説明

撮像装置

【課題】撮像素子からの画像信号を表示しながらの位相差検出方式の高速なオートフォーカス機能の利用を可能にすること。
【解決手段】撮像装置1は、被写体を撮像する。撮像素子10は、撮像面に形成された光学像を、画像信号を形成するための電気信号に変換する。位相差検出センサ20は、測距のための電気信号に変換する。表示部は、撮像素子10により変換された画像信号を表示する。位相差検出センサ20は、表示部に被写体像を表示中に測距する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子を露光しながら高速に焦点を検出することができる機能を有する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-oxide Semiconductor)センサなどの撮像素子を用いて、光学像を電気信号に変換し、この電気信号をデジタル化して記録するデジタルカメラが普及している。
【0003】
デジタル一眼レフカメラは、位相差を検出する位相差検出ユニットを有し、これにより位相差検出方式のオートフォーカス機能(AF機能)を採用している。位相差検出方式のオートフォーカス機能によれば、デフォーカス方向およびデフォーカス量を検出できるため、フォーカスレンズの移動時間を削減でき、高速にフォーカスできるという利点を有する(例えば、特許文献1)。従来のデジタル一眼レフカメラでは、位相差検出ユニットに被写体の光学像を導くために、レンズ鏡筒から撮像素子への光路上に挿入/退避可能に可動ミラーが設けられている。
【0004】
デジタルカメラの小型化を実現するために、いわゆるコンパクトデジタルカメラは、撮像素子を用いたビデオオートフォーカス方式(ビデオAF方式)によるオートフォーカス機能を採用している(例えば、特許文献2)。コンパクトデジタルカメラでは、ミラーを無くすことにより小型化を実現している。また、コンパクトデジタルカメラでは、撮像素子を露光しながらオートフォーカス機能を行うことができ、カメラの背面に設けた表示部に撮像素子によって撮影された画像を表示しながらの撮影が可能である。このビデオAF方式によるオートフォーカス機能は、一般的に、位相差検出方式のオートフォーカスに比して精度が高いという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−163545号公報
【特許文献2】特開2007−135140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のデジタル一眼レフカメラにおいては、位相差検出ユニットに被写体の光学像を導くために、レンズ鏡筒から撮像素子への光路上に可動ミラーを挿入する。そのため、撮像素子を露光しながら位相差検出ユニットを使用することができない。
【0007】
また、特許文献2に記載のデジタルカメラに用いられる上記ビデオAF方式では、デフォーカス方向を検出することができない。例えば、コントラスト方式のオートフォーカス機能によれば、焦点を検出する際にコントラストピークを求めるが、フォーカスレンズを現在の位置から前後に移動させるなどしないと、コントラストピークの方向、つまりデフォーカス方向を検出することができない。したがって、焦点検出の高速化には一定の限定がある。
【0008】
本発明の目的は、撮像素子を露光しながら高速に焦点を検出することができる機能を有する撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の撮像装置は、被写体を撮像する撮像装置であって、撮像面に形成された光学像を、画像信号を形成するための電気信号に変換する第1光電変換素子と、測距のための電気信号に変換する第2光電変換素子と、前記第1光電変換素子により変換された画像信号を表示する表示部と、を備え、前記第2光電変換素子は、前記表示部に被写体像を表示中に測距する構成を採る。
また、本発明の撮像装置は、被写体を撮像する撮像装置であって、撮像面に形成された光学像を、画像信号を形成するための電気信号に変換する第1光電変換素子と、測距のための電気信号に変換する第2光電変換素子と、を備え、前記第2光電変換素子で位相差検出を行い、前記第1光電変換素子でコントラスト検出を行う構成を採る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、撮像素子を露光しながら高速に焦点を検出することができる機能を有する撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る撮像装置に含まれる撮像素子の断面を一部拡大した図
【図2】本発明の実施の形態1に係る撮像装置の断面を一部拡大した図
【図3】本発明の実施の形態2に係る撮像装置の断面を一部拡大した図
【図4】本発明の実施の形態3に係る撮像装置の斜視図
【図5】本発明の実施の形態4における、CMOSアクティブピクセルセンサを用いた等価回路の一構成例を示す図
【図6】本発明の実施の形態4における、単位セルに対応する等価回路の一構成例を示す図
【図7】本発明の実施の形態4における、インターライン転送型CCDを用いた等価回路の一構成例を示す図
【図8】本発明の実施の形態5に係るカメラの本体の制御システムを示すブロック図
【図9】本発明の実施の形態1に係る撮像装置を搭載した交換レンズ式デジタルカメラの概略構成を示す図
【図10】従来の一眼レフカメラの概略構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(実施の形態1)
〔撮像装置の構造〕
図1は、本発明の実施の形態1に係る撮像装置に含まれる撮像素子の断面を一部拡大した図である。図2は、本発明の実施の形態1に係る撮像装置の断面を一部拡大した図である。図2に示す撮像装置1は、図1に示す撮像素子10と、位相差検出方式の焦点検出機構を有する位相差検出センサ20とを有する。
【0014】
撮像素子10は、半導体材料からなり、基板11を含む光電変換部12、垂直レジスタ13、転送路14、マスク15、カラーフィルター16、およびマイクロレンズ17により構成される。光電変換部12は、光を吸収して電荷を発生する。光電変換部12は、光を受光する受光部(画素ともいう)が配列されて構成されている。カラーフィルター16およびマイクロレンズ17は、各画素に対応して配置されている。各受光部での電荷は、垂直レジスタ13および転送路14を介して電気信号として出力される。各受光部の位置情報とその電荷を撮像素子10の撮像面全体から得ることにより、撮像素子10は、撮像面に形成された光学像を、画像信号を形成するための電気信号に変換する。基板11としては、Si(シリコン)ベースが使用される。なお、撮像素子10は、本発明の第1光電変換素子の一例である。
【0015】
本実施の形態では、光電変換部12は、その基板11の一部に凹部を有する。基板11の凹部の光軸方向の厚みは、他の部分よりも薄い。基板11の凹部は、光を透過する。すなわち、基板11の凹部は、光透過部18を形成する。このように、撮像素子10は、光を透過するように構成されている。そして、撮像装置1は、撮像素子10の光透過部18を透過した光が位相差検出センサ20に到達するように構成されている。なお、上記の構成により、光電変換部12は、光透過率が低い第1光電変換部19と、光透過部18に形成され第1光電変換部19よりも光透過率が高い第2光電変換部23とを有することになる。また、第1光電変換部19と第2光電変換部23との中間領域には第3光電変換部24が位置している。第1光電変換部19、第2光電変換部23、および第3光電変換部24については後述する。
【0016】
ここで、基板11の凹部は、Siベースの一部を切削、研磨、またはエッチングにより薄くして形成される。例えば、Siベースを2〜3μmの厚さにして光透過部18を形成すると、光電変換部12は光を透過する。本実施の形態では、基板11の凹部は、光軸方向の厚みが3μm程度であり、近赤外光を約50%透過する。通常、Siベースは、光電変換部12からの光が撮影者側に透過しにくい厚さで形成される。光が撮影者側に透過すると、光電変換部12で発生する電荷の量が減少し、電気信号の出力が低下するからである。
【0017】
図1に示す凹部の側面は、透過光が位相差検出センサ20に反射しない角度で形成される。位相差検出センサ20に凹部の側面から反射した光が入射すると、位相差検出センサ20に実像でない像が形成されるため、位相差検出センサ20が誤検出する可能性があるからである。
【0018】
位相差検出センサ20は、セパレータレンズ21とラインセンサ22とから構成される。位相差検出センサ20は、光透過部18に対応する位置に配置される。位相差検出センサ20は、撮像素子10からの透過光を受光して位相差検出を行う。そして、位相差検出センサ20は、受光した透過光を測距のための電気信号に変換する。なお、位相差検出センサ20は、本発明の第2光電変換素子の一例である。
【0019】
本実施の形態では、撮像素子10は、光透過部18を複数有している。そして、各光透過部18に対応する位置に、各光透過部18からの透過光を受けるように、位相差検出センサ20がそれぞれ設けられている。
【0020】
図示しない撮影レンズから導かれる被写体像が撮像素子10の光透過部18を透過し位相差検出センサ20のセパレータレンズ21に入射すると、透過光がセパレータレンズ21により瞳分割され、同一の被写体像がラインセンサ22上の2つの部分にそれぞれ結像する。カメラのレンズの焦点距離が固定されたまま被写体距離が変化すると、ラインセンサ22上の2つの被写体像の間隔が変化する。位相差検出センサ20では、被写体に焦点が合っている場合、ラインセンサ22上の予め定められた位置に被写体像が結像する。ここで、ラインセンサ22上の予め定められた位置と異なる位置に被写体像が結像した場合、位相差検出センサ20は、デフォーカス方向およびデフォーカス量を検知することが可能となる。
【0021】
さらに、撮像装置1では、被写体像が光電変換部12に入射した状態のままで、つまり、撮像素子10を露光しながら、位相差検出センサ20により位相差検出方式の焦点検出を行うことができる。また、これに付随して、(1)撮像素子10からの画像信号を表示しながらの撮影や、(2)位相差検出方式の焦点検出とコントラスト方式の焦点検出の併用、が可能となる。
【0022】
<変形例>
本実施の形態では、光電変換部12の基板11の一部を薄くすることにより、撮像素子10が光を透過する例について説明したが、これに限られない。例えば、撮像素子に光を透過させる他の方法として、基板11の全体を薄くして光を透過させるようにしてもよい。また、基板11の一部に貫通孔を設けて光を透過させるようにしてもよい。
【0023】
(実施の形態2)
〔別の撮像装置の構造〕
図3は、本発明の実施の形態2に係る撮像装置の断面を一部拡大した図である。図3に示す撮像装置1aは、図1および図2に示す実施の形態1に対応する撮像素子10と位相差検出センサ20の間にコンデンサーレンズ30を配置した構成を有する。
【0024】
図示しない撮影レンズから導かれる被写体像が光電変換部12を透過しコンデンサーレンズ30に入射することにより、広がりつつある被写体像をコンパクトにまとめることが可能となる。また、セパレータレンズ21への入射角度を小さくすることができ、セパレータレンズ21により収差(理想的な結像からのズレ)を押さえることができる。さらに、ラインセンサ22上の被写体像間隔を小さくすることができるため、ラインセンサ22の幅も小さくすることができる。
【0025】
また、コンデンサーレンズ30を入れることで、デフォーカス移動に対する、ラインセンサ22上での瞳分割幅の移動が小さくなるため、様々な種類の交換レンズの至近距離から無限遠距離までが測定可能になる。
【0026】
さらに、ラインセンサ22の画素ピッチを小さくすることができず、測距精度が厳しい場合などには、コンデンサーレンズ30の焦点距離が異なる遠距離用と近距離用の位相差検出センサを並列に設けることで、遠距離用と近距離用とを切り替え、必要な測距精度を確保することができる。言い換えれば、コンデンサーレンズ30の焦点距離が異なる位相差検出センサを並列に設けることで、ラインセンサ22の画素ピッチを大きくし、高感度化やコストダウンなどの効果も期待することができる。
【0027】
また、図2に示すような、コンデンサーレンズ30がない場合には、デフォーカス移動に対する、ラインセンサ22上での瞳分割幅の移動が大きくなるため、合焦付近での超高精度な測距にも対応させることが可能となる。
【0028】
(実施の形態3)
〔撮像装置の応用例〕
図4は、本発明の実施の形態3に係る撮像装置の斜視図である。図4に示す撮像装置1bには、セパレータレンズ21とラインセンサ22とから構成される選択可能な複数個の位相差検出センサ20が配置される。図4に示すように、本実施の形態では、9個の位相差検出センサ20が、光透過部18に対応して、それぞれ撮像面に配置されている。9個の位相差検出センサ20は、撮像面に形成された光学像のそれぞれ異なる位置の像により位相差検出を行う。すなわち、撮像素子10は、位相差検出センサ20が配置された複数の測距ポイントを有している。各位相差検出センサ20は、配置された位置に応じて、ラインセンサ22上に結像されたそれぞれの被写体像の位置に応じて測距データを出力する。
【0029】
この撮像装置1bをカメラに搭載した場合、撮影者は、撮影フレーム上の任意の測距ポイントを選択可能となる。また、カメラ側では、自動最適化アルゴリズムによって、最良の測距ポイントを選択し、選択された測距ポイントに対応する位相差検出センサ20から出力された測距データに基づいて自動的にフォーカスレンズを駆動して合焦することも可能である。例えば、複数の測距データから、最もカメラに近接する測距データに対応する測距ポイントを選択するように自動最適化アルゴリズムを設定しておけば、中抜け写真などが発生する確率を減らすことが可能となる。
【0030】
(実施の形態4)
〔光透過部上の光電変換素子の出力補正〕
図1および図2に示すように、光電変換部12は、光透過率が低い第1光電変換部19と、光透過部18に形成され第1光電変換部19よりも光透過率が高い第2光電変換部23とを有している。第2光電変換部23では、被写体光の一部が透過することにより、相対的に第1光電変換部19に比べて光電変換効率が小さくなってしまう。したがって、同じ光量を受光しても、蓄積電荷量は、第1光電変換部19よりも第2光電変換部23の方が少なくなってしまう。このため、撮像素子10から出力された電気信号に従来の画像処理を行うだけでは、光透過部18に対応する部分の画像が、第1光電変換部19に対応する部分の画像と異なって撮影されてしまう可能性がある。例えば、光透過部18に対応する部分の画像が、第1光電変換部19に対応する部分の画像よりも暗く撮影されてしまう可能性がある。
【0031】
さらに、第2光電変換部23の出力の低下は、光の波長により異なる。これは、波長が大きいほど基板11を透過する率が大きくなるためである。したがって、各画素に形成されたカラーフィルター16に応じて、波長の影響により、透過する光量に差が生じることになる。そこで、以下に示す関係で色毎に補正量を異ならせることで、安定した画像出力を得ることが可能となる。ここで、色補正の方法としては、例えば、増幅などが用いられる。
第2光電変換部のR画素補正量−第1光電変換部のR画素補正量=Rk
第2光電変換部のG画素補正量−第1光電変換部のG画素補正量=Gk
第2光電変換部のB画素補正量−第1光電変換部のB画素補正量=Bk
Rk>Gk>Bk
上記関係は、第2光電変換部23の赤(R)・緑(G)・青(B)各画素での補正量と第1光電変換部19のRGB各画素での補正量との差を示している。赤・緑・青の3色のうち長波長である赤が最も透過率が高いため、赤の画素での補正量の差が最も大きい。また、上記3色のうち短波長である青が最も透過率が低いため、青の画素での補正量の差が最も小さい。
【0032】
光電変換部12の各画素の出力の補正量は、光電変換部12の種別が光透過部18に対応する位置に配置された第2光電変換部23であるか否か、および、各画素に対応する位置に配置されたカラーフィルター16の色に基づいて決定される。また、第2光電変換部23からの出力と第1光電変換部19からの出力とにより表示される画像のホワイトバランスおよび/または輝度が等しくなるように、各補正量が決定される。
【0033】
<CMOSセンサ>
次に、図5および図6を参照して、CMOSアクティブピクセルセンサ(以下単に「CMOSセンサ」という)を撮像素子10として使用する場合の出力補正について説明する。図5は、CMOSセンサを用いた等価回路の一構成例を示す図である。図6は、単位セルに対応する等価回路の一構成例を示す図である。
【0034】
図5に示すCMOSセンサ50を図1に示す撮像素子10として使用する場合には、CMOSセンサ50に光透過部18が形成される。CMOSセンサ50では、図1に示す光透過部18に対応する位置に配置された第2光電変換部23の出力が、第2光電変換部23よりも相対的に光透過率が低い第1光電変換部19の出力に比して、より増幅されるように、各画素のアンプ(本発明の「増幅部」に相当)の増幅率(補正量)が設定される。これにより、第2光電変換部23に対応する部分の画像が第1光電変換部19に対応する部分の画像と異なって表現されてしまうことを改善することができる。
【0035】
図5に示す単位セル51は、図6に示すように、フォトダイオード52、アンプ53、フォトダイオード52の電荷を蓄積するコンデンサ54、コンデンサ54の電荷を放出するためのリセットスイッチ55、および単位セル51からの出力を列信号線56に出力するための選択スイッチ58から構成される。アンプ53は、電荷を電圧に変換して出力する。選択スイッチ58は、行選択線57に行選択信号を出力することで動作する。CMOSセンサ50では、単位セル51毎にアンプ53の増幅率を設定できるため、第2光電変換部23の単位セル51の出力が、第2光電変換部23よりも相対的に光透過率が低い第1光電変換部19の単位セル51の出力に比して、より増幅されるように構成することができる。
【0036】
このようなCMOSセンサ50と、CMOSセンサ50の光透過部18に対応する位置に設けられた位相差検出センサ20とが、上記の撮像装置1、1a、1bを構成する。
【0037】
本実施の形態におけるCMOSセンサ50を使用した撮像装置1、1a、1bをカメラに搭載することにより、被写体像が光電変換部12(フォトダイオード52に相当)に入射した状態のままで、つまり、撮像素子10(CMOSセンサ50に相当)を露光しながら、位相差検出センサ20により位相差検出方式の焦点検出を行うことができる。また、これに付随して、(1)撮像素子10からの画像信号を表示しながらの撮影や、(2)位相差検出方式の焦点検出とコントラスト方式の焦点検出の併用、が可能となる。なお、CMOSセンサは、大量生産が可能なため、高電圧アナログ回路を有するCCDセンサと比較して安価であり、また、素子が小さいため、消費電力も少ないというメリットもある。
【0038】
<CCDセンサ>
次に、図7を参照して、インターライン転送型CCD(以下単に「CCDセンサ」という)を撮像素子10として使用する場合の出力補正について説明する。図7は、インターライン転送型CCDを用いた等価回路の一構成例を示す図である。
【0039】
図7に示すCCDセンサ60を図1に示す撮像素子10として使用する場合には、CCDセンサ60に光透過部18が形成される。上記のように、光透過部18の第2光電変換部23からの出力と、第2光電変換部23よりも光透過率が低い第1光電変換部19からの出力とに対しては、異なる処理が行われることが好ましい。
【0040】
一方、CCDセンサ60は、複数の単位セル61を2次元的に配列した構成である。単位セル61は、フォトダイオード62から構成される。単位セル61から出力された電荷は、垂直CCD63を介して水平CCD64に転送される。アンプ65は、水平CCD63から出力された電荷を電圧に変換して出力する。このように、CCDセンサ60を使用した場合は、すべての単位セル61を同一のアンプ65によって増幅するため、このままでは単位セル61毎にアンプ65の増幅率を設定することができない。したがって、単位セル61毎にアンプ65の増幅率を変更しようとすると、回路構成が複雑になる。
【0041】
そこで、CCDセンサ60を図1に示す撮像素子10として使用する場合には、図1において、第2光電変換部23の出力に、第2光電変換部23よりも相対的に光透過率が低い第1光電変換部19の出力と異なる処理を、デジタルカメラ本体の信号処理部で行うのが好ましい。ここで、異なる処理とは、光透過部18に対応する位置に配置された第2光電変換部23の出力を、第1光電変換部19の出力に比して、より増幅する処理である。また、異なる処理とは、光透過部18に対応する位置に配置された第2光電変換部23の出力と第1光電変換部19の出力とにより表示される画像のホワイトバランスおよび/または輝度が等しくなるようにする処理である。これにより、第2光電変換部23に対応する部分の画像が第1光電変換部19に対応する部分の画像と異なって表現されてしまうことを改善することができる。なお、デジタルカメラ本体の信号処理部については後述する。
【0042】
(実施の形態5)
〔本発明を用いたカメラの概要〕
図8は、本発明の実施の形態5に係るカメラの本体(デジタルカメラ本体)の制御システムを示すブロック図である。ここでは、図8を参照して、例えば、図1および図2に示す実施の形態1に対応する撮像装置1を有するデジタルカメラ本体(以下単に「カメラ本体」という)70について説明する。撮像装置1は、例えば、撮像素子10に相当するCCDセンサ60(図7参照)および位相差検出センサ20を有する。また、カメラ本体70で撮像素子10の出力に対して行う処理についても説明する。なお、以下に説明する処理は、撮像素子10としてCMOSセンサ50(図5および図6参照)を使用した場合でも適用可能である。
【0043】
ボディーマイコン71は、カメラ本体70のレリーズボタン(シャッターボタン)72から信号を受信可能である。電源ボタン73は、ボディーマイコン71およびカメラ本体70に電力を供給するためのボタンである。また、ボディーマイコン71は、シャッター制御部74へ信号を送信可能である。さらに、ボディーマイコン71は、ボディーマイコン71と画像記録制御部75との間の双方向通信、ボディーマイコン71と画像表示制御部76との間の双方向通信、およびボディーマイコン71とデジタル信号処理部77との間の双方向通信を行うことができる。また、ボディーマイコン71は、信号を格納するメモリ68を有する。
【0044】
シャッター制御部74は、ボディーマイコン71からの制御信号に基づいてシャッターユニット78を制御するために、シャッター駆動モータ78aを駆動する。
【0045】
レリーズボタン72は、ボディーマイコン71へシャッタータイミングを示す情報を送信する。
【0046】
撮像装置1は、上記のように、CCDセンサ60(図7参照)および位相差検出センサ20により構成される。CCDセンサ60は、交換レンズユニット100(後述の図9参照)の撮像光学系により形成される光学的な像を電気的な画像信号に変換する。CCDセンサ60は、撮像センサ制御部79により駆動制御される。CCDセンサ60から出力される画像信号は、アナログ信号処理部80、A/D変換部81、デジタル信号処理部77、バッファメモリ82、および画像圧縮部83により、順に処理される。
【0047】
位相差検出センサ20は、CCDセンサ60を透過した光を受光し、測距のための電気信号に変換して出力する。具体的には、ラインセンサ22から電気信号(画像信号)が出力される。ラインセンサ22から出力される画像信号は、アナログ信号処理部80、A/D変換部81、およびデジタル信号処理部77により、順に処理される。そして、ボディーマイコン71に処理後の当該信号が送られ、ボディーマイコン71は、デフォーカス方向とデフォーカス量を算出する。ボディーマイコン71は、算出したデフォーカス方向とデフォーカス量を交換レンズユニット100のレンズマイコン(図示せず)に送信する。この結果、レンズマイコンからの指令により交換レンズユニット100のフォーカスレンズが駆動され、オートフォーカスが行われる。
【0048】
画像信号は、CCDセンサ60からアナログ信号処理部80へ送信される。アナログ信号処理部80は、撮像装置1が出力する画像信号に、ガンマ処理などのアナログ信号処理を行う。アナログ信号処理部80から出力された画像信号は、A/D変換部81へ送信される。A/D変換部81は、アナログ信号処理部77から出力されたアナログ画像信号をデジタル信号に変換する。A/D変換部81から出力された画像信号は、デジタル信号処理部77へ送信される。
【0049】
デジタル信号処理部77は、A/D変換部81によりデジタル信号に変換された画像信号に対して、ノイズ除去や輪郭強調などのデジタル信号処理を行うとともに、光透過部18上の第2光電変換部23から出力された電気信号に相当する画像信号に、第1光電変換部19から出力された電気信号に相当する画像信号と異なる処理を行う。例えば、異なる処理として、第2光電変換部23から出力された電気信号に相当する画像信号のレベルを増幅する。光透過部18に相当する画素と、その画素に対応する画像信号とは特定可能である。そのため、透過した光量を補うための補正係数(補正量)を予め用意しておき、画像信号の値に補正係数を乗ずることにより、画像信号のレベルを増幅する。
【0050】
また、光透過部18に対応する位置に配置された第2光電変換部23と、相対的に光透過率が低い第1光電変換部19との中間領域に位置する第3光電変換部24の出力については、段階的に増幅する。第3光電変換部24は、図1に示す凹部の側面に位置する。凹部の側面は、透過率が段階的または連続的に異なる。したがって、凹部の側面に位置する第3光電変換部24の出力については、透過率に応じて増幅率を変えるようにしている。この場合にも、補正係数を予め用意しておき、画像信号の値に補正係数を乗ずることにより、画像信号のレベルを増幅する。撮像素子10全体を透過率が高い光電変換部で構成した場合には、1つの補正係数を予め用意しておき、すべての画像信号の値に補正係数を乗ずることにより、画像信号のレベルを増幅するようにしてもよい。なお、デジタル信号処理部77は、本発明の信号処理部の一例である。
【0051】
さらに、デジタル信号処理部77は、補正された画像信号からコントラスト値を求め、ボディーマイコン71に通知する。もちろん位相差検出センサ20を用いた位相差検出方式だけで合焦してもよいが、この位相差検出方式に加えて、フォーカスレンズの駆動に伴い、コントラスト値を求め、コントラストピークを求めてフォーカスレンズを制御する、いわゆるコントラスト方式のビデオAF方式を併用してもよい。したがって、撮像装置1を搭載することにより、撮像装置1によりコントラスト検出を行う高精度なビデオAFを機能させると同時に、デフォーカス検出により高速合焦できる位相差AFを機能させることができるカメラを提供することが可能になる。
【0052】
デジタル信号処理部77から出力された画像信号は、バッファメモリ82へ送信される。バッファメモリ82は、デジタル信号処理部77により処理された画像信号を一旦記憶する。バッファメモリ82は、RAM(Random Access Memory)などにより構成される。
【0053】
バッファメモリ82から出力された画像信号は、画像記録制御部75からの命令に従って、画像圧縮部83に送信される。画像圧縮部83は、画像記録制御部75の命令に従って画像信号に圧縮処理を行う。画像信号は、この圧縮処理により、元のデータよりも小さなデータサイズになる。例えば、この圧縮方式として、JPEG(Joint Photographic Experts Group)方式などが用いられる。
【0054】
圧縮された画像信号は、画像圧縮部83から画像読み出し/記録部84および液晶モニタ85へ送信される。本実施の形態では、位相差検出センサ20を動作させながら液晶モニタ85で画像を表示可能であるため、位相差検出とライブビューを同時に行うことが可能となる。一方、ボディーマイコン71は、画像記録制御部75および画像表示制御部76へ制御信号を送信する。画像記録制御部75は、ボディーマイコン71からの制御信号に基づいて画像読み出し/記録部84を制御する。画像表示制御部76は、ボディーマイコン71からの制御信号に基づいて液晶モニタ85を制御する。
【0055】
画像読み出し/記録部84は、画像記録制御部75の命令に基づいて、画像信号を内部メモリおよび/またはリムーバブルメモリに記録する。画像信号と共に記憶すべき情報は、画像を撮影した際の日時、焦点距離情報、シャッタースピード情報、絞り値情報、および撮影モード情報を含む。
【0056】
液晶モニタ85は、画像表示制御部76の命令に基づいて、画像信号を可視画像として表示する。液晶モニタ85は、画像表示制御部76の命令に基づいて、画像信号と共に表示すべき情報を、表示する。画像信号と共に表示すべき情報は、焦点距離情報、シャッタースピード情報、絞り値情報、撮影モード情報、および合焦状態情報を含む。液晶モニタ85は、表示部の一例である。
【0057】
また、液晶モニタ85は、画像表示制御部75の命令に基づいて、所定の撮影/再生モードにおいて、撮影者などにより設定されるべき設定画面を表示する。
【0058】
撮影者などが撮影する場合には、電源ボタン73をONにし、撮影モードにすると、カメラ本体の電源が入り、液晶モニタ85には、撮像装置1により電気的な画像信号に変換された被写体の光学像が可視画像として、画像表示制御部76の命令に基づいて表示される。
【0059】
ボディーマイコン71は、フォーカスレンズを駆動するための信号をレンズマイコンに出力する。
【0060】
ここで、図9を用いて、本発明を適用したカメラの概略について説明する。図9は、本発明の実施の形態1に係る撮像装置を搭載した交換レンズ式デジタルカメラの概略構成を示す図である。図9において、図8で説明した構成要素については、同じ符号を付す。
【0061】
カメラ本体70は、交換レンズユニット100を着脱することが可能である。カメラ本体70においては、従来のカメラのように交換レンズユニット100から撮像装置1(撮像素子10)への光路上にミラーを挿入する必要がない。また、フレーミングを行うためのファインダー機能は、ライブビューを用いることができる。すなわち、撮像装置1で受光した被写体像をボディー背面に設けられた液晶モニタ85に表示することで、被写体像を観察することができる。シャッターユニット78は、カメラ本体70のレリーズボタン72がONされると開き、撮像装置1に被写体像を導く。
【0062】
ボディーマウント90には、交換レンズユニット100と電気的な交信や電力の供給が可能な電気接点90aが設けられている。さらに、ボディーマウント90には、焦点調整駆動アクチュエーターとしてボディーからのフィードバック制御が必要なアクチュエーターを使用できるように、また、動画撮影などで絞り(アイリス)駆動をボディー側から制御できるように交信が可能なリアルタイム交信端子90bが設けられている。
【0063】
続いて実際の撮影動作を説明する。電源ボタン73をONにすると、アイリス101およびシャッターユニット78が開放され、また、撮像装置1に電力が供給される。その後、液晶モニタ85は、撮像装置1から出力される画像信号をライブビュー画像として表示する。レリーズボタン72を半分押下するいわゆる半押しが行われると、不図示のS1スイッチがONとなり、ボディーマイコン71は、撮像装置1に内蔵された位相差検出センサ20を用いてデフォーカス方向とデフォーカス量を算出し、算出したデータをリアルタイム交信端子90bを介して交換レンズユニット100内のレンズマイコンに送信する。この結果、レンズマイコンの指令によりフォーカスレンズ102が駆動され、位相差検出方式のフォーカスレンズ102の合焦動作が完了する。
【0064】
コントラスト方式のオートフォーカス機能を併用する場合には、位相差検出方式によってフォーカスレンズ102がレンズマイコンからの指令による目的位置に到達する所定距離手前から、画像信号に基づくコントラスト値の算出を所定間隔で行い、目標位置付近でフォーカスレンズ102を駆動させコントラスト値がピークとなる位置でフォーカスレンズ102を止めることで、合焦動作が完了する。
【0065】
位相差検出方式の合焦動作中も、液晶モニタ85は、撮像装置1から出力される画像信号を表示する。
【0066】
さらに、レリーズボタン72を全部押下するいわゆる全押しが行われると、不図示のS2スイッチがONとなり、シャッターユニット78を閉鎖し、アイリス101を撮像装置1にて測光した結果から導き出された絞り値まで絞り込み、撮影動作を開始する。
【0067】
本実施の形態のカメラによれば、被写体像が光電変換部12に入射した状態のままで、つまり、撮像素子10を露光しながら、位相差検出センサ20により位相差検出方式の焦点検出を行うことができる。また、これに付随して、(1)撮像素子10からの画像信号を表示しながらの位相差検出方式の高速なオートフォーカス機能の利用が可能となり、また、(2)位相差検出方式の焦点検出とコントラスト方式の焦点検出の併用により、高速かつ高精度のオートフォーカス機能の実現が可能となる。また、ミラーを無くすことにより、ミラーの駆動時間を排除することができ、レリーズタイムラグの短縮を図ることができる。また、ミラーを無くすことにより、小型化が可能となる。
【0068】
さらに、位相差検出センサ20が撮像装置1内に組み込まれているため、撮像素子10の像面と位相差検出センサ20との相対位置を高精度に調整することが可能となり、非常に高精度なデフォーカス検出能力を持たせることが可能となる。
【0069】
〔従来の一眼レフシステムの概要〕
ここで、図10を用いて、従来の一眼レフカメラ駆動システムの概略について説明する。図10は、従来の一眼レフカメラの概略構成を示す図である。図10において、図9と同じ構成要素については、同じ符号を付す。
【0070】
図10に示す従来の一眼レフカメラ本体110は、電源をONにすると、主ミラー111aおよびサブミラー111bが図10に示す状態で待機し、また、シャッターユニット78が閉じ、撮像素子112の電荷排出を可能とする。撮影者がファインダー接眼113を覗き込み、構図を決定し、図示しないレリーズボタンを半押しすると、一眼レフカメラ本体110の各電気回路および交換レンズユニット100の各電気回路に電力がそれぞれ供給される。そして、位相差検出ユニット114の測光素子による測光データから露出を算出し、撮影モードに応じてシャッターユニット78の制御シャッタースピードと交換レンズユニット100のアイリス101の絞り値を決定する。同時に、位相差検出ユニット114の出力に応じて焦点状態を検出することで、交換レンズユニット100のフォーカスレンズ102の駆動量を算出し、焦点調整駆動系の駆動を開始する。
【0071】
さらに、レリーズボタンが全押しされると、図10に示す矢印方向に主ミラー111aおよびサブミラー111bがミラーアップし、同時に交換レンズユニット100のアイリス101が絞り駆動系の駆動により所定の絞り値にセットされる。撮影準備が完了すると、撮像素子112の電荷を開放し、シャッターユニット78が所定の露光を開始する。露光が終了すると、主ミラー111aおよびサブミラー111bを図10に示す状態に戻し、すべての機能をリセットして一連の撮影動作を終了する。
【0072】
2007年8月13日出願の特願2007−211163の日本出願に含まれる明細書、図面及び要約書の内容は、すべて本願に援用される。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る撮像装置は、撮像素子を露光しながら高速な焦点検出機能を提供することできる。このため、本発明に係る焦点検出機能を有する撮像装置は、いわゆるコンパクトデジタルカメラや交換レンズ式デジタルカメラなど、あらゆるカメラに利用可能である。また、ビデオAFの併用やミラーの排除を併せて行うことにより、高速かつ高精度なオートフォーカス機能を有する非常に小型な新しいジャンルのデジタルカメラの創出も可能となる。
【符号の説明】
【0074】
1、1a、1b 撮像装置
10 撮像素子
11 基板
12 光電変換部
13 垂直レジスタ
14 転送路
15 マスク
16 カラーフィルター
17 マイクロレンズ
18 光透過部
19 第1光電変換部
20 位相差検出センサ
21 セパレータレンズ
22 ラインセンサ
23 第2光電変換部
24 第3光電変換部
30 コンデンサーレンズ
70 カメラ本体
100 交換レンズユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像する撮像装置であって、
撮像面に形成された光学像を、画像信号を形成するための電気信号に変換する第1光電変換素子と、
測距のための電気信号に変換する第2光電変換素子と、
前記第1光電変換素子により変換された画像信号を表示する表示部と、
を備え、
前記第2光電変換素子は、
前記表示部に被写体像を表示中に測距する
撮像装置。
【請求項2】
前記第2光電変換素子は、
前記第1光電変換素子による画像取得タイミングとは異なるタイミングで測距する
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
被写体を撮像する撮像装置であって、
撮像面に形成された光学像を、画像信号を形成するための電気信号に変換する第1光電変換素子と、
測距のための電気信号に変換する第2光電変換素子と、
を備え、
前記第2光電変換素子で位相差検出を行い、
前記第1光電変換素子でコントラスト検出を行う
撮像装置。
【請求項4】
前記第2光電変換素子の位相差検出結果によるフォーカスレンズの移動に伴い、前記第1光電変換素子によりコントラスト検出を行う
請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の撮像装置と、
前記第2光電変換素子からの出力に、前記第1光電変換素子からの出力と異なる処理を行う信号処理部と、
を備え、
前記信号処理部は、
前記第2光電変換素子からの出力と前記第1光電変換素子からの出力とにより表示される画像のホワイトバランスおよび/または輝度を等しくする処理を前記異なる処理として行う
カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−123404(P2012−123404A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−13009(P2012−13009)
【出願日】平成24年1月25日(2012.1.25)
【分割の表示】特願2009−263177(P2009−263177)の分割
【原出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】