説明

撮像装置及びその制御方法

【課題】撮像素子の画素情報に基づいて自動焦点調節を行う撮像装置において、画素情報の全体読出と部分読出を切り替える場合に、自動焦点調節の精度を安定化させること。
【解決手段】撮像装置10は、撮像素子21の画素情報に基づいて自動焦点調節用の評価値を算出する自動焦点評価処理部26と、撮像装置10の姿勢変化を検出する動き検出部17を備える。読出制御/AD変換部22は、カメラ制御部20の指示に従って撮像素子21の全体読出と部分読出を切り替える。カメラ制御部20は、評価値の変化や撮像装置10の姿勢変化が大きい場合、読出制御/AD変換部22に指示して全体読出へ切り替える。また、今回算出した評価値が前回算出した評価値以下であった場合でも、撮像装置10の動きが小さい場合、カメラ制御部20は読出制御/AD変換部22に指示して部分読出を継続させ、自動焦点調節の追い込みを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動焦点調節機能を備えた撮像装置と、その制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動焦点調節機能をもつ撮像装置において、撮像素子から読み出した画素情報に基づいて、自動焦点調節用の評価値を算出し、焦点距離の補間制御を行う場合、撮像素子の画素読出時間が長いと制御速度が遅くなる。このため、自動焦点調節の制御を開始する際、撮像素子の画素全体に亘って信号を隈なく読み出さずに、間引き読出を行うことで読出時間の短縮が可能である。また複数の焦点状態の検出位置のうちで評価値が一番の大きい位置を決定した後、当該位置を含む部分領域の画素情報を読み出すことで、読出時間を短くして処理を高速化する技術が知られている。
この他、部分読出により得られた画素情報に基づいて算出した評価値が小さく、信頼性が低くなった場合、撮像素子の画素全体に亘る間引き読出へ切り替える技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4059704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、周辺輝度の変化が大きい状況では、自動焦点調節に用いる評価値が安定しないため、自動焦点調節の制御精度が不安定化する虞が生じるという問題があった。これは、撮像素子の画素全体での間引き読出と、焦点状態検出位置付近での部分的な画素読出とが、交互に繰り返されてしまう場合に顕著となる。
そこで本発明は、全体読出と部分読出を切り替える撮像装置において、輝度差が大きくても撮像装置の姿勢変化が小さい条件では、部分読出を優先させる。これにより、本発明は自動焦点調節の精度を安定化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明に係る装置は、撮像素子の一部領域に係る画素情報を読み出す部分読出と前記撮像素子の有効画素領域に亘って画素情報を読み出す全体読出を切り替えて自動焦点調節を行う撮像装置であって、前記画素情報に基づいて自動焦点調節用の評価値を算出する評価処理手段と、前記撮像装置の姿勢変化を検出する検出手段と、前記評価処理手段による評価値の算出結果及び前記検出手段の検出結果に基づいて、該評価値が低下した場合又は撮像装置の姿勢変化が基準値より大きい場合に前記部分読出から前記全体読出へ切り替える制御手段と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、周辺環境の変化によって著しい影響を蒙ることなく、自動焦点調節の精度を安定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図2及び3と併せて本発明の実施形態を説明するために、撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】撮像素子の焦点状態検出エリアと読出範囲を例示する図である。
【図3】撮像装置の読出切替処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置10の構成例を概略的に示す図である。撮像光学系は、焦点調節用レンズ11、絞り13、シャッタ15を備える。焦点調節制御部12は、焦点調節用レンズ11の駆動制御を行う。後述のカメラ制御部20は、自動焦点評価処理部26によって得られる自動焦点調節に係る評価結果に基づいて、焦点調節制御部12に制御指示を出す。絞り制御部14は、カメラ制御部20の指示を受けて、適切な露光量が得られるように絞り13を制御する。シャッタ制御部16はカメラ制御部20の指示を受けてシャッタ15の駆動を制御する。シャッタ制御部16は、後述の画像信号処理部23からの測光情報に基づいて、絞り制御部14と連携しながら、適正露光を実現する。
【0010】
動き検出部17は撮像装置10の姿勢変化を検出し、検出結果をカメラ制御部20に送る。動き検出部17には、加速度センサ、重力センサ、ジャイロセンサ等が用いられ、振動加速度又は前後左右上下の3軸方向における角度変化や角速度等の検出情報に基づいて撮像装置の姿勢変化をリアルタイムに計測可能である。
【0011】
モードダイアル18は、撮像装置10の各種撮影モードを設定するための操作部材である。例えば、モードダイアル18の操作でスポーツモード等が選択された場合、動きのある被写体を撮影するために、露光時間を短くし、ISO感度を高くして、自動焦点調節を追従型制御で行うように設定される。また夜間モードが選択された場合、露光時間を長くし、不図示のストロボ発光制御を行うように設定される。モードダイアル18の操作信号はカメラ制御部20が受信して判別することで、撮影シーンに応じた撮影条件の設定が可能となる。レリーズスイッチ19は撮影時に操作され、カメラ制御部20はレリーズスイッチ19のオン信号を受けて、一連の撮影動作を開始させる。
【0012】
カメラ制御部20は撮像装置10全体の処理を制御し、例えばCPU(中央演算処理装置)や記憶装置を用いたコンピュータが使用される。カメラ制御部20はバスを介して符号22乃至27に示す各構成部との間で情報を送受し合う。撮像素子21は、被写体からの受光信号を電気信号に変換して後段の回路に出力する。被写体の光学像は、焦点調節用レンズ11、絞り13、シャッタ15を含む撮像光学系を介して撮像素子21の受光面に結像する。
【0013】
読出制御/AD変換部22は、撮像素子21に対する露光や間引き読出、或いは全体読出の制御命令をカメラ制御部20から受けて、各命令に対応する制御信号を撮像素子21に出力する。撮像素子21は、制御信号に従って被写体の光学像を露光し、光電変換されたアナログ信号を、読出制御に応じた画素配列から読み出して、読出制御信号とともに出力する。読出制御時には画素情報の全体読出又は部分読出が行われる。読出制御/AD変換部22は、読出制御信号とともに撮像素子21が出力する画像のアナログ信号に対して画像補正処理を施し、ディジタル信号に変換する。AD変換されたディジタル信号に対応する画像データは、バッファメモリ部24に格納される。
【0014】
画像信号処理部23は、バッファメモリ部24に格納された画像データに対して所定の画素補間処理や色変換処理(YUV変換、ホワイトバランス調整、ガンマ補正等)を施す。カメラ制御部20は色変換処理で抽出した輝度成分Yに基づいて、撮影モードに応じて設定された露出測定範囲の輝度評価を行い、露光処理に関する絞り13の駆動量及び撮像素子21の露光時間を算出する。また画像信号処理部23は、撮影者がレリーズスイッチ19を押下して静止画撮影を行った場合や、モードダイアル18の操作により再生モードを選択した場合、上記処理に加え、適応離散コサイン変換等により、画像データを圧縮し又は伸長する。つまり、画像信号処理部23は圧縮/伸長部を備えており、バッファメモリ部24に格納された画像データを読み込んで圧縮/伸長処理を行い、処理後の画像データを再びバッファメモリ部24に書き込む。バッファメモリ部24は、カメラ制御部20や、符号22乃至27に示す各部との間でデータを送受する。またバッファメモリ部24は、撮影した静止画像のデータや、再生用表示のための画像データを格納し、所定枚数の静止画像を格納するのに十分な記憶容量をもつ。さらにバッファメモリ部24は、カメラ制御部20の作業領域としても使用可能である。
【0015】
表示部25は液晶パネル等が使用され、バッファメモリ部24における所定の表示用格納領域に書き込まれたデータの示す画像を表示する。また、表示用の画像データは、外部着脱メモリ部27に格納された画像ファイルから再生することも可能であり、再生データの示す画像は表示部25に表示される。また撮影状態において、画像信号処理部23が生成したYUV信号は、フレーム毎に液晶パネル表示用サイズにリサイズされてから、所定の表示用格納領域へ画像データを書き込む処理が行われる。これにより、撮影者は、表示部25の表示画像を見て、リアルタイムで撮影状態を確認できる。表示部25は、カメラ制御部20の指示により表示状態のオン/オフ制御が可能である。
【0016】
自動焦点評価処理部26は画像データから自動焦点調節用の評価値を算出する。算出処理に用いる画像データは、画像信号処理部23によりYUV変換された後でバッファメモリ部24に格納された画像データであり、後述する焦点状態検出エリアの輝度成分Yを抽出することで評価値が算出される。外部着脱メモリ部27は、半導体メモリを用いたカード型記録媒体等に画像ファイルのデータを記録し又は該データを読み出す。
【0017】
図2は、撮像素子21の焦点状態検出エリアと読出範囲を例示した図である。矩形枠41は、撮像素子21の撮影時に有効な領域、つまり有効画素領域全体を示し、総画素数は「水平画素数(H)×垂直画素数(V)」で表される。一般的に、静止画撮影時には、有効画素全体に亘って撮像信号を読み出す全体読出制御が行われる。しかし自動焦点調節や露出値等の撮影条件を決定するための読出処理においては、1秒間に30乃至60フレーム等での高速な読出が必要となる。このため、水平画素及び垂直画素の数を、3分の1や、5分の1等に間引いて読み出す、間引き読出制御が行われる。
【0018】
図2に点線の矩形枠で示す符号42乃至48の領域は、撮像素子21の全有効画素を示す枠41内で、自動焦点調節に係る焦点状態検出エリアとして選定された各領域を示す。自動焦点調節に係る読出処理においては、まず枠41内の全有効画素から、間引き読出された画像信号を画像信号処理部23が処理し、YUV変換後の画像データをバッファメモリ部24に格納する。次に、バッファメモリ部24に格納された画像データが読み出され、輝度Yのデータを用いて、自動焦点評価処理部26は各エリア42乃至48についての評価値(これらを「e1乃至7」と記す)を算出する。それらのうち、一部領域、例えば最も評価値の高いエリアに対して部分読出制御が行われる。このときは、間引き読出を行わず、当該エリア内の画素情報が全て読み出される。
【0019】
カメラ制御部20は、算出された評価値と、輝度の評価値に基づいて、焦点調節用レンズ11、絞り13、撮像素子21の露光時間をフレーム毎に制御し、評価値が予め決められた基準値以上になった時点で、合焦と判断する。また、選択された焦点状態検出エリアでの評価値が、前回算出した評価値よりも小さくなり、評価値が時間経過につれて低下する傾向が所定の判定基準時間以上に亘って継続した場合、カメラ制御部20は、被写体の状況が変化したと判断する。そして再び全有効画素の間引き読出制御へと切り替わり、カメラ制御部20は焦点状態検出エリアの再選択を制御する。
【0020】
次に、図3のフローチャートを用いて、撮像装置10における読出制御の切替処理例を説明する。
カメラ制御部20は、撮像素子21から直前に読み出されて画像信号処理部23で処理された画像データに基づいて、評価値を算出するように自動焦点評価処理部26に指示を出す。自動焦点評価処理部26は、対象とする焦点状態検出エリアについて、自動焦点調節用の評価値を算出し、算出結果(これを「e」と記す)を得る(S101)。
【0021】
次にカメラ制御部20は、動き検出部17から現時点での撮像装置10の動き検出情報(これを「m」と記す)を取得する(S102)。カメラ制御部20は、S101で取得した評価値の算出結果eと、前フレームにて算出してメモリに記憶しておいた算出結果(これを「ep」と記す)を比較する。現時点での評価値の方が前回算出した評価値よりも大きいこと、つまり「e>ep」と判定された場合、S105に進み、「e≦ep」と判定された場合、S104に進む。
【0022】
S105でカメラ制御部20は読出制御/AD変換部22に制御指示を出し、選択した焦点状態検出エリアに係る部分読出制御へと移行させる。そしてS107に進む。
S104では、前記S102にて取得した動き検出情報mに基づき、撮像装置10の姿勢変化が判定される。例えばカメラ制御部20は動き検出情報mの大きさを、予め決められた閾値(これをmshと記す)と比較する。「m>msh」と判定された場合、S106に進み、カメラ制御部20は読出制御/AD変換部22に制御指示を出し、全有効画素に亘る全体読出制御へと移行させる。本制御では間引き読出が行われ、S107に進む。一方、S104で「m≦msh」と判定された場合、つまりで撮像装置10の動きが少なく、ほぼ静止状態にあると判定された場合、S105に進む。
S107でカメラ制御部20は、今回の評価値の算出結果eをepに代入してメモリに記憶させることで、ep値を次フレームでの評価値eと比較するための値として一時的に保持する。
【0023】
このように撮像装置10では、今回算出した評価値が前フレームの評価値より下がった場合でも、撮像装置10の動きが少なく姿勢変化が基準値以下であると判定された場合には、部分読出による追い込み制御が行われる。被写体の周辺環境の変化により明るさが変わり、あるいは被写体が動いた場合には、自動焦点追従制御や露出条件等の変更を要する。そこで前記S103やS104での判定結果に応じて、撮像信号の読出制御を切り替えることにより、自動焦点調節の精度及び性能が向上する。
【0024】
また本実施形態では、現時点の評価値eが前フレームの評価値epよりも下がった場合、動き検出情報mを閾値mshと比較し、撮像装置10の動きが大きいと判断された場合には全体読出制御に切り替わる。つまり、この場合には撮影者が撮像装置10を著しく動かしたことで構図がフレームアウトしたと判断できるので、評価値の判定結果にかかわらず全体読出制御に切り替えた方が、自動焦点調節制御をスムーズに行える。
本実施形態によれば、撮像装置の周辺環境の変化に対して、撮像装置の姿勢変化を判定し、自動焦点調節に係る撮像素子の画素読出制御を適切に切り替えることで、制御精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0025】
10 撮像装置
11 焦点調節用レンズ
12 焦点調節制御部
17 動き検出部
20 カメラ制御部
21 撮像素子
22 読出制御/AD変換部
26 自動焦点評価処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子の一部領域に係る画素情報を読み出す部分読出と前記撮像素子の有効画素領域に亘って画素情報を読み出す全体読出を切り替えて自動焦点調節を行う撮像装置であって、
前記画素情報に基づいて自動焦点調節用の評価値を算出する評価処理手段と、
前記撮像装置の姿勢変化を検出する検出手段と、
前記評価処理手段による評価値の算出結果及び前記検出手段の検出結果に基づいて、該評価値が低下した場合又は撮像装置の姿勢変化が基準値より大きい場合に前記部分読出から前記全体読出へ切り替える制御手段と、を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記評価処理手段の算出した評価値が、前回算出した評価値以下であって、かつ前記検出手段が検出した撮像装置の姿勢変化が基準値以下である場合、前記部分読出を行うように制御することを特徴とする、請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記評価処理手段の算出した評価値が、前回算出した評価値以下であって、かつ前記検出手段が検出した撮像装置の姿勢変化が基準値を超える場合、前記全体読出を行うように制御することを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御手段の指示に従って前記撮像素子の部分読出及び全体読出を制御する読出制御手段と、
前記読出制御手段により前記撮像素子の全体読出が行われる場合、間引き読出で得られる画素情報から前記評価処理手段が算出した評価値に基づいて焦点調節を行う焦点調節制御手段と、を備えたことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項記載の撮像装置。
【請求項5】
撮像素子の一部領域に係る画素情報を読み出す部分読出と前記撮像素子の有効画素領域に亘って画素情報を読み出す全体読出を切り替えて自動焦点調節を行う撮像装置の制御方法であって、
前記画素情報に基づいて自動焦点調節用の評価値を算出する算出ステップと、
前記撮像装置の姿勢変化を検出する検出ステップと、
前記算出ステップでの評価値の算出結果及び前記検出ステップでの検出結果に基づいて、該評価値が低下した場合又は撮像装置の姿勢変化が基準値より大きい場合に前記部分読出から前記全体読出へ切り替えるステップを有することを特徴とする撮像装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−215482(P2011−215482A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85181(P2010−85181)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】