説明

撮像装置

【課題】撮像素子によって受光される光が少ないといった課題がある。
【解決手段】撮像装置は、被写体が配される被写体領域の一方側に配され、受光面での受光量に応じた電気信号を出力する撮像素子が複数個整列した撮像素子アレイと、前記被写体領域の前記一方側において、前記撮像素子アレイの各々の前記撮像素子に対応して前記受光面側に配され、前記撮像素子の前記受光面の面積よりも小さいピンホールを複数個整列したピンホールアレイと、前記被写体領域の他方側において、前記ピンホールアレイの各々の前記ピンホールに対応して配され、前記ピンホールに集光する集光素子が複数配列した集光素子アレイとを備え、前記被写体および前記ピンホールアレイの少なくともいずれか一方を移動させつつ前記撮像素子アレイにより複数の画像を撮像して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、撮像素子と、撮像素子と被写体との間に配置されたピンホールを備える顕微鏡が開示されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特表2008−501999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の技術では、ピンホールによって多くの光が遮られるので、撮像素子によって受光される光が少ないといった課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様の撮像装置においては、被写体が配される被写体領域の一方側に配され、受光面での受光量に応じた電気信号を出力する撮像素子が複数個整列した撮像素子アレイと、前記被写体領域の前記一方側において、前記撮像素子アレイの各々の前記撮像素子に対応して前記受光面側に配され、前記撮像素子の前記受光面の面積よりも小さいピンホールを複数個整列したピンホールアレイと、前記被写体領域の他方側において、前記ピンホールアレイの各々の前記ピンホールに対応して配され、前記ピンホールに集光する集光素子が複数配列した集光素子アレイとを備え、前記被写体および前記ピンホールアレイの少なくともいずれか一方を移動させつつ前記撮像素子アレイにより複数の画像を撮像して出力する。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】実施形態による撮像装置の全体構成図である。
【図2】撮像素子アレイ、ピンホールアレイ、及び、集光素子アレイの拡大斜視図である。
【図3】図2の一部を更に拡大した斜視図である。
【図4】撮像装置の制御系を説明するブロック図である。
【図5】高画質撮像モードを説明する図である。
【図6】集光素子にアキシコンレンズを適用した実施形態を説明する斜視図である。
【図7】アキシコンレンズによる集光を説明する概略図である。
【図8】集光素子に位相格子部材を適用した実施形態を説明する斜視図である。
【図9】撮像素子アレイ、ピンホールアレイ、及び、集光素子アレイの配置を変更した実施形態である。
【図10】ピンホールアレイのピンホールの配置を変更した実施形態の斜視図である。
【図11】図10の実施形態におけるピンホールアレイ及び撮像素子アレイの平面図である。
【図12】波長変換部を更に備えた撮像装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、実施形態による撮像装置の全体構成図である。図1に示すように、撮像装置10は、ベース12と、光源14と、撮像素子アレイ16と、ピンホールアレイ18と、集光素子アレイ20と、一対のスペーサ22、22と、XY方向駆動部24と、Z方向駆動部26と、被写体保持部28と、画像出力部30と、制御部32とを備えている。
【0009】
ベース12は、台状に形成されている。ベース12の上面には、光源14と、XY方向駆動部24と、Z方向駆動部26と、被写体保持部28とが載置されている。これにより、ベース12は、光源14と、撮像素子アレイ16と、ピンホールアレイ18と、集光素子アレイ20と、スペーサ22、22と、XY方向駆動部24と、Z方向駆動部26と、被写体保持部28とを直接的または間接的に支持する。
【0010】
光源14は、赤、緑、青の3色の平行光を−Z方向へと照射する。尚、光源14が照射する光は、平行光でなく拡散光であってもよい。ここで、光源14は、3色の光を同時にまたは異なるタイミングで照射する。光源14は、四隅に設けられた脚部34を介して、ベース12に支持されている。光源14は、集光素子アレイ20の+Z方向側に配置されている。光源14は、集光素子アレイ20のXY方向の移動領域を覆うように配置されている。
【0011】
スペーサ22、22は、ピンホールアレイ18のY方向の両端部の上面と、集光素子アレイ20のY方向の両端部の下面とにわたって設けられている。これにより、ピンホールアレイ18と集光素子アレイ20とのZ方向の間隔が、一定に保たれる。
【0012】
XY方向駆動部24は、撮像素子アレイ16、ピンホールアレイ18、及び、集光素子アレイ20を一体的にまたは個別にXY方向に駆動させる。XY方向駆動部24は、駆動力の発生源としてボイスコイルモータ等の小型モータ、または、ピエゾ素子を有する。XY方向駆動部24は、制御部32からの駆動信号によって制御される。
【0013】
Z方向駆動部26は、撮像素子アレイ16、ピンホールアレイ18、及び、集光素子アレイ20を、一体的にまたは個別にZ方向に駆動させる。Z方向駆動部26は、駆動力の発生源としてボイスコイルモータ等の小型モータ、または、ピエゾ素子を有する。Z方向駆動部26は、制御部32からの駆動信号によって制御される。
【0014】
被写体保持部28は、被写体ケース36と、4本の脚部38とを有する。被写体ケース36は、光源14から照射される波長の光を透過可能な材料からなる。尚、被写体39に蛍光材料を含ませる場合には、被写体ケース36は、蛍光材料から照射される蛍光を透過可能な材料によって構成される。被写体ケース36は、XY平面に水平な直方体形状に形成されている。被写体ケース36には、被写体39が配される中空状の被写体領域40が形成されている。4本の脚部38は、被写体ケース36の四隅の下面とベース12の上面との間に配置されている。これにより、4本の脚部38は、ピンホールアレイ18と集光素子アレイ20との間で被写体ケース36を支持する。
【0015】
画像出力部30は、制御部32によって生成された画像を表示する。画像出力部30の一例は、液晶ディスプレイである。
【0016】
制御部32は、撮像装置10の制御全般を司る。
【0017】
図2は、撮像素子アレイ16、ピンホールアレイ18、及び、集光素子アレイ20の拡大斜視図である。図3は、図2の一部を更に拡大した斜視図である。
【0018】
図2及び図3に示すように、撮像素子アレイ16は、被写体領域40の一方側の一例である−Z側に配される。撮像素子アレイ16は、複数個の撮像素子42を有する。複数の撮像素子42は、X方向に沿って数個から数千個整列されている。尚、整列される撮像素子42の数は限定されるものでない。撮像素子アレイ16の一例は、CCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサであって、撮像素子42はそれらの画素である。個々の撮像素子42は、平面視において、例えば、一辺が約10μmの正方形状に形成されている。撮像素子42の+Z面には、光を受光するための受光面44が形成されている。撮像素子42は、被写体39を透過した光を受光面44によって受光する。そして、撮像素子42は、受光面44での受光量に応じた電気信号を出力する。
【0019】
ピンホールアレイ18は、被写体領域40の−Z側に配されている。ピンホールアレイ18と撮像素子アレイ16との間には、所定の間隔が形成されている。これにより、ピンホールアレイ18と撮像素子アレイ16とは、別々に駆動できる。ピンホールアレイ18は、複数個のピンホール48が形成された遮光板46を備えている。遮光板46は、光を遮蔽可能な材料からなる。遮光板46は、撮像素子アレイ16の受光面44側に配されている。遮光板46は、平面視において、撮像素子アレイ16と略同じ長方形状に形成されている。
【0020】
複数のピンホール48は、X方向に延びる撮像素子アレイ16の中心線上に整列されている。複数のピンホール48は、撮像素子アレイ16の各々の撮像素子42に対応して配されている。各ピンホール48は、平面視において、円形状に形成されている。ピンホール48は、撮像素子42の受光面44の面積よりも小さい。撮像素子42が一辺10μmの正方形状である場合、ピンホール48の直径の一例は、1μmである。ピンホール48は、Z方向において、遮光板46を貫いている。ピンホール48は、光が透過可能に構成されている。ピンホール48は、空間としてもよく、光を透過可能な樹脂等の材料によって埋設されていてもよい。
【0021】
集光素子アレイ20は、被写体領域40の他方側の一例である+Z側に配されている。集光素子アレイ20は、ピンホール48に集光する複数の集光素子50を有する。集光素子50は、光源14からの光を透過可能なガラスまたは樹脂によって構成されている。集光素子50は、平面視において、撮像素子42と略同じ正方形状に形成されている。複数の集光素子50は、互いに固定されて一体化されている。複数の集光素子50は、X方向に沿って一直線上に配列されている。複数の集光素子50は、ピンホールアレイ18の各々のピンホール48に対応して配されている。これにより、撮像素子42、ピンホール48、及び、集光素子50は、光の進行方向であるZ軸上に沿って配列される。例えば、集光素子50が一辺10μmの正方形状である場合、集光素子50とピンホール48との距離は30μm程度である。
【0022】
集光素子50の一例は、リング状の凹部52を用いたゾーンプレートであり、光をピンホール48に集光する。被写体領域40は、集光素子50によって集光された光の焦点深度54に配される。これにより、被写体39は、焦点深度54内に配される。更に、被写体領域40のみならずピンホール48が焦点深度54内に配されている。
【0023】
図4は、撮像装置の制御系を説明するブロック図である。次に、撮像装置10の制御系について説明する。
【0024】
制御部32は、コンピュータ等からなる。制御部32は、各撮像素子42と、XY方向駆動部24と、Z方向駆動部26と、光源14と、画像出力部30とに信号を送受信可能に接続されている。
【0025】
詳細には、制御部32は、各撮像素子42から出力される撮像信号を受信する。これにより、制御部32は、受信した撮像信号に基づいて被写体39の画像を生成する。
【0026】
制御部32は、光源14にオン・オフ信号を送信する。これにより、光源14のオン・オフ状態が切り替えられる。ここで、制御部32は、光源14の3色を同時にオン状態にできるとともに、光源14の3色を異なるタイミングでオン状態にすることもできる。
【0027】
制御部32は、XY方向駆動部24を制御して、撮像素子アレイ16、ピンホールアレイ18、及び、集光素子アレイ20をX方向及びY方向に移動させる。ここで、制御部32は、XY方向駆動部24を制御して、ピンホールアレイ18、及び、集光素子アレイ20を一体的に被写体39に対してX方向及びY方向に移動させることができる。また、制御部32は、XY方向駆動部24を制御して、撮像素子アレイ16を固定して、ピンホールアレイ18及び集光素子アレイ20をX方向及びY方向に移動させることもできる。これにより、ピンホールアレイ18を撮像素子42の受光面44内で移動させることにより、画素数を増加させることができる。
【0028】
制御部32は、Z方向駆動部26を制御して、撮像素子アレイ16、ピンホールアレイ18、及び、集光素子アレイ20をZ方向に移動させる。これにより、制御部32は、Z方向において、光の波長が異なることに起因する焦点深度のずれに対応する。
【0029】
制御部32は、生成した画像信号を画像出力部30に送信する。画像出力部30は、画像信号に基づいて、画像を表示する。
【0030】
次に、上述した撮像装置10の撮像動作を説明する。撮像動作は、通常撮像モード、高画質撮像モード、カラー撮像モードに分けて説明する。
【0031】
通常撮像モードでは、制御部32は、光源14にオン信号を送信する。これにより、光源14から3色の平行光の白色の光が照射される。この光は、集光素子アレイ20の各集光素子50に達する。光は、集光素子50の凹部52とそれ以外の領域を透過することによって、回折される。そして、回折された光の一部は、被写体39を透過、または被写体39の回りを通過した後、互いに干渉して、ピンホール48へと集光される。一方、回折された光の一部は、被写体39によって遮られる。
【0032】
ピンホール48へと集光されて達した光は、ピンホール48を通過して、撮像素子42の受光面44に達する。光を受光した撮像素子42は、受光量に応じた電気信号である撮像信号を制御部32へ送信する。この後、制御部32は、XY方向駆動部24を制御して、撮像素子アレイ16、ピンホールアレイ18、及び、集光素子アレイ20を、撮像素子42の一辺の長さである約10μmY方向に移動させる。次に、上述した同じ動作によって、光を受光した撮像素子42が撮像信号を制御部32へと送信する。この後、制御部32は、XY方向駆動部24を制御して、撮像素子アレイ16、ピンホールアレイ18、及び、集光素子アレイ20を約10μmずつY方向に移動させつつ、同じ撮像動作を繰り返す。制御部32は、所定の距離、撮像素子アレイ16、ピンホールアレイ18、及び、集光素子アレイ20をY方向に移動させると、撮像動作を終了する。
【0033】
次に、制御部32は、撮像信号を合成して、画像を生成する。この後、制御部32は、生成した画像を画像信号として、画像出力部30に送信する。画像出力部30は、受信した画像信号に基づいて、画像を表示する。尚、画像生成は、撮像動作と平行して実行してもよい。
【0034】
図5は、高画質撮像モードを説明する図である。高画質撮像モードでは、制御部32は、XY方向駆動部24を制御して、撮像素子42の受光面44内でピンホール48及び集光素子50を移動させつつ、撮像素子アレイ16によって複数の画像を撮像する。この際、撮像素子アレイ16は、移動させなくてもよい。例えば、図5に示すように、ピンホール48を受光面44内でX方向に3個所、Y方向に3個所、撮像素子42のピッチよりも小さく、例えば3μmずつ移動させる。そして、それぞれの場所において撮像素子アレイ16によって画像を撮像して電気信号を制御部32へと出力する。そして、制御部32が撮像素子42から撮像信号を得て画像を生成することによって、撮像素子42のピッチの9倍の分解能にすることができる。ピンホール48を受光面44内で移動させた後、制御部32は、撮像素子アレイ16、ピンホールアレイ18、及び、集光素子アレイ20を、それぞれが整列された方向と直交する方向であるY方向に10μm移動させて同じ動作を繰り返して、被写体39の全体を撮像する。
【0035】
カラー撮像モードでは、制御部32は、光源14の3色の光を異なるタイミングで照射する。例えば、制御部32は、赤色の光を照射して撮像した後、緑色の光、青色の光を照射して撮像する。この後、制御部32は、XY方向駆動部24を制御して、撮像素子アレイ16、ピンホールアレイ18、及び、集光素子アレイ20をY方向に10μm移動させて、3色の光を異なるタイミングで照射して撮像する。制御部32は、この動作を繰り返して、被写体39の全体のカラー画像を撮像する。尚、異なる色の光の焦点深度54が異なり、被写体39が焦点深度54から外れる場合は、制御部32が、Z方向駆動部26を介して、撮像素子アレイ16及びピンホールアレイ18、または、集光素子アレイ20をZ方向に移動させ、ピンホールアレイ18と集光素子アレイ20との間隔を変えてもよい。これにより、被写体39及びピンホールアレイ18を焦点深度54内に設定することができる。
【0036】
上述したように撮像装置10では、ピンホール48に光を集光する集光素子50を有するので、光源14から照射される光が弱くても、鮮明な画像を得ることができる。また、集光素子50によって光を集光することにより、光源14からの光を弱くすることができる。この結果、被写体39が細胞等の場合であっても、被写体39の破損を抑制できる。更に、撮像装置10では、被写体39がZ方向に分厚い場合であっても、集光素子50によって光を集光することにより、Z方向の分解能の低下を抑制できる。
【0037】
撮像装置10では、ピンホール48を、撮像素子42の受光面44内で移動させることによって解像度を上げることができる。ここで、撮像素子42の受光面44と比較して、ピンホール48は、容易に微細化することができる。これにより、撮像装置10は、容易に解像度を上げることができる。
【0038】
撮像装置10では、光源14から異なる色の光を異なるタイミングで照射して、撮像することにより、カラーの画像を撮像することができる。更に、Z方向駆動部26によって、それぞれの色に対応させて撮像素子アレイ16、ピンホールアレイ18、及び、集光素子アレイ20をZ方向に移動させることができる。これにより、被写体39を焦点深度54内に維持して、鮮明な画像を撮像することができる。
【0039】
撮像装置10では、被写体39の像を光学的に拡大することなく、直接的に撮像しつつ、撮像素子42のピッチよりも細かい分解能の画像を得ることができる。
【0040】
図6は、変更した実施形態における集光素子にアキシコンレンズを適用した実施形態を説明する斜視図である。次に、上述した撮像装置の集光素子を変更した実施形態について説明する。尚、同様の構成には、同じ符号を付与して説明を省略する。
【0041】
図6に示すように、この実施形態では、集光素子アレイ120の集光素子150として円錐状のレンズ部151を有するアキシコンレンズを適用している。レンズ部151は、ピンホール48に向かって細くなるように構成されている。レンズ部151の頂点は、ピンホール48の中心の+Z方向上に配置されている。
【0042】
図7は、アキシコンレンズによる集光を説明する概略図である。図7に示すように、集光素子150に平行光である光が入射すると、レンズ部151によって光が集光される。集光された光は、一対の円錐形状の底面を合わせた形状に集光され、ベッセルビーム形成領域が形成される。このため、集光された光の焦点深度154は長くなる。ピンホールアレイ18は、集光された光の焦点深度154の領域内に配置すればよい。これにより、この実施形態では、ピンホールアレイ18と集光素子アレイ120とのZ方向の相対位置の許容範囲を大きくすることができるので、ピンホールアレイ18と集光素子アレイ120の組み立て工程を簡略化することができる。
【0043】
尚、アキシコンレンズのレンズ部151を構成する材料の屈折率が1.5であって、光の集光領域の直径を2μm以下にする場合、Z軸と外周面との間の角度であるθは80°以下であることが好ましい。更に、レンズ部151とピンホール48との間の距離が30μm以下の場合、レンズ部151の+Z側端面の直径は10μm以上であることが好ましい。
【0044】
図8は、集光素子に位相格子部材を適用した実施形態を説明する斜視図である。集光素子アレイ220の集光素子250として位相格子部材260を適用してもよい。位相格子部材260は、一対の零領域262と、一対のπ領域264とを有する。一対の零領域262は、集光素子250の一方の対角線上に配置されている。一対の零領域262は、集光素子250の中心を対称点とする点対称の位置に配置されている。一対のπ領域264は、集光素子250の他方の対角線上に配置されている。一対のπ領域264は、集光素子250の中心を対称点とする点対称の位置に配置されている。π領域264を透過する光の位相は、零領域262を透過する光の位相に対して、πずれる。これにより、集光素子250を透過する光は、互いに干渉して集光する。
【0045】
ここで、位相格子部材260を有する集光素子250の一辺がd、光源14から照射される光の波長がλの場合、ピンホールアレイ18と集光素子アレイ220との距離Lは、以下の式が好ましい。
L=D/12=(2d/λ)/12
尚、Dは、回折格子がタルボ(Talbot)効果を奏するタルボ距離である。これにより、集光素子250によって集光された光の焦点深度内にピンホール48が配置される。例えば、位相格子部材260を有する集光素子250の一辺が20μmの場合、集光素子250とピンホールアレイ18との距離は、70μm程度が好ましい。
【0046】
図9は、撮像素子アレイ、ピンホールアレイ、及び、集光素子アレイの配置を変更した実施形態である。次に、上述した撮像装置の撮像素子アレイ、ピンホールアレイ、及び、集光素子アレイの配置を変更した実施形態について説明する。
【0047】
図9に示すように、この実施形態では、撮像素子アレイ316、ピンホールアレイ318、および、集光素子アレイ320が数行数列のマトリックス状に配置されている。ここで、マトリックスの行、及び、列の数は、適宜変更してもよいが、本実施形態では、被写体39を覆う程度に配列されているとする。
【0048】
この実施形態において、上述した高画質撮像モードを実行すると、ピンホール48を受光面44内の9個所に移動させて、それぞれで撮像素子42によって撮像する。ここで、撮像素子アレイ16、ピンホールアレイ18、および、集光素子アレイ20は、被写体39を覆う程度に配列されている。従って、この後、撮像素子アレイ16、ピンホールアレイ18、および、集光素子アレイ20を撮像素子42の一辺の長さである10μm移動させることなく、被写体39の撮像が終了する。このように、本実施形態では、高画質の画像を短時間で撮像できる。
【0049】
尚、撮像素子アレイ316、ピンホールアレイ318、および、集光素子アレイ320は、それぞれ同数の行及び同数の列によって構成しなくてもよい。例えば、撮像素子アレイ316の撮像素子42のみを数行数列のマトリックス状に配列して、ピンホールアレイ18及び集光素子アレイ20は、上述の実施形態と同様にX方向に延びる一列に配列してもよい。この場合、撮像素子アレイ316を固定して、ピンホールアレイ18及び集光素子アレイ20をY方向に移動させることにより、撮像することができる。
【0050】
図10は、ピンホールアレイのピンホールの配置を変更した実施形態の斜視図である。図11は、図10の実施形態におけるピンホールアレイ及び撮像素子アレイの平面図である。
【0051】
図10及び図11に示すように、ピンホール481、482、483が遮光板446に3×3のマトリックス状に配置されている。尚、X方向及びY方向に配列するピンホール481、482、483の数は適宜変更してよい。ここで、Y方向に延びる同じ列に配列されたピンホール481、482、483では、ピンホール481、482、483のX方向の位置が異なる。最も+Y側の列のピンホール481は、受光面44の内側において、−X端部に配置されている。真ん中の列のピンホール482は、受光面44の内側において、中心部に配置されている。最も−Y側の列のピンホール483は、受光面44の内側において、+X端部に配置されている。即ち、ピンホール481、482、483は、−Y側にいくに連れて、+X側へと配置される。また、集光素子アレイ420の集光素子50の凹部52の中心が、ピンホール481、482、483の中心の+Z方向上となるように、各集光素子50は配置される。
【0052】
この実施形態において被写体を撮像する場合、まず、最も+Y側の列の撮像素子42によって被写体を撮像する。次に、撮像素子42のピッチと同じ距離だけY方向に、撮像素子アレイ16、ピンホールアレイ418、及び、集光素子アレイ420を移動させる。この後、真ん中の列によって被写体が撮像される。次に、更に、撮像素子42の一辺と同じ距離だけY方向に、撮像素子アレイ16、ピンホールアレイ418、及び、集光素子アレイ420を移動させる。そして、最も−Y側の列の撮像素子42によって撮像する。これにより、被写体の同じ場所をX方向の位置が異なる3つのピンホール481、482、483を介して撮像するので、X方向の解像度を3倍に向上させることができる。
【0053】
尚、上述した撮像素子アレイ、ピンホールアレイ、及び、集光素子アレイの配置は一例であり、適宜変更してよい。
【0054】
図12は、波長変換部を更に備えた撮像装置を説明する図である。光源14は、撮像素子42によって電気信号に変換不能な紫外線等の光を照射する。この場合、図12に示すように、撮像素子アレイ16とピンホールアレイ18との間に、波長変換部70を設けてもよい。波長変換部70は、撮像素子42が電気信号に変換不能な光を、撮像素子42が電気信号に変換可能な波長の光に変換する。尚、光源14が照射する紫外線以外の光を撮像素子42が電気信号に変換可能な光に変換する波長変換部70であってもよい。尚、波長変換部70を構成する材料として、セラミック結晶にEu(ユウロピウム)またはCe(セリウム)などの金属を添加した材料を適用することができる。
【0055】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0056】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【0057】
例えば、上述した撮像素子アレイ16、ピンホールアレイ18、及び、集光素子アレイ20の配列数は適宜変更してもよい。
【0058】
カラー撮像モードにおいて、上述の実施形態では異なる色の光を時分割して照射することによって実現したが下記の異なる方法によってもカラー撮像はできる。例えば、撮像素子アレイ16に含まれる撮像素子42を3つのグループに分けてもよい。この場合、赤色の光源と赤色の光を受光可能な撮像素子と、緑色の光源と緑色の光を受光可能な撮像素子と、青色の光源と青色の光を受光可能な撮像素子とを設けることによって、カラー画像を撮像してもよい。また、フォビオン(Foveon)方式のように、1個の撮像素子に三層の受光層を設け、各受光層で異なる色の光を受光するように構成してもよい。例えば、最上層の受光層で最も吸収されやすい青色の光を受光して、次の受光層で緑色の光を受光して、最下層の受光層で最も吸収されにくい赤色の光を受光するように構成してもよい。
【0059】
また、被写体39の全部または一部に蛍光材料を含ませてもよい。この場合、光源14は、被写体39に含まれた蛍光材料を蛍光させる光を集光素子アレイ20に照射する。これにより、被写体39の全部または一部が、集光素子アレイ20により集光された光によって蛍光された状態で撮像される。尚、光源14から照射される光は、蛍光材料を2光子励起可能な光であってもよい。この場合、被写体39の破損を抑制できる。
【0060】
また、上述の実施形態では、撮像素子アレイ16、ピンホールアレイ18、集光素子アレイ20を移動させつつ撮像したが、被写体39を移動させつつ撮像してもよい。この場合、被写体ケース36とともに、被写体39を移動させてもよく、水流等によって被写体39を被写体ケース36の内部で、ピンホール48の配列方向と交差する方向に移動させてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 撮像装置
12 ベース
14 光源
16 撮像素子アレイ
18 ピンホールアレイ
20 集光素子アレイ
22 スペーサ
24 XY方向駆動部
26 Z方向駆動部
28 被写体保持部
30 画像出力部
32 制御部
34 脚部
36 被写体ケース
38 脚部
39 被写体
40 被写体領域
42 撮像素子
44 受光面
46 遮光板
48 ピンホール
50 集光素子
52 凹部
54 焦点深度
70 波長変換部
120 集光素子アレイ
150 集光素子
151 レンズ部
154 焦点深度
220 集光素子アレイ
250 集光素子
260 位相格子部材
262 零領域
264 π領域
316 撮像素子アレイ
318 ピンホールアレイ
320 集光素子アレイ
418 ピンホールアレイ
420 集光素子アレイ
446 遮光板
481 ピンホール
482 ピンホール
483 ピンホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体が配される被写体領域の一方側に配され、受光面での受光量に応じた電気信号を出力する撮像素子が複数個整列した撮像素子アレイと、
前記被写体領域の前記一方側において、前記撮像素子アレイの各々の前記撮像素子に対応して前記受光面側に配され、前記撮像素子の前記受光面の面積よりも小さいピンホールを複数個整列したピンホールアレイと、
前記被写体領域の他方側において、前記ピンホールアレイの各々の前記ピンホールに対応して配され、前記ピンホールに集光する集光素子が複数配列した集光素子アレイと
を備え、
前記被写体および前記ピンホールアレイの少なくともいずれか一方を移動させつつ前記撮像素子アレイにより複数の画像を撮像して出力する撮像装置。
【請求項2】
前記集光素子の焦点深度内に前記被写体領域が配される
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記ピンホールが前記集光素子の焦点深度内に配される
請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記撮像素子アレイ、前記ピンホールアレイ、および、前記集光素子アレイが一体的に前記被写体に対して移動しつつ、前記撮像素子アレイにより撮像する
請求項1〜3のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項5】
前記ピンホールを、前記撮像素子の前記受光面内で移動させつつ、前記撮像素子アレイにより複数の画像を撮像する
請求項1〜4のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項6】
前記被写体に含まれた蛍光材料を蛍光させる光を前記集光素子アレイに照射する光源を更に備える
請求項1〜5のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項7】
異なる3色の光を照射する光源を更に備える
請求項1〜5のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項8】
前記撮像素子が電気信号に変換不能な光を照射する光源と、
前記撮像素子と前記ピンホールとの間に配され、前記撮像素子が電気信号に変換可能な波長の光に変換する波長変換部を更に備える
請求項1〜5のいずれかに記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−65268(P2012−65268A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209848(P2010−209848)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】