説明

撮像装置及び露出制御方法

【課題】 焦点検出領域に対応しない測光領域から得られる測光値を有効に利用して、良好な露出制御を行うこと。
【解決手段】 複数の焦点検出エリアそれぞれのデフォーカス量を検出するAFセンサ(12)と、各測光エリアの測光値を検出する測光センサ(13)と、複数の測光エリアの内、焦点検出エリアに対応する位置に配置された第1の測光エリア及び所定範囲内にある第2の測光エリアの重み付け係数を対応するデフォーカス量に応じて決定すると共に、第1及び第2の測光エリア以外の第3の測光エリアの重み付け係数を、第1及び第2の測光エリアの重み付け係数以下の値に決定し、重み付け係数と測光値とで重み付け演算を行う露出演算部(11)と、重み付け演算して得られた測光値を用いて露出制御を行う露出制御手段(21、22、25、26)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び露出制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラなどで用いられる測光装置において、複数の焦点検出領域それぞれのデフォーカス量に基づいて、焦点検出領域それぞれに対応する位置にある複数の測光センサから得られた測光値に対する重み付けを設定していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献2には、分割焦点検出領域毎に設定された重み付けを使用する露出演算装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−356384号公報
【特許文献2】特許第3224535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1及び2に開示された、焦点検出領域のデフォーカス量に応じて、対応する位置にある複数の測光センサからの測光値に対する重み付けを決定する従来の測光装置では、以下のような欠点があった。即ち、複数の測光領域が密に配置され、かつ複数の焦点検出領域が疎に配置されている場合、各分割焦点検出領域に対応した測光領域の測光値を重視するがゆえに、焦点検出領域に対応しない測光領域の測光値を効果的に利用していなかった。このため、主たる合焦領域に適した露出は得られるものの、主たる被写体が良好な露出にならないことがあった。
【0006】
本発明は上記問題点を鑑みて成されたものであり、焦点検出領域に対応しない測光領域から得られる測光値を有効に利用して、良好な露出制御を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、複数の焦点検出エリアを有し、該複数の焦点検出エリアそれぞれのデフォーカス量を検出する焦点検出手段と、複数の測光エリアを有し、該複数の測光エリアそれぞれの測光値を検出する測光手段と、前記複数の測光エリアの内、前記複数の焦点検出エリアに対応する位置に配置された第1の測光エリアと、該第1の測光エリアから予め決められた範囲内にある第2の測光エリアの重み付け係数を、前記第1の測光エリアそれぞれに対応する焦点検出エリアのデフォーカス量に応じて決定すると共に、前記複数の測光エリアの内、前記第1及び第2の測光エリア以外の第3の測光エリアの重み付け係数を、前記第1及び第2の測光エリアの重み付け係数以下の値に決定する決定手段と、前記決定手段により決定された前記複数の測光エリアの重み付け係数と、前記複数の測光エリアの測光値とを用いて重み付け演算を行う演算手段と、前記演算手段により重み付け演算して得られた測光値を用いて露出制御を行う露出制御手段とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、焦点検出領域に対応しない測光領域から得られる測光値を有効に利用して、良好な露出制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る撮像装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】実施形態に係る焦点検出エリアと測光エリアの配置関係を示す概念図。
【図3】実施形態における露出制御処理の手順を示すフローチャート。
【図4】第1の実施形態における、撮像装置が横位置にある時の重み付け係数の決定手順を説明するための図。
【図5】第1の実施形態における、撮像装置が時計回り縦方向にある時の重み付け係数の決定手順を説明するための図。
【図6】第2の実施形態における、撮像装置が横位置にある時の重み付け係数の決定手順を説明するための図。
【図7】(a)はデフォーカス量と重み付け係数との関係を表す図、(b)は同じ重み付け係数が適用される測光エリアの範囲を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置の内、本実施の形態における露出制御に関する構成を示すブロック図である。不図示ではあるが、撮像装置には、着脱式または一体的に構成された撮影レンズ、撮影レンズを介して入射した光を光電変換して画像信号を出力する撮像素子、及び、撮像素子から得られた画像信号を処理する処理回路等の公知の構成が搭載されている。
【0012】
図1において、AFセンサ12は、複数の焦点検出エリアを有し、各焦点検出エリアは一対のラインセンサで構成され、焦点検出に必要な画像信号の取り込みを行っている。デフォーカス演算部15では、AFセンサ12で取り込んだ画像信号を基に、焦点検出エリア毎のデフォーカス量を演算する。
【0013】
信頼性判定処理部16では、デフォーカス演算部15で得られた各焦点検出エリアのデフォーカス量を参照し、各デフォーカス量の信頼度を判定する。フォーカスレンズ制御部23は、信頼性判定処理部16によって信頼度が高いと判定した焦点検出エリアのデフォーカス量に応じて、フォーカスレンズ(不図示)の移動量を算出する。そして、算出した移動量に基づいて、フォーカスレンズ駆動部24を駆動することにより、フォーカスレンズを合焦位置に移動させる。なお、フォーカスレンズ制御部23は、ユーザーが不図示の操作部を操作することで選択した焦点検出エリア、または、カメラが自動的に選択した焦点検出エリアのデフォーカス量に応じて、フォーカスレンズの移動量を算出しても構わない。
【0014】
測光センサ13は複数の測光エリアに分割された多分割測光センサであり、測光演算部17では、測光センサ13の出力に基づいて、各測光エリアの測光値をそれぞれ演算する。
【0015】
露出演算部11は、各焦点検出エリアのデフォーカス量と、その信頼度とに基づいて、各測光エリアの重み付け係数を演算する。なお、このとき用いるデフォーカス量は、フォーカスレンズを移動させた後のデフォーカス量である。そして、測光演算部17で得られた各測光エリアの測光値を、算出した重み付け係数で重み付け演算(加重平均)することで、画像全体の測光値を演算する。そして、重み付け演算して得られた画像全体の測光値と、ISO感度などの設定値に基づいて、露光時間や絞り値などの露出制御値を算出する。そして、シャッター制御部21、シャッター駆動部22、レンズ絞り制御部25、絞り駆動部26では、露出演算部11で決定した露出制御値に基づいて、露出制御を行う。
【0016】
姿勢検知センサ14は、例えば、傾斜角センサ、水平検出回路、ジャイロセンサなどの角度検出デバイスにより構成され、姿勢検知処理部18は、姿勢検知センサ14の出力に基づいて撮像装置の姿勢を判別する。
【0017】
図2(a)は、図1に示すAFセンサ12の焦点検出エリア12a〜12kの配置を示す図であり、図2(b)は、測光センサ13の複数の測光エリアを示しており、縦方向に7等分、横方向に9等分した領域となっている。以下、iを水平方向の位置、jを垂直方向の位置として、各測光エリアの位置を(i,j)(i=1〜9、j=1〜7)として表す。また、図2(c)は、図2(a)に示す焦点検出エリア12a〜12kと、図2(b)に示す複数の測光エリアとの対応を示す図である。
【0018】
次に、本実施形態における露出制御処理について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0019】
まず、S11において、姿勢検知処理部18は、撮像装置の姿勢が、撮像装置の底面が下方を向いている横位置、撮像装置の右側面が下方を向いている場合の縦位置、あるいは撮像装置の左側面が下方を向いている場合の縦位置のいずれかであるかを判別する。なお、以下の説明では、撮像装置の右側面が下方を向いている場合の縦位置を、横位置から時計回りに略90度回転した縦位置として時計回り縦位置と表す。同様に、撮像装置の左側面が下方を向いている場合の縦位置を横位置から反時計回りに略90度回転した縦位置として反時計回り縦位置と表す。S12において、AFセンサ12を駆動して、各焦点検出エリアを構成している一対のラインセンサからそれぞれ画像信号を取得する。そしてS13において、デフォーカス演算部15により、S12で取得した画像信号から焦点検出エリア毎のデフォーカス量を算出する。続いてS14では、信頼性判定処理部16により各焦点検出エリアのデフォーカス量に対する信頼性判定を行う。フォーカスレンズ制御部23は、S14で信頼度が高いと判定された焦点検出エリアのデフォーカス量に基づいてフォーカスレンズの移動量を算出し、フォーカスレンズ駆動部24を駆動してフォーカスレンズを合焦位置に移動させる。なお、信頼度が高いと判定された焦点検出エリアではなく、ユーザーが不図示の操作部を操作することで選択した焦点検出エリア、または、カメラが自動的に選択した焦点検出エリアのデフォーカス量に応じて、フォーカスレンズの移動量を算出しても構わない。
【0020】
次に、S15において測光センサ13を駆動し、S16では測光センサ13の出力に基づいて、測光演算部17は各測光エリアの測光値を演算する。
【0021】
S17において、露出演算部11は、S16で得られた各測光エリアの測光値と、フォーカスレンズを移動させた後の各焦点検出エリアのデフォーカス量及び信頼度に基づいて、各測光エリアの重み付け係数を決定する。なお、ここで行われる重み付け係数の決定処理は、詳細に後述する。
【0022】
S18では、各測光エリアの重み付け係数を用いて、各測光エリアの測光値に対して重み付け演算を行うことにより、画像全体の測光値を算出する。ステップS17により求めた各測光エリア(i,j)の測光値をs(i,j)、重み付け係数をk(i,j)とすると、測光値Eaは、以下の式(1)
【0023】

【0024】
により求めることができる。そして、得られた画像全体の測光値とISO感度などの設定値に基づいて、露光時間や絞り値などの露出制御値を算出する。
続いてS19では、シャッター制御部21、シャッター駆動部22、レンズ絞り制御部25、絞り駆動部26では、露出演算部11で決定した露出制御値に基づいて、露出制御を行う。
【0025】
<第1の実施形態>
図4は、本発明の第1の実施形態における、撮像装置の姿勢が横位置である場合にS106で行われる重み付け係数の決定手順を説明するための図である。
【0026】
図4(a)の例では、焦点検出エリア12a、12b、12cでデフォーカス量が小さく、これらの焦点検出エリアにある被写体が合焦近傍にあることを示し、また、デフォーカス量の信頼度が100%に近いものとする。ここでは、焦点検出エリア12a、12b、12cのデフォーカス量をそれぞれdef_in_12a、def_in_12b、def_in_12cとすると、それぞれ、
-0.05mm<def_in_12a≦0.05mm
-0.05mm<def_in_12b≦0.05mm
-0.05mm<def_in_12c≦0.05mm
【0027】
の範囲にあるものとする。
この場合、図7(a)に示す表から、焦点検出エリア12a、12b、12cに対応する測光エリア(第1の測光エリア)の重み付け係数として、それぞれ、
k(2,4)=4
k(3,3)=4
k(3,5)=4
【0028】
が得られる。
本第1の実施形態では、各測光エリアから、姿勢検知センサ14により検知された姿勢(横位置、時計回り縦位置、反時計回り縦位置のいずれか)において下方向にある所定数(ここでは2つ)の測光エリアにも同じ重み付け係数を適用する。図7(b)は、各姿勢において、同じ重み付け係数が適用される測光エリアの範囲を示している。焦点調節処理に用いる焦点検出エリアに対応する測光エリア1を(x,y)とすると、横位置の場合には、測光エリア2(x,y+1)及び測光エリア3(x,y+2)の2つの領域(第2の測光エリア)にも同じ重み付け係数を適用する。同様に、時計回り縦位置の場合には、測光エリア2(x+1,y)及び測光エリア3(x+2,y)に対して、反時計回り縦位置の場合には、測光エリア2(xー1,y)及び測光エリア3(xー2,y)に対して、同じ重み付け係数を適用する。なお、焦点検出エリアに対応する測光エリアの下方向にある所定数の測光エリアは、全て同じ重み付け係数でなくてもよく、焦点検出エリアに対応する測光エリアから近い測光エリアのほうが遠い測光エリアよりも重み付け係数が大きくなるようにしてもよい。また、焦点検出エリアに対応する測光エリアから離れるほど重み付け係数を小さくするか、全て同じ重み付け係数とするかを、基準となる測光エリアの重み付け係数の大きさに応じて変更してもよい。例えば、基準となる測光エリアの重み付け係数が所定値以下のときは、焦点検出エリアに対応する測光エリアから離れるほど重み付け係数を小さくすると重み付け係数が小さくなりすぎるため、全て同じ重み付け係数とする。
【0029】
図4に示す例では、焦点検出エリア12aに対応する測光エリア(2,4)と、測光エリア(2,4+1)及び(2,4+2)の重み付け係数を同じにする。即ち、
k(2,4)=k(2,5)=k(2,6)=4
【0030】
とする。測光エリア(3,3)及び(3,5)についても同様に、下方向にある2つの測光エリアに、同じ重み付け係数を適用する。ただし、測光エリア(3,3)の2つ下の測光エリアは測光エリア(3,5)であるので、測光エリア(3,5)自体の重み付け係数を優先する。即ち、
k(3,3)=k(3,4)=4
k(3,5)=k(3,6)=k(3,7)=4
とする。
一方、焦点検出エリア12d〜12kに対応する測光領域についても、デフォーカス量に基づいて、図7(a)の表から重み付け係数を決定する。ただし、デフォーカス量の信頼度が予め設定された閾値以下の場合には、重み付け係数として、信頼度が閾値より大きい場合の重み付け係数よりも小さい値、例えば1にする。ここでは、焦点検出エリア12d〜12kのデフォーカス量の絶対値が大きいか、信頼度が低いものとし、具体的な数値はここでは挙げないが、図7(a)の表などから、重み付け係数が1であるものとする。この場合、焦点検出エリア12d〜12kに対応する測光領域及びその下方向にある2つの測光エリアも、重み付け係数を1とする。また、焦点検出エリア12a〜12k及びその下方向の2つの測光エリア以外(第1及び第2の測光エリア以外)の測光エリア(第3の測光エリア)は、重み付け係数として、上述した重み付け係数以下の値、例えば1とする。
【0031】
なお、図4(a)では、焦点検出エリア12a、12b、12cに対応した測光エリアの重み付け係数が等しくなるような例を示したが、それぞれのデフォーカス量によっては対応した測光エリアの重み付け係数が異なる場合もある。図4(c)の例では、デフォーカス量の絶対値が、焦点検出エリア12a<12b<12cとなりいずれも信頼度が高く、それぞれに対応した測光エリアの重み付け係数が4、3、2となる場合の重み付け係数を示している。この場合、下方向にある所定数の測光エリアも同じ重み付け係数とするので、
k(2,4)=k(2,5)=k(2,6)=4
k(3,3)=k(3,4)=3
k(3,5)=k(3,6)=k(3,7)=2
【0032】
とする。なお、測光エリア(3,5)については、測光エリア(3,3)の下方向にある所定数の測光エリアに含まれるが、焦点検出エリアに対応した測光エリアであるので、自身の重み付け係数を優先する。
次に、撮像装置の姿勢が時計回り縦位置の場合の重み付け係数の決定方法について、図5を参照して説明する。この場合、測光エリア(9,1)〜(9,7)が下側にあることになる。また、ここでは、焦点検出エリア12jのデフォーカス量が小さく、合焦近傍であることを示し、また、デフォーカス量の信頼度が100%に近いものとする。すなわち、焦点検出エリア12jのデフォーカス量def_in_12jが
-0.05mm<def_in_12j≦0.05mm
【0033】
の範囲にあるものとする。
この場合、図7(a)に示す表から、焦点検出エリア12jに対応する測光エリア(7,5)(第1の測光エリア)の重み付け係数として、
k(7,5)=4
【0034】
が得られる。
図5に示す例では、上述したように時計回り縦位置であるので、図7(b)にも示すように測光エリア(7,5)の下方向にある2つの測光エリア(第2の測光エリア)は(8,5)と(9,5)となる。これらの測光エリアにも、測光エリア(7,5)と同じ重み付け係数を適用する。即ち、
k(7,5)=k(8,5)=k(9,5)=4
【0035】
とする。
焦点検出エリア12a〜12h及び12kに対応する測光領域についても、デフォーカス量に基づいて図7(a)の表から重み付け係数を決定する。ただし、デフォーカス量の信頼度が閾値以下の場合には、重み付け係数として、信頼度が閾値より大きい場合の重み付け係数よりも小さい値、例えば1にする。ここでは、焦点検出エリア12a〜12h及び12kのデフォーカス量が大きいか、信頼度が低いものとし、具体的な数値はここでは挙げないが、図7(a)の表などから、重み付け係数が1であるものとする。この場合、焦点検出エリア12a〜12h及び12kに対応する測光領域及びその下方向にある2つの測光エリアも、重み付け係数を1とする。また、焦点検出エリア12a〜12h及び12k及びその下方向の2つの測光エリア以外(第1及び第2の測光エリア以外)の測光エリア(第3の測光エリア)は、重み付け係数として、上述した重み付け係数以下の値、例えば1とする。
【0036】
なお、反時計回り縦位置についても、図5を参照して上述した時計回り縦位置と上下が逆になること以外は、同様にして重み付け係数を決定する。
【0037】
上記の通り本第1の実施形態では、焦点検出エリアに対応する測光エリア、およびその下方向に連続する予め設定された数の測光エリアの重み付け係数を同じにする。これは、例えば、被写体が人物等であって、ある焦点検出エリアに顔などが入っている場合に、その焦点検出エリアに隣接した下側の領域にも首あるいは胴体など、同じ被写体が存在する確率が高くなるためである。このように重み付け係数を決定することで、焦点検出エリアに対応していない測光エリアの測光値を有効に利用することができるので、主たる被写体を良好な露出にすることができる。
【0038】
<第2の実施形態>
図6は、本発明の第2の実施形態における、撮像装置の姿勢が横位置である場合にS106で行われる重み付け係数の別の決定手順を説明するための図である。
【0039】
図6(a)の例では、焦点検出エリア12a〜12kのデフォーカス量が小さく、これらの焦点検出エリアにある被写体が合焦近傍にあることを示し、かつ、デフォーカス量の信頼度が100%に近いものとする。この場合に、焦点検出エリア12a〜12kの中からユーザーがいずれかの焦点検出エリアを選択するか、または、カメラが自動的にいずれかの焦点検出エリアを選択した場合について説明する。ここでは、焦点検出エリア12eが選択されており、焦点検出エリア12eのデフォーカス量def_in_12eが
-0.05mm<def_in_12e≦0.05mm
【0040】
の範囲にあるものとする。
この場合、図7(a)に示す表から、焦点検出エリア12eに対応する測光エリア(5、4)(第1の測光エリア)の重み付け係数として、
k(5,4)=4
【0041】
が得られる。
ここでは、測光エリア(5,4)から一定の半径内にあり、且つ、測光エリア(5,4)よりも下ある測光エリアに対して、測光エリア(5,4)と同じ重み付け係数を設定する。同じ重み付け係数を設定する測光エリア(5,4)からの半径は、焦点距離及び距離情報によって変える。例えば、焦点距離f=50mmの撮影レンズの場合には、半径を測光エリア2つ分、焦点距離f=300mmの撮影レンズの場合には、半径を測光エリア4つ分、というようにする。これは、焦点距離が小さいほど画角が広角となり、撮像画面内に主たる被写体以外のものが入りやすくなるからであり、焦点距離が小さいほど半径を小さくすることで、主たる被写体以外のものに対して重み付けを大きくすることを軽減できる。
【0042】
図6において、点線により示す内側の円は、半径が測光エリア4つ分である場合を示しており、外側の円は、半径が測光エリア2つ分である場合を示している。図6から分かるように、焦点距離f=50mmの撮影レンズの場合、中心の測光エリアを(x,y)とした場合、(x±2の範囲,y−1)、(x±1の範囲,y−2)の9つの測光エリア(第2の測光エリア)に同じ重み付け係数を設定する。なお、半径の大きさと焦点距離fとの関係は、上述したものに限るものではなく、測光センサ13の大きさや、その他の焦点距離に応じて適宜決めることができる。
【0043】
即ち、図6に示すように、
k(3,5)=k(4,5)=k(5,5)=k(6,5)=k(7,5)
=k(4,6)=k(5,6)=k(6,6)
=k(5,4)=4
【0044】
とする。そして、上記範囲外(第1及び第2の測光エリア以外)の測光エリア(第3の測光エリア)に対しては、重み付け係数として、上記範囲内の測光エリアの重み付け係数以下の値、例えば1を設定する。従って、本第2の実施形態では、測光エリアから得られたデフォーカス量が小さく、且つ、信頼度が高い場合であっても、その測光エリアが、選択された測光エリアから決められた半径の外にある場合には、重み付け係数を小さくする。これは、ユーザーが選択した焦点検出エリアまたは、カメラが自動的に複数の焦点検出エリアの中から所定のアルゴリズムにより選び出した焦点検出エリアから遠い領域には、主たる被写体が存在する確率が低くなるためである。そのため、上記のように重み付け係数を設定することにより、主たる被写体に対する重み付けが増して良好な露出を得ることができる。
一方、被写体が人物等であって、選択された焦点検出エリアに顔などが入っている場合に、その焦点検出エリアに隣接した下側の領域にも首あるいは胴体など、同じ被写体が存在する確率が高くなる。そのため、決められた半径内にある測光エリアについては、選択された測光エリアと同じ重み付け係数にすることで、焦点検出エリアに対応していない測光エリアの測光値を有効に利用することができるので、主たる被写体を良好な露出にすることができる。
【0045】
なお、選択された焦点検出エリアから一定の半径内にあり、且つ、該焦点検出エリアよりも下にある焦点検出エリアのデフォーカス量が、選択された焦点検出エリアのデフォーカス量と大きく異なる場合も考えられる。そのような場合には、それぞれの焦点検出エリアのデフォーカス量に基づく重み付け係数を考慮して対応した測光エリアに重み付けすればよい。また、焦点検出エリアに対応していない測光エリアの重み付け係数は、周囲にある焦点検出エリアに対応した測光エリアの重み付け係数に基づいて決定すればよい。
【0046】
図6(c)の例では、焦点検出エリア12eが選択されていて、焦点検出エリア12eに対応する測光エリア(5,4)の重み付け係数が、k(5,4)=4だとする。そして、選択された焦点検出エリア12eから一定の半径内にあり、且つ、焦点検出エリア12eよりも下にある焦点検出エリア12cに対応する測光エリア(3,5)の重み付け係数が、デフォーカス量からk(3,5)=3となるとする。同様に、12g、12jのそれぞれに対応する測光エリア(5,6)、(7,5)の重み付け係数が、デフォーカス量からk(5,6)=3、k(7,5)=2となるとする。このとき、焦点検出エリアに対応した測光エリアの重み付け係数は、デフォーカス量から求められたそれぞれの重み付け量とする。一方、焦点検出エリアに対応していない測光エリア(4,5)、(5,5)、(6,5)、(4,6)、(6,6)の重み付け係数は、周囲にある焦点検出エリアに対応した測光エリアの重み付け係数に基づいて決定する。例えば、測光エリア(4,5)の重み付け係数は、測光エリア(3,5)および(5,4)の重み付け係数を参照して決定する。測光エリア(3,5)の重み付け係数はk(3,5)=3であり、測光エリア(5,4)の重み付け係数はk(5,4)=4であるので、両測光エリアの重み付け係数の間の値をとって測光エリア(4,5)の重み付け係数k(4,5)=3,5とする。その他の測光エリア(5,5)、(6,5)、(4,6)、(6,6)についても同じようにして重み付け係数を決定すると、すべての測光エリアの重み付け係数は図6(c)に示すようになる。
【0047】
また、選択された焦点検出エリアから遠い領域には、主たる被写体が存在する確率が低いと考えられるので、選択された焦点検出エリアに対応する測光エリアから近い測光エリアのほうが遠い測光エリアよりも重み付け係数が大きくなるようにしてもよい。
【0048】
なお、図6に示す例では、撮像装置が横位置の場合について説明したが、縦位置の場合にも同様にして、予め決めておいた半径領域内、且つ、下方向にある測光エリアに対して、同じ重み付け係数を用いればよい。
【0049】
次に、焦点検出エリア12a〜12kにおいてデフォーカス量def_inが十分に大きく、何れの焦点検出エリアの被写体も合焦領域に無い場合の重み付け係数について説明する。この場合、デフォーカス量def_inが、例えば0.5mm<def_in、あるいはdef_in≦-0.5mmとする。
【0050】
この場合、焦点検出エリアに対応した測光領域の重み付けに代えて、焦点検出エリアに関係なく、中央付近に重点をおいた重み付け係数を設定する。この場合、図7(a)の表を用いると、重み付け係数は全て1になってしまうため、図7(a)は用いずに予め決めておいた固定の重み付け係数を用いる。例えば、
k(5,4)=10
k(4,4)=k(6,4)=k(5,5)=k(5,3)=7
k(3,4)=k(7,4)=k(5,6)=k(5,2)=4
k(4,3)=k(6,3)=k(4,5)=k(6,5)=4
上記以外の測光エリアのk(j,i)=1
【0051】
とする。このように、全ての焦点検出エリアにおいてデフォーカス量が十分大きい場合には、前述の焦点検出エリアのデフォーカス量を用いた重み付けに代えて、焦点検出エリアに関係なく中央付近の測光エリアを重点的に重み付けをかけた測光値演算を行う。全ての焦点検出エリアにおいてデフォーカス量が十分大きい場合にデフォーカス量を用いた重み付けを行うと、全ての測光エリアに対して同じ重み付け係数で重み付け演算を行うことになり、主たる被写体が存在していてもその被写体を考慮した露出にならなくなる。しかしながら、全ての焦点検出エリアにおいてデフォーカス量が十分大きい場合にも、主たる被写体が存在する確率が高い中央付近の測光エリアを重点的に重み付けをかけることで、主たる被写体を考慮した露出とすることができる。
なお、全ての焦点検出エリアにおいてデフォーカス量が十分大きい場合、重点的に重み付けをかける測光エリアは中央付近の測光エリアでなくてもよい。例えば、ユーザーが選択した焦点検出エリアに対応した測光エリアを重点的に重み付けをかける測光エリアとしてもよい。これは、全ての焦点検出エリアにおいてデフォーカス量が十分大きい場合であっても、ユーザーには主たる被写体の位置が認識できている場合があるからである。
【0052】
また、このような、全ての焦点検出エリアにおいてデフォーカス量が十分大きい場合の重み付けは、第2の実施形態に限らず、第1の実施形態においても適用可能ある。勿論、上記例に限られるものではないことは言うまでもない。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の焦点検出エリアを有し、該複数の焦点検出エリアそれぞれのデフォーカス量を検出する焦点検出手段と、
複数の測光エリアを有し、該複数の測光エリアそれぞれの測光値を検出する測光手段と、
前記複数の測光エリアの内、前記複数の焦点検出エリアに対応する位置に配置された第1の測光エリアと、該第1の測光エリアから予め決められた範囲内にある第2の測光エリアの重み付け係数を、前記第1の測光エリアそれぞれに対応する焦点検出エリアのデフォーカス量に応じて決定すると共に、前記複数の測光エリアの内、前記第1及び第2の測光エリア以外の第3の測光エリアの重み付け係数を、前記第1及び第2の測光エリアの重み付け係数以下の値に決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された前記複数の測光エリアの重み付け係数と、前記複数の測光エリアの測光値とを用いて重み付け演算を行う演算手段と、
前記演算手段により重み付け演算して得られた測光値を用いて露出制御を行う露出制御手段と
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記撮像装置の姿勢を検知する姿勢検知手段を更に有し、
前記第2の測光エリアは、前記姿勢検知手段により検知された前記撮像装置の姿勢において、前記第1の測光エリアの下方向にある予め設定された数の測光エリアであることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
撮影レンズを介して入射した光を光電変換して画像を撮影する撮像装置であって、
複数の焦点検出エリアを有し、該複数の焦点検出エリアそれぞれのデフォーカス量を検出する焦点検出手段と、
複数の測光エリアを有し、該複数の測光エリアそれぞれの測光値を検出する測光手段と、
前記複数の測光エリアの内、前記複数の焦点検出エリアから選択された1つの焦点検出エリアに対応する位置に配置された第1の測光エリアと、該第1の測光エリアから予め決められた範囲内にある第2の測光エリアの重み付け係数を、前記選択された焦点検出エリアのデフォーカス量に応じて決定すると共に、前記複数の測光エリアの内、前記第1及び第2の測光エリア以外の第3の測光エリアの重み付け係数を、前記第1及び第2の測光エリアの重み付け係数以下の値に決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された前記複数の測光エリアの重み付け係数と、前記複数の測光エリアの測光値とを用いて重み付け演算を行う演算手段と、
前記演算手段により重み付け演算して得られた測光値を用いて露出制御を行う露出制御手段と
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
前記撮像装置の姿勢を検知する姿勢検知手段を更に有し、
前記第2の測光エリアは、前記第1の測光エリアから前記撮影レンズの焦点距離に応じて決められた半径の範囲内であって、且つ、前記姿勢検知手段により検知された前記撮像装置の姿勢において、前記第1の測光エリアの下側にある測光エリアであることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記デフォーカス量の信頼度を判定する判定手段を更に有し、
前記第1の測光エリアに対応する焦点検出エリアのデフォーカス量の信頼度が予め設定された閾値以下の場合、信頼度が閾値より大きい場合よりも小さい値を前記重み付け係数として決定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記決定手段は、前記第2の測光エリアに複数の測光エリアが含まれる場合、前記第2の測光エリアのうち前記第1の測光エリアに近い測光エリアのほうが遠い測光エリアよりも重み付け係数を大きい値に決定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
複数の焦点検出エリアを有する焦点検出手段が、該複数の焦点検出エリアそれぞれのデフォーカス量を検出する焦点検出工程と、
複数の測光エリアを有する測光手段が、該複数の測光エリアそれぞれの測光値を検出する測光工程と、
決定手段が、前記複数の測光エリアの内、前記複数の焦点検出エリアに対応する位置に配置された第1の測光エリアと、該第1の測光エリアから予め決められた範囲内にある第2の測光エリアの重み付け係数を、前記第1の測光エリアそれぞれに対応する焦点検出エリアのデフォーカス量に応じて決定すると共に、前記複数の測光エリアの内、前記第1及び第2の測光エリア以外の第3の測光エリアの重み付け係数を、前記第1及び第2の測光エリアの重み付け係数以下の値に決定する決定工程と、
演算手段が、前記決定工程で決定された前記複数の測光エリアの重み付け係数と、前記複数の測光エリアの測光値とを用いて重み付け演算を行う演算工程と、
露出制御手段が、前記演算工程で重み付け演算して得られた測光値を用いて露出制御を行う露出制御工程と
を有することを特徴とする露出制御方法。
【請求項8】
複数の焦点検出エリアを有する焦点検出手段が、該複数の焦点検出エリアそれぞれのデフォーカス量を検出する焦点検出工程と、
複数の測光エリアを有する測光手段が、該複数の測光エリアそれぞれの測光値を検出する測光工程と、
決定手段が、前記複数の測光エリアの内、前記複数の焦点検出エリアから選択された1つの焦点検出エリアに対応する位置に配置された第1の測光エリアと、該第1の測光エリアから予め決められた範囲内にある第2の測光エリアの重み付け係数を、前記選択された焦点検出エリアのデフォーカス量に応じて決定すると共に、前記複数の測光エリアの内、前記第1及び第2の測光エリア以外の第3の測光エリアの重み付け係数を、前記第1及び第2の測光エリアの重み付け係数以下の値に決定する決定工程と、
演算手段が、前記決定工程で決定された前記複数の測光エリアの重み付け係数と、前記複数の測光エリアの測光値とを用いて重み付け演算を行う演算工程と、
露出制御手段が、前記演算工程で重み付け演算して得られた測光値を用いて露出制御を行う露出制御工程と
を有することを特徴とする露出制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−53378(P2011−53378A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201088(P2009−201088)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】