像領域は、前記第1の撮像領域からはみ出した前記被写体像の画像再生補正に使用するための領域であり、前記位相変調素子が持つ位相分布関数によって決まる前記被写体像の縦横方向のシフト量に対応した面積が設けられることを特徴とする付記2記載の撮像装置。
【0068】
(付記4) 前記撮像素子の前記第2の撮像領域は、手ぶれ補正が行われることによって前記第1の撮像領域から外へはみ出してしまう前記被写体像の部分を撮像する領域に設けられることを特徴とする付記1記載の撮像装置。
【0069】
(付記5) テスト撮影部をさらに有し、
前記テスト撮影部は、前記光学系を介して擬似的な点光源のテスト撮影を行い、前記テスト撮影された前記点光源の位置ずれ量を測定して測定値を出力することを特徴とする付記1記載の撮像装置。
【0070】
(付記6) 前記テスト撮影部は、前記点光源の縦横方向のシフト量と、高さ方向の回転傾きを測定して、前記点光源の位置ずれ量を測定することを特徴とする付記5記載の撮像装置。
【0071】
(付記7) 前記画像処理部は、前記光学系を介して前記被写体像が撮影されたときに、前記第1の撮像領域内に生じるデータが存在しない領域をトリミングすることを特徴とする付記1記載の撮像装置。
【0072】
(付記8) 撮像方法において、
撮像素子に対し、撮影表示領域の第1の撮像領域に、非撮影表示領域の第2の撮像領域を別途設け、
位相変調素子を含む光学系を通過した被写体像を前記撮像素子で撮像し、
前記第1の撮像領域および前記第2の撮像領域で撮像された前記被写体像の画像処理を行う、
ことを特徴とする撮像方法。
【符号の説明】
【0073】
1 撮像装置
2 撮像素子
2a 第1の撮像領域
2b 第2の撮像領域
3 画像処理部
10 光学系
10a 位相変調素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相変調素子を含む光学系と、
前記光学系を通過した被写体像を撮像する撮像素子と、
前記被写体像を画像処理する画像処理部と、
を備え、
前記撮像素子は、撮影表示領域の第1の撮像領域と、非撮影表示領域の第2の撮像領域とを有し、
前記画像処理部は、前記第1の撮像領域および前記第2の撮像領域で撮像された前記被写体像の画像処理を行う、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮像素子の前記第2の撮像領域は、前記位相変調素子によって結像位置がシフトした、前記第1の撮像領域からはみ出した前記被写体像の部分を撮像する領域であることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像素子の前記第2の撮像領域は、前記第1の撮像領域からはみ出した前記被写体像の画像再生補正に使用するための領域であり、前記位相変調素子が持つ位相分布関数によって決まる前記被写体像の縦横方向のシフト量に対応した面積が設けられることを特徴とする請求項2記載の撮像装置。
【請求項4】
テスト撮影部をさらに有し、
前記テスト撮影部は、前記光学系を介して擬似的な点光源のテスト撮影を行い、前記テスト撮影された前記点光源の位置ずれ量を測定して測定値を出力することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、前記光学系を介して前記被写体像が撮影されたときに、前記第1の撮像領域内に生じるデータが存在しない領域をトリミングすることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項6】
撮像方法において、
撮像素子に対し、撮影表示領域の第1の撮像領域に、非撮影表示領域の第2の撮像領域を別途設け、
位相変調素子を含む光学系を通過した被写体像を前記撮像素子で撮像し、
前記第1の撮像領域および前記第2の撮像領域で撮像された前記被写体像の画像処理を行う、
ことを特徴とする撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−135484(P2011−135484A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295113(P2009−295113)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】